説明

研削盤における砥石軸のカバー構造

【課題】砥石車の交換に際しての良好な作業性を確保することができる砥石軸カバーによって砥石軸を被覆することのできる砥石軸のカバー構造を提供する。
【解決手段】軸方向に相互に分離可能な第一砥石軸71及び第二砥石軸72から構成され、分離した状態の前記第一砥石軸71と前記第二砥石軸72との間隙を介して砥石車Tが着脱される砥石軸70と、該砥石軸70の組み付け対象となる組付対象体と、該組付対象体に前記第一砥石軸71を支承する第一軸受と、前記組付対象体に前記第二砥石軸72を軸方向に移動自在となるようにして支承する第二軸受62bと、径方向に分離可能な複数のカバー体(第一カバー体91,第二カバー体92)から構成され、前記第二砥石軸72における前記砥石車Tと前記第二軸受62bとの間の部位に径方向から装着されて第二砥石軸72の外周面を被覆する砥石軸カバー90とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削盤における砥石軸のカバー構造に関するものであり、詳しくは、軸方向に分離可能な分割体から構成された砥石軸を被覆する砥石軸カバーを備えたカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒研削盤等の研削盤は、砥石車が装着される砥石軸を備えており、この砥石軸は、砥石台を構成する部材等の適宜の部材に、回転自在に組み付けられている。そして、研削盤では、砥石軸が、砥石台を構成する適宜の部材等、砥石軸の組み付けの対象となる部材(以下、「組付対象体」と称する)に、軸受を介して片持ち状に支持されているのが一般的であるが、中には、砥石軸が、その両端部分を支承する一対の軸受を介して両持ち状に支持されたものもある。このように両持ち状に支持された砥石軸では、片持ち状に支持された砥石軸に比して撓み難くなる。よって、砥石軸を両持ち状で支持することで、砥石軸の小径化を図ることができ、ひいては、砥石軸を組付対象体に回転自在に支持する支持構造全体の小型化を図ることができる。
【0003】
ところで、砥石軸を一対の軸受によって両持ち状に支持すると、この砥石軸に装着される砥石車は、一対の軸受間に配置されることになる。よって、砥石車を交換するために砥石軸から砥石車を着脱しようとすると、少なくとも一方の軸受から砥石軸を抜脱しなければならなくなり、砥石の交換作業が極めて煩雑となってしまう。そこで、砥石軸を、軸方向に相互に分離可能な分割体から構成することで、分離した状態の各分割体の間隙を介して砥石車を着脱可能とし、これにより、軸受から砥石軸を抜脱することなく、砥石車を交換できるようにした砥石軸が従来から提案されている。そして、このような砥石軸においては、一方の分割体を、これを支承する軸受に対して軸方向に移動させることで、各分割体を相互に離間させる構造となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−47662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、分割体を軸受に対して軸方向に移動させるに際して、分割体の外周面にゴミや切粉等の異物が付着していると、軸受に対して分割体を円滑に移動させることができなくなる。また、分割体の外周面に付着した異物が軸受内に浸入すると、軸受内にて異物の噛み込みが生じて軸の円滑な回転に支障を来たしたり、場合によっては焼付きを生じてしまう。
【0006】
そこで、軸受に対して移動される分割体の外周面を、軸受と砥石車との間において砥石軸カバーによって被覆することで、この分割体の外周面に異物が付着することを防止して、上記の不具合が生じないようにすることが考えられる。そして、砥石軸カバーとして、軸受側に固定された固定カバーと、砥石軸側に設けられると共に固定カバーに対してスライド自在に挿嵌されたスライドカバーとを有し、固定カバーに対してスライドカバーをスライドさせることで、全体の長さが伸縮自在となったものを単に想定することができる。このような砥石軸カバーによれば、固定カバーに対してスライドカバーを前進させて全体の長さを伸ばすことで、軸受と砥石車との間にて露呈する分割体の外周面の略全体を被覆することができる。一方、固定カバーに対してスライドカバーを後退させて全体の長さを縮めることで、砥石車を交換する際に邪魔にならないように、スライドカバーを退避させることができる。
