説明

眼調節機能状態測定装置

【課題】被検者、及び、操作者の双方に掛かる負担を軽減し、より使いやすい眼調節機能状態測定装置を提供する。
【解決手段】測定途中結果表示部65gによる測定途中結果の表示及び乱視成分変化表示部65fによる表示を見ながら、必要に応じて途中停止部65dにより測定を途中停止可能として、無駄な測定を防止する。また、測定条件の変更が容易なように、初期位置修正部65a,終了位置修正部65b,測定時間修正部65cを設けている。さらに、測定の進度を把握でき、被検者をリラックスさせるために音声再生部65eを設ける。さらにまた、データ処理部65h,情報検索部65iを設けることにより、測定結果の管理を容易にし、測定者の負担を軽減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の眼調節機能状態の測定を行う眼調節機能状態測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
検眼及び眼屈折検査において、眼の調節機能状態を把握することが望まれるようになってきており、例えば、特許文献1に記載された眼調節機能状態測定装置のように、他覚的な眼の調節機能測定を行う装置が提案されている。
この眼調節機能状態測定とは、特許文献1によると、従来の眼屈折力測定方法(例えば、特許文献2の方法)と同様の眼屈折力の測定を連続的に行い、複数の屈折力測定値より屈折力の高周波成分の算出処理を行うことで眼調節機能状態を測定するものである。そして、この連続的な測定を20秒間程度を1ステップとして、視標位置を移動しながら複数の位置(例えば、8箇所で8ステップ程度)の測定を行うものである。
【0003】
従来の眼調節機能状態測定では、20秒で1ステップの測定を8ステップ行ったとすると、合計で160秒間測定が行われていた。測定中の被検者はその間視標をじっと見すえる必要があり、測定がこのように長時間になると、通常以上に被検者の緊張が増してしまうという問題があった。
また、160秒間見続けること自体も被検者に苦痛を強いるという問題があった。
さらに、操作者にとっての問題としては、160秒間測定した後に結果が出てくるために、例えば眼が動いてしまったとか、まばたきが多く行われた等で眼調節機能状態算出に必要なデータに不足があったとしても、途中ではわからないため、最後まで測定を続けてしまい、測定ミスがあった場合には、再度最初から測定をやり直さなければならないという問題があった。
さらにまた、測定毎にその結果をファイル保存して蓄積していくと、ファイル数が膨大になり、例えば、眼調節機能状態に異常がある被検者の情報を集めたいとした場合に、必要な測定結果を抽出して再利用することが非常に困難であるという問題があった。そして、以前の測定結果を容易に再利用できないので、被検者に対して最適な条件で測定を開始できず、試行錯誤を繰り返すこととなり、被検者、及び、操作者の双方にとって負担が大きくなる場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−70740号公報
【特許文献2】特開平6−165757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、被検者、及び、操作者の双方に掛かる負担を軽減し、より使いやすい眼調節機能状態測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
第1の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、測定終了時の前記視標の位置を変更する終了位置修正部(65b)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第2の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、前記視標の前記複数位置毎の前記眼調節機能状態測定を行う時間を変更する測定時間修正部(65c)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第3の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、前記眼調節機能状態の測定の進行状態に関わらず測定動作を途中で停止させることができる途中停止部(65d)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第4の発明は、第3の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記途中停止部(65d)は、途中で停止した前記眼調節機能状態の測定を、その停止した状態から再開可能であること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第5の発明は、第3の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記途中停止部(65d)は、途中で停止した前記眼調節機能状態の測定を、その停止した状態で途中終了可能であること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第6の発明は、第5の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記眼調節機能状態の測定を途中終了した後に、再度最初から前記眼調節機能状態の測定をやり直す場合に、やり直しの測定開始時の前記視標の位置を修正可能な初期位置修正部(65a)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第7の発明は、第6の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記視標初期位置修正部(65a)により測定開始時の前記視標の位置を修正したときに、測定終了時の前記視標の位置を前記視標初期位置修正部により修正した前記視標の位置に応じて自動的に、及び/又は、手動により変更する終了位置修正部(65b)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