説明

破風化粧材及びこれを用いた切妻屋根のけらば構造

【課題】切妻屋根の破風板に取り付ける破風化粧材を有効利用して、けらば部分の美観向上を図るとともに、けらば部分の下方への雨水の滴下を防止する。
【解決手段】この破風化粧材50は、けらば部分に袖瓦41・・を葺設してなる切妻屋根の破風板30に取り付けられるものであって、袖瓦41・・の垂れ部44・・と破風板30との間に生じる隙間61・・を下方から見えないように覆い隠すとともに、袖瓦41・・の垂れ部44・・からの雨垂れを受けて軒樋62へ導く樋部60が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切妻屋根の破風板に取り付けられる破風化粧材及び切妻屋根のけらば構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の切妻屋根として、図8及び図9に示すように、けらば部分に袖瓦1・・を葺設した構造のものが広く知られている。各袖瓦1は、その本体部2の屋根傾斜方向に沿った外側端部から垂下した垂れ部3を備えている。そして、袖瓦1・・は、破風板4の上端部分を覆うようにして、軒側の袖瓦1の棟側端部へ棟側の袖瓦1の軒側端部を被せながら、屋根傾斜方向に沿って葺設されている。なお、図8において、5は母屋、6は野地板、7はアスファルトルーフィング、8は瓦桟、9は波型瓦、10は野縁、11は軒裏サイディング材を示している。
【0003】
このような切妻屋根においては、袖瓦1・・の葺設の都合上、袖瓦1・・の垂れ部3・・と破風板4との間に隙間12・・が必然的に生じていて、けらば部分を下方から見上げた場合、これら隙間12・・が略三角形状に見えることになって、けらば部分の美観を損なっていた。また、屋根に降った雨水が袖瓦1・・の垂れ部3・・を伝って流れ落ちて、けらば部分の下方の地面に滴下跡が生じるといった問題もあった。
【0004】
このため、袖瓦の垂れ部と破風板との間に生じる隙間を覆い隠す被覆部材を設けたり、例えば特許文献1にも開示されているように、袖瓦の垂れ部からの雨垂れを受ける樋部材を設けるといった対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−224630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の対策においては、被覆部材や樋部材といった専用の部材を必要とすることから、けらば部分の施工が煩雑になったり、これら専用の部材を設けることによって、破風の意匠性が悪くなるといった不具合があり、改良の余地があった。
【0007】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、切妻屋根の破風板に取り付ける破風化粧材を有効利用して、けらば部分の美観向上を図るとともに、けらば部分の下方への雨水の滴下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の破風化粧材50は、けらば部分に袖瓦41・・を葺設してなる切妻屋根の破風板30に取り付けられるものであって、前記袖瓦41・・の垂れ部44・・と前記破風板30との間に生じる隙間61・・を下方から見えないように覆い隠すとともに、前記袖瓦41・・の垂れ部44・・からの雨垂れを受けて軒樋62へ導く樋部60が形成されていることを特徴とする。
【0009】
具体的に、破風化粧材50は、前記破風板30の外側面に被さるようにして配される基片51と、この基片51から外側方へ張り出して、前記袖瓦41・・の垂れ部44・・の下方に配される上側張出片52と、この上側張出片52の先端部分から上方へ立ち上がった立ち上がり片53と、前記上側張出片52に対して平行になるように、前記基片51から外側方へ張り出した下側張出片54とを備え、前記樋部60は、前記基片51の前記上側張出片52よりも上方へ突出した上端部分51aと、前記上側張出片52と、前記立ち上がり片53とによって構成されている。
【0010】
また、前記上側張出片52が前記下側張出片54の雨よけとなるように、前記下側張出片54の張出量が前記上側張出片52の張出量よりも小とされている。さらに、前記基片51における前記上側張出片52と下側張出片54との間の中間部分に、前記上側張出片52及び下側張出片54に対して平行な複数の補強リブ55・・が形成されている。さらにまた、前記基片51の上端部分51aが、前記袖瓦41・・の垂れ部44・・の内側において前記破風板30の外側面にビス57止めされている。
【0011】
