説明

砂濾過装置

【課題】現場にて組み立て可能であり、かつ砂層のメンテナンスを容易に行うことができ、さらに砂層から取り除いた濁質の容易な回収を可能にする。
【解決手段】自己保形性と透水性を有する集水材12が、開口部11aを有した容器11内の下部に配置される。被処理水濾過のための砂層13は、集水材12を覆うように容器11内に砂が充填されて形成される。濁質回収部15は、容器11内で上下に延びる空間21を形成し、空気吹出手段14から砂層13内に吹き出された空気で砂層13から剥離して水層19に浮遊した濁質24を水とともに空間21内に回収する。濁質回収部15は、下方側部分が砂層13に埋設され、水が空間21内に流入可能なように上方側部分が砂層13から突出し、容器11の下部の開閉自在な排出口22と空間21とが連通し、空間21内に回収される濁質24を排出口22を介して水とともに外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂層を通過させることで被処理水の濾過を行う砂濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや杭孔の掘削工事や河川や湖沼の泥土の浚渫工事等の現場では土砂等を多量に含む廃水が発生するが、従来では、このような廃水はタンクローリー等で処理場まで運搬していることが多い。しかし、発生した廃水をそのまま運搬すると、廃水の量が多いためにその運搬に多大な費用と手間がかかる。そのため、運搬前に廃水を工事現場で濾過して廃水の量を減らしておくことが好ましく、工事現場等において使用できる比較的小型の濾過装置が望まれている。一般的な濾過装置として、例えば、特許文献1に記載の濾過装置は、密閉状のタンクとこのタンク内に充填された砂層とを有し、タンクの上方から導入された被処理水を砂層で濾過して、濾過された水をタンクの下方から排出するように構成されている。また、濾過処理を行っていると濾材に濁質が付着し、濾過効率が低下してくる。この対策として、例えば特許文献2のように、濾材が汚れてきた場合に濾材からの濁質の剥離を確実に行えるよう、濾材の循環洗浄経路内に超音波発信器を設けて構成された濾過装置もある。
【0003】
【特許文献1】特開平5−154309号公報
【特許文献2】特開2002−361009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1に記載の濾過装置では、密閉状のタンク内に砂層等が配設された構成となっているため、この濾過装置を現場で使用するには、事前に組み立てられた比較的大型の濾過装置を運搬する必要が生じ、運搬作業に困難を伴う場合もある。また、被処理水を濾過していくと、砂層の表面にヘドロ等の堆積物が堆積して、砂層の濾過機能が低下するが、砂層は密閉状のタンク内に充填されているため、タンク内部の砂層等を取り替えることが困難であり、濾過機能を完全に回復させることは難しい。また、特許文献2の濾過装置は、濾材からの濁質の剥離が確実に行えるものの、装置自体の構造が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、現場にて組み立て可能であり、かつ砂層のメンテナンスを容易に行うことができ、さらに砂層から取り除いた濁質の回収を容易に行うことが可能な砂濾過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明に係る砂濾過装置は、砂層を通過させることで被処理水の濾過を行う砂濾過装置に関する。
そして、本発明に係る砂濾過装置は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の砂濾過装置は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る砂濾過装置における第1の特徴は、開口部を有した容器と、前記容器内の下部に配置されて、自己保形性を有するとともに透水性を有する筒状体として形成される集水材と、前記集水材を覆うように前記容器内に砂が充填されることで形成され、前記開口部から供給された被処理水を濾過する砂層と、前記砂層内において空気を吹き出す空気吹出手段と、前記容器内に配置されるとともに上下方向に延びる空間を形成し、前記空気吹出手段から吹き出された空気によって前記砂層から剥離して当該砂層の上方に溜められた水の中に浮遊した濁質を前記水とともに前記空間内に回収する濁質回収部と、を備え、前記濁質回収部は、下方側部分が前記砂層に埋設されるように配置されるとともに、当該砂層の上方に溜められた水が前記空間内に流入可能なように上方側部分が当該砂層から突出するように配置され、且つ、前記容器の下部に設けられて開閉自在な排出口と前記空間とが連通し、前記空間内に回収される濁質を前記排出口を介して前記水とともに外部に排出することである。
【0008】
