説明

眼科装置

【課題】 被検者眼と装置の位置合わせが容易で検査をスムーズに行える眼科装置を提供する。
【解決手段】 前眼部を観察する観察光学系と眼を検査する検査光学系が配置された検査ユニットを眼に対して上下移動させるY駆動手段と、額当てと、上下に移動可能に配置された顎受けと、を備える眼科装置は、検査光学系の光軸と略同じ高さで光軸を挟んだ左右に配置された視標部と、被検者が額当てに額を当てた状態で、眼が視標を視認できる上下範囲を観察光学系との関係で定められた範囲に制限し、左右範囲を所定の眼幅を持つ眼が視標を視認可能にする形状を持つ制限部材と、Y駆動手段を制御して検査ユニットを所定の高さに位置させる制御手段と、被検者が額当てに額を当て、被検者自身が視標を視認できるよう眼の高さ位置に調整した後に、顎受けを被検者の顎位置まで上昇させる顎受け移動手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼と装置とを位置合わせした後、被検者眼の検査(眼の特性の測定、撮影等を含む)を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼屈折力測定装置、非接触式眼圧計及び眼底カメラ等の眼科装置では、被検者の額が額当て部材に当接され、上下移動可能に構成された顎受けにより被検者の顎が固定された後、被検者眼に対して検査光学系が配置された検査ユニットの位置合わせが行われる(例えば、特許文献1、2参照)。検者は、ディスプレイに表示される前眼部の拡大像を観察し、ジョイスティック等の操作により、検査ユニットを左右方向、上下方向及び前後方向に移動し、被検者眼と検査ユニットとの位置合わせを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−276436号公報
【特許文献2】特開2004−174155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被検者の顎から眼の高さ位置は被検者に応じて大きく異なるため、検者は被検者毎に被検者眼の高さを確認し、顎受けの高さを調整する。新たな被検者眼を検査するに当り、被検者眼の高さを確認せずに、顎受けの高さが前の被検者が使用した高さ又は適当な高さのままであると、検者が検査ユニットを上方向又は下方向に移動させた際に検査ユニットが上下移動可能な範囲の限界に達してしまうことがある。この場合には改めて顎受けの高さ調整を行う必要が生じ、検査に手間取る。検査ユニットの上下移動可能な範囲を大きくすると、装置が大型化し、コスト的にも不利となる。
【0005】
また、検者は観察光学系により撮影された前眼部像がディスプレイに表示されるように検査ユニットを移動させるが、被検者眼と検査ユニットとの位置関係を確認していないと、検査ユニットを上方向又は下方向の何れに移動させたら良いか迷い、検査に不慣れな検者では位置合わせに手間取ることが多い。特に、眼科装置が暗室で使用される場合、検者が被検者眼の高さを確認することは容易でない。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、被検者眼と装置との位置合わせを容易に行え、検査をスムーズに行える眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 被検者の前眼部を観察する観察光学系及び眼を検査する検査光学系が配置された検査ユニットを被検者眼に対して上下方向に移動させるY方向駆動手段を含む移動手段と、所定位置に固定された額当て部材と、上下方向に移動可能に配置された顎受けと、を備える眼科装置において、被検者眼に視認させる視標を持つ視標部であって、前記検査ユニットの被検者側で前記検査光学系の光軸と略同じ高さで、且つ検査光軸を挟んだ左右両側の少なくとも一方に配置された視標部と、前記検査ユニットが前後方向の所定位置に置かれ、且つ被検者が前記額当て部材に額を当てた状態にあるときに、被検者眼が前記視標を視認できる上下方向の範囲を前記観察光学系による観察範囲との関係で定められた所定範囲に制限する形状を持つと共に、左右方向の範囲を所定の眼幅範囲を持つ被検者眼が前記視標を視認可能にする形状を持つ制限部材であって、前記視標部に配置された制限部材と、所定の初期化信号の入力に基づいて前記Y