説明

石英ガラス製バーナー

【課題】石英ガラスを火炎加工する際に金属不純物を付着させない石英ガラス製バーナーにおいて、本体にノズルを着脱可能に装着するための新規な構造を提供して、締結時のフィットを良好にすると共にねじ山の欠損を防止する。
【解決手段】耐熱樹脂製の継手14の基端側の雄ねじ部141を石英ガラス製の本体11の先端雌ねじ部117に締結し、石英ガラス製のノズル12の基端側に装着した石英ガラス製のナット15を該継手の先端側の雄ねじ部142に締結することにより、本体の先端にノズルが着脱可能に取り付けられた石英ガラス製バーナー10が得られる。ノズルの基端側にはスリーブ13が挿入されてナットに収容されており、スリーブが継手の先端との間に挟み込まれた状態でナットが締結されることによりノズルが取り付けられる。石英ガラス製の継手カバー16が本体とノズルとの連結部を包囲するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として石英ガラスの火炎加工用に使用される石英ガラス製バーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスを火炎加工してパイプなどの所定形状に成形するために用いられるバーナーにはステンレス、真鍮などの金属製バーナーが多用されてきたが、金属製バーナーを用いると、加熱された先端ノズル部の金属から遊離した金属イオンや金属酸化物などの不純物が被加工物である石英ガラスの表面に付着して石英ガラス製品の純度を低下させてしまう問題があった。特に、半導体用途の石英ガラス火炎加工製品に対する金属汚染低減の要望が近年ますます強くなってきている。
【0003】
この要望に応えるために、下記特許文献1などにおいて純石英ガラス製のバーナーが提案されている。このバーナーは、作業者が手で持って作業することができるいわゆるハンドバーナーとして構成されたものであり、石英ガラス製バーナー本体の先端に石英ガラス製バーナーヘッド(ノズル)をねじ込み式で着脱可能に装着しており、加工の際に金属不純物が被加工物の石英ガラス表面に付着することがないため、石英ガラスを高純度に成形することができる利点を有する。また、ノズルが破損した場合には該ノズルを新しいものと交換すれば良く、高価なバーナー全体を購入する必要がなく、さらには、作業の必要性に応じて口径の異なるノズルを使用することができるなどの利点を発揮する。
【特許文献1】特許第3881985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1による石英ガラス製バーナーは、石英ガラス製バーナー本体先端のねじ加工部と石英ガラス製ノズル基端のねじ加工部とを締結させることでノズルを本体に装着しており、ねじを締結したときに脆性素材である石英ガラス同士が擦れ合ってねじ山が欠損しやすいという問題を有する。わずかな欠損が生じても、石英ガラスの破片を噛んだ状態でねじを強く締め付けるとねじ山の大きな欠損を招き、長期使用に耐えることができない。また、ねじ山の欠損は逆火やガス漏れを招く怖れがある。ねじ山は精密な機械加工を必要とするため、一旦ねじ山が欠損してしまうと、再製作には多大な時間とコストを要する。
【0005】
また、石英ガラスはほとんど塑性変形しない素材であるため、石英ガラス同士でねじ締結しても十分にフィットせずに緩みやすいという問題を有する。このことは、ノズルを本体に装着する際にねじを強く締め付ける傾向を助長し、上述のねじ山の欠損を招く可能性を増大させる。
【0006】
したがって、本発明の課題は、石英ガラスを火炎加工する際に不純物を付着させない石英ガラス製バーナーにおいて、脱着可能なノズルを本体に装着するための新規な構造を提供して上記従来技術の不利欠点を解消させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、先端側にねじ加工部を有する石英ガラス製の本体と、石英ガラス製のノズルと、基端側および先端側にそれぞれねじ加工部を有する耐熱樹脂製の継手と、ノズルの基端側に装着される石英ガラス製のナットとからなり、継手の基端側のねじ加工部は本体の先端側のねじ加工部に着脱可能に締結され、継手の先端側のねじ加工部はナットに着脱可能に締結されることにより、本体の先端にノズルが着脱可能に取り付けられることを特徴とする石英ガラス製バーナーである。