説明

着色加工用半製品、染料により着色加工した製品およびそれらの製造方法

【課題】接合部端部からはみ出した接着剤による発色性の違いによる外観品位の悪化が極めて少ない、製品染めタイプの製品を提供する。
【解決手段】シート材料片の接合される表面が易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層により形成されており、かつ、該接着剤が、被覆層を形成する易染性ポリウレタン樹脂と同一または異なる易染性ポリウレタン樹脂を含有する易染性接着剤で接合して後染色可能な半製品を製造し、次いで、該半製品を後染色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色加工用半製品、これを染料により着色加工した製品およびそれらの製造方法に関する。詳しくは、シート材料を接着剤により接合した部位を含む着色加工用半製品、この着色加工用半製品を染色して得られる独特の高級感のある外観や風合いを有する、いわゆる製品染め(後染め)タイプの着色加工製品、およびそれらの製造方法に関し、特に、靴、鞄、ベルト、衣料、シートカバーなどの製造に好適な着色加工用半製品、着色加工した製品およびそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の形状のシート材料裁断片を縫合および/または接合する工程を経て製造される靴、鞄、ベルト、衣料、シートカバーなどの製品において、シート材料を予め染色するのではなく、シート材料裁断片の縫合および/または接合工程から最終製品に至るまでの何れかの段階で染色することが行われている(いわゆる製品染めまたは後染め)。この製品染めにより、シート材料を予め染色した場合とは異なる独特の外観や風合いを有し、また、シート材料端面まで良好に染色されていて高級感がある製品が得られることが報告されている(例えば、特許文献1〜16参照。)。
【0003】
製品染めタイプの製品の中でも、取り分けシート材料裁断片同士及び/又はシート材料裁断片と他の種類の部材を接着剤により接合して製造するものは、デザインの自由度が高く、軽量性にも優れ、作業性にも優れ、低コストで高品質な製品が得られるなどのメリットを有している。しかし、異種素材間を接合する場合には、実用に耐える接着強力を持たせるために採用可能な接着剤の種類が限られる、接着面を比較的広く取らざるを得ないなどの問題がある。また、接着面の接着性がとりわけ低い場合は、プライマーを使用する必要がある、接着面を所定量削ってその下の接着性が良好な面を露出させる必要があるなど、高品質な製品を得るためには多くの解決すべき技術的課題がある。
【0004】
このようなシート材料裁断片同士及び/又はシート材料裁断片と他の種類の部材を接着剤により接合した部位を有する製品染めタイプの製品では、その形状の複雑さや接着面を十分に広くすることができないなどの理由から、接着剤を接合面より少し広めに塗布する必要がある。また、接着剤の塗布も人手による作業が主体となる場合が多い。従って、接着剤が接合部位からはみ出し外観が著しく損なわれることを完全には解消し難い。しかも、製品染めタイプの製品製造に用いるシート材料は、通常発色性に優れた染料着色性を有する。接着剤が染料着色性に乏しいと、不規則、不均一な状態で接合部位からはみ出した接着剤がシート材料とは明らかに異なる色調、濃度に染色され、染色加工後の製品外観および高級感を著しく損なってしまう。
【0005】
このような欠点解消の方法として、従来は、接着剤がはみ出す面積を極力小さくしたり、はみ出し部分が均一な幅になるように塗布技術を改良したり、あるいは接着剤をフィルム化することでやはりはみ出し部分が均一な幅になるようにするなどの方法が行なわれている。また、別の方法として、例えば接合に際してシート材料に易染性プライマーを塗布する方法、易染性接着剤を使用する方法なども考案されている(例えば、特許文献17〜19参照。)。しかしながら、これらの方法で実際に得られた染色後の製品においては、はみ出した接着剤と隣接するシート材料が、色調は近いものの色濃度が異なっていたり、色濃度は近いが色調が異なっていたりするので、製品染めの高級感を求める消費者の目で見たときに、上記問題が十分に解消されているとはいえないものであった。
【0006】
【特許文献1】特開昭62―191584号公報
【特許文献2】特開昭62―298301号公報
【特許文献3】特開昭62―298302号公報
【特許文献4】特開昭63―15903号公報
【特許文献5】特開昭63―21002号公報
【特許文献6】特開昭63―21005号公報
【特許文献7】特開昭63―59901号公報
【特許文献8】特開昭63―262101号公報
【特許文献9】特開平5―302280号公報
【特許文献10】特開平5―338105号公報
【特許文献11】特開平8―246362号公報
【特許文献12】特開平8―337977号公報
【特許文献13】特開2002―105862号公報
【特許文献14】特開2002―105863号公報
【特許文献15】特開2002―105864号公報
