説明

石炭ガス化炉システム

【課題】従来以上に高精度な微粉炭供給量の制御を行うことが可能な石炭ガス化炉システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る石炭ガス化炉システム100は、微粉炭の搬送管110の少なくとも一部を絶縁性材料から構成される絶縁管10とし、この絶縁管10に対して粉体流量測定装置1A〜1Eを設置する。この粉体流量測定装置1A〜1Eは、粉体の外周を覆うように配置される略筒状のケーシング20と、固定部材30を介してケーシング20の内側面に固定され、絶縁管10の外周面との間に所定の隙間を設けると共にケーシング20の内側面との間に所定の隙間を設けて配置される一対の対向電極40a、40bと、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭を水素と一酸化炭素にガス化する石炭ガス化炉システムに関し、特に、微粉炭の供給量を高精度に制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池やガスタービン、蒸気タービン等を利用した複合発電に利用するために、石炭を水素と一酸化炭素にガス化する石炭ガス化炉システムが提案されている。石炭ガスを利用することで、従来の火力発電と比較して効率の向上が見込まれることから、この石炭ガス化炉システムは世界的に注目されている。
【0003】
石炭ガス化炉システムでは、ホッパーに微粉炭を貯留しておき、この微粉炭を高圧気流を用いてガス化炉の上段・下段バーナにそれぞれ搬送する。ガス化炉内では、バーナから放出される微粉炭が旋回するようになっており、この旋回による滞留時間を利用して効率的に微粉炭をガス化する。
【0004】
石炭ガス化炉システムでは、搬送気体を高圧に維持して微粉炭を気流搬送しなければならないことから、ホッパーとガス化炉を結ぶ搬送管には、耐圧性能の高い金属製配管が採用されている。従って、搬送管内を通過する微粉炭の流量を測定するためには、この金属製の配管に穴を空けてマイクロ波流量計を挿入して、配管内のドップラー作用によって通過中の微粉炭の流量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4070325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の石炭ガス化炉システムでは、マイクロ波流量計のマイクロ波発振ヘッドを、搬送管内に突出させる構造であるため、高圧搬送される微粉炭と接触することによって流量測定の精度にばらつきが生じやすい。特に微粉炭の濃度を高めたり、稼働中に微粉炭の濃度が大きく変化したりすると、精度のばらつきが大きくなるという問題があった。また、このマイクロ波流量計は、搬送管の管径が大きい場合に適しているが、小径にするとマイクロ波の発振領域が狭くなって測定が困難になるという問題があった。
【0007】
また、このマイクロ波発振ヘッドが微粉炭によって損傷を受けやすい構造であるため、メンテナンス頻度が高い。更にメンテナンスの際は、搬送管を、部分的に取り外して修理しなければならないため、長時間に亘って石炭ガス化炉システムを停止しなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、高精度に微粉炭の供給量を制御できる石炭ガス化炉システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、微粉炭を貯留するホッパーと、前記微粉炭を水素と一酸化炭素にガス化するガス化炉と、前記微粉炭を前記ホッパーから前記ガス化炉のバーナまで搬送する搬送管と、前記搬送管の途中に設けられて前記ホッパーからの前記微粉炭の供給量を調整する粉体流量調整装置と、前記搬送管の途中に設けられて前記ホッパーから供給された前記微粉炭の流量を計測する粉体流量測定装置と、を備え、前記粉体流量測定装置は、前記搬送管の少なくとも一部に挿入され、絶縁性材料から構成される絶縁管と、前記絶縁管の外周を覆うように配置される略筒状のケーシングと、固定部材を介して前記ケーシングの内側面に固定され、前記絶縁管の外周面との間に所定の隙間を設けると共に前記ケーシングの内側面との間に所定の隙間を設けて配置される一対の対向電極と、を備えることを特徴とする石炭ガス化炉システムである。
【0010】
上記目的を達成する上記発明の石炭ガス化炉システムの前記絶縁管は、繊維強化プラスチック材料で構成され、前記搬送管及び前記絶縁管の内圧は1MPaから6MPaの範囲内に設定されることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成する上記発明の石炭ガス化炉システムは、前記ホッパーにおける前記微粉炭の質量変化を計測する質量計測装置と、前記粉体流量測定装置の出力を補正する補正手段と、を更に備え、前記補正手段は、前記質量計測装置の出力から得られる前記ホッパー内の前記微粉炭の所定時間における減少量と、前記粉体流量測定装置の出力から得られる前記ホッパーから供給された前記微粉炭の前記所定時間における流量を比較して、前記粉体流量測定装置の補正量を算出することを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成する上記発明の石炭ガス化炉システムの前記粉体流量測定装置における前記一対の対向電極は、平行四辺形状の板を曲折して構成され、前記絶縁管の外側を円周方向に160乃至200度の範囲で周回する螺旋角が20乃至40度の螺旋形状であり、前記絶縁管の軸心に垂直な断面における幅が前記絶縁管の円周方向に50〜80度の範囲に設定され、前記絶縁管の軸心に対して軸対称に配置されることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成する上記発明の石炭ガス化炉システムの前記粉体流量測定装置における前記絶縁管の外周面