説明

硝安油剤爆薬

【課題】ポーラスプリル硝安と、燃料油と比重調整剤兼鈍感化剤を配合してなるANFO爆薬において、比重調整剤兼鈍感化剤に有機質系のものを用いた場合の利点を損なうことなく、静電気により凝集し易い、という欠点を解消し、分散性を向上させて爆速を増し、威力を向上させる。
【解決手段】三菱化学株式会社製のプリル硝安94重量%に軽油6重量%を配合し、更に株式会社スリーボンド製の帯電防止剤PANDO29A(商品名)でコートした積水化学工業株式会社製の発泡ポリスチレン2重量%を外割りで配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採鉱や土木建設工事において発破作業に用いられる産業用爆薬に関し、ことに硝安に燃料油を配合した硝安油剤爆薬(以下、「ANFO爆薬」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポーラスプリル硝安を主成分とするANFO爆薬は、比較的簡単に製造することができ、安価で、発破孔への装填が容易であり、火薬学会規格(IV)ES−32(2)に爆轟起爆試験方法として規定されている塩ビ雨どい試験又はカートン試験において6号雷管で完爆しない低感度であることから安全性が高い等の利点があるが、需要者からは消費コストをより低減させることが求められており、コスト低減の一つの方法として、ANFO爆薬の嵩比重を低下させて装填孔単位容積当りのANFO爆薬の使用量を減らすこと、すなわちポーラスプリル硝安のポーラス度を向上させたり、気泡剤を含有させて硝安粒子の密度を低下させることなどが試みられている。
【0003】
硝安密度の低下は反面、硝安粒子の比表面積を大きくしてポーラスプリル硝安と燃料油との接触面積を増加させ、ANFO爆薬の反応性を向上させて感度を鋭敏にする。ANFO爆薬の反応性を低下させるために従来は、ガラス中空球体(グラスマイクロバルーン)、天然ガラスを膨張させた多泡構造のパンライトなどの無機質中空体、エクスバンセル、発泡ポリスチレン等の有機質中空体等よりなる比重調整剤兼鈍感化剤が用いられてきたことが下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−137684号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述する鈍感化剤のうち有機質系のものは、無機質系のものに比べ、比重の調整範囲が広いうえ、ANFO爆薬の性能がよい利点があるものの、無機質系のものが帯電しにくく、分散性がよいのに対し、帯電して静電気により凝集し易く、分散性も悪い、という難点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は比重調整剤兼鈍感化剤として有機質系のものを用いた場合の性能を損なうことなく上記の問題を解消したANFO爆薬を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、ポーラスプリル硝安と、燃料油と比重調整剤兼鈍感化剤を配合してなるANFO爆薬において、上記比重調整剤兼鈍感化剤が帯電防止剤をコートした有機質系の比重調整剤兼鈍感化剤であることを特徴とする。
【0007】
本発明において用いられる燃料油としては、JIS K 4801の硝安油剤爆薬に規定されるような引火点が50℃以上の軽油を用いることができ、有機質系の比重調整剤兼鈍感化剤としては、例えば上述のエクスパンセル、発泡ポリスチレン等の有機質中空体を用いることができる。
【0008】
また帯電防止剤としては、例えば以下の実施例に示されるような株式会社スリーボンド製のPANDO29A(商品名)、花王株式会社製のソルビタントリオレート(商品名「レオードルSP−030」)等を用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のANFO爆薬によると、比重調整剤兼鈍感化剤として用いられる有機質系のものは、無機質系のものに比べ、嵩比重を下げることができ、とくに発泡させることが可能で、発泡させることにより嵩比重をより下げることができるため、比重の調節範囲を広げることができること、帯電防止剤をコートすることにより分散性が向上し、燃焼性がよいことから、爆速を増し、威力を向上させることができること等の効果を奏する。
【実施例】
【0010】
三菱化学株式会社製のプリル硝安94重量%に軽油6重量%を配合し、更に株式会社スリーボンド製の帯電防止剤PANDO29A(商品名)でコートした積水化学工業株式会社製の発泡ポリスチレン2重量%を外割りで配合してANFO爆薬を得た。そして得たANFO爆薬の嵩比重を次のようにして求めた。
【0011】
嵩比重
サンプルを50g秤量し、100mlのメスシリンダーに装填したのち、該メスシリンダーを厚さ約6mmのゴム板の上方、約50mmの高さから落下(タッピング)させた。このタッピングを50回繰り返したのち、サンプルの容積をメスシリンダーの目盛から読取り、嵩比重を下記(1)式より求めた。
嵩比重g/ml=秤量値(g)/容積(ml)・・・(1)
【0012】
次に上述のANFO爆薬について、JIS K 4810:2003に規定する落槌感度試験、摩擦感度試験及び本出願人の社内規定による静電気感度試験を次のようにして行い、落槌感度、摩擦感度、静電気感度を求めた。
【0013】
落槌感度試験
サンプルを二個の円筒コロの間に挟んで試験機の金敷きの上に置き、鉄槌をその上に落として落高と爆発状態との関係から爆薬の感度を求める試験で、表1は、JIS K4810に規定する等級表を示すものである。
【0014】
【表1】

