説明

硫酸銅めっき浴の管理方法及び銅めっき皮膜の製造方法

【課題】本発明は、生産に使われない物性評価用の銅めっき皮膜を製造することなく、グラビア版を製造しながら銅めっき皮膜を形成した当初の硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することであり、特にグラビア版の製造工程における機械的彫刻およびバラード剥離に適した銅めっき皮膜を安定的に製造するために、硫酸銅めっき浴中に添加するハードナーの添加濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】機械彫刻後のシリンダーから銅バラードを剥離し、銅めっき皮膜表面の引っかき試験を行うことによって、硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定する方法としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸銅めっき浴の管理方法及びこの管理方法により管理された硫酸銅めっき浴を用い、特に、グラビア印刷等に使用されるグラビア版及び電鋳法により作製される金型等に施す銅めっき皮膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷における印刷版製造工程を図1に示す。まず、表面(最外層)が銅(下地銅)、中間層がニッケル、そして最も芯に近い層が鉄またはアルミニウムであるシリンダー(グラビア印刷用版胴)の、下地銅の表面を研磨等で整備する(ステップS1)。
【0003】
その後、剥離層を形成するための剥離液をシリンダー表面に塗布し(ステップS2)、その上から銅めっきを施して銅めっき皮膜を形成する(ステップS3)。
【0004】
そして、機械的彫刻方法(ステップS4)または腐蝕法(ステップS5)により、銅めっき皮膜にセルと呼ばれる多数の窪みを形成する。
【0005】
腐食法による工程を図2に示す。まずはシリンダーの銅めっき皮膜の表面に感光剤を塗布(ステップS5−1)し、レーザー光を照射してセルに該当する部分の感光剤を露光する(ステップS5−2)。そのシリンダーを現像液に浸漬させると、セルに該当する部分の感光剤が溶解し、銅めっき皮膜の表面が露出する(ステップS5−3)。さらにそのシリンダーに、腐食液を塗布すると、感光剤に覆われた部分は変化しないが、銅めっき皮膜が露出している箇所は銅が溶解しセルが形成される(ステップS5−4)。最後にシリンダーに残った感光剤を、感光剤剥離液に浸漬して剥離する(ステップS5−5)、といった工程である。
【0006】
セル形成後、シリンダー表面の銅めっき皮膜に、グラビア印刷工程における耐刷性を持たせるためにクロムめっきを施す(ステップS6)。また近年では、環境問題への対応から、クロムめっきの代替としてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜をCVD法またはPVD法などで積層させる方法もある。完成したグラビア印刷用版(ステップS8)は、グラビア印刷工程で使用される(ステップS9)。
【0007】
ここで、銅めっき皮膜形成の前に剥離層を形成しているのは、グラビア印刷工程終了後の落版時に銅めっき皮膜を剥離して取り除くことができるようにするためである。この銅めっき皮膜をシリンダーの下地銅から剥離(ステップS10)したものをバラードと呼ぶ。
【0008】
この剥離工程(ステップS10)が完了したシリンダーは、再度、下地銅の表面整備(ステップS1)工程に戻って再利用される。このように、銅めっき皮膜形成の前に剥離層を形成しておくと、シリンダーの下地銅を切削する手間が省け、かつシリンダーを再利用できる、という利点がある。
【0009】
ところで、機械的彫刻方法においては銅めっき皮膜表面をダイヤモンドの針で彫刻して、印刷される絵柄に対応した位置に多数のセルを形成する。機械的彫刻による方法は、セル径と版深によって色の濃淡を表現できることから、印刷時にライト部の着肉が安定し、階調性のある印刷物を得ることができるという特徴がある。
【0010】
機械的彫刻方法に適した機械加工適性を有する銅めっき皮膜を得るためには、各種の添加剤を添加した硫酸銅めっき浴を使用するのが一般的である。
【0011】
上記の機械的加工適性を有する銅めっき皮膜を得るための、硫酸銅めっき浴への添加成分(添加剤)としては、表面の光沢性の向上を目的としてブライトナーおよびポリマー、レベリング性の向上を目的としたレベラーのほかに、機械的加工適性のある物理的性質を確保するためのハードナーと呼ばれる添加剤などがある。
【0012】
グラビア用印刷版の機械的彫刻適性に関する物理的性質評価方法としては、従来から銅めっき皮膜のビッカース硬さ等の押し込み硬さによる方法が行われている。このビッカース硬さによる評価では、彫刻される銅めっき皮膜の適正な範囲は180〜230とされているが、上記ハードナーなしの硫酸銅めっき浴では、このビッカース硬さの値の範囲を実現することは困難であった。
【0013】
ビッカース硬さが上記の適正範囲より小さい銅めっき皮膜の場合、セルの大きさが目的とする大きさよりも大きくなってしまう、セル形状が崩れてしまう、バリが発生してしまうなどの現象が見られ、このビッカース硬さの評価方法による判断は概ね妥当なものとされている。
【0014】
上記添加剤の管理のための手段として、簡易的にはハルセル試験による目視評価が行われている。この評価方法は、光沢範囲の変化によって添加剤の消耗の度合いを推測することができるが、定量的に評価する方法としては向いていない。
