説明

硫黄固化体製品の型枠装置

【課題】型枠本体のキャビティ内に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮するのに従って加圧状態の補充タンク内の硫黄含有資材をキャビティの内部に補充して硫黄固化体製品を成型する。
【解決手段】密閉可能とされたキャビティを有する外型6の内部が硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱される型枠本体1のキャビティ内に、一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却して収縮するのに従って、上端開口部11に蓋を取り付けて内部が密閉可能とされると共に所定圧力に加圧され、かつ内部が上記の設定温度範囲内に加熱される補充タンク2内に収容された硫黄含有資材を、上記キャビティの内部に該補充タンク2内の加圧圧力により補充するものである。これにより、余計な手間がかからず、また硫黄固化体製品としての強度を高めると共に、仕上がりがきれいになり製品価値を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の硫黄含有資材を型枠本体のキャビティ内に充填して冷却固化させ硫黄固化体製品を成型する硫黄固化体製品の型枠装置に関し、詳しくは、上記キャビティ内に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮するのに従って加圧状態の補充タンク内の硫黄含有資材をキャビティの内部に補充する硫黄固化体製品の型枠装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木用、建設用の資材として、骨材をセメントで結合させたコンクリートが用いられている。これに対して、近年、常温では固体でありおよそ119℃〜159℃に加熱されると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した硫黄含有資材は、セメントを使用する通常のコンクリートに比べて高強度で遮水性に優れ、かつ耐酸性の高い材料として知られている。そして、硫黄含有資材は、通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、固化したものは硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、硫黄は着火性を有しており危険物扱いであるので、現場で溶融し打設固化して施工することが困難である。このような状況を改善するために、溶融硫黄に添加剤として硫黄改質剤を混合してその硫黄を変性し、改質硫黄を製造することが試みられている。また、この改質硫黄と微粉末とを混合して溶融状態の改質硫黄中間資材を製造すること、及び、この改質硫黄中間資材と骨材とを混合しこれを固化させて改質硫黄固化体を製造することが試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
そして、上述のような溶融状態の硫黄含有資材(又は改質硫黄中間資材)を冷却固化させて硫黄固化体(又は改質硫黄固化体)製品を成型するには、所定の形状をした型枠内に上記硫黄含有資材を充填して冷却固化させていた。
【0005】
ここで、上記硫黄含有資材を充填して冷却固化させる型枠として専用のものは存在せず、一般的なコンクリート製品を成型する型枠として、外型と内型との間に形成されるキャビティ内にコンクリートを充填して例えば筒状コンクリート製品を製造するものが存在する(例えば、特許文献3,4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開2005− 82475号公報
【特許文献3】特開2002−337129号公報
【特許文献4】特開2004−114388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献3,4に記載された型枠においては、外型及び内型を加熱する手段が設けられていなかった。ここで、溶融状態の硫黄含有資材は、硫黄の固化温度(約119℃)を下回った時点で固化し始めて、通常のコンクリート以上の高強度まで固化する。従来、溶融状態の硫黄含有資材が固化する際には、型枠内に流し込まれたときにその型枠と接した部分が急激に冷やされるために、型枠を外した脱型後の硫黄固化体の表面に荒れを生じるなどの問題があった。
【0008】
また、上記型枠内に充填された溶融状態の硫黄含有資材は、冷却して固化する過程において収縮するので、型枠の上面部まで一杯に充填しても硫黄含有資材が沈下して製品上部に空隙ができ、製品としての要求仕様を満たさないことがある。この場合、従来は、型枠を二つ割りにして取り出した製品に対して、硫黄含有資材を塗り付けて補修することもあったが、余計な手間がかかると共に、仕上がりがきれいではなく製品価値が劣るものであった。さらに、空隙が大きい場合は、補修不可能な場合があった。
【0009】
また、上記型枠の充填口に蓋をしないで型枠内に硫黄含有資材を注入し、型枠内に充填された硫黄含有資材の上面が沈下して空隙ができたところで硫黄含有資材を補充すると、その間に表面が固まり始めて硬化層ができてしまい、製品としての強度が弱くなるものであった。この場合は、製品としての要求性能を満たさないことがある。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、キャビティ内に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮するのに従って加圧状態の補充タンク内の硫黄含有資材をキャビティの内部に補充する硫黄固化体製品の型枠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による硫黄固化体製品の型枠装置は、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を内部に収容し密閉可能とされたキャビティを有する外型の一部に、上記キャビティに連通する硫黄含有資材の充填口を設け、上記外型の内部が上記の設定温度範囲内に加熱される型枠本体と、上記型枠本体の充填口に下端注入口が着脱可能に取り付けられ、内部に上記硫黄含有資材を収容した投入ホッパから供給される硫黄含有資材を、上端開口部から受け入れて上記型枠本体の充填口を通してキャビティ内に供給し、内部に上記硫黄含有資材が所定量収容された状態で上端開口部に蓋を取り付けて内部が密閉可能とされると共に所定圧力に加圧され、かつ内部が上記の設定温度範囲内に加熱される補充タンクとを備え、上記型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却して収縮するのに従って、上記補充タンク内に収容された硫黄含有資材を上記キャビティの内部に該補充タンク内の加圧圧力により補充するようにしたものである。