【0015】
各落高では、試験を連続して6回ずつ行い、等級付けは、例えば20cmの高さから鉄槌を落下させたときに爆発する回数が1〜6回であり、15cmの高さから鉄槌を落下させたときに爆発する回数が0であったとすると、表1から、そのサンプルの爆薬の落槌感度を4級とするものである。
【0016】
摩擦感度試験
サンプルを試験機に取付けた磁器性の摩擦棒と摩擦板との間に挟み、荷重を掛けた状態で摩擦運動をさせて、その荷重と爆発状態との関係から爆薬の摩擦感度を求める試験で、表2は、JIS K4810に規定する等級表を示すものである。
【0017】
【表2】

【0018】
実験は各荷重ごとに6回連続して行い、等級付けは、例えば39.2Nで爆発する回数が1以上であり、19.6Nでは0であったとすると、表2からそのサンプルの感度を3級とするものである。
【0019】
静電気感度
図1に示すように、上部電極を高力黄銅の先端が直径3mmの球状電極1とし、下部電極を高力黄銅の平板電極2とした固定電極装置を用い、下部電極上に厚さ0.5mm、幅20mmのテフロン(登録商標)よりなるシートの中央に直径4mmの穴3を開けた平板4を置き、サンプルを穴3に充填する。そしてその上に針でピンホールを開けたマイラーテープ(図示しない)をピンホールが穴の中心に位置するように置いて貼付け、ハイトゲージの目盛で放電間隔を0.1〜1mmに合わせて放電エネルギーを放電してなるもので、放電エネルギーを1〜5のランクに分けて、爆発状態に至るまでの放電エネルギーよりランク付けし、100mJ以上の放電エネルギーを放電したとき発火しないものをランク5とした。
【0020】
次に実施例で得た上述のANFO爆薬に対し、JIS K 4810:2003に規定する爆速試験に準じてイオンギャップ法で爆速を次のようにして測定した。
【0021】
爆速試験
図2に示すように、内径36mm×長さ250mmの鋼管6の底部にボール紙7で蓋をして紙テープで固定し、ついで実施例で得た上述のANFO爆薬9を鋼管内にタッピングしながら鋼管の高さまで填薬し、その後、中国化薬株式会社製のブースターである、スーパーゼラマイト(商品名)50gを用い、6号電気雷管8で起爆した。そしてその爆速を鋼管6に100mmの間隔をあけて差込んだ二本のイオンギャップ13により測定した。
【0022】
次に火薬学会規格(IV)ES−32(2)に爆轟起爆試験方法として規定されている塩ビ雨どい試験により、6号電気雷管8で起爆するか否かの起爆感度試験を行った。
以上の結果を以下の表3に示す。
【比較例】
【0023】
実施例で用いたプリル硝安と同じプリル硝安94重量%に軽油6重量%を配合したANFO爆薬を用い、これの嵩比重、落槌感度、摩擦感度、静電気感度、爆速、6号電気雷管による起爆感度を実施例で行ったのと同様にして求めた。
以上の結果を以下の表3に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
表3に見られるように、実施例のANFO爆薬は、比較例のANFO爆薬に比べ、嵩比重は低下したが、爆速は10数%向上し、それ以外は変わりがなかった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】静電感度試験に用いた器具を示す図。
【図2】爆速試験及び6号電機雷管による起爆感度試験に用いたサンプルの断面図。
【符号の説明】
【0027】
1・・球状電極
2・・平板電極
3・・穴
4・・平板
6・・鋼管
7・・ボール紙
8・・6号電気雷管
9・・ANFO爆薬
11・・ブースター
13・・イオンギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスプリル硝安と、燃料油と比重調整剤兼鈍感化剤を配合してなるANFO爆薬において、上記比重調整剤兼鈍感化剤が帯電防止剤をコートした有機質系の比重調整剤兼鈍感化剤であることを特徴とする硝安油剤爆薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−256927(P2006−256927A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78678(P2005−78678)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(391038659)中国化薬株式会社 (9)