【特許文献16】特開2002―105865号公報
【特許文献17】特開平1―256902号公報
【特許文献18】特開平2―102286号公報
【特許文献19】特開2005―350834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に述べたように、従来の技術では、接合部からはみ出した接着剤とその隣接部では色が異なっているので、製品の品位が著しく損なわれているという外観上の問題があった。
本発明は、このような問題を解消した着色加工用半製品、およびそれを染料により着色加工した製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層をシート材料の表面に形成し、これを所定形状に裁断したシート材料片と他の部材とを前記易染性ポリウレタン樹脂を含有する易染性接着剤を用いて接合すことにより着色加工用半製品を得、次いで該着色加工用半製品を染料で着色加工して得られる製品は、接合部からはみ出した接着剤とその隣接部の色調と濃度がほぼ同一であり、はみ出した接着剤がほとんど目立たず、製品染めの高級感を求める消費者の目で見ても外観品位が殆ど損なわれていない製品が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、所定形状のシート材料片を、同一もしくは異なる形状の少なくとも1個の他のシート材料片及び/又は少なくとも1個の他の材料からなる部材と、少なくともそれらの一部の表面において接着剤を介して互いに接合して得られる後染色可能な製品であって、該シート材料片の接合される表面が易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層により形成されており、かつ、該接着剤が、前記被覆層を形成する易染性ポリウレタン樹脂と同一または異なる易染性ポリウレタン樹脂を含有する易染性接着剤であることを特徴とする後染色可能な製品(以下、半製品と記載することがある)を提供する。
本発明はさらに、前記後染色可能な製品を染料により着色して得られる着色加工製品を提供する。
【0010】
本発明はさらに、所定形状のシート材料片を、同一もしくは異なる形状の少なくとも1個の他のシート材料片及び/又は少なくとも1個の他の材料からなる部材と、少なくともそれらの一部の表面において接着剤を介して互いに接合する工程を含む後染色可能な製品の製造方法であって、該シート材料片はその表面に形成された易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層を介して接合され、かつ該接着剤が前記被覆層を形成する易染性ポリウレタン樹脂と同一または異なる易染性ポリウレタン樹脂を含有する易染性接着剤であることを特徴とする後染色可能な製品の製造方法を提供する。
本発明はさらに、前記後染色可能な製品を染料により着色する工程を含む着色加工した製品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られた着色加工用半製品は、これを所望の色に染色することによって独特の高級感のある外観や風合いを有する、いわゆる製品染めタイプの製品とすることができ、特に靴、鞄、ベルト、衣料、シートカバーなどの分野において消費者に高い満足感を与え得る製品を製造可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において半製品とは、所定形状に切り出したシート材料片を同一または異なる形状の他のシート材料片及び/又は他の材料からなる部材に易染性接着剤を介して接合した、後染色可能な製品であり、染色による着色加工がされていない以外は消費者が入手する最終製品と実質的に同じものである。以下において、前記“所定形状に切り出したシート材料片”を単にシート材料片、前記“同一または異なる形状の他のシート材料片”を単に他のシート材料片、および、前記“他の材料からなる部材”を単に他の部材と記載することがある。シート材料片と他のシート材料片及び/又は他の部材は、易染性接着剤を介して接合した後、必要に応じて、縫製により一体化されていてもよい。シート材料及び/又は他のシート材料片は何らかの方法により予備着色されていてもよいし、接合前から半製品段階(最終的な染色加工前)までの間に型押しされていてもよいし、パンチング加工が施されていてもよい。
【0013】
本発明において製品とは、シート材料が用いられている従来公知の各種製品を指し、具体例としては、紳士靴や婦人靴、スポーツ靴、登山靴、アウトドア靴、カジュアル靴、パンプス、ブーツ、サンダルなどの一般消費者用の靴の他、安全靴、ナースシューズといった業務用靴も含む各種の靴類、ブリーフケース、アタッシュケース、ハンドバッグ、旅行鞄、学童用鞄、手提げ袋、リュックサック、バックパック、財布、手帳ケースなどの一般消費者用の鞄の他、郵便配達用鞄といった業務用鞄も含む各種の鞄類、時計用バンド、リストバンド、ベルト、サスペンダー、チョーカーなどの各種の装飾品類、ジャケット、コート、スカート、パンツ、下着、ソックス、ベスト、帽子、サンバイザー、マフラー、スポーツ用手袋を含む各種の手袋などの各種の衣類、時計用ケース、ジュエリーケースなどの各種ケース類、ボールやシートカバーなどのことである。