第8の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、測定継続中に音声及び/又は音楽を再生する音声再生部(65e)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第9の発明は、第8の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記音声再生部(65e)は、前記視標(62a)の前記複数位置毎に音声及び/又は音楽を再生すること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第10の発明は、第8又は第9の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記音声再生部(65e)により再生される音声及び/又は音楽は、前記視標(62a)の前記複数位置毎で測定が終了する位置毎測定終了予定時間、又は、前記視標の測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定が終了する全測定終了予定時間に合わせた長さであること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第11の発明は、第8から第10までのいずれかの発明の眼調節機能状態測定装置において、前記音声再生部(65e)により再生される音声及び/又は音楽は、前記視標(62a)の前記複数位置毎の測定の進度、及び/又は、前記視標の測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定の進度が把握可能な内容であること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第12の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、前記視標位置の変化による被験者の乱視成分の変化を表示する乱視成分変化表示部(65f)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第13の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、前記視標位置毎の眼調節機能状態の測定が完了する度に、次の視標位置の眼調節機能状態の測定を続けた状態で、その測定結果を表示する測定途中結果表示部(65g)を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第14の発明は、被検眼(60)に対し視標(62a)を投影する視標投影部(62)と、前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、を備え、前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、眼調節機能状態の測定により得られた測定値の少なくとも一部を含むデータ単位を、予め決められた書式に従い追加保存して1つのデータベースとするデータ処理部(65h)と、前記データ処理部により保存された前記データベースの中から選択した必要な情報を抽出できる情報検索部(65i)と、を備えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
第15の発明は、第14の発明の眼調節機能状態測定装置において、前記データ処理部(65h)は、前記データ処理部により保存されたデータベースに含まれないデータ単位であって、眼調節機能状態の測定により得られた情報の少なくとも一部を含むデータについて、その読み込み、及び/又は、加工を行えること、を特徴とする眼調節機能状態測定装置(51)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)測定終了時の視標の位置を変更する終了位置修正部を備えるので、例えば、より多くの測定データを得たい場合等に、柔軟に対応でき、使い勝手をよくできる。
【0008】
(2)視標の複数位置毎の眼調節機能状態測定を行う時間を変更する測定時間修正部を備えるので、被検者が子供等の場合に、測定時間を短くでき、被検者に対する負担を軽減できる。
【0009】
(3)眼調節機能状態の測定の進行状態に関わらず測定動作を途中で停止させることができる途中停止部を備えるので、測定にミスがある場合等に不必要な測定を継続することなく停止したり、休憩のために停止したりでき、被検者の負担を軽減できる。
【0010】
(4)途中停止部は、途中で停止した眼調節機能状態の測定を、その停止した状態から再開可能であるので、適度に途中停止を行い、瞼を閉じてもらう等することにより、被検者の負担を軽減できる。
【0011】
(5)途中停止部は、途中で停止した眼調節機能状態の測定を、その停止した状態で途中終了可能であるので、無駄な測定を続行して被検者の負担を増大させてしまうことを防止できる。
【0012】
(6)眼調節機能状態の測定を途中終了した後に、再度最初から眼調節機能状態の測定をやり直す場合に、やり直しの測定開始時の視標の位置を修正可能な初期位置修正部を備えるので、途中まで行った測定結果から判断してより最適な初期位置を選択でき、無駄な測定を繰り返してしまうことを防止できる。
【0013】
(7)視標初期位置修正部により測定開始時の視標の位置を修正したときに、測定終了時の視標の位置を視標初期位置修正部により修正した視標の位置に応じて自動的に、及び/又は、手動により変更する終了位置修正部を備えるので、視標の初期位置を変更した場合であっても、変更しない場合と同量の測定データを得られる。
【0014】
(8)測定継続中に音声及び/又は音楽を再生する音声再生部を備えるので、被検者をリラックスさせることができる。
【0015】
(9)音声再生部は、視標の複数位置毎に音声及び/又は音楽を再生するので、測定の進度を把握できる。よって、被検者は、あとどのくらいの時間我慢すればよいのかが分かり、精神的に余裕を持つことができる。
【0016】