と前記一対の対向電極の内側面との隙間の距離は、前記絶縁管の外径の0.5乃至6%の距離に設定され、前記粉体流量測定装置における前記ケーシングの内側面と前記一対の対向電極の外側面との隙間の距離は、前記絶縁管の外周面と前記一対の対向電極の内側面との隙間の距離以上に設定されることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成する上記発明の石炭ガス化炉システムの前記粉体流量測定装置における前記ケーシングは、径方向に分割される第1部材および第2部材からなる半割構造であり、前記一対の対向電極は、一方が前記第1部材に固定され、他方が前記第2部材に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る石炭ガス化炉システムによれば、従来以上に高精度な微粉炭流量の制御を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る石炭ガス化炉システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】(a)同石炭ガス化炉システムの粉体流量測定装置を一方向から見た場合の断面図である。(b)図2(a)と直交する方向から同粉体流量測定装置を見た場合の断面図である。
【図3】(a)図2(b)のA−A線断面図である。(b)図2(b)のB−B線断面図である。
【図4】同粉体流量測定装置の回路構成を示した概略図である。
【図5】(a)ケーシングの第2部材および対向電極を示した図である。(b)図5(a)のC−C線断面図である。
【図6】絶縁管へのケーシングおよび対向電極の取付け方法を示した図である。
【図7】対向電極の形成方法を示した図である。
【図8】同石炭ガス化炉システムにおけるホッパーの質量変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
【0018】
(全体構造)
図1は、本実施形態に係る石炭ガス化炉システム100の全体構成を示すブロック図である。この石炭ガス化炉システム100は、微粉炭を大量に貯蔵可能な微粉炭ビン102と、この微粉炭ビン102から微粉炭が供給されて一時的に貯留するホッパー104と、微粉炭を水素と一酸化炭素にガス化するガス化炉150と、微粉炭をホッパー104からガス化炉150のバーナまで搬送する搬送管108と、搬送管108の途中に設けられて微粉炭の供給量を調整する粉体流量調整装置110と、搬送管108の途中且つ粉体流量調整装置110の下流側に設けられて、自由落下する微粉炭の衝突振動によって流量を機械的に計測するインパクトライン流量計112と、搬送管108の途中且つインパクトライン流量計112の下流側に設けられて微粉炭の流量を高精度に計測する第1〜第5粉体流量測定装置1A〜1Eと、第1粉体流量測定装置1Aの下流側に設けられて微粉炭を4系統に分配する分配器116を備えている。
【0019】
ホッパー104には、全体の重量変化を計測可能な質量計測装置(ここではロードセル)104Aが設けられており、微粉炭ビン102からホッパー104に投入される微粉炭の量や、このホッパー104から排出される微粉炭の量を、この質量変化から計測するようになっている。粉体流量調整装置110はいわゆるロータリーフィーダであり、微粉炭が進入する円筒状のポケットが形成されるロータと、ロータが収まるケースを備えている。ロータの回転数によって微粉炭の排出量が制御される。なお、詳細は後述するが、この粉体流量調整装置110から供給される微粉炭は、1MPa〜6MPaの極めて高圧の窒素気流によって高圧搬送されるため、この粉体流量調整装置110よりも下流側の搬送管108側は高圧状態となる。従って、この粉体流量調整装置110は、万が一の場合に、下流側の圧力がホッパー104側に逆流しないような圧力シール構造となっている。
【0020】
インパクトライン流量計112は、粉体流量調整装置110から自然落下する微粉炭を検出板に衝突させることで、衝撃力の水平成分が微粉炭の瞬間重量流量と比例関係にある原理に基づいて、微粉炭の流量を測定する。
【0021】
搬送管108は、耐圧性の金属配管によって構成されているが、第1〜第5粉体流量測定装置1A〜1Eが取り付けられる範囲に限って、絶縁材料となる絶縁管10が挿入されている。即ち、これらの絶縁管10は搬送管108の一部を担っている。絶縁管10の絶縁材料として繊維強化プラスチック(FRP)を採用しているが、特にここでは、ガラス繊維を多重に巻き付けた肉厚構造の配管となっており、内圧が6MPa以上になっても、十分な耐圧特性を備えるようになっている。更にこの搬送管108は、分配器116を介して4系統に分岐するようになっている。これはガス化炉150の4本のバーナに対して、微粉炭を独立して供給するためである。
【0022】
なお、この搬送管108に対しては、圧縮機120によって1MPa〜6MPa(ここでは2MPa)の高圧窒素が供給される。この高圧窒素を利用して微粉炭が搬送されるようになっている。
【0023】
第1粉体流量測定装置1Aは、粉体流量調整装置110と分配器116の間に配置される絶縁管10に取り付けられ、ホッパー104から供給される微粉炭の総流量を検出する。第2〜第5粉体流量測定装置1B〜1Eは、分配器116よりも下流側において4系統に分岐された各絶縁管10に取り付けられ、各バーナに供給される微粉炭の流量を独立して検出する。この構造により、微粉炭の供給量を高精度に制御することが可能となる。
【0024】
