説明

硝化処理用の排水接触装置

【課題】本発明は嫌気好気ろ床法による排水処理における嫌気槽における排水接触装置に関し、高い組み付け性を維持しつつ剛性の高い構造化し、かつ低コスト化をも実現することを目的とする。
【解決手段】支持棒12はプラスチック製のパイプ状に形成され、上下方向に一体に延びている。接触板14は中央にボス部を有し、接触板14はうこのボス部において支持棒12に挿入され、止着ピン16により弾性固定され、る。上下一体に延設されるプラスチックパイプ状の支持棒嫌気槽の上下の枠体に装着される接触板組立体10を構成する。接触板組立体10は支持棒12をその弾性によって撓めることにより、上下端が嫌気槽の上下の枠体を構成するアングル板40の取り付け孔42に嵌着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は嫌気好気ろ床法による排水処理に関し、より詳細には、嫌気好気ろ床法による排水処理における嫌気槽用として適した排水接触装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
嫌気好気ろ床法による排水処理においては、嫌気性ろ床を多段に形成した嫌気排水接触槽に排水を流通させることで、汚泥中の嫌気菌(微生物)によって硝化(脱窒及び脱リン)を行い、その後、排水をエアレーションなどにより富酸素化した好気排水接触槽に流通させることで酸化処理を行うと共に、酸化処理により生じた汚泥の一部は嫌気排水接触槽に還流させ、流入排水の硝化に寄与せしめるようにしている。
【0003】
嫌気排水接触槽における嫌気性ろ床の構成としては多数の皿状の接触板を排水処理槽の内部において上下には所定間隔で水平方向には一部重なるように千鳥状に配置するものが提案されている(特許文献1)。個々の接触板はスペーサによって上下方向に間隔をおいて支持棒に固定され、このように間隔をおいて接触板を取り付けた支持棒が水平方向に等間隔に設けられる。そして、支持棒の上下両端はアングル材より構成される排水処理槽の枠体に取り付けられる。
【0004】
また、接触板の取り付け作業を簡素化するため、接触板の上下両面に筒状突出部を一体に成形し、この筒状突出部に短尺パイプ状の支持棒を嵌着式に組み立てて行くことによりろ床を構成するようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−340891号公報
【特許文献2】特開2004−121941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造のものは接触板が接触槽内において千鳥配置となるように接触板を支持棒によって枠体に取り付けて行く際の組み付け性が良くなかったしまた構造が複雑でコスト的に不利であった。即ち、特許文献1のものではスペーサによって接触板を支持棒に間隔をおいて取り付けて行く構造であり、組み付け性としても良くなく、また多数のスペーサが必要となっていた。
【0006】
また、特許文献2の構造のものは接触板の中央部に上下に延びる一体の筒状部を一体成形し、この筒状部に短尺パイプ状の支持棒を嵌着してゆく構造のものであり、組み付け工程の簡略化を狙ったものではあったが、組み付け時に少しでも無理な力が加わると、プラスチック成形品のため強度が足りず、折損し易い問題があった。
【0007】
この発明はかかる従来技術の問題点に鑑み、高い組み付け性を維持しつつ剛性の高い構造とし、かつ低コスト化をも実現することを目的とする。また、この発明は接触板としての活性汚泥の保持性を高め、浄化性能も高めるようにすることを目的とするものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の排水接触装置にあっては、ろ床は凹状の上面を形成した接触板により構成される。複数の接触板は上下に延設されるプラスチックパイプ等の一体成形品の支持棒に上下に離間して弾性止着具により保持されて組立体を構成する。即ち、接触板は中央部に筒状部を一体成形し、この筒状部にて接触板が支持棒に挿入され、止着具は接触板の筒状部より支持棒に装着され、弾性にて支持棒に対する接触板の支持が行われる。好ましい止着具の構成としては、止着具は装着時は挿入抵抗をその弾性変形にて吸収し、装着完了後は弾性復帰することで支持棒に対する接触板の係合保持を行うようになっている。支持棒は上下両端に支持枠の係合孔との係合用のアダプタを装着しており、アダプタの突部を支持枠の係合孔に嵌着することで、支持枠に対する接触板組立体の装着が行われる。
【0009】
