説明

着色粒子及びカラートナー

【課題】透明性、色再現性及び耐光性に優れた着色粒子及びカラートナーを提供する。
【解決手段】スルホ基を有する成分を含有する樹脂及び染料からなる着色粒子であって、前記スルホ基の含有量が1×10−4〜20×10−4モル/gであり、前記染料の含有量が1〜50重量%である着色粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、色再現性及び耐光性に優れた着色粒子及びカラートナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラートナーとしては、一般に熱可塑性樹脂中にカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤及びその他添加剤を溶融混練し、次いで、粉砕、分級、調製する、いわゆる粉砕法と呼ばれる方法により製造されたものが用いられてきた。
【0003】
これに対して、近年では、高画質の観点から小粒径化が望まれており、小粒径トナーを製造する方法として、粉砕法に代わり、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されているような、懸濁重合、乳化重合等を用いたカラートナーの製造方法が開発されている。
【0004】
懸濁重合法により製造されたカラートナーは、球形で表面性が均一なトナーを形成することができ、トナー間での均一性が高くなる。また、乳化重合法により製造されたカラートナーは、形状を容易に制御することができる
【0005】
このように、懸濁重合法、乳化重合法等により製造されるカラートナー用の着色剤としては、通常、耐光性に優れるという理由から顔料が広く使用されている。しかしながら、近年のカラートナーの小粒径化に伴って、顔料についても微小化して、分散性を付与する必要が生じ、そのために大幅なコストアップとなっていた。また、顔料は微細化によって耐光性が低下するため、今後、カラートナーの更なる小粒径化が進んだ場合には、充分な耐光性が得られなくなることが考えられていた。
【特許文献1】特公昭36−10231号公報
【特許文献2】特公昭47−518305号公報
【特許文献3】特公昭51−14895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、透明性、色再現性及び耐光性に優れた着色粒子及びカラートナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スルホ基を有する成分を含有する樹脂及び染料からなる着色粒子であって、前記スルホ基の含有量が1×10−4〜20×10−4モル/gであり、前記染料の含有量が1〜50重量%であることを特徴とする着色粒子である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定量のスルホ基を有する成分を含有する樹脂は、染料とスルホ基との結合力が高いことから、これらを含有する着色粒子では、染料を粒子中に安定的に固定することができ、優れた透明性、色再現性及び耐光性を発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の着色粒子は、スルホ基を有する成分を含有する樹脂からなる。
このような樹脂で構成されることにより、樹脂と染料との結合力が高められ、染料を樹脂中に安定的に固定することができる。
【0010】
上記スルホ基を有する成分を含有する樹脂は、粒子となった際に内部にスルホ基が存在し、外部に流出していかないものであることが好ましい。このようなスルホ基を有する成分を含有する樹脂の具体的な構造としては、主鎖にスルホ基を有するものであることが好ましい。
【0011】
上記スルホ基を有する成分としては、重合性スルホン酸系モノマーに由来するものであることが好ましい。上記重合性スルホン酸系モノマーとしては特に限定されず、例えば、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホン化スチレン、アリルスルホコハク酸等が挙げられるが、重合性の観点から、スルホン化スチレン、アリルスルホコハク酸等が好ましい。
【0012】
本発明において、上記スルホ基の含有量の下限は1×10−4モル/g、上限は20×10−4モル/gである。上記スルホ基の含有量を上記範囲内とすることで、上記染料を多量に着色粒子中に導入できる。1×10−4モル/g未満であると、染料の着色粒子への導入率が非常に低くなり、着色粒子として使用できない。20×10−4モル/gを超えると、得られる着色粒子同士の凝集が生成するため、トナー等の用途に使用できない。好ましい下限は5×10−4モル/g、好ましい上限は15×10−4モル/gである。
【0013】
上記スルホ基を有する成分を含有する樹脂は、更に、活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントを含有することが好ましい。
上記活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントは、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーに由来するものであることが好ましい。
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーは、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと相溶するものであり、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと相溶することで、上記活性水素を有する官能基を効率的に樹脂内部に導入することができ、染料を着色粒子の中心部まで導入することができる。
