説明

着色光を発する棒状燃焼体の燃焼装置

【課題】アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅などの炎色反応を呈する金属ないし金属化合物を含む芯を有しない棒状の燃焼体の燃焼装置に関し、炎が一定の位置で燃焼し続け、テーブルに置いたり手で持ったりしたときの体裁が良い上記装置を提供する。
【解決手段】上端に内側に延びる係止爪7を備えた筒体2に棒状燃焼体1を挿入し、その底部を前記上端側に付勢するばね3を設けて、燃焼により棒状燃焼体1が短くなっても、ばね3により上方に押動されて常に先端が筒体上端の係止爪7に係止された状態で燃焼し続けるようにする。筒体2をテーブル等に置いた台5に立設すれば、着色炎が常時一定の高さで燃焼し続けることになり、また筒体2を手に持った状態で棒状燃焼体1を最後まで燃焼させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅などの炎色反応を呈する金属ないし金属化合物を含む芯を有しない棒状の燃焼体の燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムや銅などの炎色反応を呈する金属化合物の粉末をろうなどの固形燃料や結合材に混合してプレスにより細長い棒状に成形した芯を有しない燃焼体は、点火したときに鮮やかな着色光を発しながら燃焼する。
【0003】
従ってこのような燃焼体をパーティーなどのテーブルに立てて光源としたとき、種々の色の炎でテーブルを装飾することができる。しかし芯を有しない燃焼体は、点火したとき、炎が燃焼体の表面に広がって表面全体が燃焼する状態となり、短時間で燃え尽きてしまうという問題があった。
【0004】
本願発明者は、特許文献2において、炎色反応を呈する金属ないし金属化合物を含む芯を有しない棒状の燃焼体を、その上端から順次下方へとゆっくりと燃焼させる技術手段を提案している。これにより、炎色反応による鮮やかな各種の色彩の炎を10ないし数十分にわたって発光し続けることができ、パーティーなどにおいての装飾的な光源として利用することができる。
【特許文献1】特開2000−146497号公報
【特許文献2】特開2004−63377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2で提案した技術は、棒状燃焼体の頂部に内側に延びる係止爪を供えた燃焼制御リングを嵌装して、棒状体頂部の炎が周面に燃え広がるのを防止して燃焼するというものである。棒状体は燃焼につれて短くなり、燃焼制御リングも下降していくから、通常のろうそくと同様に、燃焼が進むにつれて炎の位置は下がっていく。このため、多数の棒状燃焼体を並べて燃焼したとき、燃焼の遅速によって炎の位置に段差が生じてくる。また燃焼制御リングを重力を利用して下降させているので、燃焼体を横にした状態で燃焼させることができない。
【0006】
この発明は、特許文献2で提案した方法で棒状体を燃焼するための好ましい装置を提供することを課題としており、炎が一定の位置で燃焼し続け、テーブルに置いたり手で持ったりしたときの体裁が良く、燃焼に伴って生ずる燃えかすが散乱するのを防止することができる、棒状燃焼体の燃焼装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上端に内側に延びる係止爪7を備えた筒体2に棒状燃焼体1を挿入し、その底部を前記上端側に付勢するばね3を設けて、燃焼により棒状燃焼体1が短くなっても、ばね3により上方に押動されて常に先端が筒体上端の係止爪7に係止された状態で燃焼し続けるようにすることにより、上記課題を解決している。
【0008】
筒体2をテーブル等に置いた台5に立設すれば、着色炎が常時一定の高さで燃焼し続けることになり、また筒体2を手に持った状態で棒状燃焼体1を最後まで燃焼させることができる。そして、筒体2の上方部に皿状ないし椀状の灰受け8を設けることにより、燃焼に伴う燃えかすの飛散が防止され、同時に燃焼によって加熱された筒体上部の熱が、この灰受け部分で放熱されて、筒体下方部の温度上昇を低減できる。
【0009】
上記方法で棒状燃焼体1を燃焼させるためには、頂部を係止爪7で係止し、かつ底部をばね3で付勢された状態で棒状燃焼体1を筒体2に挿入する必要がある。従って、筒体2の挿入時には、係止爪7又はばね3のいずれか一方を取り外せる構造とする必要がある。前者の構造は、筒体2を本体14と、これに着脱されるキャップ15とで構成し、キャップ15に係止爪7を設ける構造とすればよい。また、後者の構造は、ばね受け4を着脱自在にすることによって実現できる。