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の石英ガラス製バーナーにおいて、ノズルの基端側にスリーブが挿入されてナットに収容されており、スリーブが継手の先端との間に挟み込まれた状態でナットが締結されることによりノズルが取り付けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1記載の石英ガラス製バーナーにおいて、ノズルの基端側にナットが一体形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の石英ガラス製バーナーにおいて、本体とノズルとの連結部を包囲する石英ガラス製の継手カバーが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の石英ガラス製バーナーは、先端側にねじ加工部を有する石英ガラス製の本体と、石英ガラス製のノズルと、基端側および先端側にそれぞれねじ加工部を有する耐熱樹脂製の継手と、ノズルの基端側に装着される石英ガラス製のナットとからなり、継手の基端側のねじ加工部は本体の先端側のねじ加工部に着脱可能に締結され、継手の先端側のねじ加工部はナットに着脱可能に締結されることにより、本体の先端にノズルが着脱可能に取り付けられるものとされている。この石英ガラス製バーナーによれば、火炎加工の際に金属不純物が被加工物の石英ガラス表面に付着することがないため、石英ガラスを高純度に成形することができる利点を有する。また、ノズルが破損した場合には該ノズルを新しいものと交換すれば良く、高価なバーナー全体を購入する必要がなく、さらには、作業の必要性に応じて口径の異なるノズルを使用することができるなどの利点を発揮する。
【0012】
さらに、本発明によれば、石英ガラス製の本体に石英ガラス製のノズルを着脱可能に取り付けるための構造において、石英ガラス同士でねじ締結することに代えて、耐熱樹脂製の継手を介して本体にノズルを装着することとしているのため、樹脂の塑性変形を通じて締結時のフィットが向上し、ねじ山の欠損を防止することができる効果が発揮される。
【0013】
また、本体とノズルの連結部を包囲する石英ガラス製の継手カバーを設けることにより、火炎加工の際に被加工物に当たって跳ね返った火炎から樹脂製継手を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および図2を参照して、本発明の一実施例による石英ガラス製バーナー10は、石英ガラス製の本体11と、石英ガラス製のノズル12と、ポリプロピレン(PP)などの樹脂からなるスリーブ13と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの耐熱樹脂からなる継手14と、石英ガラス製のナット15と、石英ガラス製の継手カバー16とから構成されている。
【0015】
本体11は、水素導入管111の内部に酸素導入管112が同心状に設けられた二重管構造を有しているが、その基端部では各々独立した管として分岐しており、水素導入口111aおよび酸素導入口112aを備えている。水素導入口111aおよび酸素導入口112aはそれぞれ水素供給源および酸素供給源(いずれも図示せず)に接続されている。酸素供給源から酸素導入口112aを介して酸素導入管112に導入された酸素は、水素供給源から水素導入口111aを介して水素導入管111に導入された水素と、本体11の先端部116で混合されて、混合燃料とされる。
【0016】
符号113は本体11の基端側で分岐している水素導入管111と酸素導入管112とを連結する振れ止めである。また、符号114は本体11の主部において二重管として設けられている水素導入管111と酸素導入管112とを連結して同心状の配置関係を維持するための振れ止めであり、この実施例では120度間隔で3箇所設けられている。
【0017】
また、本体11の主部においては水素導入管111を包囲するように外管115が設けられており、万一作業中に水素導入管111が割れた場合であっても外管115で作業者を保護する役割を果たす。作業者が握りやすいように、外管115の表面をサンドブラスト仕上げしても良い。
【0018】
本体11の先端部116の内径にはねじ加工が施されていて雌ねじ部117を有する。雌ねじ部117には継手13の一端側の雄ねじ部131が締結される。
【0019】
ノズル12は、本体11の先端部で混合された酸素と水素の混合燃料が燃焼して得られる火炎を被加工物に向けて噴射させるための火先口121を有する。火先口121は所要の火炎加工を行うための所定の口径を有する。異なる口径の火先口121を有するノズル12を複数用意しておき、必要に応じて交換して使用することができる。
【0020】
スリーブ13はノズル12の基端部122側に装着されるもので、その内径はノズル12の基端部122の外径に略等しく、その外形状はナット15の内側に密着するように形成されている。ナット15はノズル12の基端部122に装着され、その本体11側に向けた開口部には雌ねじ部151が形成されている。ナット15の外径は本体先端部116の外径より若干大きい。
【0021】
継手14は両端に雄ねじ部141,142を有しており、基端側の雄ねじ部141は前述のように本体11先端側の雌ねじ部117に締結され、先端側の雄ねじ部142はノズル12の基端部に装着されたナット15の雌ねじ部151に締結される。継手14の中央部143は本体11の先端部116と略同一の外径を有しており、雄ねじ部141と雌ねじ部117との螺合を介して本体11と一体化されたときに、これらが略同一面になるようにされている。また、継手14の先端側の内径は基端側の内径よりも若干大きくてノズル12の基端部の外径と略同一とされており、段差144を有している。
