説明

着用品ユニット、生地及び生地ユニット

【課題】 着用者とその周囲に存在する他者とのコミュニケーションをより豊かにすることを可能とする着用品ユニットを提供する。
【解決手段】
Tシャツユニット1は、生地10と、生地10に付設され、ユーザの生体情報を検出するセンサ30と、検出した生体情報に基づいて、ユーザの状態を示す情報を生地10の表に表示する表示部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の状態を表示する着用品ユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服は、肌が直接外気にさらされて身体が冷えることを防止したり、着衣者の社会的な属性を示すことを目的として着られるものである。
係る衣服においては、個人の嗜好の多様化に伴って、斬新な機能を付加することが求められている。
【特許文献1】特開2002‐180310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで一般に、感情などの自己の身体に関する状態を周囲の人に伝えること、また、周囲の人に理解してもらうことは難しい。
とりわけ、例えば周囲の人と言葉が通じにくい異国に滞在するような場合、また、何らかの原因で発声が困難である人々においては、上記した問題が顕著である。
本発明はこのような背景においてなされたものであり、周囲に存在する他者とのコミュニケーションをより豊かにすることを可能とする着用品ユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る着用品ユニットは、着用品と、前記着用品を着ている着用者の生体情報を検出する検出部と、検出された生体情報に基づいて、前記着用者の状態を示す情報を前記着用品に表示する表示部とを備えることを特徴とする。
また、前記表示部は、着用者の感情状態を示す情報を表示することを特徴とする。
また、前記表示部は、着用者の健康状態を示す情報を表示することを特徴とする。
【0005】
さらに、前記生体情報は、心拍、発汗、体温、呼吸、血圧、脈、皮膚抵抗のうちの少なくとも一つを含む情報であることを特徴とする。
本発明に係る生地は、所定の情報を表示する発光素子用の配線として用いられる導電性の糸が織り込まれていることを特徴とする。
本発明に係る生地ユニットは、縦糸と横糸とが織られている生地と、前記生地の表側に配置された複数の発光素子とを備えた生地ユニットであって、前記縦糸及び横糸のそれぞれ少なくとも一部は導電性を有しており、前記発光素子は、前記縦糸及び前記横糸の導電性を有する部分にそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る着用品ユニットによれば、着用品に、着用者の状態を示す情報を表示するので、着用者は自己の状態を周囲の他者に示すことが可能となり、周囲の他者は着用者の状態を理解することが可能となる。したがって、着用者とその周囲に存在する他者とのコミュニケーションをより豊かにすることができる。
本発明に係る生地によれば、発光素子用の配線が織り込まれているので、生地に直接発光素子を接続して表に所定の情報を表示することが可能となる。
【0007】
また、本発明に係る生地ユニットによれば、容易にマトリックス型表示を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら、着用品ユニットの一例としてTシャツユニットに本発明を適用した場合の実施の形態について説明する。なお、このTシャツユニットを着衣する着衣者(ユーザ)は、職場において普段から当該Tシャツユニットを着ているものとする。
図1は、本実施の形態に係るTシャツユニット1の外観を示す図であり、同図の(a)はTシャツユニットの表側を示し、(b)はTシャツユニットを裏側(裏返した状態)を示している。
【0009】
Tシャツユニット1は、Tシャツの生地10、表示部20、心拍数センサ30、表示制御部40を備えている。
生地10の表側には、各種模様や文字などを表示する表示部20が備えられている。この表示部20は、後述するようにマトリックス状に配列された多数のLEDから構成されている。
【0010】
Tシャツの生地10には、心拍数センサ30が付設されている。具体的に、心拍数センサは直ちに測定開始できるように、生地10の、着衣時にユーザの脇の下に接するような位置に貼着されている。
生地10の裏側の下部には、内ポケット12が縫着されており、この内ポケット12内にはリチウムイオンバッテリー14が収納されている。このリチウムイオンバッテリー14は、図示しない配線を介して、表示制御部40等に電力を供給する。
【0011】
表示制御部40は、マイクロコンピュータ(microcomputer)42と、このマイクロコンピュータ42にそれぞれ接続された生地10の裏側の上下方向に延在する行データバス44と、左右方向に延在する列データバス46とを備えており、心拍数センサ30が検出した心拍数に基づいて上記表示部20に所定の表示を行なわせる。
図2は、Tシャツユニット1の回路構成を示す図である。
【0012】
図2に示すように、マイクロコンピュータ42は心拍数センサ30と接続されており、当該心拍数センサ30からセンサデータの入力を受け付ける。
マイクロコンピュータ42には、行データバス44と列データバス46とが接続されている。
この行データバス44と列データバス46は、例えば120×192個のマトリックス状に配列されたLED24の各々と接続されている。このLED24はそれぞれ赤、青、緑の3色のいずれか発光するものとする。
【0013】
図3は、マイクロコンピュータ42の機能ブロック図である。
マイクロコンピュータ42は、センサデータI/F(interface)部422、演算処理部423、表示I/F部424、記憶部426、計時部428を備えている。