(10)音声再生部により再生される音声及び/又は音楽は、視標の複数位置毎で測定が終了する位置毎測定終了予定時間、又は、視標の測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定が終了する全測定終了予定時間に合わせた長さであるので、測定の進度をより的確に把握できる。よって、被検者は、あとどのくらいの時間我慢すればよいのかが分かり、精神的に余裕を持つことができる。
【0017】
(11)音声再生部により再生される音声及び/又は音楽は、視標の複数位置毎の測定の進度、及び/又は、視標の測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定の進度が把握可能な内容であるので、被検者は、あとどのくらいの時間我慢すればよいのかが分かり、精神的に余裕を持つことができる。
【0018】
(12)視標位置の変化による被験者の乱視成分の変化を表示する乱視成分変化表示部を備えるので、眼調節機能状態の変化と乱視成分の変化とを対比できる。
【0019】
(13)視標位置毎の眼調節機能状態の測定が完了する度に、次の視標位置の眼調節機能状態の測定を続けた状態で、その測定結果を表示する測定途中結果表示部を備えるので、正しく測定が行われているか否かを測定中に把握でき、測定を中断する必要があるか否かの判断を行える。したがって、無駄に測定を継続してしまうことを防止でき、被検者への負担を軽減できる。
【0020】
(14)眼調節機能状態の測定により得られた測定値の少なくとも一部を含むデータ単位を、予め決められた書式に従い追加保存して1つのデータベースとするデータ処理部と、データ処理部により保存されたデータベースの中から選択した必要な情報を抽出できる情報検索部とを備えるので、測定データを有効に活用できる。また、データの管理が容易になり、測定者の負担が軽減される。
【0021】
(15)データ処理部は、データ処理部により保存されたデータベースに含まれないデータ単位であって、眼調節機能状態の測定により得られた情報の少なくとも一部を含むデータについて、その読み込み、及び/又は、加工を行えるので、他の場所で測定された被検者のデータを利用できる。したがって、無駄な測定を減らし、被検者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1の眼調節機能状態測定装置51の構成図である。
【図2】チョッパ61aの縞模様を示す図である。
【図3】制御部65により実行される眼調節機能状態測定の動作を示すフローチャートである。
【図4】遠点位置D0測定の動作(S100)を示すフローチャートである。
【図5】眼調節機能状態測定の本測定の動作(S500)を示すフローチャートである。
【図6】図5のS530における所定時間T中の眼屈折力の経時的な変化の監視及び高周波成分の出現頻度算出の動作を示すフローチャートである。
【図7】解析手順(S533)を説明する図である。
【図8】実施例1における眼調節機能状態の測定結果を表示した例を示す図である。
【図9】本発明の実施例2の眼調節機能状態測定装置の構成図である。
【図10】測定装置本体151の測定開始前の準備処理を示すフローチャートである。
【図11】測定装置本体151の測定動作を示すフローチャートである。
【図12】遠点位置D0測定の動作(S1100)を示すフローチャートである。
【図13】測定装置本体151の眼調節機能状態測定の本測定の動作(S1500)を示すフローチャートである。
【図14】データ処理装置200の眼調節機能状態測定の本測定の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
以下、図面に基づいて本発明の実施例1について説明する。
図1は、本発明の実施例1の眼調節機能状態測定装置51の構成図である。本発明で用いる装置は、測定の原理としては検影法を用いている。
眼調節機能状態測定装置51は、屈折測定部61、画像投影部62、ダイクロイックミラー63、制御部65、表示部66、記憶部69等を有している。
【0024】
投影部62には、被検眼60に近い側(近方)から順に、凸レンズ62c、視標62a、光源62bが配置されている。光源62bによって照明された視標62aからの光束は、凸レンズ62cにより平行光束に近い状態に変換されてから被検眼60へ入射するので、被検眼60から見ると、視標62aの位置は、実際の位置よりも遠方にあるように見える。このうち、視標62aと光源62bとは、互いの位置関係を不変にした状態で、共に不図示の視標移動機構及びモータ62dによって被検眼60の光軸方向に移動可能である。
【0025】
図2は、チョッパ61aの縞模様を示す図である。
図1に戻って、屈折測定部61には、スリットが形成されたチョッパ61a、チョッパ61aを回転させるモータ61i、チョッパ61aを照明する光源(赤外光光源)61b、チョッパ61aにより形成される縞模様を被検眼60の眼底に投影するレンズ61d、被検眼60の眼底から戻る光が形成する縞模様の移動速度を検出する受光部61h、レンズ61f、絞り61g等が備えられる。その他、屈折測定部61には、レンズ61c、ハーフミラー61e等が設けられている。
【0026】
ダイクロイックミラー63は、屈折測定部61から出射される測定光(赤外光)と、投影部62から出射される測定光(可視光)とを、それぞれ被検眼60へ導き、また、被検眼60から戻る赤外光については、屈折測定部61へ戻す働きをする。ここで、屈折測定部61においては、チョッパ61aが回転するので、被検眼60の眼底に投影される縞模様は移動する。そして、受光部61h上に形成される縞模様の移動速度は、被検眼60の眼屈折力に応じて変化する。チョッパ61aの縞模様として図2のように2種類の方向の縞71a、71bがチョッパ上に形成されており、チョッパが1周すると、2方向の経線方向が測定され、球面度数、乱視度数、乱視軸等の眼屈折力が算出される。
【0027】
制御部65は、CPU、及び、その動作に使用されるメモリを備えた回路等からなり、受光部61hの出力する信号を参照して、光源62b、61b、モータ62e,61i、及び、表示部66を駆動制御したり演算を行ったりする。制御部65は屈折測定部61を駆動しつつその出力を参照する(光源62bを駆動しつつモータ62dを駆動制御する)ことにより、視標62a(視標62a及び光源62b)の配置、及び、位置の走査を行う。