【0022】
継手カバー16は、本体11とノズル12との結合部を被覆するための筒状部材であり、本体先端部116および継手中央部143の外径と略同一の内径を有するが、ノズル12側の先端部はナット15の外径と略同一の内径を有しており、したがってこれらの間に段差161が形成されている。そして、継手14の雄ねじ部141が本体11先端側の雌ねじ部117に締結されると共にその雄ねじ部142がノズル12基端部に装着されたナット15に締結されることによってノズル12が本体11先端に装着されたときに、継手カバー16は、その先端側においては段差161にナット15が嵌合されると共に、基端側においては本体11先端の外周面に形成された段差118に係合されることにより、軸方向移動が規制されて定位置に不動に保持される。
【0023】
この石英ガラス製バーナー10を組み付けるには、本体11の先端の雌ねじ部117に継手14の基端側の雄ねじ部141を締結することにより本体11に継手14を装着した後に、継手14の上に継手カバー16を被せ、ノズル12の基端側からナット15とスリーブ13を通しておいてからノズル12の基端部を継手14の先端側に段差144に突き当たるまで差し込み、この状態でナット15を継手14の先端側の雌ねじ部142に締結させる。これによりノズル12が本体11に一体的に取り付けられて、石英ガラス製バーナー10が得られる。
【0024】
破損したノズル12を新しいノズルに交換し、あるいは口径の異なるノズルに交換する場合は、ナット15を緩めて継手14から取り外すことによりノズル12を本体11から離脱させ、ナット15とスリーブ13を外して新たに取り付けるべきノズル12に付け替えた後に、上記と同様にしてナット15を締め付けることにより該ノズル12を本体11に装着させる。このようにしてノズル12は本体11に対して着脱可能である。
【0025】
この石英ガラス製バーナー10は、本体11にノズル12を着脱可能に装着するための連結構造において樹脂製の継手13を用い、継手13の雄ねじ部131を本体11の先端側の雌ねじ部117に締結すると共に、継手13の雄ねじ部142をノズル12に装着したナット15の雌ねじ部151に締結している。すなわち、いずれにおいても石英と樹脂とでねじ締結する連結構造を採用しているため、樹脂の塑性変形を通じて高いフィット性を有する連結が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例による石英ガラス製バーナーの全体断面図である。
【図2】この石英ガラス製バーナーの本体とノズルの連結構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 石英ガラス製バーナー
11 本体
111 水素導入管
112 酸素導入管
113,114 振れ止め
115 外管
116 先端部
117 雌ねじ部
118 段差
12 ノズル
121 火先口
122 基端部
13 スリーブ
14 継手
141 基端側の雄ねじ部
142 先端側の雄ねじ部
143 中央部
144 段差
15 ナット
16 継手カバー
161 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側にねじ加工部を有する石英ガラス製の本体と、石英ガラス製のノズルと、基端側および先端側にそれぞれねじ加工部を有する耐熱樹脂製の継手と、ノズルの基端側に装着される石英ガラス製のナットとからなり、継手の基端側のねじ加工部は本体の先端側のねじ加工部に着脱可能に締結され、継手の先端側のねじ加工部はナットに着脱可能に締結されることにより、本体の先端にノズルが着脱可能に取り付けられることを特徴とする石英ガラス製バーナー。
【請求項2】
ノズルの基端側にスリーブが挿入されてナットに収容されており、スリーブが継手の先端との間に挟み込まれた状態でナットが締結されることによりノズルが取り付けられることを特徴とする請求項1記載の石英ガラス製バーナー。
【請求項3】
ノズルの基端側にナットが一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の石英ガラス製バーナー。
【請求項4】
本体とノズルとの連結部を包囲する継手カバーが設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の石英ガラス製バーナー。

【図1】
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【図2】
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