【0015】
一方、ハードナーの浴中濃度の定量については、ハードナーの一成分である有機窒素含有ポリマーの添加濃度に着目して分析、管理するという従来技術がある(特許文献1)。しかし、種々の添加剤を含むめっき液中のハードナーの濃度を直接定量することが可能な分析手法は未だ確立されていない。
【0016】
現状では、ハードナーの定量方法としては、ハードナーを所定量添加した場合に、銅めっき皮膜のビッカース硬さがどのくらい増加するかを測定して、ハードナーの浴中濃度を推定し、それによってハードナーの添加量を管理する方法が行なわれている。
【0017】
ハードナーの浴中濃度が比較的低い領域においては、ハードナーの浴中濃度が増加するにつれて、銅めっき皮膜のビッカース硬さも、所定の割合で増加するため、上記のようなハードナーの添加量管理方法を適用することは可能である。
【0018】
しかしながら、ハードナーの浴中濃度が高い領域においては、ハードナーの浴中濃度が増加しても、銅めっき皮膜のビッカース硬さはほとんど増加しない領域がある。このようなハードナーの高濃度領域においては、上記のようなハードナーの添加量管理方法は銅めっき皮膜の機械的彫刻適性を判断するのには測定精度不足となってしまい、適用することは困難であり使用できなかった。
【0019】
さらに、ハードナーが適正値以上に添加されると、光沢異常やキズ状の欠陥の発生といっためっき皮膜の外観の欠陥が発生するという問題があった。
【0020】
また、銅めっき皮膜が異常に硬い場合、彫刻針の磨耗度が大きくなって彫刻針の寿命を縮めてしまうという問題や、彫刻中に彫刻針が欠けてしまって正常なセルを形成できず、損版になってしまうという問題もあった。
【0021】
さらに、ハードナーが適正値以上に添加されると、銅めっき皮膜(またはバラード)を構成する銅の展性や延性が失われてしまう。そのような場合、落版時にバラードを引張り剥がす際、バラードが最後まで剥離できないで途中で切れてしまい、バラード剥離に手間がかかってしまうという問題があった。これら彫刻針の欠け、バラードの剥離適性については、ビッカース硬さでの評価方法では判断することができなかった。
【0022】
ビッカース硬さに代わる浴中のハードナー濃度の定量については、引張試験による公称歪み量、引張強さ、破断強さの少なくとも一つから推定する方法がある(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0023】
この方法によれば、銅めっき皮膜の物理的性質の評価を、ビッカース硬さ等の押し込み硬さに代え、引張変形における応力−歪み曲線の特性値から求められる公称歪み量、引張強さ、破断強さのいずれかとしたので、押込み硬さでは測定できなかったより詳細な情報を得ることができ、さらにその情報と添加剤濃度との相関を把握することによって、上記銅めっき浴中の添加剤の濃度を管理することができるというものである。
【0024】
しかしながら、上記引張試験によるハードナー濃度の定量方法を実施するにあたり、試験用の銅めっき皮膜を作製する必要があり、グラビア印刷版を生産しながら硫酸銅めっき浴を管理する方法が無いというのが現状である。
【0025】
また、クロムめっき皮膜またはDLC膜などの保護膜を形成させた後では、銅皮膜単体の引張試験物性を知ることは困難である。
すなわち、クロムめっき皮膜またはDLC膜などの保護膜がある状態で引張試験物性を測定しても、銅皮膜単体の引張試験物性を測定したことにはならないからである。また、クロムめっき皮膜を塩酸または硫酸で溶解して除去した場合、これら酸による影響が銅皮膜にも及んで、引張試験物性が変動してしまう。したがって、硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度の正確な定量を行うことができないという問題があった。
【0026】
また、彫刻の際の彫刻針欠けなどの彫刻不良、または落版時のバラード剥離不良が生じたときに、遡って硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することができないという問題があった。
【0027】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特許第4432422号公報
【特許文献2】特許第4770271号公報
【特許文献3】特許第4770272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、かかる従来の問題点を鑑みなされたものであり、その課題とするところは、生産に使われない物性評価用の銅めっき皮膜を製造することなく、グラビア版を製造しながら銅めっき皮膜を形成した当時の硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することであり、特にグラビア版の製造工程における機械的彫刻およびバラード剥離に適した銅めっき皮膜を安定的に製造するために、硫酸銅めっき浴中に添加するハードナーの添加濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した銅めっき皮膜表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法、としたものである。
【0031】
また、請求項2の発明では、
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面に少なくとも1層以上の保護膜が積層された銅めっき皮膜の、前記皮膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法、としたものである。
