説明

石炭ガス化炉及び石炭ガス化複合発電プラント

【課題】システム構成を単純化することができ、信頼性を向上させることが可能な石炭ガス化炉及び石炭ガス化複合発電プラントを提供することを目的とする。
【解決手段】石炭ガス化炉1は、石炭をガス化反応させてガスを生成するガス化部7と、ガス化部7で生成されたガスと熱交換する熱交換器4と、ガス化部7と熱交換器4を内蔵する圧力容器10と、圧力容器10内に内蔵され、ガス化部7で生成され熱交換器4で熱交換したガス中に含まれるチャーを分離するサイクロン6と、サイクロン6で分離されたチャーをガス化部7へ供給する内部循環チャー供給管8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭をガス化反応させてガスを生成する石炭ガス化炉及び石炭ガス化複合発電プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化複合(IGCC)発電プラントにおける乾式石炭供給空気吹き式石炭ガス化炉では、空気と共に投入された石炭が変換されて、一酸化炭素と水素を主たる可燃性成分とするガスが生成される。生成ガス中には、微粉炭から揮発分が放出されたものであって、未燃炭素と灰分からなるチャーが含まれる。チャーは、石炭ガス化炉の後流側に配置されたチャー回収系統で回収され、石炭ガス化炉へ再び投入される。
【0003】
特許文献1では、チャー回収循環システムを備える石炭ガス化装置に関する発明であって、チャーの回収の高効率化とチャーの確実な移送手段を特徴とする技術が開示されている。また、特許文献2では、石炭ガス化複合発電装置に関する発明であって、排ガスボイラの最適設計条件を選定するとともに、石炭ガス化炉による最適蒸気条件を選定することによって、蒸気タービンの高性能化と石炭ガス化複合発電設備の高性能化を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−218692号公報
【特許文献2】特開昭61−241394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャー回収系統が、生成ガス中に含まれるチャーを回収し、石炭ガス化炉へ投入することによって、石炭中の炭素分がガスへ変換される効率をほぼ100%まで上昇させることができる。従来のチャー回収系統は、チャーを生成ガスから分離するサイクロン及びポーラスフィルタと、サイクロン及びポーラスフィルタからチャーを集合させ複数のチャー供給ホッパへ分配するチャービンと、チャーを時分割で加圧してガス化炉へ供給する複数のチャー供給ホッパを備える。
また、チャーは高温かつ腐食性のガスが随伴しているため、チャー回収系統の各機器には耐腐食性材料が使用されている。
このように従来の石炭ガス化複合発電プラントでは、全体の構成のうちチャー回収系統の機器類が占める割合が高かった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、システム構成を単純化することができ、信頼性を向上させることが可能な石炭ガス化炉及び石炭ガス化複合発電プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の石炭ガス化炉及び石炭ガス化複合発電プラントは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る石炭ガス化炉は、石炭をガス化反応させてガスを生成するガス化部と、ガス化部で生成されたガスと熱交換する熱交換器と、ガス化部と熱交換器を内蔵する圧力容器と、圧力容器内に内蔵され、ガス化部で生成され熱交換器で熱交換したガス中に含まれるチャーを分離するサイクロンと、サイクロンで分離されたチャーをガス化部へ供給する供給管とを備える。
【0008】
