説明

矩形状の生地部材

【課題】タオルや御絞り等の矩形状の生地部材において、短手方向の端縁部を容易に識別することのできる生地部材を提供する。
【解決手段】矩形状の生地部材1であって、当該生地部材1の4角部に互いに平行で生地本体9よりも硬いマーカー部分7A〜7Dを備え、前記マーカー部分7A〜7Dは、生地本体9の長手方向に平行に設けてある。また、前記マーカー部分7A〜7Dは、生地本体9の端縁部5A、5Bに備えられている折返し部の幅よりも長く設けてあり、かつ前記マーカー部分7A〜7Dは、生地本体9の部分と色採を異にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタオルや御絞り等のごとき矩形状の生地部材に係り、さらに詳細には、角部を識別し易い生地部材に関する。
【背景技術】
【0002】
矩形状の生地部材の1例としてのタオルや御絞りなどは、使用後には工場において洗濯、乾燥され、その後に2つ折り又は3つ折りに折り畳んだり、あるいは円柱状に巻き込み、樹脂フィルム等によって包装することが行われて、再使用されている。上述のように、再使用のためにタオル等を折り畳む場合は、折り畳み装置に対してタオル等を供給することによって行われている(特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3583686号公報
【特許文献2】特開2008−253502号公報
【特許文献3】特開2002−211523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タオル等を折り畳み装置に対して供給する場合には、洗濯し乾燥された大量のタオル等を収容した容器から人手によってタオル等を取り出す。そして、折り畳み装置に備えた搬入コンベア上に、タオル等の長手方向の側縁又は短手方向の側縁が搬入コンベアの搬入方向と平行になるように、すなわち短手方向又は長手方向の一方の側縁が前記搬入コンベアの搬入方向と直交するように、前記搬入コンベア上に載置供給している。
【0005】
上述のように、タオル等の一方の側縁が搬入コンベアの搬入方向に対して直交する方向となるように載置供給するには、大量のタオル等を収容した容器からタオル等を取り上げて広げる必要がある。この場合、タオル等の角部を保持して一方の側縁に張りを与えた後に搬送コンベア上に載置供給することが一般的である。したがって、折り畳み装置における搬入コンベアにタオル等を能率よく迅速に載置供給するには、作業者が直ちに角部を知る必要がある。
【0006】
ところが、従来の御絞りやタオル等は、単に矩形状に形成してあるにすぎないものであった。したがって、作業者が話をしたり脇見をし乍ら作業をすると、タオル等の角部を直ちに知ることができず、能率向上を図る上において問題がある。
【0007】
また、折り畳み装置に対してタオル等を載置供給する作業の自動化を行うために、各種構成のロボット等が使用されつつある。この場合、タオル等の角部を検出するために、例えば前記特許文献3に記載されているように、容器内のタオル等を持ち上げた状態においての最下部が角度であるとして検出するものである。したがって、能率向上を図る上においてさらなる改良が求められていた。
【0008】
すなわち、ロボット等を用いて自動化を図るものであるから、容器内のタオル等をロボットハンドでもって把持するときに、最初からタオル等の角部を把持することが望まれている。この場合、ロボットハンドでもってタオル等の角部を単に把持するのみではなく、タオル等の角部に対しての把持方向をも明確に知ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、矩形状の生地部材であって、当該生地部材の4角部に互いに平行で生地本体よりも硬いマーカー部分をそれぞれ個別に備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記矩形状の生地部材において、前記マーカー部分は、生地本体の長手方向に平行に設けてあることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記矩形状の生地部材において、前記マーカー部分は、生地本体の端縁部に備えられている折返し部の幅よりも長く設けてあることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記矩形状の生地部材において、前記マーカー部分は、生地本体の部分と色採を異にしてあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、矩形状の生地部材における生地本体よりも硬いマーカー部分を、上記生地部材における4角部に互いに平行にそれぞれ個別に備えた構成であるから、生地部材に触れて硬い部分は角部であると直ちに認知することができる。そして、この硬い部分の長手方向に対して直交する方向の端縁を、折り畳み装置における搬入コンベアにおける搬入方向に対して直交する方向にして、上記搬入コンベア上に載置供給すればよいものと直ちに知ることができるものである。
