説明

着色塗料組成物

【課題】 活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートとの付着性が良好であって、かつ、活性エネルギー線硬化型塗料が浸透しにくく外観の良好な着色層を高い生産性で形成できる1液乾燥型の着色塗料組成物を提供する。
【解決手段】 繊維素系樹脂を含有する樹脂成分と顔料とを含む1液乾燥型の着色塗料組成物である。樹脂成分中の繊維素系樹脂の含有量は2質量%以上であることが好ましく、繊維素系樹脂は、酢酸セルロース系樹脂であることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化型塗料が無溶剤型である場合、本発明の効果は顕著となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色層を形成するための着色塗料組成物に関し、特に、活性エネルギー線硬化型塗料から形成されるトップコートの下塗りとして設けられる着色層の形成に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の表面には、意匠性の付与や向上、保護などを目的として、塗装が施される場合が多い。使用される塗料は、対象物に応じて適宜選択されるが、近年、作業時間を短縮でき、機械的特性が優れることから、紫外線によって重合反応が進行し、硬化する紫外線硬化型塗料(UV塗料)などの活性エネルギー線硬化型塗料が普及している。
このような活性エネルギー線硬化型塗料には、着色のために顔料が添加されることがある。ところが、その場合、照射された紫外線が顔料に吸収されたり乱反射されたりして、活性エネルギー線硬化型塗料の硬化が阻害され、硬化が不十分となることがあった。硬化が不十分であると、形成された塗膜は十分な特性を発揮しない。このような問題を解決するためには、硬化を阻害しない染料を顔料の代わりに添加する方法もあるが、染料は隠蔽性や耐候性が良好ではなかった。
【0003】
そこで、対象物を十分に隠蔽することが求められる場合には、対象物に着色を目的とした着色層を設けてから、活性エネルギー線硬化型塗料を塗装する方法がとられる。また、対象物が、ポリプロピレン、熱可塑性ポリオレフィン、金属などであり、UV塗料が付着しにくい材質である場合には、着色だけでなく付着性向上をも目的として着色層をあらかじめ設けることがある。従来、このような着色層を形成するためには、溶剤が蒸発し除去されることで塗膜を形成する1液乾燥型塗料や、アクリルポリオールやポリエステルポリオールなどの主剤と、イソシアネート化合物などの硬化剤とを含む2液型塗料に顔料を添加したものが用いられてきた。これらのうち1液乾燥型塗料に顔料を添加した着色塗料組成物は、着色層を生産性よく形成できることから、好適に使用されている。
【0004】
ところが、このような1液乾燥型の着色塗料組成物から着色層を形成し、その上に活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートを形成した場合、着色層とトップコートとの付着性が十分でなく、これらが剥離するという問題や、着色層に活性エネルギー線硬化型塗料が浸透してしまい、外観低下を引きおこすという問題があった。また、最近では環境面から、溶剤を含まない無溶剤型の活性エネルギー線硬化型塗料も開発されているが、無溶剤型の活性エネルギー線硬化型塗料には、溶剤を含むことによる付着性向上効果、すなわち対象物へのアンカー効果や含有するモノマーやオリゴマーの拡散効果が期待できないため、無溶剤型の活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートは、特に着色層との付着性が低下しやすい傾向がある。
このような問題を解決する方法としては、着色層を設けた後、水系塗料を塗装することにより、着色層とトップコートの付着性を高めるとともに、活性エネルギー線硬化型塗料の着色層への浸透を抑制しようとする方法が提案されている。また、特許文献1には、トップコートの下に浸透制御層を設けて、活性エネルギー線硬化型塗料の浸透を抑制しようとする方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−96704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、着色層を設けた後、水系塗料を塗装する方法では、水系塗料が乾燥しにくいため、生産性に劣るという問題があった。また、特許文献1に記載の方法は工程が複雑で、やはり生産性が悪かった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートとの付着性が良好であって、かつ、活性エネルギー線硬化型塗料が浸透しにくく外観の良好な着色層を高い生産性で形成できる1液乾燥型の着色塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の着色塗料組成物は、活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートが設けられる着色層を形成するための1液乾燥型の着色塗料組成物であって、繊維素系樹脂を含有する樹脂成分と、顔料とを含むことを特徴とする。
