硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置
【課題】包括固定化担体による高い硝化処理効率を充分に活用しつつ、ランニングコストや設備投資コストを極力押さえることができ、しかも最初沈殿池を有しない既設の廃水処理場にも容易に導入することができる。
【解決手段】廃水中のアンモニア性窒素を硝化菌により好気性条件下で硝化処理して硝酸性窒素にする硝化装置10において、廃水が流入し、硝化菌を含む活性汚泥18によりアンモニア性窒素を硝化する汚泥用硝化槽12と、汚泥用硝化槽12で硝化処理された硝化水中の固形分を固液分離して上澄み水を得る固液分離槽14と、上澄み水が流入し、硝化菌を包括固定した包括固定化担体30により上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を硝化して最終硝化処理水を得ると共に、包括固定化担体30の担体分離スクリーン36が設けられた担体用硝化槽16と、を有する汚泥・担体硝化ライン58を少なくとも1系列備えた。
【解決手段】廃水中のアンモニア性窒素を硝化菌により好気性条件下で硝化処理して硝酸性窒素にする硝化装置10において、廃水が流入し、硝化菌を含む活性汚泥18によりアンモニア性窒素を硝化する汚泥用硝化槽12と、汚泥用硝化槽12で硝化処理された硝化水中の固形分を固液分離して上澄み水を得る固液分離槽14と、上澄み水が流入し、硝化菌を包括固定した包括固定化担体30により上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を硝化して最終硝化処理水を得ると共に、包括固定化担体30の担体分離スクリーン36が設けられた担体用硝化槽16と、を有する汚泥・担体硝化ライン58を少なくとも1系列備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硝化装置及び廃水処理装置に係り、特に、特にランニングコストや設備コストを抑制しながら高い硝化処理効率を得るための硝化装置を構築する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア性窒素を含む廃水から窒素を除去する廃水処理装置としては、従来から活性汚泥循環変法が知られている。活性汚泥循環変法は、活性汚泥を使用した処理方法で、廃水を嫌気性の脱窒槽を介して好気性の硝化槽に送り、この硝化槽において活性汚泥中の硝化菌によってアンモニア性窒素を硝酸性窒素に硝化(酸化)する。そして、硝化した硝化水の一部を硝化槽から脱窒槽に戻して活性汚泥中の脱窒菌によって硝酸性窒素を窒素ガスに変換する。また、硝化槽で硝化処理された処理水の残部は最終沈殿池を介して放流される。
【0003】
しかし、活性汚泥による硝化処理は、硝化槽内に硝化菌を高濃度に維持できないため、高負荷運転を行うことができず、硝化処理効率が悪いという問題がある。このことから、近年、硝化槽に硝化菌を包括固定化した担体を投入する硝化促進型循環変法が行われている(例えば特許文献1)。この硝化促進型循環変法は、図14に示すように基本的な構成は活性汚泥循環変法と同様であり、包括固定化担体4が投入された硝化槽1で硝化された硝化水が脱窒槽2で脱窒処理され、処理水は最終沈殿池3で固液分離されてから放流される。しかし、包括固定化担体4を投入した硝化槽1には、担体流出を防止する担体分離スクリーン5が設けられるため、廃水の原水が流入する前段において廃水中の夾雑物等の目詰まり物質を除去するための最初沈殿池6が必須となる。この場合、包括固定化担体の硝化性能を上げるためには、担体粒径は小さくし(例えば3mm程度)、比表面積を大きくすることが好ましく、その担体4を硝化槽1から流入しないようにするには、目幅が1.5〜2mm程度の担体分離スクリーン5が必要になる。この場合、担体分離スクリーン5の目開きを大きくして夾雑物が目詰まりしないようにすると、担体の大きさも大きくせざるをえないので、上記の如く硝化処理効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−012383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、包括固定化担体を用いた硝化装置は、活性汚泥を用いた硝化装置に比べて高い硝化処理効率が得られるが、下記に示す問題点がある。
【0006】
(1)包括固定化担体を購入する費用が必要になる。また、担体の添加量が多くなると酸素溶解効率が低下し、曝気量が多くなるデメリットがある。
【0007】
(2)硝化装置の前段には、廃水中の夾雑物等の目詰まり物質を除去するための固液分離槽(例えば最初沈殿池)を必要とするが、簡易的な処理法の場合、最初沈殿池等を有しない場合もある。したがって、包括固定化担体を用いた硝化装置を設置するには最初沈殿池などを設置して夾雑物を除去する必要があり、設備コストが高くなると共に、最初沈殿池のための用地確保が必要になる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、包括固定化担体による高い硝化処理効率を充分に活用しつつ、ランニングコストや設備投資コストを極力押さえることができ、しかも最初沈殿池を有しない既設の廃水処理場にも容易に導入することのできる硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硝化装置は前記目的を達成するために、廃水中のアンモニア性窒素を硝化菌により好気性条件下で硝化処理して硝酸性窒素にする硝化装置において、前記廃水が流入し、前記硝化菌を含む活性汚泥により前記アンモニア性窒素を硝化する汚泥用硝化槽と、前記汚泥用硝化槽で硝化処理された活性汚泥による硝化処理水中の固形分を固液分離して上澄み水を得る固液分離槽と、前記上澄み水が流入し、前記硝化菌を包括固定した包括固定化担体により前記上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を硝化して最終硝化処理水を得ると共に、前記包括固定化担体の担体分離スクリーンが設けられた担体用硝化槽と、を有する汚泥・担体硝化ラインを少なくとも1系列備えたことを特徴とする。
【0010】
なお、硝化菌を包括固定するとは、純粋培養した硝化菌を包括固定する場合と、硝化菌を含む活性汚泥を包括固定する場合との両方を含む。また、特に断らなかったが、廃水は合成廃水ではないので、廃水中には、アンモニア性窒素の他に夾雑物やBOD成分等を含む。
【0011】
本発明者は、廃水中のアンモニア性窒素の硝化を、汚泥用硝化槽での活性汚泥による汚泥硝化と担体用硝化槽での包括固定化担体による担体硝化とで分担することにより、汚泥用硝化槽の滞留時間を短くし且つ担体用硝化槽の容量(キャパシティ)を小さくしても高い硝化処理効率が得られるとの知見を得た。
【0012】
本発明の硝化装置によれば、廃水中のアンモニア性窒素の硝化処理を、汚泥硝化槽において硝化菌を含む活性汚泥で汚泥硝化を行い、固液分離槽で固形物を除去した上澄み水を得る。そして、この上澄み水を、担体用硝化槽において硝化菌を包括固定した包括固定化担体で担体硝化を行うようにした。
【0013】
これにより、廃水の全てを包括固定化担体の硝化槽で硝化する場合に比べて、包括固定化担体の使用量を大幅に低減できると共に曝気量も削減できるので、ランニング設備コストを低減できる。また、担体用硝化槽の容量(キャパシティ)を小さくしてコンパクト化することができると共に、担体用硝化槽の前段に固液分離槽があるので、担体用硝化槽の担体分離スクリーンが廃水中の夾雑物等の目詰まり物質で目詰まりすることもなく、運転管理も容易となる。
【0014】
更によいことには、汚泥用硝化槽と固液分離槽(最終沈殿池)は、従来技術で述べたように既設の廃水処理場に備わっているので、固液分離槽の後段に担体用硝化槽のみを新設すれば、本願発明の硝化装置を構成することができ、既設の廃水処理場に容易に導入でき且つ設備コストも安価になる。
【0015】
本発明の硝化装置においては、前記担体用硝化槽を迂回して前記上澄み水を前記硝化処理水の処理水配管にバイパスさせるバイパス配管と、前記上澄み水及び/又は前記硝化処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する窒素濃度測定計と、前記上澄み水を前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配器と、前記濃度測定計の測定結果に基づいて前記上澄み水分配器を制御し、前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配量を調整する制御手段を備えることが好ましい。
【0016】
なお、上澄み水分配器による担体用硝化槽と前記バイパス配管との分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0017】
このように構成することで、廃水中のアンモニア性窒素濃度の変動、廃水の水温の変動、廃水流量の変動等があっても、担体用硝化槽とバイパス配管とに流す上澄み水の分配量を制御することで、担体用硝化槽における負荷調整(例えば負荷の軽減)を行うことができる。
【0018】
これにより、水質基準に見合った一定の硝化処理水を得ることができるだけでなく、担体用硝化槽を過剰に運転することもなくなるので、より効率的な運転が可能となる。
【0019】
この場合、前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽と前記固液分離槽とから構成される汚泥硝化ラインと、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに前記廃水を分配する廃水分配器と、前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記廃水分配器を制御し、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに分配する廃水の分配量を調整する制御手段と、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとの上澄み水を合流させて前記汚泥・担体硝化ラインの担体用硝化槽に導入する合流配管と、を備えることがより好ましい。
【0020】
なお、廃水分配器による汚泥・担体硝化ラインと汚泥硝化ラインとの分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0021】
これにより、廃水の水質(例えば、アンモニア性窒素濃度、水温、水量)に応じて、汚泥用硝化槽に加わる負荷調整(例えば負荷の軽減)を行うことができるので、水質基準に見合った一定の硝化処理水をより効率的に得ることができる。
【0022】
この場合、前記バイパス配管に代えて、前記担体用硝化槽を設けると更によい。これにより、廃水の水質(例えば、アンモニア性窒素濃度、水温、水量)に応じて、2つの担体用硝化槽によって担体硝化の負荷調整を行うことができる。これにより、バイパス配管の場合よりもフレキシビリティー性が向上する。したがって、汚泥用硝化槽及び担体用硝化槽の両方の負荷調整を行うことができるので、水質基準に見合った一定の硝化処理水をより効率的に得ることができる。
【0023】
本発明の硝化装置においては、前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽及び前記固液分離槽から構成された汚泥硝化ラインと、前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのライン選択を行うライン選択手段と、前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記ライン選択手段を制御して、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのうち使用するラインを選択する制御手段と、を備えることが好ましい。
【0024】
これは、廃水の水質(例えば、アンモニア性窒素濃度、水温、水量)に応じて、汚泥用硝化槽と担体用硝化槽との負荷調整を行うための別態様であり、担体用硝化槽を有する汚泥・担体硝化ラインと担体用硝化槽を有しない汚泥硝化ラインとのうち使用するラインを選択できるようにしたものである。
【0025】
これにより、汚泥用硝化槽及び担体用硝化槽の両方の負荷調整を行うことができるので、水質基準に見合った一定の硝化処理水をより効率的に得ることができる。
【0026】
本発明の硝化装置においては、前記担体用硝化槽において、前記包括固定化担体は、該包括固定化担体が通過しない大きさの複数の通水孔が形成された容器内に流動可能に収納された状態で、前記担体用硝化槽に充填されていることが好ましい。
【0027】
これにより、担体用硝化槽内では槽内を好気性にするためのエア曝気により容器が流動し、更に容器内で包括固定化担体が流動する。この2重の流動により、包括固定化担体と廃水との接触効率が良くなり、担体用硝化槽での硝化処理効率を向上させることができる。この場合、担体用硝化槽の前段に固液分離槽を設け、容器の通水孔を目詰まりさせる目詰まり物質を除去するので、通水孔が小さくても目詰まりしない。これにより、担体粒径が小さく硝化効率の良い包括固定化担体を容器内に収納できる。
【0028】