【0032】
また、請求項3の発明では、
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が積層された銅めっき皮膜の、前記DLC膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法、としたものである。
【0033】
また、請求項4の発明では、
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面に少なくとも1層以上の金属めっき皮膜が積層された銅めっき皮膜の、前記金属めっき皮膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法、としたものである。
【0034】
また、請求項5の発明では、
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面にクロムめっき皮膜が積層された銅めっき皮膜の、前記クロムめっき皮膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法、としたものである。
【0035】
さらにまた、請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の硫酸銅めっき浴の管理方法で管理されためっき浴を用いて、電気めっきまたは電鋳法でめっきすることを特徴とする銅めっき皮膜の製造方法、としたものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0037】
即ち、上記請求項に係る発明によれば、機械的彫刻後のシリンダーから銅バラードを剥離し、銅めっき皮膜表面の引っかき試験を行うことによって、銅めっき皮膜形成当時の硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することができるようになった。
【0038】
また、腐食法において例えば、感光剤などの膜が銅表面上に形成された後でも、これら積層された皮膜を化学的処理などで溶解することなく、バラード剥離後に銅めっき皮膜表面の引っかき試験を行うことによって、銅めっき皮膜当時の硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することができるようになった。硫酸銅めっき浴が共通で、機械的彫刻法と腐食法の両方の製造ラインを有する場合に有用である。
【0039】
また、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜またはクロムめっき皮膜などの保護膜を形成させた後でも、これら積層された皮膜を化学的処理などで溶解することなく、バラード剥離後に銅めっき皮膜表面の引っかき試験を行うことによって、銅めっき皮膜形成当時の硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することができるようになった。
【0040】
また、グラビア版印刷後でも、バラード剥離後銅めっき皮膜表面の引っかき試験を行うことによって、銅めっき皮膜形成当時の硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することができるようになった。
【0041】
以上のことから、生産に使われない銅めっき皮膜を製造することなく、グラビア版を製造しながら硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度を推定することができるようになった。
【0042】
さらには、引っかき試験によって得られる引っかき抵抗力を管理し、その値に応じてハードナーの添加量を制御することができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】グラビア印刷用版の製造工程の説明図
【図2】グラビア印刷用版の製造工程のうち、腐食法の工程の説明図
【図3】実施例1におけるハードナー濃度と引っかき抵抗力の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に本発明の実施形態を説明する。
【0045】
まず、シリンダーの表面に銅めっき皮膜を形成する。銅めっき皮膜を形成するための銅めっき浴としては、硫酸銅めっき浴を用いる。特に断りのない限り、その銅めっき浴の組成としては、硫酸銅五水和物200〜240g/L、硫酸40〜80g/L、塩化ナトリウム180〜240mg/Lをイオン交換水に溶解したものに、各種の添加剤を加えたものが用いられる。
【0046】
表1に、銅めっき浴に添加される、代表的な銅めっき添加剤の一覧を示した。
【表1】

【0047】
銅めっき皮膜形成の後、バラードの剥離は、機械的彫刻実施後、もしくはクロムめっき皮膜形成またはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜などの保護膜形成後、もしくはグラビア印刷実施後のいずれかの時に行うことが可能である。
通常時のバラードの剥離は、グラビア印刷が終了してその版が不要になった時点で行うものであるが、機械的彫刻の途中もしくは終了直後に彫刻不良などが判明した場合は、その時点でバラード剥離してもよい。同様に、クロムめっき皮膜形成またはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜などの保護膜を形成後に何らかの不良が判明した場合は、その時点でバラード剥離してもよい。
