説明

着用物品

【課題】係合部材によって前後身頃を互いに係合した際に、粘着剤によって肌トラブルが発生するのを抑制することができる着用物品を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる着用物品は、横方向に折り畳まれたサイドシートが、シャーシの非肌当接面とサイドシートの非肌当接面との間で粘着剤によってシャーシに固定されているか、またはシャーシの肌当接面とサイドシートの非肌当接面との間で分離した場合にサイドシートと共にシャーシから分離する粘着剤によってシャーシに固定されているので、粘着剤が肌当接面に残ることはなく、粘着剤の影響による着用者の肌トラブルを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用物品に関し、より具体的には、使い捨てのおむつ、排泄トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるオープンタイプの使い捨ておむつ、すなわち、前後身頃のいずれか一方を前後身頃の他方に係合することにより着用するタイプのおむつが、広く使用されている。このような使い捨ておむつとしては、例えば、後身頃の両側にフラップ状の部材を備え、この部材に設けられた係合手段によって前身頃に係合可能であるものが周知である。
【0003】
上記のような構成により、前後身頃を安定的に係合することが可能になるが、同時に、このようなフラップ状の部材は、使用に至るまでの間に邪魔になることがある。具体的には、例えば、製品が完成してから出荷までの間にまとめてパッケージに包装する際、形状が安定せず、生産が安定しないことが考えられる。また、使用者にとっても、パッケージから出して置いておいた場合や、パッケージの中身が少なくなってきた場合に、製品どうしが交絡する可能性がある。さらに、着用の際にも、介護者が製品を着用者の身体の下に広げる場合に上手く広がらなかったりするおそれがある。
【0004】
特許文献1(特許第4024782号)は、このような問題を解決するために、メカニカルファスナのフック部材を有するファスニングテープを折り畳んで仮止めしたおむつを開示している。このおむつでは、ファスニングテープを、フック部材を内側にして2度以上折り返し、粘着剤によってシャーシの内面上に仮止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4024782号明細書(JP 4024782 B2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなおむつを着用する際には、ファスニングテープの仮止めを分離して使用する。仮止めを分離した場合、通常、仮止めに使用された粘着剤の間で分離が起こり、仮止めされていた両部分、すなわちこの場合ファスニングテープとシャーシの内面とに、それぞれ粘着剤が付着した状態となる。シャーシの内面に残った粘着剤は、着用者の身体に接触する可能性があり、かぶれ等の肌トラブルを引き起こしかねない。
【0007】
この発明では、係合部材によって前後身頃を互いに係合した際に、粘着剤によって肌トラブルが発生するのを抑制することができる着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、縦方向および横方向と、肌当接面および非肌当接面とを有し、
前ウエスト域および後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域、前記前ウエスト域および前記後ウエスト域の他方である第2ウエスト域、ならびに前記第1ウエスト域と前記第2ウエスト域との間に前記縦方向に延びる股下域を備えるシャーシと、前記第1ウエスト域と前記第2ウエスト域とを係合可能な係合手段を備えた一対のサイドシートとを含み、
前記一対のサイドシートのそれぞれは、前記第2ウエスト域における前記縦方向に延びる側縁から前記横方向の外側に延出していて、
前記係合手段は、前記サイドシートの前記肌当接面に備えられ、前記第1ウエスト域の前記非肌当接面と係合可能である、着用物品の改良に関わる。
【0009】
本発明の第1の局面における前記着用物品は、前記サイドシートが、前記第2ウエスト域における前記側縁から前記横方向に離れた前記係合手段を有する遠位域と、前記第2ウエスト域における前記側縁と前記遠位域との間に位置する近位域とを有し、前記横方向に折り畳まれ、前記シャーシの前記非肌当接面と前記サイドシートの前記非肌当接面との間に存在する粘着剤によって前記シャーシに分離可能に固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の局面における前記着用物品の好ましい実施態様のひとつにおいて、前記サイドシートは、前記遠位域および前記近位域においてそれぞれ前記縦方向に延びる2本の折曲線によって前記非肌当接面側に2回折り畳まれている。