ガス化炉150は、円筒形状となる圧力容器によって構成されており、2つの上段バーナ154Aと、2つの下段バーナ154Bを備える。上段及び下段バーナ154A、154Bは、圧力容器の半径方向に対して傾斜して配置されることによって、上段及び下段バーナ154A、154Bから噴出される微粉炭を圧力容器内で旋回させる。この旋回によって微粉炭の滞留時間が長くなり、石炭がガス化するための反応時間が確保される。なお特に図示しないが、上段及び下段バーナ154A、154Bには、それぞれ酸素が供給され、特に上段バーナ154A側の酸素は少なめにして、反応性に富む活性チャーを生成させるようにし、下段バーナ154Bの酸素を多めにすることで高温ガスを生成させる。この上段と下段の相互作用によって全体として高いガス化効率を得るようにしている。なお、ガス化炉150で生成された一酸化炭素と窒素ガスは、上方の排出口156から排出されて、発電等の様々な目的で利用される。一方、ガス化にともなって生成されるスラグは、圧力容器の底側に流下し、特に図示しないロータリーフィーダを介して回収容器158に排出される。
【0025】
更に、この石炭ガス化炉システム100は、第1〜第5粉体流量測定装置1A〜1Eの出力値を補正する補正手段170と、この補正後の出力値を利用して、粉体流量調整装置110にフィードバック信号を生成する流量指示手段180を備える。なお、これらの補正手段170や流量指示手段180は、中央演算装置やメモリを備えた周知のコンピュータ等による電子演算装置を利用すれば良い。
【0026】
(粉体流量測定装置)
次に、この石炭ガス化炉システム100で採用される第1〜第5粉体流量測定装置1A〜1Eの詳細構造について説明する。なお、これらの第1〜第5粉体流量測定装置1A〜1Eの構造は略同様であることから、ここでは第1粉体流量測定装置1Aの構造を説明することで第2〜第5粉体流量測定装置1B〜1Eの説明を省略する。
【0027】
図2(a)は、第1粉体流量測定装置1Aを一方向から見た場合の断面図であり、同図(b)は、同図(a)と直交する方向から第1粉体流量測定装置1Aを見た場合の断面図である。また、図3(a)は、図2(b)のA−A線断面図であり、図3(b)は、図2(b)のB−B線断面図である。
【0028】
これらの図に示されるように、第1粉体流量測定装置1Aは、微粉炭の流路となる絶縁管10と、絶縁管10の外周を覆うように配置されるケーシング20と、ケーシング20の内側面に固定される複数の固定部材30と、固定部材30を介してケーシング20に固定される一対の対向電極40a、40bと、から構成される静電容量式の測定装置である。なお、図2(a)および(b)は、ケーシング20を断面にして表した図となっている。
【0029】
絶縁管10は、気体搬送(高圧窒素)によって微粉炭が内部を流動する管であり、第1粉体流量測定装置1Aによって流量を測定する微粉炭の搬送管108の一部を構成するものである。絶縁管10は、対向電極40a、40b間の静電容量に影響を与えないように、例えば樹脂やセラミックス、石英ガラス等の比誘電率の低い絶縁性材料から構成されている。なお、絶縁管10は、絶縁性材料からなる微粉炭の搬送管108の一部をそのまま使用したものであってもよいし、搬送管108の途中にフランジ継手等を介して追加された専用のものであってもよい。
【0030】
ケーシング20は、対向電極40a、40bを内部に収容した状態で絶縁管10の外周を覆う中空円筒状の部材である。ケーシング20の両端部には挿通孔22がそれぞれ設けられており、この挿通孔22内に絶縁管10が挿通されることにより、ケーシング20および対向電極40a、40bは、絶縁管10に固定される。ここでは、ケーシング20を導電性材料(例えばアルミ等の金属)から構成することにより、ケーシング20が電磁シールドとして機能するようにしている。
【0031】
なお、この第1粉体流量測定装置1Aでは、ケーシング20を円筒状に構成しているが、例えば多角形状やカプセル形状等、その他の形状に構成するようにしてもよい。また、必要に応じてケーシング20の各部に開口や窓等を設けるようにしてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、対向電極40a、40bと共にケーシング20を絶縁管10から容易に取り外せるように、ケーシング20を第1部材20aおよび第2部材20bからなる半割構造としている。第1部材20aおよび第2部材20bには、合わせ面において半径方向に突出する突出部24a、24bがそれぞれ形成されており、この突出部24a、24bには、第1部材20aおよび第2部材20bを結合するためのボルト50が挿通される複数のボルト孔26bがそれぞれ形成されている。
【0033】
固定部材30は、対向電極40a、40bをケーシング20の内側面との間に所定の隙間を空けて固定するための部材である。第1粉体流量測定装置1Aでは、5つのブロック状の固定部材30を介して対向電極40aをケーシング20の第1部材20aに固定し、同様に、5つのブロック状の固定部材30を介して対向電極40bをケーシング20の第2部材20bに固定している。固定部材30は、ネジや係合ピン、接着剤等の既知の手法によって基端部がケーシング20の内側面に固定される。そして、固定部材30の先端部には、ネジや係合ピン、接着剤等の既知の手法によって対向電極40a、40bが固定される。
【0034】
また、この第1粉体流量測定装置1Aでは、ケーシング20を導電性材料から構成しているため、固定部材30を絶縁性材料(例えばテフロン(登録商標)樹脂やシリコン樹脂)から構成している。すなわち、固定部材30は、対向電極40a、40bとケーシング20との間の導通を遮断するように構成されている。さらに、固定部材30を熱膨張係数の低い材料から構成しており、絶縁管10内部を流れる気体および微粉炭が高温の場合であっても対向電極40a、40bと絶縁管10およびケーシング20との位置関係が大きく変化しないようにしている。なお、固定部材30の形状は、対向電極40aを固定することが可能な形状であればその他の形状であってもよい。また、固定部材30の個数は、必要に応じて増減可能であることはいうまでもない。
【0035】
