説明

硫黄を含まない彫塑用材料およびその製造方法

本発明は、硫黄を含まない彫塑用材料およびその製造方法に関するものであり、より具体的には、従来の彫塑充填組成物の成分として硫黄を含む彫塑用材料、特に産業用彫塑材料の代わりとなる硫黄を含まない新規な彫塑用材料およびその製造方法に関する。本発明の彫塑用材料は、従来とは異なり硫黄を含まないため、硫黄による環境汚染および悪臭が発生する恐れがなく、硫黄より比重が小さい材料を使用することにより、モデリング作業が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄を含まない(Non-sulfurous)彫塑用材料およびその製造方法に関するものであり、より具体的には、従来の彫塑充填組成物の成分として硫黄を含む彫塑用材料、特に、産業用彫塑材料の代わりとなる硫黄を含まない新規な彫塑用材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、美術教育用、展示会、映画、アニメーションなどに用いられている彫塑(彫刻)用材料としては、石膏材、石鹸材、ゴム材、樹脂材などがある。石膏材は、使用者が望む形に彫刻する時に石膏粉が多く飛散するという問題点があった。そのため、石膏粉によって周辺が汚れ、特に、免疫能力が十分でない子供たちの健康に害を及ぼす恐れがあった。また、石鹸材は臭いがきつく、大きさが小さいため相対的に小さく製作されるしかなかった。これらのことから、環境に優しい彫塑用材料として不適切であり、使用者が望む形に彫刻するのに非常に制限があるという問題点があった。ゴム材は、ゴム同士の結合力は良いが、硬化しにくい。これにより、使用者は美麗な立体形態を製作するのに困難があった。樹脂材は、使用者が樹脂材を望む形状に彫刻するためには、硬いプラスチックを適切な力で加圧して彫刻しなければならない。したがって、作業速度が落ち、不注意なミスで手にケガをするなどの問題点があった。特に、知覚能力が十分でない子供たちが使用するには、樹脂材が非常に硬いことから手にケガをすることが頻繁であった。
一方、自動車モデルの製作素材として主に用いられる産業用彫塑材料は、普段は硬く固まっているが、オーブンに入れ熱を加えるとやわらかくなり、このやわらかくなった状態で自動車モデルを製作するための概略的な形状を作る。概略的な形状が完成した後、自動車モデル用彫塑材料が常温で硬く固まってから、モデルを彫刻刀などを用いて繊細に彫刻して完全な自動車モデルを作る。
ところが、従来の自動車モデルを製作するための彫塑用材料には多量の硫黄成分が含まれている。したがって、彫塑用材料をクレーオーブン(clay oven)から取り出して作業する時に、硫黄ガスが彫塑用材料から多量に排出され不快な臭いがするため、作業者は頭痛を訴える場合がある。そして使用後の廃棄物処理がかなり難しい。腐らないため埋め立ては不法であり、焼却する場合は公害物の亜硫酸ガスおよびダイオキシンが大気中に排出されるなど、不法廃棄物に対する不法埋め立てを事前に予防できないという問題点があった。また、硫黄の比重が大きいため、同じ体積のモデルを製作したとしても、非常に重くてモデルの運搬が難しいという問題点があった。
したがって、近年は上述の彫塑用材料を改善させるための、すなわち、環境に優しく安定性に優れ、且つ作業の容易性および効率性と彫塑用材料の信頼性を考慮した無硫黄素材の新規な彫塑用材料が持続的に研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の問題点を解決するために、本発明の目的は硫黄を含まない彫塑用材料およびその製造方法を提供することである。より具体的には、硫黄を含まない環境に優しい彫塑用材料を使用することにより、産業用モデル、例えば、自動車モデルを製作する時に硫黄による不快な臭いがなく、使用後にも数回リサイクルができ、廃棄物処理時にも硫黄による有毒ガスが発生する恐れのない彫塑用材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、マイクロクリスタリンワックス(以下、マイクロワックスとする)、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を含む彫塑原料組成物と、澱粉を含む彫塑充填組成物とからなる硫黄を含まない彫塑用材料であって、前記の硫黄を含まない彫塑用材料の総重量に対して、マイクロワックスは10〜25重量%、ワセリンは3〜20重量%、ステアリン酸亜鉛は5〜25重量%、澱粉は30〜70重量%であることを特徴とする硫黄を含まない彫塑用材料を提供する。
なお、前記硫黄を含まない彫塑用材料の総重量に対して、パラフィンワックス5〜15重量%をさらに添加することが望ましい。
なお、前記澱粉は、オクテニル琥珀酸を添加した変成澱粉であることが望ましい。
本発明は、前記硫黄を含まない彫塑用材料を製造するための方法であって、マイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を炉に投入して熱処理するステップ(I)と、前記の熱処理したマイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を収容部に投入し、前記収容部に澱粉をさらに投入して練るステップ(II)と、前記の練ったマイクロワックス、ワセリン、ステアリン酸亜鉛、澱粉を真空圧出機に投入し、望む対象体の形状を得るために圧出成形するステップ(III)と、を含んでいることを特徴とする硫黄を含まない彫塑用材料の製造方法を提供する。