センサデータI/F部422は、心拍数センサ30からセンサデータを受け付ける。
記憶部426は、表示制御プログラムと受け付けたセンサデータの履歴等を記憶する。
【0014】
計時部428は、時間の経過を計測する。
演算処理部423は、上記表示制御プログラムに、受け付けたセンサデータのパラメータを用いて演算処理を実行し、表示に関する所定の命令を表示I/F部424を介して表示部20へ送出する。
図4は、マイクロコンピュータ42が実行するセンサデータ処理を示すフローチャートである。
【0015】
センサデータ処理では、デフォルトの状態においては表示部20に青色の魚を表示させる(S101)。
心拍数センサ30から受け付けたセンサデータである心拍数が150(拍/分)以上なると(S101:Yes)、表示している青色の魚22の色を変えて、赤色の魚22を表示する(S103)。
【0016】
その後、3分経過すると(S104:Yes)、ステップS101に戻って、再び青色の魚22を表示させることとなる。なお、上記センサデータ処理は一例であり、検出したデータをどのように扱うかは記憶部426に格納された表示制御プログラムにより決定されるので、当該プログラムを改変することにより、所望の方式に変更することが可能である。
【0017】
以上説明したように、Tシャツユニット1は、心拍数センサ30が検出した心拍数が150(拍/分)以上となった場合に、表示部20に表示している魚22の色を青色から赤色に変化させるので、ユーザの周囲にいる職場の同僚等は、普段は青色の魚が赤色に変化しているのを見て、ユーザが興奮状態や怒りの状態にあることを推し量ることが可能となる。
【0018】
ユーザにとっては、自己の感情状態を周囲の同僚にほのめかすことができ、ユーザと周囲の同僚との間のコミュニケーションをより豊かにすることが可能となる。
(生地10と表示部20について)
図5は、生地10の表を拡大した模式図である。
生地10は、縦糸110と横糸120とが一本おきに浮き沈みして織り込まれた平織り状の形状をしている。
【0019】
縦糸110は、導電性縦糸112と非導電性縦糸114とから構成されている。非導電性縦糸114としては、例えば綿糸を用いることができ、導電性縦糸112としては、例えば銀メッキ糸を用いることができる。なお、感電防止の観点から上記銀メッキ糸には、絶縁被覆を施すことが好ましい。
横糸120も同様に、導電性横糸122と非導電性横糸124とから構成されている。
【0020】
図6は、図5の紙面に垂直かつ横糸120に平行な方向における断面図であり、生地10にLED24が取り付けられている様子を示している。
生地ユニット50は、生地10と、この生地10の表側に配置されたLED24とを備えている。
LED24の一方のリード線26aは導電性縦糸112と接続され、他方のリード線26bは導電性横糸122と接続されている。LED24に順方向の電流が流れるように、導電性縦糸112と導電性横糸122の電位を設定すれば、当該LED24を発光させることが可能となっている。
【0021】
従来、一般に広告や自己表現を目的として、所定の情報を表示するための発光素子を身にまとうためには、通常の衣服とは別に、発光素子専用の服を着る必要があった。このように、発光素子用の服を別に重ね着することは面倒であるし、重ね着することでファッションの拡張性が乏しくなるという問題があった。
図5、図6に示すように、本実施の形態に係る生地10には、LED24用の配線として導電性の糸112,122が織られているので、当該生地に直接LED24を接続することが可能となる。このような生地10は、所定の情報を表示する発光素子を備えた衣服の素材として用いることができる。
【0022】
また、導電性縦糸112と導電性横糸122との各交差点の表面付近にLED24を配置して、当該LED24を上記導電性縦糸112と導電性横糸122とに接続すれば、容易に生地ユニット50の表面にマトリックス型表示を構築することが可能となる。
(変形例)
本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、上述の実施の形態に限定されないのは勿論である。
【0023】
(1) 生体情報について
上述の実施の形態においては、Tシャツユニット1は、ユーザの心拍数を検出する構成として説明したが、ユーザの生体情報であればこれに限られず、心拍、発汗、体温、呼吸、血圧、脈、皮膚抵抗、体臭等などを検出するようにしても構わない。
また、表示部20に表示させる情報は、ユーザの感情状態を示す情報に限られず、ユーザの健康状態を指標する情報を表示させてもよい。例えば、ユーザの血圧値を検出して、血圧の数値を表示させるようにしても構わない。このようにすれば、ユーザの健康状態を心配している家族等に安心感を与えることができる。また、万一、ユーザの状態が急変した場合には、周囲の人は上記表示を参照してよりユーザにとって適切な行動をとることができよう。
【0024】
なお、複数の生体情報を検出し、検出した複数の生体情報を組み合わせて表示部20の表示に反映させるようにしてもよい。
(2) 表示について
実施の形態においては、生地10の表の矩形領域(表示部20)内の表示のみを変更させる構成であったが、Tシャツユニット1の生地10全体の模様・色を変更させるようにしても構わない。
【0025】
また、実施の形態においては、ユーザの状態を示す情報の表示として、表示部20内の魚22の色を変更するようにしているが、これに限られず、表示部20内に表示した文字を変更するようにしても構わない。
図7は、係る変形例を示す図である。
図7(a)においては、表示部20内に「普通です」とあり、図7(b)においては「不安です」とあるように、着用者の状態が文字情報として表示されている。このように着用者の状態を文字として表示すれば、より直接的に着用者の周囲に自己の状態を訴えかける(アピールする)ことが可能となる。
【0026】
