説明

石炭、バイオマスおよびその他の有機固体を過熱水で溶解するプロセス

可溶化された有機溶質を形成するための、有機固体を過熱水に含まれるオキシダントと反応させることを含む有機固体を可溶化するプロセス。有機固体は、石炭、亜炭、ケローゲン、バイオマス、固形有機廃棄物およびその混合物から成る群から選択することが好ましい。オキシダントは分子酸素が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2009年2月11日に出願された米国特許仮出願第61/151,677号の優先権を主張し、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、有機固体の溶解に関する。より具体的には、本発明は、石炭あるいはバイオマスのような有機固体を過熱水のオキシダントと反応させることにより、有機固体を可溶化するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギーの自給がより重要となっているため、石油を他のエネルギー源に代える必要がある。例えば、これらのエネルギー源には、太陽光、風力、原子力、石炭およびバイオマスなどが含まれ得る。地球上の石炭資源は石油資源を大きく上回っており、地理的にも、石油資源よりもずっと均一に供給されている。しかしながら、従来の石炭を利用する技術は、地球環境に好ましくない影響を及ぼす場合が多い。
【0004】
石炭は、不溶性の高分子構造に基づいた、複雑で不均一な物質である。大部分において石炭の構造が不均一かつ複雑であると同時に、一般的に容認されているように不溶性であるが故に、この出発物質から価値の高い化学生成物を回収することは困難であり、従って、他の物質に対しては実行可能な処理や”精製”などの選択肢が制限されてしまうことになる。最も伝統的な石炭の利用戦略は、エネルギーの回収に基づいており、直接熱として回収されるか、あるいはより典型的に、営利的な規模において電気として回収される。石炭は採掘されてから洗浄され、実行可能な限り数多くの無機物が取り除かれる。その後、様々な燃焼装置のいずれかにおいて燃やされると、熱を発生させる。この熱を利用すれば、電気の発生に用いられる水蒸気を発生させることができる。
【0005】
ガス化には、石炭の合成ガス(CO+H)への変換と、それに続く電気の発生(IGCC)に対する合成ガスの利用又は合成液(Fischer−Tropsch/間接液化)の製造が含まれる。熱分解か、あるいは熱分解と同時に製司コークスを製造することにより、石炭から液体生成物を製造できる場合が多い。かつてコールタール産業は、生の化学原料の主要な供給源であったが、石炭に対する需要の低下、比較的低いコールタール(精製目的用)の質およびこれまでの石油由来の燃料の低価格により、商業的な規模でコールタールから化学原料が製造されることが大幅に減少した。
【0006】
直接液化技術が広範囲に探究されてきた。この利用戦略は、主として、合成の石油代替品を製造することにより輸送燃料を製造することを目的としていた。この試みの基礎をなす概念とは、還元的に結合を破壊して、石炭の高分子構造を限定的に分裂させることにより、石炭を液体生成物に変換することであった。これは、一般的に、通例は高圧で適度に高温な環境において、大抵はキャリア溶媒および通例は触媒物質を用いて、水素と共に石炭を処理することによって成し遂げられる場合が多かった。この技術が石炭を有用な生成物に変換するために経済的に実行可能であると首尾よく証明されたことはなく、また、この取り組みのほとんどは行われていない。
【0007】
上述した石炭を有用なエネルギーに変換する技術の他にも、超臨界水酸化により廃棄物を破壊するプロセスが存在している。超臨界流体とは、その熱力学的臨界点を上回る温度および圧力におけるすべての流体のことである。超臨界水酸化は、有機物質を完全に酸化させることを目的に設計され、一般的には、有害な廃棄物を破壊することを目的に用いられる。
【0008】
石炭の他にも、臨界未満の水を用いればスイッチグラスを部分的に低分子生成物に変換できることが研究により証明されている。235℃において、スイッチグラスに含まれる炭素の重量の51.1%までを変換できることが明らかとなった。Kumarら、Biocrude Production from Switchgrass Using Subcritical Water, Energy Fuels 23: 5151−5159 (2009)。さらに、回分反応器において、スイッチグラスについては、250℃で、最初の質量の54.8重量%までを変換でき、また300℃では、78.9重量%までを変換できることが明らかとなった。Chengら、Investigation of Rapid Conversion of Switchgrass in Subcritical Water, Fuel Process Tech. 90: 301−311 (2009)。
【0009】