【0010】
筒体2を長くして手に持って燃焼させたり、テーブル上の高い位置で燃焼させたりするときは、ばね受け4を筒体2の中間部に設けることができる。筒体2があまり長くないときは、ばね受け4は筒体2の底部に設けられる。筒体2を台5上に立設するようにしたときは、その台5の上面をばね受けとして利用することができる。この場合には、ばね3の付勢力で筒体2が台5から浮き上がらないように係着部20を設ける。
【0011】
筒体本体14とキャップ15、あるいは筒体2と台5の係着手段としては、嵌め合い部分の摩擦力により係着される構造、両者間の相対回動による突起9、17と溝10、20の係合による係着構造などが採用可能である。
【0012】
本願の請求項1の発明に係る着色炎を発する棒状燃焼体の燃焼装置は、炎色反応を呈する金属ないし金属化合物を含む可燃性物質を棒状に成形してなる燃焼体1の燃焼装置であって、上端に内側に延びる係止爪7を備えた不燃性の筒体2と、この筒体中間部ないし底部のばね受け4と、前記筒体に挿入された前記燃焼体を前記上端に向けて付勢するばね3とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
本願の請求項2の発明に係る棒状燃焼体の燃焼装置は、上記請求項1記載の構成を備えた燃焼装置において、前記筒体2が、本体14とこの本体の上端に係着される前記係止爪7を備えたキャップ15とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
本願の請求項3の発明に係る棒状燃焼体の燃焼装置は、前記請求項1又は2記載の構成を備えた燃焼装置において、前記ばね受けが前記筒体2を係脱自在に立設する台5に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本願の請求項4の発明に係る棒状燃焼体の燃焼装置は、前記請求項1、2又は3記載の構成を備えた燃焼装置において、前記筒体2がその上方部に皿状ないし椀状の灰受け8を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明により、着色炎が常に一定の位置で燃焼する燃焼装置が得られる。従って、多数の燃焼体を一列に並べて燃焼したときや、虹のように色の異なる複数列を弧状に並べて燃焼したとき、燃焼に遅速があっても列が乱れることがない。また、燃焼体を横向きにして用いることもできるから、種々の態様での使用が可能である。更に、装飾性にも優れ、手に持ったりテーブルに置いたりするのに便利な燃焼装置が得られるので、パーティー等における着色炎を用いた装飾や演出をより優美で利用しやすいものにできるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1及び図2は、第1実施例を示した図で、図1は分解斜視図、図2は使用状態を示す斜視図である。図中、1は棒状燃焼体、2は筒体、3はばね、4はばね受け、5は台である。
【0018】
棒状燃焼体1は、炎色反応を呈する金属化合物、例えば炎を緑色にする硫酸銅、紫色にするヨウ素酸カリウム、赤色にする硝酸ナトリウムなどの粉末を蝋その他の固形燃料に混合してプレスにより細長いろうそく状の棒状体に成形したものである。
【0019】
筒体には、金属のパイプで、その上端にプレスで打ち抜き成形した3本の爪を内側へ折り曲げて、係止爪7が形成されている。筒体2の上方部外周には、アルミニウム製の椀状の灰受け8が圧入により固定されている。筒体2の下端外周には、円板の対向する両側円周部を平行に切り落とした形状の係着鍔9が溶着されている。
【0020】
ばね3は、筒体2より長い自由長さを有する圧縮コイルばねで、筒体2内に挿入され、棒状燃焼体1の底部とばね受け4との間に装架される。
【0021】
ばね受け4は、矩形の金属板の対向両辺を上方にコの字形に屈曲して係着溝10を形成し、中央にばねガイドピン11を立設した構造である。台5は陶器製の皿で、ばね受け4はその底面を台5の中央に両面接着テープなどで貼着されている。
【0022】
上記構造において、棒状燃焼体1を筒体2の底部から挿入し、更にばね3を挿入して、ばね3の下端にばねガイドピン11を挿入した状態で、係着鍔9をばね受け4の内側に挿入したあと90度回動することにより、係着鍔9の突起12を係着溝10に係合して、筒体2を台5上に立設する(図2)。