【0011】
本発明の第2の局面における前記着用物品は、前記サイドシートが、前記第2ウエスト域における前記側縁から前記横方向に離れた前記係合手段を有する遠位域と、前記第2ウエスト域における前記側縁と前記遠位域との間に位置する近位域とを有し、前記横方向に折り畳まれ、前記シャーシの前記肌当接面と前記サイドシートの前記非肌当接面との間に存在する粘着剤によって前記シャーシに分離可能に固定されていて、分離した場合、前記粘着剤は前記サイドシートと共に前記シャーシから分離することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の局面における前記着用物品の好ましい実施態様のひとつにおいて、前記サイドシートは、前記遠位域および前記近位域においてそれぞれ前記縦方向に延びる2本の折曲線によって前記肌当接面側に2回折り畳まれている。
【0013】
本発明の第2の局面における前記着用物品の別の好ましい実施態様のひとつにおいて、前記サイドシートは、前記遠位域および前記近位域においてそれぞれ前記縦方向に延びる2本の折曲線およびその間に前記縦方向に延びる1本の折曲線によって前記肌当接面側に3回折り畳まれている。
【0014】
好ましい実施態様のひとつにおいて、前記シャーシは、前記第1ウエスト域、前記股下域および前記第2ウエスト域に亘って前記縦方向に延びる一対の防漏カフをさらに備え、前記粘着剤は、前記サイドシートと前記防漏カフとの間に存在する。
【0015】
また別の好ましい実施態様において、前記サイドシートと前記シャーシとの間の分離可能な固定の強さは、引張試験機100mm/分の条件下で6N/25mm以下である。
【0016】
また別の好ましい実施態様において、前記サイドシートと前記シャーシとの間の分離可能な固定の強さは、引張試験機100mm/分の条件下で1.5N/25mm以下である。
【0017】
また別の好ましい実施態様において、前記粘着剤は、ホットメルト接着剤であり、前記シャーシの肌当接面を構成するシート自体の内部に浸透していない。
【0018】
また別の好ましい実施態様において、前記係合手段は、前記サイドシートによって被覆されている。
【0019】
また別の好ましい実施態様において、前記係合手段は、メカニカルファスナのフック部材である。
【0020】
また別の好ましい実施態様において、前記粘着剤は、前記縦方向に連続的して存在する。
【0021】
また別の好ましい実施態様において、前記遠位域は、前記近位域より高い剛性を有する。
【0022】
また別の好ましい実施態様において、前記シャーシの少なくとも前記肌当接面と前記サイドシートの少なくとも前記非肌当接面とは、熱可塑性合成繊維の不織布から形成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の局面において、横方向に折り畳まれたサイドシートが、シャーシの非肌当接面とサイドシートの非肌当接面との間で粘着剤によってシャーシに固定されているので、粘着剤は肌当接面に残ることはなく、粘着剤の影響による着用者の肌トラブルを抑制することができる。
【0024】
また、本発明の第2の局面において、横方向に折り畳まれたサイドシートが、シャーシの肌当接面とサイドシートの非肌当接面との間で粘着剤によってシャーシに固定されていて、分離した場合に粘着剤はサイドシートと共にシャーシから分離するので、やはり粘着剤は肌当接面に残ることはなく、粘着剤の影響による着用者の肌トラブルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の着用物品の一実施形態にかかるおむつの斜視図。
【図2】展開した状態の図1のおむつを肌当接面から見た図。
【図3】本発明の第1の局面において分離可能に固定された図1のおむつを非肌当接面から見た部分図(第1実施形態)。
【図4】図3のおむつのIV−IV線矢視図。
【図5】図3で示す分離可能な固定の手順のひとつを示す説明図。
【図6】本発明の第2の局面における1つの実施形態において分離可能に固定された図3と同様の図であって肌当接面から見た部分図(第2実施形態)。
【図7】図6のおむつのVII−VII線矢視図。
【図8】図6で示す分離可能な固定の手順のひとつを示す説明図。
【図9】本発明の第2の局面における別の実施形態において分離可能に固定された図3と同様の図であって肌当接面から見た部分図(第3実施形態)。
【図10】図9のおむつのX−X線矢視図。
【図11】図9で示す分離可能な固定の別の手順を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