石炭は、エネルギーの独立性が益々重要視されている時においては、重要な地球上のエネルギー資源である。地球上の石炭資源は石油資源を10倍超も大きく上回っており、地理的にも、石油資源よりもずっと均一に供給されている。しかしながら、石炭やその他の有機固体は硬く、また広範囲の環境問題につながるため、利用が禁止されている。先行技術ではこういった問題を解決できなかった。したがって、環境に悪影響を及ぼすことなく石炭などの有機固体を、ポンプでくみ上げたり蒸留したりすることができ、さもなければ従来の液体処理技術で処理できる液体に変換することが、長年にわたる化学技術の目標となっている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書で開示されているのは、少なくとも1つの可溶化された有機溶質を形成するための、有機固体を過熱水中のオキシダントと反応させることを含む有機固体を可溶化するプロセスである。開示された上記のプロセスの結果として可溶化された有機溶質も開示されている。上記の有機固体は、石炭、亜炭、ケローゲン、バイオマス、固形有機廃棄物およびその混合物から成る群から選択することが好ましい。バイオマスは、木材、草、穀物およびその混合物から成る群から選択することが好ましい。有機固体をオキシダントと反応させるための表面積をより広くするためにも、有機固体の粒径は小さい方が好ましい。
【0011】
上記のオキシダントとは、分子酸素(O)などの、有機固体を酸化できるオキシダントのことである。過酸化水素から分子酸素を誘導することが好ましい。
【0012】
過熱水の温度は、100℃を超えて約374℃までであることが好ましく、また、約200℃〜約350℃であることが好ましい。反応器の圧力は、水の液化状態を持続させるのに十分であるべきである。例えば、この圧力は、約100Pa〜約22MPaであることが好ましく、約1.5MPa〜約17MPaであることがより好ましく、また、約12MPa〜約16MPaであることが最も好ましい。
【0013】
上記のプロセスには、更に、過熱水の上に頭隙がない反応器において有機固体をオキシダントと反応させることが含まれ得る。このプロセスには、更に、可溶化された有機溶質を冷却することも含まれる。この可溶化された有機溶質を約20℃まで冷却することが好ましい。
【0014】
上記のプロセスは、酸化反応後、固体の石炭やバイオマスがほとんど又は全くない状態で完了することが好ましい。有機固体の50%超を、可溶化された有機溶質として再生できることが好ましい。例えば、有機固体の70%超、90%超、もしくは95%超を可溶化された有機溶質として再生できることが好ましい。可溶化された有機溶質のpHは、約1から約5であり得る。
【0015】
本発明の付加的な特徴は、図面、実施例および添付の請求項と共に以下の詳細な説明を参照すれば、当業者にとって明白なものになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示をより完全に理解するには、以下の詳細な説明と添付の図面を参照する必要がある。
図1は、一般的な酸化処理の概略図である。
図2は、マイクロスケールの熱水反応系の詳細な概略図である。
図3は、連続的に操作できる熱水反応系の代替概略図である。
図4は、異なったオキシダント装填の下で、開示されたプロセスによりイリノイ炭からの可溶化された有機溶質に対する経時的な吸光度スペクトルである。
図5には、新しい石炭および残留未反応石炭に対する熱分解ガス・クロマトグラフ分析が含まれる。
図6では、様々な流量とオキシダント濃度により開示されたプロセスの濃度が研究されている。
図7は、可溶化された有機溶質を含有する水溶液に対するガス・クロマトグラフ・マス分光測定分析である。
図8は、可溶化された有機溶質のレーザ脱離マス分光測定分析である。
図9〜図11には、可溶化された有機溶質のエレクトロスプレー・イオン化マス分光測定分析である。
図12は、マイクロスケール反応系性能試験に対する検出器の反応を示している。
図13では、過熱水を使用し様々な温度において、オキシダントを使用して行ったバイオマス変換とオキシダントを使用せずに行ったバイオマス変換が比較されている。
【0017】
有機固体を可溶化するための当該開示されたプロセスは、様々な形の実施態様を許容できるが、本開示は例示を目的とするのであって、本発明が本明細書に記載および図解された具体的な実施態様に限定される意図は無いとの理解と共に、本発明の具体的な実施態様が図に表され(かつ以下に説明され)ている。
発明の詳細な説明
【0018】
本発明は、一般に、好ましくは石炭である有機固体から水溶性の生成物を製造するプロセスに関する。このプロセスには、過熱水を含有する反応器において有機固体をオキシダントと反応させて、可溶化された有機溶質を少なくとも1つ形成することが含まれる。反応することにより、有機固体の高分子構造が分解されるか(もしくは、水に溶けることなく)、低分子量の断片となる。これらの低分子量の断片は水溶性である。これらの水溶性の断片は、溶解有機固体、可溶化された有機物又は可溶化された有機溶質と呼ばれる。可溶化された断片は、次に化学原料又は液体燃料として使用できる。
【0019】
有機固体の中には、例えば、石炭、亜炭、ケローゲン、バイオマスおよび固体有機廃棄物を含むものもある。バイオマスは、生物由来の生物原料であり、例えば、木材、草および穀物などの植物系の原料を含む。例えば、固体有機廃棄物とはプラスチック廃棄物であり得る。例えば、石炭は、多数の架橋された芳香族および脂肪族の部分構造で構成された、複雑な高分子量高分子構造を有する。この構造の様々な部分に存在する架橋の程度を理由として、石炭は本来水に不溶性であると考えられている。有機固体の架橋構造要素を破壊すれば、構造をより小さな部分構造単位に分解することが出来る。例えば、開示された方法によれば、石炭を改変された物理的特性を有する新生成物に変換することができる。更に、開示されたプロセスがバイオマスに対して有効であることが判明しており、水溶性有機物への非常に迅速で完全な変換を容易に成し遂げることが出来た。
【0020】
