説明

砂糖きび収穫機

【課題】クロップディバイダー、ベースカッター、引き込み装置等を備えた砂糖きび収穫機について、砂糖きびを引き込み装置へ積極的に送る送り手段をベースカッターに単純な形態で付設され、かつ、その強度と剛性及び耐久性が高いその機構を工夫する。
【解決手段】ベースカッターの外筒の上部に左右(正面からみて左右)一対の横方向支持軸34があり、当該横方向支持軸34によって円弧状の押さえ部材32の両端が回動可能に支持されており、これによって押さえ部材32が一定範囲で上下方向に揺動自在に支持されており、上記押さえ部材32の円弧状部分がバットリフターの上端部に重なり合うようになっており、上記押さえ部材32は上記支持軸34に装着されたねじりバネ35によって下方に押さえられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砂糖きび収穫機(以下これを「ハーベスター」という)において根切りされた砂糖きびの引き込み装置への送りを助勢する送り手段(助勢送り手段)に関するものであり、砂糖きびを確実に引き込み装置へ送り、上記引き込み装置による砂糖きびの引き込みを確実にするものである。
これによって、砂糖きびが引き込み装置の手前で詰まって収穫作業が中断されることが回避され、ハーベスターによる作業能率が大幅に改善される。
【背景技術】
【0002】
〔従来技術1〕
ハーベスターの基本機構にはいろいろなものがある。図1のものがその一例である(特許文献1)。これはクロ−ラー1によって自走するものであり、その最先端に左右一対のクロップディバイダー2があって、互いに内側に回転しながら畝と畝の間の溝に沿って前進し、到伏した砂糖きびを引き起こしてクロップディバイダー2,2の内側に押し戻し、これによってベースカッター3による根切りがスムーズになされるようにし、また、引き込み装置4による引き込みがスムーズになされるようにしているものである。
【0003】
図1に示すハーベスター(従来技術1)には左右のクロップディバイダー2の直ぐ後方に根切り装置がある。そして、当該根切り装置は、互いに内側に回転する左右一対のベースカッター3を備えており、左右のベースカッター3はその下端に回転円盤があり、当該回転円盤の外周に4つの回転刃がある。また、左右のベースカッターの上記回転円盤の駆動軸は伝動装置を介して一つの油圧モーターmで駆動されるようになっており、上記駆動軸はこれに砂糖きびの枯れ葉が巻き付くのを防止するために外筒3bでカバーされている。そして、上記回転円盤の上面には約1/2周の螺旋状バットリフター3aが2つあり、この2つのバットリフターは回転円盤の中心に対して対称に配置されている。
【0004】
ハーベスターの前進によってベースカッター3が前進し、これによって砂糖きびPが後方に送られてベースカッター3に達したところでその回転刃で根切りされる。そして、砂糖きびは根切りされると同時に上記バットリフター3aでその根元を押し上げられながら引き込み装置4へ送られる。そして、引き込み装置4まで送られれば、その引き込みローラー4aに掴まれて強引に引き込まれ後方に引き出される。
【0005】
そして、上下一対の引き込みローラー4aを備えた引き込み装置4の後方に搬送コンベアー5があって砂糖きびPを斜め上方に搬送し、当該搬送コンベアー5の最上部にある細断装置6で細断し、風撰装置7でダストを分離する。そして分離されたダストはブロアー7aで吹き上げられ、ブロアー7bで吸引されてダクトで排出される。他方、選別された砂糖きびの細断片Pa(長さは約270mm)は籠に落下して収納される。
【0006】
〔従来技術2〕
以上が砂糖きびを長いままで上方まで搬送し、上部にある細断装置でチョッピングするタイプの従来技術1であるが、他方、引き込み装置4の直後に細断装置6があって砂糖きびを裁断してどの細断片Paを搬送コンベア5で上方の風撰装置7まで搬送するものもある(従来技術2、図示略)。
【0007】
〔従来技術3〕
また、引き込みローラーが細断刃を備えていて引き込み装置4が細断装置6を兼ねているものもある(従来技術3)。そしてその一例が特開2009−50177号公報(特許文献2)に記載されている。この従来技術3の要部(ベースカッターと、細断装置を兼ねた引き込み装置との構成)は図2に示すようなものである。この例では、ベースカッター3の直後に引き込み装置40があり、当該引き込み装置40の上下の引き込みローラー21a,21bが3枚の回転刃24をそれぞれ備えており、当該回転刃24で砂糖きびPを上下から掴んで引き込みながら切断するものである。砂糖きびPの細断片Paは、ブレード22aを備えた搬送コンベア22によって上方の風撰装置7(図1のものと同じ)まで搬送される。