着用物品として使い捨ておむつを用い、この発明の一例を説明する。
【0027】
図1および2は、本発明の実施形態のひとつである大人用のおむつを示す図である。図2では、説明のために、各弾性部材を伸長した状態で示している。図示したように、おむつ10は、サイドシート50とシャーシ20とを含む。おむつ10は、肌当接面および非肌当接面を有し、縦方向Yに連なる前ウエスト域11、後ウエスト域12、これら前後ウエスト域11,12の間に位置する股下域13を備える。ここで、肌当接面とは、図2の状態に展開したおむつ10における上面を示し、非肌当接面とは、その反対面を示す。従って、図1からも明らかなように、実際におむつを着用した際、サイドシート50の肌当接面の少なくとも一部は、着用者の肌と直接接触しない。
【0028】
シャーシ20は、肌当接面に位置する内面シート21と、非肌当接面に位置する外面シート22と、これら内外面シート21,22の間に位置する吸液構造体40と、吸液構造体40の縦方向Yに延びる一対の吸液構造体側縁に沿って配置された、すなわち、前ウエスト域、股下域および後ウエスト域に亘って縦方向に延びる一対の防漏カフ60とを含む。
【0029】
後ウエスト域12は、縦方向Yに延びる一対の第1側縁14を有し、前ウエスト域11は、縦方向Yに延びる一対の第2側縁15を有し、第1側縁14には、サイドシート50がそれぞれ取り付けられている。サイドシート50は、第1側縁14近傍の近位域51と遠位の遠位域52とを有する。遠位域52には、メカニカルファスナのフック要素である係合部材31が取り付けられている。図示するおむつ10において、遠位域52の係合部材31のある部分は、タブ状に2箇所飛び出している形状を有するが、この部分は、1箇所であっても3箇所以上であってもよく、また、サイドシート50の縦方向Yの全域に亘って連続していてもよい。遠位域52は、近位域51よりも高い剛性を有し、係合部材31を安定的に保っている。前ウエスト域11の着衣側は、係合部材31に分離可能に係合する繊維不織布で形成されている。このような繊維不織布が、一方の第2側縁部15から他方の第2側縁部15へと前ウエスト域11の横方向Xのほぼ全体に亘ることにより、着用者の胴回りの大きさに合わせて、係合部材31の係合位置を調節することができるようにしている。
【0030】
上記のように形成された係合部材31を、前ウエスト域11の着衣側に係合させることによって、前後ウエスト域11,12を互いに連結させて、おむつ10を図1に示したようなパンツ形状に形成することができる。
【0031】
上記のようなおむつ10において、シャーシ20は、横方向Xに延びる前後端縁17,18を含み、後端縁18に沿って複数のウエスト弾性部材81が横方向Xに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。また、少なくとも股下域13に位置する股下側縁19に沿って複数のレッグ弾性部材82が、縦方向Yに伸長状態で収縮可能に取り付けられている。これら弾性部材81,82は、内外面シート21,22の間であって、これらシート21,22の少なくともいずれか一方に伸長状態で接合されている。
【0032】
また、防漏カフ60は、前後端部61,62および固定縁部64においてシャーシ20の肌当接面に接合されており(図2参照)、自由縁部63において伸長状態で接合され縦方向Yに伸縮可能である弾性部材65を含む。このような構成により、防漏カフ60は、弾性部材65の収縮により、肌当接面から離間しまたは立ち上がって、自由縁部63において着用者の肌にフィットし、シャーシ20の股下域13を着用者の肌から離間させる性向を有する。したがって、防漏カフ60と着用者の肌との間に隙間を作らず、排泄物を漏らすことなく受け止めることができる。
【0033】
図3〜図5は、本発明の第1の局面における、第1実施形態を示す。図3は、この実施形態において分離可能に固定された図1のおむつを非肌当接面から見た部分図であり、図4は、図3におけるIV−IV線矢視図を表し、図5(a)〜(d)は、図4に至るまでの工程を図4と同じ断面で示す。図5で示すように、サイドシート50は、(a)遠位域52と近位域51との境界またはその近傍に位置する縦方向Yに延びる折曲線71においてサイドシート50の非肌当接面どうしが重なる方向に折り畳まれ、(b)近位域51におけるサイドシート50の横方向Xの端に位置する第2接合部92において後ウエスト域を形成する外面シート22と接合され、(c)近位域51における縦方向Yに延びる仮固定部90上において非肌当接面に粘着剤を塗布され、(d)仮固定部90と第2接合部92との間において縦方向Yに延びる折曲線72でさらに折曲線71と同じ方向に折り畳まれる。この後、吸液構造体40が外面シート22に接合され、さらに、サイドシート50を介して第2接合部92と重なる位置にある第1接合部91において、防漏カフ60が接合されている内面シート21がサイドシート50と接合される。上記の工程により、図3で示すように、サイドシート50は、シャーシ20を形成する外面シート22に固定される。