一対の対向電極40a、40bは、絶縁管10の外周を180度の範囲で周回する螺旋形状をした帯状の電極であり、内側面と絶縁管10の外周面との間に所定の隙間を設けて配置されている。また、対向電極40a、40bは、互いに同一形状に構成されており、絶縁管10の軸心Oに対して互いに軸対称となるように配置されている。さらに、対向電極40aの両端面40a1、40a2、および対向電極40bの両端面40b1、40b2は、軸心Oに垂直な断面に平行となるように形成され、対向電極40aの端面40a1と対向電極40bの端面40b1の軸心O方向の位置、および対向電極40aの端面40a2と対向電極40bの端面40b2の軸心O方向の位置は、略一致するようになっている。対向電極40a、40bを構成する材料は、電極として機能する導電性材料であればよく、例えば銅やアルミ、鉄等の金属を採用することができる。
【0036】
更に第1粉体流量測定装置1Aは、絶縁管10と対向電極40a、40bとの間に隙間、すなわち空気の層を設けることにより、絶縁管10を構成する材料によって対向電極40a、40b間の電気力線の乱れ(電気力線の均一性の乱れ)を低減し、測定精度を高めるようにしている。
【0037】
具体的には、絶縁管10を構成する樹脂やセラミックス等は、比誘電率が凡そ3〜10程度の誘電体であり、真空と略同等の比誘電率(1.000586)の空気よりもはるかに大きい誘電性を有している。このため、対向電極40a、40bと絶縁管10を接触または近接させた場合、絶縁管10の誘電性による影響が大きくなり、対向電極40a、40b間の電気力線が不均一に乱れたものとなってしまう。このような電気力線の乱れは、絶縁管10の断面方向における測定感度の不均一さの直接の要因となるため、測定感度の均一性を向上させるためには、できるだけ乱れのない均一な電気力線を発生させる必要がある。
【0038】
そこで、第1粉体流量測定装置1Aでは、絶縁管10と対向電極40a、40bとの間に所定の隙間を設けて真空と略同等の比誘電率となる空気の層を生成することにより、絶縁管10の誘電性による影響を低減させて対向電極40a、40b間の電気力線の均一性を高め、測定感度の均一性を向上させるようにしている。
【0039】
さらに、この第1粉体流量測定装置1Aでは、対向電極40a、40bを、同一の寸法形状に構成すると共に、絶縁管10の軸心Oに対して互いに軸対称となるように配置することにより、図3(a)および(b)に示されるように、絶縁管10の各断面において対向電極40a、40bが互いに等しい幅で対向すると共に、軸心Oを中心として対称に対向するようにしている。このようにすることで、同図(a)および(b)において線Eで示すように、対向電極40a、40b間に略平行な直線状の電気力線を断面(絶縁管10の軸心Oに垂直な断面)ごとに発生させて対向電極40a、40b間の電気力線の均一性を高め、測定感度の均一性をさらに向上させることができる。
【0040】
なお、対向電極40a、40bは螺旋形状に構成されているため、この略平行な直線状の電気力線は、絶縁管10の軸心O方向に沿って漸次方向が変化するようになっている。この第1粉体流量測定装置1Aでは、対向電極40a、40bの螺旋角、すなわち絶縁管10の軸心O(螺旋軸)に対する傾き角を従来よりも比較的小さく設定することで、電気力線の方向の変化率が少なくなるようにしている。このようにすることで、対向電極40a、40b間の電気力線の均一性をより高めることができる。
【0041】
また、対向電極40a、40bの螺旋角を比較的小さく設定することにより、対向電極40a、40bを絶縁管10の軸心Oに対して軸対称に配置した場合の軸心O方向の間隔G(図2(b)参照)を大きくすることが可能となる。これにより、絶縁管10の断面方向以外の方向に生じる電気力線の密度を少なくすることができるため、対向電極40a、40b間の電気力線の均一性をより高めることができる。なお、間隔Gの距離は、対向電極40a、40bの絶縁管10の軸心O方向の幅Xの1.5倍以上の距離であることが好ましい。
【0042】
ケーシング20には、コネクタ60a、60bが設けられており、対向電極40a、40bは、これらのコネクタ60a、60bを介して外部の機器と電気的に接続される。具体的には、ケーシング20の第1部材20aには対向電極40aと導通するコネクタ60aが設けられ、第2部材20bには対向電極40bと導通するコネクタ60bが設けられている。これらのコネクタ60a、60bとしては、BNC型コネクタやM型コネクタ、N型コネクタ等、絶縁特性や高周波特性に優れた既知のコネクタを採用することができる。
【0043】
図4は、第1粉体流量測定装置1Aの回路構成を示した概略図である。同図に示されるように、対向電極40bは、対向電極40a、40bに交流電圧を印加する交流電源70に接続され、対向電極40bは、静電容量の変化を検出する検出回路80、および検出回路80の信号を増幅して補正手段170に出力する出力回路90に接続される。また、ケーシング20は、電磁シールドとして機能するために接地される。なお、対向電極40aおよび40bのいずれを交流電源70に接続してもよいことはいうまでもない。
【0044】
交流電源70によって対向電極40a、40bに交流電圧を印加すると、絶縁管10内を流動する微粉炭の流量に応じて対向電極40a、40b間の静電容量が変化する。検出回路80はこの静電容量の変化を電流値の変化として検出し、出力回路90は検出回路からの信号を増幅して補正手段170に出力する。この補正手段170は、出力回路90からの信号に所定の演算処理を施すことにより、出力の校正と微粉炭の単位時間当りの流量を同時に行う。
【0045】
なお、微粉炭の流量を測定する際には、事前に気体のみを流した状態で基準となる静電容量を測定すると共に、測定結果の補正用のパラメータとして気体の圧力や温度、湿度等を測定する場合もある。この第1粉体流量測定装置1Aでは、従来の測定装置に比して測定感度が大幅に向上しているため、絶縁管10内の気体の圧力変化(気体分子の密度の変化)に伴う静電容量の変化を検出することが可能となっている。すなわち、この第1粉体流量測定装置1Aによれば、微粉炭の流量だけではなく絶縁管10内の気体の圧力を測定することができる。