【0014】
染料としては半製品の所定部位に使用されているシート材料片および他のシート材料片表面を着色し、かつ目的用途において実用レベルの染色堅牢度、耐光性、耐熱変退色性を有するものであれば、従来公知の染料が何れも採用可能であり、具体例としては、酸性染料、金属含有錯塩染料、塩基性染料、分散染料、直接染料、硫化染料、建染染料、硫化建染染料、反応染料、蛍光増白染料などが挙げられ、ポリウレタンの発色性と染色堅牢度とのバランスから酸性染料、金属含有錯塩染料、分散染料を主体とするのがより好ましく、その場合は必要に応じて他の染料を少量用いても構わない。
【0015】
本発明においてポリウレタン樹脂の易染性は平衡染着量で表される。平衡染着量は以下のようにして測定される。まず、ポリウレタンを50mm×15mm×0.1mmの無孔質フィルムにする。該フィルムを金属錯塩染料イルガランレッド2GL(チバガイギー社製)の0.05質量%水溶液に90℃で染料の吸着が平衡状態になるまで浸漬する。次いで、フィルムに吸着された染料の質量を測定し、それをフィルム1g当たりの吸着量に換算することにより平衡染着量が求められる。本願で使用する易染性ポリウレタン樹脂の平衡染着量は、好ましくは30mg/g以上、より好ましくは60mg/g以上である。平衡染着量は大きい程好ましいが、ポリウレタン樹脂で得られる最大平衡染着量は通常約400mg/gである。30mg/g以上であると、染料との親和性が十分であり、鮮明な発色性が得られる。
【0016】
本発明における易染性ポリウレタン樹脂としては、前記の易染性を有するポリウレタン樹脂であって、かつ目的用途において十分な強度物性、耐久性、耐光性、染色堅牢度を有するものであれば、特に化学組成には制約はないが、易染性接着剤に使用する易染性ポリウレタン樹脂は、これと混合するポリウレタン接着剤との相溶性が所望のレベルである必要がある。易染性ポリウレタン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて染料や顔料などの着色剤、光輝性微粒子、赤外線反射剤、防燃剤、防黴剤、抗菌剤、導電剤、撥水剤、撥油剤、滑剤、紫外線吸収剤など各種の添加剤等を含有させても構わない。
【0017】
易染性ポリウレタン樹脂の具体例としては、ポリエステル系ポリマーポリオール、ポリエーテル系ポリマーポリオール、ポリカーボネート系ポリマーポリオール、あるいはそれらを混合した混合ポリマーポリオールをソフトセグメントとし、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネートおよび低分子ポリオールをハードセグメントとするセグメンテッドポリウレタン樹脂であって、かつ、前記した易染性の要件を満足するポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0018】
より好ましい易染性ポリウレタン樹脂としては、それらの中でも前記した目的用途における各種要求物性のバランスの点で、ソフトセグメントとしてポリエーテル系ポリマーポリオールを含み、ポリウレタン分子中に必要に応じて三級または四級窒素含有基、アニオン基等の染着基、好ましくは三級アミノ基を有するポリウレタン;ソフトセグメントとしてポリエーテル系ポリマーポリオールを主体とし、ポリエステル系ポリマーポリオール、ポリカーボネート系ポリマーポリオールなどの他のポリマーポリオールを5〜40モル%程度含む混合ポリマーポリオールと、ハードセグメントとして芳香族ポリイソシアネートおよび低分子ポリオールを反応させて得られる重合ポリウレタン樹脂;および、ポリエーテル系ポリマーポリオール、芳香族ポリイソシアネートおよび低分子ポリオールを反応させて得られるポリウレタンに、ポリエステル系ポリマーポリオールまたはポリカーボネート系ポリマーポリオールと、芳香族ポリイソシアネートおよび低分子ポリオールを反応させて得られるポリウレタンを、(ポリエステル系ポリマーポリオールまたはポリカーボネート系ポリマーポリオール)/全ポリマーポリオールが5〜40モル%程度になるように混合した混合ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0019】