また、制御部65は、光源61b、モータ61i、及び受光部61hを駆動しつつその受光部61hの出力を参照することにより、前述のごとく被検眼60の眼屈折力を測定する。
さらに、制御部65には、初期位置修正部65a,終了位置修正部65b,測定時間修正部65c,途中停止部65d,音声再生部65e,乱視成分変化表示部65f,測定途中結果表示部65g,データ処理部65h,情報検索部65i等を有している。
【0028】
初期位置修正部65aは、後述の途中停止部65dにより測定を途中停止して始めから再測定を行う場合に、後述の測定途中結果表示部65gが表示した途中までの測定結果から判断して、視標62aの初期位置の修正を行う部分である。この初期位置の修正は、途中結果から自動的に判断してもよいし、測定者が判断して初期位置を手入力することにより修正してもよい。また、以前の測定結果に基づいて修正を行ってもよい。
眼調節機能状態の測定は、予め測定した目の近視度の値を基準として視標62aの位置を遠く(初期位置)に配置する(後述する遠点位置から+0.5Dp(ディオプター)という位置に遠ざける)。しかし、被検眼によっては、どこを基準としてよいか非常に微妙になることがある。本来、目が焦点調節を行わない領域から測定を行いたいのであるが、被検眼によっては、上記初期位置でも焦点調節を行ってしまう場合がある。そのような場合には、初期位置修正部65aにより初期位置を修正して再度測定を行う。
【0029】
終了位置修正部65bは、初期位置修正部65aが修正した視標62aの初期位置に応じて、測定終了時の視標62aの位置を修正する部分である。この視標62aの終了位置修正は、修正された視標62aの初期位置に基づいて自動的に修正してもよいし、測定者が判断して終了位置を手入力することにより修正してもよい。終了位置修正部65bが視標62aの終了位置を修正することにより、視標62aの初期位置を修正しても、修正前と同量の測定データ(実施例1では、8ステップ分)を得ることができる。
【0030】
測定時間修正部65cは、視標62aが特定の位置に配置された状態で、眼調節機能状態測定を行う時間Tを変更する部分である。
実施例1の眼調節機能状態測定装置では、1ステップ20秒を8ステップ(ただし、視標62aの初期位置及び終了位置を変更した場合には、8ステップに限らない)で1通りの測定を終了する。しかし、その間、視標62aを見ていることは、大人でもつらい。まして、子供は耐えられない場合が多い。そこで、実施例1では、測定時間を上述のほか、1ステップ10秒、1ステップ5秒、1ステップ3秒の中から選択可能として、測定時間を変更できるようにした。なお、測定時間を変更しても同等の測定結果が得られるように、実施例1では、測定データに測定時間に応じた係数を掛けている。
【0031】
途中停止部65dは、眼調節機能状態の測定の進行状態に関わらず測定動作を途中で停止させる部分である。実施例1では、後述の測定途中結果表示部65gにより測定中に略リアルタイムで測定結果を表示する。したがって、その途中経過を見れば、そのときの測定が正しく行われているかどうか、測定条件が適切であるか否か等が分かる。そして、そのまま測定を続けることが望ましくない場合には、測定者の操作によって、途中停止部65dは、測定を即時に停止する。
途中停止部65dが測定を途中で停止した場合には、その後の動作としては、途中で停止した眼調節機能状態の測定を、その停止した状態から再開可能するか、又は、その停止した状態で途中終了することができる。
【0032】
音声再生部65eは、測定継続中に音声や音楽を再生する部分である。
この音声再生部65eにより再生する音声・音楽は、視標62aのある位置毎で測定が終了する位置毎測定終了予定時間(時間T)、又は、視標62aの測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定が終了する全測定終了予定時間(時間T×ステップ数(実施例1では、ステップ数=8))に合わせた長さとすることにより、区切りの測定時間毎に音声又は音楽が終了し、測定の進度を把握することができる。
また、この音声再生部65eにより再生する音声・音楽は、視標62aのある位置毎の測定の進度や、視標62aの測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定の進度が把握可能な内容(例えば、あと何秒で測定終了である旨のカウントダウンを行う等)としてもよい。
【0033】
乱視成分変化表示部65fは、視標位置の変化による被験者の乱視成分の変化を表示する部分である。実施例1では、区間毎に乱視成分の測定結果を表示する。
【0034】
測定途中結果表示部65gは、視標位置毎の眼調節機能状態の測定が完了する度に、次の視標位置の眼調節機能状態の測定を続けた状態で、その測定結果を表示する部分である。なお、実施例1では、視標位置毎に決められた測定時間Tをさらに細分した一区間毎に測定結果を表示する。
【0035】
データ処理部65hは、眼調節機能状態の測定により得られた測定値の少なくとも一部を含むデータ単位を、予め決められた書式に従い追加保存して1つのデータベースとする部分である。
情報検索部65iは、データ処理部65hにより保存されたデータベースの中から選択した必要な情報を抽出する部分である。例えば、乱視度、屈折値が特定の数値範囲のものを抽出したり、高周波の出現度数が特定値以上高いものだけ抽出したりできる。このようなデータベースを持つことにより、多数のファイルを検索して探すことなく、効率よく目的のデータを利用でき、また、多数の被検眼の情報を有効に活用できる。
また、データ処理部65hは、このデータ処理部65hにより保存されたデータベースに含まれないデータ単位であって、眼調節機能状態の測定により得られた情報の少なくとも一部を含むデータについて、その読み込み、及び/又は、加工を行うことができる。したがって、同一のフォーマットにしたがって記録されていれば、例えば、他の病院において以前測定された被検眼のデータをデータベースに追加し、利用できる。
【0036】