【0046】
次に、対向電極40a、40bの寸法形状および配置の詳細について説明する。
【0047】
図5(a)は、ケーシング20の第2部材20bおよび対向電極40bを示した図であり、同図(b)は、同図(a)のC−C線断面図である。なお、ケーシング20の第1部材20aおよび第2部材は同一形状であり、第1部材20aに固定される対向電極40a、および第2部材20bに固定される対向電極40bも同一部材であるため、ここでは、第2部材20bに固定された対向電極40bを表した図に基づいて説明する。
【0048】
本発明の発明者は、対向電極40a、40bの寸法形状および配置について種々の実験を重ね、高精度な測定を行うための最適な寸法形状および配置を見いだした。まず、対向電極40a、40bの絶縁管10の円周方向の幅は、同図(b)に示すように絶縁管10の軸心Oを中心とする角度θで表した場合に、θが50〜80度の範囲内であることが好ましく、θが55〜75度の範囲内であればより好ましく、θが60〜70度の範囲内であることが最も好ましい。対向電極40a、40bの絶縁管10の円周方向の幅をこのように設定することで、対向電極40a、40b間に平行且つ均一な直線状の電気力線を、絶縁管10の誘電性に影響されない範囲で可能な限り広範囲に発生させることが可能となる。
【0049】
次に、対向電極40a、40bの螺旋角α(同図(a)参照)は、20〜40度の範囲内であることが好ましく、25〜35度の範囲内であればより好ましく、27〜33度の範囲内であることが最も好ましい。螺旋角αをこのように設定することで、電気力線の方向の軸心O方向における変化率を少なくし、対向電極40a、40b間の電気力線の均一性をより高めることができる。また、対向電極40a、40bの絶縁管10の円周方向の幅を上記のように設定した場合であっても、対向電極40a、40bの軸心O方向の間隔G(図2(b)参照)を冗長にならない範囲で大きくすることができる。
【0050】
次に、対向電極40a、40bの内側面と絶縁管10の外周面との隙間の距離a(図5(b)参照)は、絶縁管10の外径Dの0.5〜6%の範囲内の距離であることが好ましく、外径Dの1〜5%の範囲内の距離であればより好ましく、外径Dの2〜4%の範囲内の距離であることが最も好ましい。隙間の距離aをこのように設定することで、絶縁管10の誘電性の影響を排除し、対向電極40a、40b間に均一な電気力線を発生させることが可能となる。
【0051】
なお、第1粉体流量測定装置1Aの製作の容易性を重要視する場合には、例えば一般的なサイズ(外径Dが10〜300mm程度)の絶縁管10に対して隙間の距離aを1〜8mm程度に設定するように、容易に製作可能な距離に隙間の距離aを設定するようにしてもよい。
【0052】
次に、対向電極40a、40bの外側面とケーシング20の内側面との隙間の距離b(図5(b)参照)は、特に限定されるものではないが、ケーシング20の影響を排除して均一な電気力線を発生させるためにはある程度離れていることが好ましく、少なくとも距離a以上の距離であることが好ましい。
【0053】
また、対向電極40a、40bの絶縁管10周りの周回角β(図5(b)参照)は、180度前後の角度であることが好ましい。より具体的には、周回角βは、160〜200度の範囲内であることが好ましく、170〜190度の範囲内であればより好ましく、180度であることが最も好ましい。軸心O方向における電気力線の方向の変化を考慮すると、周回角β=180度とすることで、絶縁管10内の断面上の各位置において均等に電気力線を発生させることができる。従って、本実施形態では、β=180度としている。
【0054】
なお、静電容量タイプとなる従来の粉体流量測定装置では、周回角βを360度以上に設定することが常識であり、360度以上にしなければ十分な測定精度を出すことが不可能であった。これに対し、本実施形態の構成によれば、周回角βを180度前後の角度に設定しても従来以上に高精度な測定を行うことが可能となっている。従って、この第1粉体流量測定装置1Aでは、従来よりも軸心O方向の長さをコンパクトにすることが可能となっている。また、周回角βをこのように設定することで、ケーシング20を半割構造とすることが可能となる。
【0055】
なお、図5(b)に示されるように、対向電極40bの一方の端面40b1の幅方向中心40b1aと、他方の端面40b2の幅方向中心40b2aとの間で周回角βを設定し、β=180度としている(対向電極40aについても同様)。測定精度の向上のためには、対向電極40a、40bのそれぞれにおいて周回角βをなるべく正確に設定することが好ましく、同図(b)に示されるように、対向電極40bの一方の端面40b1の幅方向中心40b1aと、他方の端面40b2の幅方向中心40b2aとが、軸心Oと共に略一直線上に並ぶことが好ましい。
【0056】
具体的には、対向電極40bの一方の端面40b1の幅方向中心40b1aの位置に対する他方の端面40b2の幅方向中心40b2aの位置の誤差範囲は、−5〜+5度の範囲内であることが好ましく、−3〜+3度の範囲内であればより好ましく、−1〜+1度の範囲内であることが最も好ましい。対向電極40aについても同様である。
【0057】
図6は、絶縁管10へのケーシング20および対向電極40a、40bの取付け方法を示した図である。同図に示されるように、第1部材20aおよび第2部材20bを、絶縁管10の両側から挟み込むようにしてボルト50およびナット52を締結することにより、容易にケーシング20および対向電極40a、40bを絶縁管10に取付けることができる。また、ボルト50およびナット52を取外してケーシング20を第1部材20aと第2部材20bに分割することにより、容易にケーシング20および対向電極40a、40bを絶縁管10から取り外すことができる。すなわち、この第1粉体流量測定装置1Aは、従来に比して飛躍的にメンテナンス性が向上したものとなっている。
