説明

硝酸性窒素含有地下水の浄化方法

【課題】広範な領域にわたって存在する硝酸性窒素汚染地下水に対して、短期間で硝酸性窒素の処理を行って、硝酸性窒素汚染地下水を浄化する。
【解決手段】硝酸性窒素含有地下水の帯水層に、硫黄粉末および炭酸カルシウム粉末を注入することにより該硝酸性窒素含有地下水を浄化するにあたり、粒径0.1〜500μmかつ水分散性を高めた硫黄粉末と粒径0.1〜500μmの炭酸カルシウム粉末を用いる。この水分散性を高めた硫黄粉末としてはコロイド硫黄や、界面活性剤で処理したものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硝酸性窒素含有地下水の浄化方法に係り、詳しくは、硫黄酸化細菌の脱窒作用を利用して地下水中の硝酸性窒素を除去して浄化する方法に関する。
なお、本発明において、硝酸性窒素は、硝酸性窒素と亜硝酸性窒素との総称である。
【背景技術】
【0002】
硝酸性窒素による地下水汚染は、肥料の過剰投与や家畜ふん尿などの帯水層への浸透等、様々な原因が考えられているが、例えば、窒素肥料を施肥した地域全域が地下水の汚染源となるなど、汚染源が広域にわたるため、その浄化対策が重要視されている。
【0003】
従来、硝酸性窒素含有地下水の浄化方法としては、例えば、特開2010-12438号公報に示されているように、粒径が1〜50mmの粒子状の硫黄カルシウム系無機質剤を地下水層に埋設することにより透過壁を形成し、硝酸性窒素を含有する地下水をこの透過壁に通過させ、硫黄酸化細菌の働きにより硝酸性窒素を無害な窒素ガスとして排出する方法がある。
【0004】
硫黄酸細菌は、硝酸性窒素を脱窒する際、硫黄を取り込んで硫酸イオンを排出するため、この硫酸イオンが地下水のpH低下の要因となるが、特開2010-12438号公報によれば、硫黄カルシウム系無機質剤中に硫黄と共に配合されているカルシウム(Ca)がこの硫酸イオンと結合して硫酸カルシウムを形成することで、処理水の酸性化を防止することができる、とされている。なお、特開2010-12438号公報には、硫黄カルシウム系無機質剤とはいかなるものか明確な定義はないが、上記記載から硫黄とカルシウムとの混合物と推定される。
【0005】
この特開2010-12438号公報では、硫黄カルシウム系無機質剤の粒径として、1〜50mmのものを用いており、その理由として、1mm未満である場合、生成した窒素ガスが抜け難いとしている。
即ち、特開2010-12438号公報の場合、透過壁の形態を取っており、上流から、硝酸性窒素を含む地下水が絶えずこの透過壁に供給されるため、生成する窒素ガスが長期間にわたって生成しつづけることとなり、生成した窒素ガスが透過壁にたまって地下水の透過性を悪くして透過壁の処理効率そのものを下げてしまう恐れがある。このため、透過壁を窒素ガスが抜け易い構造にする必要があることから、特開2010-12438号公報では、硫黄カルシウム系無機質剤の粒径を1mm以上とすると共に、粒径1〜100mmの砕石を混合して透過壁にガス抜きのための間隙を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-12438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2010-12438号公報に記載の方法は、地中に構築した透過壁により浄化する方法であるため、地下水が透過壁を通過して初めて、硝酸性窒素の脱窒反応が起こる。従って、硝酸性窒素汚染現場全体の処理を考えた場合、図3に示すように、敷地10内にある汚染地下水領域11の下流域側の敷地10の境界付近にこのような透過壁12を設けることで、敷地10の外へ流出する硝酸性窒素を処理することが可能ではあるが、敷地10全域の地下水の硝酸性窒素の処理を行うことはできない。
【0008】
敷地全域に硝酸性窒素汚染地下水が存在し、これを一定期間内で浄化することを考えた場合、図4に示すように、透過壁12を敷地10内の地下水の流れに沿って複数段設置する方法も考えられるが、この方法であっても、地下水流速が遅い場合は、透過壁12と透過壁12の間の地下水が浄化されるまでに長い期間を要する。透過壁12を多数設置すれば浄化期間を短縮することができるが、透過壁12を設置するには大規模な工事を行う必要があり、透過壁12の数が増えるほどコストが高くなるので現実的ではない。