そのため、上記活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントを含有することで、樹脂と染料との結合力が向上し、耐光性を更に向上させることが可能となる。
【0014】
上記活性水素を有する官能基としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基、スルホ基が好ましい。これらの官能基は1種であってもよく、2種以上が存在してもよい。
【0015】
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーとしては、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと相溶するものであれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、アミノ基等を有するα,β−エチレン性不飽和化合物が挙げられる。なかでも、カルボキシル基、スルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物が好ましい。
【0016】
上記活性水素を有する官能基として、カルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
また、上記活性水素を有する官能基として、上記スルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては特に限定されないが、スルホ基を有さないモノマーとの共重合反応を行う場合、重合性の面でスルホン化スチレン、アリルスルホコハク酸等が好ましい。スルホ基の導入に際して、スルホン酸系の乳化剤の使用が合成時に考えられるが、乳化効果という面では非常に大きな効果があるが、着色粒子内へのスルホ基の導入にあたっては効果が小さく、むしろ帯電性には悪影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーは、無水物であることが好ましい。上記無水物は通常油溶性であるため、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーと容易に相溶させることができる。
【0018】
上記活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントの含有量の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は80重量%である。上記活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントの含有量が上記範囲内であると、染料と樹脂との結合力が向上するため、染着率が増大し、耐光性を更に向上させることが可能となる。より好ましい下限が5重量%、より好ましい上限が30重量%である。
【0019】
上記スルホ基を有する成分を含有する樹脂は、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーに由来する成分を含有してもよい。上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマー以外のモノマーとしては特に限定されず、例えば、疎水性単量体、架橋性単量体等が挙げられる。
【0020】
上記疎水性単量体としては特に限定されず、例えば、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。
【0021】
上記モノビニル芳香族系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0023】
上記ビニルエステル系単量体としては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル系単量体としては特に限定されず、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
上記モノオレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
上記ジオレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
上記原料モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記架橋性単量体としては特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0026】
本発明の着色粒子は、染料を含有する。
上記染料を含有することにより、透明性、色再現性が向上し、小粒径化した場合にも、充分な耐光性を有する着色粒子とすることができる。
【0027】
上記染料としては、油溶性染料、及び水溶性染料が使用できるが、イオン性化合物であることが好ましい。上記イオン性化合物を用いることで、樹脂中のスルホ基との結合力が高まり、着色粒子中の染料含有率を高めることができる。なかでも、カチオン性染料であることが好ましい。
【0028】
上記染料としては特に限定されず、例えば、ベーシックイエロー1、2、3、13、11、21、36、28、40、73;ベーシックオレンジ21、22、30;ベーシックレッド12、13、14、18、27、36、38、39、46、69、70;ベーシックバイオレット7、10、11、15、16、27、28;ベーシックブルー1、4、7、9、26、35、41、65、66、67、75、77、129;ベーシックグリーン4等のカラーインデックスを有するものが挙げられる。
【0029】
また、上記染料は、水溶性であることが好ましい。上記染料が水溶性であることにより、粒子エマルションに対して、効率的に染料を導入することができる。なお、上記染料による着色は、粒子の重合前に行ってもよく、重合後に行ってもよい。