【0058】
例えば、樹脂から構成された絶縁管10が微粉炭の接触により摩耗した場合、ケーシング20を分割して即座に取り外すことができるため、絶縁管10を容易且つ迅速に交換することができる。また、搬送管108の全体を、が最初から比誘電率の低い絶縁性材料で構成する場合は、搬送管108を切断することなく第1粉体流量測定装置1Aをそのまま取付けて測定を行うことができる。
【0059】
図7は、対向電極40a、40bの形成方法を示した図である。同図に示されるように、傾き角がαの平行四辺形状の板41を曲折することにより、対向電極40a、40bを形成している。ここで板41の幅Wは、対向電極40a、40bの絶縁管10の円周方向の幅に対応しており、W=π(D+2a)(θ/360)となっている。また、Hは、対向電極40a、40bの絶縁管10の軸心O方向の長さに対応しており、H=L/tanαとなっている。ここで、L=π(D+2a)(β/360)である。
【0060】
板41の両端面41a、41bの幅方向中心41a1、41b1は、対向電極40aの両端面40a1、40a2の幅方向中心40a1a、40a2a、および対向電極40bの両端面40b1、40b2の幅方向中心40b1a、40b2aにそれぞれ対応している。従って、板41は、幅方向中心41a1、41b1の間が周回角βとなるように曲折される。
【0061】
対向電極40a、40b間の静電容量は、対向電極40a、40bの面積S=W・Hに比例する値となる。従って、絶縁管10の外径Dに基づき、各パラメータa、θ、α、βの値を適宜に調整して対向電極40a、40bの面積Sを設定することにより、対向電極40a、40b間の静電容量を、測定条件に応じた最適な値にすることができる。
【0062】
なお、対向電極40a、40bは、上記以外の方法によって形成されるものであってもよく、例えば鋳造や鍛造等によって形成されるものであってもよいし、円筒状の素材を螺旋形状に切断することによって形成されるものであってもよい。また、対向電極40a、40bの厚さは特に限定されるものではないが、一般的なサイズの絶縁管10に対しては数mmの厚さとすることが好ましい。
【0063】
(微粉炭の流量制御)
次に、石炭ガス化炉システム100における微粉炭の流量制御について説明する。システム稼働中、ホッパー104の貯留されている微粉炭は、粉体流量調整装置110を介してガス化炉150に常に供給されている。ホッパー104内の微粉炭の貯留量が少なくなると、微粉炭ビン102から新たな微粉炭がホッパー104に投入される。ホッパー104に供給される微粉炭の質は、できる限り均一であることが望ましい。しかし現実は、石炭の産出地や、粉砕方法、粉砕条件、湿度などによって微粉炭の品質は常に変化している。
【0064】
図8には、時間Tが経過している最中における質量計測装置104Aの出力Wの変化を模式的に示している。通常は、時間領域Qに示されるように、ホッパー104内の微粉炭は減少を続けるので、質量計測装置104Aの出力Wは一定の速度で減少する。一方、微粉炭ビン102から新たな微粉炭がホッパー104に投入される際は、時間領域Pに示されるように、質量計測装置104Aの出力Wは急激に増加する。なお、時間領域Pにおいても、ホッパー104からガス化炉150に対する微粉炭の供給は継続していることになる。
【0065】
本実施形態において、補正手段170は、時間領域Qにおいて、質量計測装置104Aの所定時間T1の微粉炭の減少量W1から流量W1/T1(g/s)を算出し、同時に、第1粉体流量測定装置1Aの出力に基づく流量を算出する。更に、補正手段170は、質量計測装置104Aに基づく流量W1/T1(g/s)と、第1粉体流量測定装置1Aの出力に基づく同時間T1の流量を比較する。時間領域Qでは、質量計測装置104Aから得られる流量W1/T1が、ガス化炉150に供給されている正確な値であると考えられるので、この流量W1/T1を利用して、第1粉体流量測定装置1Aの流量が、W1/T1となるように補正量(校正値)を算出する。この結果、微粉炭の品質(例えば、粒径や、湿度、組成成分など)が変化して、第1粉体流量測定装置1Aの静電容量値に誤差が生じる場合であっても、質量計測装置104Aの出力を利用して、第1粉体流量測定装置1Aの出力を定常的に補正することが可能となり、常に正しい出力が得られるようになっている。
【0066】
一方、時間領域Pにおいては、ホッパー104では、微粉炭の排出と投入が同時に行われているので、質量計測装置104Aの出力Wでは流量を算出できない。従って、少なくともこの時間領域Pは、第1粉体流量測定装置1Aを利用してガス化炉150に対する微粉炭の供給量を検出するようにしている。なお、第1粉体流量測定装置1Aは、直前の時間領域Qにおいて補正手段170によって校正が完了しているので、十分に正しい出力が得られることになる。
【0067】
この結果、単一のホッパー104を利用する場合であっても、微粉炭の流量を常に正確に検出できる。なお、この第1粉体流量測定装置1Aにおける校正値は、第2〜第4粉体流量測定装置1B〜1Eにも適用することが好ましい。
【0068】