ポリマーポリオールの数平均分子量は、500〜3000程度が好ましく、より好ましくは1500〜2500である。ポリエーテル系ポリマーポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられ、中でもポリエチレングリコールを単独で用いるか、ポリエチレングリコールを主体としてその他のポリエーテル系ポリマーポリオールを併用するのが易染性を向上させる点で好ましい。ポリエステル系ポリマーポリオールの具体例としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリエチレンアジペートジオール、ポリプロピレンアジペートジオール、ポリトリメチレンアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリメチルペンタンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオールなどが挙げられ、中でもポリカプロラクトンジオールを単独で用いるか、ポリカプロラクトンジオールを主体としてその他のポリエステル系ポリマーポリオールを併用するのが好ましい。ポリカーボネート系ポリマーポリオールの具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールが挙げられる。ポリカーボネート系ポリマーポリオールは、ポリウレタン接着剤を硬くし屈曲性が低下するが、耐久性が必要な場合に適宜使用するのが好ましい。
【0020】
ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられ、中でも4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを単独で用いるか、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを主体としてその他のポリイソシアネートを併用するのが好ましい。
【0021】
低分子ポリオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールあるいはそれらにメチル基やエチル基の分岐があるものなどが挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールを単独あるいは混合して用いるか、1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールを主体としてその他の低分子ポリオールを併用するのが好ましい。
【0022】
易染性ポリウレタン樹脂の分子量としては、重量平均分子量で30〜100万程度が好ましく、より好ましくは40〜70万程度の範囲である。上記範囲内であると、半製品の染色加工を容易、良好に行うことができ、屈曲性が良好な製品が得られる。
【0023】
本発明で使用する易染性接着剤は、本願発明の属する技術分野で使用されている、易染性ポリウレタン樹脂を含まないポリウレタン接着剤に前記易染性ポリウレタン樹脂を含有させて得られる。
本発明で使用可能なポリウレタン接着剤としては、目的用途に必要なレベルの被着材同士(シート材料片と、他のシート材料片及び/又は他の部材)の接着力、耐久性などが実現可能なものであれば、特に組成に制約はなく、被着材の種類や作業性などに応じて従来公知の1液型、または2液型のポリウレタン接着剤の中から適宜選択すればよい。好ましいポリウレタン接着剤としては、結晶性ポリエステル系などのポリマーポリオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートとを所定のモル比(ポリイソシアネート中のイソシアネート基/ポリマーポリオール中の水酸基=1.5〜3.0)で反応させて得られるイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを主剤とし、必要に応じて1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等の多官能ポリオールをウレタンプレポリマーの0.05〜5質量%添加して使用するポリウレタン接着剤や、結晶性ポリエステル系などのポリマーポリオールを主剤とし、これに硬化剤として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート、あるいはこれらのビューレット変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変生体を所定のモル比(ポリマーポリオール中の水酸基/ポリイソシアネート中のイソシアネート基=5.0〜20)添加して使用するポリウレタン接着剤などが挙げられる。ポリウレタン接着剤には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、硬化促進剤、消泡剤、難燃剤などの添加剤を配合してもよい。市販のポリウレタン接着剤としては、製靴用、底付け用などメーカーによって表現は様々だが、靴製造用として提供されているポリウレタン接着剤が挙げられ、その具体例としては、3110(ノーテープ工業株式会社製)、DA3110、DA3146(共にノガワケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