この発明の切妻屋根のけらば構造は、上記の破風化粧材50を、破風板30に取り付けている。そして、前記破風板30に、前記破風化粧材50の樋部60から屋根内部への雨水の侵入を阻止する水返し部35が設けられている。また、前記破風板30に、前記破風化粧材50を係止する係止部38が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、切妻屋根の破風板に取り付ける破風化粧材を有効利用して、この破風化粧材に形成した樋部によって、袖瓦の垂れ部と破風板との間に生じる隙間を覆い隠すとともに、袖瓦の垂れ部からの雨垂れを受けて軒樋へ導くようにしている。すなわち、破風化粧材に、破風の意匠性向上といった本来の機能に加えて、被覆部材及び樋部材としての機能を併せ持たせるようにしている。これにより、専用の部材を別途設けずに済み、けらば部分の施工を煩雑にすることなく、しかも破風の意匠性を高めながら、下方から見上げたときのけらば部分の美観を向上し、けらば部分の下方への雨水の滴下を防止することができる。
【0013】
また、破風化粧材は、その基片から上下の張出片が外側方へ互いに平行に張り出したシンプル且つデザイン性に優れた形状でありながらも、その基片の上端部分、上側張出片及び立ち上がり片を利用して、樋部が効果的に形成されている。さらに、上側張出片が下側張出片の雨よけとなっているので、下側張出片への雨がかりを軽減して、下側張出片周りの雨汚れを抑えることができ、破風化粧材の見栄えを良好に維持することができる。
【0014】
また、基片に形成した補強リブによって、破風化粧材の強度を高めることができ、しかも破風化粧材の外側面に補強リブによる屋根傾斜方向に沿った筋状模様が表れることになって、デザイン性をより一層高めることができる。さらにまた、基片の上端部分を、袖瓦の垂れ部の内側において破風板の外側面にビス止めすることによって、このビス止め部分を、袖瓦の垂れ部及び上側張出片によって覆い隠して外部から見え難くして、見栄えを良好にすることができる。しかも、袖瓦を取り外すだけで、ビス止め部分を露出させて、破風化粧材を取り外すことができることから、破風化粧材の交換作業も簡単に行うことができる。
【0015】
また、破風化粧材を取り付ける破風板において、樋部から屋根内部への雨水の侵入を阻止する水返し部を設けることで、樋部を流れる雨水を屋根内部へ溢れ出させることなく軒樋へ確実に導くことができる。さらに、破風板の係止部に破風化粧材を係止することによって、破風化粧材のビス止め等による取付作業を、破風化粧材を位置決めしながら簡単且つ安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態に係る切妻屋根のけらば構造を示す縦断面図である。
【図2】切妻屋根全体を妻面側から見た図である。
【図3】切妻屋根のけらば部分の軒側端部を示す斜視図である。
【図4】破風カバー材の斜視図である。
【図5】袖瓦の斜視図である。
【図6】破風化粧材の斜視図である。
【図7】他の実施形態に係る切妻屋根のけらば構造を示す縦断面図である。
【図8】従来の切妻屋根のけらば構造を示す縦断面図である。
【図9】切妻屋根全体を妻面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1乃至図3は、この発明の一実施形態に係る切妻屋根のけらば構造を示している。図1において、20は、屋根傾斜方向に適宜間隔をあけて配された母屋であって、この母屋20の上面には、野地板21、防水シートからなるアスファルトルーフィング22、及び瓦桟23が順次敷設され、また母屋20の下面には、野縁25を介して軒裏サイディング材26が取り付けられている。
【0018】
30は、切妻屋根のけらば部分に設けられた破風板である。この破風板30は、母屋20の外端面に取り付けられて屋根傾斜方向に沿って配された例えば木製の破風下地材31と、この破風下地材31を外側から覆うようにして、破風下地材31に取り付けられた例えば金属製の押出成形品からなる破風カバー材32とによって構成されている。破風下地材31の上端部分には、その内側面側においてL型の切欠部31aが形成されており、この切欠部31aに、野地板21の端部が嵌り込んでいる。さらに、破風下地材31の上端面には、アスファルトルーフィング22の端部及びけらば捨て水切材24の端部が覆い被さっている。
【0019】
