説明

硫化水素検知材

【課題】硫化水素に対する選択性が高く、取扱いが簡単な硫化水素検知材を提供する。
【解決手段】濃度0.85vol%乃至8.5vol%の多価アルコールに溶解させた銀塩をガス通気性を備えた担体に担持させて構成されている。担体を反応液に浸漬して十分にしみ込んだ段階で、担体を引き上げて、溶媒中のメタノールを室温で蒸発させる。これにより、銀塩を多価アルコールに溶解させた状態で担体に担持させた検知材が完成する。このように構成された検知材は、被検ガス中の硫化水素に晒されると、硫化水素が多価アルコールに溶け込み、同じく多価アルコールに解けている銀塩が硫化水素と反応し、この反応量に対応した硫化銀を生成する。したがって、硫化銀の析出量、つまり硫化水素の濃度は、担体の光学濃度に比例するから、光学濃度を検出することにより簡単に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境中の存在する硫化水素を呈色反応により検出するためのガス検知材に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に存在する硫化水素は、電気化学式ガスセンサーなどにより検出できるものの、電気化学式ガスセンサーは、ガスの選択性が低いため、他のガスが混在する環境では除去用フィルタを必要とするなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、硫化水素に対する選択性が高く、取扱いが簡単な硫化水素検知材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために請求項1の発明は、濃度0.85vol%乃至8.5vol%の多価アルコールに溶解させた銀塩をガス通気性を備えた担体に担持させて構成されている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、環境中の湿度にかかわり無く、バックグラウンドの変化を防止して正確に硫化水素の濃度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
本発明の検知材は、硫化水素により還元されて金属銀を生成する銀塩を、好ましくは通気性を有する例えばセルロースからなる担体に担持させて構成されている。
【0007】
硫化水素と反応して金属銀を生成する銀塩としては、硝酸銀、過塩素酸銀、パラトルエンスルホン酸銀、硫酸銀等が存在する。
これらの銀塩を容易に溶解させ、かつ常温における揮発性が極めて低い保水性を有するグリセリン、エチレングリコールなど多価アルコールに溶解させ、その上で、多価アルコールの粘度を低下させて容易に担体に塗布、または含浸させるためにメタノールにより希釈して反応液に調製されている。
【0008】
担体を反応液に浸漬して十分にしみ込んだ段階で、担体を引き上げて、溶媒中のメタノールを室温で蒸発させる。これにより、銀塩を多価アルコールに溶解させた状態で担体に担持させた検知材が完成する。
【0009】
このように構成された検知材は、被検ガス中の硫化水素に晒されると、硫化水素が多価アルコールに溶け込み、同じく多価アルコールに解けている銀塩が硫化水素と反応し、この反応量に対応した硫化銀を生成する。したがって、硫化銀の析出量、つまり硫化水素の濃度は、担体の光学濃度に比例するから、光学濃度を検出することにより簡単に検出できる。
【0010】
ところで、多価アルコールは、吸湿剤でもあるため、被検ガスの水分を吸収する。そして吸収した水分量が多い場合には担体の表面に滲み出て水の層が形成されて、検出器への反射光の光量が減少すること、つまりバックグラウンド値に変化を生じさせることになる。
このようなバックグラウンド値の変化は、直接、指示値として現れるので測定誤差となる。
【0011】
図1は、担体の多価アルコールの濃度と硫化水素を含まない相対湿度85%のエアによる支持値、つまりバックグランド値の関係(図中、符号A)、及び相対湿度85%のエアに所定濃度の硫化水素を含む場合の支持値(図中、符号B)の変化との関係を調査したもので、多価アルコールが0.85vol%乃至8.5vol%程度、より好ましくは2vol%乃至5vol%ならば、相対湿度80%程度までは測定誤差を生じるほどの水の層が形成されてないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】担体に含まれる多価アルコールの濃度と湿度に起因するバックグラウンドとの関係を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度0.85vol%乃至8.5vol%の多価アルコールに溶解させた銀塩をガス通気性を備えた担体に担持させて構成された硫化水素検知材。
【請求項2】
前記多価アルコールが2vol%乃至5vol%である請求項1に記載の硫化水素検知材。
【請求項3】
前記銀塩が、硝酸銀、過塩素酸銀、パラトルエンスルホン酸銀、硫酸銀から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の硫化水素検知材。

【図1】
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【公開番号】特開2006−343282(P2006−343282A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171156(P2005−171156)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】