【0030】
本発明の着色粒子は、クロロホルムに溶解して0.1重量%溶液とした場合の波長350nmにおける光線透過率の上限は35%であり、波長400nmにおける光線透過率の下限は80%であることが好ましい。
波長350nmでの光線透過率が35%を超えると、紫外線吸収効果が不充分となり、静電荷像現像用トナー等の用途に使用することができないことがある。好ましい上限は25%、より好ましい上限は15%である。また、波長400nmにおける光線透過率が80%未満であると、高波長域での吸収によって、着色粒子が着色してしまうことがある。好ましい下限は85%である。より好ましい下限は90%である。
【0031】
本発明の着色粒子の平均粒子径の好ましい下限は20nm、好ましい上限は500nmである。20nm未満であると、着色粒子間で凝集が発生することがある。500nmを超えると、静電荷像現像用トナーとして使用する場合に、解像度等の性能が不充分となることがある。より好ましい下限は40nm、より好ましい上限は300nmである。
【0032】
本発明の着色粒子は、粒子径のCV値の好ましい上限が50%である。50%を超えると、着色粒子からなる着色剤の色目のバラツキ、熱特性などの物性のバラツキにつながることがある。
【0033】
本発明の着色粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が好適に用いられる。具体的には、重合性スルホン酸系モノマーをはじめとする原料モノマー、染料等をモノマー油滴中に予め配合しておき、乳化重合法、懸濁重合法を用いることで、これらを樹脂粒子中に導入する方法等が挙げられる。
【0034】
上記着色粒子を製造する際の重合は、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーを含有する混合モノマーを添加して行うことが好ましい。
また、上記着色粒子を製造する際の重合は、上記活性水素を有する官能基を1分子中に2個以上有するモノマーのほかに、上記重合性モノマーを添加して重合を行ってもよい。
【0035】
上記着色粒子を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。上記重合開始剤としては特に限定されず、従来公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0036】
上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせ、レドックス系開始剤とすることができる。上記レドックス系開始剤を用いることで、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0037】
本発明の着色粒子を着色剤として用いることによって、カラートナーを製造することができる。このようなカラートナーもまた、本発明の1つである。
本発明のカラートナーは、優れた透明性、色再現性及び耐光性を発現することができる。
【0038】
本発明のカラートナーを製造する方法としては特に限定されず、例えば、本発明の着色粒子とトナー用樹脂粒子とを塩析、凝集及び融着させることにより製造したカラートナー用樹脂粒子に、疎水性シリカ、疎水性酸化チタン等を添加し、ヘンシェルミキサー等で混合することにより製造することができる。
本発明のカラートナーの用途としては特に限定されず、例えば、静電荷現像用トナー、液体トナー等、様々な用途に使用することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、透明性、色再現性及び耐光性に優れた着色粒子及びカラートナーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(1)着色粒子分散液の作製
ビーカーにメタクリル酸メチル90重量部、無水マレイン酸10重量部、紫外線吸収剤A8重量部(JF−77、城北化学社製)、紫外線吸収剤B3重量部(RUVA−93、大塚化学社製)、イオン交換水756重量部、乳化剤としてn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.62重量部(SC−F、第一工業製薬社製)、乳化助剤としてステアリルメタクリレート10重量部(ライトエステル−S、共栄社化学社製)、及び、重合開始剤として過硫酸アンモニウム5.4重量部を入れ、超音波ホモジナイザー(UH−600S、エスエムテー社製)を用いて分散乳化させた。得られた乳化液をセパラブルフラスコに入れ、更にp−スチレンスルホン酸ナトリウム溶液100重量部(12%水溶液)も投入し、分散させた後、窒素気流下で60℃、4時間反応させた。その後、冷却することで着色用粒子分散液を得た。得られた着色用粒子分散液において着色用粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、101nmであった。
次に、ビーカーに酢酸ソーダ水溶液(1%)14重量部、酢酸水溶液(10%)14重量部、イオン交換水1024重量部、ポリビニルアルコール水溶液(10%)10重量部を入れ、攪拌した。これに、上記着色用粒子分散液70重量部を投入し分散させた後に染料水溶液(0.5%、Blue.3GLH、保土谷化学工業社製)385重量部を投入し、常温で1時間染着して、着色粒子分散液を得た。
【0042】
(2)トナー樹脂粒子ラテックスの作製