更には、容器を使用しない場合(包括固定化担体を担体用硝化槽に直接投入する場合)に比べて担体分離スクリーンの目幅を大きくすることができるので、担体分離スクリーンの簡略化、例えば市販の金網やパンチングメタル等を使用することが可能となる。
【0029】
本発明の廃水処理装置は前記目的を達成するために、請求項1〜7の何れか1に記載の硝化装置と、前記硝化装置で硝化処理された硝化処理水中の硝酸性窒素を、脱窒菌により嫌気性条件下で脱窒処理して窒素ガスに変換する脱窒槽と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明は、本発明の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置として構成し、硝化装置で処理された硝化処理水中の硝酸性窒素を脱窒槽で窒素ガスとして除去するようにしたものである。
【0031】
本発明の廃水処理装置においては、前記脱窒槽は、前記硝化装置の前段に設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の一部が循環配管を介して前記脱窒槽に循環されることが好ましい。
【0032】
脱窒槽を硝化装置の前段に配置することで、廃水中の有機物を脱窒菌の栄養源として効率的に使用することができる。
【0033】
本発明の廃水処理装置においては、前記脱窒槽の他に、前記硝化装置の後段に前記脱窒菌を包括固定した包括固定化担体を含む補助脱窒槽が設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の残部に残留する硝酸性窒素を前記補助脱窒槽で窒素ガスに変換することが好ましい。
【0034】
担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水中には硝酸性窒素が少量残留しているので、補助脱窒槽で確実に窒素ガスに変換することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明の硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置によれば、包括固定化担体による高い硝化処理効率を充分に活用しつつ、ランニングコストや設備投資コストを極力押さえることができ、しかも最初沈殿池を有しない既設の廃水処理場にも容易に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の硝化装置の基本構成図
【図2】容器に収納した包括固定化担体を担体用硝化槽に充填した説明図
【図3】本発明の硝化装置の第1の実施の形態を説明する説明図
【図4】本発明の硝化装置の第2の実施の形態を説明する説明図
【図5】本発明の硝化装置の第3の実施の形態を説明する説明図
【図6】本発明の硝化装置の第4の実施の形態を説明する説明図
【図7】基本構成の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図8】第1の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図9】第2の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図10】第3の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図11】第4の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図12】担体用硝化槽の後に脱窒槽を設けた廃水処理装置の説明図
【図13】本発明の硝化装置を用いた実施例のグラフ
【図14】従来の硝化促進型循環変法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面に従って本発明に係る硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0038】
[硝化装置]
(基本構成)
図1は、本発明の硝化装置10の基本構成図である。
【0039】
図1に示すように、本発明の硝化装置10は主として、汚泥用硝化槽12と、固液分離槽14と、担体用硝化槽16と、で構成される。なお、図1では、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16の各槽間における廃水の送液手段は省略している。また、図1では、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16を離れた別個の槽として図示したが、1つの槽を3つの部屋に区画した一体的構造に形成してもよい。また、汚泥用硝化槽12と固液分離槽14とを1つの槽を2つに区画し、担体用硝化槽16のみを別槽とすることもできる。
【0040】
アンモニア性窒素を含有する廃水は、原水配管11を介して先ず汚泥用硝化槽12に流入する。なお、廃水中には、アンモニア性窒素の他に夾雑物やBOD成分等が含まれている。
【0041】
汚泥用硝化槽12の槽内には硝化菌を含む活性汚泥18が浮遊していると共に、槽の底部には曝気管20が配置され、ブロア22から送られたエアが曝気管20から槽内に曝気される。これにより、廃水中のアンモニア性窒素を活性汚泥によって好気性条件下で汚泥硝化する。
【0042】
なお、本発明の硝化装置10を組み込んでアンモニア性窒素廃水の硝化・脱窒を行う廃水処理装置を構築する場合には、後記するように、廃水は脱窒槽を介して汚泥用硝化槽12に流入するように構成することが好ましい。
【0043】
次に、汚泥用硝化槽12において汚泥硝化された汚泥硝化水は、固液分離槽14に送られる。固液分離槽14では、汚泥硝化水中の固形分、特に汚泥用硝化槽12から汚泥硝化水に同伴した活性汚泥や夾雑物等の目詰まり物質を沈降させることにより固液分離して上澄み水を得る。固液分離槽14の底部に沈降した活性汚泥及び夾雑物は汚泥排出配管24を介して一部の汚泥が余剰汚泥として排出されると共に、汚泥返送配管26を介して後記する廃水処理装置の脱窒槽に返送される。
【0044】
次に、固液分離槽14において得られた上澄み水は、担体用硝化槽16に送られる。担体用硝化槽16の槽内には硝化菌を包括固定した多数の包括固定化担体30が充填されていると共に、槽の底部には曝気管32が配置され、ブロア34から送られたエアが曝気管32から槽内に曝気される。また、担体用硝化槽16の硝化処理水の流出部には、包括固定化担体30が最終硝化処理水(以下、単に硝化処理水という)に同伴して流出するのを防止する担体分離スクリーン36が設けられる。これにより、上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を好気性条件下で担体硝化すると共に、包括固定化担体30が硝化処理水に同伴して流出するのを防止する。
【0045】
担体用硝化槽16で担体硝化された硝化処理水は、処理水配管38を介して後記する廃水処理装置の脱窒槽に送られる。
【0046】
図2に示すように、担体用硝化槽16において、包括固定化担体30は、該担体30が通過しない大きさの通水孔31が複数形成された容器33内に流動可能に収納された状態で、担体用硝化槽16に充填されていることが好ましい。容器33の大きさとしては、直径で50〜150mmの範囲が好ましい。容器33は、球体を2分割した2つの半球体33A,33Bで構成され、半球体33A,33B同士が分割部35で嵌合又はネジ溝によって螺合することにより一体化される。容器33の材質は、特に限定されないが、加工のし易さ、曝気管32からの曝気エアによって槽内で流動可能な比重であること等を考慮すると、プラスチック製であることが好ましい。そして、包括固定化担体30が収納された状態での容器33の比重は0.98〜1.02の範囲が好ましい。収納する担体30は流動性を考慮し、水に近い比重の0.98〜1.02としており、この範囲より小さいと液面に浮上し、大きいと槽底に沈降するため、流動させるための曝気動力が必要になる。このため、容器の比重についても同様とした。
【0047】
また、容器33に収納する包括固定化担体30の収納率としては、容器33内容積の30%を上限とすることが好ましい。収納率が30%を超えると、容器33内での包括固定化担体30の活発な流動が阻害されるからである。
【0048】
これにより、担体用硝化槽16内では曝気管32から曝気されたエアによって、容器33が流動し、更に容器33内で包括固定化担体30が流動する。この2重の流動により、包括固定化担体30と廃水との接触効率が良くなり、担体用硝化槽16での硝化処理効率を向上させることができる。
【0049】
この場合、担体用硝化槽16の前段に固液分離槽14を設け、容器33の通水孔31を目詰まりさせる目詰まり物質を除去するようにしているので、通水孔31が目詰まりしない。これにより、包括固定化担体30の担体粒径が2〜5mmの小さいまま、容器33内に収納することができるので、容器33内での高い硝化性能を確保することができる。
【0050】
更には、担体分離スクリーン36の目幅を容器33がない場合に比べて大きくすることができるので、担体分離スクリーン36の簡略化、例えば市販の金網やパンチングメタル等を使用することが可能となる。例えば、容器33の大きさが直径100mmの場合は、この大きさの容器33が流出しなければよく、例えば50〜80mm角の孔を有する金網やパンチングメタルを使用できる。これにより、挟雑物が担体分離スクリーン36に付着し、閉塞することがないので、その運転管理性は図1の包括固定化担体30を担体用硝化槽16に直接充填する際の担体分離スクリーン36よりも格段に容易となる。
【0051】
上記したように、本発明の硝化装置10では、廃水中のアンモニア性窒素の硝化を、汚泥用硝化槽12での汚泥硝化と担体用硝化槽16での担体硝化とで分担することにより、下記に示す多くのメリットを得ることができる。
【0052】
(A)汚泥用硝化槽12の滞留時間を短くし且つ担体用硝化槽16の容量(キャパシティ)を小さくしても高い硝化処理効率を得ることができる。これにより、同じ処理水品質基準で比較した場合、廃水の全てを包括固定化担体の硝化槽で硝化する従来の硝化促進型循環変法に比べて滞留時間がやや長くなるものの、従来の活性汚泥循環変法に比べて滞留時間を約半分にすることができる。しかも、従来の硝化促進型循環変法に比べて包括固定化担体の使用量を大幅に低減できると共に曝気量も削減できる。これにより、ランニングコストを低減できると共に、担体用硝化槽の容量(キャパシティ)を小さくしてコンパクト化することができる。
【0053】
ちなみに、活性汚泥18と包括固定化担体30とを1つの槽に共存させて硝化処理する場合は、包括固定化担体30と活性汚泥18との硝化性能の区分ができない。したがって、設計上、硝化槽に過剰の包括固定化担体を充填せざるを得ないため、多量の包括固定化担体を必要とした。
【0054】
(B)また、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との間に固液分離槽14を設けたことにより、担体用硝化槽16には活性汚泥が存在しないか、存在しても微々たる量である。したがって、上澄み水は清水に性状が近く、通常の活性汚泥に比べて酸素溶解効率が高いので、担体用硝化槽16でのエア曝気量を低減できる。
【0055】
(C)担体用硝化槽16の前段に固液分離槽14があるので、担体用硝化槽16の担体分離スクリーン36が廃水中の夾雑物等の目詰まり物質で目詰まりすることもない。この場合、図2のように包括固定化担体30を容器33に収納すれば、容器33に形成された通水孔31の目詰まりを防止でき且つ担体分離スクリーン36の目幅を大きくできる。
【0056】
(D)汚泥用硝化槽12と固液分離槽14(例えば最終沈殿池)は、従来技術で述べたように既設の廃水処理場に備わっているので、既設の汚泥用硝化槽12と固液分離槽14の後段に担体用硝化槽のみを新設すれば、本願発明の硝化装置を構成することができる。これにより、既設の廃水処理場に簡単に導入できると共に設備コストも安価になる。
【0057】
(E)担体用硝化槽16では、汚泥用硝化槽12で汚泥硝化した残りのアンモニア性窒素を硝化処理するために、従来の活性汚泥循環変法や硝化促進型循環変法に比べて低濃度のアンモニア性窒素を硝化処理することになる。包括固定化担体30は低濃度のアンモニア性窒素に対しても高速で硝化処理が可能であり、硝化処理水の品質を向上できる。
【0058】
(F)本発明の硝化装置10は、活性汚泥循環変法のような既設の廃水処理場に改造をすることなく導入できるだけでなく、オキシデションディッチ法(OD法)やシーケンスバッチリアクター法(SBR法)を備えた既設の廃水処理場であっても改造することなく導入することができる。
【0059】
ここで包括固定化担体30について説明する。
【0060】
本発明における包括固定化担体30は、硝化菌を含む微生物を混合した固定化材料を重合することにより、微生物を固定化材料内に包括固定化したものであり、粒径が1〜5mm程度(通常3mm)のものが使用される。固定化材料は、高分子モノマー、プレポリマー、オリゴマー等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、等を用いることができる。その他、固定化材料のプレポリマーは、以下のものを用いることができる。
