破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システム
【課題】遺伝子検査の前処理である破砕処理の信頼性を向上させることにより遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムを提供する。
【解決手段】生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程、この物性の変化を検出する工程、及び前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程、を含む。
【解決手段】生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程、この物性の変化を検出する工程、及び前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年臨床診断の分野において遺伝子検査が急速に普及している。遺伝子検査とは、核酸や染色体などを分析して遺伝性疾患に関連する変異や核型などの有無を臨床目的で検査することである。遺伝子検査の一例として、生体から切除した組織内にがん細胞由来の核酸が存在するかどうかを判定する検査がある。その検査工程は、主に前処理、核酸増幅、及び検出の3工程からなる。
【0003】
前処理工程には様々な方法がある。例として、まず検査目的で生体から切除したリンパ節、腫瘍塊、組織片などの細胞塊に前処理用の試薬(緩衝液)を加える。次に試薬が添加された切除組織を破砕(ホモジナイズ)し、ホモジネートを遠心分離することにより得られる上清を測定用試料とする。
核酸増幅工程では、前記測定用試料をサンプル容器に収容して、そこに酵素やプライマーなどの試薬を加え、核酸増幅反応によって標的核酸を増幅する。
検出工程では、蛍光染色された標的核酸の蛍光測定や増幅に比例して産生される副産物の濁度測定などにより、切除組織中の標的核酸の有無の判定又は濃度の算出を行う。
上述のような遺伝子検査では、各工程における様々な要素が測定結果に影響を与える。このため、遺伝子検査の分野において、各工程の精度及び信頼性の確保のための精度管理の充実が重要となる。
核酸増幅工程及び検出工程に関しては、従来から陽性コントロールや陰性コントロールを用いて精度管理が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前処理工程に関しては、精度管理が行われていないことが現状である。ホモジナイズを手動で行う場合、前処理を行う者の技量によって切除組織のホモジナイズの程度に差が出ることがある。また、ホモジナイズを自動破砕装置などによって自動的に行う場合、ブレンダーの回転数等のホモジナイズ条件の設定のばらつきや継続使用によるブレンダーの摩耗などにより切除組織のホモジナイズの程度に差が生じることがある。これらのことから、ホモジナイズを手動で行う場合も、自動破砕装置などによって行う場合も、ホモジナイズ条件等の前処理の精度管理が必要である。従って、前処理装置の精度を管理するための精度管理方法の開発が望まれている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、遺伝子検査の前処理である破砕処理の信頼性を向上させることにより遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために次の技術的手段を講じた。
破砕装置の動作確認方法に係る本発明は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程、
この物性の変化を検出する工程、及び
前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程、
を含むことを特徴としている。
この破砕装置の動作確認方法によれば、精度管理物質の破砕によって生じる物性変化に基づいて動作の適正を判定するので、簡単に動作確認を行うことができる。これにより、破砕処理の信頼性が高まる。
【0006】
上記方法において、前記物性の変化が、光学的状態の変化であってもよい。この光学的状態の変化は濁度、散乱光強度、吸光度、蛍光強度、透過光強度、発光強度及び発色強度からなる群より選択される少なくとも1つを用いて検出されることが好ましい。
上記方法において、前記緩衝液の物性を変化させる工程において、前記緩衝液の前記標識物質と結合可能な物質(以下、標識結合物質という)と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合することにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させるが好ましい。
上記方法において、前記標識結合物質と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合し、この混合液を加温することが好ましい。
上記方法において、前記標識物質がピロリン酸であり、前記標識結合物質が二価の陽イオンであることが好ましい。
上記方法において、前記精度管理物質が、標識物質が含まれている内部層、及びこの内部層の外側を覆い、且つ当該内部層を保護する保護層を有しており、前記内部層と前記保護層との間に界面が形成されていることが好ましい。
前記標識物質及び前記内部層が親水性であり、保護層が疎水性であることが好ましい。
上記方法において、前記精度管理物質は、前記試料を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されていることが好ましい。
上記方法において、前記精度管理物質の表面に、液体を吸収することにより硬度が低下する層が形成されていることが好ましい。
【0007】
遺伝子検査用前処置装置の精度管理方法に係る本発明は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する遺伝子検査用前処理装置の精度管理を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記前処理装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させる破砕工程、
前記破砕工程を実行した後、前記緩衝液の光学的情報を検出する検出工程、及び
前記光学的情報に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する判定工程、
を含むことを特徴としている。
この精度管理方法によれば、精度管理物質の破砕によって生じる物性変化に基づいて動作の適正を判定するので、簡単に前処理装置の精度管理を行うことができる。これにより、前処理装置の信頼性が高まり、ひいては遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる。
【0008】
上記方法の前記判定工程において、
前記光学的情報が所定の値未満であった場合は、前記破砕動作が適正ではなかったと判定し、
前記光学的情報が所定の値以上であった場合は、前記破砕動作が適正であったと判定してもよい。
【0009】
また、試料分析システムに係る本発明は、破砕処理を施して調製した測定用試料の分析を行う試料分析システムであって、
標識物質を封入した精度管理物質及び緩衝液を含み、且つ破砕処理が施された精度管理試料の光学的情報を測定する測定部と、
前記光学的情報に基づいて、前記破砕処理が適正であったか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴としている。
上記試料分析システムは、前記緩衝液中の前記精度管理物質を破砕する破砕部をさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムを提供することができる。これによると、遺伝子検査の前処理である破砕処理の信頼性を向上させることにより遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の破砕装置の動作確認方法は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程(破砕工程)、この物性の変化を検出する工程(検出工程)、及び前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程(判定工程)、を含む。
本発明の方法により動作確認を行う破砕装置は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕するものである。ここで、細胞を含む試料としては、例えば、ヒト等の動物から採取したリンパ節等の組織が挙げられる。また、緩衝液としては、水を用いることができ、また、pHを調整するために適当な緩衝剤を水に添加してもよい。
【0012】
破砕工程において、標識物質を封入した精度管理物質を緩衝液と混合し、破砕処理により破砕(ホモジナイズ)する。これにより、精度管理物質から標識物質が緩衝液中に遊離する。
標識物質が緩衝液中に遊離することにより、緩衝液の物性が変化する。好ましくは、破砕処理中及び/又は破砕処理後に標識結合物質を緩衝液に添加し、標識物質と結合させることによって物性を変化させる。また、この標識結合物質は予め緩衝液中に含まれていてもよい。
物性の変化としては、例えば、光学的状態の変化、粘度の変化等が挙げられる。光学的状態の変化は、濁度、散乱光強度、吸光度、蛍光強度、透過光強度、発光強度、発色強度などが例示される。粘度の変化であれば、破砕装置を作動させるモータのトルク変化等を測定することにより検出することができる。
【0013】
光学的状態の変化としては、濁度変化、吸光度変化、散乱光強度変化、蛍光強度変化、透過光強度変化、発光強度変化、発色強度変化などが例示される。光学的状態の変化は、標識結合物質と、前記緩衝液中に遊離した前記標識物質とが結合することにより生じることが好ましい。標識物質と標識結合物質との組み合わせとしては、ピロリン酸と二価の陽イオンとの組み合わせ、酵素と基質との組み合わせなどが挙げられる。例えば、標識物質がピロリン酸であり、標識結合物質が二価の陽イオン、例えばマグネシウムイオンである場合、ピロリン酸とマグネシウムイオンとが結合して不溶性のピロリン酸マグネシウムが生成され、緩衝液が白濁する。この緩衝液の濁度変化を光学的状態の変化として検出することができる。ピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合反応の際には、緩衝液を加温することが好ましい。これにより、ピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合反応が促進される。
【0014】
精度管理物質に封入される標識物質としては、精度管理物質が破砕されて緩衝液中に漏出することにより緩衝液の物性を変化させるものであれば特に限定されず、上述のピロリン酸の他にも、蛍光物質、発光物質、発色物質、酵素等を用いることができる。
また、標識物質として酵素を用いる場合、例えば、精度管理物質にグルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)を封入し、標識結合物質としてこの酵素に対応する補酵素(例えば、NAD又はNADP)及びグルコース6リン酸(G6P)を用いることができる。この場合、精度管理物質が破砕されてG6PDHが漏出し、G6PDHが漏出した緩衝液にG6P及び補酵素を添加すると、これらが反応して補酵素が還元される。補酵素が還元されると緩衝液の吸光度が変化するため、この吸光度の変化を光学的状態の変化として検出することができる。
また、精度管理物質にペルオキシダーゼ(POD)を封入し、標識結合物質としてカップラ(例えば、4−アミノアンチピリン等)及びデベロッパ(フェノール系化合物等)などの色原体と、過酸化水素とを用いることができる。この場合、精度管理物質が破砕されてPODが漏出すると、PODが漏出した緩衝液に色原体及び過酸化水素を添加すると、これらが反応して発色物質が生成する。従って、この緩衝液の発色を光学的状態の変化として目視や吸光度測定器等で検出することができる。
【0015】