【0023】
この状態で棒状燃焼体1の頂部は、係止爪7に係止された状態で筒体2の上端開口に臨出しているから、この頂部に火を点けると、棒状燃焼体1に混合された金属化合物の種類によって異なる色の炎を上げて燃焼する。棒状燃焼体1の周面は、筒体2で覆われているので、炎が周面に広がることなく、頂部のみが燃焼する。
【0024】
燃焼に伴って棒状体の頂部は消失し、金属化合物の燃えかすが発生し、棒状燃焼体1は短くなって行くが、ばね3の付勢力で棒状燃焼体1は係止爪7に押し付けられた状態を保持して燃焼を続け、燃えかすの大部分は筒体2の内側に落ち、一部が灰受け8に落下する。
【0025】
図3及び図4は、第2実施例を示した図で、図3は分解斜視図、図4は筒体の底面図である。この第2実施例は、ばね3及び棒状燃焼体1を筒体2の上部から挿入する構造で、筒体2は本体14とその上端に係着されるキャップ15とで構成されている。
【0026】
筒体本体14は、下端を切り欠いて形成した舌片16を内側へ折り曲げてばね受け4が形成されている(図4)。筒体2の上方部には、第1実施例と同様な灰受け8が溶着されている。筒体2の上端には、円周を3等分する位置に鉤形の係着溝20が形成されている。
【0027】
キャップ15は、筒体本体14の内径に嵌装される短円筒状で、その上端には第1実施例と同様な係止爪7が形成されている。キャップ15の下端には、円周を3等分する位置にプレス成形した短い舌片を外側に折り曲げて、係着用の突起17が形成されている。
【0028】
棒状燃焼体1及びばね3は、第1実施例で説明したと同様なものである。台5は、円板状の台板18に筒体2の底部が内径に嵌装される支持パイプ19を溶着した構造である。
【0029】
上記第2実施例のものでは、キャップ15を外してばね3と棒状燃焼体1とを筒体2内に挿入し、キャップ15で棒状燃焼体1を筒体2内に押し込み、突起17を鉤形の係着溝10に挿入して回動することにより、キャップ15を筒体本体14の上端に係着する。突起17は、ばね3の付勢力により上方に押されて係着溝10の先端の鉤の部分に挿入されるから、キャップの係着が外れることはない。そして、筒体2を手で持つか、あるいは台5に立設して、筒体2の上端に係止爪7で係止されて臨出している棒状燃焼体1の頂部に点火して燃焼させる。
【0030】
図5は、第2実施例の筒体本体14を長くして、ばね受けを筒体の中間部に形成した例を示した斜視図である。この例では、筒体本体14の中間部にプレス成形した舌片を図4に示したように内側に折曲げてばね受け4を形成している。21は舌片16を切り取った後の空所である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例の分解斜視図
【図2】第1実施例の使用状態を示す斜視図
【図3】第2実施例の分解斜視図
【図4】第2実施例の筒体の底面図
【図5】ばね受けを筒体中間部に設けた例を示す筒体の斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 棒状燃焼体
2 筒体
3 ばね
4 ばね受け
5 台
7 係止爪
8 灰受け
14 本体
15 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎色反応を呈する金属ないし金属化合物を含む可燃性物質を棒状に成形してなる燃焼体(1)の燃焼装置であって、上端に内側に延びる係止爪(7)を備えた不燃性の筒体(2)と、この筒体中間部ないし底部のばね受け(4)と、前記筒体に挿入された前記燃焼体を前記上端に向けて付勢するばね(3)とを備えた、着色光を発する棒状燃焼体の燃焼装置。
【請求項2】
前記筒体が本体(14)と、この本体の上端に係着される前記係止爪を備えたキャップ(15)とを備えている、請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記ばね受けが前記筒体を係脱自在に立設する台(5)に設けられている、請求項1又は2記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記筒体がその上方部に皿状ないし椀状の灰受け(8)を備えている、請求項1、2又は3記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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