前記ポリウレタン接着剤と易染性ポリウレタン樹脂との相溶性には十分留意する必要がある。好ましい相溶性の目安としては、ポリウレタン接着剤に所定の比率だけ易染性ポリウレタン樹脂を含有させた際に直ちに分離あるいは凝固しないこと、作業性を考慮すると両者を混合し、必要に応じて、N,N’−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン等を単一または混合した希釈剤により1.1〜5.0倍に希釈して得た塗布液が、最低でも4時間以上、好ましくは8時間以上は分離、凝固することなく十分な接着力を発揮することである。
【0025】
易染性接着剤中の易染性ポリウレタン樹脂の含有量は、本発明が目的とする効果を得る点で、易染性接着剤の全体量に対して30〜70質量%が好ましく、より好ましくは40〜60質量%である。易染性ポリウレタン樹脂にはそれほど強い接着力は望めないので、その含有量は得られる製品の強度上少ない方がよいが、上記範囲内であると、接合部端部からはみ出した易染性接着剤とその隣接部との色の差が目立つことがなく、ポリウレタン接着剤と易染性ポリウレタン樹脂との相溶性も良好であり、実用上十分な接着力と製品の強度が得られる。
【0026】
易染性接着剤により被着材を接合させる方法としては、一の被着材の接合面に易染性接着剤を均一に塗布して他の被着材の接合面と貼り合せる方法、易染性接着剤からなるフィルムまたはテープを所定の形状に切り出して一の被着材の接合面に貼り合せて他の被着材と貼り合せる方法など、従来公知の方法が何れも採用可能である。易染性接着剤を塗布する方法としては、刷毛により塗布する方法、ヘラにより塗布する方法、スプレーにより塗布する方法、ローラーにより塗布する方法などが挙げられる。易染性接着剤の粘度を所望の塗布方法に応じて調節するのが好ましい。安定した接着力を発揮させるために、易染性接着剤を接合面より5mm以内の範囲で広く塗布したり、接合させる被着材双方の接合面に易染性接着剤を塗布するのも好ましい。
【0027】
本発明において、着色加工用半製品の製造に使用することができるシート材料としては、目的とする製品に必要な強度や耐久性があり、また所定の厚さや目付けを有し、最終的に目的とする風合いが得られ、かつ前記の易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層を接合される表面に有するものであれば何れも使用可能である。具体例としては、天然皮革の銀面様の外観を有する、いわゆる銀付き調皮革様シートや、天然皮革のスエードやヌバック様の外観を有する、いわゆる立毛調皮革様シート、銀付き調と立毛調の中間的な外観を有する、いわゆる半銀付き調皮革様シートなどが挙げられ、また、皮革様シートに限らず幾何学模様、ブランドロゴなど種々の表面意匠を有するシート材料なども挙げられる。
【0028】
銀付き調皮革様シートとしては、銀面様の外観意匠を有する樹脂シートも使用可能であるが、製品に求められる品位の点で、繊維質基材の少なくとも片面に銀付き天然皮革の外観意匠を有する樹脂層が形成されたものが好ましい。また、立毛調皮革様シートとしては、立毛様の外観意匠を有する樹脂シートや樹脂シートに短繊維を植毛したものなども使用可能であるが、製品に求められる品位の点で、繊維質基材の少なくとも片面に天然皮革スエードや天然皮革ヌバックのような立毛を有する樹脂層を形成したものや、繊維質基材の少なくとも片面に天然皮革スエードや天然皮革ヌバックの立毛様の外観意匠を有する樹脂層を形成したものが好ましく、風合いの点から前者がより好ましい。半銀付き調皮革様シートとしては、銀面様の外観意匠を有する部分と立毛様外観意匠を有する部分とが混在する樹脂シートも使用可能であるが、製品に求められる品位の点で、好ましくは繊維質基材の少なくとも片面に銀面様の外観意匠を有する部分と立毛様外観意匠を有する部分とが混在する樹脂層を形成したものが好ましい。なお、被覆層は上記各樹脂層を兼ねることもできる。
【0029】
本発明の効果を十分に発揮する上で、シート材料の主体として前記した銀付き調皮革様シートを用いるのが好ましい。また、シート材料の表面に、皮革様、あるいはその他の意匠性を付与するために、エンボスによる型押しやプリントなどを施すことも、本発明の効果を妨げない範囲であれば好ましい態様である。
【0030】
繊維質基材としては、目的とする製品において必要な強度や耐久性があり、また所定の厚さや目付けを有し、最終的に目的とする風合いが得られるものであれば、織物、編物、不織布あるいはそれらの複合体など何れも使用可能である。本発明においては、製品としてより天然皮革調の風合いや外観が得られることから、不織布を主体とする繊維質基材が好ましく、また被覆層との接着性や充実感のある風合いが得られる点から弾性重合体が含浸された繊維質基材がより好ましい。繊維質基材を構成する繊維としては、より繊度が細い繊維、好ましくは0.5dtex以下、より好ましくは0.00001〜0.5dtexの極細繊維、または極細繊維からなる繊維束を用いると、被覆層表面の平滑性を極めて良好にすることができるので好ましい。極細繊維の構成樹脂としてはナイロンやポリエステルが風合いや形態安定性、品質安定性、耐久性などのバランスの点で好ましい。前記した含浸させる弾性重合体としては、後述する被覆層との接着性や耐久性、繊維質基材ひいてはシート材料としての風合いなどの点から、ポリウレタン樹脂を主体とする弾性重合体が好ましい。極細繊維や弾性重合体中には、製造段階で着色剤や酸化防止剤、光安定剤、防黴剤、防燃剤、抗菌剤、撥水・撥油剤または親水化剤などを添加しておいてもよい。