前記樹脂成分中の前記繊維素系樹脂の含有量が2質量%以上であることが好ましい。
前記繊維素系樹脂は、酢酸セルロース系樹脂であることが好ましい。
また、前記活性エネルギー線硬化型塗料が無溶剤型である場合、本発明の効果は顕著となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートとの付着性が良好であって、かつ、活性エネルギー線硬化型塗料が浸透しにくく外観の良好な着色層を高い生産性で形成できる着色塗料組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の着色塗料組成物は、活性エネルギー線硬化型塗料から形成されるトップコートの下塗りとして着色層を形成する際に使用されるものであり、繊維素系樹脂を含有する樹脂成分と顔料とを含む1液乾燥型のものである。
【0010】
繊維素系樹脂としては、酢酸セルロース系樹脂、硝化綿、カルボキシメチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カチオン化セルロース樹脂などが挙げられる。繊維素系樹脂としては、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してもよいが、特に、セルロース・アセテート樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、セルロース・アセテート・プロピオネート樹脂などの酢酸セルロース系樹脂を使用すると、活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートとの付着性が良好で、活性エネルギー線硬化型塗料が浸透しにくく外観に優れ、そのうえ耐熱性、耐候性、耐水性が良好な着色層を形成できる。
【0011】
繊維素系樹脂は、樹脂成分中2〜100質量%含まれることが好適である。2質量%未満であると、着色層に活性エネルギー線硬化型塗料が浸透しやすくなり、外観が低下したり、着色層とその上に形成された活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートとの付着性が低下したりする可能性がある。より好ましい繊維素系樹脂の量は、樹脂成分中30〜80質量%である。
【0012】
樹脂成分には、繊維素系樹脂以外の樹脂が含まれていてもよい。繊維素系樹脂以外の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂などが挙げられ、着色層が施される対象物の材質などにより、必要に応じて使用できる。
着色塗料組成物における樹脂成分の比率には特に制限はないが、着色塗料組成物中5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。5質量%未満では形成される塗膜の厚さが薄くなり、隠蔽性が不十分となる場合があり、50質量%を超えると レベリング性が低下して外観が低下する場合がある。
【0013】
着色塗料組成物には、樹脂成分を溶解または分散させるための溶剤を適宜使用できる。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶剤が挙げられ、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0014】
着色塗料組成物には、さらに着色のための顔料が含まれる。
顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム酸鉛などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッドなどの有機顔料が挙げられ、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。顔料を含有することにより、対象物の隠蔽性に優れた着色層を形成可能な着色塗料組成物とすることができる。
また、着色塗料組成物には、体質顔料、各種添加剤などが任意成分として必要に応じて含まれてもよい。
体質顔料としては、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられ、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
着色塗料組成物におけるこれら成分の比率には特に制限はないが、着色塗料組成物中、顔料は通常0.5〜20質量%の範囲、体質顔料は通常0〜20質量%の範囲で使用される。