オキシダントとは、有機固体を酸化できるどのようなオキシダントでもよく、好ましくは分子酸素(O)である。分子酸素をオキシダントとして使用することにより、過マンガン酸塩もしくはクロム酸塩酸化物のような金属酸化物および有機過酸化物などの外来のオキシダントの使用を避けることが出来る。これらの外来のオキシダントは、環境に有害であり得、及び/又は高価であり得る。分子酸素は、液化空気の分別蒸留か、あるいは水の電気分解などの周知の方法を使用して空気から抽出できる。また、分子酸素は、過酸化水素のin situ分解により抽出できる。代替的には、分子酸素を直接反応器に供給することも出来る。オキシダントを過熱水に添加することにより、変換率と、有機固体から可溶化された生成物への変換総比率が増大する。
【0021】
反応媒体は、好ましくは100℃を超えて約374℃までであり、より好ましくは約200℃〜350℃の温度である過熱水である。反応器内の圧力は、水を液体に保つ(水が気化しないようにする)のに十分であるべきである。例えば、圧力は100Pa(パスカル)を超えて約22MPaまでであり、好ましくは約1.5MPa〜約17MPaであり、より好ましくは約12MPa〜約16MPaである。本明細書では、熱水と過熱水が交換可能な状態で使用されている。
【0022】
酸化反応は、オキシダントおよび有機固体表面の表面反応であると考えられている。したがって、有機固体の十分な表面積対体積の比率を保持することが反応率に対して重要である。反応に必要な体積対表面積をより広くするためにも、有機固体の粒径は小さい方が好ましい。しかしながら、有機固体の粒径がどのような大きさであっても、反応は進行するであろう。理論に囚われることなく、反応が表面において開始し、有機固体が液化するか、あるいは反応が中断するまで少しずつ進行すると考えられている。
【0023】
開示されているプロセスには、例えば、pH調節剤、触媒、又は追加溶媒などのその他の成分を反応器に添加することが含まれ得る。一般的には、これらの添加物により特定の望ましい生成物の形成を促進し、又は望ましくない生成物の形成を最小限にすることができると考えられている。
【0024】
更に、このプロセスには、処理の次の工程に応じて、可溶化された有機溶質を冷却することが含まれる場合がある。可溶化された有機溶質を冷却することの利点は、可溶化された有機溶質の更なる酸化を防ぐことである。好ましくは、可溶化された有機溶質を室温又はおよそ20℃まで冷却し得る。しかしながら、蒸留、蒸発乾燥、あるいは溶解した有機物の更なる反応などの処理は冷却を必要としない場合がある。この場合、冷却は望ましくないであろう。
【0025】
図1は、本明細書で説明されている酸化処理の概略図である。石炭もしくはその他の有機固体を反応器120に装填することが出来る。この処理を完璧に実行するには、反応器120は上部空隙に気体がない上昇流反応器でよい。重要なことには、反応器は様々な構成を含み得るが、上部空隙に気体がないことが好ましいのである。過熱水は、平衡に達するまで、ポート102を介して反応器120に流れ込む。オキシダント、例えば、分子酸素はポート104を介して反応器に流れ込む。例えば、分子酸素は、直接供給することができ、または、分子酸素は、反応器に添加する前に過酸化水素の熱分解によって発生させることもできる。ポート106は、例えば、pH調節剤、触媒又は有機溶剤といったその他の成分が、反応器に添加される場合に利用できる。石炭又はその他の有機固体からの可溶化された有機溶質は、ポート108から反応器200を離れ、冷却器140に侵入する(必要に応じて)。ポート110からの流出液をモニターして可溶化された有機溶質の存在を確認したり、更なる処理または分析のために流出液を収集することもできる。開示されている処理は、バッチ処理、半連続処理か、あるいは連続処理である。
【0026】
図2は、処理システム図の一例である。有機固体を反応器200に装填する。オキシダントおよび過熱水は、ポンプ202によって反応器200に流入する。オキシダントが過酸化水素由来の分子酸素である場合は、過酸化水素が加熱器204において分解され、分子酸素と過熱水が反応器200に侵入する。追加成分もしくは水がポンプ206によって反応器200に流入する。反応器200において有機固体とオキシダントとの反応が起こると、可溶化された有機溶質が発生する。この可溶化された有機溶質は反応器200を離れ、冷却器208に侵入する(必要に応じて)。流出液は容器210に収集され、データは検出器212によって収集される。
【0027】
図3は、処理システム図のもう1つの例である。石炭もしくはその他の有機固体がミル302において粉砕され、水と結合すると、スラリー発生器304においてスラリーが形成される。ミル302とスラリー発生器304は、湿式粉砕によって単一のオペレーションに結合することができる。その後、スラリーは、スラリー・ポンプ308によって反応器306に汲み入れられる。スラリーは、反応器306に侵入させる前に熱することができる。分子酸素などのオキシダントや過熱水は、ポンプ310によって反応器306に流入する。分子酸素が過酸化水素から由来する場合は、過酸化水素が加熱器312において分解され、分子酸素と過熱水が反応器306に侵入する。反応器306において有機固体とオキシダントとの反応が起こると、可溶化された有機溶質が発生する。この可溶化された有機溶質は反応器306を離れ、冷却器314に侵入する(必要に応じて)。背圧は、背圧調整器316によって制御される。流出液は容器318に収集される。配線や制御に関する詳細な説明は省いたが、反応器システムのデザインによって黙示的に説明されている。このシステムは連続的に作動できる。
【0028】