【0014】
すなわち、作業者が、例えば脇見をし乍ら容器からタオル等を取り出した場合であっても、硬いマーカー部分に触れることにより、タオル等の角部及び搬入コンベアの搬入方向に対して直交する方向の端縁を知覚することができ、折り畳み装置における搬入コンベアへの載置供給の能率向上を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る矩形状の生地部材の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係る矩形状の生地部材1は、例えばタオルや御絞り等からなるものであって、長手方向に対向した側縁部(端縁部)には、ほつれ防止用に折り重ねて縫い合わせた折り重ね部(折返し部)3A,3Bが備えられている。また、前記生地部材1の長手方向に対して直交する方向の対向した側縁部(端縁部)には、前記折り重ね部3A,3Bよりも幅広く折り重ねた折り重ね部(折返し部)5A,5Bが備えられている。
【0017】
なお、タオル等のように、生地部材1が長方形である場合には、前記折返し部3A,3Bを、長手方向の対向した或いは幅小の端縁部又は側縁部3A,3Bと称し、前記折返し部5A,5Bは、短手方向の対向した或いは幅大の端縁部又は側縁部5A,5Bと称することとする。しかし、御絞り等の場合には、ほぼ正方形であって長手方向、短手方向は適当でないので、幅小の端縁部又は側縁部3A,3B、幅大の端縁部又は側縁部5A,5Bと称することとする。
【0018】
矩形状の前記生地部材1における4つの角部(隅部)の表裏両面にはそれぞれマーカー部分7A,7B,7C,7Dが長手方向に連続することなく個別に備えられている。上記各マーカー部分7A〜7Dは、生地部材1の長手方向に長く、すなわち前記幅大の端縁部5A,5Bの長手方向に対して直交する方向に長く形成してある。上記各マーカー部分7A〜7Dは、例えば小ピッチでもってジクザグ縫いを行うことや、他の布地を縫い付けるなどの適宜な方法によって、前記幅大の端縁部5A,5Bの幅寸法よりも長い矩形状に形成してある。しかし、マーカー部分7A〜7Dは、矩形状に限ることなく、生地部材1の長手方向に長く形成してあればよいものである。
【0019】
そして、前記各マーカー部分7A〜7Dは互いに平行に形成してあり、かつ前記生地部材1の生地本体9の部分よりも厚く、しかも硬くかつ単位面積当たりの重さを、生地本体9の部分の重さよりも重く構成してある。また、前記各マーカー部分7A〜7Dは、例えばロボットの視覚センサとしてのCCDカメラ等によって識別し易いように、前記生地本体9の部分と色採を異にしてある。すなわち、前記マーカー部分7A〜7Dは、生地本体9から視覚的、触覚的に識別し易く、しかも生地本体9よりも硬いことにより、当該マーカー部分7A〜7Dにおいて折り曲り難く形成してある。
【0020】
上記構成により、タオルや御絞り等の生地部材1を、大量に収容した容器(図示省略)から取り上げて(取り出して)、折り畳み装置における搬入コンベア上へ載置供給しようとする際、作業者は、マーカー部分7A〜7Dを生地部材1における生地本体9の部分との色採の相違によって直ちに角部として識別することができる。また、脇見をし乍ら生地部材1を取り出した場合であっても、マーカー部分7A〜7Dが生地本体9の部分より硬く、かつ幅大の端縁部5A,5Bの長手方向に対して直交する方向に長く形成してあることにより、生地部材1における前記幅大の端縁部5A,5Bの長手方向を、視覚及び/又は触覚によって容易に知ることができ、折り畳み装置における搬入コンベアの搬入方向に対して、前記幅大の端縁部5A,5Bを直交する方向に長くして容易に載置供給することができるものである。
【0021】
また、容器内から生地部材1をロボットによって取り出すときには、前記各マーカー部分7A〜7Dの色採が生地部材1における生地本体9と異なるために、視覚センサとしてのカメラによって撮像したときに、各マーカー部分7A〜7Dの位置及び長手方向を容易に識別することができる。よって、ロボットにおける一方のハンドによって適宜1つのマーカー部分7Aを把持するとき、当該マーカー部分7Aの長手方向に対して直交する方向からマーカー部分7Aを容易に把持して持ち上げることができるものである。また、マーカー部分7は生地本体9より難いので、ロボットハンドによって把持するとき、確実に把持することが出来るものである。
【0022】