方向駆動手段の駆動を制御し、前記検査ユニットを所定の高さに位置させる駆動制御手段と、被検者が額当て部材に額を当て、前記視標部の視標を視認できるように被検者自身が眼の高さ位置を調整した後に、下方に下げられていた前記顎受けを被検者の顎の位置まで上昇させる顎受け移動手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼科装置において、前記制限部材に制限される上下方向の所定範囲は、前記Y方向駆動手段により移動される前記検査ユニットの可動範囲に含まれていることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の眼科装置において、前記顎受け移動手段は、前記顎受けを駆動源により上下方向に移動させる駆動機構と、前記初期化信号の入力に基づいて前記駆動源の駆動を制御して前記顎受けを下方の退避位置に位置させると共に、前記顎受けを移動させるための移動信号の入力に基づいて前記駆動源の駆動を制御して顎受けを上昇させる顎受け制御手段と、を備えることを特徴とする。
(4) (3)の眼科装置は、前記顎受けに配置されたセンサであって、顎受けの上昇により被検者の顎との接触又は近接を検知するセンサを備え、前記顎受け制御手段は、前記顎受けを移動させる信号入力に基づいて前記駆動源の駆動を制御して顎受けを上昇させた後、前記センサの検知信号に基づいて前記顎受けの上昇を停止させることを特徴とする。
(5) (4)の眼科装置において、前記視標部が持つ視標として配置された可視光を発する光源と、前記光源の発光を制御する光源制御手段であって、前記初期化信号の入力に基づいて前記光源を点灯し、前記センサの検知信号に基づくか、前記顎受け移動手段からの移動信号の入力に基づくか、又は眼と前記検査ユニットとのアライメント開始の所定の信号入力に基づくか、何れかの信号入力に基づいて前記光源を消灯する光源制御手段と、を備えることを特徴とする。
(6) (1)又は(2)の眼科装置において、前記視標部が持つ視標として配置された可視光を発する光源と、前記光源の発光を制御する光源制御手段であって、前記初期化信号の入力に基づいて前記光源を点灯し、前記顎受け移動手段からの移動信号の入力又はアライメント開始の所定の信号入力に基づいて前記光源を消灯する光源制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検者眼と装置との位置合わせを容易に行え、検査をスムーズに行える。また、装置の大型化を招くことなく、被検者に応じた顎受けの高さ調整を容易に行える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態にかかる眼科装置100の外観略図であり、図2は眼科装置の移動機構の構成図である。
【0010】
眼科装置100の基台1には、被検者の顔を固定する顔支持ユニット10が設けられている。顔支持ユニット10は基台1に固定された支基11を持ち、支基11に被検者の顎が載せられる顎受け12が上下移動可能に設けられている。また、支基11には、被検者の額を当接する額当て部材14が取り付けられた逆U字状の額当て支柱13が固定されている。額当て支柱13には、被検者眼の高さを合わせる目安となるアイレベルマーク15が記されている。
【0011】
基台1上には、検査ユニット5が搭載された移動台3が、被検者眼に対して前後方向(Z方向)及び左右方向(X方向)に摺動可能に設けられている。移動台3は、ジョイスティック4が傾倒されることにより、基台1上で摺動される。また、移動台3の内部には、検査ユニット5を上下方向(Y方向)に移動させるY駆動部6と、検査ユニット5を左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向)に移動させるXZ駆動部7が搭載されている。Y駆動部6及びXZ駆動部7は、モータ及びスライド機構からなる周知の移動機構により構成されている。Y駆動部6及びXZ駆動部7により、検査ユニット5は被検者眼に対して三次元(XYZ)方向にそれぞれ移動可能にされている。
【0012】