この構成によると、容器の開口部から供給された被処理水は、砂層を下方に通過することで濾過されて集水材を通じて外部に排出される。また、砂層内にて空気吹出手段から吹き出された空気によって砂層から剥離した濁質は、洗浄用の水や被処理水などの水の中に浮遊し、その一部は濁質回収部の空間内に沈殿する。そして、水層中に浮遊している濁質は、水層とともに濁質回収部の空間内に回収されて排出口から外部に排出される。なお、濁質回収部の空間内に沈殿していた濁質もこのときともに排出口から外部に排出される。
この砂濾過装置によると、砂層で濾過された処理水は容器下部で砂層に埋設された集水材から排出されるので、砂層中の任意の位置で空気を吹き出して砂層の上方に被処理水が溜められている状態で濁質を吹き上げても、処理水に濁質が混ざることはない。このため、空気吹出手段からの空気吹き出し条件(空気吹出口の配置や空気吹き出し量などの条件)を自由に設定して効率よく砂層から濁質を剥離させることができる。また、排出口から濁質を水層とともに排出することで、水中に浮遊させた濁質を容易に回収することができる。したがって、砂層の洗浄を効率よく行うことができるとともに、濁質を容易に且つ効率よく回収することができる砂濾過装置を得ることができる。また、砂層を短期間で交換する必要がなく、長期に亘って繰り返し使用することができる。また、この砂濾過装置は、容器内に集水材、砂層、空気吹出手段及び濁質回収部を設けるという簡易な構造で実現でき、現場にて容易に組み立てることができる。
よって、本発明の砂濾過装置によると、現場にて組み立て可能であり、かつ砂層のメンテナンスを容易に行うことができ、さらに砂層から取り除いた濁質の回収を容易に行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る砂濾過装置における第2の特徴は、前記筒状体は、前記濁質回収部の上方側部分は、前記容器にて水平方向における中央に配置されていることである。
【0010】
この構成によると、濁質を被処理水等の水とともに回収する濁質回収部の上方側部分が容器にて水平方向における中央に配置されているため、濁質が沈殿せずに浮遊した状態のままの水が、水平方向における全体から濁質回収部の上方側部分に流れ込み易くなる。このため、さらに濁質の回収効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る砂濾過装置における第3の特徴は、前記排出口には、透水性を有する袋体の口部が取り付け可能であることである。
【0012】
この構成によると、排出口から一緒に排出された濁質と水をさらに透水性を有する袋体に回収することができ、この袋体によってさらに排出された水を濾過することで2段階に効率よく濁質の回収を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る砂濾過装置における第4の特徴は、前記筒状体は、少なくとも緯糸の一部に曲げ反発性を有する糸が使用されて自己保形性を有する筒状織布で形成されていることである。
【0014】
この構成によると、集水材は、自己保形性を有する筒状織布として形成されており透水性を有するため、集水材に透水性を持たせるためにわざわざ複数の孔を形成する必要がない。そして、複数の孔を有する剛性樹脂や金属製の集水材と比較して軽量であり、運搬時や組み立て時の取り扱いが容易である。また、容器内で曲げた状態で配置することも可能である。さらに、従来の砂濾過装置では一般的に設けられている礫層等、通水性の高い層が不要となり、現場における分解、組み立てがさらに容易になる。さらに、集水材の織り組織を適宜調整することにより、被処理水の種類等に応じて集水材の透水性を変更することが可能である。
【0015】
また、本発明に係る砂濾過装置における第5の特徴は、前記濁質回収部は、透水性を有する部材で形成されていることである。
【0016】
この構成によると、被処理水が濁質回収部の空間内からこの濁質回収部を形成している透水性の部材を通過して砂層に向かって流れ込むことができるため、濁質回収部の空間内に流入した被処理水についても濾過処理を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る砂濾過装置における第6の特徴は、前記砂層内において水を吹き出す水吹出手段を更に備えていることである。
【0018】
この構成によると、水吹出手段によって吹き出された水によって砂同士がさらに攪拌されてばらばらになるため、空気のみを吹き出す場合よりも濁質が砂から剥がれやすくなり、短時間で洗浄を終了させることができる。
【0019】
また、本発明に係る砂濾過装置における第7の特徴は、前記水吹出手段から前記砂層に吹き出される水が被処理水であることである。
【0020】
