説明

眼科装置

【課題】 被検眼に対するアライメントを全自動及び手動の両方にて好適に行う。
【解決手段】 検眼部と、検者が操作部材を操作することにより固定基台上で水平方向に移動する移動台と、被検眼と検眼部との相対位置を検出するアライメント検出手段と、上下駆動機構と,左右方向における移動可能範囲が所定の瞳孔間距離より広く確保された水平駆動機構とを有し、被検眼に対して検眼部を電動にて移動させる駆動手段と、アライメント検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段の駆動を制御する制御手段であって、フルオートモードに設定された場合、前期移動台が前記固定基台上における所定位置に配置された状態での所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して前記検眼部を順次アライメントする制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の検査、測定等を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に対して検眼部をアライメントし、検眼部に内蔵された検査・測定系により被検眼の検眼を行う眼科装置としては、検者によるジョイスティックへの手動操作を介して検眼部が載置された移動台を固定基台に対してメカニカルに水平移動させるアライメント機構を有するものが知られている。また、このような移動台に対して前後左右上下方向にそれぞれ検眼部を移動可能な駆動機構を設けることにより、ジョイスティック操作による粗アライメント後の被検眼に対する精密なアライメントを自動化させたものが知られている(特許文献1参照)。このような構成の場合、駆動機構による移動可能範囲は、例えば、基準位置から前後方向に各5mm程度、左右方向に各5mm程度(上下は16mm程度)であった。
【0003】
また近年、ラフなアライメントを含めたアライメントの全自動化を目的として、被検眼に対して検眼部を移動させる駆動機構の移動可能範囲が被検眼の瞳孔間距離以上とされ、被検者の両眼を片眼ずつ順次自動的にアライメントを行うような装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−98808号公報
【特許文献2】特開平10−216089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなラフなアライメントを含めたアライメントの全自動化を行おうとする場合においても、必ずしも全ての被検者に対して自動的に測定を行えるわけではない。例えば、固視微動の激しい被検眼の場合、被検眼の動きに駆動機構による検眼部の移動が追尾できない場合がある。このような場合に備えて、上記従来装置においては、自動アライメントが困難な被検眼に備えて、検者によって操作される電動の操作部材(例えば、電動ジョイスティック、トラックボール等)が設けられ、操作部材に対する操作方向及び操作量に応じて駆動機構が駆動制御されることにより被検眼に対する手動アライメントが可能な構成となっている。しかし、電動の操作部材を用いた手動アライメントは、操作性が悪く、アライメント作業に手間を要する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、被検眼に対するアライメントを全自動及び手動の両方にて好適に行うことのできる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 被検眼の検査又は測定を行う検眼部と、
固定基台と、
該検眼部を載置する移動台であって、検者が操作部材を操作することにより固定基台上で水平方向に移動する移動台と、
検眼部に配置され、被検眼の前眼部を撮影する撮影光学系を持ち、被検眼と検眼部との相対位置を検出するアライメント検出手段と、
モータの駆動によって移動台に対して検眼部を上下方向に移動させる上下駆動機構と,モータの駆動によって移動台に対して検眼部を水平方向に移動させる水平駆動機構であって左右方向における移動可能範囲が所定の瞳孔間距離より広く確保された水平駆動機構と,を有し、被検眼に対して検眼部を電動にて移動させる駆動手段と、
移動台の移動によって被検者の左右眼を順次測定するマニュアルモードと,駆動手段の駆動によって被検者の左右眼に対して順次測定するフルオートモードと,を切り換えるモード切換手段と、
アライメント検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段の駆動を制御する制御手段であって、前記モード切換手段によりフルオートモードに設定された場合、前期移動台が前記固定基台上における所定位置に配置された状態での所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して前記検眼部を順次アライメントする制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置において、
フルオートモードに対応する所定位置に前記移動台が配置されているか否かを検知するための位置検知手段を備え、
制御手段は、前記移動台が所定位置に配置されたことが前記位置検知手段により検知され、かつ、前記モード切換手段によりフルオートモードに設定された場合、所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して前記検眼部を順次アライメントする制御手段と、を備えることを特徴とする。
(3) (2)の眼科装置において、
前記固定基台に対して前記移動台を固定するために配置された固定手段と、
該固定手段によって前記移動台が固定されたことを検知するための固定検知手段と、を備え、制御手段は、前記移動台が所定位置に固定されたことが前記位置検知手段及び前記固定検知手段により検知され、かつ、前記モード切換手段によりフルオートモードに設定された場合、所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して検眼部を順次アライメントすることを特徴とする。
(4) (3)の眼科装置において、
移動台の前記所定位置は、前記移動台に対して水平方向に移動される前記検眼部が被検者の両眼に対して順次アライメント可能な位置であって,検眼部の前進限度位置において検眼部が被検眼と接触しないとされる位置に,設定されていることを特徴とする。
(5) (4)の眼科装置において、