この発明は排水浄化効率を高める接触板の改良の発明にも係わるものであり、汚泥保持面としての接触板の上面は適宜の粗面に形成されている。接触板の上面を適宜の粗面に形成することにより、硝化処理の際の嫌気菌の滞留効率を高め、嫌気菌の作用効率の極大化を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、排水処理槽の上下方向に一体に延設される支持棒に接触板を挿入式の止着具により止着することで支持棒−接触板の組立体を構成すると共に、この上下の枠体に対する組立体の取り付けは、支持棒をその弾性に抗して撓ませることにより行っており、高い組み付け性を確保しつつ剛性の高い構造化及び低コスト化が実現される。
【0011】
また、活性汚泥お保持面となる接触板の上面を粗面とすることにより嫌気菌の滞留効率を高め、延いては硝化効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は嫌気好気ろ床法による排水処理設備における硝化処理を行う嫌気槽における接触板組立体の一つを示しており、接触板組立体10は支持棒12と、支持棒12に間隔をおいて取り付けられた接触板14とから構成される。支持棒12はポリエチレン等のプラスチック素材よりパイプ状をなし、上下方向に一体に延びている。接触板14もポリエチレン等のプラスチックを素材とした成形品として構成するのが好適である。
【0013】
接触板14は後述のように止着ピン(止着具)16により支持棒12に固定されることにより、支持棒12と複数の間隔をおいた接触板14との組立体が構成される。接触板14は、図2及び図3に示すように、上面が窪んだ皿形状をなし、中央部に一体形成の筒状部(ボス部)14-1を備える。また、接触板14の皿形状における平坦底面14Aから傾斜側壁14Bにかけて半径方向に延びるスリット18が複数、円周方向に等間隔(この実施形態では60度間隔)にて形成される。スリット18は嫌気槽を下から上に流通される被処理排水を下面からも接触板14の上面側に導くためのものである。接触板14の皿形状はその上面での汚泥の保持性を高め、嫌気菌による硝化反応を効率的に行わせる機能達成のためのものであるが、このような接触板14による汚泥の保持性の一層の向上のため接触板14の皿形状の上面は適当な粗面化することができる。
【0014】
支持棒12に対する止着ピン16による接触板14の固定構造について説明する。止着ピン16は図4及び図5にその詳細構造が示されており、止着ピン16は全体がポリエチレンなどのプラスチックの成形品にて構成される。止着ピン16は側面(図4)より見て幅広(長方形断面)の軸部16-1と、軸部16-1の一端の鍔部16-2とを備える。図4のように軸部16-1は側面方向(図4の紙面方向)に貫通開口する抜き孔24をその長手方向に延びるように形成しており、抜き孔24の両側(図4の上下方向)において両側に張出すようにテーパ状の突起部26を一体に形成している。テーパ状の突起部26の後端26-1は直立するように切り立っていて、係止部を形成している。筒状の支持棒12はその長さ方向(上下方向)に間隔をおいてピン孔30を穿設しており、接触板14はそのボス部14-1に形成されるピン孔32が支持棒12における所定の高さ位置のピン孔30に整列する状態をとるように挿入される(図6)。この状態において止着ピン16の圧入(図6の矢印a方向)が行われ、圧入の過程においてテーパ部26がボス部14-1のピン孔32の開口縁に当接するが、その内側が抜き孔24を形成しているため、この部位において止着ピン16が内方に撓み、圧入を継続することによりテーパ部26は支持棒12のピン孔30も通過され、その段階でテーパ部26は自らの弾性により本来の位置に復帰し、この復帰状態を図4に示す。この図4の状態ではテーパ部26の後端直立部(ストッパ部)26-1がピン孔30の縁部に係合するため、止着ピン16は抜け止めとして機能し、接触板14を支持棒12上の所定位置に止着することができる。同様な作業により、支持棒12上に所定間隔にて所望数の接触板14を装着し、この発明の支持棒−接触板組立体10を構成することができる。
【0015】