【0031】
被覆層を繊維質基材表面に形成する方法としては、接着剤樹脂を被覆層または繊維質基材の何れかに連続的または非連続的(ドット状)にコーティングして貼り合せる方法や、被覆層と繊維質基材の間にフィルム状または不織布状の接着剤樹脂を挟む方法などの従来公知の方法が何れも採用可能である。接着剤樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などのホットメルト樹脂;エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などの2液架橋型、湿気硬化型、または紫外線硬化型の反応性樹脂;シリコン系樹脂;クロロプレンゴムなどから、被覆層と繊維質基材の接着性や耐久性などを考慮して適宜選択される。接着剤樹脂としては、前記した中でもウレタン系樹脂が接着性や耐久性の点で好ましく、特に染色工程で比較的高温に曝されることから2液架橋型のポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0032】
被覆層の表面に前記したような意匠性を付与する方法としては、繊維質基材との一体化に先立って予め付与しておく方法、繊維質基材と被覆層との一体化後から染色前までの何れかの段階でエンボス等の方法により付与する方法があり、何れも採用可能である。前者の方法としては、例えば、意匠を施した離型紙上に易染性ポリウレタン樹脂被覆層を形成して該意匠を被覆層へ転写し、これを繊維質基材と貼り合せる方法が挙げられ、後者の方法としては、例えば、繊維質基材の表面に多孔質層を含む易染性ポリウレタン樹脂被覆層を形成した後でこれに被覆層樹脂の軟化温度以上に加熱したエンボスを圧着してエンボス表面の意匠を被覆層へ転写する方法が挙げられる。なお、被覆層は易染性ポリウレタン樹脂をN,N’−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン等の単一または混合溶剤に溶解し、得られた溶液を離型紙、繊維質基材などに塗布し、次いで溶剤を除去することによって形成することができる。
【0033】
シート材料の表面色が目的とする製品の色よりも明度が低い色であると、半製品を染色することにより、自然で深みがあって発色性に優れた独特の高級感が感じられる、天然皮革に勝るとも劣らない染色状態を得ることができる。従って、半製品のシート材料表面色を特定の範囲の淡色にするのが好ましい。該表面色は、L*a*b*表色系のL*が60〜98であるのが好ましく、より好ましくは70〜98、さらに好ましくは85〜98の範囲である。半製品のシート材料表面色がL*で60以上であると、L*で60未満の中濃色あるいは濃色の場合と比較して、目的とする色の製品が得られ易く、深みや透明感のある色が得られ、色のバリエーションが広くなる。表面色がL*で98を超える極めて白に近い表面色であっても、製品での色の自由度は優れるが、98以下であると透明感、深み、あるいは斑感などを表現し易くなる。さらに、半製品までの段階での汚れの影響が少なく、色の再現性、表面強度および耐光性が良好であり、染料の必要量が少なくなるので好ましい。
【0034】
シート材料の表面色を前記の淡色に調節する方法としては、被覆層そのものに着色剤を添加する方法、被覆層は透明または半透明の層とし、その直下に樹脂と着色剤を含む着色層を形成する方法があり、その何れもが採用可能であるが、色の深みや透明感のある発色性、シート材料の表面強度や耐久性、易染性接着剤の接着性などの点で後者の方法が好ましい。着色層に用いる着色剤は、染料でも構わないが、繊維質基材の色がシート材料表面の色に影響しないように顔料を用いるのが好ましい。着色層を構成する樹脂としては、被覆層との接着性の点でポリウレタン樹脂が好ましく、被覆層の易染性ポリウレタン樹脂と同種のソフトセグメントからなる易染性ポリウレタン樹脂を用いるのがより好ましい。染色後の製品において色の深みや発色性を強く求める場合には、被覆層に用いた易染性ポリウレタン樹脂とその他のポリウレタン樹脂からなる着色ポリウレタン樹脂層を採用するのも好ましい態様である。
【0035】
シート材料を構成する繊維質基材の厚さおよび目付け、被覆層、接着剤樹脂層、着色層の厚さなどは目的とする最終製品の種類に応じて当業者の通常の知識に基づいて選択される。
【0036】
本発明では少なくとも1片の前記シート材料片を用いて、靴、鞄、ベルト、衣料、シートカバーなどの少なくとも一部を形成した半製品を従来公知公用の方法により製造する。シート材料片が形成する部位は特に限定されないが、半製品の染色加工時に、シート材料が染浴に接触し難いと染め残しや好ましくない斑染めになる可能性があるので、そのような部位には用いないほうが好ましい。または、半製品を最終製品の形状とは異なるが染浴に接触し易い形状に形成し、染色処理した後、最終製品の形状にする方法も好ましい。但し、本発明が特徴とする易染性接着剤による接合部位は、染浴に接触し易い状態にある必要がある。