この構成によると、水吹出手段から砂層に吹き出させる水として被処理水を用いることもでき、さらに効率よく濾過を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る砂濾過装置は、砂層を通過させることで被処理水の濾過を行うものとして広く用いることができるものである。例えば、トンネルや杭孔の掘削工事や河川や湖沼の泥土の浚渫工事等で発生する廃水を濾過する場合に、本実施形態に係る砂濾過装置を使用することができる。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る砂濾過装置1を示す斜視図である。また、図2は図1のA−A線矢視断面図であり、図3は砂濾過装置1の平面図である。図1乃至図3に示すように、砂濾過装置1は、容器11、集水材12、砂層13、エア吹込用ホース14、濁質回収部15などを備えて構成されている。なお、図1および図3では、容器11および砂層13の透視図として示しており、またエア吹込用ホース14の図示を省略している。
【0023】
容器11は、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)やステンレス鋼等の、高強度で耐久性の高い材料からなるものや、樹脂シート製の簡易水槽等、上方に開口した開口部11aを有する箱形に形成されている。この容器11は、現場にて、鉛直上方に開口するように水平に載置されて使用されることになる。
【0024】
集水材12は、容器11内の下部に配置されて、自己保形性を有するとともに透水性を有する筒状体として形成されている。この集水材12は、容器11内では、例えば、容器11の内壁に沿うように鉛直方向に向かってスパイラル状に組み立てられて配置される。
【0025】
集水材12は、図4に示すような、経糸17と緯糸18とを用いて環状に織成された筒状織布16からなり、透水性を有する。ここで、少なくとも緯糸17の一部に曲げ反発性を有する糸が使用されており、集水材12を構成する筒状織布16は上述のように自己保形性を有する。そして、集水材12の織り組織を適宜調整することにより、廃水の種類等に応じて集水材12の透水性を変更することが可能である。このような集水材12の一例を挙げると、太さ6600dtexのポリエステル繊維からなる経糸17と、太さφ1.6mmのSUS製ワイヤーからなり、密度40P/10cmの緯糸18とで環状に織成された、口径51mmの筒状織布16からなるものを使用できる。そして、集水材12の一端は閉じられた状態になっており、集水材12の他端は、図1および図3に示すように、容器11の外部へと通じるパイプ26へと接続されている。
【0026】
砂層13は、図1および図2によく示すように、集水材12を覆うように容器11内に砂が充填されて形成されている。そして、容器11の開口部11aから供給された被処理水を濾過するようになっている。図1および図2では、容器11内において砂層13の上方に被処理水が溜められてなる水層19が形成されている状態を図示している。なお、本実施形態の砂濾過装置11は、砂層13により廃水に含まれる砂等の浮遊物質を除去するものであり、廃水中に溶け込んでいる有害物質を砂層13で直接除去することを目的とするものではない。そのため、砂層13は特定の種類のものに限定されない。また、水層19として溜められる水は、被処理水に限定されず、砂層13の洗浄用に供給された清水等が含まれていてもよい。
【0027】
エア吹込用ホース14は、口径10mmの硬質樹脂製チューブとして形成されており、図示しない圧縮空気供給源と接続されており、供給された圧縮空気を砂層13内に配置された空気吹出口から吹き出すようになっている。すなわち、エア吹込用ホース14は、砂層13内において空気を吹き出す空気吹出手段を構成している。
【0028】
濁質回収部15は、容器11内に配置されるとともに上下方向(鉛直方向)に延びる空間21(図2参照)を形成しており、筒状に形成された仕切り材20によって区画された領域(仕切り材20、空間21)として設けられている。この濁質回収部15は、後述するように、エア吹込用ホース14から吹き出された空気によって砂層13から剥離して砂層13の上方に溜められた水の中(水層19中)に浮遊した濁質(シルト、泥土等)を水とともに空間21内に回収するようになっている。
【0029】
濁質回収部15を形成する仕切り材20は、透水性を有する部材であるメッシュ状シートおよびエキスパンドメタルを角筒状に重ねたものとして構成されている。例えば、メッシュ状シートは縦2.5mm×横2.5mmの目開きをもつシートとして形成されて外側に配置されており、エキスパンドメタルは36mm×101.6mmの対角線長さのひし形状の目開きをもつ網として形成されて内側に配置されている。なお、仕切り材20は、角筒状に限らず、円筒状など種々の形態の筒状に形成することができる。
【0030】