以下、眼調節機能状態の測定動作について、制御部65による制御を中心として説明する。
図3は、制御部65により実行される眼調節機能状態測定の動作を示すフローチャートである。
制御部65は、不図示の測定開始釦が押されたことを認識すると、ステップ(以下、Sとする)100で、先ず、本測定に入る前の準備測定として、被検眼60の有している固有の特性の1種である、遠点位置D0を測定する。遠点位置とは、被検眼にとって最も遠くが見える視標の位置であり、これを測定するのは、本測定手順の内容を、個々の被検眼60の特性に適応させるためである。この遠点位置の測定は、一般的な眼屈折力測定で行われるものと同じである。S100の動作は、図4によりさらに詳しく説明する。
【0037】
図4は、遠点位置D0測定の動作(S100)を示すフローチャートである。
遠点位置D0の測定では、先ず、S101で、視標62aが所定位置D00に移動されて配置される。この所定位置D00は、被検眼60を基準とした十分に近方の位置、例えば、被検眼60から見て30cmの遠隔位置に相当する位置である(なお、その遠隔位置を、そこに配置された物体を結像するために必要な眼屈折力によって表すと、約3.33Dp(ディオプター)である。以下、被検眼60を基準とした位置を、このように眼屈折力によって表す)。
【0038】
S102では、視標62aの位置が徐々に遠方に走査される。
S103では、そのときの被検眼60の眼屈折力の変化が監視される。なお、この監視のタイミングについては、間欠的でも、連続的でもよい。ここで、被検眼60が視標62aを明視できている(すなわち被検眼60が調節を行っている)ときには、眼屈折力は視標62aの位置の走査に追従する。しかし、被検眼60が視標62aを明視できない(すなわち被検眼60が調節を行わない)ときには、眼屈折力は視標62aの位置の走査に追従しない。
【0039】
この眼屈折力が追従できなくなり始める位置が被検眼60の「遠点」、つまり、被検眼60が明視できる一番遠くの位置である。なお、本明細書では、被検眼60から見て遠点に配置されているように見える視標62aの実際の配置位置を、「遠点位置」と称す。制御部65は、視標62aの移動に眼屈折力が追従している間は、眼屈折力の変化が無くなるまで視標62aの移動を続ける(S102、S103)。視標62aの移動に眼屈折力が追従しなくなり、眼屈折力の変化が無くなった時点でS104へ進む。
S104では、その時点における視標62aの位置を、被検眼60の遠点位置D0とみなし、この遠点位置D0をメモリに記憶する。
【0040】
図3に戻って、眼調節機能状態測定の本測定(S500)を行う前に、S200,S300,S400で、必要に応じてそれぞれ、視標62aの初期位置の修正、終了位置の修正、測定時間Tの修正を行う。
S500では、眼調節機能状態測定の本測定を行う。S500の動作は、図5によりさらに詳しく説明する。
【0041】
図5は、眼調節機能状態測定の本測定の動作(S500)を示すフローチャートである。
S510では、視標62aが遠点位置D0を基準とした初期位置に配置される。すなわち、先ず、視標62aは、その遠点位置D0よりも若干遠方の位置(D0+α’0)に配置される。なお、位置(D0+α’0)は、被検眼60が調節を行っても視標62aを明視できず、しかし、視標62aがボケ過ぎないような位置である。このような位置(D0+α’0)に配置するのは、被検眼60の余計な動きを抑えるためである。したがって、α’0は、0.5Dp程度であることが、通常は好ましい。ただし、被検眼60によっては、この初期位置が不適切な場合もあり、その場合には、先に示したS200で初期位置の修正を行う必要がある。なお、視標62aの置かれた位置、及び、何回目の測定であるかは、表示部66に表示する。これは、測定を8ステップ(8箇所の視標62aの位置)で行うために、測定者や被検者が現在どこの測定を行っているかわかりにくくなるのを避けるためのもので、現在何ステップ目で、残りはどれくらいかを表示するものである。
【0042】
S520では、音楽の再生が開始される。この音楽は、測定時間Tと同じ時間で1曲が終わるものが設定されている。被検者及び測定者は、この音楽を聴くことにより、測定の進度を把握できるとともに、被検者の緊張を和らげることができる。なお、音楽の他に、例えば、何パーセント測定が完了したとか、測定終了まで何秒であるとかを音声で知らせるようにしてもよい。
S530では、視標62aは、同じ位置に所定時間Tだけ連続して配置され、そのときの眼屈折力の経時的な変化を監視し、高周波成分の出現頻度を算出する。S530の動作は、図6によりさらに詳しく説明する。
【0043】
ところで、眼の調節機能状態を示す視標として、所定の高周波数成分の出現頻度が採用される理由は、次のとおりである。一般に、眼は、一定の距離に配置された物体を見ている状態であっても、毛様体筋を微動させている。この毛様体筋の微動は、「調節微動」と呼ばれる。そして、眼の毛様体筋の緊張が高じると、調節微動の特定の高周波数成分が増加し、しかもその緊張が高じるほどその発生頻度が高くなることが報告されている。
【0044】
また、上記した時間T(眼屈折力の経時変化データをサンプリングする期間)は、被検眼60が凝視することに対して毛様体筋に負担の少ない約20秒以下で、T=3秒,5秒,10秒,20秒の中から選択可能としている(S400)。
また、実施例1では、各視標位置α’i(i=0〜n)についての調節機能状態だけでなく、さらに、時間T内での調節機能状態の変移をも調べるために、調節機能状態の解析は、時間T内を複数の区間に細分し、この各区間を解析対象としてそれぞれ行われる。ここで、各区間は、時間T内で1秒ずつずらして設定される。
以下では、T=20秒が選択されたものとし、1区間内の時間を8秒間とする。この場合、1区間8秒の区間が1秒ずつずらして設定されることにより、T=20秒間が13区間に細分されることとなる。また、視標62aの位置は、8箇所(8ステップ)に移動させて測定を行う。
【0045】
図6は、図5のS530における所定時間T中の眼屈折力の経時的な変化の監視及び高周波成分の出現頻度算出の動作を示すフローチャートである。
S531では、眼屈折力の測定を行い、その値を取得する。