この発明によれば、ガス化部で生成され熱交換器で熱交換したガスからチャーを分離するサイクロンがガス化部及び熱交換器と同一の圧力容器内に設けられるため、石炭ガス化炉におけるチャー回収系統路が短くなる上、機器類を縮小、低減することができる。その結果、システム構成を単純化することができ、信頼性を向上させることが可能になる。また、チャー回収系統路の圧力損失が少ないため、サイクロンから分離されたチャーをガス化部へ供給するための加圧設備を減らしたり無くしたりすることができる。また、加圧のための不活性ガスを低減できることから、ガス化部における熱損失も減少させることができる。
【0009】
上記発明において、熱交換器は、ガス化部の上部に設けられ、サイクロンは、サイクロンの上部にて熱交換器からガスが供給され、サイクロンの下部にて供給管と接続され、供給管は、圧力容器内に設けられ、供給管の上部にてサイクロンと接続され、供給管の下部にてチャーをガス化部へ供給してもよい。
【0010】
この発明によれば、ガス化部と熱交換器は、上下方向に一列の配置関係となり、サイクロンは、ガス化部の直上に設けられた熱交換器の上部からガスが供給される。そして、サイクロンで分離されたチャーは、サイクロンの下部に接続され圧力容器内に設けられた供給管へ排出され、供給管は、チャーをそのまま下降させてガス化部へ導入する。したがって、チャーを回収しガス化部へ供給するチャー回収系統路を短くすることができ、圧力損失も低減できる。
【0011】
上記発明において、サイクロンは、複数台からなり、複数台のサイクロンは、圧力容器の軸線周りに均等に配置されてもよい。
【0012】
この発明によれば、複数台のサイクロンが圧力容器の軸線周りに均等に配置されるため、一つのサイクロンのみが設けられる場合に比べて、圧力容器内で一方向に偏ることなくサイクロンが配置される。その結果、全体にバランスの良い圧力容器とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る石炭ガス化複合発電プラントは、石炭をガス化反応させてガスを生成するガス化部と、ガス化部で生成されたガスと熱交換する熱交換器とを内蔵する圧力容器と、圧力容器内に内蔵され、ガス化部で生成され熱交換器で熱交換したガス中に含まれるチャーを分離するサイクロンと、サイクロンで分離されたチャーをガス化部へ供給する供給管とを備える石炭ガス化炉と、ガス化部で生成され熱交換器で熱交換したガスを燃焼する燃焼器と、燃焼器から供給される燃焼ガスによって駆動されるタービンと、タービンが接続される回転軸とを有するガスタービンと、回転軸に接続されて回転軸が回転駆動されることによって発電する発電機とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、システム構成を単純化することができ、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化炉を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る圧力容器を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】図2のA−A線で切断した横断面図である。
【図4】図2のB−B線で切断した横断面図である。
【図5】同実施形態に係る圧力容器の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】図5のC−C線で切断した横断面図である。
【図7】図5のD−D線で切断した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係る石炭ガス化炉1は、例えば石炭ガス化複合(IGCC)発電プラントに適用される。石炭ガス化炉1は、空気とともに投入された石炭を変換して、一酸化炭素と水素を主たる可燃性成分とするガスを生成する。そして、石炭ガス化炉1は、生成ガス中に含まれるチャーを回収し、ガス化部7のコンバスタ2へ再びチャーを投入する。
【0017】
石炭ガス化炉1は、図1に示すように、ガス化部7、熱交換器4、サイクロン6及び内部循環チャー供給管8を内蔵する圧力容器10と、ポーラスフィルタ13と、チャー供給ホッパ14などからなる。
【0018】