【0034】
このとき、サイドシート50の肌当接面によって係合部材31が覆われているので、係合部材31は、図3の状態において、固い場所と接触することなどにより、痛んで使い物にならなくなったり、またはおむつ10の他の部分や取扱者の衣服などに不用意に付着したりするおそれがない。
【0035】
また、工程(a)〜(d)の順序は、一部入れ替えることが可能である。例えば、内面シート21および外面シート22は、サイドシート50とあらかじめ接合されていてもよい。
【0036】
図5で示す工程で行う固定は、サイドシート50をシャーシ20の非肌当接面に固定するため、この固定を分離した際、粘着剤がシャーシ20に残っていたとしても、着用者の肌へ接触することはない。
【0037】
図6〜図8は、本発明の第2の局面における、第2実施形態を示す。図6は、この実施形態において分離可能に固定された図3と同様の図であって肌当接面から見た部分図であり、図7は、図6におけるVII−VII線矢視図を表し、図8(a)〜(d)は、図7に至るまでの工程を図7と同じ断面で示す。この局面において、サイドシート50の非肌当接面は、シャーシの肌当接面に固定される。具体的には、例えば、図8で示すように、サイドシート50は、(a)遠位域52と近位域51との境界またはその近傍に位置する縦方向Yに延びる折曲線73においてサイドシート50の肌当接面どうしが重なる方向に折り畳まれ、(b)係合部材31を肌当接面に有する位置と折曲線73との間で縦方向Yに延びる仮固定部90上において非肌当接面に粘着剤を塗布され、(c)粘着剤によって内面シート21の肌当接面に接合されている防漏カフ60に分離可能に固定され、(d)近位域51において縦方向Yに延びる折曲線74によってサイドシート50を折り畳むことによってサイドシート50で内面シート21を挟み込んで、近位域51におけるサイドシート50の横方向Xの端における第1接合部91で内面シート21と接合される。この後、サイドシート50を介して第1接合部91と重なる位置にある第2接合部92において、吸液構造体40があらかじめ接合されている外面シート22と接合される。上記の工程により、図6で示すように、サイドシート50は、シャーシ20の肌当接面に固定される。
【0038】
このとき、サイドシート50の肌当接面によって係合部材31が覆われているので、係合部材31は、図6の状態において、固い場所と接触することなどにより、痛んで使い物にならなくなったり、またはおむつ10の他の部分や取扱者の衣服などに不用意に付着したりするおそれがない。
【0039】
また、この第2の局面における分離可能な固定は、図9〜図11に示す第3実施形態によって行うことも可能である。図9は、この実施形態において分離可能に固定された図3と同様の図であって肌当接面から見た部分図であり、図10は、図9におけるX−X線矢視図を表し、図11(a)〜(e)は、図10に至るまでの工程を図10と同じ断面で示す。具体的には、例えば、図8で示すように、サイドシート50は、(a)遠位域52における係合部材31の近位域51側の境界付近に位置する縦方向Yに延びる折曲線75においてサイドシート50の肌当接面どうしが重なる方向に折り畳まれ、(b)折曲線75よりも横方向内側に位置し縦方向Yに延びる折曲線76でさらに折曲線75と同じ方向に折り畳まれて、(c)係合部材31を肌当接面に有する位置と折曲線75との間で縦方向Yに延びる仮固定部90上において非肌当接面に粘着剤を塗布され、(d)粘着剤によって防漏カフ60が接合されている内面シート21の肌当接面に分離可能に固定され、(e)近位域51において縦方向Yに延びる折曲線77によってサイドシート50を折り畳むことによってサイドシート50で内面シート21を挟み込んで、サイドシート50の横方向Xの端における第1接合部91で内面シート21と接合される。この後、サイドシート50を介して第1接合部91と重なる位置にある第2接合部92において、吸液構造体40が予め接合されている外面シート22と接合される。上記の工程で折り畳むことにより、係合部材31が、サイドシート50によってさらに安定的に被覆される。
【0040】