精度管理物質は、標識物質が含まれている内部層、及びこの内部層の外側を覆い、且つ当該内部層を保護する保護層を有しており、前記内部層と前記保護層との間に界面が形成されていることが好ましい。内部層を、この内部層と混ざらない(界面を形成する)保護層で保護することにより、標識物質を外部へ漏れにくくすることができる。
【0016】
内部層と保護層との間には界面が形成されることから、標識物質が水溶性物質である場合、内部層は水層であり、保護層は油層である。一方、標識物質が脂溶性物質(例えば、色素)である場合、内部層は油層であり、保護層は水層である。
ここで、水層には、水、生理食塩水、緩衝液、培養液等を使用することができ、油層には、各種油脂類、脂肪酸類、糖の脂肪酸エステル類等を使用することができ、好ましくは、動物性油脂、植物性油脂等が用いられる。
【0017】
前記精度管理物質は、細胞塊等の試料を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されていることが好ましい。細胞(組織)の硬さ(弾性係数(ヤング率))は、例えば、脂肪の場合数10kPa、乳腺組織の場合数10kPa、線維組織の場合120〜300kPa、非浸潤性乳管癌の場合150〜350kPa、浸潤性乳管癌の場合300〜750kPa、前立腺の場合40〜80kPa(T.A.Krpiskop et al,Ultrasonic Imaging,1998参照)であり、精度管理物質の強度を対象となる検体に応じて上記又はそれ以上となるように材料を選択することにより、精度管理物質の破砕条件が試料の破砕条件と同等又はより厳しくなるため、精度管理物質の破砕を確認することで破砕装置の動作確認をすることが可能になる。
さらに、精度管理物質の表面が、液体を吸収することにより硬度の低下する層であることが好ましい。精度管理物質の表面にさらに層(最外層)を形成することにより、標識物質が外部により漏れにくくなる。さらに最外層が液体を吸収して徐々に軟らかくなることで、適度な時間に破砕が起こることになる。最外層は、天然高分子、例えば、ゼラチン、寒天、ペクチン、アルギン酸、カラギーナン、カードラン、デンプン、ジェランガム、グルコマンナン又はこれらの混合物、あるいは、必要に応じて、これらにタンパク質、糖蛋白、ムコ多糖、糖、糖アルコール、多価アルコール等を添加した物質から形成される。これらの物質の組成を適宜調整することにより、最外層の硬度や、吸水力等を調整することができる。
【0018】
破砕装置の動作保証は、例えば、以下のように行うことができる。
細胞塊を十分破砕する程度の破砕動作を加えると、内部に封入された標識物質(ピロリン酸)が漏れ出すように設計された精度管理物質に緩衝液を添加し、ブレンダーで所定の回転数、回転時間ホモジナイズする。破砕動作が適正であった場合は、精度管理物質からピロリン酸が緩衝液中に漏出し、マグネシウムイオンが含まれた緩衝液を予め添加しておいた検出セルにピロリン酸が漏出した緩衝液を移し、ピロリン酸がマグネシウムイオンと結合してピロリン酸マグネシウムを生成することにより、緩衝液が白濁する。しかし、破砕動作が不十分であった場合は、ピロリン酸の漏出は実質的になく、緩衝液は白濁しない。従って、濁度を測定し、この測定データから、所定時間内に緩衝液が白濁したか否か(例えば、濁度が0.1以上か否か)により破砕動作が適正であったか否かを判定することができる。
破砕後の緩衝液の濁度が0.1未満であった場合は、破砕動作が不十分であったと判定される。この場合、破砕動作条件(回転時間や回転数)の誤設定やブレンダーの刃の摩耗等が考えられるため、精度管理の結果に基づいて刃の交換や破砕動作条件の設定の確認等を行い、前処理装置を細胞塊等の生体試料のホモジナイズに適切な状態とすることができる。
【0019】
以下、上記破砕装置の動作保証方法を用いた遺伝子検査用前処理装置の内部精度管理について、図面に基づき説明する。
[核酸検出システム]
本実施形態の核酸検出システム(試料分析システム)1は、リンパ節のような生体(人体)からの切除組織を検体とし、この検体に含まれる標的核酸の濃度を測定データとして出力可能なものである。
より具体的には、この核酸検出システム1は、乳癌リンパ節転移の遺伝子診断システムとして用いられ、人体から切除されたリンパ節(検体)に前処理(ホモジナイズ、抽出処理など)を施して、核酸検出のための測定用検体となる可溶化抽出液を作成し、測定用検体中に存在する標的核酸(mRNA)に対応するcDNAをLAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification:US6410278B1号参照)により増幅させ、増幅に伴い発生する溶液の濁りをリアルタイムで測定することで、標的核酸の濃度(単位体積当たりのコピー数)を求めるものである。
【0020】
この核酸検出システム1は、術中迅速診断用に用いられ、具体的には、乳癌などの手術中に使用されるものである。例えば、術中に切除されたリンパ節からシステム1がリンパ節中のがんマーカーの濃度を求め、これを参考に医師が術中にがん細胞のリンパ節転移の有無及び/又は転移の度合いを診断し、リンパ節の郭清範囲を決定する。したがって、システム1の出力には高い信頼性と迅速性が要求される。
【0021】
図1に示すように、核酸検出システム1は、人体などから得られた検体に対して破砕(ホモジナイズ)等の前処理を行って測定用検体(測定用試料)を作成するための前処理装置本体5と、測定用検体に含まれる標的核酸の検出処理を行う核酸検出装置本体101とを有している。
また、核酸検出システム1は、データ処理又はデータ通信などを行うためのデータ処理装置として、パーソナルコンピュータ6を有している。このデータ処理装置6は、核酸検出装置本体101から測定データを受信したり、前処理装置本体5及び核酸検出装置本体101に動作指示信号などを送信したりする制御装置としての機能も有している。すなわち、前処理装置本体5が前処理装置として機能し、核酸検出装置本体101とデータ処理装置6とが核酸検出装置として機能する。
また、データ処理装置6は、ネットワークに接続することも可能であり、図示しないサーバとの間のデータ送受信機能により、核酸検出装置本体101の送信部から送信された測定データ等を、サーバに送信することができる。
【0022】
[前処理装置]
図2に示すように、前処理装置本体5は、主に、検体への前処理を行って測定用検体とする前処理部50を備えている。
前処理部50は、検体が入った容器をセットする検体セット部51と、検体のホモジナイズを行うためのブレンダー(ホモジナイズ部)52と、ホモジナイズ(前処理)された測定用検体を分注するピペット(分注部)53と、ピペット53を核酸検出装置本体101へ移送する移送部(図示省略)とを備えている。
【0023】
ユーザーは、精度管理物質と緩衝液とを混合し、これを検体セット部51にセットする。ユーザーがデータ処理装置6のキーボードやマウス等を用いて測定開始指示を行うと、データ処理装置6から測定開始指示が前処理装置本体5に送信される。
前処理装置本体5は、データ処理装置6から測定開始指示信号を受けると、ブレンダー52によって検体をホモジナイズし、測定用検体を作成する(ホモジナイズ処理)。
そして、測定用検体(以下、単に「サンプル」ともいう)をピペット53によって吸引し、通常の核酸検出の場合には、ピペット53が核酸検出装置本体101まで移動し、核酸検出装置本体101にセットされたサンプル容器22にサンプルを注入する。
精度管理の場合には、前処理用精度管理物質を前処理して作成された測定用精度管理試料を吸引したピペット53が、前記サンプルと同様に、核酸検出装置本体101まで移動し、核酸検出装置本体101にセットされたサンプル容器22に測定用精度管理試料を注入する。
【0024】
[核酸検出装置]
核酸検出装置本体101は、図3及び図4に示すように構成されており、この装置の詳細は、特開2005−98960に記載されている。ここでは、核酸検出装置本体101の構成及び動作等を簡単に説明する。
まず、前処理装置本体5から移動してきたピペットが、サンプル容器台21のサンプル容器セット孔21aにセットされたサンプル容器22に、前処理されたサンプル又は測定用精度管理試料を注入する。
【0025】
試薬容器セット部30の正面左側のプライマ試薬容器セット孔31aおよび酵素試薬容器セット孔31bには、CK19(サイトケラチン19)のプライマ試薬が収容されたプライマ試薬容器32aおよび酵素試薬が収容された酵素試薬容器32bがセットされている。
【0026】
また、チップセット部40の凹部(図示せず)に、それぞれ36本の使い捨て用ピペットチップ41が収納された2つのラック42が嵌め込まれている。さらに、各反応検出ブロック60aの反応部61の2つの検出セルセット孔に、検出セル65の2つのセル部66aがセットされている。
【0027】
この状態で、核酸検出装置本体101の動作がスタートすると、まず、分注機構部10のアーム部11が初期位置からチップセット部40に移動された後、チップセット部40において、分注機構部10のシリンジ部12が下方向に移動される。これにより、シリンジ部12のノズル部の先端がピペットチップ41の上部開口部内に圧入されるので、シリンジ部12のノズル部の先端にピペットチップ41が自動的に装着される。そして、シリンジ部12が上方に移動された後、分注機構部10のアーム部11は、試薬容器セット台31にセットされたCK19のプライマ試薬が収容されたプライマ試薬容器32aの上方に向かってX軸方向に移動される。そして、シリンジ部12が下方向に移動されることにより、シリンジ部12のノズル部に装着されたピペットチップ41の先端が、プライマ試薬容器32a内のCK19のプライマ試薬の液面に挿入される。そして、シリンジ部12のポンプ部によりプライマ試薬容器32a内のCK19のプライマ試薬が吸引される。
【0028】
プライマ試薬の吸引後、シリンジ部12が上方に移動された後、分注機構部10のアーム部11は、最も奥側(装置正面奥側)に位置する反応検出ブロック60aの上方に移動される。この場合、分注機構部10のアーム部11は、奥から2番目〜5番目の他の反応検出ブロック60aの上方を通過しないように移動される。そして、最も奥側の反応検出ブロック60aにおいて、シリンジ部12が下方向に移動されることにより、シリンジ部12のノズル部12aに装着されたピペットチップ41が、検出セル65のセル部66aに挿入される。そして、シリンジ部12のポンプ部を用いて、CK19の2つのプライマ試薬がセル部66aに吐出される(プライマ試薬分注処理)。
【0029】
その後、ピペットチップ41は破棄され、シリンジ部12のノズル部先端に新しい2つのピペットチップ41が自動的に装着されたのち、上記とほぼ同様の動作で、酵素試薬容器32b内の酵素試薬が検出セル65のセル部66aに吐出される(酵素試薬分注処理)。
その後、さらに同様に、サンプル容器22のサンプル(測定用検体)が検出セル65のセル部66aに吐出される(サンプル分注処理)。
これによって、検出セル65のセル部66aには、CK19を検出するための試料が調整される。
【0030】
上記のセル部内へのプライマ試薬、酵素試薬及びサンプルの吐出が行われた後、検出セル65の蓋閉め動作が行われる。
蓋閉め動作が完了した後、反応部61のペルチェモジュールを用いて、検出セル65内の液温を約20℃から約65℃に加温することにより、LAMP法により標的核酸(CK19のmRNA)に対応するcDNA(以下、CK19cDNAとする)を増幅する。
そして、増幅に伴い生成されるピロリン酸マグネシウムによる白濁を検出する。具体的には、濁度検出部62のLED光源部62aから、約1mmの直径を有する光を、反応部61の光照射溝を介して、増幅反応時の検出セル65(測定データ取得部)のセル部66aに照射する。そして、その照射した光をフォトダイオード受光部62bで受光する。
これにより、増幅反応時の検出セル65のセル部66a内の液濁度をリアルタイムで検出(モニタリング)する(検出処理)。
フォトダイオード受光部62b(測定データ取得手段)で測定したCK19の測定データは、核酸検出装置本体101の有する送信部(図示省略)によってデータ処理装置6に送信される。
【0031】
その結果、データ処理装置6において、横軸に時間、縦軸に濁度をとった場合に、図5に示すようなCK19の測定データが得られる。そして、サンプル中のCK19cDNAの増幅産物が急増するまでの時間(増幅立ち上がり時間)を測定する。
