説明

石綿廃棄物のセメント固型化方法

【課題】石綿廃棄物を固型化する際のコストを低減させることができ、且つ、崩れ難い性状の固化体を作製することができる石綿廃棄物のセメント固型化方法を提供することを目的としている。
【解決手段】石綿を含有する石綿廃棄物をセメントで固型化する石綿廃棄物のセメント固型化方法において、石綿廃棄物とセメントと水と添加剤とを、セメント1重量部に対して石綿廃棄物を1〜3重量部、水を1〜2重量部の配合比で練り混ぜる混練工程と、練り上がった混合材料を型枠の中に充填して締め固めて成型する成型工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石綿廃棄物のセメント固型化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石綿(廃石綿も含む。)を含有する廃棄物(以下、石綿廃棄物と記す。)は、ビニール袋で二重に梱包され、所定の処分場で埋め立て処分されている。特に、東京都内の処分場で埋め立て処分する際には、次の要領で埋め立て処分することが義務付けられている。東京都における処分要領としては、(1)石綿廃棄物をセメント等で固型化して飛散し難い性状にする、(2)固型化された廃棄体(以下、固化体と記す。)を人手で持てる質量(概ね10kg/個)にする、(3)固化体の一軸圧縮強度を10kg/cm(1N/mm)以上にする、(4)固化体をビニール袋で二重梱包する、というものである。また、東京都では、固型化する際の配合の参考例として、石綿廃棄物:セメント:水=1:2:3(以下、都配合と記す。)という配合例を紹介している。
【0003】
一方、近年、セメントの質量比を減らして石綿廃棄物を固型化する技術が提案されている。この方法は、高性能減水剤や流動化剤などの添加剤を添加することで、セメントの質量比を減らす技術であり、具体的には、石綿廃棄物:セメント:水=10:8〜12:6〜8という配合比で練り混ぜる方法である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2719629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した都配合で石綿廃棄物を固型化する方法では、固化体に含まれる石綿廃棄物の含有量が少ない(石綿廃棄物の含有率=質量比17%程度)ため、コストが増加するという問題が存在する。詳しく説明すると、石綿廃棄物の固型化におけるコストには、主に「セメント等の材料費」と「固化体の製作費(人件費など)」とがある。固化体に含まれる石綿廃棄物の含有量が少ないと、その分だけ固化体一個当たりのセメント量が増加し、上記した材料費が増加する。また、処分する石綿廃棄物の量が決まっているので、固化体に含まれる石綿廃棄物の含有量が少ないと、その分だけ固化体の数量が増え、上記した材料費および製作費が増加する。したがって、石綿廃棄物の含有量が少ない上記した都配合では、石綿廃棄物を固型化するための材料費および製作費が高くなる。
【0005】
また、セメントの質量比を減らした従来の技術では、練り上がった混合材料が、極めて水分が少なく湿砂状でパサパサな状態になっているため、脆く崩れ易い固化体になるという問題が存在する。仮に、固化体が崩れると、その中に含まれる石綿繊維が飛散する問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、石綿廃棄物を固型化する際のコストを低減させることができ、且つ、崩れ難い性状の固化体を作製することができる石綿廃棄物のセメント固型化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る石綿廃棄物のセメント固型化方法は、石綿を含有する石綿廃棄物をセメントで固型化する石綿廃棄物のセメント固型化方法において、石綿廃棄物とセメントと水と添加剤とを、セメント1重量部に対して石綿廃棄物を1〜3重量部、水を1〜2重量部の配合比で練り混ぜる混練工程と、練り上がった混合材料を型枠に充填して締め固めて成型する成型工程と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、出来上がった固化体における石綿廃棄物の含有率が質量比30%以上となる。また、成型工程の際、混合材料が締め固められるため、密実に固められた固化体が出来上がる。
【0009】