本発明において、サイドシート50とシャーシ20との間の固定は、使用時に簡単に外すことのできる、分離可能な固定でなければならない。分離可能な固定の強さは、引張試験機100mm/分の条件下で6N/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは、同条件下で1.5N/25mm以下である。このような分離可能な固定は、粘着剤としてタック力が小さいホットメルト接着剤、例えば、SBS共重合体のホットメルト接着剤を用いることによって、達成可能である。具体的には、1オンス(約28.35g)/25mm以下のタック力を有するホットメルト接着剤であることが好ましい。ここで、タック力は、JIS Z 0237に準拠したループタック法に基づいて測定される。具体的には、接着剤が塗布された接合部を25mmの幅にカットしサンプルを作成し、ループを作るようにして引っ張り試験機にセットする。サンプルの下方からT字型のステン板をあてがい、サンプルの接合部に接着させる。ステン板を300mm/分の速さで下方に移動させ、ステン板とサンプルとが剥がれたときの引張力を測定し、タック力としている。
【0041】
また、これらの分離可能な固定において、タック力の小さいホットメルト接着剤は、縦方向Yに間欠的に塗布されていてもよいが、縦方向Yに連続的に塗布されていると、固定を維持するために必要な強度が、粘着している部分の単位面積あたりでより小さくてすむため、好ましい。
【0042】
さらに、図8、図11で示す工程で行う固定において、サイドシート50は、図5の固定と異なり、シャーシ20の肌当接面に固定される。従って、この固定を分離した際、残った粘着剤が着用者の肌トラブルを引き起こさないよう、粘着剤がシャーシ20に残らないようにする必要がある。
【0043】
上記の課題は、サイドシート50にホットメルト接着剤を塗布してから、常温になるまでの間にこれを内面シート21に接着させることによって、達成することができる。例えば、生産ラインにおいて、仮固定部90上にホットメルト接着剤を塗布してから常温になるまでの間に、サイドシート50を折り畳んでシャーシ20の内面と接触させ、プレスロール間でプレスしてもよい。ここで、ホットメルト接着剤は、溶融した状態でサイドシート50に塗布されるが、シャーシ20に固定される際には粘性が高くなっているため、シャーシ20を構成するシート自体の内部に浸透することがない。このような方法で分離可能に固定することにより、サイドシート50とシャーシ20とを分離させたときに、粘着剤がサイドシート50と共にシャーシ20から分離し、シャーシ20上にはほとんど残らないようにすることができ、着用者の肌への接触による肌トラブルを抑制することができる。具体的には、サイドシート50から分離されたとき、シャーシ20上には肉眼で視認できる量の粘着剤が残っていないようにすることができる。
【0044】
第1〜第3実施形態において、さらに折り畳みの回数を増やすことも可能である。例えば、それぞれの実施形態において、サイドフラップ50における係合部材31を有する部分だけを最初に肌当接面どうしが重なる方向に折り込まれていてもよい。
【0045】
おむつ10を構成するための他の接合は、これらの分離可能な固定よりも強い固定であり、すなわち通常のおむつの使用状態において、着用したり引っ張ったりしても剥離しない程度の強度を有する。例えば、分離可能な固定に用いたものよりもタック力が強いホットメルト接着剤を用いて接合され得る。または、ヒートシール、ソニックシール等による熱可塑性シートの溶着等、当該分野で慣用される手段が用いられてもよい。
【0046】
本発明において、ホットメルト接着剤の塗工方法としては、スパイラル塗工、オメガ塗工、コントロールシーム塗工、ビード塗工、スロットコーター塗工等、その他一般的な塗工方法を用いることができる。
【0047】
第1〜第3の実施形態において、おむつ10は、防漏カフ60を備えるが、防漏カフのないおむつにおいて本発明を実施することも可能である。また、第2の実施形態において、サイドシート50は、防漏カフ60に分離可能に固定されている。このような構成は、例えば吸液構造体40上の内面シート21を傷めることなくサイドシート50を固定することができるため、好ましい。しかし、例えば第3の実施形態のように、サイドシート50は、防漏カフ60ではなく、内面シート21に分離可能に固定されていてもよい。
【0048】
また、おむつ10において、サイドシート50は、内外面シート21,22とは別部材で形成され、これら両シートの間に取り付けられているが、内面シートの肌当接面または外面シートの非肌当接面に取り付けられていてもよく、あるいは、内外面シート21,22のいずれか一方または両方が、後ウエスト域から連続してサイドシート50を形成していてもよい。また、遠位域52は、近位域51と別部材で形成されていてもよく、または近位域51から連続するシートによって形成され且つ別部材によって補強されていてもよい。さらに、サイドシート50は、弾性部材を配置することによって、横方向Xに伸縮可能であってもよい。