更に本実施形態では、上述の質量計測装置104Aと第1粉体流量測定装置1Aの計測結果を利用して、流量指示手段180が粉体流量調整装置110にフィードバック信号を送信する。この結果、粉体流量調整装置110は、微粉炭の供給量をリアルタイムで高精度に調整することが可能となる。具体的に、少なくともホッパー104に新たな微粉炭が投入されている時間領域Pでは、(補正済みの)第1粉体流量測定装置1Aから算出される流量を利用して流量指示手段180がフィードバック信号を生成し、粉体流量調整装置110で供給量を調整する。また、時間領域Qについては、質量計測装置104A側から算出される流量を利用して粉体流量調整装置110が供給量を調整する。この結果、メンテナンス頻度が極めて高いインパクトライン流量計112を搬送管108に設置しなくても、微粉炭の流量制御を実現できる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の石炭ガス化炉システム100では、搬送管108の一部に絶縁管10を採用し、そこに第1粉体流量測定装置1Aを設置するようにしている。この第1粉体流量測定装置1Aは、絶縁管10の外周を覆うように配置される略筒状のケーシング20と、固定部材30を間に挟んでケーシング20の内側面に固定され、絶縁管10の外周面との間に所定の隙間を設けると共にケーシング20の内側面との間に所定の隙間を設けて配置される一対の対向電極40a、40bと、を備えている。
【0070】
このような構成とすることで、絶縁管10の誘電性の影響を排除して均一な電気力線を発生させることが可能となり、絶縁管10内を流れる微粉炭の流量を従来以上の高い精度で測定できる。なお、本発明の発明者の実験結果では、絶縁管10の断面方向における(管の断面上の位置における)測定感度のばらつきを5%以内にすることも可能となっており、従来よりもはるかに高精度な測定を行うことができる。また、微粉炭の流量だけではなく、絶縁管10内の気体の圧力も測定することができるので、微粉炭を流す前の搬送気体の状況を検出することもできる。
【0071】
なお、本実施形態では、第1粉体流量測定装置1Aのケーシング20を半割構造とした場合の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ケーシング20は一体的に構成されるものであってもよい。
【0072】
特に本実施形態では、絶縁管10として、ガラス繊維を多重に巻き付けた繊維強化プラスチック材料を採用しているので、内圧を高めることも可能となり、具体的には1MPaから6MPaの内圧で搬送できるようになっている。この結果、微粉炭の高圧・高速搬送と、微粉炭の高精度な流量測定を合理的に両立させることが可能となっている。
【0073】
更に本実施形態では、補正手段170が、ホッパー104に設けられる質量計測装置104Aを利用して、第1粉体流量測定装置1Aの出力を定期的に補正するようにしているので、測定感度のばらつきを更に小さくすることができる。従って、この測定結果を粉体流量調整装置110にフィードバックさせることで、微粉炭の流量制御を飛躍的に高精度化できる。とりわけ本実施形態では、ホッパー104に微粉炭が投入されていない時間領域Qを活用して第1粉体流量測定装置1Aの出力を定期的に補正し、ホッパー104に微粉炭が投入される時間領域Pでは、第1粉体流量測定装置1Aの測定結果を有効活用する構造になっているので、単一のホッパー104であっても、安定した流量制御が可能になる。なお、従来は2つ以上のホッパーを並列配置し、一方のホッパーに微粉炭を投入している間は、他方のホッパーから微粉炭を排出するようにして、微粉炭の投入と排出を区別する必要がある。
【0074】
また、本実施形態における第1粉体流量測定装置1Aでは、一対の対向電極40a、40bは、絶縁管10の外側を周回する螺旋形状であり、絶縁管10の軸心Oに対して軸対称に配置されている。このようにすることで、絶縁管10の断面方向における測定感度の均一性を高めることが可能となり、測定精度をさらに向上させることができる。
【0075】
また、一対の対向電極40a、40bは、絶縁管10の軸心Oに垂直な断面における幅が絶縁管10の円周方向に50〜80度の範囲に設定されている。このようにすることで、絶縁管10の誘電性の影響を排除しつつ、より均一な直線状の電気力線を発生させることが可能となり、測定精度をさらに向上させることができる。
【0076】
また、一対の対向電極40a、40bは、螺旋角αが20乃至40度の螺旋形状となっている。このようにすることで、電気力線の均一性をさらに高めることが可能となり、測定精度をさらに高めることができる。
【0077】
また、一対の対向電極40a、40bは、絶縁管10の円周方向に160乃至200度の範囲で周回する螺旋形状となっている。このようにすることで、測定精度を高めながらも、装置の軸方向寸法をコンパクトにすることができる。また、ケーシング20を半割構造とし、ケーシング20および対向電極40a、40bを絶縁管10の径方向に分割可能な構造にすることができるため、装置の取付け取外しをきわめて容易にし、絶縁管10の交換等のメンテナンスを行いやすくすることができる。
【0078】
また、絶縁管10の外周面と一対の対向電極40a、40bの内側面との隙間の距離aは、絶縁管10の外径Dの0.5乃至6%の距離に設定されている。このようにすることで、絶縁管10の誘電性の影響の低減と、測定感度の向上を高レベルでバランスさせることができる。
【0079】
また、ケーシング20の内側面と一対の対向電極40a、40bの外側面との隙間の距離bは、絶縁管10の外周面と一対の対向電極40a、40bの内側面との隙間の距離a以上に設定されている。このようにすることで、ケーシング20の影響を排除し、測定精度をさらに向上させることができる。
【0080】
また、ケーシング20は、径方向に分割される第1部材20aおよび第2部材20bからなる半割構造であり、一対の対向電極40a、40bは、一方が第1部材20aに固定され、他方が第2部材20bに固定されている。このようにすることで、ケーシング20および対向電極40a、40bの絶縁管10に対する取付け取外しをきわめて容易にし、メンテナンス性を向上させることができる。
【0081】
また、ケーシング20は、導電性材料から構成され、固定部材30は、絶縁性材料から構成されている。このようにすることで、ケーシング20を電磁シールドとして機能させることが可能となり、外乱の影響を排除し、測定精度をさらに向上させることができる。
【0082】