モード切換手段は、さらに、マニュアルモードにおいて、検者が前記操作部材を操作することにより被検眼に対する前記検眼部のアライメントを行う第1マニュアルモードと、検者による前記操作部材の操作と,前記駆動手段の駆動とによって被検眼に対する検眼部のアライメントを行う第2マニュアルモードと、を切り換えるためのモード切換信号を出力するモード切換手段であって、
制御手段は、モード切換手段により第2マニュアルモードに設定された場合、検者によってラフなアライメントが行われた後、前記アライメント検出手段に基づいて駆動手段の駆動を制御し、被検者の片眼に対する検眼部の精密なアライメントを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検眼に対するアライメントを全自動及び手動の両方にて好適に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る眼科装置の外観概略図を示している。
【0011】
眼科装置100の基台1には、被検者の顔を固定する顔支持ユニット10が固定されている。顔支持ユニット10には、被検者の額を当接する額当て11と、被検者の顎を受ける顎受け12が設けられている。顎受け12は、後述する顎受け移動機構30により上下(Y)方向に移動される。14は額当て11を形成する支柱部分に設けられたアイレベルマーカであり、顎受け12の上下動によって被検眼の高さ(アイレベル)を調整する際の目安となる。この場合、被検眼とアイレベルマーカ14がほぼ同じ高さになるようにアイレベルが調整されると、顔支持ユニット10の額当て11と顎受け12によって被検者の顔がしっかりと固定された状態となるように装置が設計されている。
【0012】
移動台3は、図示無き摺動機構によって固定基台1上を水平(XZ)方向に移動(摺動)可能に配置されている。検眼部5は移動台3の上に載置され検眼光学系等が収納されている。ここで、摺動機構は、移動台3に設けられたジョイスティック4に対する手動操作を介して固定基台1に対して移動台3を移動させるための手動移動機構として用いられる。
【0013】
この場合、摺動機構は、移動台3の左右(X)方向への移動により被験者の両眼に対して順次アライメントできるように移動台3の左右方向における移動可能範囲が被験者の瞳孔間距離より広く確保されている。具体的には、移動台3の左右移動可能範囲として、瞳孔間距離の大きい被検眼に合わせて、左右中央位置から左右それぞれに45mm程度で、左右全体として90mm程度に設定するようなことが考えられる。
【0014】
また、移動台3の前後(Z)方向における移動可能範囲は、被験者の位置にかかわらず検眼部5の前後(作動距離)方向のアライメントが可能であって、かつ、左右眼の間で測定眼を切換えるときに被験者の鼻等に検眼部5が接触するのを回避するべく、被検眼に対するアライメントに使用される移動領域に対してさらに後方への移動範囲が確保されている。具体的には、40mm程度の前後移動可能範囲とすることが考えられる。
【0015】
なお、手動移動機構として用いられる摺動機構としては、基台1に対して移動台3を左右にスライドさせるための左右スライド機構と、基台1に対して移動台3を前後にスライドさせるための前後スライド機構と、を有し、基台1に対して移動台3を水平移動可能な周知の摺動機構を用いることができる。
【0016】
また、検眼部5には、検眼部5の筐体内を被検者が覗くための検査窓5aが設けられ、筐体内に配置された検眼光学系からの光束が検査窓5aを介して被検眼に投光される。50aは、被検眼とその周辺を同時に撮影するための第2撮影光学系50の撮影窓である。第2撮影光学系50は、被検眼と装置とが所定の位置関係に置かれた状態にて、少なくとも被検眼とその近傍に位置するアイレベルマーカ14とが同時に撮影できる程度の撮影領域を有している。
【0017】
Y駆動部6は検眼部5を上下(Y)方向に移動させ、XZ駆動部7は検眼部5を左右(X)及び前後(Z)方向に移動させ、これらは移動台3の内部に搭載されている。ここで、Y駆動部6及びXZ駆動部7が駆動されると、移動台3に対して検眼部5がXYZ方向に移動され、結果的に、被検眼に対して検眼部5は三次元方向に移動可能となる。なお、Y駆動部6及びXZ駆動部7としては、例えば、検眼部5を移動させるスライド機構をモータの駆動により作動させるような構成が考えられる。
【0018】
ジョイスティック4は移動台3上に設けられ、被検眼に対して検眼部5を所定位置に合わせるために検者によって手動操作される。ジョイスティック4が前後左右に操作されると、前述の摺動機構によって基台1に対して移動台3がXZ方向(水平方向)に移動され、結果的に被検眼に対して検眼部5がXZ方向に移動される。また、ジョイスティック4の回転ノブ4aが回転操作されると、Y駆動部6が駆動され、検眼部5がY方向(垂直方向)に移動される。また、ジョイスティック4の頂部に設けられた測定開始スイッチ4bが押されると、検眼光学系による測定や撮影等を開始するためのトリガ信号が発せられる。また、移動台3の検者側には、モニタ8、及び測定条件等の各種設定を行うためのコントロール部9aが設けられている。また、基台1の検者側側面には、検者操作によって顎受け12を上下させるための顎受けスイッチ9b(UP/DOWNスイッチ)が設けられている。ここで、顎受けスイッチ9bが押されると、顎受け移動機構30が操作方向に対応して駆動され、顎受け12の高さが調整される。
【0019】
図2は本実施形態に係る眼科装置のロック機構を示す図である。ロック機構200は、固定基台1に対して移動台3を固定するためのものである。この場合、ロック機構200には、固定基台1に対して移動台3が固定された状態と、固定基台1に対する移動台3の固定が解除された状態とを切り換える切換機構が設けられ、固定状態と固定解除状態とを任意に切換が可能である。
【0020】
より具体的には、移動台3に上下方向に回転可能に軸支されたアーム216と、アーム216に保持され基台1に押さえ付けられる固定部材219と、固定部材219を基台1から離れた第1位置と基台1に押さえ付ける第2位置とに移動させるためにアーム216を回転させる操作部材211であって、アーム216の回転中心に対する距離に関して、固定部材219が配置された距離よりも長い距離に配置された操作部材211と、操作部材211の操作により固定部材219が第1位置、第2位置に移動させたときにアーム216の回転を制限する回転制限部材223、からなるロック機構200が考えられる。この場合、検者によって操作部材211が持ち上げられると移動台3の固定が解除され、検者によって操作部材211が下げられると移動台3が固定されるような構成となっている。なお、上記構成においては、移動台3に対して過度の力を加えることで移動台3が移動してしまう可能性がありうるが、通常の使用形態(例えば、ジョイスティック4に対する通常の傾倒操作)において移動台3の移動が固定される程度であればよい。なお、この構成の詳細については、本出願人による特開2005−224257号公報を参考にされたい。