S532では、第1区間分の時間が経過したか否かを判断し、第1区間分の時間が経過するまで眼屈折力の測定を継続する(S531,S532)。なお、ここで取得された各眼屈折力の経時変化データは、次の解析手順(S533,534)において使用されるデータとして、それぞれの取得時における視標位置αiに対応付けられてメモリに記憶される。
S533では、第1区間の時間で取得された眼屈折力の経時変化データから、調節機能状態の視標として、所定の高周波数成分の出現頻度が算出される。なお、視標62aを配置する位置を個々の被検眼60の特性(遠点位置D0)に応じたものとするので、個々の被検眼60の調節機能状態を、統一基準の下で測定することができる。
【0046】
図7は、解析手順(S533)を説明する図である。図7(a)は、ある視標位置α’iにおいて取得された眼屈折力の経時変化データを示す図である。図7(a)の横軸は、所定時間T内の経過時間(秒)を示し、縦軸は、眼屈折力(遠点位置D0を基準とする)(Dp)を示している。
【0047】
先ず、眼屈折力の経時変化データには、被検眼60が瞬きをしたときの情報も含まれている。被検眼60が瞬きをしているときに屈折測定部61から出力される信号値は、被検眼60の瞼上における反射光を示すので、被検眼60が瞬きをしているときのデータは、図7(a)中に矢印で示すように、それ以外のデータと比較して大幅に異なる値を示す場合がある。
そこで、制御部65は、眼屈折力の経時変化データ(図7(a))から、眼屈折力が大幅にずれているデータ(矢印部)を除去する。そして、その部分のデータは、それに近接するデータにより補間される。この補間は、例えばスプライン補間(3次のスプライン補間)等である。図7(b)に示すのが、補間後の眼屈折力の経時変化データである。
【0048】
このように、瞬き時のデータが除去されれば、被検眼60の調節機能状態をより精度よく求めることができる。なお、屈折測定部61には、その内部にこの瞬き時のデータを自動的に除去する機能が付加されているものもある。それが付加されている場合、制御部65による除去の処理は不要であることは言うまでもない。
【0049】
次に、この補間後の眼屈折力の経時変化データ(図7(b))のスペクトルパワーが算出される。この算出には、フーリエ変換、例えばFFT(高速フーリエ・コサイン・サイン変換)が適用される。
図7(c)は、時間T内のある区間を変換対象として算出されたスペクトルパワーを示す図である。図7(c)の横軸は周波数、縦軸はスペクトルパワーの対数である。ここで、上記した調節微動は、ある特定の高周波数を有することが分かっている。この周波数は、1〜2.3Hzである。
【0050】
そこで、制御部65は、調節微動の出現頻度として、高周波数成分1〜2.3Hzにおけるスペクトルパワーの積分値(図7(c)グラフの斜線部の面積)を求める。そして、以上のような調節微動の出現頻度の算出は、各視標位置α’i(i=0〜n)の各区間について行われる。
【0051】
S534では、第1区間の乱視度を算出する。
S535では、第1区間の高周波成分の頻度、乱視度を表示する。
S536では、何番目の区間であるかを表す引数K=2とする。
S537では、途中停止を行うか否かの判断を行う。この判断は、測定者が特定の釦を押す等の操作を行うことにより、途中停止部65dにその旨の記録が残っているか否かにより行われる。途中停止を行うときには、S538へ進み、途中停止を行わないときには、S539へ進む。この途中停止を行えるようにしたことにより、測定条件が被検眼60に適していない場合等に無駄な測定を行ってしまうことを防止できる。
【0052】
S538では、途中停止部65dは、測定をそのまま再開するのか、途中終了するのかを選択する。具体的には、表示部66上にその選択を行うように測定者に対して表示し、測定者の指示(操作)に従い、再開するのか、途中終了するのかを選択する。再開することが選択された場合には、S539へ進み、途中終了が選択された場合には、そのまま測定を終了する。
S539では、続く1秒間の眼屈折力を取得する。このステップは、S531,S532と同様な動作であるが、簡略化して示した。
S540〜S542は、S533〜S535と同様にして第K区間の高周波成分の頻度算出、乱視度算出、及び、これらの表示を行う。
S543では、時間Tに達したか否かの判断を行う。時間Tに達していない場合には、S544へ進み、時間Tに達している場合には、S530へリターンする。
S544では、K=K+1として、区間数を1つ進めて測定を継続する。
【0053】
図5に戻って、S550では、視標62aが(D0+α’n)まで移動したか否かの判断を行う。
ところで、調節微動の発生の仕方は、視標62aを見ようとする調節努力によっても異なる。よって、調節機能状態は、互いに異なる視標位置α’1,α’2,・・・についてそれぞれ取得されることが好ましい。そこで、実施例1の本測定手順は、次のような視標位置(ステップ)からなることが好ましい。
先に説明したように、先ず、視標62aは、その遠点位置D0よりも若干遠方の位置(D0+α’0)に配置される。そして、視標62aは、位置(D0+α’0)から1ステップ(例えば0.5Dp)ずつ近方に移動する(α’をマイナス方向にずらす)と共に(S560)、各視標位置(α’1,α’2,・・・)において、それぞれ所定時間Tにおける眼屈折力の経時変化データが取得される(S530)。このステップ移動及びデータ取得は、視標62aの位置が十分に近方の所定の終了位置(D0+α’n)(S550でYES)となるまで繰り返される(α’n=−3Dpを標準とし、終了位置修正部65bにより終了位置(D0+α’n)は修正可能)。
よって、S550において、視標62aが(D0+α’n)まで移動していない場合には、S560へ進み、視標62aが(D0+α’n)まで移動した場合には、S580へ進む。
【0054】
S560では、視標を1ステップ(0.5Dp)移動する。
S570は、音楽の再生を終了し、S520へ戻る。これらのステップに進んだときには、1つのステップでの測定が終了したときであるので、そのタイミングで再生をいったん終了させるのである。なお、実施例1では、時間Tと時間の等しい音楽を選択しているので、このタイミングにあわせて音楽が終了する。なお、S580は、S570と同様に音楽の再生を終了するが、このS580に進んだ場合には、音楽の再生終了後、リターンして測定を終了する。