【0007】
しかしながら、上記の砥石軸カバーにおいても、固定カバーとスライドカバーとの相互のスライド面に異物が付着することは免れ得ない。そして、スライド面に付着した異物により、固定カバーに対してスライドカバーを円滑にスライドさせることができなくなり、砥石車を交換するに際しての良好な作業性を低下させてしまうといった問題を新たに生じる。特に、砥石軸カバーが設けられる部位は、軸受と砥石車との間の狭い部位であり、スライド面に切粉が堅固に堆積すると、これを除去するための作業は困難を極め、砥石車の交換作業が著しく煩雑となってしまう。一方、相互のスライド面の間に異物を噛み込んだ状態で固定カバーに対してスライドカバーを無理やり後退させると、固定カバーに対してスライドカバーを前進させることができなくなってしまい、砥石軸カバーの分解修理を余儀なくされ、砥石車の交換作業効率を著しく低下させてしまう可能性もある。よって、砥石軸カバーとしては、砥石軸を単に被覆するだけでなく、砥石車の交換に際しての良好な作業性を確保することができるものを、鋭意工夫しなければならない。
【0008】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、砥石車の交換に際しての良好な作業性を確保することができる砥石軸カバーによって砥石軸を被覆することができる砥石軸のカバー構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「軸方向に相互に分離可能な第一砥石軸及び第二砥石軸から構成され、分離した状態の前記第一砥石軸と前記第二砥石軸との間隙を介して砥石車が着脱される砥石軸と、
該砥石軸の組み付け対象となる組付対象体と、
該組付対象体に前記第一砥石軸を支承する第一軸受と、
前記組付対象体に前記第二砥石軸を軸方向に移動自在となるようにして支承する第二軸受と、
径方向に分離可能な複数のカバー体から構成され、前記第二砥石軸における前記砥石車と前記第二軸受との間の部位に径方向から装着されて第二砥石軸の外周面を被覆する砥石軸カバーと
を備えることを特徴とする研削盤における砥石軸のカバー構造」
である。
【0010】
上記構成の砥石軸のカバー構造では、砥石軸カバーが径方向に分離可能な複数のカバー体から構成されたものであるため、各カバー体を径方向に分離することで、例え表面にゴミや切粉等が堅固に付着したとしても、これらのゴミや切粉等によって悪影響が及ぼされずに、第二砥石軸から容易に取り外すことが可能となる。そして、このように簡単な作業によって砥石軸カバーを取り外した上で、第二砥石軸を第二軸受に対して軸方向に移動させて第一砥石軸と第二砥石軸との間に十分な間隙を確保すれば、この間隙を介して砥石車を交換することができる。一方、第二砥石軸に挿着する際には、分離された各カバー体を第二砥石軸に径方向から組み付けて、各カバー体を相互に連結して一体化すればよく、これにより、第二砥石軸における軸受と砥石車との間の外周面を的確に被覆することができる。
【0011】
従って、上記構成のカバー構造によれば、砥石車の交換に際しての良好な作業性を確保することができる砥石軸カバーによって砥石軸を被覆することができる。
【0012】
上述した手段において、
「前記砥石軸カバーは、一端側が開放自在となるように他端側が相互に回動自在に連結された第一カバー体及び第二カバー体から構成されていることを特徴とする研削盤における砥石軸のカバー構造」
としてもよい。
【0013】
上記構成の砥石軸のカバー構造では、砥石軸カバーが、第一カバー体と第二カバー体との二つのカバー体によって構成されており、しかも、第一カバー体及び第二カバー体の夫々の一端側が相互に回動自在に連結されていることから、砥石軸から取り外しても、第一カバー体及び第二カバー体がバラバラにならない。また、砥石軸に装着する際には、第一カバー体及び第二カバー体の連結されていない側を相互に開放させた状態にて、砥石軸に径方向から組み付けて相互を連結すればよい。よって、砥石軸カバーの砥石軸への着脱作業を、簡便な作業によって行うことができる。
【0014】
上述した手段において、
「前記砥石軸カバーは、軸方向に隣接された他の部材に両端部分が夫々挿嵌する状態で前記第二砥石軸に装着されることを特徴とする研削盤における砥石軸のカバー構造」