添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面調整剤、可塑剤、顔料沈降防止剤など、通常の塗料に用いられる添加剤が適宜使用できる。
【0015】
着色塗料組成物は、樹脂成分と顔料と溶剤と必要に応じて使用される任意成分とをロールミルなどで混合することにより調製できる。調製された着色塗料組成物は、乾燥塗膜厚さが通常10〜30μmとなるように対象物に塗装され、着色層となる。塗装方法としては、スプレー塗装法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、カーテンコート法、フローコート法、浸漬塗り法などが挙げられ、特に制限はないが、スプレー塗装法が作業性などの点から好適である。なお、塗装に際しては、シンナーなどで着色塗料組成物を適宜希釈して使用してもよい。
【0016】
このように形成された着色層上には活性エネルギー線硬化型塗料が塗装され、紫外線などの活性エネルギー線が照射されて、通常厚みが10〜30μm程度のトップコートが形成される。
活性エネルギー線硬化型塗料としては特に制限はなく、紫外線により硬化するUV塗料などが使用できる。UV塗料は、通常モノマー、オリゴマー、ポリマー、光重合開始剤、溶剤が組み合わされて構成される。モノマーとしては単官能モノマーと2官能以上の多官能モノマーとが挙げられ、単官能モノマーは主に反応性希釈剤として使用され、多官能モノマーは架橋成分として用いられる。オリゴマーは塗料の主成分であって付着性などの物性を支配するものである。ポリマーは硬化時の収縮応力を緩和させて付着性を向上させるなどの目的で使用される。溶剤はオリゴマーやポリマーの添加で増粘した塗料の塗装性を高めるとともに、対象物に対するアンカー効果や拡散効果で付着性を高める作用を奏する。光重合開始剤は紫外線を吸収して開裂し、ラジカルを発生させてモノマー、オリゴマーの重合を開始させるものである。
【0017】
また、活性エネルギー線硬化型塗料は、環境面から溶剤を含まない無溶剤型であってもよい。活性エネルギー線硬化型塗料が無溶剤型である場合には、溶剤を含むことによる付着性向上効果、すなわち対象物へのアンカー効果や含有するモノマーやオリゴマーの拡散効果が期待できないため、特に着色層との付着性が低下しやすい傾向があるが、本発明の着色塗料組成物からなる着色層によれば、無溶剤型の活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートに対しても付着性が良好となる。よって、トップコートが無溶剤型の活性エネルギー線硬化型塗料からなる場合、その効果は顕著となる。
【0018】
以上説明したように、繊維素系樹脂を含有する樹脂成分と顔料とを含む着色塗料組成物によれば、活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートとの付着性が良好で、活性エネルギー線硬化型塗料が浸透しにくく外観が良好な着色層を形成できる。また、1液乾燥型であるために高い生産性で着色層を形成でき、しかもその隠蔽性も優れたものとなる。
【実施例】
【0019】
以下本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
繊維素系樹脂であるセルロース・アセテート・ブチレート樹脂CAB551−0.2(イーストマンケミカル社製)65質量部に、黒色の顔料であるカーボンブラックFW200(デグサ社製)30質量部と、可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)5質量部とをロールミルで分散させて着色チップを作製した。
この着色チップ2質量部と、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂であるCAB551−0.01(イーストマンケミカル社製)18質量部と、酢酸ブチル30質量部と、キシレン20質量部と、メチルイソブチルケトン30質量部とを混合撹拌し、樹脂成分中のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂の含有量が100質量%である1液乾燥型の着色塗料組成物(1)を調製した。
この着色塗料組成物(1)を、乾燥塗膜厚さが20〜25μmになるように、ABSからなる基材(対象物)にスプレーガンでスプレー塗装し、IR乾燥機にて90℃で1分間乾燥することにより、着色層を形成した。
形成された着色層は、ABSからなる基材に対して良好な隠蔽性を有していた。
次に、形成された着色層の上に無溶剤型アクリル樹脂系UV塗料であるPG2957U−6(藤倉化成(株)製)を塗布した後、積算光量が1000mj/cmとなるようにUV照射を行い、厚さ25μmのUVトップコートを形成した。
このように着色層およびUVトップコートからなる塗膜が形成された基材に対して、以下に示すように初期と温水処理後における外観評価および付着試験を実施した。なお、温水処理とは、基材を40℃の温水中に10日間放置する処理である。