【0055】
図8は、実施例1における眼調節機能状態の測定結果を表示した例を示す図である。
図8(a)には、左目の眼調節機能状態の変化が示され、図8(b)には、右目の眼調節機能状態の変化が示され、図8(c)には、乱視度(CYL)及び乱視軸(Ax)の変化が示されている。なお、図8は、全ての測定を完了した状態を示しており、途中結果を表示している状態では、進んだステップ又は区間までの結果が表示される。
図8(a),(b)では、高周波数成分の出現頻度を、視標位置α’i(i=0〜n)毎、及び、区間毎に表している。図8では、視標位置は+0.5〜−3.0Dpまでを区間毎に表している。出現頻度別に棒グラフを色分け(図8では、ハッチングにより表現)ることで、被検者の調節状態を見ることになる。例えば、高周波成分頻度が高い場合は濃い色とし、高周波成分頻度が低い場合は薄い色とすれば、被検眼の調節状態を色や色の濃さで見ることが可能になる。
図8(c)では、乱視度を縦軸に示し、乱視軸を色分けして表示し、これらを同時に視覚的に判断できるようにしている。
【0056】
実施例1によれば、制御部65に、初期位置修正部65a,終了位置修正部65b,測定時間修正部65c,途中停止部65d,音声再生部65e,乱視成分変化表示部65f,測定途中結果表示部65g,データ処理部65h,情報検索部65i等を設けたので、被検者、及び、操作者の双方に掛かる負担を軽減し、より使いやすい眼調節機能状態測定装置とできる。
【0057】
(実施例2)
図9は、本発明の実施例2の眼調節機能状態測定装置の構成図である。
実施例2は、測定装置本体151と、データ処理装置200とを組み合わせて眼屈折機能状態測定装置とした例である。なお、前述した実施例1と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
測定装置本体151は、実施例1の眼調節機能状態測定装置51から、記憶部69,音声再生部65e,乱視成分変化表示部65f,測定途中結果表示部65g,データ処理部65h,情報検索部65iに相当する部分を省き、通信部65jを追加したものである。
【0058】
データ処理装置200は、音声再生部265e,乱視成分変化表示部265f,測定途中結果表示部265g,データ処理部265h,情報検索部265iを備え、通信部65jを介して測定装置本体151と通信可能な装置である。
なお、データ処理装置200は、コンピュータと、このコンピュータにインストールさせて実行されるプログラムであって、当該コンピュータを、音声再生部265e,乱視成分変化表示部265f,測定途中結果表示部265g,データ処理部265h,情報検索部265iとして機能させるためのプログラムとにより形成してもよい。
【0059】
実施例2の眼調節機能状態測定装置は、上述のように、実施例1とほぼ同様な構成を備えているが、測定装置本体151とデータ処理装置200とに分けたことにより、動作を実施例1の場合と変えている部分がある。よって、以下に、実施例2の眼調節機能状態測定装置の動作について説明する。
図10は、測定装置本体151の測定開始前の準備処理を示すフローチャートである。
S1010では、指標62aの測定開始位置を設定する。指標62aの測定開始位置は、実施例1と同様に、基本は、遠点位置から+0.5Dpという位置に遠ざけるが、必要に応じて、遠点位置D0+αの位置を初期位置とすることができ、このステップでは、αの値を設定できる。
S1020では、指標62aの測定終了位置を設定する。指標62aの測定終了位置は、基本は、遠点位置−3.0Dpであるが、必要に応じて遠点位置D0−βの位置を測定終了位置とすることができ、このステップでは、βの値を設定できる。
S1030では、1ステップの測定時間Tを設定する。測定時間Tは、実施例1と同様に、T=3秒,5秒,10秒,20秒の中から選択可能である。なお、基本は、10秒である。
S1040では、サンプリング時間を設定する。サンプリング時間は、70ms,90ms,110msの中から選択可能である。なお、基本は、110msである。
【0060】
図11は、測定装置本体151の測定動作を示すフローチャートである。
S1100では、遠点位置D0を測定する。
図12は、遠点位置D0測定の動作(S1100)を示すフローチャートである。
S1110では、眼屈折力を測定する。このとき、指標62aは、光学的に+5Dpの位置にあり、指標62aは、ぼやけて見えている。
S1120では、指標62aを眼屈折力の値の位置に移動する。指標62aが移動することにより、指標62aに被検眼60のピントが合い、指標62aがはっきりと見える。
S1130では、指標を遠点(所定位置D00)に移動する。これは、調節緊張を取り除くためである。
S1140では、眼屈折力を複数回記録する。
S1150では、眼屈折力が安定しているか否かを判断する。眼屈折力が安定している場合には、S1160へ進み、安定していない場合には、S1120へ戻る。
S1160では、眼屈折力が安定したときの眼屈折力を遠点位置D0とする。
【0061】
図11に戻って、S1150では、D0+αの位置に指標62aを移動する。
S1200では、視標62aの初期位置の修正を必要に応じて行う。なお、ここでの初期位置の修正は、遠点位置D0を修正することにより行う。修正が行われた場合には、修正されたD0+αの位置に指標62aを移動する。
S1500では、眼調節機能状態の本測定を行う。
【0062】
図13は、測定装置本体151の眼調節機能状態測定の本測定の動作(S1500)を示すフローチャートである。
S1510では、測定開始をデータ処理装置200へ送信する。
S1520では、1ステップの測定時間として指定されている時間Tの間、眼屈折力を測定する。なお、このステップ中では、途中停止、途中再開、途中終了を行える。
S1530では、1ステップの測定が終了した段階で、そのデータをデータ処理装置200へ送信する。
S1540では、指標62aを−0.5Dp移動する。