ジョイスティック4には、検査ユニット5を上下方向(Y方向)に移動させる移動信号を入力する回転ノブ4aが設けられている。移動台3の検者側には、検査ユニット5に配置された観察光学系60(図4参照)で撮影された被検者の前眼部像が表示されるディスプレイ8が設けられている。ジョイスティック4の頂部に設けられた測定開始スイッチ4bが押されると、検眼光学系による測定や撮影等を開始するためのトリガ信号が発せられる。移動台3には、顎受け12の上方向への移動を自動的に開始させるためのスイッチ9aと、検者が手動で顎受け12を上下に移動させるためのスイッチ9b(UP/DOWNスイッチ)とが設けられている。
【0013】
なお、本実施形態では、検査ユニット5が搭載された移動台3がXZ方向に摺動される構成としたが、検査ユニット5がXZ駆動部7によってのみ、XZ方向に移動される構成であっても良い。この場合、ジョイスティック4は、X方向及びZ方向に検査ユニット5を移動させる信号を入力する構成とされる。
【0014】
図3は、顎受け12を電動で上下動させる顎受け移動機構20の構成を示す概略断面図である。顎受け移動機構20は、顎受けを上下方向に移動させる駆動源としてのパルスモータ24を備える。支基11には送りネジ21が立設されており、これに螺合する雌ネジを持つ支柱23が支基11にガイドされて上下に移動可能に取り付けられている。支柱23の上に顎受け12が固定されている。送りネジ21の下方にはギヤ22が設けられている。ギヤ22は、パルスモータ24側のギヤに噛み合わされている。また、支柱23には溝25が形成されている。この溝25と回転止め用のビス26により支柱23が回転するのを防止している。モータ24の回転により送りネジ21が回転され、これによって支柱23と共に顎受け12が上下移動される。支柱23の下方には遮光板27が取り付けられており、支基20側には遮光板27を検知するフォトセンサ28が設けられている。フォトセンサ28は、遮光板27を検知することにより、顎受け12が下限に下がったことを検知する。
【0015】
また、顎受け12の上面には、被検者の顎が顎受け12の上面に当接又は近接したことを検知するセンサ29が設けられている。センサ29としては、圧力を感知するタッチセンサが使用され、被検者の顎が接触したことが検知される。また、センサ29としては、1mm程度の距離に対象物が接近したことを検知する近接センサが使用される。近接センサは、受光した反射光の出力の大きさに基づき位置検出を行う光電センサ等の周知のものが利用可能である。
【0016】
図4は、検査ユニット5内に設けられた光学系及び制御系の構成を説明する概略構成図である。検査光軸L1上には、対物レンズ51、ビームスプリッタ52、検査光学系30が配置されている。検査光学系30は、例えば、周知の眼屈折力測定光学系である。眼屈折力測定光学系は、測定光源からの測定光を被検者眼の眼底に投影する投影光学系と、眼底からの反射光を受光素子に受光する受光光学系と、を備え、受光素子により受光された眼底反射光に基づいて被検者眼の屈折力が測定される。眼底カメラの場合、検査光学系30は眼底照明光学系、眼底撮影光学系を備える。なお、検査光学系30は、被検者眼の視軸を安定させる固視標呈示光学系も備える。
【0017】
また、検査ユニット5内には、被検者眼の角膜にリング指標を投影するための近赤外光を発するリング指標投影光学系40と、角膜に無限遠指標を投影することにより被検者眼に対する作動距離方向のアライメント状態を検出するための近赤外光を発する作動距離指標投影光学系41が、光軸L1を中心に左右対称に配置されている。なお、リング投影光学系40は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。
【0018】
被検眼の前眼部を観察する観察光学系60は、検査光学系30の対物レンズ51を共用し、ビームスプリッタ52の反射方向に配置されたリレーレンズ61、全反射ミラー62、絞り63、撮像レンズ64、二次元の撮像素子65を持つ。観察光学系60の観察光軸は、検査光学系30の光軸L1と同軸にされている。図7に示されるように、撮像素子65により被検眼の前眼部が、高倍率で撮像される。また、撮像素子65によって、指標投影光学系40及び41によって被検眼角膜に投影されたアライメント指標像が検出される。撮像素子65により撮像された被検者の前眼部像は、ディスプレイ8に表示される。
【0019】