【0008】
〔従来技術の問題点〕
以上のような従来のハーベスターでは、ベースカッター3で根切りされた砂糖きびPはバットリフター3aで押し上げられ、ハーベスターの前進によって引き込み装置4(又は40)へ送られ、その引き込みローラー4a(又は21a,21b)で掴まれて引き込まれるようになっている。そしてこの送りと引き込みの関係は次のとおりである。
【0009】
すなわち、根切りされた砂糖きびPを引き込み装置4(又は図2においては符号40)まで送るのはハーベスターの前進であるので、砂糖きびPが例えばクロップディバイダー2等に引っかかったりして前方に引っ張られるようになると、引き込み装置40への送りが止まり、ベースカッター3と引き込み装置4(又は40)間で停滞して引き込み装置4(又は40)まで送られないことになる。このような状態になると後続の砂糖きびPが引き込み装置4(又は40)の手前に詰まってしまって作業が続行されなくなる。
そしてまた、引き込み装置の手前に砂糖きびが停滞すると、これが一気に多量に引き込まれて引き込み装置が止まってしまうことにもなる。
【0010】
以上のように砂糖きびが引き込み装置の手前に詰まって引き込まれなくなると、ベースカッター及び引き込みローラーを繰り返し正逆転させることによって引き込みを再開させるのであるが、それでも引き込みが再開されないときは、ハーベスターを停止させて作業を中断し、ベースカッター及び引き込みローラーを逆転させながら詰まった砂糖きびを作業者が前方に引き出して除去しなければならない。このようなことが度々繰り返されるとハーベスターの作業能率が大幅に低下してしまう。
そして、砂糖きびPが複雑に絡み合っているなどの悪条件が重なると確実に頻繁に作業が中断することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術においてベースカッターと引き込み装置の間(又は引き込み装置の手前)に砂糖きびが詰まるのは、バットリフター3で押し上げられた砂糖きびPを引き込み装置へ送る送りが足りないためであるから、砂糖きびの引き込み装置への送りを特別の送り手段で助勢すれば、この問題は大幅に解消されることになり、その結果、引き込み装置に詰まることを予防することができる。
【0012】
他方、引き込み装置への送りを助勢する送り手段(助勢送り手段)は、ベースカッターで砂糖きびが押し上げられたときに同時にこれを把持して送るものでなければならず、また、砂糖きびの抵抗は大きくて衝撃的であるのでこれに耐えるだけの強度と剛性を有することが必要であり、また、耐久性が高いことが必要である。そしてまた、ベースカッターと引き込みローラー間には余分なスペースがほとんどないので助勢送り手段は単純な構造でコンパクトでなければならず、また、ハーベスター全体の重量低減の観点からして、これによる重量増は可及的に抑制されなければならない。
【0013】
また、上記ベースカッターを利用してその設置スペース内において上記助勢送り手段を構成することができれば、設置スペースの問題はなく、機構構造の単純化の問題、重量増の問題、コスト増の問題は大方回避されることが予想される。
【0014】
〔課題〕
そこで、この発明は、左右のクロップディバイダーの後方にベースカッターがあり、ベースカッターの直後に引き込み装置があり、ベースカッターにバットリフターが設けられており、ハーベスターの前進によって砂糖きびが引き込み装置へ送られるようになっている砂糖きび収穫機(ハーベスター)について、次のことを技術的課題とするものである。すなわち、砂糖きびを引き込み装置へ積極的に送る助勢送り手段について、ベースカッターに簡単な形態で付設される機構であって、かつ、その強度と剛性及び耐久性が高い機構を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決のための手段は、(A)クロップディバイダーの後方に左右のベースカッターがあり、当該ベースカッターの後方に引き込み装置があり、さらに細断装置があり、風撰装置があり、また、上記ベースカッターが駆動軸を保護する外筒と回転円盤を備えており、当該回転円盤に螺旋状のバットリフターがあって、砂糖きびが上記バットリフターで押し上げるようになっている砂糖きび収穫機を前提として、次の(イ)〜(ニ)によるものである。