なお、前記ステップ(II)にパラフィンワックスをさらに添加して練ることが望ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明の彫塑用材料を用いたモデルの製作時は、従来の彫塑用材料とは異なり硫黄を用いないため不快な臭いがしない。また、現在使用されている彫塑用材料(粘土)は、硫黄が多量含まれており彫塑用材料の比重が1.5以上と重いが、澱粉を使用した本発明の彫塑用材料は、比重が1.2程度で非常に軽量化され、輸送が容易で大型作品の製作に有利である。
なお、本発明の彫塑用材料は、上述の彫塑原料組成物と彫塑充填組成物の組成比率により表面をやわらかくしたり硬くすることができ、硬度調節が容易で、彫塑用材料の多様化を図ることができる。
なお、本発明の彫塑用材料は、100%可燃性材料で且つ環境に優しく、100%リサイクルが可能であることを特徴とする。
すなわち、本発明の彫塑用材料は、産業用モデルの製作、または各学校での教育用彫刻材料として広く使用できるような安定性と機能性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の主材料は、マイクロワックス、ワセリン、ステアリン酸亜鉛、澱粉であり、パラフィンワックスをさらに選択的に添加することができる。
マイクロワックス
マイクロワックス(microcrystaline wax)は、高粘度の潤滑蒸留分などから溶剤抽出法によって脱蝋、脱油されたワックスであり、測鎖型飽和炭化水素を主成分とする。このマイクロワックスは、融点が65.5℃〜76.6℃であり、強靭で柔軟な特性を有する。また、マイクロワックスは、高融点、高粘度の接着性を有し、白色または黄色である。また、マイクロワックスは、油成分との親和力が大きいため、パラフィンワックスに比べて油成分の含有量が高いという特徴がある。
一方、マイクロワックスは、他の種類のワックスとよく調和して融点、粘度および硬度を高めるものとして用いられ、発汗防止剤としても使用される。この際、マイクロワックスは、主に各種ワックスコンパウンド、ゴム関連製品の酸化防止剤、電気絶縁材、防水および防湿コーティング剤などの用途に用いられる。
ワセリン
石油ゼリーまたはパラフィンゼリーとも呼ばれるワセリンは、Cn+2の組成を有する飽和炭化水素類であり、微結晶の固体炭化水素が液体炭化水素によって分散してゲルを形成している。このワセリンは、融点が38℃〜54℃であり、白色または黄色である。また、ワセリンはベンゼンおよびクロロホルム、エーテルおよび石油ベンゼン、二硫化炭素および油などのような原油に溶ける特性を有している。一方、ワセリンは、他の物質とよく混合し、対象体の表面をしっとりさせたり滑らかにさせるために使用される。この際、ワセリンは、主に減摩剤、防水剤、化粧品原料、医薬品原料などの用途に用いられる。
ステアリン酸亜鉛
ステアリン酸亜鉛(Zinc stearate: Zn(C1735COO))は無毒性の安定剤として主に使用されている。ステアリン酸亜鉛は無毒製品であり、活性に優れ、速固性である。また、ステアリン酸亜鉛は、他の物質とよく混合するように分散剤としての役割を果たす。さらに、ステアリン酸亜鉛は、対象体の表面が美麗に加工処理されるように、また、彩色時に加工処理された対象体の表面がよく彩色されるように用いられる。
澱粉
澱粉は、植物が水と二酸化炭素を原料とし、光合成作用が行われた後に生産される天然高分子物質をいう。また、原料澱粉が持っている欠点を補い利点を強化させるため、澱粉は物理的あるいは化学的に変化され、変成澱粉(modified starch)が生産される。
本発明では、澱粉に乳化剤を添加した変成澱粉を選択的に使用することができる。使用可能な乳化剤は、オクテニル琥珀酸(sodium octenyl succinate)であり、澱粉のOH基にエステルを結合させ、親水性の澱粉に疏水性基を導入して乳化力と安定性を有するようにする。特に、本発明ではとうもろこし澱粉を使用することが望ましい。
すなわち、オクテニル琥珀酸が添加された変成澱粉は、一分子内に親水性部分のヒドロキシル基およびカルボキシル基と、疏水性部分の炭化水素が含まれているため、乳化剤および安定化剤として使用される。
パラフィンワックス
石蝋パラフィンとも呼ばれるパラフィンワックスは、原油の中で沸点の高い原油ワックスから潤滑油などの油分が含まれた成分を除外し精製されたワックスであり、直鎖型飽和炭化水素を主成分とする。このパラフィンワックスは融点が47℃〜65℃であり、化学的に安定性を有する。
一方、パラフィンワックスは、他の種類のワックスとよく調和して柔軟性を高める軟化剤として使用され、防水剤としても使用される。この際、パラフィンワックスは、主に包装紙コーティング剤、可塑剤、モールド離形剤、ロウソク材料などの用途に用いられる。
製造方法
本発明は、マイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を含む彫塑原料組成物と、澱粉を含む彫塑充填組成物とからなる。本発明の彫塑用材料の製造方法は、先ず、マイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を炉に投入して熱処理する。この際の熱処理条件は気温が150℃〜200℃である。
ここで、マイクロワックスは、彫塑原料組成物と彫塑充填組成物を合わせた彫塑用材料の総重量に対して10重量%〜25重量%である。マイクロワックスが10重量%以下であると、彫塑用材料の彫刻性は良いものの接着力が低下する。マイクロワックスが25重量%以上であると、彫塑用材料間の接着性は良いものの彫刻性が良くない。