圧力容器10は、内部からの圧力に耐え得る容器であり、内部にガス化部7と熱交換器4を収容する。圧力容器10とガス化部7と熱交換器4は、軸を共通して配置される。また、圧力容器10には、上部に複数のサイクロン6が設置される。本実施形態では、図4に示すように、4台のサイクロン6が圧力容器10の軸線周りに熱交換器4を囲んで均等に配置される。サイクロン6は旋回止め室6Aを有し、図2に示すように旋回止め室6Aはサイクロン6の下部に設けられる。さらに、圧力容器10の壁部と、ガス化部7又は熱交換器4の壁部との間のアニュラス部11には、サイクロン6とガス化部7のコンバスタ2とを結ぶ内部循環チャー供給管8が配置される。
【0019】
ガス化部7は、下方からコンバスタ2、リダクタ3の順で配置される。コンバスタ2とリダクタ3とによってガス化部7が構成される。ガス化部7では、下方から上方へとガスが流れるように形成されている。また、石炭ガス化炉1は、ガス化部7のリダクタ3の上部に熱交換器4が設けられる、いわゆるタワー型のガス化炉である。コンバスタ2、リダクタ3及び熱交換器4は、上下方向に一列の配置関係となる。石炭ガス化炉1は、図1に示すように自立しており、近傍には機器類や配管類を支持するための設備架台25,26が設けられる。設備架台25は、例えばポーラスフィルタ13やチャー供給ホッパ14を支持し、設備架台26は石炭供給設備(図示せず。)側の配管などを支持する。
【0020】
コンバスタ2は、コンバスタバーナ16から微粉炭、空気及び酸素が投入され、内部循環チャーバーナ17と外部循環チャーバーナ21それぞれからチャーが投入される。そして、コンバスタ2は、微粉炭及びチャーを一部燃焼させて、リダクタ3におけるガス化反応に必要な高温状態に維持される。微粉炭及びチャーの残部は、揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)へと熱分解される。また、コンバスタ2では、溶融した微粉炭の灰は、灰ホッパ15に貯留されガス化部7の下方から排出される。溶融した灰は、水で急冷、粉砕されてガラス状のスラグとなる。コンバスタ2には、例えば噴流床が採用される。なお、流動床式や固定床式のコンバスタでもよい。
【0021】
リダクタ3では、コンバスタ2からの高温ガスによって、リダクタバーナ18から投入された微粉炭がガス化される。これにより、微粉炭から一酸化炭素や水素等のガスが生成される。石炭ガス化反応は、微粉炭及びチャー中の炭素が高温ガス中の二酸化炭素及び水分と反応して一酸化炭素や水素を生成する吸熱反応である。
【0022】
なお、ガス化部7の上流側には、ガス化部7へ微粉炭を供給する石炭供給設備が設けられる。この石炭供給設備は、原料炭を粉砕して数μm〜数百μmの微粉炭にする粉砕機(図示せず。)を備えており、この粉砕機によって粉砕された微粉炭は、複数のホッパ(図示せず。)に貯留される。各ホッパに貯留された微粉炭は、一定量ずつ空気分離装置(図示せず。)から供給される窒素とともにガス化部7のコンバスタ2とリダクタ3へと搬送される。
【0023】
コンバスタバーナ16には、石炭供給設備からの微粉炭が、空気分離装置において分離された窒素とともに供給される。コンバスタバーナ16には、空気昇圧機(図示せず。)から供給される空気が、空気分離装置において分離された酸素とともにガス化剤(酸化剤)として供給される。コンバスタバーナ16は、酸素濃度が調整された空気が供給される。そして、コンバスタバーナ16から微粉炭、空気及び酸素がコンバスタ2内へ投入される。
【0024】
内部循環チャーバーナ17には、サイクロン6から下降したチャーが、空気分離装置において分離された窒素とともに供給される。外部循環チャーバーナ21には、ポーラフィルタ13によって回収されたチャーが、空気分離装置において分離された窒素とともに供給される。そして、内部循環チャーバーナ17と外部循環チャーバーナ18からチャーがコンバスタ2内へ投入される。
【0025】