上述のように、ロボットの一方のハンドによってマーカー部分7Aを、当該マーカー部分7Aの長手方向に対して直交する方向から把持して生地部材1を持ち上げると、対角位置のマーカー部分7Cが最下部になる。したがって、前記生地部材1における幅大の端縁部5Aの他端側のマーカー部分7Bを、ロボットの他方のハンドによって把持する場合に、前記容器内から折り畳み装置側へ生地部材1を移送する途中において、例えば水平に設けた棹などに引き掛け乍ら移送するとき、前記マーカー部分7Bが前記棹の部分を通過すると、マーカー部分7Bは、マーカー部分7Aの外端部を支点として、自重によって垂れ下がることになる。よって、前記マーカー部分7Bを容易に検出することができ、かつ側方向から把持することができるものである。
【0023】
すなわち、生地部材1を前述したごとき構成とすることにより、容器から生地部材1をロボットハンドによって持ち上げ、かつ一対のロボットハンドによって、幅大の端縁部5A又は5Bの両端部に備えたマーカー部分7A,7Bを、当該マーカー部分7A,7Bの長手方向に対して直交する方向、すなわち、生地部材1の側方向から把持することが容易である。したがって、折り畳み装置における搬入コンベア上へ、生地部材1における幅大の端縁部5A,5Bが搬入方向に対して直交するように、ロボットを使用して載置供給することが容易に行い得るものである。
【0024】
前述のごとく、ロボットハンドによってマーカー部分7A,7Bを把持したとき、マーカー部分7A,7Bは生地本体9の部分よりも硬くかつ曲り難く構成してあるので、生地部材1を確実、強固に把持することができる。したがって、ロボットによって生地部材1の広げ作用を行うようなとき、生地部材1に大きな張力を付与して広げることができるものである。
【0025】
なお、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、他の形態でもって実施可能なものである。例えば、生地部材1を2つ折りにして折り畳み装置の搬入コンベアへ載置供給するような場合には、図1に示すように、生地部材1における折り畳み線Lの両側にそれぞれマーカー部分11A〜11Dを設けることが望ましいものである。この場合、マーカー部分11A〜11Dの部分は硬く、折り畳み線Lの位置は軟らかであるから、折り畳み線Lの部分から容易に2つ折りすることができるものである。
【0026】
ところで、矩形状の生地部材1における平行な側縁を明示するために、生地部材1の互に平行な側縁に、生地本体9と色彩の異なる適宜幅の線を全長に亘って備えることも可能である。この場合、視覚的には線を設けた側縁と、当該側縁に直行する側縁と識別することができるものの、触覚的には識別不可能である。そこで、触覚的に識別可能にするために、前記線の部分を生地本体9よりも硬くすると、触覚的に識別可能になっても折り畳み難くなるものである。
【0027】
また、ロボットハンドによって前記線を確認して把持しようとするときには、前記線を確認したのみでは生地部材1の角部を認識することができず、生地部材1の角部をロボットハンドによって把持するには望ましいものではない。
【0028】
したがって、マーカー部分7A〜7Dを生地部材1の角部に、生地部材1の長手方向に長く設けることが望ましく、生地部材1の側縁に全長に亘って設けることは望ましいものではないものである。
【符号の説明】
【0029】
1 生地部材
3A,3B 側縁部(端縁部)
5A,5B 端縁部(側縁部)
7A〜7D マーカー部分
9 生地本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の生地部材であって、当該生地部材の4角部に互いに平行で生地本体よりも硬いマーカー部分をそれぞれ個別に備えていることを特徴とする矩形状の生地部材。
【請求項2】
請求項1に記載の矩形状の生地部材において、前記マーカー部分は、生地本体の長手方向に平行に設けてあることを特徴とする矩形状の生地部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の矩形状の生地部材において、前記マーカー部分は、生地本体の端縁部に備えられている折返し部の幅よりも長く設けてあることを特徴とする矩形状の生地部材。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の矩形状の生地部材において、前記マーカー部分は、生地本体の部分と色採を異にしてあることを特徴とする矩形状の生地部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−234820(P2011−234820A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107414(P2010−107414)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(591234411)株式会社白興商会 (6)
【Fターム(参考)】