【0049】
また、おむつ10において、係合部材31はメカニカルファスナのフック部材であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、係合部材は、粘着剤であってもよい。さらに、おむつ10は、係合部材31が前ウエスト域11の着衣側を形成する繊維不織布に係合するように構成されているが、前ウエスト域11は、係合部材31と係合可能な第2の係合部材を有していてもよい。例えば、係合部材31がメカニカルファスナのフック部材である場合、前ウエスト域11は、メカニカルファスナのループ部材から成る第2の係合部材を有していてもよい。
【0050】
また、おむつ10において、シャーシ20は、内外面シート21,22の間に挟まれる吸液構造体40を含むが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、シャーシ全体を形成する内外面シートの肌当接面に、透液性のシートで覆った吸液構造体を固定した吸収性シャーシを有するおむつもまた、実施可能である。また別の例において、前ウエスト域および後ウエスト域を形成するベルト状のウエスト部材と、股下域を形成し不透液性シートからなる股下部材とを含み、この股下部材の肌当接面に透液性シートで覆った吸液構造体を固定した吸収性シャーシを有するおむつもまた、実施可能である。吸液構造体が透液性シートで覆われている場合、肌当接面においてのみ透液性シートで覆われていてもよく、または吸液構造体全体が透液性シートで包まれていてもよい。
【0051】
本発明において、内面シート21等を形成する透液性シートとしては、繊維不織布、多孔性プラスチックフィルムの単独またはそれらのラミネート等、外面シートおよび防漏カフ等を形成する不透液性シートとしては、透湿不透液性プラスチックフィルムまたは透湿不透液性プラスチックフィルムと繊維不織布とのラミネート等、吸液構造体としては、フラッフパルプ繊維と高吸収性ポリマー粒子、オプションとして熱可塑性ステープルファイバーとの混合物がティッシュペーパー等の吸液拡散性のシートで被覆されたもの等、弾性部材としては、天然ゴム、合成ゴム、伸縮性繊維不織布等、サイドシート50としては、繊維不織布、多孔性プラスチックフィルムの単独またはそれらのラミネート等、それぞれ使い捨ておむつ等の構成素材として慣用されているものが用いられ得る。前記繊維不織布としては、質量15〜45g/mの疎水性合成繊維不織布等が用いられ得る。
【0052】
本発明において、おむつ10は、第1ウエスト域を前ウエスト域とし、第2ウエスト域を後ウエスト域とした実施形態によって説明されているが、第1ウエスト域を後ウエスト域とし、第2ウエスト域を前ウエスト域として実施することも可能である。
【0053】
このようにして、おむつ10は、図3、図6または図9の状態にサイドシート50を分離可能に固定された後、全体が適宜折り畳まれた状態で出荷される。
【符号の説明】
【0054】
10 おむつ
11 前ウエスト域(第1ウエスト域)
12 後ウエスト域(第2ウエスト域)
13 股下域
14 第1側縁(側縁)
15 第2側縁(側縁)
20 シャーシ
21 内面シート
22 外面シート
31 係合部材
40 吸液構造体
50 サイドシート
51 近位域
52 遠位域
60 防漏カフ
71 折曲線
72 折曲線
73 折曲線
74 折曲線
75 折曲線
76 折曲線
77 折曲線
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、肌当接面および非肌当接面とを有し、
前ウエスト域および後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域、前記前ウエスト域および前記後ウエスト域の他方である第2ウエスト域、ならびに前記第1ウエスト域と前記第2ウエスト域との間に前記縦方向に延びる股下域を備えるシャーシと、前記第1ウエスト域と前記第2ウエスト域とを係合可能な係合手段を備えた一対のサイドシートとを含み、
前記一対のサイドシートのそれぞれは、前記第2ウエスト域における前記縦方向に延びる側縁から前記横方向の外側に延出していて、
前記係合手段は、前記サイドシートの前記肌当接面に備えられ、前記第1ウエスト域の前記非肌当接面と係合可能である、着用物品において、
前記サイドシートは、前記第2ウエスト域における前記側縁から前記横方向に離れた前記係合手段を有する遠位域と、前記第2ウエスト域における前記側縁と前記遠位域との間に位置する近位域とを有し、
前記サイドシートは、前記横方向に折り畳まれ、前記シャーシの前記非肌当接面と前記サイドシートの前記非肌当接面との間に存在する粘着剤によって前記シャーシに分離可能に固定されていることを特徴とする、前記着用物品。