【0048】
なお、硫酸銅めっき浴中のハードナー濃度が極端に低い場合、銅めっき皮膜の経時変化により硬度低下が起きることがある。本発明においては、このような硬度低下が起きていない期間内に、バラード剥離から引っかき試験物性の測定までを行う必要がある。
【0049】
まず、剥離したバラードを、適当な大きさに切断する。
次に、引っかき試験物性の測定対象面とするほうの銅めっき皮膜表面を、紙やすり等で研磨する。
剥離したバラードが何も積層されていない銅めっき皮膜のみの場合、測定対象とする面はめっき析出面(シリンダー表面となる側)でも剥離面(剥離層と接する側)でも構わない。
剥離したバラードにクロムめっき皮膜またはDLC膜などの保護膜が積層されている場合は、測定対象とする面は剥離面(すなわちクロムめっき皮膜またはDLC膜などの保護膜が積層されていない面)のみとなる。
【0050】
測定対象とする面の研磨は、銅めっき皮膜表面の酸化膜(酸化銅の層)を除去するためと、銅めっき皮膜表面の凹凸を除去するために行うものである。表面に酸化銅の層があると、銅めっき皮膜自体の引っかき試験物性を正しく測定できないし、また表面に凹凸があると、引っかき試験物性を測定するためのプローブがその凹凸に引っかかるので、正しい測定値を出すことができないからである。なお、剥離面のほうは表面の凹凸が大きいので、剥離面を測定対象面とする場合は、この研磨はより丁寧に行なうことが望ましい。
【0051】
研磨した後、引っかき試験装置としてはんだボールテスターを用い、引っかき抵抗力を感知するロードセルに装着された針で、銅めっき皮膜表面を350μm/sの一定速度で一定区間の距離をなぞる。走行距離−引っかき抵抗力のグラフから、引っかき抵抗力の最大値を読み取る。これら読み取られた抵抗力から、添加剤としてのハードナーの濃度が計算される。
【0052】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0053】
ハードナーとして、大和特殊株式会社製のコスモG1を用い、その濃度を変えた硫酸銅浴を作成し、シリンダーに前記条件でそれぞれの濃度の硫酸銅浴を用いて銅めっき皮膜を作製した。
【0054】
上記で得られた銅めっき皮膜を剥離後、適当な大きさに切断し銅皮膜表面を研磨した後、前記の条件で引っかき試験を行い、走行距離−引っかき抵抗力の関係図を得た。そこから抵抗力の最大値を読み取り、添加剤の濃度を変えたときの引っかき抵抗力と添加剤(ハードナー)濃度との関係式を得た。その結果を図3に示す。
【0055】
本発明の銅めっき浴の管理方法および銅めっき皮膜の製造方法によって、従来の引張試験に代わる銅めっき添加剤の管理方法を確立できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、出版・包装・建材分野をはじめとして広く用いられるグラビア印刷用シリンダーの銅めっき皮膜の表面外観及び機械的彫刻適性の安定化に用いられる。さらには電鋳法により作成される金型及び一般的には銅箔の製造工程の安定化に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した銅めっき皮膜表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法。
【請求項2】
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面に少なくとも1層以上の保護膜が積層された銅めっき皮膜の、前記皮膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法。
【請求項3】
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が積層された銅めっき皮膜の、前記DLC膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法。
【請求項4】
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面に少なくとも1層以上の金属めっき皮膜が積層された銅めっき皮膜の、前記金属めっき皮膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法。
【請求項5】
硫酸銅めっき浴の添加剤の濃度を管理する硫酸銅めっき浴の管理方法において、
前記添加剤を含む硫酸銅めっき浴から析出した後、片面にクロムめっき皮膜が積層された銅めっき皮膜の、前記クロムめっき皮膜が積層されていない側の表面の引っかき試験物性から、前記硫酸銅めっき浴の前記添加剤濃度を定量し、それを用いて前記添加剤濃度を管理することを特徴とする硫酸銅めっき浴の管理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硫酸銅めっき浴の管理方法で管理されためっき浴を用いて、電気めっきまたは電鋳法でめっきすることを特徴とする銅めっき皮膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−82989(P2013−82989A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52941(P2012−52941)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)