そして、図6に示すような、予めCK19のキャリブレータの測定結果から作成された検量線に基づいて、CK19の増幅立ち上がり時間からCK19cDNAの濃度(コピー数/μL)が算出される。ここで、図6に示した検量線は、横軸に増幅立ち上がり時間、縦軸に標的核酸のコピー数[コピー数/μL]をとった曲線であり、増幅立ち上がり時間が短いほど、標的核酸濃度が高いことを示す。
【0032】
算出された標的核酸濃度のデータ(測定データ)は、データ処理装置6の表示装置又はその他の表示装置によって、画面表示される。また、データ処理装置6は、定量的な測定データ(増幅立ち上がり時間、コピー数)から、診断支援のための定性的な判定結果を求め、データ処理装置の表示装置又はその他の表示装置によって画面表示する。
この判定は、例えば、コピー数が250以下の場合、又は図5に示す測定データにおいて、所定時間が経過しても濁度がしきい値に到達しない場合は「ND」、コピー数が250〜5×103の範囲であれば「+」、コピー数が5×103より大きければ「++」として判定する。ここで、「ND」は「転移は検出されない」、「+」は「転移は少ない」、「++」は「転移が認められる」というように定性的ながん細胞のリンパ節転移の度合いを示しており、システム2が、定量的な測定データ(がん細胞の量)から確定診断支援に役立つ定性的な結果を求めて表示することで、医師は、術中に迅速に診断を行い、郭清範囲を決定することができる。
【0033】
[前処理用の精度管理]
前処理装置5の精度管理の際には、前処理装置本体5によって緩衝液中で精度管理物質を前処理して精度管理試料を作成し、核酸検出装置本体101において前記サンプルと同様に濁度を測定する。
精度管理試料は、既知量の標識物質としてのピロリン酸を含む精度管理物質(カプセル)、及び緩衝液を含み、前処理(破砕処理)が施されたものである。破砕された精度管理物質を含む緩衝液をさらに遠心分離し、得られる上清を精度管理試料とすることが好ましい。これにより、破砕された精度管理物質の破片を実質的に含まない精度管理試料を得ることができる。
ここで、精度管理物質は、内部層(水層)、保護層(油層)及び最外層からなる三層構造をしており、内部層に標識物質であるピロリン酸が含まれている。そして、がん細胞などが含まれる組織を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されている。最外層は、液体を吸収することにより硬度が低下するように構成されている。このため、前処理装置本体5によって所定の破砕処理(回転数25krpmで回転時間90秒間の破砕処理)が施されて濁度を測定したときに、所定の基準値(表示値)が得られる。
【0034】
図7〜図8は、前処理の精度管理のためのパーソナルコンピュータ6、前処理装置本体5の処理を示すフローチャートである。
精度管理処理は、定期的に実施される。
精度管理処理の際には、ユーザー(病院のスタッフ等)は上記精度管理物質と緩衝液とを混合し、前処理装置本体5の検体セット部51にセットする。
そして、ユーザーが、前処理装置本体5の精度管理を開始するために、システム1のパーソナルコンピュータ6のキーボード・マウスなどの入力部によって開始指示を入力し、パーソナルコンピュータ6がその指示を受け付けると(ステップS1−1:図7参照)、パーソナルコンピュータ(制御装置)6は、前処理装置本体5に前処理の測定開始指示を送信する(ステップS1−2)。
【0035】
前処理装置本体5は、測定開始指示の信号を受信すると(ステップS1−3:図8参照)、前処理部50によって精度管理物質にホモジナイズ処理(ステップS1−4)を行い、精度管理試料を作成する。
この精度管理試料は、ピペット53により核酸検出装置本体101のサンプル容器22に分注される。このサンプル容器22には予めマグネシウムイオンを含む溶液が分注されており、精度管理試料とこの溶液とが混合されることによってピロリン酸とマグネシウムイオンとが反応し、緩衝液が白濁する。核酸検出装置本体101においてはこの緩衝液の濁度が測定される(ステップS1−5)。そして、核酸検出装置本体101は、測定された濁度の測定データを、パーソナルコンピュータ6側へ送信する(ステップS1−6)。
パーソナルコンピュータ6は、核酸検出装置本体101から濁度の測定データを受信する(ステップS1−7:図7参照)。
【0036】
パーソナルコンピュータ6は、濁度測定データを受信すると、所定の時刻における濁度と、予め設定された閾値とを比較し、精度管理物質に対する破砕処理が適切であったか否かを判定する(ステップS1−8:判定(QC(Quality Control)結果判断))。
例えば、所定の時刻における濁度が所定の値(閾値)に近似した値(好ましくは閾値±20%以内、より好ましくは閾値±10%以内)を示した場合は、精度管理物質に対する破砕処理が適切に行われたと判定される。これは、前処理装置がリンパ節等の組織塊を適切に破砕できる状態であることを示す。
逆に、所定の時刻における濁度よりも著しく低値(例えば、閾値の80%未満)であった場合は、精度管理物質に対する破砕処理が不十分であったと判定される。これは、前処理装置に異常が生じており、リンパ節等の細胞塊を適切に破砕できる状態ではないことを示す。
また、上記では緩衝液の濁度測定を行う場合について述べたが、緩衝液の透過光強度測定によっても精度管理物質に対する破砕処理が適正であったか否かを判定することができる。具体的には、透過光強度の測定開始時から所定の時間(例えば、5分)以内において、透過光強度が閾値未満(例えば、測定開始時の透過光強度の80%未満)となった場合には、破砕処理が適切に行われたと判定される。これは、前処理装置がリンパ節等の組織塊を適切に破砕できる状態であることを示す。
逆に、所定の時間以内で透過光強度が閾値に近似した値(例えば、測定開始時の透過光強度の80%以上)となった場合には、精度管理物質に対する破砕処理が不十分であったと判定される。これは、前処理装置に異常が生じており、リンパ節等の細胞塊を適切に破砕できる状態ではないことを示す。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
精度管理物質に封入される標識物質は、水溶性のピロリン酸に限られるものではなく、例えば、脂溶性の色素を用いてもかまわない。この場合、内部層が油層となり、保護層が水層となる。
上記実施形態においては、光学的情報として濁度又は吸光度を測定しているが、これらに限られず、散乱光強度又は蛍光強度を測定することも可能である。散乱光強度であれば、例えば、破砕(ホモジナイズ)により適当な大きさの粒子を形成するような精度管理物質を使用し、破砕処理後にフローサイトメーターにより測定することが可能である。また。蛍光強度であれば、例えば、蛍光染料を封入した精度管理物質を、被染色物質を含む溶液中で破砕(ホモジナイズ)し、精度管理物質から遊離した蛍光染料の蛍光強度を測定することが可能である。
【0038】
前処理装置本体5全体を省略し、手動で前処理した検体の吸光度を核酸検出装置本体101の検出部62を用いて測定してもよい。このように、核酸検出装置本体101における外部精度管理処理として、前処理した検体の測定と、コントロール溶液の測定の両方を行える構成とする場合には、両測定を切り替える機能を核酸検出装置本体101に具備させるのが好ましい。
【0039】
上記のように前処理部50を省略した場合、前処理の精度管理結果によって、どの程度の前処理(ホモジナイズ)が必要であるかを、ユーザーが認識できるので、精度管理結果が正常であれば、検体の前処理においても、前処理用精度管理物質のホモジナイズと同様にホモジナイズすれば良いことがわかる。
【0040】
前処理装置の前処理部50としては、実施形態として開示したものに限らず、特表2001−518284号公報記載の方法を実行する装置を用いても良い。
また、前処理装置本体5と核酸検出装置本体101は、一体的に構成されている必要はなく、それぞれ別体の装置であってもよい。両装置本体5,101を別体の装置として構成する場合、前処理装置本体5から検出装置101への検体の移動は、手動で行ってもよいし、別途移動用の機構を設けても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、核酸検出装置本体101がデータ処理装置6に接続されていたが、データ処理装置6の機能を核酸検出装置本体101に組み込んでこれらを一体化してもよいし、前処理装置本体5、核酸検出装置本体101及びデータ処理装置6を一体化してもよい。
なお、上記実施形態では、内部精度管理システムを用いて精度管理する方法について説明したが、データ処理装置6をネットワークに接続して外部精度管理を行うことも可能である。
【0042】
また、精度管理物質の破砕後、遠心分離などによって破砕された精度管理物質の破片を沈降させ、上清を精度管理試料として、濁度測定に供してもよい。
【0043】
また、緩衝液と精度管理物質との混合を前処理装置によって自動的に行ってもよい。この場合、前処理装置は検体セット部51にセットされた精度管理物質に試薬を分注する試薬分注用ピペットを備える。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示し、標識物質として水溶性のピロリン酸を封入した精度管理物質(以下、「ピロリン酸カプセル」という)による動作保証(実施例1)、及び標識物質として脂溶性の色素を封入した精度管理物質(以下、「色素ボール」という)による動作保証(実施例2)について説明する。
【0045】
(実施例1)
まず、ピロリン酸カプセルについて説明する。ピロリン酸カプセルAは、図9に示すように、親水性内部層A1、疎水性保護層A2及び最外層A3の三層構造からなるカプセルである。ピロリン酸カプセルAは、ピロリン酸水溶液(内部層A1)39.4重量%、植物油脂(保護層A2)36.0重量%、最外層(A3)20.4重量%(ゼラチン16.0重量%及びグリセリン4.4重量%を含む)、その他(乳化剤等)4.2重量%である。平均質量は177.0mg(CV5.0%)、平均最外層厚みは約270μm(CV18%)、直径(φ)は7mmである。このピロリン酸カプセルAは森下仁丹株式会社に委託して製造された。
このピロリン酸カプセルAを用いて以下の検討を行った。
【0046】
(1)精度管理に用いられるピロリン酸カプセルAの最適個数の検討
50mLの遠沈管に、上記のピロリン酸カプセルAを1個、2個、3個又は4個入れ、ここにホモジナイズ試薬(シスメックス社製:200mM グリシン、143mM トリフルオロ酢酸セシウム、42mM 塩酸(pH3)、NP−40(protein grade)1%を含む)4mLを加えた。刃(ジェネレータシャフトNS−7、φ7mm)を装着したブレンダー(PHYSCOTRON HANDY MICRO HOMOGENIZER NS−350D)を用いて、ホモジナイズ試薬中のピロリン酸カプセルを破砕した(25000rpm、90秒間)。その後、遠心分離を行い、上清液を50〜200μL採取し、この上清にサイトケラチン試薬(シスメックス社製)20μLを添加し、遺伝子増幅検出装置(GD−100:シスメックス社製)で濁度を測定した。なお、サイトケラチン試薬にはマグネシウムイオンが8.9mM含まれている。その結果を図10に示す。
図10から、ピロリン酸カプセルAが3個以下であると濁度を検出できなかったが、ピロリン酸カプセルAを4個以上(ピロリン酸14mM相当)入れれば、濁度を検出できることがわかった。
【0047】
(2)ピロリン酸カプセルAを破砕した溶液の濁度に対するマグネシウムイオンの影響の検討
ピロリン酸カプセルAを破砕した溶液をGD−100で測定した時に得られる濁度が、破砕により溶出されたピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合により生じるピロリン酸マグネシウムの白濁によるものかどうかを検討した。
50mLの遠沈管に4個のピロリン酸カプセルA及びホモジナイズ試薬4mLを入れ、上記ブレンダーで破砕処理を行った(25krpm、90秒間)。4℃、1200rpmで5分間遠心した後、上清液約500μLを測定用チューブに移した。