ビーカーにWAX分散液(ポリプロピレンエマルション、平均分子量:3000、数平均一次粒子径:120nm、固形分濃度30.0%)16.7重量部と、乳化剤としてn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SC−F、第一工業製薬社製)2.7重量部を混合し、スチレン168重量部、メタクリル酸メチル36重量部、アクリル酸ブチル36重量部、分子量調整剤として1−オクタンチオール5.8重量部、イオン交換水960重量部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム6重量部、及び、重合開始剤として過硫酸アンモニウム4.8重量部を入れ、超音波ホモジナイザー(UH−600S、エスエムテー社製)を用いて分散乳化させた。得られた乳化液をセパラブルフラスコに入れた後、窒素気流下で、60℃、4時間反応させた。その後、冷却することでトナー樹脂粒子ラテックスを得た。得られたトナー樹脂粒子ラテックスの平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、108nmであった。
【0043】
(3)荷電制御分散液の作製
n−ドデシル硫酸ナトリウム5.0重量部をイオン交換水100重量部に攪拌溶解しながら、サリチル酸系錯体(TN−105、保土谷化学工業社製)2重量部を徐々に添加し、次いで、攪拌装置(クリアミックス、エム・テクニック社製)を用いて分散させ、荷電制御分散液を得た。得られた荷電制御分散液の粒径を、電気泳動光散乱光度計(ELS−800、大塚電子工業社製)を用いて測定した結果、重量平均粒径は220nmであった。
【0044】
(4)カラートナーの作製
得られたトナー樹脂粒子ラテックス150重量部、イオン交換水1350重量部及び得られた着色粒子分散液1500重量部を反応容器に入れ、窒素気流下、30℃で5N−水酸化ナトリウム水溶液でpHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム6水和物56重量部をイオン交換水72重量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃で5分かけて添加した。その後、5分間放置して、昇温を開始し、5分間で85℃まで昇温した。この状態でコールターカウンター(TA−II、コールター社製)を用いて分散径を測定し、体積平均分散径が4μmになった時点で得られた荷電制御剤分散液50重量部を加え、更に塩析、融着を継続し、体積平均粒径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム110重量部をイオン交換水800重量部に溶解した水溶液を添加して、粒径成長を停止させ、更に継続して液温度90±2℃にて、8時間加熱攪拌し、塩析、融着させた。その後、5℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加して、pHを2.0に調整し、攪拌を停止した。
生成した着色樹脂粒子を濾過、洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥して、カラートナー用樹脂粒子を得た。得られたカラートナー用樹脂粒子100重量部に対して、外添剤としてシリカ(R972、日本アエロジル社製)を2重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、カラートナーを得た。
【0045】
(実施例2)
ビーカーにメタクリル酸メチル90重量部、紫外線吸収剤(JF−77、城北化学社製)8重量部、反応性紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学社製)3重量部、p−スチレンスルホン酸ナトリウム12重量部、染料(SOT Blue−2、保土谷化学工業社製)40重量部、無水マレイン酸10重量部、イオン交換水756重量部、乳化剤としてn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.6重量部、乳化助剤としてステアリルメタクリレート(ライトエステル−S、共栄社化学社製)10重量部、及び、重合開始剤として過硫酸アンモニウム5.4重量部を入れ、超音波ホモジナイザー(UH−600S、エスエムテー社製)を用いて分散乳化させた。得られた乳化液をセパラブルフラスコに入れ、窒素気流下で60℃、4時間反応させた。その後、冷却することで着色粒子分散液を得た。得られた着色粒子分散液において着色粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、103nmであった。
実施例1(2)で得られたトナー樹脂粒子ラテックス363重量部、イオン交換水2500重量部及び得られた着色粒子分散液100重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして着色樹脂粒子及びカラートナー用樹脂粒子を作製し、カラートナーを得た。
【0046】
(実施例3)
実施例1(1)で得られた着色粒子分散液、及び、実施例1(2)で得られたトナー樹脂粒子ラテックスを噴霧乾燥し、着色粒子粉及びトナー樹脂粉を得た。上記トナー樹脂粉100重量部に対して、着色粒子粉31重量部、荷電制御剤であるサリチル酸系錯体(TN−105、保土谷化学工業社製)2.6重量部を配合し、コンテイニアスニーダー(栗本鐵工所社製)によって溶融混合し、冷却後、コーヒーミル(CARIOCA−MILL、松下電器産業社製)で粗粉砕し、更にジェットミル(ラボジェット、日本ニューマチック工業社製)で微粉砕し、分級機(MDS−2、日本ニューマチック工業社製)で50%平均粒度が9.0μmであるカラートナー用樹脂粒子を得た。
得られたカラートナー用樹脂粒子100重量部に外添剤としてシリカ(R972、日本アエロジル社製)2重量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、カラートナーを得た。
【0047】
(比較例1)
p−スチレンスルホン酸ナトリウムを用いなかった以外は、実施例1と同様にして着色用粒子分散液、着色粒子分散液、カラートナーを得た。得られた着色用粒子分散液において着色用粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、121nmであった。