また、濁質回収部15は、図2によく示すように、下方側部分が砂層13に埋設されるように配置されるとともに、砂層13の上方に溜められた水が空間21内に流入可能なように上方側部分が砂層13から突出するように配置されている。そして、容器11の下部に設けられてバルブ23によって開閉自在な排出口22と空間21とが連通されるように配設されている。この排出口22を介して空間21内に回収される濁質を水とともに外部に排出することができるようになっている。なお、濁質回収部15の上方側部分は、容器11にて水平方向における中央に配置されている(図1乃至図3参照)。
【0031】
次に、上述した構成を備える砂濾過装置1の作動について説明する。まず、砂濾過装置1による濾過作業(濾過動作)を説明する。砂濾過装置1では、容器11の開口部11aから被処理水が供給されると、被処理水は砂層13の上方に溜められて水層19が形成されることになる(図2参照)。このとき、空間21にも被処理水が充満することになる。容器11内に投入された被処理水は、重力によって砂層13中に浸透していく。このとき、被処理水が砂層13中を通過しながら被処理水の濾過が行われることになる。砂層13にて濾過された水は、集水材12へと流れ込み、図1及び図3に示すパイプ26を通じて容器11の外部へと(図1にて矢印で示すように)排出されることになる。なお、砂層13によって被処理水の濾過が行われている間も、例えば単位時間あたりに一定量の被処理水が投入されて連続的に濾過動作が行われることになる。
【0032】
次に、砂濾過装置1における砂層13の洗浄作業(洗浄動作)を説明する。洗浄動作は、例えば、濾過された水の排出を止め、被処理水の濾過動作を一旦中断させた後に行われる。なお、濾過動作終了後、容器11内に清水を溜め、洗浄動作を行うことも可能である。
【0033】
図5乃至図8は、洗浄動作を説明する図であって、図1のA−A線矢視断面に対応した図である。まず、濾過動作中の所定のタイミング(例えば、排水量が低下してきた時)に、パイプ26からの排水を止めて一旦濾過動作を中断し、エア吹込用ホース14から洗浄用の圧縮空気を砂層13内に吹き込んで砂層13を攪拌する。図5に示すように、エア吹込用ホース14から吹き出された空気は、図中矢印(a)で示すように砂層13を攪拌しつつ砂層13の表面を通過して水層19中へと吹き上げられることになる。このとき、砂層13の表面に積層するように付着しているシルト・泥土等の濁質24や砂層13内部の濁質24がエア吹込用ホース14から吹き出された空気によって砂層13から剥離して水層19中に浮遊することになる。なお、図5に示す例では、エア吹込用ホース14の空気吹出口が砂層13の下方に配置されている場合を例示しているが、必ずしもこの通りでなくてもよく、砂層13の任意の位置にエア吹込用ホース14の空気吹出口を配置することができる。
【0034】
図6は、エア吹込用ホース14からの空気の吹き出しが十分に行われた状態を示している。この状態では、エア吹込用ホース14によって吹き出された空気によって砂層13表面、その内部や仕切り材20から剥離した濁質24が水層19中を多く浮遊した状態になっている。そして、その状態で暫く放置すると、水層19中を浮遊した濁質24の一部は、図7に示すように、濁質回収部15の空間21内に沈降して沈殿泥土25を形成することになる。なお、濁質24を水層19に浮遊させたときに、エア等によって水層19の水平方向中央に向かう流れを作ることにより、空間21内に沈降する濁質24の量を増やすようにすることも可能である。
【0035】
この後、パイプ26からの排水を再開し、濾過動作を継続する。この濾過動作と洗浄動作とを数回繰り返し行った後、排出口22を閉じた状態になっているバルブ24を開くことで、図8に示すように、砂層13から剥離して水層19中に浮遊している濁質24や空間21内に沈殿していた泥土が、水とともに容器11の外部に排出されることになる。すなわち、バルブ24が開かれると、水層19中の濁質24は水とともに図中矢印(b)で示すように濁質回収部15内を経て図中矢印(c)で示すように外部へ排出される。
【0036】
上述した砂濾過装置1について、集水材12から排出される処理水の排水量約100リットル/minを維持する条件で濾過動作を行うとともに、この濾過動作と洗浄動作とを5回繰り返す実験を行った。なお、各洗浄動作においては、エア吹込用ホース14から供給元圧力が0.7MPaの圧縮空気を約30分間吹き出して砂層13の洗浄を行った。その結果、濾過動作および洗浄動作を5回繰り返して行った後でも、濾過前において濁度約1000ppmの被処理水を濾過後において濁度約200ppm以下にすることができており、目標としていた水準を達成でき、この洗浄動作によって濾過性能を十分に維持できることが確認できた。なお、濾過後の処理水の濁度については、目標とする水準(濾過後の濁度の目標値)に応じて砂層13の厚さを適宜変更することで、容易に調整することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の砂濾過装置1によると、容器11の開口部11aから供給された被処理水は、砂層13を下方に通過することで濾過されて集水材12を通じて外部に排出される。また、砂層13内にてエア吹込用ホース14から吹き出された空気によって砂層13から剥離した濁質24は、洗浄用の水や被処理水などの水の中に浮遊し、その一部は濁質回収部15の空間21内に沈殿する。そして、水層19中に浮遊している濁質24は、水層19とともに濁質回収部15の空間21内に回収されて排出口22から外部に排出される。なお、濁質回収部15の空間21内に沈殿していた濁質24もこのときともに排出口22から外部に排出される。