その後、GD−100の検出セルに8.9mMマグネシウムイオンを添加したホモジナイズ試薬20μL又はマグネシウムイオンを含まないホモジナイズ試薬20μLを加え、そこに上記上清液を2μL分注して濁度及び透過光強度を測定した。濁度の結果を図11に示し、透過光強度の結果を図12に示す。
図11及び図12から、ピロリン酸カプセルAから破砕処理によって漏出したピロリン酸がホモジナイズ試薬中のマグネシウムイオンと結合することによって、ホモジナイズ試薬の濁度が上昇する(透過光強度が減弱した)。これは、ピロリン酸カプセルAを破砕した溶液をGD−100で測定した際に得られる濁度が、破砕により漏出したピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合により生成する白濁によることを示す。
【0048】
(3)ブレンダーの回転数がピロリン酸カプセルAの破砕に与える影響の検討
50mLの遠沈管に、ピロリン酸カプセルAを4個入れ、そこに上記ホモジナイズ試薬を4mL加え、上記ブレンダーで、5、10、15、20又は25krpmで90秒間破砕した。その後は、実施例1(1)と同様の操作を行った。その結果を図13に示す。
図13から、ピロリン酸カプセルAの破砕状態が、ブレンダーの回転数に依存する傾向があり、回転時間90秒間では20krpm以上の回転数でピロリン酸カプセルAが破砕されることが確認された。
ここで、組織塊の破砕状態と比較するため、ブタリンパ節400mgを上記ブレンダーで5、10、15、20又は25krpmで90秒間破砕し、破砕されたリンパ節の細胞から遊離したタンパク質の濃度を測定した。濃度測定は、ホモジネートの上清液の280nmにおける吸光度を測定することによって行われた。その結果を図14に示す。
図14から、90秒間の破砕処理の場合、回転数が15krpmの場合に試薬中のタンパク質濃度が上昇した。また、20krpm以上の回転数では、15krpmの回転数の場合に比べてタンパク質濃度に大きな変化が見られなかった。以上より、少なくとも回転数15krpm(回転時間90秒間)の条件でブタリンパ節の大部分が破砕されたことが示された。
以上より、ピロリン酸カプセルAが破砕されて濁度が検出される回転数は、リンパ節が破砕される回転数よりも大きいことがわかった。即ち、このことはピロリン酸カプセルAがリンパ節よりも厳しい条件で破砕されることを示している。
【0049】
(4)ブレンダーの回転時間がピロリン酸カプセルAの破砕に与える影響の検討
50mLの遠沈管に、ピロリン酸カプセルAを4個入れ、そこに上記ホモジナイズ試薬を4mL加え、上記ブレンダーで、25krpmで、10、30、60又は90秒間破砕した。その後は、実施例1(1)と同様の操作を行った。その結果を図15に示す。
図15から、ピロリン酸カプセルAの破砕状態が、ブレンダーの回転時間に依存する傾向があり、回転数25krpmでは、60秒以上回転させると、ピロリン酸カプセルAからピロリン酸が漏出し、試薬の濁度が上昇することが確認された。
ここで、組織塊の破砕状態と比較するため、ブタリンパ節400mgを上記ブレンダーにより回転数25krpmで、10、30、60又は90秒間破砕し、タンパク質濃度を測定した。測定は、実施例1(3)と同様にして行われた。その結果を図16に示す。
図16から、25krpmの回転数の場合、回転時間が60秒の場合に試薬中のタンパク質濃度が上昇した。また、回転時間90秒の場合では、回転時間60秒の場合に比べてタンパク質濃度に大きな変化が見られなかった。以上より、少なくとも回転時間60秒間(回転数25krpm)の条件でブタリンパ節の大部分が破砕されたことが示された。
これらの結果から、ピロリン酸カプセルAが破砕されて濁度が検出される回転時間は、ブタリンパ節が破砕される回転時間と同程度の回転時間であることがわかった。
以上の測定結果より、精度管理物質であるピロリン酸カプセルAのホモジナイズが正確に行われれば、GD−100を用いた測定においてサイトケラチン試薬を添加したホモジナイズ試薬が白濁することが確認され、またこの試薬が白濁する程度に充分破砕動作を行えば、組織塊であるブタリンパ節は十分に破砕されていることが確認された。これらのことから、このピロリン酸カプセルAを精度管理物質として用いることが可能であることと判断できた。
【0050】
(実施例2)
アルギン酸ナトリウムを原料として用い、標識物質として脂溶性色素を封入したボール(以下、色素ボールという)の定量化を検討した。
色素ボールBは、例えば、アルギン酸ナトリウム500〜600cP(和光純薬工業(株)製199−09961)の1%水溶液を1滴ずつ塩化カルシウムの1%水溶液に落として表面をゲル化させてアルギン酸ボールを作製した。定量シリンジを用い、その内部に0.5%オレイン酸に、濃度が0.5%となるよう色素(和光純薬工業(株)製SudanIII(商品名))を溶解し、これをアルギン酸ボールに5μL封入して色素ボールBを作製した。この色素ボールBは、図17に示すように、疎水性内部層(色素のオレイン酸溶液)B1、親水性保護層(アルギン酸ナトリウム水溶液)B2及び最外層(アルギン酸ナトリウム水溶液のゲル)B3の三層構造からなる。
6本の試験管それぞれにこの色素ボールBを3、5、10、15、20又は25個入れ、全ての試験管に水を加えて2mLとした。そして、各チューブ内の色素ボールBを目視確認によりペッスルで完全に破壊した。遠心により、疎水層と親水層とを分離し、アスピレーターで親水層を除去した。ここに無着色のオレイン酸を添加して、色素溶液200μLを調製した。この色素溶液を5倍希釈(色素溶液20μL+オレイン酸80μL)又は2倍希釈(色素溶液30μL+オレイン酸30μL)して、それぞれ50μLを96穴プレートに分注し、吸光プレートリーダーを用いて465nmの吸光度を測定した。その結果を表1及び図18に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
図18から、色素ボールBの個数依存的に吸光度が上昇することが確認された。
以上の結果より、この色素ボールBを精度管理物質として使用することが可能であることがわかる。例えば、上記のように色素ボールB10個を破砕し、得られた色素溶液を2倍希釈した場合に、吸光度が0.074に近似した値(好ましくは、±20%以内、より好ましくは±10%以内)を示すと、この色素ボールBに対して行った破砕動作は適正であったと判定できる。逆に、吸光度が0.074よりも著しく低い値(例えば、80%未満)を示すと、破砕動作が適正ではなく、色素ボールBを充分に破砕できていなかったと判定される。このような場合は、リンパ節等の組織塊も充分に破砕できないと考えられるため、破砕動作の設定を見直す必要があると考えられる(例えば、ブレンダーの回転数を上げる、回転時間を長くする等)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】核酸検出システムの全体構成図である。
【図2】前処理装置の概略構成図である。
【図3】核酸検出装置の斜視図である。
【図4】核酸検出装置の平面図である。
【図5】増幅立ち上がり時間と濁度との関係を示すグラフである。
【図6】増幅立ち上がり時間と標的核酸コピー数との関係を示す検量線が描かれたグラフである。
【図7】パーソナルコンピュータでの前処理の精度管理処理を示すフローチャートである。
【図8】前処理装置本体及び核酸検出装置本体での前処理の精度管理処理を示すフローチャートである。
【図9】ピロリン酸カプセルを示す断面図である。
【図10】ピロリン酸カプセルの個数と濁度との関係を示すグラフである。
【図11】緩衝液のマグネシウムイオンの有無と濁度との関係を示すグラフである。
【図12】緩衝液のマグネシウムイオンの有無と透過光強度との関係を示すグラフである。
【図13】ブレンダーの回転数と濁度との関係を示すグラフである。
【図14】ブレンダーの回転数とブタリンパ節のタンパク質濃度との関係を示すグラフである。
【図15】ブレンダーの回転時間と濁度との関係を示すグラフである。
【図16】ブレンダーの回転時間とブタリンパ節のタンパク質濃度との関係を示すグラフである。
【図17】色素ボールを示す断面図である。
【図18】色素ボールの希釈度と吸光度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 試料分析システム(核酸検出システム)
5 前処理装置
6 データ処理装置
101 核酸検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年臨床診断の分野において遺伝子検査が急速に普及している。遺伝子検査とは、核酸や染色体などを分析して遺伝性疾患に関連する変異や核型などの有無を臨床目的で検査することである。遺伝子検査の一例として、生体から切除した組織内にがん細胞由来の核酸が存在するかどうかを判定する検査がある。その検査工程は、主に前処理、核酸増幅、及び検出の3工程からなる。
【0003】
前処理工程には様々な方法がある。例として、まず検査目的で生体から切除したリンパ節、腫瘍塊、組織片などの細胞塊に前処理用の試薬(緩衝液)を加える。次に試薬が添加された切除組織を破砕(ホモジナイズ)し、ホモジネートを遠心分離することにより得られる上清を測定用試料とする。
核酸増幅工程では、前記測定用試料をサンプル容器に収容して、そこに酵素やプライマーなどの試薬を加え、核酸増幅反応によって標的核酸を増幅する。
検出工程では、蛍光染色された標的核酸の蛍光測定や増幅に比例して産生される副産物の濁度測定などにより、切除組織中の標的核酸の有無の判定又は濃度の算出を行う。
上述のような遺伝子検査では、各工程における様々な要素が測定結果に影響を与える。このため、遺伝子検査の分野において、各工程の精度及び信頼性の確保のための精度管理の充実が重要となる。
核酸増幅工程及び検出工程に関しては、従来から陽性コントロールや陰性コントロールを用いて精度管理が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前処理工程に関しては、精度管理が行われていないことが現状である。ホモジナイズを手動で行う場合、前処理を行う者の技量によって切除組織のホモジナイズの程度に差が出ることがある。また、ホモジナイズを自動破砕装置などによって自動的に行う場合、ブレンダーの回転数等のホモジナイズ条件の設定のばらつきや継続使用によるブレンダーの摩耗などにより切除組織のホモジナイズの程度に差が生じることがある。これらのことから、ホモジナイズを手動で行う場合も、自動破砕装置などによって行う場合も、ホモジナイズ条件等の前処理の精度管理が必要である。従って、前処理装置の精度を管理するための精度管理方法の開発が望まれている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、遺伝子検査の前処理である破砕処理の信頼性を向上させることにより遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために次の技術的手段を講じた。
破砕装置の動作確認方法に係る本発明は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程、
この物性の変化を検出する工程、及び
前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程、
を含むことを特徴としている。
この破砕装置の動作確認方法によれば、精度管理物質の破砕によって生じる物性変化に基づいて動作の適正を判定するので、簡単に動作確認を行うことができる。これにより、破砕処理の信頼性が高まる。
【0006】
上記方法において、前記物性の変化が、光学的状態の変化であってもよい。この光学的状態の変化は濁度、散乱光強度、吸光度、蛍光強度、透過光強度、発光強度及び発色強度からなる群より選択される少なくとも1つを用いて検出されることが好ましい。
上記方法において、前記緩衝液の物性を変化させる工程において、前記緩衝液の前記標識物質と結合可能な物質(以下、標識結合物質という)と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合することにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させるが好ましい。