【0020】
[外観評価]
塗膜の外観を目視にて評価した。
表中「良好」とは、シワなどがなく、光沢が良好であることを指す。また、「ブリスター発生」とは、塗膜面に気泡状の膨れが発生した状態を示すものである。
[付着試験]
塗膜に1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れた。碁盤目状の部分にテープを貼着し剥がす操作を実施した。テープにUVトップコートが付着して、着色層との間が剥離した碁盤目の数NをN/100として表に示す。100/100は全く剥離がない状態である。また、テープとしては、セロハンテープ(登録商標)を使用した。
【0021】
[実施例2]
繊維素系樹脂であるセルロース・アセテート・ブチレート樹脂CAB551−0.01(イーストマンケミカル社製)10質量部と、樹脂成分が29.6質量%であって、その中の18.8質量%がセルロース・アセテート・ブチレート樹脂で残りがアクリル樹脂である1液乾燥型塗料(レクラック♯72ブラック、藤倉化成(株)製、カーボンブラック3.0質量%)100質量部とを混合し、樹脂成分中のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂の含有量が39.3質量%である1液乾燥型の着色塗料組成物(2)を調製した。
この着色塗料組成物(2)100質量部に対して、シンナー(レクラック♯5973シンナー、藤倉化成(株)製)100質量部を加えて希釈した後、これを、乾燥塗膜厚さが20〜25μmになるように、ABSからなる基材にスプレーガンでスプレー塗装し、IR乾燥機にて90℃で1分間乾燥することにより、着色層を形成した。
形成された着色層は、ABSからなる基材に対して良好な隠蔽性を有していた。
次に、形成された着色層の上に無溶剤型アクリル樹脂系UV塗料であるPG2957U−8(藤倉化成(株)製)を塗布した後、積算光量が1000mj/cmとなるようにUV照射を行い、厚さ25μmのUVトップコートを形成した。
このように着色層およびUVトップコートからなる塗膜が形成された基材に対して、実施例1と同様にして評価および試験を実施した。
【0022】
[実施例3]
繊維素系樹脂であるセルロース・アセテート・ブチレート樹脂CAB551−0.01(イーストマンケミカル社製)25質量部と、樹脂成分としてアクリル樹脂と塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、繊維素系樹脂を含有しない1液乾燥型塗料(レクラック22Mブラック、藤倉化成(株)製、樹脂成分37.0質量%、カーボンブラック3.0質量%)100質量部と、メチルエチルケトン30質量部とを混合し、樹脂成分中のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂の含有量が40.3質量%である1液乾燥型の着色塗料組成物(3)を調製した。
この着色塗料組成物(3)100質量部に対して、シンナー(レクラック♯204シンナー、藤倉化成(株)製)100質量部を加えて希釈した後、これを、乾燥塗膜厚さが20〜25μmになるように、PPからなる基材にスプレーガンでスプレー塗装し、IR乾燥機にて90℃で1分間乾燥することにより、着色層を形成した。
形成された着色層は、PPからなる基材に対して良好な隠蔽性を有していた。
次に、形成された着色層の上に溶剤を含有するアクリル樹脂系UV塗料であるHO2425U(藤倉化成(株)製)を塗布した後、積算光量が500mj/cmとなるようにUV照射を行い、厚さ10μmのUVトップコートを形成した。
このように着色層およびUVトップコートからなる塗膜が形成された基材に対して、実施例1と同様にして評価および試験を実施した。
【0023】
[実施例4]
繊維素系樹脂であるセルロース・アセテート・ブチレート樹脂CAB551−0.01(イーストマンケミカル社製)3質量部と、樹脂成分としてアクリル樹脂を含有し、繊維素系樹脂を含有しない1液乾燥型塗料(レクラック♯440ブラックD、藤倉化成(株)製、樹脂成分39.8質量%、カーボンブラック2.2質量%)100質量部とを混合し、樹脂成分中のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂の含有量が7.0質量%である1液乾燥型の着色塗料組成物(4)を調製した。
この着色塗料組成物(4)100質量部に対して、シンナー(レクラック♯5973)50質量部を加えて希釈した後、これを、乾燥塗膜厚さが20〜25μmになるように、ABSからなる基材にスプレーガンでスプレー塗装し、IR乾燥機にて90℃で1分間乾燥することにより、着色層を形成した。
形成された着色層は、ABSからなる基材に対して良好な隠蔽性を有していた。