図4は、イリノイ6号炭からの可溶化された有機溶質に対する経時的な吸光度スペクトルである。ピークは、紫外線の光を吸収する何物かが反応器から出て来ていることを示し、ピークの深さ(Z軸)は、検出中の生成物の種類を示している。図4は、オキシダントを導入する前に測定可能な検出器応答生成物が存在しなかったことと、パルス1のブランク(0%)オキシダントとで示されるように、オキシダントを添加しない場合は、石炭を熱水に晒しても全く反応が起こらなかったことを立証する。すなわち、熱水だけで可溶化された生成物は無かった。しかしながら、装填するオキシダントの量が増えると、より大量の石炭が溶解し、溶性の低分子量生成物として放出される。検出器の応答は、各オキシダント・パルスと共に放出された生成物の収量とほぼ比例しており、装填されたオキシダントにほぼ正比例していた。各々の連続したオキシダント・パルスの前に、酸性の生成物がシステムから完全に取り除かれることを確実にするため、アンモニウムイオン(NH)がオキシダント・パルス間に導入された。しかしながら、正確な測定を遂行するのにアンモニウムイオンの導入が不必要であることが判明した。図4のこれらのデータは、石炭の可溶化の度合いがオキシダントの装填と正比例していたことを示している。各オキシダント・パルスに続く重大な“テーリング”の欠如が、石炭とオキシダントとの反応と、その結果として生じる可溶化された生成物の放出が、これらの実験で用いられたオキシダントと有機固体(石炭)との接触時間(およそ10秒超)に類似して、非常に迅速で完全だったことを示している。
【0029】
石炭を溶解する度合いは、オキシダント装填の量の変化と石炭をオキシダントに晒す時間によって制御することができ、所望に応じて溶解を完了させることもできる。石炭もしくはその他の有機固体を十分な期間反応させ続けさえすれば、完全な石炭もしくはその他の有機固体の溶解を容易に達成できる。これらの実験に用いられているマイクロスケールでは、物質収支を完全に閉包することは困難であるが、石炭から溶解した物質のおよそ50%〜およそ90%を可溶化された生成物として回収できる。およそ50%〜ほぼ全てのバイオマスを可溶化された生成物として回収できる。好ましくは、50%を超える有機固体を可溶化された有機溶質として回収でき、より好ましくは、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超または96%超の有機固体を可溶化された有機溶質として回収できる。
【0030】
本発明を特定の理論に限定することなく、この処理は、熱水の条件下で石炭の穏やかかつ部分的な酸化により機能し、また、石炭の体積全体に対する酸化と言うよりはむしろ、石炭の表面に対して段階的に行われるエッチングであると考えられている。これは、気体酸素(O)による石炭の酸化とは異なる。従来の気体酸素による石炭の酸化は、高反射率の外皮を形成する(光学顕微鏡分析により酸化した石炭分子周辺の明るい縁として認められる)。この外皮は、酸化の激しさの増加を伴って、厚みを増す。この外皮の形成は、石炭の気体酸素との反応が、発散が制限されたプロセスであることを指し示している。理論に拘束されることなく、曝露法によって形成された生成物における、このような外皮の不在は、オキシダントが急速に表面と反応し、液相への生成物の即時の放出をもたらし、本質的に「新しい」石炭を更なる反応のために曝露していることを指し示すと考えられている。
【0031】
この観察は、図5で示される熱分解ガス・クロマトグラフ分析によって支持される。これらのデータは、新しいおよび残余の未反応の石炭の閃光熱分解によって放出された揮発性生成物の分布と類似する。酸化条件に対する残余の未反応の石炭の曝露にもかかわらず、観察された生成物の分布は本質的に同一であり、新しい石炭と比較して、残余の未反応の石炭が本質的に不変であることを指し示している。これは、曝露された酸化反応によって分解された物質は、水熱条件下において急速に可溶化し、液相においてシステムから除去され、更なる反応のために本質的に新しい石炭を曝露することを指し示す。クロマトグラムの1つのピークにあるアスタリスク(*)は、カラムブリード(column bleed)として知られる機器による汚染物質を示している。
【0032】
図6を参照すると、最適流量が観察され得る。曝露プロセスによる石炭の酸化のために、250℃の温度における、4種類のオキシダント(O)濃度、すなわち、0.0335M、0.0447M、0.067M、および0.0894Mが研究されている。過熱水のための様々な流量が、4分の接触時間において試験されている。この図における最適量は、オキシダントと石炭の最適接触時間を反映している。試験されたオキシダント濃度の範囲を横断して、低い送達率において、反応率はオキシダントの送達率によって制限される。高流量において、供給されたオキシダントの相当な割合が、石炭と反応する機会を得る前に反応器から流出した。このシステムにおける好適なO濃度および流量は、以下の範囲である。すなわち、約0.005M〜約0.1Mの酸素濃度、約3mL/分〜約9mL/分の流量である。しかしながら、種々のシステムのための最適なO濃度および流量が最小限の実験で確認され得る。
【0033】
これらの濃度および流量は、反応器の構成および石炭以外の有機固体に依存して広範に変化し得る。たとえば、バイオマスの可溶化の間にOのようなオキシダントを加えることは、オキシダントのない過熱水と比較して可溶化率を増大させる。木や草のようなリグノセルロース由来の(lignocellulosic)バイオマスは、過熱水において可溶性の低分子生成物を部分的に加水分解する。木は草よりもリグニンが高く、水のみで取り扱われた場合に、概して対応するように産出量が少ない。しかしながら、極少量のオキシダントの付加が、可溶化率を増大させる。木のようなバイオマスのための過熱水におけるオキシダント濃度は、好適には、少なくとも0.005M、少なくとも0.009M、少なくとも0.015M、少なくとも0.018M、または少なくとも0.02MのOである。