としてもよい。
【0015】
例えば、軸受の端部に固定され、軸受と砥石軸との間の隙間を被覆する軸受カバーや、砥石軸に装着された砥石車等、砥石軸カバーの両端部分に種々の部材が隣接されている場合には、これらの部材の内周面と砥石軸の外周面との隙間に、ゴミや切粉等が進入すると、砥石軸の円滑な回転に支障を来たしたり、砥石軸に対する砥石車の良好な着脱性を阻害してしまうといった不具合が生じる虞がある。
【0016】
そこで、上記構成のように、砥石軸カバーを、軸方向に隣接された他の部材に両端部分が夫々挿嵌する状態で第二砥石軸に装着されるものとすることで、他の部材の内周面と砥石軸の外周面との隙間に、ゴミや切粉等が進入し難くすることができ、上述したような不具合を生じ難くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上述の通り、本発明によれば、砥石車の交換に際しての良好な作業性を確保することができる砥石軸カバーによって砥石軸を被覆することのできる砥石軸のカバー構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る研削盤における砥石軸のカバー構造の実施形態としての一例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
まず、図1,2に基づき、研削盤100の全体構成の概略を説明する。なお、本例では、研削盤100として、ワークを支持するワークテーブル40と、このワークテーブル40に対向する砥石台50とを備えた円筒研削盤を例示するが、円筒研削盤を使用する場合、円筒研削盤に臨む使用者から見て、ワークテーブル40が手前側に位置し、砥石台50が奥側に位置するのが一般的である。よって、以下では、説明の便宜上、研削盤100の構成に係る位置関係を、研削盤100に臨む使用者から見た状態として説明する。すなわち、使用者から見て、手前側を「前」、奧側を「後」、右側を「右」、左側を「左」として説明する。
【0020】
研削盤100は、コンピュータ数値制御装置(CNC)により全体の駆動が制御されるものである。研削盤100の基台部分を構成するベッド10の上面には、Z軸レール11が設けられており、このZ軸レール11を介してベッド10上の後部側にZ軸移動体20が載置され、Z軸方向(左右方向)に移動駆動される。Z軸移動体20の上面には、X軸レール21が設けられており、このX軸レール21を介してZ軸移動体20上にX軸移動体30が載置され、X軸方向(前後方向)に移動駆動される。そして、このX軸移動体30は、砥石車Tを支持すると共に回転駆動する砥石台50を備えている。ベッド10上の前部側に載置されたワークテーブル40には、ワークWを支持すると共に回転駆動する左右一対の主軸台41が設けられている。ここで、上記砥石台50は、砥石車Tが交換可能に装着される砥石軸70を具備しており、この砥石軸70を回転させることで、支持した砥石車Tを回転駆動する。また、上記左右一対の主軸台41は、ワークWの端部を支持する主軸42を具備しており、この主軸42を回転させることで、支持したワークWを回転駆動する。
【0021】
このように構成された研削盤100では、ワークテーブル40に支持されたワークWに対して砥石台50に支持された砥石車Tが、Z軸方向及びX軸方向に相対的に移動駆動される。なお、上記構成に限らず、ベッド10上にX軸移動体30を載置し、このX軸移動体30上に砥石台50を具備するZ軸移動体20を載置して、X軸移動体30をベッド10に対してX軸方向に移動駆動させると共に、Z軸移動体20をX軸移動体30に対してZ軸方向に移動駆動させるようにしてもよい。また、Z軸方向またはX軸方向の一方に移動駆動される移動体に砥石台50を設ける一方で、ワークテーブル40をZ軸方向またはX軸方向の他方に移動駆動させるようにしてもよい。
【0022】
ところで、本例の研削盤100では、Z軸移動体20及びX軸軸移動体30の夫々が、リニアモータにより駆動されるようになっているが、これに限らず、送りねじ機構を用いた種々の移動駆動装置を用いて、Z軸移動体20及びX軸軸移動体30を移動駆動するようにしてもよい。
【0023】