【0016】
(イ)ベースカッターの外筒の上部に左右(正面からみて左右)一対の横方向支持軸があり、当該横方向支持軸によって円弧状の押さえ部材の両端が回動可能に支持されて上下方向に揺動自在になっていること、
(ロ)上記押さえ部材の円弧状部分がバットリフターの上端部に重なり合うようになっていること、
(ハ)上記押さえ部材は上記支持軸に装着されたねじりコイルバネによって下方に押さえられていること、
(ニ)上記バットリフター又は上記押さえ部材のいずれかまたは両方の表面に多数の突起が設けられていること。
【0017】
〔作用〕
上記押さえ部材は上記外筒の横方向支持軸に両端を回動自在に支持されているからベースカッターの一部であり、ねじりコイルバネで下方に押さえられ、バットリフターの上端に押しつけられた状態でバットリフターとともに回転する。そして、バットリフターで押し上げた砂糖きびをベースカッターと押さえ部材で挟持して後方に送る助勢送り手段が構成されている。この助勢送り手段は外側から内側へ向かって回転するので、その前方位置で砂糖きびを挟持し後方位置で砂糖きびを解放するという送り動作を行い、この動作を繰り返して砂糖きびを後方に送る。
砂糖きびはバットリフターによって押し上げられ、引き込み装置まで送られて引き込みローラーに掴まれる。なお、引き込み装置による引き込み速度はハーベスターの前進速度よりも速いので、引き込みローラーに掴まれると急速に引き込み装置の後方に引き出される。
【0018】
〔助勢送り手段の送り作用〕
助勢送り手段による上記の送り作用の詳細は次のとおりである。
すなわち、バットリフターの回転によって砂糖きびの根元が押し上げられ、押さえ部材が外側から内側に向かって回るとき、バットリフターが縦方向の螺旋状部材であるから、砂糖きびがバットリフターの低い位置でバットリフターと押さえ部材との間の空間(バットリフターの下部においては極めて広い)に取り込まれ、バットリフターの回転によって瞬時に上端まで押し上げられて押さえ部材との間に挟み込まれる。そして、砂糖きびはバットリフターとの間に挟み込まれると押さえ部材によって強く押さえ付けられるので、バットリフターと押さえ部材によって強く挟持されることになる。
【0019】
そして、バットリフターとともに押さえ部材が外側から内側に向かって回る間に砂糖きびが後方へ送られ(図7(b)(c))、その後、内側から外側に向かって回る間にさらに後方に送られる(図7(d))。そして、内側から外側に向かって回る間に(図7(c)(d))、砂糖きびはバットリフター及び押さえ部材から外れて離間する。以上のようにして、バットリフターと押さえ部材との回転によって砂糖きびPに対する把持、送り、離間が繰り返され、その度に、バットリフターと押さえ部材による助勢送り手段による送りが繰り返される。そして、この助勢送り手段の送り作用によって砂糖きびが引き込み装置へ積極的に送られる。
【0020】
〔助勢送り手段の剛性、強度〕
また、バットリフターで砂糖きびを押し上げ、これを押さえ部材によって弾力的に押さえ挟持して積極的に後方に送るのであるから、バットリフターと押さえ部材(助勢送り手段)は砂糖きびから強い抵抗(引き込み抵抗)を受ける。そして、この引き込み抵抗による負荷は砂糖きびが倒伏していて絡んでいるほど、また、同時に引き込まれる砂糖きびの量が多いほど大きくて衝撃的である。したがって、この助勢送り手段は衝撃的に繰り返される引き込み抵抗に十分耐えられるだけの剛性と強度がなければならない。
【0021】
また、砂糖きびの太さや長さは品種の違いによりまた生育状況の違いによって様々で、また、倒伏している状態も様々であり、このため収穫作業の状況は様々である。したがって、上記助勢送り手段は上記のような様々な作業状況の違いに関わらず、安定的に強い把持力を発揮できるものでなければならない。
これに対して、ベースカッターの駆動軸やバットリフターはもともと高強度部材であるから、その強度、剛性、耐久性に問題はない。そして、押さえ部材は単純な円弧状金属棒で構成することができるので十分な強度と剛性を容易に確保することができ、また、その両端が横方向支持軸を介して外筒の上部に支持されているので、この支持機構が単純でかつ十分な強度と剛性を容易に確保することができる。したがって、バットリフターと押さえ部材による助勢送り手段の強度と剛性は十分に高くすることができる。
【0022】
〔助勢送り手段の過負荷防止〕