破風カバー材32は、図1及び図4に示すように、破風下地材31の外側面に被さるように配されて、その上端部分が破風下地材31の上端部分の外側面にビス33止めされた固定片34と、この固定片34の上端付近から外側方へ張り出した水返し部としての水返し片35と、固定片34の破風下地材31よりも下方へ突出した下端付近から内側方へ張り出して、野縁25と軒裏サイディング材26との間から外側方へ突出した突片39に重合された接続片36と、この接続片36よりも下方において固定片34の下端部分から内側方へ張り出して、固定片34と軒裏サイディング材26との間の隙間を塞ぐ底片37とを一体的に備えている。固定片34と底片37との連結部分には、係止部としての下向き開放の係止溝38が形成されている。また、水返し片35の先端部分は下向きに折曲されて、底片37の先端部分は上向きに折曲されている。
【0020】
40は、切妻屋根のけらば部分以外に葺設された波型瓦であり、41は、切妻屋根のけらば部分に葺設された波型瓦仕様の袖瓦であり、これら波型瓦40及び袖瓦41としては、防水性、耐久性及び耐候性に優れたいぶし瓦が用いられている。
【0021】
袖瓦41は、図5に示すように、下方にやや湾曲した略長方形状の本体部42と、この本体部42の屋根傾斜方向に沿った内側端部から内側方に突出した係合部43と、本体部42の屋根傾斜方向に沿った外側端部から垂下した垂れ部44とを一体的に備えている。
【0022】
そして、袖瓦41・・は、図1乃至図3に示すように、破風板30の上端部分を覆うようにして、軒側の袖瓦41の棟側端部(本体部42及び垂れ部44の後端部)へ棟側の袖瓦41の軒側端部(本体部42及び垂れ部44の前端部)を被せながら、屋根傾斜方向に沿って葺設されている。なお、袖瓦41・・の係合部43・・には、波型瓦40・・の屋根傾斜方向に沿った外側端部が被さっている。
【0023】
50は、破風板30に取り付けられた例えば金属製の押出成形品からなる破風化粧材である。この破風化粧材50は、図1及び図6に示すように、破風板30の外側面(破風カバー材32の外側面)に被さるようにして配された基片51と、この基片51から外側方へ張り出して、袖瓦41・・の垂れ部44・・の下方に配された上側張出片52と、この上側張出片52の先端部分から上方へ立ち上がった立ち上がり片53と、上側張出片52に対して平行になるように、基片51から外側方へ張り出した下側張出片54とを一体的に備えている。
【0024】
基片51における上側張出片52と下側張出片54との間の中間部分には、上側張出片52及び下側張出片54に対して平行な複数の補強リブ55・・が形成されている。これにより、破風化粧材50の強度を高め、しかも破風化粧材50の外側面に、羽根状に突出した上下の張出片52、54をアクセントとして、補強リブ55・・による屋根傾斜方向に沿った筋状模様が表れることになって、破風部分に歯切れの良いシャープな印象を与えて、その意匠性を高めている。
【0025】
また、基片51と下側張出片54との連結部分には、上向きの係止突起56が形成されている。この係止突起56を、破風カバー材32の係止溝38に係止させながら、基片51の上側張出片52よりも上方へ突出した上端部分51aを、袖瓦41・・の垂れ部44・・の内側において破風板30の外側面にビス57止めすることによって、破風化粧材50が破風板30に取り付けられている。これにより、破風化粧材50を位置決めしながら簡単且つ安定して取り付けることができ、しかも破風化粧材50のビス57止め部分を、袖瓦41・・の垂れ部44・・及び上側張出片52によって覆い隠して外部から見え難くして、見栄えを良好にしている。
【0026】
そして、この破風化粧材50においては、基片51の上側張出片52よりも上方へ突出した上端部分51aと、上側張出片52と、立ち上がり片53とによって、上向き溝状の樋部60が構成されている。この樋部60は、袖瓦41・・の垂れ部44・・の内側面と破風板30の外側面(破風カバー材32の外側面)との間に生じる隙間61・・を下方から見えないように覆い隠すとともに、袖瓦41・・の垂れ部44・・からの雨垂れを受けるようになっている。
【0027】
また、図3に示すように、樋部60の開放状態の軒側端部が、切妻屋根の軒部分に沿って配された軒樋62のけらば側端部の上方まで延長されていて、樋部60によって集められた雨水が軒樋62へ導かれるようになっている。
【0028】
さらに、上側張出片52が下側張出片54の雨よけとなるように、下側張出片54の張出量が上側張出片52の張出量よりも小(具体的には、下側張出片54の張出量が上側張出片52の張出量の半分以下)となっており、これによって下側張出片54への雨がかりを軽減して、破風化粧材50における下側張出片54周りの雨汚れを抑えるようにしている。