制御部70には、Y駆動部6、XZ駆動部7、ディスプレイ8、スイッチ9a、スイッチ9b、回転ノブ4a、測定開始スイッチ4b、顎受け移動機構20のモータ24、フォトセンサ28、センサ29、撮像素子65、検査光学系30、後述する誘導視標部52の光源54、各種のスイッチが配置されたスイッチ部72、等が接続されている。制御部70は、各光源、各駆動部及びディスプレイ8の動作を制御する。スイッチ部72には、アライメントモードの選択スイッチ(マニュアルアライメントモードとオートアライメントモードを選択するスイッチ)、検査結果をプリンタから印字出力させるプリントスイッチ、装置の動作をリセットする信号を入力するリセットスイッチ、等が配置されている。
【0020】
図1、2において、検査ユニット5の被検者側には、検査光学系30及び観察光学系60の光軸が通る検査窓51が設けられている。そして、検査窓51の左右には、被検者眼を検査窓51の高さ位置に導くための視標が配置された誘導視標部52が2箇所に設けられている。誘導視標部52は、検査光軸L1とほぼ同じ高さで、検査光軸L1を挟んで左右両側に設けられている。なお、左右両眼を検査対象とする装置では、誘導視標部52は左右両側の少なくとも一方に配置されていても良い。
【0021】
図5、図6は誘導視標部52の構成の説明図である。図5は、一方の誘導視標部52を含む検査ユニット5のA−A断面図(縦方向の断面図)である。図6は、誘導視標部52を含む検査ユニット5のB−B断面図(横方向の断面図)である。誘導視標部52は、被検者眼に視認させる視標として、可視光を発散する光源54と、被検者が光源54(視標)を視認できる範囲を制限する制限部材53と、から構成される。例えば、光源54からは緑色の光が発せれられる。本装置では、光源54は検査ユニット5の被検者眼側の筐体面より奥側に位置するように配置され、制限部材53は光源54が配置された溝を形成するように横長の筒状に形成されている。光源54から発せられた光が進行する上下方向及び左右方向の範囲は、制限部材53の先端側の壁面で制限される。
【0022】
制限部材53により制限される範囲の設定を説明する。図5及び図6は、移動台3がZ方向の最も検者側に位置され、移動台3に対して検査ユニット5が所定の初期位置(例えば、検査ユニット5が最も検者側の位置)に置かれた状態を示した図である。この条件で、被検者が額当て部材14に額を当接したときに、被検者眼と検査ユニット5とのZ方向の距離をWとする。光源54から出射された上下方向の光が制限部材53により角度θ1の範囲で制限されたとき、距離Wで角度θ1の範囲が決定される上下方向の範囲DYに被検者眼が位置すれば、被検者眼は光源54を直接見ることができる。この範囲DYは、好ましくは、観察光学系60の撮像素子65により撮像される上下範囲との関係で設定されている。例えば、検査光軸L1を中心に20mm(±10mm)の範囲であり、観察光学系60の撮像素子65で撮影される範囲に少なくとも眼の一部が入るように設定されている。アライメント開始時に、眼が範囲DYに位置していれば、検査ユニット5が左右方向に移動されたときには、ディスプレイ8には少なくとも前眼部像の上下方向の一部が現れるようになり、検者は被検者眼を確認して検査ユニット5を上下方向の何れに移動すべきかを迷うことなく判断できる。なお、図2に示されるように、検査ユニット5のY方向の可動範囲DAは、範囲DYを含むように設定されている。これにより、検査ユニット5は移動限界に達することなく被検者眼の位置に追従可能にされる。
【0023】
また、図6において、眼に対して距離Wの所定位置に検査ユニット5が位置された状態で、光源54から出射された左右方向の光は角度θ2で制限されるとする。この角度θ2の範囲で、被検者が額当て部材14に額を当接したときに、被検者眼が光源54を直接見ることができる左右方向の範囲をDXとする。左右眼用の範囲DXは、被検者眼の左右の眼幅(瞳孔間距離)PDの個体差を考慮し、上下方向の範囲DYよりも広く設定されている。範囲DXは、少なくとも40〜80mmの範囲の眼幅(瞳孔間距離)PDを持つ被検者が光源54を視標として確認可能に設定されている。
【0024】
なお、誘導視標部52の光源54の代わりに、検査ユニット5の検査窓51等と明確に区別され、誘導視標部52の制限部材53の中に注視する目標のマーク(視標)が形成されていても良い。例えば、緑色の円形のマークとして形成されていても良い。しかし、光を発する光源54が使用されることが好ましい。特に、眼科装置は暗室で使用される場合も多くあり、光を発する光源54であれば、暗室においても被検者は誘導視標部52の視標を容易に視認できる。