【0061】
(モノメタクリレート類)ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート等。
【0062】
(モノアクリレート類)2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
【0063】
(ジメタクリレート類)1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
【0064】
(ジアクリレート類)エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
【0065】
(トリメタクリレート類)トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
【0066】
(トリアクリレート類)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等。
【0067】
(テトラアクリレート類)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
【0068】
(ウレタンアクリレート類)ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
【0069】
(その他)アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド。
【0070】
また、本発明での重合は、過硫酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過硫酸カリウムを用いた重合では、過硫酸カリウムの添加量を0.001〜0.25%がよく、アミン系の重合促進剤を0.001〜0.5%添加するとよい。アミン系の重合促進剤としてはβジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ソーダなどがよい。
【0071】
また、固定化材料内に包括固定化する硝化菌としては、純粋培養したものでもよいが、硝化菌を含有する活性汚泥を包括固定化することがより好ましい。この理由は、固定化材料に溶解している酸素は重合を阻害するが、活性汚泥を包括固定化することで、活性汚泥が酸素を消費し重合反応を順調に進行させるので、強度の強い包括固定化担体30を得ることができる。
【0072】
かかる硝化装置10は、廃水のアンモニア性窒素濃度、水温、水量の少なくとも1つの因子の変動に伴う硝化処理水の水質変動を防止するために、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との負荷調整を行う負荷調整機構を具備することが好ましい。以下、負荷調整機構の各種態様を説明する。
【0073】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第1の実施の形態)
図3は、負荷調整機構を担体用硝化槽16のみに設けた場合である。
【0074】
なお、基本構成は図1と同様なので、図1と異なる構成のみを説明する。
【0075】
図3に示すように、負荷調整機構は、担体用硝化槽16を迂回して上澄み水を処理水配管38にバイパスさせるバイパス配管40と、上澄み水を担体用硝化槽16とバイパス配管40とに分配する上澄み水分配器42と、上澄み水のアンモニア性窒素濃度を測定する第1濃度測定計44Aと、硝化処理水のアンモニア性窒素を測定する第2濃度測定計44Bと、第1及び第2濃度測定計44A,44Bの測定結果に基づいて上澄み水分配器42を駆動して担体用硝化槽16とバイパス配管40への分配比率を制御する制御手段46と、で構成される。
【0076】
制御手段46は、第1濃度測定計44Aで測定される上澄み水のアンモニア性窒素濃度、及び第2濃度測定計44Bで測定される処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、担体用硝化槽16とバイパス配管40とに分配する分配比率を調整して、硝化処理水が目標の品質基準で一定になるように制御する。分配比率は一方が100%で他方が0%の場合も含む。
【0077】
例えば、冬期のように廃水の水温が低くなると、活性汚泥18の硝化活性が低下するので、汚泥用硝化槽12で汚泥硝化された上澄み水中には、アンモニア性窒素の残量が多くなり易い。したがって、第1濃度測定計44Aでの測定結果が高くなるので、制御手段46は、バイパス配管40に流す上澄み水の流量を減らして担体用硝化槽16に流す流量を多くする。逆に、夏期のように廃水の水温が高く活性汚泥18の硝化活性が高い場合には、制御手段46はバイパス配管40に流す上澄み水の流量を多くして担体用硝化槽16に流す流量を減らす。これにより、季節に関係なく硝化処理水の水質を一定に維持することができる。また、夏期には、担体用硝化槽16への処理水量を低減することにより、無駄な曝気量を低減できる。更には、バイパス配管40側の流量を100%とすることで、担体用硝化槽16の運転を停止し、ランニングコストを低減することもできる。
【0078】
なお、図3には、第1濃度測定計44Aと第2濃度測定計44Bとの両方を設けた図で示したが、第1濃度測定計44Aと第2濃度測定計44Bとの何れか一方を設けることもできる。
【0079】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第2の実施の形態)
図4は、負荷調整機構を、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との両方に設けた場合であり、担体用硝化槽16側の負荷調整機構は図3で説明したと同様であるので説明は省略する。
【0080】
図4に示すように、汚泥用硝化槽12側の負荷調整機構は、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16から構成される汚泥・担体硝化ライン58に、汚泥用硝化槽12と固液分離槽14とから構成される汚泥硝化ライン60が並列に配置されることにより構成される。換言すると、汚泥用硝化槽12A,12B及び固液分離槽14A,14Bからなる汚泥硝化ライン60が2列並列に設けられ、その後段にバイパス配管40を備えた担体用硝化槽16が1槽設けられる。そして、廃水が廃水分配器50及び分岐配管52によって2列の汚泥硝化ライン60に分配される。分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0081】
なお図4では、汚泥硝化ライン60を2列設けたが3列以上でもよい。
【0082】
原水配管11には、廃水のアンモニア性窒素濃度を測定する窒素濃度測定計、廃水の水温を計測する水温計、廃水の水量を計測する原水水量計の少なくとも1つが設けられ、測定された測定結果が制御手段56に入力される。なお、窒素濃度測定計、水温計、原水水量計は全て設けることは必須ではなく、変動の大きな廃水ファクターの測定計を設ければよい。ここでは、水温計54を設けた場合で説明する。そして、制御手段56は、水温計54で測定される廃水の水温が低い場合には、廃水分配器50を制御して、2列の汚泥硝化ライン60に廃水を2等分する。
【0083】
これにより、冬期のように廃水の水温が低く活性汚泥18の硝化活性が顕著に低下する場合であっても、汚泥用硝化槽12の1槽当たりの負荷が軽減されるので、硝化処理効率が低下しないようにできる。逆に、夏期のように廃水の水温が高く活性汚泥18の硝化活性が高くなる場合には、1列の汚泥硝化ライン60のみに廃水を流す。
【0084】
そして、汚泥硝化ライン60からの上澄み水が負荷調整機構を具備した担体用硝化槽16で担体硝化される。
【0085】
このように、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との両方に負荷調整機構を設けることにより、廃水のアンモニア性窒素濃度、水温、水量の少なくとも1つの因子の変動に伴う硝化処理水の水質変動を防止することができる。この負荷調整機構は、換言すると、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16とにおける廃水の滞留時間を適切に調整できることを意味し、廃水の水質に応じて汚泥硝化と担体硝化との滞留時間を適切に組み合わせることができる。
【0086】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第3の実施の形態)
図5の負荷調整機構は、図4で説明したバイパス配管40の代わりに2列並列に担体用硝化槽16A,16B設け、上澄み水分配器42で2列の担体用硝化槽16A,16Bに上澄み水を分配できるように構成したものである。分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0087】
これにより、上澄み水中のアンモニア窒素濃度の残量が多い場合には、上澄み水を2列の担体用硝化槽16A,16Bに分配して1槽当たりの負荷を軽減できるので、硝化処理水の水質を一定に維持することができる。
【0088】
また、図5の場合にも、硝化処理水の水質変動を防止するのみならず、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16とにおける廃水の滞留時間をも適切に調整することができる。
【0089】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第4の実施の形態)
図6の負荷調整機構は、図3〜図5で説明したように廃水分配器50や上澄み水分配器42によって、分配比率を変えることで負荷を調整する方式ではなく、担体用硝化槽16を有する汚泥・担体硝化ライン58と、担体用硝化槽16を有しない汚泥硝化ライン60とを並列に配置して、廃水の水質に応じて使用するラインを選択するようにしたものである。
【0090】
即ち、図6に示すように、負荷調整機構は、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16から構成される汚泥・担体硝化ライン58と、汚泥用硝化槽12及び固液分離槽14から構成されて担体用硝化槽16を有しない汚泥硝化ライン60とが並列に配置される。
【0091】
図6(A)は3列の汚泥・担体硝化ライン58と1列の汚泥硝化ライン60との組み合わせ、図6(B)は2列の汚泥・担体硝化ライン58と2列の汚泥硝化ライン60との組み合わせ、図6(C)は1列の汚泥・担体硝化ライン58と3列の汚泥硝化ライン60との組み合わせた場合である。
【0092】
なお、図6では、汚泥・担体硝化ライン58と汚泥硝化ライン60との合計のライン列数を4列にしたが、これに限定されるものではない。
【0093】
図6(A)の場合で詳しく説明すると、原水配管11から4本の分岐管62A,62B,62C,62Dに分岐され、3本の分岐管62A,62B,62Cにはそれぞれ汚泥・担体硝化ライン58が連結される。そして、残りの1本の分岐管62Dに汚泥硝化ライン60が連結される。また、3列の汚泥・担体硝化ライン58と1列の汚泥硝化ライン60とは合流配管64によって1本の処理水配管38に合流される。
【0094】
また、原水配管11の分岐位置にライン選択手段66が設けられると共に、原水配管11には、廃水中のアンモニア性窒素濃度を測定する濃度測定手段、水温を測定する水温計、水量を測定する水量計の少なくとも1つが設けられる。図6では水温計54を設けた場合で示している。
【0095】
そして、制御手段68は、水温計54で測定された廃水の水温に応じてライン選択手段66を制御して、4本の分岐管62A,62B,62C,62Dのうち使用する分岐管を選択する。
【0096】
これにより、廃水中のアンモニア性窒素濃度、水温、水量に応じて、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との負荷調整を行うことができるので、硝化処理水の水質を一定に維持することができる。
【0097】
また、図6の場合にも、硝化処理水の水質変動を防止するのみならず、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16とにおける廃水の滞留時間をも適切に調整することができる。
【0098】
次に、上記説明した各種態様の硝化装置10を組み込んだ廃水処理装置70について説明する。
【0099】
[廃水処理装置]
図7の廃水処理装置70は、図1に示した基本構成の硝化装置10を組み込んだ場合である。
【0100】
図7に示すように、汚泥用硝化槽12の前段に脱窒槽72が設けられると共に、担体用硝化槽16で処理された硝化処理水の一部が循環配管74を介して脱窒槽72に循環される。脱窒槽72内には、脱窒菌を含む活性汚泥76が嫌気性条件下で浮遊しており、硝化処理水と接触することによって、硝化処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスに変換する。また、固液分離槽14で沈降した汚泥は、汚泥返送配管26を介して脱窒槽72に戻される。
【0101】