X軸移動体30は、Z軸移動体20上に載置された基台31と、基台31に固設され、砥石台50の主体部を構成する砥石台本体51と、砥石軸70を有し、砥石台本体51に着脱可能に取り付けられた砥石軸ユニット60とを有してなるものとして構成されている。ここで、砥石台本体51は、その前側部分が基台31から前方に迫出しており、この迫出した部分の前面に砥石軸ユニット60が取り付けられている。よって、砥石軸70及び砥石車Tは、砥石台50の前方に大きく迫出した状態、所謂「オーバーハング」した状態で砥石台50に支持された構造となっている。
【0024】
なお、本例に限らず、基台31を省略して砥石台本体51を直接、Z軸移動体20上に載置してもよい。また、砥石台本体51に対して着脱可能にユニット化された砥石軸ユニット60に砥石軸70を設けず、砥石台本体51自体に砥石軸70を設けてもよい。
【0025】
砥石軸ユニット60は、砥石軸本体51の前面に着脱可能に取り付けられたユニット基台61と、ユニット基台61のさらに前面に設けられた左右一対の軸受62a,bと、各軸受62a,bに両端部分が支承された砥石軸70と、砥石車Tを被覆する砥石ガード63とを備えてなるものとして構成されている。ここで、上記ユニット基台61は、砥石軸70を組み付ける対象となる部材であり、本例では、ユニット基台61が「組付対象体」となっている。なお、本例では、第一軸受62a及び第二軸受62bとして流体軸受を採用しているが、これに限らず、メタル軸受やボール軸受等、適宜の軸受構造を採用することができる。
【0026】
次に、砥石軸70の詳細について、図3,4に基づいて説明する。
【0027】
砥石軸70は、相互に連結・分離可能な第一砥石軸71と第二砥石軸72とを備えてなるものとして構成されている。第一砥石軸71と第二砥石軸72とを分離して、相互の間隙を介して砥石車Tを着脱することにより、砥石軸70を軸受62a,bから抜脱させることなく砥石車Tを交換することができる。また、砥石軸70は、その第一砥石軸71側に、砥石台50に搭載された駆動装置のベルト52が巻回されて、駆動装置によって回転駆動される。
【0028】
砥石軸70を構成する一方の部材である第一砥石軸71は、ユニット基台61に固設された第一軸受62aに支承されている。ここで、第一砥石軸71は、第一軸受62aに対して軸方向に移動不能に拘束されている。
【0029】
第一砥石軸71における第二砥石軸72側の端部には、フランジ部73が設けられている。円盤状に形成された砥石車Tは、第一砥石軸71のフランジ部73の端面84にその端面を密接させた状態で、取付ボルト74によって第一砥石軸71に着脱自在に固定される。また、このフランジ部73の端面84は、第二砥石軸72と連結された状態で第二砥石軸72の端面86と密接する部位であり、第一砥石軸71の密接部を構成するものである。
【0030】
さらに、第一砥石軸71における第二砥石軸72側の端部には、テーパ穴85が凹設されている。ここで、このテーパ穴85は、第二砥石軸72と連結された状態で第二砥石軸72の後述するテーパ筒87と密接する部位であり、第一砥石軸71の密接部を構成するものである。
【0031】
砥石軸70を構成する他方の部材である第二砥石軸72は、第二軸受62bに支承されている。ここで、第二砥石軸72は、第二軸受62bに対して軸方向に移動可能となっている。砥石車Tを交換するに際しては、第二砥石軸72を軸方向に移動させることで第一砥石軸71から離間させ、第一砥石軸71と第二砥石軸72との間隙を介して砥石軸70に対して砥石車Tを着脱する。
【0032】
第二砥石軸72における第一砥石軸71側の端面86は、連結された状態で第一砥石軸71の端面84に密接する部位であり、この端面86により、第二砥石軸71の密接部が構成されている。また、第二砥石軸72における第一砥石軸71側の端部には、テーパ筒87が突設されている。このテーパ筒87は、連結された状態で第一砥石軸71のテーパ穴85に嵌入されて密接する部位であり、このテーパ筒87により、第二砥石軸71の密接部が構成されている。
【0033】
このように、本例では、第一砥石軸71の端面84(フランジ部の端面84)と、テーパ穴85の内周面との2つの面、及び、第二砥石軸72の端面86と、テーパ筒87の外周面との2つの面によって、第一砥石軸71及び第二砥石軸72の夫々の密接部が構成されている。