また、押さえ部材はねじりコイルバネに抗して上方に押し上げられ、また、ねじりコイルバネによる砂糖きびに対する把持力(押さえ部材の押さえ力)は安定しているので、送り手段にかかる負荷が過大になることはない(所定以上の負荷がかかると把持された砂糖きびが滑る)ので過負荷は防止される。したがって、上記助勢送り手段が過負荷を受けて破損されることはない。
それゆえ、上記助勢送り手段は、極めて高い強度と剛性を有するとともに高い耐久性を有する。
【0023】
〔押さえ部材の支持構造の過負荷防止〕
さらに、バットリフター又は押さえ部材の表面に多数の突起が設けられているから砂糖きびが滑り難く、したがって、比較的弱い押さえ力で強い引き込み力を確保することができる。また、押さえ部材を押さえる力は支持軸に嵌められたねじりコイルバネによるものであるから、上記押さえ力による軸受けに対する負荷は小さい。
したがって、押さえ部材の支持構造(支持軸及び軸受け)に対する負荷は低減され、過負荷がかかることが回避される。
それゆえ、押さえ部材の支持機構の耐久性が高い。
【0024】
上記助勢送り手段(バットリフターと押さえ部材とによる送り手段)の送り速度はバットリフターの周速度にほぼ等しい。そして、助勢送り手段に把持された砂糖きびが引き込み装置の引き込みローラーに把持されると、その引き込み速度と助勢送り手段の送り速度との差が問題である。しかし、引き込み装置の引き込み速度の方が速くその差は実際には小さく、この速度差は砂糖きびの助勢送り手段に対するスリップで吸収されるので、上記速度差が格別支障になることはない。
【0025】
なお、上記(ニ)の構成は助勢送り手段のバットリフターと押さえ部材に対する摩擦係数を高くするための手段である。砂糖きびに対する把持面は粗面で滑り難いものであれば特に不都合はないので、これは不可欠の要件ではない。しかし、この構成(ニ)によれば、砂糖きびに対する引っかかりが強くなり、把持面が摩耗して滑りやすくなるのが長期間防止される。
また、この構成における「バットリフター又は上記押さえ部材の・・・表面の多数の突起」は、バットリフターと上記押さえ部材に把持された砂糖きびが滑らないようにするものであるから、少なくとも砂糖きびに対する把持面に多数の突起が設けられていればよい。そして上記突起は表面に凸凹を持たせるためのものであるから、その形状はどのようなものでもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおりであるから、バットリフターを利用してこれに押さえ部材とその支持構造及びその押さえバネ(具体的にはねじりコイルバネ)を付加した単純な構造であって、高い強度と剛性、高い耐久性を有する送り手段が構成される。
そして、砂糖きびを引き込み装置へ確実に安定的に送ることができる。
したがって、砂糖きびが引き込み装置の手前で停滞し、このために収穫作業が中断されることはほとんどなく、したがって、作業中断によって作業能率が大幅に低下することは確実に回避される。
それゆえ、砂糖きびの品種、生育状況、到伏状況の如何に関わりなしに、ハーベスターの作業能率は大幅に向上される。
【0027】
さらに、ベースカッターと引き込み装置間での送りを助勢する送り手段を、ベースカッターのバットリフター等を利用して簡単容易に構成することができ、そしてまた、送り手段のベースカッターへの付設に伴う重量増やコスト増は微小であり、他方、ハーベスターの作業能率が著しく安定する。これらのことがこの発明の大きな利点である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】は従来技術1の全体側面図
【図2】は従来技術2の一部拡大側面図
【図3】は実施例の全体側面図
【図4】は実施例の要部正面図
【図5】は実施例の要部平面図
【図6】は実施例の要部側面図
【図7】は実施例における送り手段による送りの説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明は前記従来技術1,2,3のいずれにも適用可能であり、極めて有効であるが、砂糖きびPを搬送コンベアー5で上方まで搬送し、当該搬送コンベアー上端の細断装置6で細断するタイプの従来技術(上記従来技術1と同じタイプ)にこの発明を適用した例を説明する。
【実施例】
【0030】