【0021】
また、前述のロック機構200には、ロック機構200による移動台3の固定を検知するロック検知部250が設けられ、その検知信号が制御部70に出力される。
【0022】
より具体的には、ロック検知部250として移動台3の底面部にマイクロスイッチが取り付けられており、操作部材211が下げられてアーム216が下方に回転移動されると、アーム216の下部によってマイクロスイッチが押し下げられ、マイクロスイッチから後述する制御部70に検知信号が発せられるような構成となっている。これに基づいて、制御部70は、固定基台1に対して移動台3がロックされた状態であると判定する。
【0023】
一方、操作部材が上げられてアームが上方に回転移動されると、アームによるマイクロスイッチの押圧状態が解除され、マイクロスイッチから制御部70への検知信号が出力されなくなる。これにより、制御部70は、固定基台1に対する移動台3のロック状態が解除されていると判定する。すなわち、制御部70は、移動台3がロックされた状態とロックが解除された状態との切り換わりを検知できる。
【0024】
図3は顎受け12を電動で上下動させる顎受け移動機構30の構成を示す概略断面図である。支基20には送りネジ21が立設されており、これに螺合する雌ネジを持つ支柱23が支基20にガイドされて上下に移動可能に取り付けられている。支柱23の上に顎受け12が固定されている。送りネジ21の下方にはギヤ22が設けられており、このギヤ22にパルスモータ24側のギヤと噛み合っている。また、支柱23には溝25があり、この溝25と回転止め用のビス26により支柱23が回転するのを防止している。モータ24の回転により送りネジ21が回転し、これによって支柱23と共に顎受け12が上下移動する。支柱23の下方には遮光板27が取り付けられており、支基20側には遮光板27を検知するフォトセンサ28が設けられている。フォトセンサ28は、遮光板27を検知することにより、顎受け12が下限に下がったことを検知する。また、フォトセンサ28で検知される顎受け12の下限位置を基準としてパルスモータ24に付与するパルス数を計測することにより、顎受け12の高さ位置の検出が可能である。したがって、顎受け12を所定の高さ(初期位置)に調整することも可能である。
【0025】
図4は、検眼部5内に設けられた光学系及び制御系の構成を説明する概略構成図である。
光路O1上には、対物レンズ17、ビームスプリッタ13、検眼光学系5bが配置されており、検眼光学系5bから発せられた光束は、ビームスプリッタ13、対物レンズ17を介して被検眼に入射する。そして、被検眼からの反射光は、対物レンズ17、ビームスプリッタ13を介して検眼光学系5b内に入射し、所定の眼特性(例えば、眼屈折力や眼底画像や前眼部断面像など)を得る。なお、L1は対物レンズ17の光軸であり、検眼光学系5bの光軸及び後述する第1撮影光学系60の光軸を兼ねる。
【0026】
また、眼Eの前眼部の前方には、眼Eの角膜Ecにリング指標を投影するための近赤外光を発するリング指標投影光学系40と、眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影することにより被検眼に対する作動距離方向のアライメント状態を検出するための近赤外光を発する作動距離指標投影光学系41が光軸L1に対して左右対称(図4では、便宜上、上下に配置)に配置されている。なお、リング投影光学系40は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。
【0027】
また、被検眼の前眼部を撮影する前眼部撮影光学系は、被検眼前眼部を撮影する第1撮影光学系60と、被検眼前眼部を含めた周辺領域を撮影する第2撮影光学系50とを有する。ここで、第2撮影光学系50は、レンズ51、二次元受光素子52を持ち、第1撮影光学系60よりも低倍率にて前眼部を撮影する(図6参照)。ここで、近赤外光によって照明された前眼部からの反射光は、レンズ51を介して二次元受光素子52に受光される。そして、二次元受光素子52の出力は、後述する制御部70に送られる。
【0028】
なお、本実施形態において、第2撮影光学系50は、対物レンズ17の真下に配置されており(図1参照)、左右両眼及び左右のアイレベルマーカ14とを同時に撮影できるような撮影範囲を有する構成となっている(図6参照)。これにより、被検眼の高さの確認、左右眼の判別、及び左右眼の位置の特定を同時に行うことができる。
【0029】
第1撮影光学系60は、ビームスプリッタ13の反射方向に配置され、リレーレンズ61、全反射ミラー62、絞り63、撮像レンズ64、二次元受光素子65を持ち、二次元受光素子65により被検眼が高倍率で撮像されると共に、指標投影光学系40及び41によって被検眼角膜に投影されたアライメント指標像が検出される(図7参照)。なお、上記の光学系において、近赤外光によって照明された前眼部からの反射光は、対物レンズ17、ビームスプリッタ13及びリレーレンズ61〜撮像レンズ64を介して二次元受光素子65に受光される。そして、二次元受光素子65の出力は、後述する制御部70に送られる。なお、本実施形態においては、光軸L1とアイレベルマーカ14の高さを合わせた際に、検眼部5が上下方向の移動可能範囲の中間にくるような構成となっている。
【0030】
次に、制御系の構成について説明する。70は装置全体の制御を行う制御部である。制御部70は、表示モニタ8に接続されており、その表示画像を制御する。また、制御部70は、第1撮影光学系60または第2撮影光学系50によって撮像されたアライメント指標像の像位置(もしくは被検眼の位置)に基づいて、被検眼と検眼部5との相対位置を検出する。また、制御部70には、検眼光学系5b、受光素子65、受光素子52、Y駆動部6、XZ駆動部7、モータ24、フォトセンサ28、ジョイスティック4、コントロール部9a、顎受けスイッチ9b、メモリ71、ロック検知部250、位置検知部300(後述する)、マイクロスイッチ305、等が接続されている。