【0034】
曝露プロセスは、可変性が石炭のマセラルに依存していることを証明する。マセラルは、本来の植物組織に個別的に由来する(場合によっては、酸化または炭化によって修正される)、石炭の物理的な有機成分である。マセラルは、別個の生体高分子の前駆体からの由来を反映する、独特の構造的特性を有する。個々のマセラルは、特定の植物組織に由来する。たとえば、スポリナイトは、胞子および花粉の外側の細胞壁に由来する。クチナイトは、植物の上皮に由来し、レシナイトは植物樹脂に由来する。ヴィトリナイトは木質植物組織に由来し、一般にほとんどの石炭における主要なマセラルである。フュージナイトおよびセミフュージナイトは、本来の植物組織の堆積の間に炭化されてきた植物組織に由来するマセラルである。
【0035】
マセラルは、研磨された石炭薄片の顕微鏡分析によって同定される。個々のマセラルは、反射率、蛍光発光、形態学に基づいて同定される。これらに基づいて、また、処理または利用中の反応性に基づいて、マセラルは、一般に三つの主要なマセラル群の1つに分類される。スポリナイト、クチナイト、レシナイト等を含む、水素リッチ、低密度、低反射率の(そして多大な蛍光を発する)マセラルは、リプティナイトに分類される。ヴィトリナイトはそれ自身がマセラルであり、かつマセラル群である(そして、時には形態学に基づいてより狭い分類に細分化される)。フュージナイト、セミフュージナイト等を含む、高反射率、低蛍光発光のマセラルは、イナーチナイトに分類される(何故ならば、これらはいくつかのプロセスにおいて、特に鉄鋼生産のためのコークスの製造において、比較的不活性だからである)。曝露プロセスに置かれたとき、マセラルの反応性は変化することが判明している。全てのマセラルは曝露プロセスによって可溶化されるが、リプティナイトはヴィトリナイトよりも反応性が大きく、ヴィトリナイトはイナーチナイトよりも反応性が大きいことが判明している。したがって、全てのタイプの石炭が、曝露プロセスを用いて可溶化され得ると考えられている。
【0036】
曝露プロセスの可溶化された有機溶質は、水溶液中の分解生成物である。石炭のために、おそらくこの研究に用いられた石炭に普通に存在する黄鉄鉱の酸化に由来する硫酸の存在によって、この溶液のpHは、概して低い(pH1〜5、好ましくは2〜3)。低pHは、有機酸が、十分にプロトン化された形態で存在することを確実にする。いくつもの分析的アプローチが、この生成物の混合を研究するために用いられてきた。
【0037】
揮発性で低分子量の有機酸、主としてギ酸(HCOH)および酢酸(CHCOH)が、図7で示されるように、追加的な分離のない直接注入ガスクロマトグラフ質量分析法の水溶性生成物によって示されたものとして、水溶液中に存在する。この結果は、主としてベンジル構造の酸化による、脂肪族の(および他の)架橋された群の酸化開裂に関する、このプロセスのために提案されたメカニズムと完全に一致する。これらの生成物は、揮発性によって水溶液の作用の間に概して失われ、この理由のため、図6のデータにおいても観察されない。
【0038】
可溶化された有機溶質の大部分は、目下のところ部分的にしか特徴付けられないままの、化合物の複雑な混合物を含んでいる。たとえば、可溶化された有機溶質は、2〜4の官能基を有するモノ芳香族構造(主にCOOHおよびフェノール)、およびギ酸や酢酸といった脂肪族生成物、および多官能性C4−C7生成物を含み得る。特に、たとえば、石炭から可溶化された有機溶質は、ブテン二酸、ブタン二酸、メチルブタン二酸、安息香酸、チオフェンカルボン酸、ペンタン二酸、ジメトキシベンゼン、ヘキサン二酸、フランジカルボン酸、トリメトキシベンゼン、メトキシ安息香酸、ヘプタン二酸、プロパントリカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸、チオフェンジカルボン酸、メトキシベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、C14脂肪酸、C16脂肪酸、C18脂肪酸を含む。これらの化合物のいくつかは、ポリマー製造のための化学工業原料として、また、燃料を含む他の生産物の前駆体として、有用である。他の化合物は、化学工業原料として現在用いられる生産物に類似しており、したがって、ポリマー製造に潜在的に有用である。同定のための、水相からの可溶化された有機溶質の単離は、水溶液中の化合物の広範な極性および揮発性のために、驚くほどに困難であることが明らかにされてきた。溶媒抽出に基づく単離手続が開発されてきており、幅広い特性の生産物が確立されてきた。
【0039】
結果として生じる生成物は、レーザ脱離質量分析(LDMS)およびエレクトロスプレーイオン化質量分析(EIS−MS)を用いて分析されてきた。図8を参照すると、LDMSデータは、可溶化された有機溶質について、400原子質量単位(amu)を1つのピークとして、おおよそ200amu〜おおよそ500amuの大分子量の分布を指し示している。図9〜図11を参照すると、EIS−MSデータは、最大でおおよそ400amuとおおよそ800amuの、二峰性の生成物分布を指し示している。おそらく、第二の最大値であるおおよそ800amuは、荷電生成物と共に、中性生成物が緩い関連を形成し(通常、水素結合)、結果としての「クラスター」が、結合されたかたまりとして検出される、分子クラスター化として知られるイオン化手続による人為産物であろう。これは、LDMSデータにおいておおよそ800amuのピークが存在しないことと一致する。