この実施例の全体は上記従来技術1と違いはなく、先端にクロップディバイダー2があり、その後方にベースカッター30があり、当該ベースカッターの直後に引き込み装置4、搬送コンベアー5、細断装置6、風撰装置7がある。また、ベースカッター30はその回転円盤30cの駆動軸が外筒30bでカバーされており(外筒の外径は140mm)、また、左右のベースカッター30が1つの油圧モーターmによって伝動装置gを介して駆動されるようになっている。
【0031】
ベースカッター30の外筒30bの上端部に一対の支持ボス33が相対向して設けられており、当該支持ボス33から横方向(外筒に対して横方向)に左右の支持軸34,34が突設されている。これらの各支持軸34によって一対の押さえ部材32,32の端部がそれぞれ回動自在に支持されている(図5)。
【0032】
また、上記支持軸34にねじりコイルバネ35がそれぞれ装着されていて、このねじりコイルバネ35で押さえ部材32を下方に押さえている。押さえ部材32は自由状態ではストッパに当たって角度θ(約40度)だけ下方に傾斜した状態にあり(図6参照)、このときのねじりコイルバネによる押さえ力(初期バネ力)は所定値に設定されている。
なお、このねじりコイルバネ35は線径5mmのバネ鋼製であって、コイル内径が32mmであり、その一端が支持軸34の根元に引っかけられ、他端が押さえ部材32の軸受け部材36に引っかけられていて、押さえ部材32を下方に押さえるようになっている。このねじりコイルバネ35は初期バネ力で押さえ部材32を常に押さえているが、砂糖きびで押さえ部材32が押し上げられると、ねじりコイルバネ35がさらに捩られてバネ力が強くなり、押さえ部材32に対する押さえが強くなる。
【0033】
また、このねじりコイルバネ35は支持軸34に緩く嵌めされていて、砂糖きびがバットリフターとの間に挟み込まれて押さえ部材32が押し上げられるとき、当該押さえ部材32が支障なく広い範囲で上方に回動できるようになっている。また、ねじりコイルバネ35は支持軸34に嵌められてその内面を支持されているので、外力で潰されたり曲げられたりすることはない。
【0034】
この実施例におけるバットリフター31のリフト高さLは240mm(従来の物と同じ)、押さえ部材32の上方への最大揺動範囲(図6の状態から砂糖きびによって押し上げられる範囲)は概略40度程度であって大きく開かれるので、砂糖きびが一度に大量に侵入するときでも、その取り込みが押さえ部材32によって制限されることはない。
螺旋状のバットリフター31は、直径23mmの鋼鉄棒によるものであり(従来のものと同じ)、その螺旋半径は約200mm(従来のものと同じ)である。そして、このバットリフター31は下方に押さえつけられる負荷及び砂糖きびの送り抵抗による負荷に十分耐える強度と剛性を備えている。
【0035】
また、円弧状の押さえ部材32は直径17mmの鋼鉄棒によるものであり、その曲率半径は約200mmでバットリフターのそれとほぼ等しく、その半径方向外方への張り出し長さは約190mmである。そして、この押さえ部材32の両端に軸受け部材36が溶接されており、この軸受け部材36が支持軸34に回転自在に支持されている。また、砂糖きび(挟まれた砂糖きび)による押し上げ力に対しては、ねじりコイルバネ35が捩られてこれを回避するので、押さえ部材32を上方に押し上げる負荷は限定される。したがって、砂糖きびの送り抵抗による負荷も制限される(砂糖きびに対してスリップするため)。
【0036】
バットリフター31は、高さ2mmの小さな環状突起が15mm間隔で設けられた丸棒(具体的には鉄筋)を螺旋状に曲げて作成したものであり、また、押さえ部材32は高さ1mmの小さな環状突起が10mm間隔で設けられた丸棒を円弧状に曲げて作成したものである。したがって、バットリフター31、押さえ部材32の表面には一定間隔で小さな環状突起があり、これに砂糖きびが引っかかるので滑りにくい。
【0037】
また、バットリフター31と押さえ部材32とによって砂糖きびPを強く挟持するようにねじりコイルバネ35の初期バネ力が設定されていて、砂糖きびの送り抵抗(あるいは引き込み抵抗)がある程度(例えば約7kg)を超えるまではスリップしないで砂糖きびを送るようになっている。しかし、送り抵抗(あるいは引き込み抵抗)がこれ以上になると、砂糖きびはバットリフター31と押さえ部材32に対してスリップしながらら所定の送り力で送られることになる。
ねじりコイルバネ35の組み付け時のねじれを加減することによって、初期バネ力は容易に調節される。
【0038】