図8の廃水処理装置70は、図3に示した第1の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものであり、図9の廃水処理装置70は図4に示した第2の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものである。また、図10の廃水処理装置70は図5に示した第3の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものであり、図11の廃水処理装置70は図6(A)に示した第4の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものである。
【0102】
また、図12の廃水処理装置70は、図7の基本構成に加えて、担体用硝化槽16の後段に補助脱窒槽80を設け、補助脱窒槽80内には充填材として脱窒菌を包括固定化した包括固定化担体を充填した場合である。なお、充填材はプラスチック製や砂状などの一般的に使用されているものを使用できる。また、図示しないが、脱窒のための有機源は補助脱窒槽80内にメタノールなどを添加して補うことができる。
【0103】
図12の廃水処理装置70の場合には、固液分離槽14によって活性汚泥18等のSS成分が担体用硝化槽16に同伴されることがないので、担体用硝化槽16の後段に担体処理方式の補助脱窒槽80を設けることが可能となる。ちなみに、SS成分が多い場合には、充填材が閉塞するため、逆洗を頻繁に行う必要があるだけでなく、SS成分が処理水にリークして水質を悪化させる原因になる。
【0104】
これによって、担体用硝化槽16で処理された硝化処理水中に残存する微量の硝酸性窒素を窒素ガスに変換できるので、補助脱窒槽80後の最終処理水の水質向上を図ることができると共に、最終処理水に混ざって活性汚泥等のSS成分が排出されることもない。
【0105】
また、図には示さなかったが、担体用硝化槽16の後段に担体処理方式の補助脱窒槽80を設ける構成であれば、アンモニア性窒素濃度が比較的低い廃水の場合、前段に配置した脱窒槽72や循環配管74を省略することも可能である。
【0106】
[実施例]
(試験A)
本発明の硝化装置を備えた廃水処理装置(実施例)と、従来の活性汚泥循環変法の廃水処理装置(比較例1)と、従来の硝化促進型循環変法の廃水処理装置(比較例2)との3つの装置について、硝化ラインでの滞留時間(HRT)を比較した。
【0107】
比較試験は、実施例、及び比較例1、2ともに、アンモニア性窒素を主とする総窒素濃度(TN)が40mg/Lの同じ水質の廃水について略TN10mg/L平均の処理水を得るために必要なHRTを比較した。
【0108】
*実施例は、図7の廃水処理装置の構成を用いた。
【0109】
*比較例1は、固液分離槽(最初沈殿池)→脱窒槽(活性汚泥)→硝化槽(活性汚泥)→固液分離槽(最終沈殿池)であり、硝化槽で得られた硝化処理水の一部を脱窒槽に循環させた。
【0110】
*比較例2は、比較例1の硝化槽を活性汚泥から包括固定化担体に代えた以外は比較1と同様である。
【0111】
なお、実施例、比較例1、2における脱窒槽における活性汚泥の汚泥濃度(MLSS)及び比較例1の硝化槽における汚泥濃度は2000mg/Lに設定した。また、本発明及び比較例2の硝化槽には、包括固定化担体を10%容積になるように充填した。また、硝化槽でのエア曝気による溶存酸素(DO)は、実施例、1、2とも同じ3mg/Lになるようにすると共に、硝化処理水を脱窒槽に循環させる循環比率は実施例、1、2ともに同じである。
【0112】
〈試験結果〉
*本発明の実施例は、汚泥用硝化槽のHRTが8時間+担体用硝化槽のHRTが1時間の合計9時間のHRTであった。
【0113】
*従来の活性汚泥循環変法による比較例1は、硝化槽のHRTが12〜16時間であった。
【0114】
*従来の硝化促進型循環変法による比較例2は、硝化槽のHRTが6〜8時間であった。また、廃水中の夾雑物が担体分離スクリーン(目幅1.5mm)につまる傾向が見られ、メンテナンスは本発明に比べて煩雑であった。
【0115】
上記結果から分かるように、本発明における硝化ラインのHRTは、廃水の全てを包括固定化担体のみで硝化処理する比較例2に比べて多少長くなるが、廃水の全てを活性汚泥のみで硝化処理する比較例1に比べてHRTを大幅に短縮することができる。
【0116】
また、本発明の実施例は、担体用硝化槽での滞留時間を1時間にすることができるので、硝化槽容量を比較例2に比べて顕著にコンパクト化することができ、その分、包括固定化担体の充填量も大幅に削減できる。また、汚泥用硝化槽と固液分離槽(最終沈殿池)は、既設の廃水処理場に備わっているので、固液分離槽の後段に担体用硝化槽のみを新設すれば、既設の廃水処理場を改造せずに対応できる。
【0117】
(試験B)
活性汚泥は、廃水水温が高い夏期は硝化速度が落ちにくいが、廃水水温が低い冬期は硝化速度が落ち易い。そこで、活性汚泥と包括固定化担体とを用いて、冬期の廃水温度(11〜16℃)を想定した硝化処理効率を比較した。
【0118】
その結果、活性汚泥の硝化速度は平均1mg/g-SS・hであるのに対して、包括固定化担体の硝化速度は平均80mg/L-担体・hであった。
【0119】
そして、上記活性汚泥を硝化槽にMLSSで2000mg/Lになるように充填すると共に、上記包括固定化担体を同じ容量の硝化槽に10%容積になるように充填して、槽1日当たりの硝化速度を調べた。
【0120】
その結果、活性汚泥充填の硝化槽は48mg/L−硝化槽・日であるのに対して、包括固定化担体の硝化槽は192mg/L−硝化槽・日であった。この結果から、廃水水温が低い冬期では包括固定化担体を充填した硝化槽の方が活性汚泥を充填した硝化槽よりも圧倒的に硝化速度が速くなる。
【0121】
このことから、汚泥用硝化槽の後段に硝化促進型循環変法よりも容量(キャパシティ)の小さな小型の担体用硝化槽を配置することで、包括固定化担体の使用量を大幅に削減し、且つ廃水水温が低く活性汚泥の活性が低下し易い冬期対策に特に有効となる。
【0122】
(試験C)
試験Cは、汚泥硝化と担体硝化を組み合わせた本発明の硝化装置が廃水のアンモニア性窒素の変動に対してどの程度対応能力があるかを調べた。試験は、既存の下水処理場(活性汚泥循環変法を使用)の硝化処理水を、試験用ラインを介して担体用硝化槽の試験プラントに引き込み、廃水中のアンモニア性窒素濃度が変動した場合の対応能力を調べた。廃水の温度は11〜21℃であり、担体用硝化槽(包括固定化担体10%充填率)のHRTは1時間に設定した。その結果を図13に示す。
【0123】
図13から分かるように、下水処理場からの硝化処理水中のアンモニア性窒素は約0〜約19mg/Lまで変動した。しかし、図13(A)に示すように、汚泥用硝化槽→固液分離槽→担体用硝化槽の構成で処理した硝化処理水のアンモニア性窒素濃度は、処理水基準である5mg/L以下に略することができた。この結果は、廃水原水中のアンモニア性窒素濃度が0〜20mg/Lまで変動しても、硝化処理率は約70%と安定していることを示す。このことは、汚泥用硝化槽内の活性汚泥中の硝化菌の活性が低下する冬期であっても、汚泥用硝化槽の後段に容量の小さな担体用硝化槽を配置することで、処理水基準5mg/L以下を達成できることを示している。
【0124】
一方、図13(B)は、原水のアンモニア濃度(NH4−N濃度)に応じて担体用硝化槽への流入割合を変化させた場合の結果である。具体的には、原水中のNH4−N濃度が10mg/L以下の場合において、バイパス配管への流入を開始し、原水中のNH4−N濃度が低いほど担体用硝化槽への流入割合を少なくして処理した。図13(B)から分かるように、バイパス配管への流入を併用しても、処理水のNH4−N濃度を5mg/L以下にすることができた。この場合は当然ながら、担体用硝化槽の処理量が少ないので、曝気動力等のエネルギーを節約できた。
【符号の説明】
【0125】
10…硝化装置、12…汚泥用硝化槽、14…固液分離槽、16…担体用硝化槽、18…活性汚泥、20…曝気管、22…ブロア、24…汚泥排出配管、26…汚泥返送配管、30…包括固定化担体、31…通水孔、32…曝気管、33…容器、34…ブロア、35…分割部、36…担体分離スクリーン、38…処理水配管、40…バイパス配管、42…上澄み水分配器、44A…第1濃度測定計、44B…第2濃度測定計、46…制御手段、50…廃水分配器、52…分岐配管、54…水温計、56…制御手段、58…汚泥・担体硝化ライン、60…汚泥硝化ライン、62A,62B,62C,62D…分岐管、64…合流管、66…ライン選択手段、68…制御手段、70…廃水処理装置、72…脱窒槽(活性汚泥)、74…循環配管、76…活性汚泥、80…脱窒槽(包括固定化担体)
【技術分野】
【0001】
本発明は硝化装置及び廃水処理装置に係り、特に、特にランニングコストや設備コストを抑制しながら高い硝化処理効率を得るための硝化装置を構築する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア性窒素を含む廃水から窒素を除去する廃水処理装置としては、従来から活性汚泥循環変法が知られている。活性汚泥循環変法は、活性汚泥を使用した処理方法で、廃水を嫌気性の脱窒槽を介して好気性の硝化槽に送り、この硝化槽において活性汚泥中の硝化菌によってアンモニア性窒素を硝酸性窒素に硝化(酸化)する。そして、硝化した硝化水の一部を硝化槽から脱窒槽に戻して活性汚泥中の脱窒菌によって硝酸性窒素を窒素ガスに変換する。また、硝化槽で硝化処理された処理水の残部は最終沈殿池を介して放流される。
【0003】
しかし、活性汚泥による硝化処理は、硝化槽内に硝化菌を高濃度に維持できないため、高負荷運転を行うことができず、硝化処理効率が悪いという問題がある。このことから、近年、硝化槽に硝化菌を包括固定化した担体を投入する硝化促進型循環変法が行われている(例えば特許文献1)。この硝化促進型循環変法は、図14に示すように基本的な構成は活性汚泥循環変法と同様であり、包括固定化担体4が投入された硝化槽1で硝化された硝化水が脱窒槽2で脱窒処理され、処理水は最終沈殿池3で固液分離されてから放流される。しかし、包括固定化担体4を投入した硝化槽1には、担体流出を防止する担体分離スクリーン5が設けられるため、廃水の原水が流入する前段において廃水中の夾雑物等の目詰まり物質を除去するための最初沈殿池6が必須となる。この場合、包括固定化担体の硝化性能を上げるためには、担体粒径は小さくし(例えば3mm程度)、比表面積を大きくすることが好ましく、その担体4を硝化槽1から流入しないようにするには、目幅が1.5〜2mm程度の担体分離スクリーン5が必要になる。この場合、担体分離スクリーン5の目開きを大きくして夾雑物が目詰まりしないようにすると、担体の大きさも大きくせざるをえないので、上記の如く硝化処理効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−012383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、包括固定化担体を用いた硝化装置は、活性汚泥を用いた硝化装置に比べて高い硝化処理効率が得られるが、下記に示す問題点がある。
【0006】
(1)包括固定化担体を購入する費用が必要になる。また、担体の添加量が多くなると酸素溶解効率が低下し、曝気量が多くなるデメリットがある。
【0007】
(2)硝化装置の前段には、廃水中の夾雑物等の目詰まり物質を除去するための固液分離槽(例えば最初沈殿池)を必要とするが、簡易的な処理法の場合、最初沈殿池等を有しない場合もある。したがって、包括固定化担体を用いた硝化装置を設置するには最初沈殿池などを設置して夾雑物を除去する必要があり、設備コストが高くなると共に、最初沈殿池のための用地確保が必要になる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、包括固定化担体による高い硝化処理効率を充分に活用しつつ、ランニングコストや設備投資コストを極力押さえることができ、しかも最初沈殿池を有しない既設の廃水処理場にも容易に導入することのできる硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硝化装置は前記目的を達成するために、廃水中のアンモニア性窒素を硝化菌により好気性条件下で硝化処理して硝酸性窒素にする硝化装置において、前記廃水が流入し、前記硝化菌を含む活性汚泥により前記アンモニア性窒素を硝化する汚泥用硝化槽と、前記汚泥用硝化槽で硝化処理された活性汚泥による硝化処理水中の固形分を固液分離して上澄み水を得る固液分離槽と、前記上澄み水が流入し、前記硝化菌を包括固定した包括固定化担体により前記上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を硝化して最終硝化処理水を得ると共に、前記包括固定化担体の担体分離スクリーンが設けられた担体用硝化槽と、を有する汚泥・担体硝化ラインを少なくとも1系列備えたことを特徴とする。
【0010】
なお、硝化菌を包括固定するとは、純粋培養した硝化菌を包括固定する場合と、硝化菌を含む活性汚泥を包括固定する場合との両方を含む。また、特に断らなかったが、廃水は合成廃水ではないので、廃水中には、アンモニア性窒素の他に夾雑物やBOD成分等を含む。
【0011】
本発明者は、廃水中のアンモニア性窒素の硝化を、汚泥用硝化槽での活性汚泥による汚泥硝化と担体用硝化槽での包括固定化担体による担体硝化とで分担することにより、汚泥用硝化槽の滞留時間を短くし且つ担体用硝化槽の容量(キャパシティ)を小さくしても高い硝化処理効率が得られるとの知見を得た。