【0038】
この砂濾過装置1によると、砂層13で濾過された処理水は容器11の下部で砂層13に埋設された集水材12から排出されるので、砂層13中の任意の位置で空気を吹き出して砂層13の上方に被処理水が溜められている状態で濁質24を吹き上げても、処理水に濁質24が混ざることはない。このため、エア吹込用ホース14からの空気吹き出し条件(空気吹出口の配置や空気吹き出し量などの条件)を自由に設定して効率よく砂層から濁質を剥離させることができる。また、排出口22から濁質24を水層19とともに排出することで、水中に浮遊させた濁質24を容易に回収することができる。したがって、砂層13の洗浄を効率よく行うことができるとともに、濁質24を容易に且つ効率よく回収することができる砂濾過装置を得ることができる。また、砂層13を短期間で交換する必要がなく、長期に亘って繰り返し使用することができる。また、この砂濾過装置1は、容器11内に、集水材12、砂層13、エア吹込用ホース14、及び仕切り材20で形成された濁質回収部15を設けるという簡易な構造で実現でき、現場にて容易に組み立てることができる。
【0039】
よって、この砂濾過装置1によると、現場にて組み立て可能であり、かつ砂層のメンテナンスを容易に行うことができ、さらに砂層から取り除いた濁質の回収を容易に行うことができる。
【0040】
また、砂濾過装置1によると、濁質24を被処理水等の水とともに回収する濁質回収部15の上方側部分が容器11にて水平方向における中央に配置されているため、濁質24が沈殿せずに浮遊した状態のままの水が、水平方向における全体から濁質回収部15の上方側部分に流れ込み易くなる。このため、さらに濁質24の回収効率を向上させることができる。
【0041】
また、砂濾過装置1によると、集水材12は、自己保形性を有する筒状織布16として形成されており透水性を有するため、集水材12に透水性を持たせるためにわざわざ複数の孔を形成する必要がない。そして、複数の孔を有する剛性樹脂や金属製の集水材と比較して軽量であり、運搬時や組み立て時の取り扱いが容易である。また、容器11内で曲げた状態で配置することも可能である。さらに、従来の砂濾過装置では一般的に設けられている礫層等、通水性の高い層が不要となり、現場における分解、組み立てがさらに容易になる。さらに、集水材12の織り組織を適宜調整することにより、被処理水の種類等に応じて集水材12の透水性を変更することが可能である。
【0042】
また、砂濾過装置1によると、被処理水が濁質回収部15の空間21内からこの濁質回収部15を形成している透水性の部材(メッシュ状シートとエキスパンドメタルとを重ねた筒状にしたもの)を通過して砂層13に向かって流れ込むことができるため、濁質回収部15の空間21内に流入した被処理水についても濾過処理を行うことができる。
【0043】
次に、上述した実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0044】
(1)排出口22に透水性を有する袋体の口部が取り付け可能であってもよい。図9は、変形例に係る砂濾過装置2を示す断面図である。この砂濾過装置2は、透水性を有しておりかつ赤土やシルト等の細かな濁質を内部に閉じ込めることができるような織り目の細かい繊維製の袋体27の口部27aを排出口22に取り付けた状態を示したものである。なお、砂濾過装置2では、容器11の下部に支持柱29が設けられており、袋体27が配置されるスペースが確保されるようになっている。この砂濾過装置2によると、排出口22に透水性を有する繊維製の袋体27を取り付けておくことで、排出口22から一緒に排出された濁質と水とをさらにその袋体27に回収することができ、濁質と水とを容易に分離して濁質のみを袋体27内に回収することができる。すなわち、図9に示すように、濁質を水と分離して泥土28として袋体27に回収することができる。したがって、砂濾過装置2によると、袋体27によってさらに排出された水を濾過することで2段階に効率よく濁質の回収を行うことができる。
【0045】