【0048】
(比較例2)
カラートナーの作製において、実施例(1)で得られた着色粒子分散液1500重量部の代わりに、顔料ペースト(SF670 ブルー、大日本インキ化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラートナーを得た。
顔料ペースト中の顔料粒子の平均粒子径を粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて測定したところ、98nmであった。
【0049】
(評価)
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた着色粒子分散液及びカラートナーについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0050】
(1)着色粒子の評価
(1−1)平均粒子径及びCV値の測定
粒度分布計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)を用いて平均粒子径、CV値を測定した。
【0051】
(1−2)スルホ基含有量の測定
得られた着色粒子分散液をセルロース半透膜で透析を行った後、一旦乾燥させてから少量のテトラヒドロフランに完全に溶解させ、再度純水で希釈して2.5重量%の水/テトラヒドロフラン(50/50(W/W))溶液を作製した。この溶液を電位差自動滴定装置(AT−510、京都電子工業社製)を用いて、1/20N−水酸化ナトリウム水溶液にて中和滴定し、滴定量からスルホ基含有量の測定を行った。
【0052】
(1−3)紫外線透過率の測定
得られた着色粒子分散液を乾燥させた後、クロロホルムに溶解させることにより、0.1重量%クロロホルム溶液を作製した。得られた溶液について、分光光度計(U−3000、日立製作所社製)を用い、スキャン速度120nm/分にて測定波長350nm、400nmにおける光線透過率を測定した。
【0053】
(2)カラートナーの評価
(2−1)染料含有量の測定
得られたカラートナーをクロロホルムに溶解し、紫外線スペクトルにより測定した。
(2−2)平均粒子径の測定
粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所社製)を用いて測定した。
【0054】
(2−3)耐光性評価
得られたカラートナー、カラープリンター(LBP2260、キヤノン社製)及びAdobe Illustrator 8.0Jを用い、シアン100%の画像(その他の色設定は0%)を上質紙に印刷し、評価用印刷物を得た。
得られた評価用印刷物について、JIS L 0842に準拠した方法で、紫外線フェードメーター(U48AUB(ランプ:カーボンアーク)、スガ試験機社製)を用いて、80時間照射し、色差計(TC−1800MKII、TOKYO DENSHOKU社製)にて試験前との色差(ΔE)を測定し、以下の基準で等級を評価した。
○:3−4級以上
△:3級
×:3級未満
【0055】
(2−4)透明性評価
得られたカラートナーを用いて、熱プレスによりカラートナーフィルム(厚さ:30μm)を作製し、更に2枚のガラス板(厚さ:1.31mm)で挟み、カラートナーフィルムを両面から積層した。
得られたサンプルについて、JIS K 7150に準拠した方法で、ヘイズ値を測定した。
○:40未満
△:40以上50未満
×:50以上
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、透明性、色再現性及び耐光性に優れる着色粒子及びカラートナーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホ基を有する成分を含有する樹脂及び染料からなる着色粒子であって、
前記スルホ基の含有量が1×10−4〜20×10−4モル/gであり、
前記染料の含有量が1〜50重量%である
ことを特徴とする着色粒子。
【請求項2】
スルホ基を有する成分は、重合性スルホン酸系モノマーに由来するものであることを特徴とする請求項1記載の着色粒子。
【請求項3】
スルホ基を有する成分を含有する樹脂は、更に、活性水素を有する官能基を2個以上有するセグメントを0.5〜80重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の着色粒子。
【請求項4】
染料は、イオン性化合物であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の着色粒子。
【請求項5】
染料は、水溶性であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の着色粒子。
【請求項6】
クロロホルムに溶解して0.1重量%溶液とした場合の波長350nmにおける光線透過率が35%以下、波長400nmにおける光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の着色粒子。
【請求項7】
平均粒子径が20〜500nmであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の着色粒子。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の着色粒子を着色剤として用いてなることを特徴とするカラートナー。

【公開番号】特開2007−101708(P2007−101708A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288975(P2005−288975)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】