【0012】
本発明の硝化装置によれば、廃水中のアンモニア性窒素の硝化処理を、汚泥硝化槽において硝化菌を含む活性汚泥で汚泥硝化を行い、固液分離槽で固形物を除去した上澄み水を得る。そして、この上澄み水を、担体用硝化槽において硝化菌を包括固定した包括固定化担体で担体硝化を行うようにした。
【0013】
これにより、廃水の全てを包括固定化担体の硝化槽で硝化する場合に比べて、包括固定化担体の使用量を大幅に低減できると共に曝気量も削減できるので、ランニング設備コストを低減できる。また、担体用硝化槽の容量(キャパシティ)を小さくしてコンパクト化することができると共に、担体用硝化槽の前段に固液分離槽があるので、担体用硝化槽の担体分離スクリーンが廃水中の夾雑物等の目詰まり物質で目詰まりすることもなく、運転管理も容易となる。
【0014】
更によいことには、汚泥用硝化槽と固液分離槽(最終沈殿池)は、従来技術で述べたように既設の廃水処理場に備わっているので、固液分離槽の後段に担体用硝化槽のみを新設すれば、本願発明の硝化装置を構成することができ、既設の廃水処理場に容易に導入でき且つ設備コストも安価になる。
【0015】
本発明の硝化装置においては、前記担体用硝化槽を迂回して前記上澄み水を前記硝化処理水の処理水配管にバイパスさせるバイパス配管と、前記上澄み水及び/又は前記硝化処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する窒素濃度測定計と、前記上澄み水を前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配器と、前記濃度測定計の測定結果に基づいて前記上澄み水分配器を制御し、前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配量を調整する制御手段を備えることが好ましい。
【0016】
なお、上澄み水分配器による担体用硝化槽と前記バイパス配管との分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0017】
このように構成することで、廃水中のアンモニア性窒素濃度の変動、廃水の水温の変動、廃水流量の変動等があっても、担体用硝化槽とバイパス配管とに流す上澄み水の分配量を制御することで、担体用硝化槽における負荷調整(例えば負荷の軽減)を行うことができる。
【0018】
これにより、水質基準に見合った一定の硝化処理水を得ることができるだけでなく、担体用硝化槽を過剰に運転することもなくなるので、より効率的な運転が可能となる。
【0019】
この場合、前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽と前記固液分離槽とから構成される汚泥硝化ラインと、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに前記廃水を分配する廃水分配器と、前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記廃水分配器を制御し、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに分配する廃水の分配量を調整する制御手段と、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとの上澄み水を合流させて前記汚泥・担体硝化ラインの担体用硝化槽に導入する合流配管と、を備えることがより好ましい。
【0020】
なお、廃水分配器による汚泥・担体硝化ラインと汚泥硝化ラインとの分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0021】
これにより、廃水の水質(例えば、アンモニア性窒素濃度、水温、水量)に応じて、汚泥用硝化槽に加わる負荷調整(例えば負荷の軽減)を行うことができるので、水質基準に見合った一定の硝化処理水をより効率的に得ることができる。
【0022】
この場合、前記バイパス配管に代えて、前記担体用硝化槽を設けると更によい。これにより、廃水の水質(例えば、アンモニア性窒素濃度、水温、水量)に応じて、2つの担体用硝化槽によって担体硝化の負荷調整を行うことができる。これにより、バイパス配管の場合よりもフレキシビリティー性が向上する。したがって、汚泥用硝化槽及び担体用硝化槽の両方の負荷調整を行うことができるので、水質基準に見合った一定の硝化処理水をより効率的に得ることができる。
【0023】
本発明の硝化装置においては、前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽及び前記固液分離槽から構成された汚泥硝化ラインと、前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのライン選択を行うライン選択手段と、前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記ライン選択手段を制御して、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのうち使用するラインを選択する制御手段と、を備えることが好ましい。
【0024】
これは、廃水の水質(例えば、アンモニア性窒素濃度、水温、水量)に応じて、汚泥用硝化槽と担体用硝化槽との負荷調整を行うための別態様であり、担体用硝化槽を有する汚泥・担体硝化ラインと担体用硝化槽を有しない汚泥硝化ラインとのうち使用するラインを選択できるようにしたものである。
【0025】
これにより、汚泥用硝化槽及び担体用硝化槽の両方の負荷調整を行うことができるので、水質基準に見合った一定の硝化処理水をより効率的に得ることができる。
【0026】
本発明の硝化装置においては、前記担体用硝化槽において、前記包括固定化担体は、該包括固定化担体が通過しない大きさの複数の通水孔が形成された容器内に流動可能に収納された状態で、前記担体用硝化槽に充填されていることが好ましい。
【0027】
これにより、担体用硝化槽内では槽内を好気性にするためのエア曝気により容器が流動し、更に容器内で包括固定化担体が流動する。この2重の流動により、包括固定化担体と廃水との接触効率が良くなり、担体用硝化槽での硝化処理効率を向上させることができる。この場合、担体用硝化槽の前段に固液分離槽を設け、容器の通水孔を目詰まりさせる目詰まり物質を除去するので、通水孔が小さくても目詰まりしない。これにより、担体粒径が小さく硝化効率の良い包括固定化担体を容器内に収納できる。
【0028】
更には、容器を使用しない場合(包括固定化担体を担体用硝化槽に直接投入する場合)に比べて担体分離スクリーンの目幅を大きくすることができるので、担体分離スクリーンの簡略化、例えば市販の金網やパンチングメタル等を使用することが可能となる。
【0029】
本発明の廃水処理装置は前記目的を達成するために、請求項1〜7の何れか1に記載の硝化装置と、前記硝化装置で硝化処理された硝化処理水中の硝酸性窒素を、脱窒菌により嫌気性条件下で脱窒処理して窒素ガスに変換する脱窒槽と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明は、本発明の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置として構成し、硝化装置で処理された硝化処理水中の硝酸性窒素を脱窒槽で窒素ガスとして除去するようにしたものである。
【0031】
本発明の廃水処理装置においては、前記脱窒槽は、前記硝化装置の前段に設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の一部が循環配管を介して前記脱窒槽に循環されることが好ましい。
【0032】
脱窒槽を硝化装置の前段に配置することで、廃水中の有機物を脱窒菌の栄養源として効率的に使用することができる。
【0033】
本発明の廃水処理装置においては、前記脱窒槽の他に、前記硝化装置の後段に前記脱窒菌を包括固定した包括固定化担体を含む補助脱窒槽が設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の残部に残留する硝酸性窒素を前記補助脱窒槽で窒素ガスに変換することが好ましい。
【0034】
担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水中には硝酸性窒素が少量残留しているので、補助脱窒槽で確実に窒素ガスに変換することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明の硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置によれば、包括固定化担体による高い硝化処理効率を充分に活用しつつ、ランニングコストや設備投資コストを極力押さえることができ、しかも最初沈殿池を有しない既設の廃水処理場にも容易に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の硝化装置の基本構成図
【図2】容器に収納した包括固定化担体を担体用硝化槽に充填した説明図
【図3】本発明の硝化装置の第1の実施の形態を説明する説明図
【図4】本発明の硝化装置の第2の実施の形態を説明する説明図
【図5】本発明の硝化装置の第3の実施の形態を説明する説明図
【図6】本発明の硝化装置の第4の実施の形態を説明する説明図
【図7】基本構成の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図8】第1の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図9】第2の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図10】第3の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図11】第4の実施の形態の硝化装置を組み込んだ廃水処理装置の説明図
【図12】担体用硝化槽の後に脱窒槽を設けた廃水処理装置の説明図
【図13】本発明の硝化装置を用いた実施例のグラフ
【図14】従来の硝化促進型循環変法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面に従って本発明に係る硝化装置及びそれを備えた廃水処理装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0038】
[硝化装置]
(基本構成)
図1は、本発明の硝化装置10の基本構成図である。
【0039】
図1に示すように、本発明の硝化装置10は主として、汚泥用硝化槽12と、固液分離槽14と、担体用硝化槽16と、で構成される。なお、図1では、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16の各槽間における廃水の送液手段は省略している。また、図1では、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16を離れた別個の槽として図示したが、1つの槽を3つの部屋に区画した一体的構造に形成してもよい。また、汚泥用硝化槽12と固液分離槽14とを1つの槽を2つに区画し、担体用硝化槽16のみを別槽とすることもできる。
【0040】
アンモニア性窒素を含有する廃水は、原水配管11を介して先ず汚泥用硝化槽12に流入する。なお、廃水中には、アンモニア性窒素の他に夾雑物やBOD成分等が含まれている。
【0041】
汚泥用硝化槽12の槽内には硝化菌を含む活性汚泥18が浮遊していると共に、槽の底部には曝気管20が配置され、ブロア22から送られたエアが曝気管20から槽内に曝気される。これにより、廃水中のアンモニア性窒素を活性汚泥によって好気性条件下で汚泥硝化する。
【0042】
なお、本発明の硝化装置10を組み込んでアンモニア性窒素廃水の硝化・脱窒を行う廃水処理装置を構築する場合には、後記するように、廃水は脱窒槽を介して汚泥用硝化槽12に流入するように構成することが好ましい。
【0043】
次に、汚泥用硝化槽12において汚泥硝化された汚泥硝化水は、固液分離槽14に送られる。固液分離槽14では、汚泥硝化水中の固形分、特に汚泥用硝化槽12から汚泥硝化水に同伴した活性汚泥や夾雑物等の目詰まり物質を沈降させることにより固液分離して上澄み水を得る。固液分離槽14の底部に沈降した活性汚泥及び夾雑物は汚泥排出配管24を介して一部の汚泥が余剰汚泥として排出されると共に、汚泥返送配管26を介して後記する廃水処理装置の脱窒槽に返送される。
【0044】
次に、固液分離槽14において得られた上澄み水は、担体用硝化槽16に送られる。担体用硝化槽16の槽内には硝化菌を包括固定した多数の包括固定化担体30が充填されていると共に、槽の底部には曝気管32が配置され、ブロア34から送られたエアが曝気管32から槽内に曝気される。また、担体用硝化槽16の硝化処理水の流出部には、包括固定化担体30が最終硝化処理水(以下、単に硝化処理水という)に同伴して流出するのを防止する担体分離スクリーン36が設けられる。これにより、上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を好気性条件下で担体硝化すると共に、包括固定化担体30が硝化処理水に同伴して流出するのを防止する。