また、本発明に係る石綿廃棄物のセメント固型化方法は、前記混練工程が、セメントと水と添加剤とを混合させてセメントミルクを作製した後、該セメントミルクと石綿廃棄物とを練り混ぜる工程であることが好ましい。
【0010】
これにより、混練工程の際、石綿廃棄物やセメント等が偏り難く均等に混ぜ合わされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る石綿廃棄物のセメント固型化方法によれば、固化体に含まれる石綿廃棄物の含有量を多くすることができるため、その分、固化体を製作するためのセメント等の材料費や製作費を低減させることができ、コストダウンを図ることができる。また、出来上がった固化体は密実に固められているため、固化体が崩れて石綿繊維が飛散する危険性を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る石綿廃棄物のセメント固型化方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。なお、図1は石綿廃棄物の処分工程を表したフローチャート図である。
【0013】
[石綿除去作業]
まず、図1に示すように、既存建物等に設けられた石綿含有建材を除去する作業を行う。石綿含有建材の除去作業は、種々の方法で行うことができ、例えば、石綿含有建材が鉄骨やデッキプレートに吹き付けられている場合には、作業員がヘラを用いて手作業で石綿含有建材を削り落としていく方法がある。
【0014】
[セメント固型化作業]
次に、除去された石綿含有建材(石綿廃棄物)をセメントで固型化する作業を行う。セメント固型化作業は、下記の方法で行う。
【0015】
まず、石綿廃棄物とセメントと水と微量の添加剤とを練り混ぜる混練工程を行う。具体的に説明すると、まず、セメントと水と添加剤とをミキサー等で混合してセメントミルクを作製する。次に、作製されたセメントミルクの中に石綿廃棄物を投入し、さらにミキサー等で練り混ぜていく。これにより、石綿廃棄物とセメントと水と微量の添加剤とが均等に混合されて混合材料が練り上がる。
【0016】
石綿廃棄物とセメントと水の配合は、セメント1重量部に対して石綿廃棄物を1〜2.5重量部、水を1〜1.75重量部の配合比とする。すなわち、石綿廃棄物とセメントと水の重量比は次式で表される。
【0017】
【数1】

【0018】
なお、セメント1重量部に対して石綿廃棄物を1〜2.5重量部、水を1〜1.75重量部の配合比とすることがさらに好ましい。
また、添加剤は、フレッシュコンクリートに使用される添加剤(高性能減水剤や流動化剤等)と、石綿含有建材の除去作業時に使用される粉塵飛散防止剤と、を適量配合したものである。また、この添加剤としては、有害なものが一切含まれていないものを用いる。
【0019】
次に、練り上がった混合材料を有底筒状の型枠に入れた後、締め固めて成型する成型工程を行う。具体的に説明すると、図2(a)に示すように、スコップ等を用いて型枠1の中に混合材料2を充填させる。その後、図2(b)に示すように、型枠1内の混合材料2に対して振動転圧を行い締め固める。例えば、小型のランマーやブレーカーの先端に転圧版が設けられた機械を用いて振動転圧を行う。その後、所定期間養生した後、密実に圧縮されて固められた固化体3を型枠1内から抜き取る。なお、固化体3は、例えば、径が20cmで高さが20cmの略円柱形状に成型されると、その質量が概ね10kg/個程度となる。
【0020】
また、セメント固型化作業では、固化体3の圧縮強度の管理を行う。具体的に説明すると、一般的なモールドに混合材料を充填してテストピースを作製し、このテストピースについてJISの基準に基づいて圧縮強度試験を行う。このとき、テストピース作成時において、固化体作成時の締め固めと同一条件で締め固めするのは困難であるため、比重と圧縮強度との関係を事前に試験により確認しておき、テストピース成型時の比重で圧縮強度を管理する。
以上の工程により、石綿廃棄物のセメント固型化作業が完了となる。
【0021】
[梱包作業]
次に、作製された固化体3を1個づつビニール袋で二重に梱包する作業を行う。このとき、固化体3を入れたビニール袋の口を結んで閉めておく。
【0022】
[埋め立て作業]
次に、梱包された固化体3を搬送車両に載せて処分場まで運搬し、処分場に埋め立てる作業を行う。梱包された固化体3を搬送車両の荷台に積み込む作業、および荷台上の固化体3を降ろして処分場に積む作業は、ビニール袋が破けないように手作業で行う。