リダクタバーナ18には、石炭供給設備からの微粉炭が、空気分離装置において分離された窒素とともに供給される。そして、リダクタバーナ18から微粉炭がリダクタ3内へ投入される。
【0026】
ガス化部7の下流側、すなわちガス化部7の上部には、熱交換器4、いわゆるシンガスクーラ(SGC)が設けられる。熱交換器4は、複数の熱交換器からなってもよい。熱交換器4では、リダクタ3から導かれた高温ガスから顕熱を得て、熱交換器4に導かれた水を蒸気として発生させる。熱交換器4を通過した生成ガスは、冷却される。例えばガス化部7では温度が1100〜1200℃になり、熱交換器4の後流では430〜450℃になる。そして、冷却された生成ガスは、チャー回収系統へと導かれる。このチャー回収系統は、圧力容器10に内蔵された複数のサイクロン6と、圧力容器10外部に設けられたポーラスフィルタ13及びチャー供給ホッパ14などからなる。
【0027】
サイクロン6は、図2に示すように、その上部のサイクロン入口6aにて熱交換器4の上端4aと接続され、熱交換器4で熱交換したチャーを含む生成ガスが導入される。サイクロン6は、遠心分離を利用して、生成ガス中の比較的粗い粒子のチャーを回収する。サイクロン6の旋回止め室6Aは、通常の管部分に比べて大きい容積を有することによって、遠心分離で発生したガスの旋回を低減させる。そして、サイクロン6(旋回止め室6A)の下端は、内部循環チャー供給管8の上端と接続され、サイクロン6で生成ガスから分離されたチャーは、重力落下により下方へ移送される。その後、上述したとおり、内部循環チャーバーナ17から窒素とともにチャーがコンバスタ2内へ投入される。
【0028】
一方、サイクロン6によってチャーが除去された生成ガスは、サイクロン出口6bからポーラスフィルタ13へ供給される。サイクロン6は、4台から構成されることから、図2及び図4に示すように、熱交換器4の上端4aで4台のサイクロン6が熱交換器4と接続され、生成ガスは4方向に分岐される。そして、図2及び図3に示すように、各サイクロン6に接続されたガス供給管9が石炭ガス化炉1の上部で1本のガス供給管12に合流し、サイクロン6からポーラスフィルタ13へ生成ガスが供給される。
【0029】
ポーラスフィルタ13は、生成ガスが通過することによって生成ガスに混在しているチャーを捕捉して回収する。ポーラスフィルタ13は、サイクロン6で回収されなかった微細なチャーを回収できる。
【0030】
ポーラスフィルタ13で回収されたチャーは、チャー供給ホッパ14に貯留される。そして、チャー供給ホッパ14に貯留されたチャーは、一定量ずつ空気分離装置から供給される窒素とともに外部循環チャー供給管20を介してガス化部7へと搬送される。その後、チャーは、外部循環チャーバーナ21を介してコンバスタ2内へ再投入される。
【0031】
チャー回収系統のポーラスフィルタ13を通過した生成ガスは、ガス供給管19を介してガス精製設備(図示せず。)へ供給される。ポーラスフィルタ13を通過した生成ガスには、一酸化炭素や水素の他に、硫化水素や硫化カルボニルといった硫黄化合物が含まれている。そこで、ガス精製設備は、これらの硫黄化合物を除去する。ガス精製設備において精製された生成ガスは、燃料ガスとしてガスタービン設備(図示せず。)のガスタービン燃焼器(図示せず。)へと送られる。
【0032】
ガスタービン設備は、燃料ガスである生成ガスが燃焼するガスタービン燃焼器と、ガスタービン燃焼器において生成ガスが燃焼することにより生じる燃焼ガスによって回転駆動されるガスタービンと、ガスタービンと同一の回転軸で接続され、ガスタービン燃焼器へと高圧空気を送り出す空気圧縮機とを備えている。ガスタービンを通過した燃焼ガスは、排熱回収ボイラへと導かれる。
【0033】
また、ガスタービン設備と同じ回転軸には蒸気タービンが接続されており、いわゆる一軸式のコンバインドシステムとなっていてもよい。蒸気タービンには、石炭ガス化炉1の熱交換器4や排熱回収ボイラから高圧蒸気が供給される。なお、一軸式のコンバインドシステムに限らず、二軸式のコンバインドシステムであってもよい。ガスタービン及び蒸気タービンによって駆動される回転軸には、電気を出力する発電機が設けられる。