【0037】
染色加工方法としては、染浴に半製品が浸漬される方法であれば何れの方法でも採用可能であるが、製品染めの特徴である柔軟で充実感のある風合いや深くて自然なシボ立ちが得られ易いことから、ウォッシャー、タイコ、あるいはこれに類する染色加工機を用いるのが好ましい。染色後の乾燥も、前記した製品染めの特徴を極力損なわないように、雰囲気温度を50〜90℃程度の比較的低温に設定した乾燥機中で長時間かけて乾燥する方法が好ましい。半製品の乾燥方法としては、必要以上の張力がかからないように、かつ、不必要な型が付かないように留意しつつ、製品段階では露出しない部位を治具に固定し、吊るして乾燥機中を通過または滞留させる方法や、同様に露出しない部位や面が接触するようにネット等の上に戴置し、乾燥機中を通過または滞留させる方法などが好ましい。
【0038】
上記のようにして得られた靴、鞄、ベルト、衣料、シートカバーなどの本発明の製品は、半製品にした後に染色加工しているので、染色時の揉み効果による充実感のある風合いや透明感があって自然な着色状態と良好なシボ立ち状態とを兼ね備えた高級感を有する。また、従来著しく外観品位を損なうことが多かった接合面での接着剤のはみ出しが殆ど目立たないので、高級感のある外観が極めて安定して得られる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。尚、以下において、部および%はことわりのない限り質量部および質量%を表す。
【0040】
L*(L*a*b*表色系)は、シート材料の表面における任意の5箇所について測定したL*を算術平均した値である。各箇所のL*は、「分光光度計U−3010」(日立製)に積分球を装着し、白板を対照サンプルとしてD65光源、視野角10°にて測定した。
【0041】
製造例1
ナイロン極細繊維束(平均繊度:0.04dtex)からなる絡合不織布に、繊維100部に対して85部のエステル−エーテル系ポリウレタンが多孔質状に含有された目付けが450g/m2、厚さが1.3mmの繊維質基材を作製した。一方、天然皮革調のシボを有する離型紙上に、下記被覆層、着色層および接着層を順次形成した。
被覆層:ポリエーテル−エステル系ポリウレタン(ソフトセグメントとして数平均分子量2000のポリエチレングリコールと数平均分子量2000のポリカプロラクトンジオールをモル比75:25で含み、ハードセグメントとして前記ソフトセグメント1モルに対して7.5モルの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび6.5モルの1,6−ヘキサンジオールを含む、重量平均分子量50万のポリウレタン)からなる、厚さが35μmの易染性ポリウレタン樹脂層。
着色層:被覆層と同じポリエーテル−エステル系ポリウレタンおよび該ポリウレタン100部に対して40部の酸化チタン顔料からなる、厚さが30μmの白色の易染性ポリウレタン樹脂層。
接着層:レザミンUD−8310改(大日精化工業株式会社製、ポリエステル系ポリウレタン接着剤)に架橋剤を配合して架橋させた、厚さが35μmの架橋ポリウレタン樹脂層。
得られた3層積層体を接着層を介して前記繊維質基材の片面に貼り合わせ、表面にシボ模様が転写された被覆層を有するシート材料を得た。
このシート材料の表面色は、L*が94の淡色であった。
【0042】
製造例2
製造例1において、着色層のみを下記のように変更した以外は同様にしてシート材料を得た。
着色層:製造例1の被覆層と同じポリエーテル−エステル系ポリウレタン、該ポリウレタン100部に対して35部の酸化チタン顔料、及び該ポリウレタン100部に対して1部のカーボンブラックからなる、厚さが30μmのグレー色の易染性ポリウレタン樹脂層。
このシート材料の表面色は、L*が74の淡色であった。
【0043】
実施例1
“3110”(ノーテープ工業株式会社製ポリウレタン接着剤)を主剤とし、製造例1のシート材料の被覆層に用いたものと同じ易染性ポリウレタン樹脂を、主剤の固形分100部に対して固形分として100部配合し、塗布作業が容易になるようにメチルエチルケトン(MEK)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエンなどで希釈し、粘度を適宜調節した易染性接着剤を調製した。
次いで、製造例1のシート材料を所定の形に裁断して得た裁断片の被覆層上に前記易染性接着剤を刷毛により塗布して裁断片同士を接合した。また、部位によっては裁断片同士を縫合し、さらに金具等を組み付けることにより、ハンドバッグ半製品を得た。得られた半製品は、すべての接合部位が外側から目視で確認でき、染浴に接触し難い部位はないものであった。