上記方法において、前記標識結合物質と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合し、この混合液を加温することが好ましい。
上記方法において、前記標識物質がピロリン酸であり、前記標識結合物質が二価の陽イオンであることが好ましい。
上記方法において、前記精度管理物質が、標識物質が含まれている内部層、及びこの内部層の外側を覆い、且つ当該内部層を保護する保護層を有しており、前記内部層と前記保護層との間に界面が形成されていることが好ましい。
前記標識物質及び前記内部層が親水性であり、保護層が疎水性であることが好ましい。
上記方法において、前記精度管理物質は、前記試料を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されていることが好ましい。
上記方法において、前記精度管理物質の表面に、液体を吸収することにより硬度が低下する層が形成されていることが好ましい。
【0007】
遺伝子検査用前処置装置の精度管理方法に係る本発明は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する遺伝子検査用前処理装置の精度管理を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記前処理装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させる破砕工程、
前記破砕工程を実行した後、前記緩衝液の光学的情報を検出する検出工程、及び
前記光学的情報に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する判定工程、
を含むことを特徴としている。
この精度管理方法によれば、精度管理物質の破砕によって生じる物性変化に基づいて動作の適正を判定するので、簡単に前処理装置の精度管理を行うことができる。これにより、前処理装置の信頼性が高まり、ひいては遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる。
【0008】
上記方法の前記判定工程において、
前記光学的情報が所定の値未満であった場合は、前記破砕動作が適正ではなかったと判定し、
前記光学的情報が所定の値以上であった場合は、前記破砕動作が適正であったと判定してもよい。
【0009】
また、試料分析システムに係る本発明は、破砕処理を施して調製した測定用試料の分析を行う試料分析システムであって、
標識物質を封入した精度管理物質及び緩衝液を含み、且つ破砕処理が施された精度管理試料の光学的情報を測定する測定部と、
前記光学的情報に基づいて、前記破砕処理が適正であったか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴としている。
上記試料分析システムは、前記緩衝液中の前記精度管理物質を破砕する破砕部をさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、破砕装置の動作確認方法、遺伝子検査用前処理装置の精度管理方法及び試料分析システムを提供することができる。これによると、遺伝子検査の前処理である破砕処理の信頼性を向上させることにより遺伝子検査のデータの信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の破砕装置の動作確認方法は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程(破砕工程)、この物性の変化を検出する工程(検出工程)、及び前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程(判定工程)、を含む。
本発明の方法により動作確認を行う破砕装置は、生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕するものである。ここで、細胞を含む試料としては、例えば、ヒト等の動物から採取したリンパ節等の組織が挙げられる。また、緩衝液としては、水を用いることができ、また、pHを調整するために適当な緩衝剤を水に添加してもよい。
【0012】
破砕工程において、標識物質を封入した精度管理物質を緩衝液と混合し、破砕処理により破砕(ホモジナイズ)する。これにより、精度管理物質から標識物質が緩衝液中に遊離する。
標識物質が緩衝液中に遊離することにより、緩衝液の物性が変化する。好ましくは、破砕処理中及び/又は破砕処理後に標識結合物質を緩衝液に添加し、標識物質と結合させることによって物性を変化させる。また、この標識結合物質は予め緩衝液中に含まれていてもよい。
物性の変化としては、例えば、光学的状態の変化、粘度の変化等が挙げられる。光学的状態の変化は、濁度、散乱光強度、吸光度、蛍光強度、透過光強度、発光強度、発色強度などが例示される。粘度の変化であれば、破砕装置を作動させるモータのトルク変化等を測定することにより検出することができる。
【0013】
光学的状態の変化としては、濁度変化、吸光度変化、散乱光強度変化、蛍光強度変化、透過光強度変化、発光強度変化、発色強度変化などが例示される。光学的状態の変化は、標識結合物質と、前記緩衝液中に遊離した前記標識物質とが結合することにより生じることが好ましい。標識物質と標識結合物質との組み合わせとしては、ピロリン酸と二価の陽イオンとの組み合わせ、酵素と基質との組み合わせなどが挙げられる。例えば、標識物質がピロリン酸であり、標識結合物質が二価の陽イオン、例えばマグネシウムイオンである場合、ピロリン酸とマグネシウムイオンとが結合して不溶性のピロリン酸マグネシウムが生成され、緩衝液が白濁する。この緩衝液の濁度変化を光学的状態の変化として検出することができる。ピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合反応の際には、緩衝液を加温することが好ましい。これにより、ピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合反応が促進される。
【0014】
精度管理物質に封入される標識物質としては、精度管理物質が破砕されて緩衝液中に漏出することにより緩衝液の物性を変化させるものであれば特に限定されず、上述のピロリン酸の他にも、蛍光物質、発光物質、発色物質、酵素等を用いることができる。
また、標識物質として酵素を用いる場合、例えば、精度管理物質にグルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)を封入し、標識結合物質としてこの酵素に対応する補酵素(例えば、NAD又はNADP)及びグルコース6リン酸(G6P)を用いることができる。この場合、精度管理物質が破砕されてG6PDHが漏出し、G6PDHが漏出した緩衝液にG6P及び補酵素を添加すると、これらが反応して補酵素が還元される。補酵素が還元されると緩衝液の吸光度が変化するため、この吸光度の変化を光学的状態の変化として検出することができる。
また、精度管理物質にペルオキシダーゼ(POD)を封入し、標識結合物質としてカップラ(例えば、4−アミノアンチピリン等)及びデベロッパ(フェノール系化合物等)などの色原体と、過酸化水素とを用いることができる。この場合、精度管理物質が破砕されてPODが漏出すると、PODが漏出した緩衝液に色原体及び過酸化水素を添加すると、これらが反応して発色物質が生成する。従って、この緩衝液の発色を光学的状態の変化として目視や吸光度測定器等で検出することができる。
【0015】
精度管理物質は、標識物質が含まれている内部層、及びこの内部層の外側を覆い、且つ当該内部層を保護する保護層を有しており、前記内部層と前記保護層との間に界面が形成されていることが好ましい。内部層を、この内部層と混ざらない(界面を形成する)保護層で保護することにより、標識物質を外部へ漏れにくくすることができる。
【0016】
内部層と保護層との間には界面が形成されることから、標識物質が水溶性物質である場合、内部層は水層であり、保護層は油層である。一方、標識物質が脂溶性物質(例えば、色素)である場合、内部層は油層であり、保護層は水層である。
ここで、水層には、水、生理食塩水、緩衝液、培養液等を使用することができ、油層には、各種油脂類、脂肪酸類、糖の脂肪酸エステル類等を使用することができ、好ましくは、動物性油脂、植物性油脂等が用いられる。
【0017】
前記精度管理物質は、細胞塊等の試料を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されていることが好ましい。細胞(組織)の硬さ(弾性係数(ヤング率))は、例えば、脂肪の場合数10kPa、乳腺組織の場合数10kPa、線維組織の場合120〜300kPa、非浸潤性乳管癌の場合150〜350kPa、浸潤性乳管癌の場合300〜750kPa、前立腺の場合40〜80kPa(T.A.Krpiskop et al,Ultrasonic Imaging,1998参照)であり、精度管理物質の強度を対象となる検体に応じて上記又はそれ以上となるように材料を選択することにより、精度管理物質の破砕条件が試料の破砕条件と同等又はより厳しくなるため、精度管理物質の破砕を確認することで破砕装置の動作確認をすることが可能になる。
さらに、精度管理物質の表面が、液体を吸収することにより硬度の低下する層であることが好ましい。精度管理物質の表面にさらに層(最外層)を形成することにより、標識物質が外部により漏れにくくなる。さらに最外層が液体を吸収して徐々に軟らかくなることで、適度な時間に破砕が起こることになる。最外層は、天然高分子、例えば、ゼラチン、寒天、ペクチン、アルギン酸、カラギーナン、カードラン、デンプン、ジェランガム、グルコマンナン又はこれらの混合物、あるいは、必要に応じて、これらにタンパク質、糖蛋白、ムコ多糖、糖、糖アルコール、多価アルコール等を添加した物質から形成される。これらの物質の組成を適宜調整することにより、最外層の硬度や、吸水力等を調整することができる。
【0018】
破砕装置の動作保証は、例えば、以下のように行うことができる。
細胞塊を十分破砕する程度の破砕動作を加えると、内部に封入された標識物質(ピロリン酸)が漏れ出すように設計された精度管理物質に緩衝液を添加し、ブレンダーで所定の回転数、回転時間ホモジナイズする。破砕動作が適正であった場合は、精度管理物質からピロリン酸が緩衝液中に漏出し、マグネシウムイオンが含まれた緩衝液を予め添加しておいた検出セルにピロリン酸が漏出した緩衝液を移し、ピロリン酸がマグネシウムイオンと結合してピロリン酸マグネシウムを生成することにより、緩衝液が白濁する。しかし、破砕動作が不十分であった場合は、ピロリン酸の漏出は実質的になく、緩衝液は白濁しない。従って、濁度を測定し、この測定データから、所定時間内に緩衝液が白濁したか否か(例えば、濁度が0.1以上か否か)により破砕動作が適正であったか否かを判定することができる。
破砕後の緩衝液の濁度が0.1未満であった場合は、破砕動作が不十分であったと判定される。この場合、破砕動作条件(回転時間や回転数)の誤設定やブレンダーの刃の摩耗等が考えられるため、精度管理の結果に基づいて刃の交換や破砕動作条件の設定の確認等を行い、前処理装置を細胞塊等の生体試料のホモジナイズに適切な状態とすることができる。
【0019】
以下、上記破砕装置の動作保証方法を用いた遺伝子検査用前処理装置の内部精度管理について、図面に基づき説明する。
[核酸検出システム]
本実施形態の核酸検出システム(試料分析システム)1は、リンパ節のような生体(人体)からの切除組織を検体とし、この検体に含まれる標的核酸の濃度を測定データとして出力可能なものである。
より具体的には、この核酸検出システム1は、乳癌リンパ節転移の遺伝子診断システムとして用いられ、人体から切除されたリンパ節(検体)に前処理(ホモジナイズ、抽出処理など)を施して、核酸検出のための測定用検体となる可溶化抽出液を作成し、測定用検体中に存在する標的核酸(mRNA)に対応するcDNAをLAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification:US6410278B1号参照)により増幅させ、増幅に伴い発生する溶液の濁りをリアルタイムで測定することで、標的核酸の濃度(単位体積当たりのコピー数)を求めるものである。