【0034】
次に、上記構成の石炭ガス化炉1を備えている石炭ガス化複合発電プラントの動作について説明する。
原料炭は、粉砕機で粉砕されて微粉炭とされた後、微粉炭は、ホッパへと導かれて貯留される。ホッパに貯留された微粉炭は、空気分離装置において分離された窒素とともに、ガス化部7のコンバスタバーナ16とリダクタバーナ18へ供給される。また、空気分離装置において分離された窒素とともに、内部循環チャーバーナ17には、サイクロン6で回収されたチャーが供給され、外部循環チャーバーナ21には、ポーラスフィルタ13で回収されたチャーが供給される。
【0035】
コンバスタバーナ16の燃焼用気体としては、ガスタービン設備に設けられている空気圧縮機から抽気された空気を空気昇圧機によって更に昇圧された圧縮空気に対して、空気分離装置において分離された酸素が添加された空気が使用される。コンバスタ2では、微粉炭及びチャーが燃焼用空気によって一部燃焼させられる。微粉炭及びチャーの残部は、一酸化炭素、水素、低級炭化水素等の揮発分へと熱分解される。
【0036】
リダクタ3では、リダクタバーナ18から供給された微粉炭と、コンバスタ2内で揮発分を放出したチャーが、コンバスタ2から上昇してきた高温ガスによりガス化され、一酸化炭素や水素などの可燃性の生成ガスが生成される。
【0037】
リダクタ3を通過した生成ガスは、ガス化部7の下流側に設けられている熱交換器4へと導かれる。生成ガスは、熱交換器4にその顕熱を与えて蒸気を発生させる。熱交換器4で発生した蒸気は、主として、蒸気タービンを駆動するために用いられる。熱交換器4を通過した生成ガスは、チャー回収系統へと導かれてチャーが回収される。
【0038】
チャー回収系統では、まず、サイクロン6にて生成ガスから粗い粒子のチャーが分離され、分離されたチャーは、内部循環チャー供給管8を介して再びコンバスタ2内へ投入される。一方、サイクロン6でチャーが分離された生成ガスは、ポーラスフィルタ13へ供給され、ポーラスフィルタ13にて微細粒子のチャーが捕捉され、生成ガスから分離される。分離されたチャーは、チャー供給ホッパ14及び外部循環チャー供給管20を介して再びコンバスタ2内へ投入される。
【0039】
ポーラスフィルタ13を通過した生成ガスは、ガス精製設備にて硫黄化合物が除去された後、ガスタービン設備に設けられているガスタービン燃焼器へと導かれ、空気圧縮機から供給される圧縮空気とともに燃焼される。この燃焼によって生じた燃焼ガスによってガスタービンが回転駆動して、回転軸が駆動する。ガスタービンを通過した燃焼ガスは、排熱回収ボイラへと導かれて、この燃焼ガスの排熱を利用することによって蒸気が発生させられる。排熱回収ボイラにおいて発生した蒸気は、主として、蒸気タービンの回転駆動のために用いられる。蒸気タービンは、石炭ガス化炉1の熱交換器4からの蒸気及び排熱回収ボイラからの蒸気によって回転駆動させられて、ガスタービン設備の回転軸を駆動する。蒸気タービンによる回転軸の回転力は、発電機によって電気出力へと変換される。
【0040】
以上、本実施形態によれば、コンバスタ2とリダクタ3からなるガス化部7で生成され熱交換器4で熱交換した生成ガスからチャーを分離するサイクロン6が、ガス化部7及び熱交換器4と同一の圧力容器10内に設けられる。そのため、石炭ガス化炉1におけるチャー回収系統路が短くなる上、機器類を縮小、低減することができる。よって、石炭ガス化複合発電プラントで、全体の構成のうちチャー回収系統の機器類が占める割合を低減できる。
【0041】
特にガス化部7と熱交換器4が上下方向に一列の配置関係となるタワー型の石炭ガス化炉1の場合、チャーは、サイクロン6の下部に接続され圧力容器10内に設けられた内部循環チャー供給管8へ排出され、内部循環チャー供給管8は、チャーをそのまま下降させてガス化部7のコンバスタ2へ導入する。したがって、チャーを回収しコンバスタ2へ供給するチャー回収系統路を短くすることができ、圧力損失も低減できる。
【0042】