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決し、広範な領域にわたって存在する硝酸性窒素汚染地下水に対して、短期間で硝酸性窒素の処理を行うことができる硝酸性窒素含有地下水の浄化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、広範な領域にわたって存在する硝酸性窒素汚染地下水に対して、短期間で硝酸性窒素の処理を行うためには、特開2010-12438号公報に開示されている硫黄カルシウム系無機質剤を敷地全体にできるだけ広範囲に行き渡らせる方法が有効であり、このような方法として、硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末を、地中の帯水層に複数点注入する方法が有効であると考えた。粉末を汚染地下水領域全体にまんべんなく均一に分布させることは現実的には容易ではないが、適当な間隔でできるだけ多くの地点に注入すれば、敷地全体の地下水に含まれる硝酸性窒素の処理期間の短縮が可能となる。一方で、この注入点は、ボーリング等で容易に設けることができ、透過壁の構築のような大規模な工事を必要とせず、比較的安価に実施可能である。
【0011】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0012】
[1] 硝酸性窒素含有地下水の帯水層に、硫黄粉末および炭酸カルシウム粉末を注入することにより該硝酸性窒素含有地下水を浄化する方法であって、該硫黄粉末の粒径が0.1〜500μmであり、かつ水への分散性を高めたものであり、該炭酸カルシウム粉末の粒径が0.1〜500μmであることを特徴とする硝酸性窒素含有地下水の浄化方法。
【0013】
[2] [1]において、水への分散性を高めた該硫黄粉末がコロイド硫黄であることを特徴とする硝酸性窒素含有地下水の浄化方法。
【0014】
[3] [1]又は[2]において、該硫黄粉末が界面活性剤で処理して水への分散性を高めたものであることを特徴とする硝酸性窒素含有地下水の浄化方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の小粒径かつ水分散性を有する硫黄微粉末と炭酸カルシウム微粉末を硝酸性窒素含有地下水の帯水層に直接注入するのみで、透過壁の構築などの大規模な工事を必要とすることなく、硝酸性窒素で汚染された地下水を短期間で効率的に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の硝酸性窒素含有地下水の浄化方法の実施の形態を示す汚染地下水領域が存在する敷地の模式的な平面図である。
【図2】実施例1,2及び比較例1の結果を示すグラフである。
【図3】特開2010-12438号公報の透過壁による浄化方法の一例を示す汚染地下水領域が存在する敷地の模式的な平面図である。
【図4】特開2010-12438号公報の透過壁による浄化方法の他の例を示す汚染地下水領域が存在する敷地の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の硝酸性窒素含有地下水の浄化方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明においては、粒径が0.1〜500μmの硫黄粉末と粒径が0.1〜500μmの炭酸カルシウム粉末を、硝酸性窒素含有地下水の帯水層に注入することにより該硝酸性窒素含有地下水を浄化する。
【0019】
[作用機構]
硝酸性窒素の硫黄酸化細菌による脱窒は、以下の反応式(KOENIG&LIU)に従って行われる。硫黄酸化細菌は硝酸性窒素中の酸素を用いて呼吸し、硫黄を硫酸イオンに酸化することでエネルギーを獲得して生息している。
1.06NO+1.11S+0.3CO+0.785HO→
0.5N+1.11SO2−+1.16H+0.06C
【0020】
このように硫黄酸化細菌は硫黄を取り込む必要があるため、硫黄粉末と地下水との接触面積が大きい方が、この反応は効率よく行われる。本発明では、粒径0.1〜500μmの硫黄微粉末を用いるため、汚染地下水との接触面積を十分に確保して、効率的な脱窒を行える。