S1550では、指定されたステップ数が終了したか否かを判断する。指定されたステップ数が終了している場合には、S1560へ進み、指定されたステップ数が終了していない場合には、S1520へ戻る。
S1560では、測定終了をデータ処理装置200へ送信する。
【0063】
図14は、データ処理装置200の眼調節機能状態測定の本測定の動作を示すフローチャートである。
データ処理装置200は、測定装置本体151から測定開始を受信したら、S2010で不図示の表示画面の初期化を行う。
S2020では、音楽再生が選択されている場合に、音楽の再生を行う。
S2030では、測定装置本体151からデータが送られてくることを待つ。データを受信したら、S2040へ進む。
S2040では、1ステップ分のデータを受信する。なお、データの受信中は、音楽再生を中止する。
【0064】
S2050では、1区間のデータを抽出する。
S2060では、ノイズのカットを行う。例えば、瞬きを行ったときに生じるノイズの除去等である。
S2070では、3次のスプライン補間を行う。データ処理装置に送られてくる1ステップのデータは、時間的に不等間隔のデータである。不等間隔であると、この後のステップで行うFFTを行えない。そこで、3次スプライン補間を行い、時間的に等間隔のデータに変換している。
S2080では、FFTを行い、眼屈折力の経時変化データのスペクトルパワーが算出される。
【0065】
S2090では、調節微動の出現頻度として、高周波数成分1〜2.3Hzにおけるスペクトルパワーの積分値を求める。
S2100では、1ステップ分の区間数の演算が終了したか否かの判断を行う。1ステップ分の区間数の演算が終了している場合には、S2110へ進み、1ステップ分の区間数の演算が終了していない場合には、S2050へ戻る。
S2110では、測定結果をグラフ表示する。
S2120では、測定装置本体151から測定終了を受信したか否かの判断を行う。測定装置本体151から測定終了を受信したら、動作を終了し、測定終了を受信していない場合には、S2030へ戻る。
【0066】
以上説明したように、実施例2では、測定装置本体151とデータ処理装置200とに分けて形成した。したがって、データ処理装置200のみを変更することにより、データ処理の機能を向上させることができる。また、データ処理装置200を、コンピュータと、このコンピュータにインストールさせて実行されるプログラムとにより構成すれば、より簡単に機能の向上、処理速度の向上などを行える。
【0067】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
例えば、各実施例において、測定時間Tは、4種類の中から選択可能とした例を示したが、これに限らず、例えば、測定時間を自由に設定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
51 眼屈折力測定装置
61 測定部
61a チョッパ
61b 赤外光光源
61c,61d レンズ
61e ハーフミラー
61f レンズ
61g 絞り
61h 受光部
61i モータ
62 投影部
62a 視標
62b 可視光光源
62c 凸レンズ
62d モータ
63 ダイクロイックミラー
65 制御部
65a 初期位置修正部
65b 終了位置修正部
65c 測定時間修正部
65d 途中停止部
65e 音声再生部
65f 乱視成分変化表示部
65g 測定途中結果表示部
65h データ処理部
65i 情報検索部
66 表示部
69 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に対し視標を投影する視標投影部と、
前記視標の位置を被検眼の光軸方向に沿って移動させる視標移動機構と、
を備え、
前記視標移動機構により前記視標を複数位置に配置し、前記複数位置における被検眼の高周波成分の屈折力変化である眼調節機能状態を測定する眼調節機能状態測定装置において、
測定継続中に音声及び/又は音楽を再生する音声再生部を備えること、
を特徴とする眼調節機能状態測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼調節機能状態測定装置において、
前記音声再生部は、前記視標の前記複数位置毎に音声及び/又は音楽を再生すること、
を特徴とする眼調節機能状態測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の眼調節機能状態測定装置において、
前記音声再生部により再生される音声及び/又は音楽は、前記視標の前記複数位置毎で測定が終了する位置毎測定終了予定時間、又は、前記視標の測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定が終了する全測定終了予定時間に合わせた長さであること、
を特徴とする眼調節機能状態測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の眼調節機能状態測定装置において、
前記音声再生部により再生される音声及び/又は音楽は、前記視標の前記複数位置毎の測定の進度、及び/又は、前記視標の測定開始位置から測定終了位置までの全ての視標位置での測定の進度が把握可能な内容であること、
を特徴とする眼調節機能状態測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の眼調節機能状態測定装置において、
前記音声再生部により再生される音声は、測定の進度を報知する内容であること、
を特徴とする眼調節機能状態測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−5902(P2012−5902A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225133(P2011−225133)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2011−198029(P2011−198029)の分割
【原出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(500400205)株式会社ライト製作所 (17)