【0034】
また、第二砥石軸71には、砥石軸70及び砥石車Tを含んだ回転駆動系全体の回転バランスを自動的に調節するオートバランサや、砥石車TとワークWとの接触を検出するAEセンサ等の機器110が内蔵されている。ここで、オートバランサは、夫々独立した電動機により砥石軸70の円周方向に移動駆動される2個の錘体を有するものであり、2個の錘体を、回転駆動系全体の回転のアンバランス量が最低となるような位相角度に位置させることで、回転駆動系全体の回転バランスを調節するものである。また、AEセンサは、砥粒の破壊音等の音を電気信号に変換して出力するものであり、このAEセンサからの電気信号の変化、すなわち、砥石車TがワークWに接触する際に生じる音の変化により、砥石車TとワークWとの接触を検知することができる。
【0035】
オートバランサは、外部の機器からの制御信号及び電力供給に基づいて錘体の移動駆動を制御する制御装置を有するものであり、電気により機能するものである。また、AEセンサは、外部の機器に電気信号を出力するものであり、これも同様に、電気により機能するものである。そして、本例では、これらのオートバランサやAEセンサ等の電気的に機能する機器110と、砥石軸70の外部に設けられた機器(図支省略)とを電気的に接続するために、部材間が非接触状態であっても電気を伝達することのできる電気的接続装置111が採用されている。
【0036】
この電気的接続装置111は、互いに非接触状態で対向配置されて無線により電力や電気信号の伝達を行う第一接続器111aと第二接続器111bとを備えてなるものである。そして、第一接続器111aは、第二砥石軸71の端部に設けられて第二砥石軸72と共に回転する。一方、第二接続器111bは、ユニット基台61に対して移動可能に組み付けられた台座112に固設されている。砥石車Tを交換するために第二砥石軸72を軸方向に移動させるに際しては、この第二砥石軸72の移動の邪魔にならないように、台座112を移動させて、第二接続器111bを予め退避させておく。
【0037】
ところで、第一砥石軸71と第二砥石軸72とは、適宜の連結機構によって堅固に連結されるのであるが、本例では、第一砥石軸71の端部に組み付けられた連結具80を有してなる連結機構を採用している。上記連結具80は、両端部分に逆方向の雄ネジが設けられ、第一砥石軸71に穿設された工具孔84から差し入れられた六角レンチ等の工具によって回動操作される作動軸81と、この作動軸81の両端部に螺合され、作動軸81の回動に応じて第一砥石軸71の径方向に進退する一対の連結コマ82とを有するものである。
【0038】
第一砥石軸71と第二砥石軸72とを連結する際には、第一砥石軸71のテーパ穴85に第二砥石軸72のテーパ筒87を嵌入させた上で、連結具80の連結コマ82を径方向に前進させれば、この連結コマ82がテーパ筒87の内周面に凹設された係合溝83に係合する。これにより、第一砥石軸71と第二砥石軸72とが相互に分離不能に連結される。
【0039】
また、係合溝83は、テーパ面を有する形状に形成されており、連結コマ82も、テーパ面を有する形状に形成されている。係合溝85に連結コマ82が係合した状態で連結コマ82をさらに前進させると、夫々のテーパ面の作用によって、第一砥石軸71に対して第二砥石軸72が引き寄せられる。これにより、第一砥石軸71の端面に第二砥石軸72の端面が十分に密接される。また、連結コマ82は、テーパ筒87を拡径させるように作用する。これにより、第一砥石軸71のテーパ穴85の内周面に第二砥石軸72のテーパ筒87の外周面が十分に密接される。
【0040】
本例の砥石軸70では、砥石車Tの交換に際して、その第二砥石軸72が第二軸受62bに対して軸方向に移動されるため、第二砥石軸72の外周面にゴミや切粉等の異物が付着しないように、砥石軸カバー90が装着されている(図3参照)。なお、この砥石軸カバー90は、砥石車Tを交換する際に邪魔にならないように、第二砥石軸72から取り外されるものである(図4参照)。
【0041】
次に、この砥石軸カバー90の詳細を、図5,6に基いて説明する。
【0042】