【0031】
マイクロスイッチ305は、基台1に対する移動台3の前後方向の移動により移動台3が所定の位置に移動したことを検知する検知手段の役目を果たし、その検知信号は、モニタ8に表示する前眼部像を第1撮影光学系60によって撮像された前眼部像と第2撮影光学系50によって撮像された前眼部像とで切り換える切換信号として利用される。
【0032】
なお、基台1には、図示無きガイド板が設けられており、移動台3が所定の前後位置に移動されると、マイクロスイッチ305が押し上げられ検知信号が出力されるようになっている。なお、上記のような検知機構としては、フォトセンサを用いても良いし、ポテンショメータ等によって随時検出される検出結果に基づいて位置検知を行うようにしてもよい。
【0033】
なお、被検眼に対して検眼部5をアライメントするためのアライメントモードは、オートアライメントモードと手動アライメントモードとの間でアライメントモードの切換が可能であり、オートアライメントモード(以下、フルオートモードと省略する)に設定された場合、制御部70は、移動台3を固定した状態で被検眼と検眼部5との相対位置を検出し、その検出結果に基づいてY駆動部6及びXZ駆動部7により検眼部5を移動させ被検眼の両眼に対して検眼部5を順次アライメントする。また、手動アライメントモード(以下、マニュアルモードと省略する)に設定された場合、移動台3の移動により検眼部5を被検眼に位置合わせする。すなわち、検者は、表示モニタ8に表示される前眼部像を元に被検眼の位置を特定し、ジョイスティック4の操作により被検眼に対する検眼部5のアライメントを行う。また、コントロール部9aには、フルオートモードとマニュアルモードを手動により切換えるモード切換スイッチが設けられている。
【0034】
なお、本実施形態では、フルオートモードは、ロック機構200によって固定基台1上における所定の位置(例えば、左右中央位置、かつ、最後端位置)で移動台3が固定された状態で動作され、マニュアルモードは、ロック機構200による移動台3の固定が解除された状態で動作される。また、前述のフルオートモードに設定された場合、制御部70は、前述の第2撮像光学系50により被検者の顔を広範囲に撮像し、その撮像信号に基づいて左右眼の位置を特定することにより被検眼の両眼に対する検眼部5の自動アライメントを行う。
【0035】
また、マニュアルモードは、さらに、マニュアルモードとセミマニュアルモードとの間でモード切換が可能であり、マニュアルモード(第1マニュアルモード)に設定された場合、制御部70は、XZ駆動部7による検眼部5の移動を禁止する。この場合、ジョイスティック4の手動操作による移動台3の移動と検眼部5の上下動により検眼部5が被検眼に対して位置合わせされる。また、セミマニュアルモード(第2マニュアルモード)に設定された場合、制御部70は、被検眼と検眼部5との相対位置を検出し、その検出結果に基づいて制御部70によって制限された移動可能範囲内でXZ駆動部7により検眼部5を移動させる。この場合、ジョイスティック4の手動操作による移動台3の移動と検眼部5の上下動の移動に加えて、制限された範囲内でのXZ駆動部7による検眼部5の水平移動により検眼部5が被検眼に対して位置合わせされる。
【0036】
なお、XZ駆動部7による検眼部5の左右方向における移動可能範囲は、フルオートモードに必要な移動範囲に対応するために、ロック機構200によって固定基台1に対して移動台3が所定の位置に固定された状態で、移動台3に対する検眼部5の左右方向への移動により被験者の両眼に対して順次アライメントできるように被験者の瞳孔間距離より広く確保されている。この場合、被検眼の瞳孔間距離に対応した左右方向への移動量に加えて、被検眼に対する検眼部5の自動アライメントの際に左右方向における移動限界位置に達することなくスムーズに検眼部5が移動されるように余分に移動可能範囲を確保することが好ましい。具体的には、瞳孔間距離の大きい被験者に対して自動アライメントがスムーズに行えるように、左右中央位置から左右それぞれに45mm程度の移動可能範囲を確保し、左右全体として90mm程度の移動可能範囲をフルオートモードの移動可能範囲として設定するようなことが考えられる。
【0037】
また、XZ駆動部7による検眼部5の前後方向における移動可能範囲は、フルオートモードに必要な移動範囲に対応するために、ロック機構200によって固定基台1に対して移動台3が所定の位置に固定された状態で、被験者の位置にかかわらず検眼部5の前後方向のアライメントが可能であって、かつ、左右眼の間で測定眼を切り換えるときに被験者の鼻等に検眼部5が接触するのを回避するべく、アライメントに使用される移動領域に対してさらに後方への移動範囲が確保されている。具体的には、被検眼に対するZ方向のアライメントが可能な位置への移動領域を含めて40mm程度の前後移動可能範囲をフルオートモードの移動可能範囲として設定するようなことが考えられる。
【0038】
すなわち、本実施形態の装置構成においては、検眼部5を被検眼に対して水平移動させる移動機構として用いられる摺動機構及びXZ駆動部7は、それぞれ単独の動作によって、被験者の瞳孔間距離に対応して順次アライメントできるようにX方向における移動可能範囲が確保され、被験者の両眼に対して順次作動距離方向のアライメント及び被験者の鼻の回避ができるようにXZ方向における移動可能範囲が確保されている。
【0039】
以下に、移動台3がフルオートモードに対応する位置にあるか否かを検知する位置検知部300について説明する。位置検知部300は、フルオート制御用に設定された基台1上における所定の位置に移動台3があるか否かを検知するために用いられる。
【0040】
図5は位置検知部300の具体的構成について示す図であり、位置検知部300として、基台1上に形成された遮光板301と、移動台3の底面部に設けられ投光部と受光部からなるフォトセンサ302とが用いられる。この場合、移動台3のX方向の移動可能範囲における中央位置近傍に移動台3が置かれ、かつ、移動台3のZ方向の移動可能範囲における所定位置より後方(検者側)に移動台3が置かれたときに、遮光板301とフォトセンサ302がXZ方向における位置関係が一致し、前述の領域から移動台3が外れたときに、遮光板301とフォトセンサ302がXZ方向における位置関係がずれるようになっている。
【0041】