【0040】
開示された方法は、気体生成物もまた生成する。水中の可溶化された有機溶質としての有機固体が大多数として存在するので、これらの気体は比較的少量の生成物である。一酸化炭素(CO)は主要な気体生成物である。しかしながら、温度の上昇と共に、二酸化炭素(CO)の量が増加する。225℃において、CO/CO比は一貫しておよそ40である。250℃において、CO/CO比は20に減少し、300℃において、この比率は8に達する。したがって、COは高温ではCOへと酸化されると考えられている。
【0041】
プロセスの基本的な化学は、オキシダントを用いて石炭の高分子の構造を低分子量の断片に分解するという、他の石炭の酸化の手順と類似している。しかしながら、本発明において公開されているプロセスは、反応媒体および溶媒として水を使用しており、従って、高価で潜在的に毒性の溶媒を使用することを避けている。さらに、分子状酸素をオキシダントとして用いることで、外来のオキシダントの使用を避けている。水と分子状酸素の使用は、好ましくは空気由来のものを使用することで、プロセスにおける製造コスト、特に大規模製造における費用も下げる。最後に、石炭の直接的な液化と異なり、開示したプロセスは、高い可燃性を有する水素ガスを必要としない。
【0042】
全体的にみれば、本発明において開示されているプロセスは、価値のある燃料や化学工業原料を得るために処理が可能である、石炭を可溶化させるための環境的にやさしいプロセスである。開示されたプロセスにより得られた可溶化された有機固体は、生物学的に利用可能であると考えられる。従って、可溶化された有機固体の生分解は容易に自然システムにおいて起こり得、開示されたプロセスに関連した環境的リスクを極小化する。
【0043】
有機固体の可溶化はまた、加工しやすさの長所を提供する。結果として生じる液体は、ポンプ輸送可能で、さらに従来の液体処理技術を用いて処理することが可能である。
【実施例】
【0044】
マイクロスケールの反応系:図2を参照して、下記の実施例をマイクロスケールの水熱反応系上で行った。そのシステムは対をなす四元ポンプ202および206を含み、これらは8つまでの別個の液体供給部の正確な制御を提供し、単純な上昇流高圧反応器200に連結される。ポンプ202からの供給物を、反応器200に入る前に、加熱器204を通じて水熱状態に加熱する。別のポンプ206を用い、調整剤を運搬し、所望であれば、非加熱水の迅速な導入により反応を急冷する。典型的な実験では、石炭(10〜100mg)または他の有機固体を反応器200に充填し、これをその後水熱状態、例えば、250℃かつ約1,800psi〜2,200psiに至らせる。酸素をその後反応器200に導入し、石炭または他の有機固体と反応するようにする。例えば、石炭または他の有機固体との供給物の混合より前に、分子状酸素をその場で過酸化水素の熱分解により生成する。これは、O充填の正確かつ一貫した制御を提供し、気体/液体の混合の必要性を避け、これは正確かつ一貫してマイクロスケールで実現することは非常に困難となるだろう。その設計は、水、オキシダント、および、触媒、pH調整剤、および/または有機溶媒等の調整剤を、運搬のタイミングの正確な制御と任意に比例して石炭または他の有機固体に導入することを可能にする。反応器200は、0.25mLの内容積を有する単純な上昇流本体(利用可能なポンプと適合する)を含み、気体のヘッドスペースを全く有しない上昇流構成において操作され、相平衡の考慮を排除する。反応器からの生成物を冷凍器/急冷器208内で冷凍し、光ダイオードアレイ検出器212を通過させ(多波長UV吸収)、収率および総生産特性を監視することができる。流出物も、追加のさらなる分析のために容器210内に収集する。任意の未反応の石炭または他の有機固体を、もしあれば、収集して特徴付ける。
【0045】
反応器供給物の組成物の正確かつ精密な制御を、容易に実現する。図12は、反応器を通じて運搬した試薬の設計したパルスの制御および再現性を実証している。例解したデータは、継続的な程度の希釈において、5つの複写物の3つの群として送った参照物質の15のパルスを表している。マイクロスケールで実行した実験から得た結果は、(i)反応器が近栓流特性を呈する(継続的なパルスがシステム内の死容積または混合容積の証拠をほとんど伴わずに十分に分離される)ことと、(ii)供給組成物の自動制御が設計した通りに働くことと、(iii)検出器応答が目的の範囲にわたり直線に近いことと、を指し示している。本システムを用いて実現した反応器滞留時間は、ほぼおおよそ10秒程度であり、その後、可溶化した生成物を含む流出物を迅速におおよそ20℃に急冷し、生成物のさらなる酸化を防止する。
【0046】
実施例1
イリノイ6号炭(1インチ当たり40の開口の篩の大きさより小さく、かつ、1インチ当たり80の開口の篩の大きさより大きい粒子を有する40mg)を、図2の反応器システムに充填した。少量のガラス綿を石炭の上部に置き、微粒子が反応器200を詰まらせることを防止する。流れ(ポンプ202中で1.8mL/分の脱イオン(DI)水、ポンプ206中で0.2mL/分の加熱DI水)を確立し、システムを操作温度(250℃)に至らせ、平衡化/安定化するようにした(45分)。約1,800psi〜約2,200psi(約12MPa〜約15MPa)の逆圧を、固定または可変の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の逆圧調整器を用いて維持した。平衡化の後に、0.2mL/分の3%のHを反応器にポンプ206から導入し、1分当たり0.0635MのOを結果的にもたらした。連続的にまたは時限パルスとしての何れかで、この流れを運搬することができる。反応器流出物を、検出器212による光ダイオードアレイ(PDA)検出により連続的に監視し、さらなる分析のために収集した。本実験の完了時に、熱を止め、システムが冷えるようにした。システムを室温に冷却するまで、流れを維持した。