図5に示すように、砥石軸カバー90は、夫々、半円環状に形成され、相互に分離可能な第一カバー体91と第二カバー体92とを備えている。ここで、第一カバー体91と第二カバー体92との夫々の一端側は、蝶番等の適宜の回動機構によって、径方向に回動自在に連結されている。一方、第一カバー体91と第二カバー体92との夫々の他端側は、開放自在となっており、第二砥石軸72に取り付けられる際、及び、第二砥石軸72から取り外される際には、第二砥石軸72の直径よりも大きく開放される。また、第二砥石軸72に装着する際には、第一カバー体91と第二カバー体92との夫々の他端側部分が、止めネジやクランプ等の適宜の連結機構によって、相互に堅固に連結される。
【0043】
図6に示すように、第二軸受62bの端部には、第二軸受62bの内周面と第二砥石軸72の外周面との隙間を隠蔽すべく、軸受カバー95が固設されている。ここで、この軸受カバー95は、砥石軸カバー90の一端側に隣接して配置されたものであり、砥石軸カバー90の軸方向に隣接された「他の部材」を構成するものである。また、第二砥石軸72は、その端部が、第一砥石軸71に装着された砥石車Tに内嵌されており、この第二砥石軸72に装着された砥石軸カバー90の他端側には、砥石車Tが隣接して配置されることになる。よって、砥石車Tも、砥石軸カバー90の軸方向に隣接された「他の部材」を構成するものとなっている。
【0044】
そして、本例の砥石軸カバー90では、第二砥石軸72に装着された状態で、その両端部分が、隣接する他の部材95,Tに挿嵌されている。これを以下に、具体的に説明する。
【0045】
軸受カバー95には、筒状の挿嵌部96が突設されており、砥石軸カバー90の一端側に設けられた挿嵌部90aが、この軸受カバー95の挿嵌部96にスライド自在に外嵌されている。なお、軸受カバー95と砥石軸カバー90との相互のスライド面は、Oリング等のシール部材97を介して密接されている。
【0046】
一方、砥石車Tには、内側に開口する内面溝、及び、内方に延出する内方フランジ、を有する形状に形成された挿嵌部Taが設けられており、砥石軸カバー90の他端側に設けられた挿嵌部90bが、この砥石車Tの挿嵌部Taに内嵌されている。なお、砥石軸カバー90の他端側の挿嵌部90bは、外側に開口する外面溝、及び、外方に延出する外方フランジ、を有する形状に形成されている。そして、砥石車Tの挿嵌部Taに砥石軸カバー90の挿嵌部90bを内嵌した状態では、砥石車Tの挿嵌部Taの内面溝及び内方フランジの夫々に砥石軸カバー90の挿嵌部90bの外方フランジ及び外面溝が非接触で迷路状に対応し、これにより、ラビリンスシールが実現される。
【0047】
このように砥石軸カバー90の両端部分の挿嵌部90a,90bを、夫々、軸受カバー95の挿嵌部96及び砥石車Tの挿嵌部Taに挿嵌させるにあたっては、まず、砥石軸カバー90の一端側の挿嵌部90aが軸受カバー95の挿嵌部96に外嵌するように、第二砥石軸72に砥石軸カバー90を組み付けた上で、軸受カバー95に対して砥石軸カバー90をスライドさせ、砥石車T側に前進させる。これにより、砥石軸カバー90の他端側の挿嵌部90bが砥石車Tの挿嵌部Taに内嵌される。そして、この後、軸受カバー95に対して砥石軸カバー90を、止めネジ等の適宜の固定機構によって堅固に固定すれば、砥石軸カバー90の両端部分が他の部材95,Tに相互に挿嵌された状態で維持され、他の部材95,Tと砥石軸70との間にゴミや切粉等が浸入することを防止することができる。また、本例では、第二軸受62bに対して、軸受カバー95を介して砥石軸カバー90が固定されており、砥石軸70と共に回転しない構造となっているため、砥石軸カバー90が、砥石軸70を含んだ回転駆動系の回転バランスに悪影響を及ぼすことがない。
【0048】
以上、本発明に係る砥石軸のカバー構造の一例を説明したが、本発明に係る砥石軸のカバー構造はこれに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、砥石軸カバー90の両端部分を隣接する他の部材95,Tに挿嵌させる構造としては、上記に限らず、図7に示すような構造を採用してもよい。この図7に示す例では、軸受カバー95の挿嵌部98及び砥石車Tの挿嵌部Tbの夫々が溝状に形成されており、砥石軸カバー90の両端部分の挿嵌部90c,90dが、例えば突条等、軸受カバーの挿嵌部98及び砥石車Tの挿嵌部Tbの夫々対応するような形状に形成されている。