従来のチャー回収系統は、石炭ガス化炉の圧力容器の外にて、チャーを生成ガスから分離するサイクロン及びポーラスフィルタと、サイクロン及びポーラスフィルタからチャーを集合させ複数のチャー供給ホッパへ分配するチャービンと、チャーを時分割で加圧してガス化炉へ供給する複数のチャー供給ホッパを備えていた。そのため、チャーは、全量がサイクロン、ポーラスフィルタ、チャービン及びチャー供給ホッパを介して圧力容器の外部を循環していた。
【0043】
一方、本実施形態では、チャーは圧力容器10の内部を循環する内部循環系統と圧力容器10の外部を循環する外部循環系統の2系統で循環する。そして、圧力容器10の外で循環するチャーは、ガス供給管12を介してポーラスフィルタ13へ供給されるチャーのみである。それ以外のチャーは、圧力容器10の内部でサイクロン6及び内部循環チャー供給管8を介して循環する。したがって、本実施形態では、サイクロン6で分離されたチャーとポーラスフィルタ13で分離されたチャーを集合させる必要がないため、従来のチャー回収系統で用いられていたチャービンが不要になる。
【0044】
また、ポーラスフィルタ13で分離されて圧力容器10の外部を循環するチャーは、サイクロン6で分離されて圧力容器10の内部を循環するチャーに比べて約1/10の量である。したがって、圧力容器10の外部からコンバスタ2の内部へチャーを投入するために用いられるチャー供給ホッパ14や外部循環チャーバーナ21の容量も、従来のチャー供給ホッパや外部循環チャーバーナの容量に比べて大幅に低減できる。
【0045】
以上のとおり、本実施形態では、システム構成を単純化することができ、機器点数を減らすことができることから信頼性を向上させることが可能になる。また、従来のシステムに比べて、低コストのシステムを提供することができる。
【0046】
また、本実施形態では、チャー回収系統路が短くなって圧力損失が少ないため、サイクロン6から分離されたチャーをコンバスタ2内へ供給するための加圧設備を減らしたり無くしたりすることができる。すなわち、サイクロン6からコンバスタ2へ導入するチャーの圧力損失は、熱交換器4及びサイクロン6における差圧分だけ圧力が下がった値であり、サイクロン6からコンバスタ2内への導入はこの差圧分を補えばよく、容易にコンバスタ2内へチャーを供給することができる。
【0047】
一方、従来のようにチャー全量を石炭ガス化炉の外部で循環させる場合は、熱交換器4及びサイクロン6における差圧分に加えて、配管やポーラスフィルタにおける差圧分の圧力が低下するため、チャー供給ホッパにおける再加圧が必要である。
【0048】
更に、本実施形態では、チャーを投入するための加圧に要する不活性ガス、例えば窒素を低減できることから、コンバスタ2とリダクタ3における熱損失も減少させることができる。すなわち、コンバスタ2とリダクタ3へ導入される不活性ガス量が多いと、生成ガスの発熱量が低下してしまうが、本実施形態では、外部を循環するチャーの量が約1/10になる等の理由によって、圧力損失が低減できるため、チャーを投入するための不活性ガス量を減らすことができる。その結果、ガス化部7における発熱量低下も防止できる。
【0049】
また更に、複数台のサイクロン6が圧力容器10の軸線周りに均等に配置されるため、一つのサイクロン6のみが設けられる場合に比べて、圧力容器10内で一方向に偏ることなくサイクロン6が配置される。また、サイクロン6とガス化部7のコンバスタ2を結ぶ内部循環チャー供給管8も均等に配置できる。その結果、本実施形態では、全体にバランスの良い圧力容器10とすることができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、サイクロン6の旋回止め室6Aについて、図2〜図4を用いて説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば図5〜図7に示すように旋回止め室6Aは、上部のサイクロン6と同軸上に配置され、かつ対称的な形状を有するようにしてもよい。内部循環チャー供給管8の配管形状は、図2と図5に示すように旋回止め室6Aや熱交換器4の形状や位置関係によって変化する可能性がある。