【0047】
実施例2
イリノイ6号炭(1インチ当たり40の開口の篩の大きさより小さく、かつ、1インチ当たり80の開口の篩の大きさより大きい粒子を有する40mg)を、図2の反応器システムに充填した。小さいアルミニウム栓を石炭の上部に装填し、微粒子が反応器200を詰まらせることを防止する。流れ(ポンプ206中で0.6mL/分のDI水、ポンプ202中で5.4mL/分の加熱DI水)を確立し、システムを操作温度(250℃)に至らせ、平衡化/安定化するようにした(23分)。約1,800psi〜約2,200psi(約12MPa〜約15MPa)の逆圧を、固定または可変のHPLCの逆圧調整器を用いて維持した。平衡化の後に、0.5832mL/分の3%のHを反応器200にポンプ202から導入し、1分当たり0.0617MのOを結果的にもたらした。反応器流出物を、検出器212によるPDA検出により連続的に監視し、さらなる分析のために収集した。本実験の完了時に、熱を止め、システムが冷えるようにした。システムを室温に冷却するまで、流れを維持した。
【0048】
実施例3
バイオマス上での実験を、図2の反応器システム内で、醸造用穀物、木材、およびトウモロコシ穂軸を用いて行った。各種類のバイオマスを、250℃の反応温度および0.004MのOのオキシダント濃度で多数回試験した。水は6mL/分で反応器に流入した。各反応は10分にわたり進行した。醸造用穀物を、6つの重量:42mg、45mg、50mg、50mg、55mg、および60mgで試験した。木材を、4つの重量:6mg、21mg、50mg、および50mgで試験した。トウモロコシ穂軸を、4つの重量:50mg、50mg、70mg、および100mgで試験した。全ての反応は、バイオマスの可溶化した有機溶質への完全変換を結果的にもたらした。
【0049】
実施例4
バイオマス上での実験を、図2の反応器システム内で、木材、すなわち、オガクズを用いて行った。100mgのポンデローサ松のオガクズを、オキシダントを用いる場合および用いない場合で、多数の反応温度、225℃、250℃、275℃、および300℃で試験した。水は10mL/分で反応器に流入した。オキシダントを、0.009Mの濃度で10分にわたりパルス印加した。全体の反応は、反応器を加熱し、定常状態を実現する20分と、反応器を冷却する水のみの流れの15分とを含め、45分にわたり続いた。反応圧力を、逆圧調整器を用いて2,000psiに維持した。図13に示すように、オキシダントを用いない反応は、バイオマスの全面変換を実現しなかった。さらに、温度の上昇に伴い、オキシダントを用いるバイオマスの変換がほとんど完了した。オキシダントを用いない場合では、バイオマスの最適変換は250℃にてあった。オキシダントを用いる場合および用いない場合での様々な温度における変換率については、下記の表1を参照されたい。275℃および300℃において、オキシダントは、典型的に溶解により耐性であるリグニンの変換を含む変換率を増加させた。
表1:変換率(図13)
【表1】

【0050】
実施例5―マセラル反応性
3つのマセラル群を、反応性における変動性を試験するために選択した:イナーチナイト、リプチナイト、およびビトリナイト。具体的には、試験したマセラルについて下記の表2を参照されたい。
表2:反応性実験において検討したマセラル
【表2】

【0051】
下記の試料は、反応性が減少する順序にある:ブリッケンリッジ燭炭、イリノイ6号、アルファトルバナイト、およびフゼイン。従って、マセラル群のリプチナイトが概して最も反応性が高く、その後にビトリナイトおよびイナーチナイトが続いた。
【0052】
可溶化した有機溶質の試験
反応器からの流出物を酸性化し(12MのHCl、3〜4滴)、塩化ナトリウム(NaCl)で飽和させ、テトラヒドロフラン(THF)(30〜50mL)で3回抽出した。その結果として生じた有機層を、0.45マイクロメートルのTeflon膜を通じて濾過してTHF不溶物を回収し、MgSOで乾燥させ、回転蒸発(「回蒸」)により濃縮した。その結果として得られた生成物をその後分析し、有機生成物の化学組成を決定した。
【0053】
好適な試験法は下記の通りである:開示した反応からの生成物を塩水に漬け、THFで抽出した。過剰の硫酸マグネシウムを添加し、有機相をさらに乾燥させた。その混合物を、中型ガラスフリットを通じて濾過し、濾液を保持した。その有機相を、その後、50℃で回転蒸発器(回蒸)を用いておおよそ5mLに濃縮した。おおよそ95mLのペンタンを、活発な撹拌下で濃縮した有機物に添加し、ペンタン不溶有機物を溶液から沈殿させた。その混合物を、0.45マイクロメートルのTeflon膜を通じて濾過した。その濾過ケーキを、真空炉中にて約50℃〜約60℃で約8時間〜約12時間にわたり乾燥させ、全ての残りのTHFを除去した。熱分解−気体クロマトグラフィー/質量分光法(PY−GCMS)、固相核磁気共鳴(NMR)分光法、または必要および所望に応じて他の技術を用いて、その乾燥固体を分析することができる。また、その固体をメタノール中で懸濁させ、三フッ化ホウ素を用いてメチル化することができる。
【0054】