そして、第二砥石軸72に砥石軸カバー90を装着した状態では、これらの軸受カバー95及び砥石車Tの各挿嵌部98,Tbに、砥石軸カバー90の両端部分に設けられた挿嵌部90c,90dが凹凸嵌合するようにして外嵌され、ラビリンスシールを構成している。なお、凹凸嵌合に限らず、シール部材が介在されるようにして相互の挿嵌部分が密接されるようにしてもよい。また、砥石軸カバー90の両端部分が挿嵌される部材としては、軸受カバー95や砥石車Tに限らず、その他の部材が砥石軸カバー90に隣接される構造では、その他の部材であってもよい。さらに、砥石軸カバー90を、径方向に分離可能な3つ以上のカバー体から構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る砥石軸のカバー構造を採用した研削盤の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示した研削盤の要部側面図である。
【図3】本発明に係る砥石軸のカバー構造において、第一砥石軸と第二砥石軸とを連結した状態を示す要部平面図である。
【図4】本発明に係る砥石軸のカバー構造において、第一砥石軸と第二砥石軸とを分離した状態を示す要部平面図である。
【図5】砥石軸カバーの一例を示す側面図であり、(a)は、砥石軸に装着した状態、(b)は、砥石軸から取り外した状態である。
【図6】図5に示した砥石軸カバーの詳細を示す要部断面平面図である。
【図7】砥石軸カバーの別例を示す要部断面平面図である。
【符号の説明】
【0051】
T 砥石車
Ta 挿嵌部
Tb 挿嵌部
W ワーク
10 ベッド
11 Z軸レール
20 Z軸移動体
21 X軸レール
30 X軸移動体
31 基台
40 ワークテーブル
41 主軸台
42 主軸
50 砥石台
51 砥石台本体
52 ベルト
60 砥石軸ユニット
61 ユニット基台(組付対象体)
62a 第一軸受
62b 第二軸受
63 砥石ガード
70 砥石軸
71 第一砥石軸
72 第二砥石軸
73 フランジ部
74 取付ボルト
80 連結具
81 作動軸
82 連結コマ
83 係合溝
84 端面
85 テーパ穴
86 端面
87 テーパ筒
90 砥石軸カバー
90a 挿嵌部
90b 挿嵌部
90c 挿嵌部
90d 挿嵌部
91 第一カバー体
92 第二カバー体
95 軸受カバー
96 挿嵌部
97 シール部材
98 挿嵌部
100 研削盤
110 機器
111 電気的接続装置
111a 第一接続器
111b 第二接続器
112 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に相互に分離可能な第一砥石軸及び第二砥石軸から構成され、分離した状態の前記第一砥石軸と前記第二砥石軸との間隙を介して砥石車が着脱される砥石軸と、
該砥石軸の組み付け対象となる組付対象体と、
該組付対象体に前記第一砥石軸を支承する第一軸受と、
前記組付対象体に前記第二砥石軸を軸方向に移動自在となるようにして支承する第二軸受と、
径方向に分離可能な複数のカバー体から構成され、前記第二砥石軸における前記砥石車と前記第二軸受との間の部位に径方向から装着されて第二砥石軸の外周面を被覆する砥石軸カバーと
を備えることを特徴とする研削盤における砥石軸のカバー構造。
【請求項2】
前記砥石軸カバーは、一端側が開放自在となるように他端側が相互に回動自在に連結された第一カバー体及び第二カバー体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の研削盤における砥石軸のカバー構造。
【請求項3】
前記砥石軸カバーは、軸方向に隣接された他の部材に両端部分が夫々挿嵌する状態で前記第二砥石軸に装着されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研削盤における砥石軸のカバー構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−75934(P2006−75934A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261799(P2004−261799)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】