このようにして組み立てを完了した支持棒−接触板組立体10の嫌気槽に対する取り付けについて以下説明すると、嫌気槽は上下にステンレス製などのアングル40よりなる枠体を備えている。アングル40は枠体の上下端部において格子状に延びており、かつアングル40は間隔をおいて接触板組立体10用の取り付け孔42を穿設している。組立体10は上下端にポリエチレンなどのプラスチック素材の成形品であるキャップ44を被着しており、図1に示すようにキャップ44は底が閉じており、底面より一体の係止突部44-1が突出している。組立体10を構成する支持棒12の長さはキャップ44の装着状態の端面間隔(キャップ44の突端44-1間の間隔)が枠体を構成する上下アングル40間の端面間隔に一致し、換言すれば、キャップ44を上下に装着した状態での上下の係止突部44-1先端間の間隔は上下アングル40間の間隔より幾分長くなる。しかしながら、上下端まで一体に延びる支持棒12は適度な弾性を有しているため、支持棒12を図1の想像線10´にて示すように適度に撓めることにより上下の係止突部44-1を上下のアングル40の対向する取り付け孔42に図1の実線のように装着することができる。そして、この正規の装着状態では支持棒12は装着時の撓みが解消し、図1のように真っ直ぐな状態で上下のアングル40に装着することができる。そして、支持棒12は上下全長で一体であるため撓めることによる装着を可能とする適度な弾性を有しつつ、強度的に十分な剛性を持たせることができる。尚、図1では簡明のため接触板組立体10は一個のみ図示しているが、接触板組立体10は縦横方向に適度な間隔をおいて多数枠体に設置され、特許文献1及び特許文献2と同様に、隣接する接触板が上下に適当な間隔にて重なるように嫌気槽の全体に配置されている。尚、図1において想像線46は隣接する組立体の接触板を部分的に示したものである。
【0016】
この発明によれば、上下一体の支持棒に接触板を挿入し、止着ピンにより接触板を支持棒に取付けることにより接触板組立体を構成しており、支持棒をその弾性により撓めて接触板組立体上下の枠体に装着する構造であり、組み立てが効率的でありかつ適宜な剛性を確保することができ、しかも低コスト化を実現することができる。また、接触板の表面を粗面化することにより硝化菌の保持性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は硝化槽の枠体への取り付け状態にて示すこの発明の接触板組立体の側面図である。
【図2】図2は図1の部分拡大断面図であり、支持棒への接触板の取り付け状態を示す。
【図3】図3は図1のIII−III線に沿って表す矢視図である。
【図4】図4は図2の部分拡大断面図であり、止着ピンによる支持棒への接触板の取り付け状態を示す。
【図5】図5は止着ピンの単品平面図(図4のV方向矢視図)である。
【図6】図6は図4と同様であるが止着ピンの装着前の状態を示す。
【符号の説明】
【0018】
10…接触板組立体
12…支持棒
14…接触板
16…止着ピン
18…スリット
30…ピン孔
40…アングル
44…キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触板を支持棒により支持しつつ排水処理槽の内部に多数分布配置してなる硝化処理用の排水接触装置であって、前記支持棒は排水処理槽の上下方向に一体に延設され、支持棒に接触板を挿通しつつ、支持棒の所定位置に接触板を挿入式の止着具により止着することで、接触板と支持棒との組立体を構成し、各組立体における支持棒の上下両端を排水処理槽の上下の支持枠における取り付け部に支持棒をその弾性により撓ませて装着するようにしたことを特徴とする硝化処理用の排水接触装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、支持棒はパイプ状をなし、接触板は支持棒に挿入されるボス部を備え、前記止着具はボス部より支持棒に装着されることを特徴とする硝化処理用の排水接触装置。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の発明において、止着具は装着時は挿入抵抗をその弾性変形にて吸収し、装着完了後は弾性復帰することで支持棒に対する接触板の係合保持を行うことを特徴とする硝化処理用の排水接触装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、パイプ状の支持棒は上下両端に支持枠の係合孔との係合用のアダプタを装着していることを特徴とする硝化処理用の排水接触装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、接触板はその上面が粗面に形成されていることを特徴とする硝化処理用の排水接触装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−68158(P2008−68158A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246548(P2006−246548)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(506309250)
【出願人】(506309331)
【Fターム(参考)】