この実施例のベースカッター30の回転速度は、400〜450rpmであり(従来のものと同じ)、バットリフター31の螺旋形状の半径も従来のものと違いがない。そして、バットリフター31と押さえ部材32による助勢送り手段の送り速度v1と引き込み装置4による引き込み速度v2の差(v2−v1)は0.5〜1m/秒であるが、この程度の速度差であれば、上記助勢送り手段や引き込みローラー4a等に過大に無理な力がかかってこれらが損傷されるようなことはない。
【0039】
バットリフター31の形状、その線材の太さをどの程度とするかは、ハーベスターの作業能力、栽培地域(砂糖きびの種類や太さや分布密度、到伏状態などが栽培地域によって異なる)等に関連することであり、作業能力が高いほど、また、砂糖きびが長くて太いほど、また分布密度が高いほど、さらに砂糖きびが硬くて強いほどバットリフターの高い剛性と強度が必要であり、また、押さえ部材32及びその軸受け部材36、支持軸34の高い剛性と強度が必要であるが、この実施例は日本の南西諸島全域で共通して使用できる程度の強度や剛性を備えている。
【0040】
ベースカッター30で根切りされると、砂糖きびはその瞬間にバットリフター31で押し上げられ、後方に送られる(図7(a)の矢印イ)。そして、バットリフター31の上部まで押し上げられると、その瞬間にバットリフター31と押さえ部材32によって挟持され(図7(b))、そして、挟持されたままで後方に送られる(図7(b)(c))。そしてさらに後方に送られながら(図(d)の矢印ロ)、バットリフター31と押さえ部材32による助勢送り手段から離間する(図7(d))。後方に送られた砂糖びが引き込み装置4の後方に引き込まれ、その後方の搬送コンベアー5に送り出される。したがって、砂糖きびが引き込み装置4の手前に停滞することはない。しかし、当該引き込みローラーに引き込まれなければその手前に停滞することになり、この場合は、この助勢送り手段によって引き込み装置に向けて繰り返し送られることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特許第3710456号公報
【特許文献2】特開2009−50177号公報
【符号の説明】
【0042】
1:クローラー
2:クロップディバイダー
3:ベースカッター
3a:バットリフター
4:引き込み装置
4a:引き込みローラー
5:搬送コンベアー
6:細断装置
7:風撰装置
30:実施例のベースカッター
30b:外筒
30c:回転基盤
30d:回転刃
31:実施例のバットリフター
32:押さえ部材
33:支持ボス
34:支持軸
35:ねじりコイルバネ
36:軸受け部材
m:油圧モーター
g:伝動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロップディバイダーの後方に左右のベースカッターがあり、当該ベースカッターの後方に引き込み装置があり、さらに細断装置があり、風撰装置があり、上記ベースカッターが駆動軸を保護する外筒と回転円盤を備えており、当該回転円盤に螺旋状のバットリフターがあって、
砂糖きびを上記バットリフターで押し上げるようになっている砂糖きび収穫機において、
ベースカッターの外筒の上部に左右一対の横方向支持軸があり、当該横方向支持軸によって円弧状の押さえ部材の両端が回動可能に支持されており、これによって押さえ部材が一定範囲で上下方向に揺動自在に支持されており、
上記押さえ部材の円弧状部分がバットリフターの上端部に重なり合うようになっており、
上記押さえ部材は上記支持軸に装着されたねじりコイルバネによって下方に押さえられており、
上記バットリフター又は上記押さえ部材のいずれかまたは両方の表面に多数の突起が設けられていることを特徴とする砂糖きび収穫機。
【請求項2】
上記バットリフター又は上記押さえ部材のいずれかまたは両方の表面に多数の突起が設けられていることを特徴とする請求項1の砂糖きび収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−100592(P2012−100592A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252515(P2010−252515)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000239725)文明農機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】