【0025】
以上のような構成を備える装置において、被検者眼と検査ユニット5との位置合わせを中心に説明する。始めに、図示を略す電源スイッチ、被検者眼の検査終了を示すプリントスイッチ又はリセットスイッチ等が押されると、これらのスイッチ信号は新たな被検者の検査を行うための初期化信号として入力される。制御部70は、これらの所定の初期化信号が入力されると、Y駆動部6及びXZ駆動部7の駆動を制御し、検査ユニット5を予め設定された基準位置(初期位置)に移動させる。検査ユニット5のX方向の基準位置は、検査光軸L1が左右の中央に置かれる位置に設定され、検査ユニット5のZ方向の基準位置は、最も検者側の後方位置に設定されている。また、検査ユニット5のY方向の基準位置は、検査光軸L1が額当て支柱13のアイレベルマーク15の位置と略同じ高さであり、検査ユニット5の上下方向の可動範囲の中央位置に設定されている。図2において、検査ユニット5は基準位置に置かれており、基台1の上面から距離HSの位置に検査光軸L1が位置している。このとき、検査ユニット5のY方向の可能範囲DAは、誘導視標部52により被検者眼が光源54を直接見ることができる範囲DYより広い範囲に設定されている。
【0026】
また、リセットスイッチ等の初期化信号が入力されると、新たな被検者の検査に備えるために、制御部70によりモータ24が駆動され、顎受け12が最も下方の位置に移動されると共に、誘導視標部52の光源54が点灯される。
【0027】
検査に際して、検者は、被検者の額を額当て部材14に当接させた状態で、2箇所の誘導視標部52が持つ光源54を直接確認できるように、被検者自身で顔を上下に移動させるように促す。なお、検者が付き添わない場合、所定の検査準備のスタートスイッチが押されることにより、音声ガイドが発生されるようにしても良い。
【0028】
被検者が誘導視標部52の光源54を見えるように顔の位置を上下させて合わせると、被検者の眼の位置は、検査ユニット5の検査光軸を中心にして範囲DYの中に位置するようになる。眼科装置が暗室に置かれている場合、緑色光を発する光源54が使用されていれば、誘導視標部52が持つ制限部材53の開口が光源54により照明されるので、被検者は制限部材53の開口の位置を迷うことなく確認することができる。そして、被検者は顔を上下することにより、光源54を視標として見ることができるようになる。
【0029】
検者は、被検者が誘導視標部52の光源54を見えることを確認した後、顎受け12を上昇させるために、スイッチ9aを押す。制御部70はスイッチ9aからの信号を受信すると、顎受け移動機構20のモータ24を駆動させて、最下方に位置していた顎受け12を上方向へと移動させる。顎受け12が被検者の顎に接触又は所定の距離に近接したことがセンサ29により検知されると、制御部70は顎受け12の移動を停止させる。これにより、被検者の顎が固定される。また、制御部70はセンサ29により顎位置が検知されると、誘導視標部52の光源54を消灯させる。検査開始前に、光源54が消灯されることで、特に暗室での測定の場合に、誘導視標52からの光束が測定または観察の妨げとなることが防止される。
【0030】
なお、ここではスイッチ9a及びセンサ29により、顎受け12の移動及び停止が自動で行われる場合について述べているが、検者がスイッチ9bの操作によって顎受け12の高さ位置の調節を手動で行うようにしても良い。また、光源54を消灯させる信号としては、センサ29の検知信号を利用する他、スイッチ9a又はスイッチ9bによる顎受け移動信号又は停止信号を利用しても良い。あるいは、検査ユニット5をY方向に移動させる回転ノブ4aの入力信号をアライメント開始信号とし、これを光源54の消灯信号として利用することもできる。アライメント開始信号には、スイッチ部72に設けられた専用のスイッチ信号を利用する構成も含まれる。
【0031】