【0045】
担体用硝化槽16で担体硝化された硝化処理水は、処理水配管38を介して後記する廃水処理装置の脱窒槽に送られる。
【0046】
図2に示すように、担体用硝化槽16において、包括固定化担体30は、該担体30が通過しない大きさの通水孔31が複数形成された容器33内に流動可能に収納された状態で、担体用硝化槽16に充填されていることが好ましい。容器33の大きさとしては、直径で50〜150mmの範囲が好ましい。容器33は、球体を2分割した2つの半球体33A,33Bで構成され、半球体33A,33B同士が分割部35で嵌合又はネジ溝によって螺合することにより一体化される。容器33の材質は、特に限定されないが、加工のし易さ、曝気管32からの曝気エアによって槽内で流動可能な比重であること等を考慮すると、プラスチック製であることが好ましい。そして、包括固定化担体30が収納された状態での容器33の比重は0.98〜1.02の範囲が好ましい。収納する担体30は流動性を考慮し、水に近い比重の0.98〜1.02としており、この範囲より小さいと液面に浮上し、大きいと槽底に沈降するため、流動させるための曝気動力が必要になる。このため、容器の比重についても同様とした。
【0047】
また、容器33に収納する包括固定化担体30の収納率としては、容器33内容積の30%を上限とすることが好ましい。収納率が30%を超えると、容器33内での包括固定化担体30の活発な流動が阻害されるからである。
【0048】
これにより、担体用硝化槽16内では曝気管32から曝気されたエアによって、容器33が流動し、更に容器33内で包括固定化担体30が流動する。この2重の流動により、包括固定化担体30と廃水との接触効率が良くなり、担体用硝化槽16での硝化処理効率を向上させることができる。
【0049】
この場合、担体用硝化槽16の前段に固液分離槽14を設け、容器33の通水孔31を目詰まりさせる目詰まり物質を除去するようにしているので、通水孔31が目詰まりしない。これにより、包括固定化担体30の担体粒径が2〜5mmの小さいまま、容器33内に収納することができるので、容器33内での高い硝化性能を確保することができる。
【0050】
更には、担体分離スクリーン36の目幅を容器33がない場合に比べて大きくすることができるので、担体分離スクリーン36の簡略化、例えば市販の金網やパンチングメタル等を使用することが可能となる。例えば、容器33の大きさが直径100mmの場合は、この大きさの容器33が流出しなければよく、例えば50〜80mm角の孔を有する金網やパンチングメタルを使用できる。これにより、挟雑物が担体分離スクリーン36に付着し、閉塞することがないので、その運転管理性は図1の包括固定化担体30を担体用硝化槽16に直接充填する際の担体分離スクリーン36よりも格段に容易となる。
【0051】
上記したように、本発明の硝化装置10では、廃水中のアンモニア性窒素の硝化を、汚泥用硝化槽12での汚泥硝化と担体用硝化槽16での担体硝化とで分担することにより、下記に示す多くのメリットを得ることができる。
【0052】
(A)汚泥用硝化槽12の滞留時間を短くし且つ担体用硝化槽16の容量(キャパシティ)を小さくしても高い硝化処理効率を得ることができる。これにより、同じ処理水品質基準で比較した場合、廃水の全てを包括固定化担体の硝化槽で硝化する従来の硝化促進型循環変法に比べて滞留時間がやや長くなるものの、従来の活性汚泥循環変法に比べて滞留時間を約半分にすることができる。しかも、従来の硝化促進型循環変法に比べて包括固定化担体の使用量を大幅に低減できると共に曝気量も削減できる。これにより、ランニングコストを低減できると共に、担体用硝化槽の容量(キャパシティ)を小さくしてコンパクト化することができる。
【0053】
ちなみに、活性汚泥18と包括固定化担体30とを1つの槽に共存させて硝化処理する場合は、包括固定化担体30と活性汚泥18との硝化性能の区分ができない。したがって、設計上、硝化槽に過剰の包括固定化担体を充填せざるを得ないため、多量の包括固定化担体を必要とした。
【0054】
(B)また、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との間に固液分離槽14を設けたことにより、担体用硝化槽16には活性汚泥が存在しないか、存在しても微々たる量である。したがって、上澄み水は清水に性状が近く、通常の活性汚泥に比べて酸素溶解効率が高いので、担体用硝化槽16でのエア曝気量を低減できる。
【0055】
(C)担体用硝化槽16の前段に固液分離槽14があるので、担体用硝化槽16の担体分離スクリーン36が廃水中の夾雑物等の目詰まり物質で目詰まりすることもない。この場合、図2のように包括固定化担体30を容器33に収納すれば、容器33に形成された通水孔31の目詰まりを防止でき且つ担体分離スクリーン36の目幅を大きくできる。
【0056】
(D)汚泥用硝化槽12と固液分離槽14(例えば最終沈殿池)は、従来技術で述べたように既設の廃水処理場に備わっているので、既設の汚泥用硝化槽12と固液分離槽14の後段に担体用硝化槽のみを新設すれば、本願発明の硝化装置を構成することができる。これにより、既設の廃水処理場に簡単に導入できると共に設備コストも安価になる。
【0057】
(E)担体用硝化槽16では、汚泥用硝化槽12で汚泥硝化した残りのアンモニア性窒素を硝化処理するために、従来の活性汚泥循環変法や硝化促進型循環変法に比べて低濃度のアンモニア性窒素を硝化処理することになる。包括固定化担体30は低濃度のアンモニア性窒素に対しても高速で硝化処理が可能であり、硝化処理水の品質を向上できる。
【0058】
(F)本発明の硝化装置10は、活性汚泥循環変法のような既設の廃水処理場に改造をすることなく導入できるだけでなく、オキシデションディッチ法(OD法)やシーケンスバッチリアクター法(SBR法)を備えた既設の廃水処理場であっても改造することなく導入することができる。
【0059】
ここで包括固定化担体30について説明する。
【0060】
本発明における包括固定化担体30は、硝化菌を含む微生物を混合した固定化材料を重合することにより、微生物を固定化材料内に包括固定化したものであり、粒径が1〜5mm程度(通常3mm)のものが使用される。固定化材料は、高分子モノマー、プレポリマー、オリゴマー等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、等を用いることができる。その他、固定化材料のプレポリマーは、以下のものを用いることができる。
【0061】
(モノメタクリレート類)ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3クロロ2ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2ヒドロキシメタクリレート、エチルメタクリレート等。
【0062】
(モノアクリレート類)2ヒドロキシエチルアクリレート、2ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、シリコン変性アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、アクリロイルアキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート等。
【0063】
(ジメタクリレート類)1,3ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプレングリコールジメタクリレート、2ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2ビス4メタクリロキシエトキシフェニルプロパン、3,2ビス4メタクリロキシジエトキシフェニルプロパン、2,2ビス4メタクリロキシポリエトキシフェニルプロパン等。
【0064】
(ジアクリレート類)エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2ビス4アクリロキシヒエトキシフェニルプロパン、2ヒドロキシ1アクリロキシ3メタクリロキシプロパン等。
【0065】
(トリメタクリレート類)トリメチロールプロパントリメタクリレート等。
【0066】
(トリアクリレート類)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等。
【0067】
(テトラアクリレート類)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等。
【0068】
(ウレタンアクリレート類)ウレタンアクリレート、ウレタンジメチルアクリレート、ウレタントリメチルアクリレート等。
【0069】
(その他)アクリルアミド、アクリル酸、ジメチルアクリルアミド。
【0070】
また、本発明での重合は、過硫酸カリウムを用いたラジカル重合が最適であるが、紫外線や電子線を用いた重合やレドックス重合でもよい。過硫酸カリウムを用いた重合では、過硫酸カリウムの添加量を0.001〜0.25%がよく、アミン系の重合促進剤を0.001〜0.5%添加するとよい。アミン系の重合促進剤としてはβジメチルアミノプロピオニトリル、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ソーダなどがよい。
【0071】
また、固定化材料内に包括固定化する硝化菌としては、純粋培養したものでもよいが、硝化菌を含有する活性汚泥を包括固定化することがより好ましい。この理由は、固定化材料に溶解している酸素は重合を阻害するが、活性汚泥を包括固定化することで、活性汚泥が酸素を消費し重合反応を順調に進行させるので、強度の強い包括固定化担体30を得ることができる。
【0072】
かかる硝化装置10は、廃水のアンモニア性窒素濃度、水温、水量の少なくとも1つの因子の変動に伴う硝化処理水の水質変動を防止するために、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との負荷調整を行う負荷調整機構を具備することが好ましい。以下、負荷調整機構の各種態様を説明する。
【0073】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第1の実施の形態)
図3は、負荷調整機構を担体用硝化槽16のみに設けた場合である。
【0074】
なお、基本構成は図1と同様なので、図1と異なる構成のみを説明する。
【0075】
図3に示すように、負荷調整機構は、担体用硝化槽16を迂回して上澄み水を処理水配管38にバイパスさせるバイパス配管40と、上澄み水を担体用硝化槽16とバイパス配管40とに分配する上澄み水分配器42と、上澄み水のアンモニア性窒素濃度を測定する第1濃度測定計44Aと、硝化処理水のアンモニア性窒素を測定する第2濃度測定計44Bと、第1及び第2濃度測定計44A,44Bの測定結果に基づいて上澄み水分配器42を駆動して担体用硝化槽16とバイパス配管40への分配比率を制御する制御手段46と、で構成される。
【0076】
制御手段46は、第1濃度測定計44Aで測定される上澄み水のアンモニア性窒素濃度、及び第2濃度測定計44Bで測定される処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、担体用硝化槽16とバイパス配管40とに分配する分配比率を調整して、硝化処理水が目標の品質基準で一定になるように制御する。分配比率は一方が100%で他方が0%の場合も含む。
【0077】
例えば、冬期のように廃水の水温が低くなると、活性汚泥18の硝化活性が低下するので、汚泥用硝化槽12で汚泥硝化された上澄み水中には、アンモニア性窒素の残量が多くなり易い。したがって、第1濃度測定計44Aでの測定結果が高くなるので、制御手段46は、バイパス配管40に流す上澄み水の流量を減らして担体用硝化槽16に流す流量を多くする。逆に、夏期のように廃水の水温が高く活性汚泥18の硝化活性が高い場合には、制御手段46はバイパス配管40に流す上澄み水の流量を多くして担体用硝化槽16に流す流量を減らす。これにより、季節に関係なく硝化処理水の水質を一定に維持することができる。また、夏期には、担体用硝化槽16への処理水量を低減することにより、無駄な曝気量を低減できる。更には、バイパス配管40側の流量を100%とすることで、担体用硝化槽16の運転を停止し、ランニングコストを低減することもできる。
【0078】
なお、図3には、第1濃度測定計44Aと第2濃度測定計44Bとの両方を設けた図で示したが、第1濃度測定計44Aと第2濃度測定計44Bとの何れか一方を設けることもできる。
【0079】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第2の実施の形態)
図4は、負荷調整機構を、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との両方に設けた場合であり、担体用硝化槽16側の負荷調整機構は図3で説明したと同様であるので説明は省略する。
【0080】