次に、形成された着色層の上に無溶剤型アクリル樹脂系UV塗料であるPG2957U−8(藤倉化成(株)製)を塗布した後、積算光量が1000mj/cmとなるようにUV照射を行い、厚さ25μmのUVトップコートを形成した。
このように着色層およびUVトップコートからなる塗膜が形成された基材に対して、実施例1と同様にして評価および試験を実施した。
【0024】
[比較例1]
樹脂成分としてアクリル樹脂を含有し、繊維素系樹脂を含有しない1液乾燥型塗料(レクラック♯440ブラックD、藤倉化成(株)製、樹脂成分29.6質量%、カーボンブラック2.2質量%)を、着色塗料組成物(5)とした。
この着色塗料組成物(5)100質量部に対して、シンナー(レクラック♯5973シンナー、藤倉化成(株)製)50質量部を加えて希釈した後、これを、乾燥塗膜厚さが20〜25μmになるように、ABSからなる基材にスプレーガンでスプレー塗装し、IR乾燥機にて90℃で1分間乾燥することにより、着色層を形成した。
形成された着色層は、ABSからなる基材に対して良好な隠蔽性を有していた。
次に、形成された着色層の上に無溶剤型アクリル樹脂系UV塗料であるPG2957U−10(藤倉化成(株)製)を塗布した後、積算光量が1000mj/cmとなるようにUV照射を行い、厚さ25μmのUVトップコートを形成した。
このように着色層およびUVトップコートからなる塗膜が形成された基材に対して、実施例1と同様にして評価および試験を実施した。
【0025】
[比較例2]
樹脂成分としてアクリル樹脂と塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、繊維素系樹脂を含有しない1液乾燥型塗料(レクラック22Mブラック、藤倉化成(株)製、樹脂成分37.0質量%、カーボンブラック3.0質量%)を、着色塗料組成物(6)とした。
この着色塗料組成物(6)100質量部に対して、シンナー(レクラック♯204シンナー、藤倉化成(株)製)80質量部を加えて希釈した後、これを、乾燥塗膜厚さが20〜25μmになるように、PPからなる基材にスプレーガンでスプレー塗装し、IR乾燥機にて90℃で1分間乾燥することにより、着色層を形成した。
形成された着色層は、ABSからなる基材に対して良好な隠蔽性を有していた。
次に、形成された着色層の上に、溶剤を含有するアクリル樹脂系UV塗料であるHO2425U(藤倉化成(株)製)を塗布した後、積算光量が500mj/cmとなるようにUV照射を行い、UVトップコートを形成した。
このように着色層およびUVトップコートからなる塗膜が形成された基材に対して、実施例1と同様にして評価および試験を実施した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、繊維素系樹脂を含有する樹脂成分を含む実施例の着色塗料組成物(1)〜(4)を用いて着色層を形成し、その上にUVトップコートを形成することにより、シワなどがなく、光沢が良好である塗膜を形成できた。また、着色層とUVトップコート層との間の付着性も良好で、そのような良好な付着性は温水処理後にも維持されていた。一方、繊維素系樹脂を含有しない樹脂成分を含む比較例の着色塗料組成物(5)〜(6)を用いて着色層を形成し、その上にUVトップコートを形成すると、塗膜の全面にシワが発生し、光沢も認められなかった。そして、温水処理後には、ブリスターが発生した。また、着色層とUVトップコート層との間の付着性も実施例のものより低くかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型塗料からなるトップコートが設けられる着色層を形成するための1液乾燥型の着色塗料組成物であって、
繊維素系樹脂を含有する樹脂成分と、顔料とを含むことを特徴とする着色塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂成分中の前記繊維素系樹脂の含有量が2質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の着色塗料組成物。
【請求項3】
前記繊維素系樹脂は、酢酸セルロース系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の着色塗料組成物。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型塗料は無溶剤型であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の着色塗料組成物。


【公開番号】特開2006−249360(P2006−249360A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70972(P2005−70972)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】