顎受け12に被検者の顎が固定された後、例えば、被検者の右眼を検査するために、検者はジョイスティック4を操作して移動台3と共に検査ユニット5を被検者の右眼側に移動させる。検査ユニット5が右眼側に移動されると、検査ユニット5の観察光学系60が持つ撮像素子65により前眼部像が撮像され、ディスプレイ8に前眼部像が現れるようになる。このとき、撮像素子65では高倍率の前眼部像が撮像されるが、被検者眼の高さ方向は、検査光軸L1を中心にして範囲DYに位置されているので、検査ユニット5が上下方向に大きく移動されなくても、図7(a)に示すように、少なくとも前眼部像EMの一部がディスプレイ8に現れるようになる。また、検査ユニット5の上下方向(Y方向)の位置は基準位置に置かれ、被検者眼の高さが誘導視標部52により誘導されているので、検査ユニット5がY方向の移動限界に直ぐに達することなく、検査ユニット5のY方向の移動のみで、被検者眼と検査ユニット5のアライメントを行うことができる。また、検査ユニット5のY方向の移動範囲を大きくしなくて済み、装置の大型化を防止できる。なお、図7(a)において、ディスプレイ8の画面の中央には、レチクルマークLTが電気的に表示されている。
【0032】
検者は、被検者眼の前眼部像EMをディスプレイ8上で確認できれば、さらに検査ユニット5をXYZ方向に移動させ、精密なアライメントを行う。検者は、前眼部像EMの中心がレチクルマークLTに向かうように、ジョイスティック4を操作して検査ユニット5(移動台3)をX方向に移動させると共に、回転ノブ4aを操作して検査ユニット5をY方向に移動させる。前眼部像EMがレチクルマークLTに近づいてくると、図7(b)に示すように、リング指標投影光学系40により角膜に形成されるリング像Rが撮像素子65に撮像され、ディスプレイ8の画面に現れるようになる。
【0033】
アライメントモードスイッチにより、マニュアルアライメントモードが選択されている場合、検者は、リング像Rの中心とレチクルマークLTの中心とが一致するように、ジョイスティック4及び回転ノブ4aの操作により検査ユニット5をXY方向に移動させる。また、リング像Rのピントが合うように、ジョイスティック4の操作により検査ユニット5をZ方向に移動させる。
【0034】
アライメントモードスイッチにより、オートアライメントモードが選択されている場合、撮像素子65で検出されるリング像Rに基づいてXY方向のアライメント状態が検出される。そして、XY方向のアライメント状態の検出結果に基づき、制御部70によりY駆動部6及びXZ駆動部7の駆動が制御され、リング像Rの中心とレチクルLTの中心が所定の許容範囲に入るように、検査ユニット5がXY方向に移動される。また、作動距離指標投影光学系41により形成される指標像Mが撮像素子65により検出されるようになれば、指標像Mとリング像Rとに基づいてZ方向のアライメント状態が検出される。そして、Z方向のアライメント状態の検出結果に基づき、制御部70によりXZ駆動部7の駆動が制御され、Z方向のアライメント状態が所定の許容範囲に入るように、検査ユニット5がZ方向に移動される。これにより、精密なアライメントが完了される。
【0035】
精密なアライメント完了後、スイッチ4bが押されると(又はアライメント完了信号に基づいて自動的に測定開始のトリガ信号が入力されると)、検査光学系30により測定が実行される。
【0036】
右眼の検査終了後、もう片方の眼(左眼)の検査を行うために、検者はジョイスティック4の操作により、移動台3を左眼側の方向へ移動させる。このとき、右眼に対して左眼のY方向の位置が多少変していることもあるが、検査の初期段階で、被検者眼の高さが誘導視標部52により誘導されているので、検査ユニット5がY方向の移動限界に達することなく、検査ユニット5をY方向に移動させてアライメントを行うことができる。顎受け12を再度調整する必要が無いため、検査効率を落とすことなく、スムーズな検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】眼科装置の外観略図である。
【図2】眼科装置の移動機構の構成図である。
【図3】顎受け移動機構の概略断面図である。
【図4】光学系及び制御系の概略構成図である。
【図5】誘導視標部の構成の説明図である。
【図6】誘導視標部の構成の説明図である。
【図7】ディスプレイに表示された前眼部像の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
5 検査ユニット
6 Y駆動部