図4に示すように、汚泥用硝化槽12側の負荷調整機構は、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16から構成される汚泥・担体硝化ライン58に、汚泥用硝化槽12と固液分離槽14とから構成される汚泥硝化ライン60が並列に配置されることにより構成される。換言すると、汚泥用硝化槽12A,12B及び固液分離槽14A,14Bからなる汚泥硝化ライン60が2列並列に設けられ、その後段にバイパス配管40を備えた担体用硝化槽16が1槽設けられる。そして、廃水が廃水分配器50及び分岐配管52によって2列の汚泥硝化ライン60に分配される。分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0081】
なお図4では、汚泥硝化ライン60を2列設けたが3列以上でもよい。
【0082】
原水配管11には、廃水のアンモニア性窒素濃度を測定する窒素濃度測定計、廃水の水温を計測する水温計、廃水の水量を計測する原水水量計の少なくとも1つが設けられ、測定された測定結果が制御手段56に入力される。なお、窒素濃度測定計、水温計、原水水量計は全て設けることは必須ではなく、変動の大きな廃水ファクターの測定計を設ければよい。ここでは、水温計54を設けた場合で説明する。そして、制御手段56は、水温計54で測定される廃水の水温が低い場合には、廃水分配器50を制御して、2列の汚泥硝化ライン60に廃水を2等分する。
【0083】
これにより、冬期のように廃水の水温が低く活性汚泥18の硝化活性が顕著に低下する場合であっても、汚泥用硝化槽12の1槽当たりの負荷が軽減されるので、硝化処理効率が低下しないようにできる。逆に、夏期のように廃水の水温が高く活性汚泥18の硝化活性が高くなる場合には、1列の汚泥硝化ライン60のみに廃水を流す。
【0084】
そして、汚泥硝化ライン60からの上澄み水が負荷調整機構を具備した担体用硝化槽16で担体硝化される。
【0085】
このように、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との両方に負荷調整機構を設けることにより、廃水のアンモニア性窒素濃度、水温、水量の少なくとも1つの因子の変動に伴う硝化処理水の水質変動を防止することができる。この負荷調整機構は、換言すると、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16とにおける廃水の滞留時間を適切に調整できることを意味し、廃水の水質に応じて汚泥硝化と担体硝化との滞留時間を適切に組み合わせることができる。
【0086】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第3の実施の形態)
図5の負荷調整機構は、図4で説明したバイパス配管40の代わりに2列並列に担体用硝化槽16A,16B設け、上澄み水分配器42で2列の担体用硝化槽16A,16Bに上澄み水を分配できるように構成したものである。分配比率は一方が100%の場合も含む。
【0087】
これにより、上澄み水中のアンモニア窒素濃度の残量が多い場合には、上澄み水を2列の担体用硝化槽16A,16Bに分配して1槽当たりの負荷を軽減できるので、硝化処理水の水質を一定に維持することができる。
【0088】
また、図5の場合にも、硝化処理水の水質変動を防止するのみならず、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16とにおける廃水の滞留時間をも適切に調整することができる。
【0089】
(負荷調整機構を具備した硝化装置の第4の実施の形態)
図6の負荷調整機構は、図3〜図5で説明したように廃水分配器50や上澄み水分配器42によって、分配比率を変えることで負荷を調整する方式ではなく、担体用硝化槽16を有する汚泥・担体硝化ライン58と、担体用硝化槽16を有しない汚泥硝化ライン60とを並列に配置して、廃水の水質に応じて使用するラインを選択するようにしたものである。
【0090】
即ち、図6に示すように、負荷調整機構は、汚泥用硝化槽12、固液分離槽14、及び担体用硝化槽16から構成される汚泥・担体硝化ライン58と、汚泥用硝化槽12及び固液分離槽14から構成されて担体用硝化槽16を有しない汚泥硝化ライン60とが並列に配置される。
【0091】
図6(A)は3列の汚泥・担体硝化ライン58と1列の汚泥硝化ライン60との組み合わせ、図6(B)は2列の汚泥・担体硝化ライン58と2列の汚泥硝化ライン60との組み合わせ、図6(C)は1列の汚泥・担体硝化ライン58と3列の汚泥硝化ライン60との組み合わせた場合である。
【0092】
なお、図6では、汚泥・担体硝化ライン58と汚泥硝化ライン60との合計のライン列数を4列にしたが、これに限定されるものではない。
【0093】
図6(A)の場合で詳しく説明すると、原水配管11から4本の分岐管62A,62B,62C,62Dに分岐され、3本の分岐管62A,62B,62Cにはそれぞれ汚泥・担体硝化ライン58が連結される。そして、残りの1本の分岐管62Dに汚泥硝化ライン60が連結される。また、3列の汚泥・担体硝化ライン58と1列の汚泥硝化ライン60とは合流配管64によって1本の処理水配管38に合流される。
【0094】
また、原水配管11の分岐位置にライン選択手段66が設けられると共に、原水配管11には、廃水中のアンモニア性窒素濃度を測定する濃度測定手段、水温を測定する水温計、水量を測定する水量計の少なくとも1つが設けられる。図6では水温計54を設けた場合で示している。
【0095】
そして、制御手段68は、水温計54で測定された廃水の水温に応じてライン選択手段66を制御して、4本の分岐管62A,62B,62C,62Dのうち使用する分岐管を選択する。
【0096】
これにより、廃水中のアンモニア性窒素濃度、水温、水量に応じて、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16との負荷調整を行うことができるので、硝化処理水の水質を一定に維持することができる。
【0097】
また、図6の場合にも、硝化処理水の水質変動を防止するのみならず、汚泥用硝化槽12と担体用硝化槽16とにおける廃水の滞留時間をも適切に調整することができる。
【0098】
次に、上記説明した各種態様の硝化装置10を組み込んだ廃水処理装置70について説明する。
【0099】
[廃水処理装置]
図7の廃水処理装置70は、図1に示した基本構成の硝化装置10を組み込んだ場合である。
【0100】
図7に示すように、汚泥用硝化槽12の前段に脱窒槽72が設けられると共に、担体用硝化槽16で処理された硝化処理水の一部が循環配管74を介して脱窒槽72に循環される。脱窒槽72内には、脱窒菌を含む活性汚泥76が嫌気性条件下で浮遊しており、硝化処理水と接触することによって、硝化処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスに変換する。また、固液分離槽14で沈降した汚泥は、汚泥返送配管26を介して脱窒槽72に戻される。
【0101】
図8の廃水処理装置70は、図3に示した第1の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものであり、図9の廃水処理装置70は図4に示した第2の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものである。また、図10の廃水処理装置70は図5に示した第3の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものであり、図11の廃水処理装置70は図6(A)に示した第4の実施の形態の硝化装置10を組み込んだものである。
【0102】
また、図12の廃水処理装置70は、図7の基本構成に加えて、担体用硝化槽16の後段に補助脱窒槽80を設け、補助脱窒槽80内には充填材として脱窒菌を包括固定化した包括固定化担体を充填した場合である。なお、充填材はプラスチック製や砂状などの一般的に使用されているものを使用できる。また、図示しないが、脱窒のための有機源は補助脱窒槽80内にメタノールなどを添加して補うことができる。
【0103】
図12の廃水処理装置70の場合には、固液分離槽14によって活性汚泥18等のSS成分が担体用硝化槽16に同伴されることがないので、担体用硝化槽16の後段に担体処理方式の補助脱窒槽80を設けることが可能となる。ちなみに、SS成分が多い場合には、充填材が閉塞するため、逆洗を頻繁に行う必要があるだけでなく、SS成分が処理水にリークして水質を悪化させる原因になる。
【0104】
これによって、担体用硝化槽16で処理された硝化処理水中に残存する微量の硝酸性窒素を窒素ガスに変換できるので、補助脱窒槽80後の最終処理水の水質向上を図ることができると共に、最終処理水に混ざって活性汚泥等のSS成分が排出されることもない。
【0105】
また、図には示さなかったが、担体用硝化槽16の後段に担体処理方式の補助脱窒槽80を設ける構成であれば、アンモニア性窒素濃度が比較的低い廃水の場合、前段に配置した脱窒槽72や循環配管74を省略することも可能である。
【0106】
[実施例]
(試験A)
本発明の硝化装置を備えた廃水処理装置(実施例)と、従来の活性汚泥循環変法の廃水処理装置(比較例1)と、従来の硝化促進型循環変法の廃水処理装置(比較例2)との3つの装置について、硝化ラインでの滞留時間(HRT)を比較した。
【0107】
比較試験は、実施例、及び比較例1、2ともに、アンモニア性窒素を主とする総窒素濃度(TN)が40mg/Lの同じ水質の廃水について略TN10mg/L平均の処理水を得るために必要なHRTを比較した。
【0108】
*実施例は、図7の廃水処理装置の構成を用いた。
【0109】
*比較例1は、固液分離槽(最初沈殿池)→脱窒槽(活性汚泥)→硝化槽(活性汚泥)→固液分離槽(最終沈殿池)であり、硝化槽で得られた硝化処理水の一部を脱窒槽に循環させた。
【0110】
*比較例2は、比較例1の硝化槽を活性汚泥から包括固定化担体に代えた以外は比較1と同様である。
【0111】
なお、実施例、比較例1、2における脱窒槽における活性汚泥の汚泥濃度(MLSS)及び比較例1の硝化槽における汚泥濃度は2000mg/Lに設定した。また、本発明及び比較例2の硝化槽には、包括固定化担体を10%容積になるように充填した。また、硝化槽でのエア曝気による溶存酸素(DO)は、実施例、1、2とも同じ3mg/Lになるようにすると共に、硝化処理水を脱窒槽に循環させる循環比率は実施例、1、2ともに同じである。
【0112】
〈試験結果〉
*本発明の実施例は、汚泥用硝化槽のHRTが8時間+担体用硝化槽のHRTが1時間の合計9時間のHRTであった。
【0113】
*従来の活性汚泥循環変法による比較例1は、硝化槽のHRTが12〜16時間であった。
【0114】
*従来の硝化促進型循環変法による比較例2は、硝化槽のHRTが6〜8時間であった。また、廃水中の夾雑物が担体分離スクリーン(目幅1.5mm)につまる傾向が見られ、メンテナンスは本発明に比べて煩雑であった。
【0115】
上記結果から分かるように、本発明における硝化ラインのHRTは、廃水の全てを包括固定化担体のみで硝化処理する比較例2に比べて多少長くなるが、廃水の全てを活性汚泥のみで硝化処理する比較例1に比べてHRTを大幅に短縮することができる。
【0116】
また、本発明の実施例は、担体用硝化槽での滞留時間を1時間にすることができるので、硝化槽容量を比較例2に比べて顕著にコンパクト化することができ、その分、包括固定化担体の充填量も大幅に削減できる。また、汚泥用硝化槽と固液分離槽(最終沈殿池)は、既設の廃水処理場に備わっているので、固液分離槽の後段に担体用硝化槽のみを新設すれば、既設の廃水処理場を改造せずに対応できる。
【0117】
(試験B)
活性汚泥は、廃水水温が高い夏期は硝化速度が落ちにくいが、廃水水温が低い冬期は硝化速度が落ち易い。そこで、活性汚泥と包括固定化担体とを用いて、冬期の廃水温度(11〜16℃)を想定した硝化処理効率を比較した。
【0118】
その結果、活性汚泥の硝化速度は平均1mg/g-SS・hであるのに対して、包括固定化担体の硝化速度は平均80mg/L-担体・hであった。
【0119】
そして、上記活性汚泥を硝化槽にMLSSで2000mg/Lになるように充填すると共に、上記包括固定化担体を同じ容量の硝化槽に10%容積になるように充填して、槽1日当たりの硝化速度を調べた。
【0120】
その結果、活性汚泥充填の硝化槽は48mg/L−硝化槽・日であるのに対して、包括固定化担体の硝化槽は192mg/L−硝化槽・日であった。この結果から、廃水水温が低い冬期では包括固定化担体を充填した硝化槽の方が活性汚泥を充填した硝化槽よりも圧倒的に硝化速度が速くなる。
【0121】
このことから、汚泥用硝化槽の後段に硝化促進型循環変法よりも容量(キャパシティ)の小さな小型の担体用硝化槽を配置することで、包括固定化担体の使用量を大幅に削減し、且つ廃水水温が低く活性汚泥の活性が低下し易い冬期対策に特に有効となる。
【0122】
(試験C)
試験Cは、汚泥硝化と担体硝化を組み合わせた本発明の硝化装置が廃水のアンモニア性窒素の変動に対してどの程度対応能力があるかを調べた。試験は、既存の下水処理場(活性汚泥循環変法を使用)の硝化処理水を、試験用ラインを介して担体用硝化槽の試験プラントに引き込み、廃水中のアンモニア性窒素濃度が変動した場合の対応能力を調べた。廃水の温度は11〜21℃であり、担体用硝化槽(包括固定化担体10%充填率)のHRTは1時間に設定した。その結果を図13に示す。