【0020】
この核酸検出システム1は、術中迅速診断用に用いられ、具体的には、乳癌などの手術中に使用されるものである。例えば、術中に切除されたリンパ節からシステム1がリンパ節中のがんマーカーの濃度を求め、これを参考に医師が術中にがん細胞のリンパ節転移の有無及び/又は転移の度合いを診断し、リンパ節の郭清範囲を決定する。したがって、システム1の出力には高い信頼性と迅速性が要求される。
【0021】
図1に示すように、核酸検出システム1は、人体などから得られた検体に対して破砕(ホモジナイズ)等の前処理を行って測定用検体(測定用試料)を作成するための前処理装置本体5と、測定用検体に含まれる標的核酸の検出処理を行う核酸検出装置本体101とを有している。
また、核酸検出システム1は、データ処理又はデータ通信などを行うためのデータ処理装置として、パーソナルコンピュータ6を有している。このデータ処理装置6は、核酸検出装置本体101から測定データを受信したり、前処理装置本体5及び核酸検出装置本体101に動作指示信号などを送信したりする制御装置としての機能も有している。すなわち、前処理装置本体5が前処理装置として機能し、核酸検出装置本体101とデータ処理装置6とが核酸検出装置として機能する。
また、データ処理装置6は、ネットワークに接続することも可能であり、図示しないサーバとの間のデータ送受信機能により、核酸検出装置本体101の送信部から送信された測定データ等を、サーバに送信することができる。
【0022】
[前処理装置]
図2に示すように、前処理装置本体5は、主に、検体への前処理を行って測定用検体とする前処理部50を備えている。
前処理部50は、検体が入った容器をセットする検体セット部51と、検体のホモジナイズを行うためのブレンダー(ホモジナイズ部)52と、ホモジナイズ(前処理)された測定用検体を分注するピペット(分注部)53と、ピペット53を核酸検出装置本体101へ移送する移送部(図示省略)とを備えている。
【0023】
ユーザーは、精度管理物質と緩衝液とを混合し、これを検体セット部51にセットする。ユーザーがデータ処理装置6のキーボードやマウス等を用いて測定開始指示を行うと、データ処理装置6から測定開始指示が前処理装置本体5に送信される。
前処理装置本体5は、データ処理装置6から測定開始指示信号を受けると、ブレンダー52によって検体をホモジナイズし、測定用検体を作成する(ホモジナイズ処理)。
そして、測定用検体(以下、単に「サンプル」ともいう)をピペット53によって吸引し、通常の核酸検出の場合には、ピペット53が核酸検出装置本体101まで移動し、核酸検出装置本体101にセットされたサンプル容器22にサンプルを注入する。
精度管理の場合には、前処理用精度管理物質を前処理して作成された測定用精度管理試料を吸引したピペット53が、前記サンプルと同様に、核酸検出装置本体101まで移動し、核酸検出装置本体101にセットされたサンプル容器22に測定用精度管理試料を注入する。
【0024】
[核酸検出装置]
核酸検出装置本体101は、図3及び図4に示すように構成されており、この装置の詳細は、特開2005−98960に記載されている。ここでは、核酸検出装置本体101の構成及び動作等を簡単に説明する。
まず、前処理装置本体5から移動してきたピペットが、サンプル容器台21のサンプル容器セット孔21aにセットされたサンプル容器22に、前処理されたサンプル又は測定用精度管理試料を注入する。
【0025】
試薬容器セット部30の正面左側のプライマ試薬容器セット孔31aおよび酵素試薬容器セット孔31bには、CK19(サイトケラチン19)のプライマ試薬が収容されたプライマ試薬容器32aおよび酵素試薬が収容された酵素試薬容器32bがセットされている。
【0026】
また、チップセット部40の凹部(図示せず)に、それぞれ36本の使い捨て用ピペットチップ41が収納された2つのラック42が嵌め込まれている。さらに、各反応検出ブロック60aの反応部61の2つの検出セルセット孔に、検出セル65の2つのセル部66aがセットされている。
【0027】
この状態で、核酸検出装置本体101の動作がスタートすると、まず、分注機構部10のアーム部11が初期位置からチップセット部40に移動された後、チップセット部40において、分注機構部10のシリンジ部12が下方向に移動される。これにより、シリンジ部12のノズル部の先端がピペットチップ41の上部開口部内に圧入されるので、シリンジ部12のノズル部の先端にピペットチップ41が自動的に装着される。そして、シリンジ部12が上方に移動された後、分注機構部10のアーム部11は、試薬容器セット台31にセットされたCK19のプライマ試薬が収容されたプライマ試薬容器32aの上方に向かってX軸方向に移動される。そして、シリンジ部12が下方向に移動されることにより、シリンジ部12のノズル部に装着されたピペットチップ41の先端が、プライマ試薬容器32a内のCK19のプライマ試薬の液面に挿入される。そして、シリンジ部12のポンプ部によりプライマ試薬容器32a内のCK19のプライマ試薬が吸引される。
【0028】
プライマ試薬の吸引後、シリンジ部12が上方に移動された後、分注機構部10のアーム部11は、最も奥側(装置正面奥側)に位置する反応検出ブロック60aの上方に移動される。この場合、分注機構部10のアーム部11は、奥から2番目〜5番目の他の反応検出ブロック60aの上方を通過しないように移動される。そして、最も奥側の反応検出ブロック60aにおいて、シリンジ部12が下方向に移動されることにより、シリンジ部12のノズル部12aに装着されたピペットチップ41が、検出セル65のセル部66aに挿入される。そして、シリンジ部12のポンプ部を用いて、CK19の2つのプライマ試薬がセル部66aに吐出される(プライマ試薬分注処理)。
【0029】
その後、ピペットチップ41は破棄され、シリンジ部12のノズル部先端に新しい2つのピペットチップ41が自動的に装着されたのち、上記とほぼ同様の動作で、酵素試薬容器32b内の酵素試薬が検出セル65のセル部66aに吐出される(酵素試薬分注処理)。
その後、さらに同様に、サンプル容器22のサンプル(測定用検体)が検出セル65のセル部66aに吐出される(サンプル分注処理)。
これによって、検出セル65のセル部66aには、CK19を検出するための試料が調整される。
【0030】
上記のセル部内へのプライマ試薬、酵素試薬及びサンプルの吐出が行われた後、検出セル65の蓋閉め動作が行われる。
蓋閉め動作が完了した後、反応部61のペルチェモジュールを用いて、検出セル65内の液温を約20℃から約65℃に加温することにより、LAMP法により標的核酸(CK19のmRNA)に対応するcDNA(以下、CK19cDNAとする)を増幅する。
そして、増幅に伴い生成されるピロリン酸マグネシウムによる白濁を検出する。具体的には、濁度検出部62のLED光源部62aから、約1mmの直径を有する光を、反応部61の光照射溝を介して、増幅反応時の検出セル65(測定データ取得部)のセル部66aに照射する。そして、その照射した光をフォトダイオード受光部62bで受光する。
これにより、増幅反応時の検出セル65のセル部66a内の液濁度をリアルタイムで検出(モニタリング)する(検出処理)。
フォトダイオード受光部62b(測定データ取得手段)で測定したCK19の測定データは、核酸検出装置本体101の有する送信部(図示省略)によってデータ処理装置6に送信される。
【0031】
その結果、データ処理装置6において、横軸に時間、縦軸に濁度をとった場合に、図5に示すようなCK19の測定データが得られる。そして、サンプル中のCK19cDNAの増幅産物が急増するまでの時間(増幅立ち上がり時間)を測定する。
そして、図6に示すような、予めCK19のキャリブレータの測定結果から作成された検量線に基づいて、CK19の増幅立ち上がり時間からCK19cDNAの濃度(コピー数/μL)が算出される。ここで、図6に示した検量線は、横軸に増幅立ち上がり時間、縦軸に標的核酸のコピー数[コピー数/μL]をとった曲線であり、増幅立ち上がり時間が短いほど、標的核酸濃度が高いことを示す。
【0032】
算出された標的核酸濃度のデータ(測定データ)は、データ処理装置6の表示装置又はその他の表示装置によって、画面表示される。また、データ処理装置6は、定量的な測定データ(増幅立ち上がり時間、コピー数)から、診断支援のための定性的な判定結果を求め、データ処理装置の表示装置又はその他の表示装置によって画面表示する。
この判定は、例えば、コピー数が250以下の場合、又は図5に示す測定データにおいて、所定時間が経過しても濁度がしきい値に到達しない場合は「ND」、コピー数が250〜5×103の範囲であれば「+」、コピー数が5×103より大きければ「++」として判定する。ここで、「ND」は「転移は検出されない」、「+」は「転移は少ない」、「++」は「転移が認められる」というように定性的ながん細胞のリンパ節転移の度合いを示しており、システム2が、定量的な測定データ(がん細胞の量)から確定診断支援に役立つ定性的な結果を求めて表示することで、医師は、術中に迅速に診断を行い、郭清範囲を決定することができる。
【0033】
[前処理用の精度管理]
前処理装置5の精度管理の際には、前処理装置本体5によって緩衝液中で精度管理物質を前処理して精度管理試料を作成し、核酸検出装置本体101において前記サンプルと同様に濁度を測定する。
精度管理試料は、既知量の標識物質としてのピロリン酸を含む精度管理物質(カプセル)、及び緩衝液を含み、前処理(破砕処理)が施されたものである。破砕された精度管理物質を含む緩衝液をさらに遠心分離し、得られる上清を精度管理試料とすることが好ましい。これにより、破砕された精度管理物質の破片を実質的に含まない精度管理試料を得ることができる。
ここで、精度管理物質は、内部層(水層)、保護層(油層)及び最外層からなる三層構造をしており、内部層に標識物質であるピロリン酸が含まれている。そして、がん細胞などが含まれる組織を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されている。最外層は、液体を吸収することにより硬度が低下するように構成されている。このため、前処理装置本体5によって所定の破砕処理(回転数25krpmで回転時間90秒間の破砕処理)が施されて濁度を測定したときに、所定の基準値(表示値)が得られる。
【0034】
図7〜図8は、前処理の精度管理のためのパーソナルコンピュータ6、前処理装置本体5の処理を示すフローチャートである。
精度管理処理は、定期的に実施される。
精度管理処理の際には、ユーザー(病院のスタッフ等)は上記精度管理物質と緩衝液とを混合し、前処理装置本体5の検体セット部51にセットする。
そして、ユーザーが、前処理装置本体5の精度管理を開始するために、システム1のパーソナルコンピュータ6のキーボード・マウスなどの入力部によって開始指示を入力し、パーソナルコンピュータ6がその指示を受け付けると(ステップS1−1:図7参照)、パーソナルコンピュータ(制御装置)6は、前処理装置本体5に前処理の測定開始指示を送信する(ステップS1−2)。
【0035】
前処理装置本体5は、測定開始指示の信号を受信すると(ステップS1−3:図8参照)、前処理部50によって精度管理物質にホモジナイズ処理(ステップS1−4)を行い、精度管理試料を作成する。
この精度管理試料は、ピペット53により核酸検出装置本体101のサンプル容器22に分注される。このサンプル容器22には予めマグネシウムイオンを含む溶液が分注されており、精度管理試料とこの溶液とが混合されることによってピロリン酸とマグネシウムイオンとが反応し、緩衝液が白濁する。核酸検出装置本体101においてはこの緩衝液の濁度が測定される(ステップS1−5)。そして、核酸検出装置本体101は、測定された濁度の測定データを、パーソナルコンピュータ6側へ送信する(ステップS1−6)。
パーソナルコンピュータ6は、核酸検出装置本体101から濁度の測定データを受信する(ステップS1−7:図7参照)。
【0036】
パーソナルコンピュータ6は、濁度測定データを受信すると、所定の時刻における濁度と、予め設定された閾値とを比較し、精度管理物質に対する破砕処理が適切であったか否かを判定する(ステップS1−8:判定(QC(Quality Control)結果判断))。