【0021】
上記脱窒反応で放出された硫酸イオンは、pHを下げ、地下水を酸性化させるが、同時に注入された炭酸カルシウム粉末中のカルシウムイオンと結合することで、硫酸カルシウムとなり、地下水のpH低下を抑制できる。ここで、硫酸イオンの中和剤(pH緩衝剤)としての炭酸カルシウムの使用で生成するイオンは、炭酸イオン、重炭酸イオン、カルシウムイオンであり、また、中和で生成する塩も硫酸カルシウムであり、これらはいずれも地下水中に天然に存在し、害のないものであるため好ましい。
【0022】
硫黄酸化細菌は、地下水中に普遍的に存在すると考えられ、本発明では、硫黄粉末および炭酸カルシウム粉末を地中の帯水層に注入するのみで、硫黄酸化細菌の働きにより、硝酸性窒素の脱窒を行うことができる。
【0023】
なお、前述の如く、特開2010-12438号公報では、脱窒で生成した窒素ガスを抜くために、粒径1mm以上の硫黄カルシウム系無機質剤を用いている。
一方、本発明の場合、帯水層の土壌間隙に1mm未満の硫黄微粉末および炭酸カルシウム微粉末を注入するので、脱窒で生成した窒素ガスは地上に抜け難い構造と考えられる。しかし、本発明は、透過壁のように限られた範囲内において、上流から連続的に供給される地下水中の硝酸性窒素を対象として脱窒するのではなく、その場所に存在する地下水中の硝酸性窒素を脱窒対象とする。従って、その場所に存在する地下水中の硝酸性窒素をすべて浄化することができれば、それ以降窒素ガスの生成はなく、また、地下水の透過性を確保する必要性もないので、窒素ガスの抜けにくさは問題とはならない。
【0024】
[硫黄粉末および炭酸カルシウム粉末]
本発明における硫黄粉末とはゼロ価の硫黄である。ただし一部の硫黄は電荷をチャージしている可能性もある。
【0025】
本発明で用いる硫黄粉末および炭酸カルシウムの粒径は、0.1〜500μmであり、この粒径範囲の粉末であれば、土壌間隙を円滑に通過することができる。より好適な粒径範囲は汚染地下水領域の土質によって異なるが、好ましくは0.5〜100μmであり、平均粒径として0.7〜50μm程度であることが好ましい。このような粒径であれば、比較的広い範囲の土質に対しても土壌間隙を通過し、注入した際に到達する拡散領域の半径が大きく、汚染地下水領域の浄化に必要な注入点も少なくなるため好適である。
また、前述の如く、このような粒径の細かい硫黄粉末を用いることで、地下水と硫黄粉末の接触面積が大きくなることから、硝酸性窒素の処理効率も大きくなると考えられる。
【0026】
なお、注入後の浄化効果を考えると、炭酸カルシウム粉末は、粒径0.1〜500μmと十分に小さく、水に懸濁させた状態でも水になじみ易く、水分散性に問題はないが、硫黄粉末は水に懸濁させると、粒子表面が水をはじき易く、特に粒径の小さい粉末状の硫黄は水面に浮いてしまう傾向にある。このため、硫黄粉末を地下水中に注入しても、地下水面に浮くか、地中に留まったとしても団粒状になって、水との有効接触面積が小さくなり、地下水と硫黄粉末とが十分に接触せず、硫黄酸化脱窒菌が硫黄を有効に利用できずに、硝酸性窒素の脱窒が円滑に進行しない可能性がある。特に、予めスラリー状にして硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末を注入する場合は、上記理由で硫黄粉末が液中に分散しないため、炭酸カルシウム粉末と硫黄粉末とが十分に混合しない可能性があり、また、硫黄が団粒状になると注入ポンプを詰まらせるなど機器の故障の原因となる恐れもある。
【0027】
そこで、本発明では、界面活性剤を添加する、あるいは表面改質を施すことにより水への分散性を高めた硫黄粉末を用いる。このようなものとして、分散性硫黄、あるいはコロイド硫黄など、予め水への分散性を高めた市販品が流通しており、これらの市販品を利用することも有効である。
【0028】
また、界面活性剤の種類としては特に制限はないが、一定期間、硫黄粉末の分散性を維持できるものであればよく、生分解性のものや、生物に対する毒性の少ないものが好ましい。