【請求項2】
前記サイドシートは、前記遠位域および前記近位域においてそれぞれ前記縦方向に延びる2本の折曲線によって前記非肌当接面側に2回折り畳まれている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
縦方向および横方向と、肌当接面および非肌当接面とを有し、
前ウエスト域および後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域、前記前ウエスト域および前記後ウエスト域の他方である第2ウエスト域、ならびに前記第1ウエスト域と前記第2ウエスト域との間に前記縦方向に延びる股下域を備えるシャーシと、前記第1ウエスト域と前記第2ウエスト域とを係合可能な係合手段を備えた一対のサイドシートとを含み、
前記一対のサイドシートのそれぞれは、前記第2ウエスト域における前記縦方向に延びる側縁から前記横方向の外側に延出していて、
前記サイドシートは、前記第2ウエスト域における前記側縁から前記横方向に離れた前記係合手段を有する遠位域と、前記第2ウエスト域における前記側縁と前記遠位域との間に位置する近位域とを有し、
前記係合手段は、前記サイドシートの前記肌当接面に備えられ、前記第1ウエスト域の前記非肌当接面と係合可能である、着用物品において、
前記サイドシートは、前記横方向に折り畳まれ、前記シャーシの前記肌当接面と前記サイドシートの前記非肌当接面との間に存在する粘着剤によって前記シャーシに分離可能に固定されていて、分離した場合、前記粘着剤は前記サイドシートと共に前記シャーシから分離することを特徴とする、前記着用物品。
【請求項4】
前記サイドシートは、前記遠位域および前記近位域においてそれぞれ前記縦方向に延びる2本の折曲線によって前記肌当接面側に2回折り畳まれている、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記サイドシートは、前記遠位域および前記近位域においてそれぞれ前記縦方向に延びる2本の折曲線およびその間に前記縦方向に延びる1本の折曲線によって前記肌当接面側に3回折り畳まれている、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記シャーシは、前記第1ウエスト域、前記股下域および前記第2ウエスト域に亘って前記縦方向に延びる一対の防漏カフをさらに備え、前記粘着剤は、前記サイドシートと前記防漏カフとの間に存在する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項7】
前記サイドシートと前記シャーシとの間の分離可能な固定の強さは、引張試験機100mm/分の条件下で6N/25mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項8】
前記サイドシートと前記シャーシとの間の分離可能な固定の強さは、引張試験機100mm/分の条件下で1.5N/25mm以下である、請求項7に記載の着用物品。
【請求項9】
前記粘着剤は、ホットメルト接着剤であり、前記シャーシの肌当接面を構成するシート自体の内部に浸透していない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項10】
前記係合手段は、前記サイドシートによって被覆されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項11】
前記係合手段は、メカニカルファスナのフック部材である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項12】
前記粘着剤は、前記縦方向に連続的して存在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項13】
前記遠位域は、前記近位域より高い剛性を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の着用物品。
【請求項14】
前記シャーシの少なくとも前記肌当接面と前記サイドシートの少なくとも前記非肌当接面とは、熱可塑性合成繊維の不織布から形成されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の着用物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−10989(P2012−10989A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150628(P2010−150628)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】