例えば、所定の時刻における濁度が所定の値(閾値)に近似した値(好ましくは閾値±20%以内、より好ましくは閾値±10%以内)を示した場合は、精度管理物質に対する破砕処理が適切に行われたと判定される。これは、前処理装置がリンパ節等の組織塊を適切に破砕できる状態であることを示す。
逆に、所定の時刻における濁度よりも著しく低値(例えば、閾値の80%未満)であった場合は、精度管理物質に対する破砕処理が不十分であったと判定される。これは、前処理装置に異常が生じており、リンパ節等の細胞塊を適切に破砕できる状態ではないことを示す。
また、上記では緩衝液の濁度測定を行う場合について述べたが、緩衝液の透過光強度測定によっても精度管理物質に対する破砕処理が適正であったか否かを判定することができる。具体的には、透過光強度の測定開始時から所定の時間(例えば、5分)以内において、透過光強度が閾値未満(例えば、測定開始時の透過光強度の80%未満)となった場合には、破砕処理が適切に行われたと判定される。これは、前処理装置がリンパ節等の組織塊を適切に破砕できる状態であることを示す。
逆に、所定の時間以内で透過光強度が閾値に近似した値(例えば、測定開始時の透過光強度の80%以上)となった場合には、精度管理物質に対する破砕処理が不十分であったと判定される。これは、前処理装置に異常が生じており、リンパ節等の細胞塊を適切に破砕できる状態ではないことを示す。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
精度管理物質に封入される標識物質は、水溶性のピロリン酸に限られるものではなく、例えば、脂溶性の色素を用いてもかまわない。この場合、内部層が油層となり、保護層が水層となる。
上記実施形態においては、光学的情報として濁度又は吸光度を測定しているが、これらに限られず、散乱光強度又は蛍光強度を測定することも可能である。散乱光強度であれば、例えば、破砕(ホモジナイズ)により適当な大きさの粒子を形成するような精度管理物質を使用し、破砕処理後にフローサイトメーターにより測定することが可能である。また。蛍光強度であれば、例えば、蛍光染料を封入した精度管理物質を、被染色物質を含む溶液中で破砕(ホモジナイズ)し、精度管理物質から遊離した蛍光染料の蛍光強度を測定することが可能である。
【0038】
前処理装置本体5全体を省略し、手動で前処理した検体の吸光度を核酸検出装置本体101の検出部62を用いて測定してもよい。このように、核酸検出装置本体101における外部精度管理処理として、前処理した検体の測定と、コントロール溶液の測定の両方を行える構成とする場合には、両測定を切り替える機能を核酸検出装置本体101に具備させるのが好ましい。
【0039】
上記のように前処理部50を省略した場合、前処理の精度管理結果によって、どの程度の前処理(ホモジナイズ)が必要であるかを、ユーザーが認識できるので、精度管理結果が正常であれば、検体の前処理においても、前処理用精度管理物質のホモジナイズと同様にホモジナイズすれば良いことがわかる。
【0040】
前処理装置の前処理部50としては、実施形態として開示したものに限らず、特表2001−518284号公報記載の方法を実行する装置を用いても良い。
また、前処理装置本体5と核酸検出装置本体101は、一体的に構成されている必要はなく、それぞれ別体の装置であってもよい。両装置本体5,101を別体の装置として構成する場合、前処理装置本体5から検出装置101への検体の移動は、手動で行ってもよいし、別途移動用の機構を設けても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、核酸検出装置本体101がデータ処理装置6に接続されていたが、データ処理装置6の機能を核酸検出装置本体101に組み込んでこれらを一体化してもよいし、前処理装置本体5、核酸検出装置本体101及びデータ処理装置6を一体化してもよい。
なお、上記実施形態では、内部精度管理システムを用いて精度管理する方法について説明したが、データ処理装置6をネットワークに接続して外部精度管理を行うことも可能である。
【0042】
また、精度管理物質の破砕後、遠心分離などによって破砕された精度管理物質の破片を沈降させ、上清を精度管理試料として、濁度測定に供してもよい。
【0043】
また、緩衝液と精度管理物質との混合を前処理装置によって自動的に行ってもよい。この場合、前処理装置は検体セット部51にセットされた精度管理物質に試薬を分注する試薬分注用ピペットを備える。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示し、標識物質として水溶性のピロリン酸を封入した精度管理物質(以下、「ピロリン酸カプセル」という)による動作保証(実施例1)、及び標識物質として脂溶性の色素を封入した精度管理物質(以下、「色素ボール」という)による動作保証(実施例2)について説明する。
【0045】
(実施例1)
まず、ピロリン酸カプセルについて説明する。ピロリン酸カプセルAは、図9に示すように、親水性内部層A1、疎水性保護層A2及び最外層A3の三層構造からなるカプセルである。ピロリン酸カプセルAは、ピロリン酸水溶液(内部層A1)39.4重量%、植物油脂(保護層A2)36.0重量%、最外層(A3)20.4重量%(ゼラチン16.0重量%及びグリセリン4.4重量%を含む)、その他(乳化剤等)4.2重量%である。平均質量は177.0mg(CV5.0%)、平均最外層厚みは約270μm(CV18%)、直径(φ)は7mmである。このピロリン酸カプセルAは森下仁丹株式会社に委託して製造された。
このピロリン酸カプセルAを用いて以下の検討を行った。
【0046】
(1)精度管理に用いられるピロリン酸カプセルAの最適個数の検討
50mLの遠沈管に、上記のピロリン酸カプセルAを1個、2個、3個又は4個入れ、ここにホモジナイズ試薬(シスメックス社製:200mM グリシン、143mM トリフルオロ酢酸セシウム、42mM 塩酸(pH3)、NP−40(protein grade)1%を含む)4mLを加えた。刃(ジェネレータシャフトNS−7、φ7mm)を装着したブレンダー(PHYSCOTRON HANDY MICRO HOMOGENIZER NS−350D)を用いて、ホモジナイズ試薬中のピロリン酸カプセルを破砕した(25000rpm、90秒間)。その後、遠心分離を行い、上清液を50〜200μL採取し、この上清にサイトケラチン試薬(シスメックス社製)20μLを添加し、遺伝子増幅検出装置(GD−100:シスメックス社製)で濁度を測定した。なお、サイトケラチン試薬にはマグネシウムイオンが8.9mM含まれている。その結果を図10に示す。
図10から、ピロリン酸カプセルAが3個以下であると濁度を検出できなかったが、ピロリン酸カプセルAを4個以上(ピロリン酸14mM相当)入れれば、濁度を検出できることがわかった。
【0047】
(2)ピロリン酸カプセルAを破砕した溶液の濁度に対するマグネシウムイオンの影響の検討
ピロリン酸カプセルAを破砕した溶液をGD−100で測定した時に得られる濁度が、破砕により溶出されたピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合により生じるピロリン酸マグネシウムの白濁によるものかどうかを検討した。
50mLの遠沈管に4個のピロリン酸カプセルA及びホモジナイズ試薬4mLを入れ、上記ブレンダーで破砕処理を行った(25krpm、90秒間)。4℃、1200rpmで5分間遠心した後、上清液約500μLを測定用チューブに移した。
その後、GD−100の検出セルに8.9mMマグネシウムイオンを添加したホモジナイズ試薬20μL又はマグネシウムイオンを含まないホモジナイズ試薬20μLを加え、そこに上記上清液を2μL分注して濁度及び透過光強度を測定した。濁度の結果を図11に示し、透過光強度の結果を図12に示す。
図11及び図12から、ピロリン酸カプセルAから破砕処理によって漏出したピロリン酸がホモジナイズ試薬中のマグネシウムイオンと結合することによって、ホモジナイズ試薬の濁度が上昇する(透過光強度が減弱した)。これは、ピロリン酸カプセルAを破砕した溶液をGD−100で測定した際に得られる濁度が、破砕により漏出したピロリン酸とマグネシウムイオンとの結合により生成する白濁によることを示す。
【0048】
(3)ブレンダーの回転数がピロリン酸カプセルAの破砕に与える影響の検討
50mLの遠沈管に、ピロリン酸カプセルAを4個入れ、そこに上記ホモジナイズ試薬を4mL加え、上記ブレンダーで、5、10、15、20又は25krpmで90秒間破砕した。その後は、実施例1(1)と同様の操作を行った。その結果を図13に示す。
図13から、ピロリン酸カプセルAの破砕状態が、ブレンダーの回転数に依存する傾向があり、回転時間90秒間では20krpm以上の回転数でピロリン酸カプセルAが破砕されることが確認された。
ここで、組織塊の破砕状態と比較するため、ブタリンパ節400mgを上記ブレンダーで5、10、15、20又は25krpmで90秒間破砕し、破砕されたリンパ節の細胞から遊離したタンパク質の濃度を測定した。濃度測定は、ホモジネートの上清液の280nmにおける吸光度を測定することによって行われた。その結果を図14に示す。
図14から、90秒間の破砕処理の場合、回転数が15krpmの場合に試薬中のタンパク質濃度が上昇した。また、20krpm以上の回転数では、15krpmの回転数の場合に比べてタンパク質濃度に大きな変化が見られなかった。以上より、少なくとも回転数15krpm(回転時間90秒間)の条件でブタリンパ節の大部分が破砕されたことが示された。
以上より、ピロリン酸カプセルAが破砕されて濁度が検出される回転数は、リンパ節が破砕される回転数よりも大きいことがわかった。即ち、このことはピロリン酸カプセルAがリンパ節よりも厳しい条件で破砕されることを示している。
【0049】
(4)ブレンダーの回転時間がピロリン酸カプセルAの破砕に与える影響の検討
50mLの遠沈管に、ピロリン酸カプセルAを4個入れ、そこに上記ホモジナイズ試薬を4mL加え、上記ブレンダーで、25krpmで、10、30、60又は90秒間破砕した。その後は、実施例1(1)と同様の操作を行った。その結果を図15に示す。
図15から、ピロリン酸カプセルAの破砕状態が、ブレンダーの回転時間に依存する傾向があり、回転数25krpmでは、60秒以上回転させると、ピロリン酸カプセルAからピロリン酸が漏出し、試薬の濁度が上昇することが確認された。
ここで、組織塊の破砕状態と比較するため、ブタリンパ節400mgを上記ブレンダーにより回転数25krpmで、10、30、60又は90秒間破砕し、タンパク質濃度を測定した。測定は、実施例1(3)と同様にして行われた。その結果を図16に示す。
図16から、25krpmの回転数の場合、回転時間が60秒の場合に試薬中のタンパク質濃度が上昇した。また、回転時間90秒の場合では、回転時間60秒の場合に比べてタンパク質濃度に大きな変化が見られなかった。以上より、少なくとも回転時間60秒間(回転数25krpm)の条件でブタリンパ節の大部分が破砕されたことが示された。
これらの結果から、ピロリン酸カプセルAが破砕されて濁度が検出される回転時間は、ブタリンパ節が破砕される回転時間と同程度の回転時間であることがわかった。
以上の測定結果より、精度管理物質であるピロリン酸カプセルAのホモジナイズが正確に行われれば、GD−100を用いた測定においてサイトケラチン試薬を添加したホモジナイズ試薬が白濁することが確認され、またこの試薬が白濁する程度に充分破砕動作を行えば、組織塊であるブタリンパ節は十分に破砕されていることが確認された。これらのことから、このピロリン酸カプセルAを精度管理物質として用いることが可能であることと判断できた。
【0050】
(実施例2)
アルギン酸ナトリウムを原料として用い、標識物質として脂溶性色素を封入したボール(以下、色素ボールという)の定量化を検討した。
色素ボールBは、例えば、アルギン酸ナトリウム500〜600cP(和光純薬工業(株)製199−09961)の1%水溶液を1滴ずつ塩化カルシウムの1%水溶液に落として表面をゲル化させてアルギン酸ボールを作製した。定量シリンジを用い、その内部に0.5%オレイン酸に、濃度が0.5%となるよう色素(和光純薬工業(株)製SudanIII(商品名))を溶解し、これをアルギン酸ボールに5μL封入して色素ボールBを作製した。この色素ボールBは、図17に示すように、疎水性内部層(色素のオレイン酸溶液)B1、親水性保護層(アルギン酸ナトリウム水溶液)B2及び最外層(アルギン酸ナトリウム水溶液のゲル)B3の三層構造からなる。