また、ワセリンは、彫塑用材料の総重量に対して3重量%〜20重量%である。ワセリンが3重量%以下であると、彫塑用材料の表面がしっとりせずに硬くなりすぎてしまい、ワセリンが20重量%以上であると、彫塑用材料の硬度が低下し彫刻性が良くない。
また、ステアリン酸亜鉛は、彫塑用材料の総重量に対して5重量%〜25重量%である。ステアリン酸亜鉛が5重量%以上であると、彫塑用材料の表面を美麗に加工処理できるが、ステアリン酸亜鉛が25重量%以上であると、彫塑用材料の表面が粗くなる。
その後、マイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を収容部に投入し、収容部に澱粉を投入して練る。上述のように、彫塑原料組成物としてパラフィンワックスをさらに選択的に添加することができる。この際、パラフィンワックスは、彫塑用材料の総重量に対して5重量%〜15重量%を添加することが望ましい。
パラフィンワックスが5重量%以上であると、マイクロワックスとの柔軟性が高まって彫刻性が向上し、パラフィンワックスが15重量%以上であると、後述するステアリン酸亜鉛との活性成分を高めるが、オーブンの使用時に分離されて流れ出る可能性がある。
また、前記の彫塑用材料の総重量に対して、澱粉は30重量%〜70重量%である。澱粉が30重量%以上であると、マイクロワックスとパラフィンワックス、ワセリンとステアリン酸亜鉛のそれぞれとの練りが円滑に行われ、澱粉が70重量%以下であると、マイクロワックスとパラフィンワックス、ワセリンとステアリン酸亜鉛のそれぞれと物理的あるいは化学的に円滑に結合し、彫塑用材料の柔軟性および結合性を高めることができる。
その後、マイクロワックス、ワセリン、ステアリン酸亜鉛、澱粉、またはマイクロワックス、ワセリン、ステアリン酸亜鉛、澱粉およびパラフィンワックスは、前記ステップ(II)で均一に練られた後、真空圧出機に投入して望む対象体の形状を得るために圧出成形する。主に円筒形の形状に圧出成形されるが、必要に応じて鋳型を替えて様々な形状に圧出成形できることは勿論である。
一方、圧出成形するステップの後に、対象体の表面を彩色するステップをさらに加えることができる。この際、ブロック状の対象体を望むデザインに加工し、対象体の表面である彫塑用材料の表面に彩色することができる。例えば、本発明の彫塑用材料は常温で硬く固まるため、木の代わりに様々なブロックで製作することもできる。
本発明の望ましい実施形態を例示目的として公開したものの、彫塑や彫刻などの芸術の熟練者たちは、添付の請求項で公開された本発明の範囲と精神から離れることなく、様々な修正や追加、代用が可能であることを高く評価するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明の彫塑用材料は、硫黄を含まない彫塑用材料として安定性と機能性を提供するため、産業用モデルの製作、特に自動車モデルの製作に使用可能であり、また各学校での教育用彫塑材料にも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を含む彫塑原料組成物と、澱粉を含む彫塑充填組成物とからなる硫黄を含まない彫塑用材料であって、前記の硫黄を含まない彫塑用材料の総重量に対して、マイクロワックスは10〜25重量%、ワセリンは3〜20重量%、ステアリン酸亜鉛は5〜25重量%、澱粉は30〜70重量%であることを特徴とする硫黄を含まない彫塑用材料。
【請求項2】
前記硫黄を含まない彫塑用材料の総重量に対して、パラフィンワックス5〜15重量%をさらに添加することを特徴とする請求項1に記載の硫黄を含まない彫塑用材料。
【請求項3】
前記澱粉は、オクテニル琥珀酸を添加した変成澱粉であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫黄を含まない彫塑用材料。
【請求項4】
請求項1に記載の硫黄を含まない彫塑用材料を製造するための方法であって、マイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を炉に投入して熱処理するステップ(I)と、前記熱処理したマイクロワックス、ワセリンおよびステアリン酸亜鉛を収容部に投入し、前記収容部に澱粉をさらに投入して練るステップ(II)と、前記の練ったマイクロワックス、ワセリン、ステアリン酸亜鉛、澱粉を真空圧出機に投入し、望む対象体の形状を得るために圧出成形するステップ(III)と、を含んでいることを特徴とする硫黄を含まない彫塑用材料の製造方法。
【請求項5】
ステップ(II)にパラフィンワックスをさらに添加して練ることを特徴とする請求項4に記載の硫黄を含まない彫塑用材料の製造方法。

【公表番号】特表2010−510346(P2010−510346A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537072(P2009−537072)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005482
【国際公開番号】WO2008/060055
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509124397)マンジラク カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】