以上の作業により、石綿廃棄物の処分が完了する。
【0023】
上記した構成からなる石綿廃棄物のセメント固型化方法によれば、出来上がった固化体3における石綿廃棄物の含有率が質量比30%以上となる。このように、従来の都配合の場合と比べて、固化体3に含まれる石綿廃棄物の含有量を多くすることができるので、その分、固化体3を製作するためのセメント等の材料費や人件費等の製作費を低減させることができる。
【0024】
また、上記した実施の形態の配合では、練り上がった混合材料2がパサパサな湿砂状態になるが、成型工程の際に混合材料2が締め固められるため、密実に固められた固化体3が出来上がる。これによって、固化体3の一軸圧縮強度が1N/mm以上となり、固化体3が崩れて石綿繊維が飛散する危険性を抑制することができる。
また、締め固めて固化体3が成型されるので、石綿廃棄物の含有率が高くなるとともに固化体の容積が減容化される。これによって、より少ない処分エリアで多量の石綿廃棄物を処分することができ、処分場の延命を図ることができる。
【0025】
また、石綿繊維が一箇所にかたまっているとそこ部分が脆く崩れ易くなるが、上記した石綿廃棄物のセメント固型化方法によれば、混練工程の際、セメントと水と添加剤とを混合させてセメントミルクを作製した後、セメントミルクと石綿廃棄物とを練り混ぜているため、石綿廃棄物やセメント等が偏り難く均等に混ぜ合わされる。これによって、脆く崩れ易い部分が無い固化体を作製することができる。
【0026】
以上、本発明に係る石綿廃棄物のセメント固型化方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、混練工程の際、セメントと水と添加剤とを混合させてセメントミルクを予め作製しておき、このセメントミルクと石綿廃棄物とを練り混ぜているが、本発明は、石綿廃棄物、セメント、水および添加剤の投入タイミングを変更することも可能である。例えば、最初に石綿廃棄物とセメントとをミキサーで混ぜ合わせ、略均等に混ざり合わされた後、水及び添加剤を投入して練り混ぜることも可能であり、或いは、石綿廃棄物、セメントおよび水を同時に投入して練り混ぜて、適当なタイミングで添加剤を投入することも可能であり、或いは、全ての材料を同時に投入して練り混ぜることも可能である。
【0027】
また、上記した実施の形態では、型枠内に充填された混合材料に対して振動転圧を行って締め固めているが、本発明は、振動転圧に限定されるものではなく、例えば、型枠内に充填された混合材料の表面に加圧版をセットし、所定時間の間、この加圧版に所定の加重を載荷することで、型枠内の混合材料を圧縮して締め固めてもよい。
【0028】
また、上記した実施の形態では、円柱形状の固化体を作製しているが、本発明は、固化体の形状は適宜変更可能であり、角柱形や正方形の固化体を作製することも可能である。
【0029】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのフローチャート図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための混合材料が充填された型枠の破断斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 型枠
2 混合材料
3 固化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石綿を含有する石綿廃棄物をセメントで固型化する石綿廃棄物のセメント固型化方法において、
石綿廃棄物とセメントと水と添加剤とを、セメント1重量部に対して石綿廃棄物を1〜3重量部、水を1〜2重量部の配合比で練り混ぜる混練工程と、
練り上がった混合材料を型枠の中に充填して締め固めて成型する成型工程と、
を備えることを特徴とする石綿廃棄物のセメント固型化方法。
【請求項2】
請求項1記載の石綿廃棄物のセメント固型化方法において、
前記混練工程は、セメントと水と添加剤とを混合させてセメントミルクを作製した後、該セメントミルクと石綿廃棄物とを練り混ぜる工程であることを特徴とする石綿廃棄物のセメント固型化方法。

【図1】
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【図2】
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