ここで、遮光板301の上にフォトセンサ302が位置されると、投光部から発せられた光が遮光板301に吸収され、受光部に到達しなくなり、フォトセンサ302からの受光信号が出力されなくなるため、制御部70は、これに基づいて移動台3がフルオート制御を行うために設定された所定位置に置かれていることを検知する。一方、フォトセンサ302が遮光板301から外れていると、投光部から発せられた光が基台1上で反射され、受光部に到達し、フォトセンサ302から受光信号が出力されるため、制御部70は、移動台3が所定位置から外れていると検知する。なお、位置検知部300としては、上記構成に限るものではなく、マイクロスイッチを用いたり、ポテンショメータ等によって随時検出される検出結果に基づいて位置検知を行うようにしてもよい。
【0042】
なお、上記のようにフルオート制御に用いる移動台3の位置を設定する場合、ロック機構200により移動台3が固定された状態で、XZ駆動部7の駆動によって被検眼に対する検眼部5のXZ方向のアライメント合わせができること、XZ駆動部7によって移動される検眼部5と被験者との接触の可能性、XZ駆動部7によって移動される検眼部5と顔支持ユニット10との接触の可能性、等を考慮して設定を行う必要がある。
【0043】
したがって、フルオート制御に用いる移動台3の位置としては、固定された移動台3に対してXZ方向に移動する検眼部5が被検眼の両眼に対して順次位置合わせ可能とされる位置であって,検眼部5の前進限度位置において検眼部5が被検眼と接触しないとされる位置に設定されるようなことが考えられる。
【0044】
より具体的には、Z方向における移動台3の所定位置としては、ロック機構200により移動台3が固定されたときに、XZ駆動部7による検眼部5の移動可能範囲内で被検眼に対するZ方向のアライメントが可能であって、XZ駆動部7による検眼部5の移動可能範囲の最前方に移動されたときに検眼部5が被検眼と接触しない位置に設定することが考えられる。例えば、Z方向における移動台3の移動可能範囲における中央位置から最後方までの領域内から設定される。なお、本実施形態では、Z方向における移動台3の移動可能範囲における最後端位置を所定位置としている。
【0045】
以上のような構成を備える装置の動作について説明する。ここで、制御部70は、ロック検知部250からの検知信号に基づいてロック機構200による移動台3の固定を検知すると、フルオートモードにおけるXZ駆動部7による検眼部5の移動を許可し、移動台3を固定した状態でY駆動部6及びXZ駆動部7により検眼部5を移動させ被検眼の両眼に対して検眼部5を順次アライメントし、両眼に対する測定を行う。
【0046】
より具体的には、まず、装置の電源が投入されると、制御部70は、ロック検知部250からの検知信号に基づいて固定基台1に対して移動台3が固定されているか否かを判定すると共に、位置検知部300からの検知信号に基づいて、前述のように設定されたフルオートモードに対応する所定位置に移動台3が配置されているか否かを判定する。すなわち、制御部70は、移動台3が固定基台1上における所定の位置で固定されているか否かを判定する。
【0047】
また、制御部70は、ロック検知部250及び位置検知部300からの検知信号に基づいて、移動台3がロック状態にあるか否か、移動台3がフルオートモードに対応する位置に配置されているか否かを示すメッセージを表示する。
【0048】
ここで、検者がフルオートモードが可能な状態にするには、移動台3がフルオートモードに対応する位置に配置された旨のメッセージが表示されるようにジョイスティック4を用いて移動台3を所定位置まで移動させ、ロック機構200により移動台3を固定すればよい。
【0049】
ここで、移動台3が基台1上における所定位置で固定されたことが検知されると、制御部70は、フルオートモードでのアライメント動作を許可する許可信号を発すると共に、モニタ8の画面上に、フルオートモードが可能である旨のメッセージを表示(報知)する。すなわち、制御部70は、移動台3が固定基台1上における所定の位置で固定されると、フルオートモードにおけるXZ駆動部7による検眼部5の移動を許可し、アライメントモードをフルオートモードに自動的に切り換える。この場合、移動台3の移動がロック機構200によって固定された状態となると、検者がジョイスティック4に対する傾倒操作を行っても、移動台3は水平移動しない。
【0050】
また、制御部70は、固定基台1上における所定の位置で移動台3が固定されたことが検知されると、Y駆動部6及びXZ駆動部7を駆動制御して所定の原点位置に検眼部5を移動させる。なお、所定の原点位置としては、検眼部5のX方向の原点位置は移動可能範囲のほぼ中央位置、Z方向の原点位置は最も検者側の位置とする。
【0051】
なお、上記において、制御部70は、コントロール部9aに設けられたモード切換スイッチが操作され、フルオートモードに切り換える旨の切換信号が入力されたときにモード切換を行い、移動台3が所定の位置で固定されたことがロック検知部250及び位置検知部300によって検知されたときに、フルオートモードにおけるXZ駆動部7による検眼部5の移動を許可するようにしてもよい。
【0052】
上記のようにフルオートモードに設定された状態において、検者は、まず、被験者の顔を顔支持ユニット10に固定させる。そして、検者によって所定のスイッチ操作(測定開始スイッチ4bに対する押圧操作)がなされると、制御部70は、その操作信号に基づいて、顔支持ユニット10に固定された被検眼に対する自動アライメント動作を開始する。まず、二次元撮像素子52によって得られた広範囲の前眼部像(低倍率像)に基づいて被検眼の両眼の位置を検出し、その位置情報に基づいて顎受けの高さ調整及び被検眼に対する上下左右方向のアライメント調整を行う。また、制御部70は、撮像素子52によるモニタ8上に広範囲の前眼部画像を表示する(図6参照)。
【0053】
より具体的には、制御部70は、二次元撮像素子52から得られる撮像画像から濃淡情報を取り出すことにより瞳孔の黒い部分を抽出し、これに基づいて被検眼の両眼の位置を検出する。そして、被検眼の位置情報が検出されると、被検眼のアイレベルマーク14とがほぼ同じ高さになるように、顎受け移動機構30のモータ24を駆動制御することにより顎受け12を移動させる。なお、顎受けの自動高さ調整については、詳しくは、特開2004−174155号公報、特開2006−280612号公報、等を参考にされたい。この場合、検者によって操作される顎受けスイッチ9からの操作信号に基づく顎受け12の高さ調整もありうる。
【0054】