硫黄粉末が水をはじくのは表面が疎水性のためと考えられるため、例えば、下記のような化学式で示されるノニオン性界面活性剤を、硫黄粉末の重量に対し0.1〜5重量%程度混合すればよいが、硫黄粉末の分散性を一定期間維持できるものであれば、界面活性剤の種類や使用量は特に限定されない。
【0029】
【化1】

【0030】
硫黄粉末の注入量は、前記脱窒反応式より、硝酸性窒素含有地下水中の硝酸性窒素の1.11/1.06(モル比)あればよく、汚染地下水領域の硝酸性窒素量の1.11/1.06(モル比)以上の量を複数の地点から注入すればよいが、実際にはすべての硫黄粉末が有効に使われない可能性もあるので、十分な量を確保して注入する。硫黄粉末の注入量は、汚染地下水領域の地下水の硝酸性窒素濃度によっても異なるが、地下水に対して0.02〜5g/L程度注入することが好ましい。硫黄粉末の注入量が少な過ぎると硝酸性窒素含有地下水中の硝酸性窒素を十分に脱窒除去し得ず、必要以上に過剰注入することはコスト面等から好ましくない。
【0031】
一方、炭酸カルシウム粉末の注入量は、前記脱窒反応式より、硫黄粉末と等モルの硫酸イオンが生成するので、これを中和するためには等モルの炭酸カルシウムがあればよく、注入する硫黄粉末と等モルの炭酸カルシウム粉末を注入すればよいが、実際には、すべての炭酸カルシウム粉末が硫酸イオンの中和に使われない可能性があるので、十分な量を確保して注入する。炭酸カルシウム粉末は、汚染地下水領域の地下水の硝酸性窒素濃度、硫黄粉末の注入量によっても異なるが、地下水に対して、0.05〜10g/L程度注入することが好ましい。炭酸カルシウム粉末の注入量が少な過ぎると脱窒で生成した硫酸イオンを十分に中和することができず、必要以上に過剰注入することはコスト面等から好ましくない。
【0032】
硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末とは予め混合して注入してもよく、またこれらを別々に注入してもよいが、注入効率の面で予め混合して注入することが好ましい。この場合、硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末とは、ほぼ等モルで混合することが好ましく、重量比としては、硫黄粉末:炭酸カルシウム粉末=1:1〜10程度とすることが好ましい。
【0033】
また、ポンプを用いて帯水層に効率的に注入するために、硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末とは、水スラリーとして注入することが好ましく、この場合、注入する水スラリーの濃度は、硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末との合計濃度として0.1〜20重量%程度であることが好ましい。この水スラリーの濃度が低過ぎると注入効率が悪く、高過ぎるとポンプの閉塞などの送液障害が起こるおそれがある。
【0034】
[注入点]
本発明の硝酸性窒素含有地下水の浄化方法では、具体的には、先端側に吐出孔を形成したスラリー注入用ロッドを、打撃式ボーリングマシーンなどを用いて汚染地下水領域に挿入し、このスラリー注入用ロッドを介して前述の硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末を含む水スラリーを汚染地下水領域の帯水層に注入することが好ましい。
【0035】
図1は、このように、敷地10内の汚染地下水領域11にスラリー注入用ロッドを打ち込んだ注入点1を示す図であり、スラリー注入用ロッドを所定間隔を設けて複数打ち込み、複数の注入点1から硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末を含む水スラリーを注入している。
【0036】
この方法は、透過壁の構築の場合のような、掘削などの大規模な工事を必要としないため、注入点が多くても、比較的安価に実施することができる。なお、図1では注入点1のロッドからスラリーが放射状に拡散した拡散領域2を円形に示しているが、実際には地下水の流れの影響を受けて注入点1から注入されたスラリーは時間経過と共に下流側に流される。
【0037】