6本の試験管それぞれにこの色素ボールBを3、5、10、15、20又は25個入れ、全ての試験管に水を加えて2mLとした。そして、各チューブ内の色素ボールBを目視確認によりペッスルで完全に破壊した。遠心により、疎水層と親水層とを分離し、アスピレーターで親水層を除去した。ここに無着色のオレイン酸を添加して、色素溶液200μLを調製した。この色素溶液を5倍希釈(色素溶液20μL+オレイン酸80μL)又は2倍希釈(色素溶液30μL+オレイン酸30μL)して、それぞれ50μLを96穴プレートに分注し、吸光プレートリーダーを用いて465nmの吸光度を測定した。その結果を表1及び図18に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
図18から、色素ボールBの個数依存的に吸光度が上昇することが確認された。
以上の結果より、この色素ボールBを精度管理物質として使用することが可能であることがわかる。例えば、上記のように色素ボールB10個を破砕し、得られた色素溶液を2倍希釈した場合に、吸光度が0.074に近似した値(好ましくは、±20%以内、より好ましくは±10%以内)を示すと、この色素ボールBに対して行った破砕動作は適正であったと判定できる。逆に、吸光度が0.074よりも著しく低い値(例えば、80%未満)を示すと、破砕動作が適正ではなく、色素ボールBを充分に破砕できていなかったと判定される。このような場合は、リンパ節等の組織塊も充分に破砕できないと考えられるため、破砕動作の設定を見直す必要があると考えられる(例えば、ブレンダーの回転数を上げる、回転時間を長くする等)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】核酸検出システムの全体構成図である。
【図2】前処理装置の概略構成図である。
【図3】核酸検出装置の斜視図である。
【図4】核酸検出装置の平面図である。
【図5】増幅立ち上がり時間と濁度との関係を示すグラフである。
【図6】増幅立ち上がり時間と標的核酸コピー数との関係を示す検量線が描かれたグラフである。
【図7】パーソナルコンピュータでの前処理の精度管理処理を示すフローチャートである。
【図8】前処理装置本体及び核酸検出装置本体での前処理の精度管理処理を示すフローチャートである。
【図9】ピロリン酸カプセルを示す断面図である。
【図10】ピロリン酸カプセルの個数と濁度との関係を示すグラフである。
【図11】緩衝液のマグネシウムイオンの有無と濁度との関係を示すグラフである。
【図12】緩衝液のマグネシウムイオンの有無と透過光強度との関係を示すグラフである。
【図13】ブレンダーの回転数と濁度との関係を示すグラフである。
【図14】ブレンダーの回転数とブタリンパ節のタンパク質濃度との関係を示すグラフである。
【図15】ブレンダーの回転時間と濁度との関係を示すグラフである。
【図16】ブレンダーの回転時間とブタリンパ節のタンパク質濃度との関係を示すグラフである。
【図17】色素ボールを示す断面図である。
【図18】色素ボールの希釈度と吸光度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 試料分析システム(核酸検出システム)
5 前処理装置
6 データ処理装置
101 核酸検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程、
この物性の変化を検出する工程、及び
前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程、
を含む破砕装置の動作確認方法。
【請求項2】
前記物性の変化が、光学的状態の変化である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学的状態の変化が濁度、散乱光強度、吸光度、蛍光強度、透過光強度、発光強度及び発色強度からなる群より選択される少なくとも1つを用いて検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記緩衝液の物性を変化させる工程において、前記緩衝液の前記標識物質と結合可能な物質と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合することにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記標識物質と結合可能な物質と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合し、この混合液を加温する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標識物質がピロリン酸であり、前記標識物質と結合可能な物質が二価の陽イオンである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記精度管理物質が、標識物質が含まれている内部層、及びこの内部層の外側を覆い、且つ当該内部層を保護する保護層を有しており、前記内部層と前記保護層との間に界面が形成されている、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標識物質及び前記内部層が親水性であり、保護層が疎水性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記精度管理物質は、前記試料を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記精度管理物質の表面に、液体を吸収することにより硬度が低下する層が形成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する遺伝子検査用前処理装置の精度管理を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記前処理装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させる破砕工程、
前記破砕工程を実行した後、前記緩衝液の光学的情報を検出する検出工程、及び
前記光学的情報に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する判定工程、
を含む遺伝子検査用前処置装置の精度管理方法。
【請求項12】
前記判定工程において、
前記光学的情報が所定の値未満であった場合は、前記破砕動作が適正ではなかったと判定し、
前記光学的情報が所定の値以上であった場合は、前記破砕動作が適正であったと判定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
破砕処理を施して調製した測定用試料の分析を行う試料分析システムであって、
標識物質を封入した精度管理物質及び緩衝液を含み、且つ破砕処理が施された精度管理試料の光学的情報を測定する測定部と、
前記光学的情報に基づいて、前記破砕処理が適正であったか否かを判定する判定手段と、
を有する試料分析システム。
【請求項14】
前記緩衝液中の前記精度管理物質を破砕する破砕部をさらに有する、請求項13に記載の試料分析システム。
【請求項1】
生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する破砕装置の動作確認を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記破砕装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の物性を変化させる工程、
この物性の変化を検出する工程、及び
前記検出結果に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する工程、
を含む破砕装置の動作確認方法。
【請求項2】
前記物性の変化が、光学的状態の変化である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学的状態の変化が濁度、散乱光強度、吸光度、蛍光強度、透過光強度、発光強度及び発色強度からなる群より選択される少なくとも1つを用いて検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記緩衝液の物性を変化させる工程において、前記緩衝液の前記標識物質と結合可能な物質と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合することにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記標識物質と結合可能な物質と、遊離した標識物質を含む前記緩衝液とを混合し、この混合液を加温する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標識物質がピロリン酸であり、前記標識物質と結合可能な物質が二価の陽イオンである、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記精度管理物質が、標識物質が含まれている内部層、及びこの内部層の外側を覆い、且つ当該内部層を保護する保護層を有しており、前記内部層と前記保護層との間に界面が形成されている、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標識物質及び前記内部層が親水性であり、保護層が疎水性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記精度管理物質は、前記試料を破砕できる程度の破砕動作又はそれ以上の強さの破砕動作によって破砕されるように強度が設定されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記精度管理物質の表面に、液体を吸収することにより硬度が低下する層が形成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
生体から採取した細胞を含む試料を緩衝液中で破砕する遺伝子検査用前処理装置の精度管理を行う方法であって、
標識物質を封入した精度管理物質を前記前処理装置により前記緩衝液中で破砕し、前記精度管理物質から前記標識物質を前記緩衝液中に遊離させることにより、前記緩衝液の光学的状態を変化させる破砕工程、
前記破砕工程を実行した後、前記緩衝液の光学的情報を検出する検出工程、及び
前記光学的情報に基づいて、前記破砕動作が適正であったか否かを判定する判定工程、
を含む遺伝子検査用前処置装置の精度管理方法。
【請求項12】
前記判定工程において、
前記光学的情報が所定の値未満であった場合は、前記破砕動作が適正ではなかったと判定し、
前記光学的情報が所定の値以上であった場合は、前記破砕動作が適正であったと判定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
破砕処理を施して調製した測定用試料の分析を行う試料分析システムであって、
標識物質を封入した精度管理物質及び緩衝液を含み、且つ破砕処理が施された精度管理試料の光学的情報を測定する測定部と、
前記光学的情報に基づいて、前記破砕処理が適正であったか否かを判定する判定手段と、
を有する試料分析システム。
【請求項14】
前記緩衝液中の前記精度管理物質を破砕する破砕部をさらに有する、請求項13に記載の試料分析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−271505(P2007−271505A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98724(P2006−98724)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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