また、制御部70は、被検眼の位置情報に基づいて両眼それぞれの検眼部5に対する偏位量を求め、その情報に基づいて検眼部5を最初の測定眼である右眼(予め設定しておく)にXY移動させる。これにより、検眼部5の測定光軸L1を被検眼の右眼近傍に位置させる。これにより、被験者の右眼は、固視標を視認できるようになり、これを固視する。
【0055】
XY方向におけるラフなアライメントができたら、アライメント検出を二次元撮像素子65による指標検出に切換え、被検眼角膜に投影されたアライメント指標像の検出を行うことにより被検眼に対する検眼部5のアライメント状態を検出する。この時点では、測定部3のZ方向は適正作動距離より離れた方向にずれているので、測定部3を被検眼に対して前進させながらアライメント指標像を検出する。また、制御部70は、撮像素子65による高倍率の前眼部画像をモニタ8上に表示する(図7参照)。
【0056】
ここで、制御部70は、撮像素子65によって撮像された前眼部画像におけるリング投影光学系40によるリング指標Rの中心位置を角膜頂点位置M0としてXY方向における検眼部5のアライメント偏位量を求め、これに基づいてY駆動部6及びXZ駆動部7を駆動制御して検眼部5をXY方向に移動させる。また、作動距離指標投影光学系41による角膜Ec上の無限遠指標Mの間隔がほとんど変化しないのに対して、前述のリング指標Rの所定経線方向の像間隔が変化するという特性を利用して、被検眼に対する検眼部5の作動距離方向のアライメント偏位量を求め(この詳細は特開平6−46999号公報参照)、制御部70は、これに基づいてXZ駆動部7を駆動制御して検眼部5をZ方向に移動させる。このようにして、被検眼に対する検眼部5の各方向におけるアライメント偏位量がそれぞれ所定の許容範囲内に達したら、被検眼に対する検眼部5のアライメント状態を適正と判定し、制御部70は、検査開始のトリガ信号を発して検査光学系5aの動作による被検眼の検査を実行する。
【0057】
右眼の測定が終了すると、先に求めた左右眼の距離情報に基づき、測定光軸L1の近傍に左眼が位置するように検眼部5をXY方向に移動する。その後、右眼のときと同様に、撮像素子65からの撮像信号に基づいてY駆動部6及びXZ駆動部7を駆動制御することにより被検眼に対する精密なアライメントを完了させて測定を自動的に実行する。なお、被検眼の両眼を撮像し、その撮像結果に基づいて自動アライメントを行う制御については、詳しくは、特開平10−216089号公報を参考にされたい。
【0058】
以上のようにして、被検眼の両眼の検査結果が得られたら、制御部70は、その測定結果をモニタ8に表示すると共に、Y駆動部6及びXZ駆動部7を駆動制御して所定の原点位置に検眼部5を復帰させておく。
【0059】
このようにすれば、ロック機構200により移動台3が固定された状態で被検眼に対するフルオートアライメントを行うときに、XZ駆動部7によって広範囲を移動する検眼部5と被験者(又は顔支持ユニット10)との接触を回避しつつ、被検眼の両眼に対するアライメントを適正に行うことが可能となる。
【0060】
次に、マニュアルモードにおける動作について説明する。ここで、制御部70は、ロック検知部250からの検知信号に基づいてロック機構200による移動台3の固定が解除されたことを検知すると、手動アライメントモードにおけるXZ駆動部7による検眼部5の移動を禁止する。
【0061】
より具体的には、位置検知部300及びロック検知部250からの検知信号に基づいて、移動台3が基台1上に固定されていない、もしくはフルオートモードに対応するXZ方向における所定位置から移動台3が外れていると判定された場合、マニュアルモードでのアライメントを許可する許可信号を発すると共に、モニタ8の画面上に、マニュアルモードが可能である旨のメッセージを表示(報知)する。また、制御部70は、移動台3がロック状態にあるか否か、移動台3がフルオートモードに対応する位置に配置されているか否かを示すメッセージを表示する。ここで、ロック機構200によるロック状態が解除されると、検者のジョイスティック4に対する傾倒操作によって固定基台1に対して移動台3が水平移動可能な状態となる。
【0062】
また、制御部70は、ロック機構200による移動台3の固定が解除されたことを検知すると、Y駆動部6及びXZ駆動部7を駆動制御して所定の原点位置に検眼部5を移動させる。なお、所定の原点位置としては、検眼部5のXY方向の原点位置は移動可能範囲のほぼ中央位置が挙げられる。また、Z方向の原点位置は、原点位置に復帰する際に検眼部5と被験者との接触を回避すること、第2マニュアルモードでのXZ駆動部7による検眼部5の後方への移動スペースを考慮して、移動可能範囲における最後端から所定距離前方の位置とすることが挙げられる。例えば、最後端から5mm前方の位置が考えられる。また、Z方向の移動可能範囲のほぼ中央位置とする場合もあり得る。
【0063】
また、検者は、コントロール部9aに設けられた所定のモード選択スイッチにより第1マニュアルモードに設定するか第2マニュアルモードに設定するかを選択できる(パラメータ設定によりいずれかのモードに予め設定されているような構成としてもよい)。なお、上記第1マニュアルモードに設定された場合、制御部70は、XZ駆動部7の駆動を禁止して移動台3に対して検眼部5を固定する。また、上記第2マニュアルモードに設定された場合、制御部70は、XZ駆動部7の駆動範囲を制限し、原点位置を基準とした所定範囲内で限り検眼部5を移動させる。すなわち、XZ駆動部7による検眼部5の移動可能範囲を制限し、原点位置を基準とした所定範囲を超える範囲での検眼部5の移動を禁止する。例えば、精密なアライメントをアライメント検出に基づくY駆動部6及びXZ駆動部7の駆動制御により行うために、Z方向の原点位置から前後方向にそれぞれ5mm程度、X方向の原点位置から左右方向にそれぞれ5mm程度に移動可能とする。
【0064】
上記のようにしてマニュアルモードに設定された場合、検者は、被検者に対して顎受け12に顎を載せるように指示し、顎受け12に被検者の顎を載せてもらう。ここで、移動台3が所定の前後位置に移動されたことがマイクロスイッチ305により検知されると、制御部70は、二次元受光素子52によって得られた撮影画像をモニタ8に表示させる。ここで、図4のように、表示モニタ8に広範囲画像が表示された場合、検者は、表示モニタ8に表示されるアイレベルマーカ14と被検眼の高さがほぼ同じ高さになるように顎受け12の高さを調整する。この場合、制御部70は、検者によって操作される顎受けスイッチ9bからの操作信号に基づいてモータ24を駆動させ顎受け12を上下動させる。この場合、広範囲の前眼部画像に基づいて、アイレベルマーカ14と被検眼の高さがほぼ同じ高さになるように顎受け12の高さを自動的に調整するようにしてもよい。