注入点1同士の間隔は、汚染地下水領域の土質や汚染状況や浄化期間の設定にもよるが、概ね0.5〜10m、特に0.5〜2m程度とすることが好ましい。注入点の間隔は、すべての帯水層に硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末を含む水スラリーが行き渡るような間隔とすることが好ましく、例えば、一点で注入試験を行って、スラリーが到達する距離を測定した上で決定することが好ましい。また、地下水の流れ、スラリーの拡散を考慮して、シミュレーション等でこの間隔を決めてもよい。
【0038】
硫黄粉末と炭酸カルシウム粉末を含む水スラリーの帯水層への注入時ないしは注入後は、地下水の硝酸性窒素濃度、硫酸イオン濃度、炭酸イオン濃度(重炭酸イオン濃度)、pHなどについてモニタリングを行って、必要な対策を講じる。例えば、炭酸イオン濃度(重炭酸イオン濃度)の上昇が不十分な領域の処理状況が良くないという結果が出た場合には、当該領域に炭酸カルシウム粉末を追加で注入するか、経時的に炭酸イオンが拡散するのを待つ。また、炭酸イオン濃度(重炭酸イオン濃度)の上昇が順調であるにも拘わらず処理状況が良くないという結果が出た場合には、硫黄酸化細菌の増殖に時間がかかっていると判断し、そのまま硫黄酸化細菌の増殖を待つ。
【実施例】
【0039】
以下に、硝酸性窒素含有地下水の浄化を模擬する実験例及び比較実験例を実施例及び比較例として挙げる。
【0040】
[実施例1]
硝酸性窒素含有地下水の模擬水として、以下の試料水を調製して、硝酸性窒素の脱窒処理実験を行った。
【0041】
<試料水>
水道水を脱有効塩素の目的で、オートクレーブで処理し(120℃、20分)、放冷後、硝酸カリウムを20mg−N/L、NaHPO、KHPOをそれぞれ5mg−P/Lずつ添加したもの。
【0042】
40mLのI−CHEMバイアル瓶に、コロイド硫黄(細井化学工業社製「特級コロイド硫黄M」、200メッシュ(硫黄粉末の平均粒径50μm)、分散剤1.5重量%、硫黄97.6重量%)0.19gと、炭酸カルシウム粉末(日東粉化工業社製「NITOREX30P」、平均粒径0.7μm)1.2gを添加し、更に試料水を満たして密栓した。このようなサンプルを6本作成し、30℃で静置して、一定時間毎にサンプル水中の硝酸性窒素濃度を測定した。硝酸性窒素濃度の経時変化を図2に示す。なお、この硝酸性窒素濃度は、6本のサンプルを一定時間毎に1本ずつ開封して検液を採取して分析することにより得た。
【0043】
[比較例1]
コロイド硫黄と炭酸カルシウム粉末を用いず、バイアル瓶に試料水のみを満たしたこと以外は実施例1と同様に実験を行って、結果を図2に示した。
【0044】
[比較例2]
コロイド硫黄の代わりに、硫黄微粉末(細井化学工業社製、200メッシュ(平均粒径50μm))0.19gを用いた以外は実施例1と同様に実験を行って、結果を図2に示した。
【0045】
図2に示されるように、水への分散性を改善したコロイド硫黄と炭酸カルシウム粉末を硝酸性窒素含有水に添加することにより、短期間で硝酸性窒素を検出限界値以下にまで脱窒処理することができた。
【符号の説明】
【0046】
1 注入点
2 拡散領域
10 敷地
11 汚染地下水領域
12 透過壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸性窒素含有地下水の帯水層に、硫黄粉末および炭酸カルシウム粉末を注入することにより該硝酸性窒素含有地下水を浄化する方法であって、
該硫黄粉末の粒径が0.1〜500μmであり、かつ水への分散性を高めたものであり、
該炭酸カルシウム粉末の粒径が0.1〜500μmであることを特徴とする硝酸性窒素含有地下水の浄化方法。
【請求項2】
請求項1において、水への分散性を高めた該硫黄粉末がコロイド硫黄であることを特徴とする硝酸性窒素含有地下水の浄化方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、該硫黄粉末が界面活性剤で処理して水への分散性を高めたものであることを特徴とする硝酸性窒素含有地下水の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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