染色加工機としてウォッシャーを用い、予め浸透剤により処理した前記半製品を赤色の含金染料を溶解した染浴中に浸漬し、浴温65℃で30分間染色処理した。次いで、製品の内側になる部位を治具に固定して、雰囲気温度を85℃に設定した乾燥機中にこれを吊るして十分に乾燥させた。乾燥後のハンドバッグは、透明感がある赤色に染色されていて、接合部位端部からはみ出した接着剤は殆ど目立たず、高品位で、かつ天然皮革に勝るとも劣らないシボ立ちや風合いのものであった。
【0044】
実施例2
半製品を黒色染料を主体とし、青色染料を併用した染浴中で染色加工した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られたハンドバッグは、青みがかった深みの感じられる黒色に染色されていて、接合部位端部からはみ出した接着剤は殆ど目立たず、高品位で、かつ天然皮革に勝るとも劣らないシボ立ちや風合いのものであった。
【0045】
比較例1
易染性ポリウレタン樹脂を含まないポリウレタン接着剤(ノーテープ工業株式会社製ポリウレタン接着剤“3110”)のみを用いた以外は実施例1と同様にしてハンドバッグを製造した。得られたハンドバッグは、透明感がある赤色に染色されていて、天然皮革に勝るとも劣らないシボ立ちや風合いを有していたが、接合部位端部からはみ出した接着剤が他の部位とは全く異なる白っぽい色に着色されていて非常に目立ち、外観の品位が大きく損なわれていた。
【0046】
実施例3
実施例1と同じ易染性接着剤を、製造例2のシート材料を所定の形に裁断して裁断片の被覆層表面に刷毛により塗布して裁断片同士を接合させると共に、裁断片をクレープゴム製の靴底に接合した。また、部位によっては裁断片同士を縫合し、さらに金具等を組み付けることにより、半製品としてモカシンタイプの靴を得た。得られた半製品は、すべての接合部位が外側から目視で確認でき、染浴に接触し難い部位はないものであった。
染色加工機としてウォッシャーを用い、緑色の含金染料を溶解した染浴を調整し、予め浸透剤により処理した前記半製品をこの染浴中に浸漬し、浴温65℃で30分間染色処理した。次いで、製品では露出しない部位を治具に固定して、雰囲気温度を85℃に設定した乾燥機中にこれを吊るして十分に乾燥させた。乾燥後の靴は、透明感がある緑色に染色されていて、接合部位端部からはみ出した接着剤は殆ど目立たず、天然皮革に勝るとも劣らないシボ立ちや風合いのものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状のシート材料片を、同一もしくは異なる形状の少なくとも1個の他のシート材料片及び/又は少なくとも1個の他の材料からなる部材と、少なくともそれらの一部の表面において接着剤を介して互いに接合して得られる後染色可能な製品であって、該シート材料片の接合される表面が易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層により形成されており、かつ、該接着剤が、前記被覆層を形成する易染性ポリウレタン樹脂と同一または異なる易染性ポリウレタン樹脂を含有する易染性接着剤であることを特徴とする後染色可能な製品。
【請求項2】
前記易染性接着剤が、易染性ポリウレタン樹脂を30〜70質量%含有する請求項1記載の後染色可能な製品。
【請求項3】
前記シート材料片が、一方の表面から順に、透明または半透明の被覆層、顔料を含む着色層、接着剤樹脂層、繊維質基材層を含む積層体である請求項1または2記載の後染色可能な製品。
【請求項4】
シート材料片の表面色が、L*が60以上の淡色である請求項1〜3のいずれかに記載の後染色可能な製品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の後染色可能な製品を染料により着色して得られる着色加工製品。
【請求項6】
所定形状のシート材料片を、同一もしくは異なる形状の少なくとも1個の他のシート材料片及び/又は少なくとも1個の他の材料からなる部材と、少なくともそれらの一部の表面において接着剤を介して互いに接合する工程を含む後染色可能な製品の製造方法であって、該シート材料片はその表面に形成された易染性ポリウレタン樹脂からなる被覆層を介して接合され、かつ、該接着剤が前記被覆層を形成する易染性ポリウレタン樹脂と同一または異なる易染性ポリウレタン樹脂を含有する易染性接着剤であることを特徴とする後染色可能な製品の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の後染色可能な製品を染料により着色する工程を含む着色加工した製品の製造方法。

【公開番号】特開2007−231459(P2007−231459A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55385(P2006−55385)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(391047710)株式会社バス・コーポレーション (1)
【出願人】(591121513)クラレトレーディング株式会社 (30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】