【0123】
図13から分かるように、下水処理場からの硝化処理水中のアンモニア性窒素は約0〜約19mg/Lまで変動した。しかし、図13(A)に示すように、汚泥用硝化槽→固液分離槽→担体用硝化槽の構成で処理した硝化処理水のアンモニア性窒素濃度は、処理水基準である5mg/L以下に略することができた。この結果は、廃水原水中のアンモニア性窒素濃度が0〜20mg/Lまで変動しても、硝化処理率は約70%と安定していることを示す。このことは、汚泥用硝化槽内の活性汚泥中の硝化菌の活性が低下する冬期であっても、汚泥用硝化槽の後段に容量の小さな担体用硝化槽を配置することで、処理水基準5mg/L以下を達成できることを示している。
【0124】
一方、図13(B)は、原水のアンモニア濃度(NH4−N濃度)に応じて担体用硝化槽への流入割合を変化させた場合の結果である。具体的には、原水中のNH4−N濃度が10mg/L以下の場合において、バイパス配管への流入を開始し、原水中のNH4−N濃度が低いほど担体用硝化槽への流入割合を少なくして処理した。図13(B)から分かるように、バイパス配管への流入を併用しても、処理水のNH4−N濃度を5mg/L以下にすることができた。この場合は当然ながら、担体用硝化槽の処理量が少ないので、曝気動力等のエネルギーを節約できた。
【符号の説明】
【0125】
10…硝化装置、12…汚泥用硝化槽、14…固液分離槽、16…担体用硝化槽、18…活性汚泥、20…曝気管、22…ブロア、24…汚泥排出配管、26…汚泥返送配管、30…包括固定化担体、31…通水孔、32…曝気管、33…容器、34…ブロア、35…分割部、36…担体分離スクリーン、38…処理水配管、40…バイパス配管、42…上澄み水分配器、44A…第1濃度測定計、44B…第2濃度測定計、46…制御手段、50…廃水分配器、52…分岐配管、54…水温計、56…制御手段、58…汚泥・担体硝化ライン、60…汚泥硝化ライン、62A,62B,62C,62D…分岐管、64…合流管、66…ライン選択手段、68…制御手段、70…廃水処理装置、72…脱窒槽(活性汚泥)、74…循環配管、76…活性汚泥、80…脱窒槽(包括固定化担体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水中のアンモニア性窒素を硝化菌により好気性条件下で硝化処理して硝酸性窒素にする硝化装置において、
前記廃水が流入し、前記硝化菌を含む活性汚泥により前記アンモニア性窒素を硝化する汚泥用硝化槽と、
前記汚泥用硝化槽で硝化処理された活性汚泥による硝化処理水中の固形分を固液分離して上澄み水を得る固液分離槽と、
前記上澄み水が流入し、前記硝化菌を包括固定した包括固定化担体により前記上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を硝化して最終硝化処理水を得ると共に、前記包括固定化担体の担体分離スクリーンが設けられた担体用硝化槽と、
を有する汚泥・担体硝化ラインを少なくとも1系列備えたことを特徴とする硝化装置。
【請求項2】
前記担体用硝化槽を迂回して前記上澄み水を前記硝化処理水の処理水配管にバイパスさせるバイパス配管と、
前記上澄み水及び/又は前記硝化処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する窒素濃度測定計と、
前記上澄み水を前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配器と、
前記濃度測定計の測定結果に基づいて前記上澄み水分配器を制御し、前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配量を調整する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の硝化装置。
【請求項3】
前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽と前記固液分離槽とから構成される汚泥硝化ラインと、
前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに前記廃水を分配する廃水分配器と、
前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、
前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記廃水分配器を制御し、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに分配する廃水の分配量を調整する制御手段と、
前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとの上澄み水を合流させて前記汚泥・担体硝化ラインの担体用硝化槽に導入する合流配管と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の硝化装置。
【請求項4】
前記バイパス配管に代えて、前記担体用硝化槽を設けたことを特徴とする請求項3に記載の硝化装置。
【請求項5】
前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽及び前記固液分離槽から構成された汚泥硝化ラインと、
前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、
前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのライン選択を行うライン選択手段と、
前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記ライン選択手段を制御して、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのうち使用するラインを選択する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の硝化装置。
【請求項6】
前記廃水の水質は、アンモニア性窒素濃度、水温、水量の少なくとも1つであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1に記載の硝化装置。
【請求項7】
前記担体用硝化槽において、
前記包括固定化担体は、該包括固定化担体が通過しない大きさの複数の通水孔が形成された容器内に流動可能に収納された状態で、前記担体用硝化槽に充填されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の硝化装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1に記載の硝化装置と、
前記硝化装置で硝化処理された硝化処理水中の硝酸性窒素を、脱窒菌により嫌気性条件下で脱窒処理して窒素ガスに変換する脱窒槽と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項9】
前記脱窒槽は、前記硝化装置の前段に設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の一部が循環配管を介して前記脱窒槽に循環されることを特徴とする請求項8に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記脱窒槽の他に、前記硝化装置の後段に前記脱窒菌を包括固定した包括固定化担体を含む補助脱窒槽が設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の残部に残留する硝酸性窒素を前記補助脱窒槽で窒素ガスに変換することを特徴とする請求項9に記載の廃水処理装置。
【請求項1】
廃水中のアンモニア性窒素を硝化菌により好気性条件下で硝化処理して硝酸性窒素にする硝化装置において、
前記廃水が流入し、前記硝化菌を含む活性汚泥により前記アンモニア性窒素を硝化する汚泥用硝化槽と、
前記汚泥用硝化槽で硝化処理された活性汚泥による硝化処理水中の固形分を固液分離して上澄み水を得る固液分離槽と、
前記上澄み水が流入し、前記硝化菌を包括固定した包括固定化担体により前記上澄み水中に残存するアンモニア性窒素を硝化して最終硝化処理水を得ると共に、前記包括固定化担体の担体分離スクリーンが設けられた担体用硝化槽と、
を有する汚泥・担体硝化ラインを少なくとも1系列備えたことを特徴とする硝化装置。
【請求項2】
前記担体用硝化槽を迂回して前記上澄み水を前記硝化処理水の処理水配管にバイパスさせるバイパス配管と、
前記上澄み水及び/又は前記硝化処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する窒素濃度測定計と、
前記上澄み水を前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配器と、
前記濃度測定計の測定結果に基づいて前記上澄み水分配器を制御し、前記担体用硝化槽と前記バイパス配管とに分配する上澄み水分配量を調整する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の硝化装置。
【請求項3】
前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽と前記固液分離槽とから構成される汚泥硝化ラインと、
前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに前記廃水を分配する廃水分配器と、
前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、
前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記廃水分配器を制御し、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとに分配する廃水の分配量を調整する制御手段と、
前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとの上澄み水を合流させて前記汚泥・担体硝化ラインの担体用硝化槽に導入する合流配管と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の硝化装置。
【請求項4】
前記バイパス配管に代えて、前記担体用硝化槽を設けたことを特徴とする請求項3に記載の硝化装置。
【請求項5】
前記汚泥・担体硝化ラインに並列に設けられ、前記汚泥用硝化槽及び前記固液分離槽から構成された汚泥硝化ラインと、
前記廃水の水質を測定する廃水測定計と、
前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのライン選択を行うライン選択手段と、
前記廃水測定計の測定結果に基づいて前記ライン選択手段を制御して、前記汚泥・担体硝化ラインと前記汚泥硝化ラインとのうち使用するラインを選択する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の硝化装置。
【請求項6】
前記廃水の水質は、アンモニア性窒素濃度、水温、水量の少なくとも1つであることを特徴とする請求項3〜5の何れか1に記載の硝化装置。
【請求項7】
前記担体用硝化槽において、
前記包括固定化担体は、該包括固定化担体が通過しない大きさの複数の通水孔が形成された容器内に流動可能に収納された状態で、前記担体用硝化槽に充填されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の硝化装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1に記載の硝化装置と、
前記硝化装置で硝化処理された硝化処理水中の硝酸性窒素を、脱窒菌により嫌気性条件下で脱窒処理して窒素ガスに変換する脱窒槽と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項9】
前記脱窒槽は、前記硝化装置の前段に設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の一部が循環配管を介して前記脱窒槽に循環されることを特徴とする請求項8に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記脱窒槽の他に、前記硝化装置の後段に前記脱窒菌を包括固定した包括固定化担体を含む補助脱窒槽が設けられ、前記担体用硝化槽で処理された最終硝化処理水の残部に残留する硝酸性窒素を前記補助脱窒槽で窒素ガスに変換することを特徴とする請求項9に記載の廃水処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−13857(P2013−13857A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148508(P2011−148508)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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