【0029】
上記構成において、切妻屋根に降った雨水が袖瓦41・・の垂れ部44・・を伝って流れ落ちると、この雨垂れを破風化粧材50の樋部60によって受け止めて軒樋62へ導くことができ、けらば部分の下方への雨水の滴下を防止することができる。しかも、破風カバー材32の水返し片35によって、樋部60から屋根内部への雨水の侵入を阻止しているので、雨水を屋根内部へ溢れ出させることなく軒樋62へ確実に導くことができる。
【0030】
さらに、破風化粧材50によって、破風部分の意匠性を高めながら、その樋部60によって、下方から見上げたときに略三角形状に見える隙間61・・を覆い隠しているので、下方から見上げたときのけらば部分の美観を向上することができる。
【0031】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、けらば部分に波型瓦仕様の袖瓦41・・を葺設した切妻屋根の破風板30に破風化粧材50を取り付けていたが、図7に示すように、けらば部分に平瓦仕様の袖瓦41・・を葺設した切妻屋根の破風板30に破風化粧材50を取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0032】
30・・破風板、35・・水返し部、38・・係止部、41・・袖瓦、44・・垂れ部、50・・破風化粧材、51・・基片、51a・・基片の上端部分、52・・上側張出片、53・・立ち上がり片、54・・下側張出片、55・・補強リブ、57・・ビス、60・・樋部、61・・隙間、62・・軒樋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
けらば部分に袖瓦(41)・・を葺設してなる切妻屋根の破風板(30)に取り付けられる破風化粧材(50)であって、前記袖瓦(41)・・の垂れ部(44)・・と前記破風板(30)との間に生じる隙間(61)・・を下方から見えないように覆い隠すとともに、前記袖瓦(41)・・の垂れ部(44)・・からの雨垂れを受けて軒樋(62)へ導く樋部(60)が形成されていることを特徴とする破風化粧材。
【請求項2】
前記破風板(30)の外側面に被さるようにして配される基片(51)と、この基片(51)から外側方へ張り出して、前記袖瓦(41)・・の垂れ部(44)・・の下方に配される上側張出片(52)と、この上側張出片(52)の先端部分から上方へ立ち上がった立ち上がり片(53)と、前記上側張出片(52)に対して平行になるように、前記基片(51)から外側方へ張り出した下側張出片(54)とを備え、前記樋部(60)は、前記基片(51)の前記上側張出片(52)よりも上方へ突出した上端部分(51a)と、前記上側張出片(52)と、前記立ち上がり片(53)とによって構成されている請求項1記載の破風化粧材。
【請求項3】
前記上側張出片(52)が前記下側張出片(54)の雨よけとなるように、前記下側張出片(54)の張出量が前記上側張出片(52)の張出量よりも小とされている請求項2記載の破風化粧材。
【請求項4】
前記基片(51)における前記上側張出片(52)と下側張出片(54)との間の中間部分に、前記上側張出片(52)及び下側張出片(54)に対して平行な複数の補強リブ(55)・・が形成されている請求項2又は3記載の破風化粧材。
【請求項5】
前記基片(51)の上端部分(51a)が、前記袖瓦(41)・・の垂れ部(44)・・の内側において前記破風板(30)の外側面にビス(57)止めされている請求項2乃至4のいずれかに記載の破風化粧材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の破風化粧材(50)を、破風板(30)に取り付けたことを特徴とする切妻屋根のけらば構造。
【請求項7】
前記破風板(30)に、前記破風化粧材(50)の樋部(60)から屋根内部への雨水の侵入を阻止する水返し部(35)が設けられている請求項6記載の切妻屋根のけらば構造。
【請求項8】
前記破風板(30)に、前記破風化粧材(50)を係止する係止部(38)が設けられている請求項6又は7記載の切妻屋根のけらば構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−219956(P2011−219956A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88551(P2010−88551)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)