【0065】
一方、表示モニタ8に広範囲画像が表示されていない場合、必要に応じて、広範囲画像に切り換わるまで再度ジョイスティック4を後方に操作した後、上記のように顎受け12を上下動させ、被検眼のアイレベルの調整を行うことができる。これにより、被検者の顔が顔支持ユニット10によって確実に固定された状態となり、正確な測定や撮影等を行うことが可能となる。なお、上記のようにしてアイレベルの調整が完了したら、検者は、広範囲画像における被検眼とレチクルLTがほぼ一致するように、被検眼に対する検眼部5のXY方向の位置をジョイスティック4及び回転ノブ4aにより調整しておくと、その後アライメント作業が容易となる。
【0066】
その後、検者は、被検眼と検眼部5との作動距離を合わせるために、ジョイスティック4を前方に操作して検眼部5を被検眼に接近させる。これにより、移動台3が前進されて、移動台3が所定の前後位置から外れたことが検知されると、制御部70は、モニタ8に表示される撮影画像を第2撮影光学系50の出力から第1撮影光学系60の出力に切換える。これにより、表示される前眼部像が広範囲画像から拡大された前眼部像に切換えられる。
【0067】
ここで、検者は、図示なき固視標を固視するよう被検者に指示し、ジョイスティック4を用いて被検眼に対するアライメント調整を行う。この場合、モニタ8にボケのない鮮明な被検眼像が現われたら、表示モニタ8に表示されたリング像RとレチクルマークLTが同心円になるように被検眼に対して検眼部5の位置を上下左右方向に微調整する。その後、図示無きインジゲータを参考にしながら(もしくはリング像Rが最も細くなるように)、検眼部5の作動距離方向の位置を微調整する。そして、アライメントが完了して、検者から測定開始スイッチ4bが押されると、検眼光学系5bによる測定が行われる(第1マニュアルモード)。また、第2マニュアルモードの場合、二次元受光素子65によってアライメント指標像が検出されるようになると、制御部70は、二次元受光素子65によって受光されるアライメント指標像の位置から被検眼に対する検眼部5のアライメント状態を検出し、その検出結果に基づいてY駆動部6又はXZ駆動部7を駆動制御する。そして、アライメントが完了したら、制御部70によるアライメント完了信号もしくは測定開始スイッチ4bからのトリガ信号に基づいて測定開始のトリガを発する。
【0068】
なお、上記マニュアルモードにおいて、摺動機構によって移動される移動台3の前後方向の移動に基づいて第2撮像光学系50及び第1撮像光学系60によって得られる撮影画像を選択的にモニタ8に表示させる場合、移動台3が所定の前後位置に移動したことを検知する構成としてマイクロスイッチ305を用いるような構成としたが、前述の位置検知部300からの検知信号を利用するようにしてもよい。なお、上記構成においては、Z方向における最後端位置を所定の前後位置として設定したが、第1撮影光学系60を用いて被検眼と検眼部5との位置合わせを行うのに必要な移動台3の前後方向の範囲を外れた移動台3の位置であれば、これに限るものではない。より具体的には、摺動機構により固定基台1に対して移動台3が約40mm程度前後に移動可能な場合、第1撮影光学系60を用いて位置合わせを行うのに必要な移動台3の前後方向の範囲を被検眼に最も近い最先端位置から30mmまでの範囲とすれば、この範囲より後方を所定の位置として設定するようなことが考えられる。
【0069】
なお、以上の説明においては、フルオートモードにおいて、被検眼に対するアライメント動作を開始する場合、測定開始スイッチ4aからの操作信号をトリガとしたが、被験者の顔が顔支持ユニット10に固定されているか否かを検知する被験者センサを設け、移動台3がフルオートモードに対応する所定の位置で固定されていることが検知された状態で、被験者の顔の固定が検知された場合、被検眼に対するアライメント動作を開始するようなことが考えられる。なお、被験者センサしては、顎受け12の上部にタッチセンサを設けたり、顔支持ユニット10に測距センサ(特開2005−211351号公報参照)を設けるような構成が考えられる。
【0070】
また、以上の説明においては、移動台3がフルオートモードに対応する位置にあるかをモニタ8に表示により確認するものとしたが、これに限るものではない。例えば、基台1又は移動台3にマーキングを施して、検者がマーキングを見ながら移動台3がフルオートモードに対応する位置にあるかを確認できるようにしてもよい。また、移動台3がフルオートモードに対応する位置に置かれたときに、クリック感を得られるような構成としてもよい。
【0071】
また、以上の説明においては、フルオートモードに対応する移動台3の位置について、ある程度幅を持たせるような構成としたが、移動台3を基台1の左右ほぼ中央に位置させた後、手前側(検者側)に引くことによりストッパ機構が作動して移動台3がロックされるような構成(特開平8−280627参照)を用い、ストッパ機構によりロックされた移動台3の位置をフルオートモードに対応する位置に設定するような構成としてもよい。
【0072】
なお、上記フルオートモードに関して、制御部70は、移動台3が所定位置に配置されたことが位置検知部300により検知され、かつ、フルオートモードに設定された場合、所定のトリガ信号に基づいて、Y駆動部6及びXZ駆動部7の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して検眼部5を順次アライメントするようにしてもよい。また、制御部70は、フルオートモードにおけるXZ駆動部7の駆動中において、移動台3が所定位置から外れたことが位置検知部300により検知された場合、XZ駆動部7の駆動を停止するようにしてもよい。
【0073】
なお、上記フルオートモードに関して、制御部70は、移動台3が所定位置に配置されたことが位置検知部300により検知され、かつ、フルオートモードに設定された場合、所定のトリガ信号に基づいて、Y駆動部6及びXZ駆動部7の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して検眼部5を順次アライメントするようにしてもよい。また、制御部70は、フルオートモードにおけるXZ駆動部7の駆動中において、移動台3が所定位置から外れたことが位置検知部300により検知された場合、XZ駆動部7の駆動を停止するようにしてもよい。