例えば、41.5mgのイリノイ6号炭を、250℃の温度、6mL/分の流速、および0.067Mの酸素の濃度を有する開示した反応に10分にわたり曝した。その可溶化した有機生成物を塩化ナトリウム(NaCl)で飽和させ、50mLのTHFで4回洗浄した。その有機相を、その後、過剰の硫酸マグネシウム(MgSO)を添加することにより乾燥させた。MgSOを除去する濾過の後に、その乾燥有機相を、回蒸を用いて50℃で濃縮した。95mLのペンタンを濃縮した有機物に添加し、30分にわたり活発に撹拌し、不溶有機物を沈殿させた。その混合物を、0.45マイクロメートルの膜を通じて濾過した。その濾過ケーキを、真空炉中にて60℃で12時間にわたり乾燥させた。その最終乾燥固体は、24.2mgの質量を有した(生成物の62%の回収)。
【0055】
先の実施例は、そのプロセスが、高収率、最小の環境影響、および/または速い反応時間を伴う、有機固体を可溶化するための効果的な方法であることを実証している。
【0056】
先の記載は、明確に理解するためにのみ与えられ、本発明の範囲内の修正が当業者にとって明白であり得るため、いかなる不必要な限定もこれらの記載から理解されるべきでない。
【図1】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機固体を可溶化するためのプロセスであって、前記プロセスは超加熱水中で有機固体をオキシダントと反応させ、少なくとも1つの可溶化した有機溶質を形成することを含む、プロセス。
【請求項2】
前記オキシダントが分子状酸素(O)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分子状酸素が過酸化水素から生じる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記超加熱水の温度が、100℃を超えて約374℃までである、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記超加熱水の温度が、約200℃〜約350℃である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
100Paを超えて約22MPaまでの圧力で前記反応を実行することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
約1.5MPa〜約17MPaの圧力で前記反応を実行することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
約12MPa〜約16MPaの圧力で前記反応を実行することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記有機固体が、石炭、亜炭、ケローゲン、バイオマス、固体有機廃棄物、およびそれらの混合物から成る群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記バイオマスが、木材、草、穀物、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記超加熱水より上に上部空隙全く有さない反応器内で、前記有機固体を前記オキシダントと反応させることを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記可溶化した有機溶質を冷却することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記可溶化した有機溶質を約20℃に冷却することを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記可溶化した有機溶質が、約1〜約5のpHを有する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応を完了まで実行することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記有機固体のうち50%超過が、前記可溶化した有機溶質として回収可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記有機固体のうち70%超過が、前記可溶化した有機溶質として回収可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記有機固体のうち90%超過が、前記可溶化した有機溶質として回収可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記有機固体のうち95%超過が、前記可溶化した有機溶質として回収可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセスの可溶化した有機溶質。

【公表番号】特表2012−517345(P2012−517345A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550227(P2011−550227)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/023886
【国際公開番号】WO2010/093785
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(508208524)サザン・イリノイ・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】SOUTHERN ILLINOIS UNIVERSITY
【Fターム(参考)】