(2)砂層13内において水を吹き出す水吹出手段をさらに備えているものであってもよい。この水吹出手段としては砂層13の内部に水を注入するためのホースを用いることができ、このホースを砂層13中に差し込んで水を砂層13に吹き込みながらエア吹込用ホース14でも同時に空気を吹き込んで砂層13の洗浄を行うことができる。このように、水吹出手段も備える砂濾過装置によると、水吹出手段によって吹き出された水によって砂同士が攪拌されてばらばらになるため、空気のみを吹き出す場合よりも濁質が砂から剥がれやすくなり、短時間で洗浄を終了させることができる。
【0046】
また、上記の水吹出手段から砂層13に吹き出される水としては洗浄用の清水に限らず、被処理水を用いることもできる。被処理水を砂層13に吹き込む場合は、容器11にポンプと循環用ホースとを設けておいて、被処理水を循環させながら吹き込むようにすることができる。このように、水吹出手段から砂層に吹き出させる水として被処理水を用いることもでき、さらに効率よく濾過を行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態や変更形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る砂濾過装置の斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1に示す砂濾過装置の平面図である。
【図4】図1に示す集水材を構成する筒状織布の一部切欠斜視図である。
【図5】図2に示す砂濾過装置による洗浄動作を説明する断面図である。
【図6】図2に示す砂濾過装置による洗浄動作を説明する断面図である。
【図7】図2に示す砂濾過装置による洗浄動作を説明する断面図である。
【図8】図2に示す砂濾過装置による洗浄動作を説明する断面図である。
【図9】変更形態の砂濾過装置の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 砂濾過装置
11 容器
11a 開口部
12 集水材
13 砂層
14 エア吹込用ホース(空気吹出手段)
15 濁質回収部
21 空間
22 排出口
24 濁質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂層を通過させることで被処理水の濾過を行う砂濾過装置であって、
開口部を有した容器と、
前記容器内の下部に配置されて、自己保形性を有するとともに透水性を有する筒状体として形成される集水材と、
前記集水材を覆うように前記容器内に砂が充填されることで形成され、前記開口部から供給された被処理水を濾過する砂層と、
前記砂層内において空気を吹き出す空気吹出手段と、
前記容器内に配置されるとともに上下方向に延びる空間を形成し、前記空気吹出手段から吹き出された空気によって前記砂層から剥離して当該砂層の上方に溜められた水の中に浮遊した濁質を前記水とともに前記空間内に回収する濁質回収部と、
を備え、
前記濁質回収部は、
下方側部分が前記砂層に埋設されるように配置されるとともに、当該砂層の上方に溜められた水が前記空間内に流入可能なように上方側部分が当該砂層から突出するように配置され、且つ、前記容器の下部に設けられて開閉自在な排出口と前記空間とが連通し、
前記空間内に回収される濁質を前記排出口を介して前記水とともに外部に排出することを特徴とする砂濾過装置。
【請求項2】
前記濁質回収部の上方側部分は、前記容器にて水平方向における中央に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の砂濾過装置。
【請求項3】
前記排出口には、透水性を有する袋体の口部が取り付け可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の砂濾過装置。
【請求項4】
前記筒状体は、少なくとも緯糸の一部に曲げ反発性を有する糸が使用されて自己保形性を有する筒状織布で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の砂濾過装置。
【請求項5】
前記濁質回収部は、透水性を有する部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の砂濾過装置。
【請求項6】
前記砂層内において水を吹き出す水吹出手段を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の砂濾過装置。
【請求項7】
前記水吹出手段から前記砂層に吹き出される水が被処理水であることを特徴とする請求項6に記載の砂濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125517(P2007−125517A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321919(P2005−321919)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】