【0051】
また、上記実施形態では、ガス化炉7と熱交換器4が一列に配置される、いわゆるタワー型の石炭ガス化炉1の場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えばいわゆるクロスオーバー型の石炭ガス化炉でも本発明を適用できる。クロスオーバー型の石炭ガス化炉では、ガス化炉と熱交換器が平行に2列で配置され、上端でガス化炉と熱交換器が水平に結ばれて生成ガスがガス化炉から熱交換器へ供給され、熱交換器の下部から生成ガスが取り出される。この場合もサイクロンを圧力容器内であってコンバスタよりも上方に設置することで本発明を実現できる。
【0052】
さらに、上記実施形態では、微粉炭やチャーを搬送する不活性ガスとして窒素を使用する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば二酸化炭素などでもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 石炭ガス化炉
2 コンバスタ
3 リダクタ
4 熱交換器
6 サイクロン
6A 旋回止め室
7 ガス化部
8 内部循環チャー供給管(供給管)
9,12,19 ガス供給管
10 圧力容器
11 アニュラス部
13 ポーラスフィルタ
14 チャー供給ホッパ
15 灰ホッパ
16 コンバスタバーナ
17 内部循環チャーバーナ
18 リダクタバーナ
20 外部循環チャー供給管
21 外部循環チャーバーナ
25,26 設備架台




【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化反応させてガスを生成するガス化部と、前記ガス化部で生成されたガスと熱交換する熱交換器と、前記ガス化部と前記熱交換器を内蔵する圧力容器と、
前記圧力容器内に内蔵され、前記ガス化部で生成され前記熱交換器で熱交換したガス中に含まれるチャーを分離するサイクロンと、
前記サイクロンで分離されたチャーを前記ガス化部へ供給する供給管と、
を備える石炭ガス化炉。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記ガス化部の上部に設けられ、
前記サイクロンは、前記サイクロンの上部にて前記熱交換器から前記ガスが供給され、前記サイクロンの下部にて前記供給管と接続され、
前記供給管は、前記圧力容器内に設けられ、前記供給管の上部にて前記サイクロンと接続され、前記供給管の下部にて前記チャーを前記ガス化部へ供給する請求項1に記載の石炭ガス化炉。
【請求項3】
前記サイクロンは、複数台からなり、
前記複数台のサイクロンは、前記圧力容器の軸線周りに均等に配置される請求項1又は2に記載の石炭ガス化炉。
【請求項4】
石炭をガス化反応させてガスを生成するガス化部と、前記ガス化部で生成されたガスと熱交換する熱交換器と、前記ガス化部と前記熱交換器を内蔵する圧力容器と、前記圧力容器内に内蔵され、前記ガス化部で生成され前記熱交換器で熱交換したガス中に含まれるチャーを分離するサイクロンと、前記サイクロンで分離されたチャーを前記ガス化部へ供給する供給管とを備える石炭ガス化炉と、
前記ガス化部で生成され前記熱交換器で熱交換したガスを燃焼する燃焼器と、前記燃焼器から供給される燃焼ガスによって駆動されるタービンと、前記タービンが接続される回転軸とを有するガスタービンと、
前記回転軸に接続されて前記回転軸が回転駆動されることによって発電する発電機と、
を備える石炭ガス化複合発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82798(P2013−82798A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223131(P2011−223131)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)