なお本実施形態では、搬送管108の一部に絶縁管10を挿入する構造を示したが、本発明はこれに限定されず、搬送管108の全体を絶縁管で校正することも可能である。
【0083】
また本実施形態では、第1粉体流量測定装置1Aにおいて、ブロック状の固定部材30を使用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばケーシング20の内側面に固定部材30として絶縁性材料の層を形成し、この絶縁性材料の層の内側面に対向電極40a、40bを取付けるようにしてもよい。また、対向電極40a、40bを例えばフィルム基板上に形成し、このフィルム基板をケーシング20の内側面に貼付けることで固定部材30として機能するようにしてもよい。
【0084】
また、一対の対向電極40a、40bは、平行四辺形状の板41を曲折して構成されている。このようにすることで、対向電極40a、40bを低コストで高精度に形成することが可能となり、対向電極40a、40bを正確に対向させて測定精度をさらに向上させることができる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の石炭ガス化炉システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の石炭ガス化炉システムは、ガス化された石炭を利用する各種プラント設備の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1A〜1E 第1〜第5粉体流量測定装置
10 絶縁管
20 ケーシング
20a 第1部材
20b 第2部材
30 固定部材
40a、40b 対向電極
41 平行四辺形状の板
a 絶縁管の外周面と対向電極の内側面との隙間の距離
b ケーシングの内側面と対向電極の外側面との隙間の距離
O 絶縁管の軸心
α 対向電極の螺旋角
β 対向電極の周回角
θ 対向電極の絶縁管の円周方向の幅を表す角度
100 石炭ガス化炉システム
102 微粉炭ビン
104 ホッパー
108 搬送管
110 粉体流量調整装置
112 インパクトライン流量計
116 分配器
150 ガス化炉
154A 上段バーナ
154B 下段バーナ
170 補正手段
180 流量指示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭を貯留するホッパーと、
前記微粉炭を水素と一酸化炭素にガス化するガス化炉と、
前記微粉炭を前記ホッパーから前記ガス化炉のバーナまで搬送する搬送管と、
前記搬送管の途中に設けられて前記ホッパーからの前記微粉炭の供給量を調整する粉体流量調整装置と、
前記搬送管の途中に設けられて前記ホッパーから供給された前記微粉炭の流量を計測する粉体流量測定装置と、を備え、
前記粉体流量測定装置は、
前記搬送管の少なくとも一部に挿入され、絶縁性材料から構成される絶縁管と、
前記絶縁管の外周を覆うように配置される略筒状のケーシングと、
固定部材を介して前記ケーシングの内側面に固定され、前記絶縁管の外周面との間に所定の隙間を設けると共に前記ケーシングの内側面との間に所定の隙間を設けて配置される一対の対向電極と、を備えることを特徴とする、
石炭ガス化炉システム。
【請求項2】
前記絶縁管は、繊維強化プラスチック材料で構成され、
前記搬送管及び前記絶縁管の内圧は1MPaから6MPaの範囲内に設定されることを特徴とする、
請求項1に記載の石炭ガス化炉システム。
【請求項3】
前記ホッパーにおける前記微粉炭の質量変化を計測する質量計測装置と、
前記粉体流量測定装置の出力を補正する補正手段と、を更に備え、
前記補正手段は、
前記質量計測装置の出力から得られる前記ホッパー内の前記微粉炭の所定時間における減少量と、前記粉体流量測定装置の出力から得られる前記ホッパーから供給された前記微粉炭の前記所定時間における流量を比較して、前記粉体流量測定装置の補正量を算出することを特徴とする、
請求項1または2に記載の石炭ガス化炉システム。
【請求項4】
前記粉体流量測定装置における前記一対の対向電極は、
平行四辺形状の板を曲折して構成され、前記絶縁管の外側を円周方向に160乃至200度の範囲で周回する螺旋角が20乃至40度の螺旋形状であり、
前記絶縁管の軸心に垂直な断面における幅が前記絶縁管の円周方向に50〜80度の範囲に設定され、
前記絶縁管の軸心に対して軸対称に配置されることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の石炭ガス化炉システム。
【請求項5】
前記粉体流量測定装置における前記絶縁管の外周面と前記一対の対向電極の内側面との隙間の距離は、前記絶縁管の外径の0.5乃至6%の距離に設定され、
前記粉体流量測定装置における前記ケーシングの内側面と前記一対の対向電極の外側面との隙間の距離は、前記絶縁管の外周面と前記一対の対向電極の内側面との隙間の距離以上に設定されることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の石炭ガス化炉システム。
【請求項6】
前記粉体流量測定装置における前記ケーシングは、径方向に分割される第1部材および第2部材からなる半割構造であり、
前記一対の対向電極は、一方が前記第1部材に固定され、他方が前記第2部材に固定されることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の石炭ガス化炉システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−25799(P2012−25799A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162975(P2010−162975)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(509191414)株式会社インステック (2)