【0074】
また、上記フルオートモードにおいて、移動台3の移動によって被検眼の片眼に対する検眼部5のラフなアライメントが完了された状態における移動台3の位置を所定位置として設定するようにしてもよい。この場合、制御部70は、一方の眼に対するラフなアライメントが検者によって行われた後、上記アライメント検出結果に基づいてY駆動部6及びXZ駆動部7の駆動を開始し、一方の眼に対する精密なアライメントを行う。その後、制御部70は、Y駆動部6及びXZ駆動部7の駆動を制御し、他方の眼に対するラフなアライメント及び精密なアライメントを行う。なお、他方の眼に対するラフなアライメントを行う場合、例えば、制御部70は、XZ駆動部7の駆動を制御し、二次元受光素子65によってアライメント指標像が検出されるまで検眼部5を他眼方向に移動させる。また、基台1の左右中心位置に対する移動台3(又は検眼部5)の移動量を検出する検出機構を設け、片眼に対するアライメントが完了されたときに検出機構によって検出された移動量の約2倍分、検眼部5を他眼方向に移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態に係る眼科装置の外観概略図を示している。
【図2】本実施形態に係る眼科装置のロック機構を示す図である。
【図3】本実施形態に係る顎受け移動機構の構成を示す概略断面図である。
【図4】本実施形態に係る検眼部内に設けられた光学系及び制御系の構成を説明する概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る位置検知部の具体的構成について示す図である。
【図6】表示モニタに広範囲の前眼部画像が表示されたときの例である。
【図7】表示モニタに高倍率の前眼部画像が表示されたときの例である。
【符号の説明】
【0076】
1 固定基台
3 移動台
5 検眼部
6 Y駆動部
7 XZ駆動部
8 表示モニタ
9a コントロール部
50 第2撮影光学系
60 第1撮影光学系
70 制御部
200 ロック機構
250 ロック検知部
300 位置検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の検査又は測定を行う検眼部と、
固定基台と、
該検眼部を載置する移動台であって、検者が操作部材を操作することにより固定基台上で水平方向に移動する移動台と、
検眼部に配置され、被検眼の前眼部を撮影する撮影光学系を持ち、被検眼と検眼部との相対位置を検出するアライメント検出手段と、
モータの駆動によって移動台に対して検眼部を上下方向に移動させる上下駆動機構と,モータの駆動によって移動台に対して検眼部を水平方向に移動させる水平駆動機構であって左右方向における移動可能範囲が所定の瞳孔間距離より広く確保された水平駆動機構と,を有し、被検眼に対して検眼部を電動にて移動させる駆動手段と、
移動台の移動によって被検者の左右眼を順次測定するマニュアルモードと,駆動手段の駆動によって被検者の左右眼に対して順次測定するフルオートモードと,を切り換えるモード切換手段と、
アライメント検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段の駆動を制御する制御手段であって、前記モード切換手段によりフルオートモードに設定された場合、前期移動台が前記固定基台上における所定位置に配置された状態での所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して前記検眼部を順次アライメントする制御手段と、を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、
フルオートモードに対応する所定位置に前記移動台が配置されているか否かを検知するための位置検知手段を備え、
制御手段は、前記移動台が所定位置に配置されたことが前記位置検知手段により検知され、かつ、前記モード切換手段によりフルオートモードに設定された場合、所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して前記検眼部を順次アライメントする制御手段と、を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項2の眼科装置において、
前記固定基台に対して前記移動台を固定するために配置された固定手段と、
該固定手段によって前記移動台が固定されたことを検知するための固定検知手段と、を備え、制御手段は、前記移動台が所定位置に固定されたことが前記位置検知手段及び前記固定検知手段により検知され、かつ、前記モード切換手段によりフルオートモードに設定された場合、所定のトリガ信号に基づいて、前記駆動手段の駆動を開始し、被検者の左右眼に対して検眼部を順次アライメントすることを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項3の眼科装置において、
移動台の前記所定位置は、前記移動台に対して水平方向に移動される前記検眼部が被検者の両眼に対して順次アライメント可能な位置であって,検眼部の前進限度位置において検眼部が被検眼と接触しないとされる位置に,設定されていることを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項4の眼科装置において、
モード切換手段は、さらに、マニュアルモードにおいて、検者が前記操作部材を操作することにより被検眼に対する前記検眼部のアライメントを行う第1マニュアルモードと、検者による前記操作部材の操作と,前記駆動手段の駆動とによって被検眼に対する検眼部のアライメントを行う第2マニュアルモードと、を切り換えるためのモード切換信号を出力するモード切換手段であって、
制御手段は、モード切換手段により第2マニュアルモードに設定された場合、検者によってラフなアライメントが行われた後、前記アライメント検出手段に基づいて駆動手段の駆動を制御し、被検者の片眼に対する検眼部の精密なアライメントを行うことを特徴とする眼科装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−201981(P2009−201981A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16371(P2009−16371)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)