7 XZ駆動部
12 顎受け
14 額当て部材
20 顎受け移動機構
24 パルスモータ
29 センサ
30 検査光学系
52 誘導視標部
53 制限部材
54 光源
60 観察光学系
70 制御部
100 眼科装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の前眼部を観察する観察光学系及び眼を検査する検査光学系が配置された検査ユニットを被検者眼に対して上下方向に移動させるY方向駆動手段を含む移動手段と、所定位置に固定された額当て部材と、上下方向に移動可能に配置された顎受けと、を備える眼科装置において、
被検者眼に視認させる視標を持つ視標部であって、前記検査ユニットの被検者側で前記検査光学系の光軸と略同じ高さで、且つ検査光軸を挟んだ左右両側の少なくとも一方に配置された視標部と、
前記検査ユニットが前後方向の所定位置に置かれ、且つ被検者が前記額当て部材に額を当てた状態にあるときに、被検者眼が前記視標を視認できる上下方向の範囲を前記観察光学系による観察範囲との関係で定められた所定範囲に制限する形状を持つと共に、左右方向の範囲を所定の眼幅範囲を持つ被検者眼が前記視標を視認可能にする形状を持つ制限部材であって、前記視標部に配置された制限部材と、
所定の初期化信号の入力に基づいて前記Y方向駆動手段の駆動を制御し、前記検査ユニットを所定の高さに位置させる駆動制御手段と、
被検者が額当て部材に額を当て、前記視標部の視標を視認できるように被検者自身が眼の高さ位置を調整した後に、下方に下げられていた前記顎受けを被検者の顎の位置まで上昇させる顎受け移動手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1の眼科装置において、前記制限部材に制限される上下方向の所定範囲は、前記Y方向駆動手段により移動される前記検査ユニットの可動範囲に含まれていることを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼科装置において、前記顎受け移動手段は、前記顎受けを駆動源により上下方向に移動させる駆動機構と、
前記初期化信号の入力に基づいて前記駆動源の駆動を制御して前記顎受けを下方の退避位置に位置させると共に、前記顎受けを移動させるための移動信号の入力に基づいて前記駆動源の駆動を制御して顎受けを上昇させる顎受け制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項3の眼科装置は、前記顎受けに配置されたセンサであって、顎受けの上昇により被検者の顎との接触又は近接を検知するセンサを備え、
前記顎受け制御手段は、前記顎受けを移動させる信号入力に基づいて前記駆動源の駆動を制御して顎受けを上昇させた後、前記センサの検知信号に基づいて前記顎受けの上昇を停止させることを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項4の眼科装置において、
前記視標部が持つ視標として配置された可視光を発する光源と、
前記光源の発光を制御する光源制御手段であって、前記初期化信号の入力に基づいて前記光源を点灯し、前記センサの検知信号に基づくか、前記顎受け移動手段からの移動信号の入力に基づくか、又は眼と前記検査ユニットとのアライメント開始の所定の信号入力に基づくか、何れかの信号入力に基づいて前記光源を消灯する光源制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項1又は2の眼科装置において、
前記視標部が持つ視標として配置された可視光を発する光源と、
前記光源の発光を制御する光源制御手段であって、前記初期化信号の入力に基づいて前記光源を点灯し、前記顎受け移動手段からの移動信号の入力又はアライメント開始の所定の信号入力に基づいて前記光源を消灯する光源制御手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−200905(P2010−200905A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48339(P2009−48339)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)