(3) 着用品について
実施の形態においては、着用品ユニットの一例として、Tシャツユニット1を用いて説明しているが、これに限られず他の着用品にも本発明を適用することができる。
図8は、係る変形例を示す図である。
図8に示すように、ネクタイユニット2は、台形状をした表示部21を有しており、この表示部21内には魚22が表示されている。一般にネクタイは、自己の感情を率直に表現し難いフォーマルな場所・環境の下で着用されることが多いため、特に本発明を適用することが好適である。ネクタイの他にも、帽子、ズボン、パンツ、おむつなどの着用品にも適用することができる。
【0027】
また、犬などの動物の着用品にも適用することができる。
図9は、係るの変形例を示す図である。
図9に示すように、着用品ユニット3は、犬Dの生体情報を検出するセンサ31と、検出された生体情報に基づいた表示を行う表示部25を備えている。犬Dは、図示しない飼い主に飼われているものとする。
【0028】
一般に、犬は言語を使用できないので、自己の感情などの状態を周囲の人間に伝えることが特に困難である。
着用品ユニット3によれば、犬Dは、自己の状態を飼い主等の周囲の人間に示すことが可能となり、また飼い主は犬Dの状態を推し量ることが可能となる。したがって、犬Dと飼い主との間のコミュニケーションを豊かにすることができる。
【0029】
(4)なお、本発明に係るTシャツユニット1は、次のような効果をも得ることができよう。
すなわち、近年の情報技術の進展により、遠方の他者と意思疎通を図ることが従来より格段に容易となっているものの、その反面で、地域社会、電車内等の公共の場所、及び会社のオフィスなど空間的に近隣に存在する個人の間の関係が疎遠となっており、近隣の人々の間の共生感が急速に失われつつあるのが現状である。
【0030】
本発明に係るTシャツユニット1によれば、空間的に近隣に存在する人々におけるコミュニケーションをより豊かにすることが可能となるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る着用品ユニットは、着用者の状態を周囲の他者に伝えることができるので、その利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態に係るTシャツユニット1の外観を示す図であり、同図の(a)はTシャツユニットの表側を示し、(b)はTシャツユニットを裏返した状態を示している。
【図2】Tシャツユニットの回路構成を示す図である。
【図3】マイクロコンピュータ42の機能ブロック図である。
【図4】マイクロコンピュータが実行するセンサデータ処理を示すフローチャートである。
【図5】生地10の表を拡大した模式図である。
【図6】図5の紙面に垂直かつ横糸120に平行な方向における断面図であり、生地10にLED24が取り付けられる様子を示す図である。
【図7】変形例を示す図である。
【図8】変形例を示す図である。
【図9】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 Tシャツユニット
2 ネクタイユニット
10 生地
12 内ポケット
14 リチウムイオンバッテリー
20,21 表示部
22 魚
24 LED
26a,26b リード線
30 心拍数センサ
31 センサ
40 表示制御部
42 マイクロコンピュータ
44 行データバス
46 列データバス
50 生地ユニット
110 縦糸
112 導電性縦糸
114 非導電性縦糸
120 横糸
122 導電性横糸
124 非導電性横糸
422 センサデータI/F部
423 演算処理部
424 表示I/F部
426 記憶部
428 計時部
44 行データバス
46 列データバス
D 犬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用品と、
前記着用品を着ている着用者の生体情報を検出する検出部と、
検出された生体情報に基づいて、前記着用者の状態を示す情報を前記着用品に表示する表示部と
を備えることを特徴とする着用品ユニット。
【請求項2】
前記表示部は、着用者の感情状態を示す情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の着用品ユニット。
【請求項3】
前記表示部は、着用者の健康状態を示す情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の着用品ユニット。
【請求項4】
前記生体情報は、心拍、発汗、体温、呼吸、血圧、脈、皮膚抵抗のうちの少なくとも一つを含む情報であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の着用品ユニット。
【請求項5】
所定の情報を表示する発光素子用の配線として用いられる導電性の糸が織り込まれていることを特徴とする生地。
【請求項6】
縦糸と横糸とが織られている生地と、前記生地の表側に配置された複数の発光素子とを備えた生地ユニットであって、
前記縦糸及び横糸のそれぞれ少なくとも一部は導電性を有しており、
前記発光素子は、前記縦糸及び前記横糸の導電性を有する部分にそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする生地ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−188772(P2006−188772A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381667(P2004−381667)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「人間情報コミュニケーションの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】