【0012】
このような構成により、密閉可能とされたキャビティを有する外型の内部が硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱される型枠本体のキャビティ内に、一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却して収縮するのに従って、上端開口部に蓋を取り付けて内部が密閉可能とされると共に所定圧力に加圧され、かつ内部が上記の設定温度範囲内に加熱される補充タンク内に収容された硫黄含有資材を、上記キャビティの内部に該補充タンク内の加圧圧力により補充する。
【0013】
また、上記補充タンクの容量は、上記型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮する体積と同等又はそれ以上とされている。これにより、上記型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮する体積の分の硫黄含有資材が補充タンクから補充される。
【0014】
さらに、上記型枠本体及び補充タンクを、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素自体に加熱手段が付設されている。これにより、各構成要素自体に付設された加熱手段によって、上記型枠本体及び補充タンクを硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱する。
【0015】
さらにまた、上記型枠本体の充填口は、外型の一部に1個又は複数個設け、上記補充タンクは、上記型枠本体に対して1個又は複数個取り付けられている。これにより、上記型枠本体の容量に応じて1個又は複数個の補充タンクが取り付けられる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、密閉可能とされたキャビティを有する外型の内部が硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱される型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却して収縮するのに従って、上端開口部に蓋を取り付けて内部が密閉可能とされると共に所定圧力に加圧され、かつ内部が上記の設定温度範囲内に加熱される補充タンク内に収容された硫黄含有資材を上記キャビティの内部に該補充タンク内の加圧圧力により補充することができる。したがって、上記型枠本体のキャビティ内で硫黄含有資材が冷却して収縮するのに従って、その収縮した分だけ補充タンクから硫黄含有資材を自動的に補充することができる。これにより、余計な手間がかからず、また硫黄固化体製品としての強度を高めると共に、仕上がりがきれいになり製品価値を高めることができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、補充タンクの容量は、型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮する体積と同等又はそれ以上としたことにより、上記型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮する体積の分の硫黄含有資材を補充タンクから補充することができる。したがって、上記型枠本体のキャビティ内で硫黄含有資材が収縮した分だけ補充タンクから硫黄含有資材を自動的に補充することができる。
【0018】
さらに、請求項3に係る発明によれば、型枠本体及び補充タンクを、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素自体に加熱手段を付設したことにより、各構成要素自体に付設された加熱手段によって、上記型枠本体及び補充タンクを硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱することができる。したがって、上記型枠本体及び補充タンクの温度を硫黄の融点以上に保って、溶融状態の硫黄含有資材を補充タンクから型枠本体のキャビティ内に充填することができる。
【0019】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、型枠本体の充填口は、外型の一部に1個又は複数個設け、補充タンクは、上記型枠本体に対して1個又は複数個取り付けることにより、上記型枠本体の容量に応じて1個又は複数個の補充タンクを取り付けることができる。したがって、各種容量の型枠本体にも対応でき、また斜め置き、縦置き若しくは横置きタイプの型枠本体にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による硫黄固化体製品の型枠装置の実施形態を示す概要図である。この硫黄固化体製品の型枠装置は、溶融状態の硫黄含有資材を型枠本体のキャビティ内に充填して冷却固化させ硫黄固化体製品を成型するもので、図1に示すように、型枠本体1と、補充タンク2とを備えて成る。なお、図1において、符号3は、型枠本体1を斜め置き状態に支持する振動テーブルを示し、符号4は、硫黄含有資材を補充タンク2に供給する投入ホッパを示している。
【0021】
上記型枠本体1は、その内部に溶融状態の硫黄含有資材を充填しその後冷却固化させるもので、スティール又はアルミニューム等の金属でできており、成型する硫黄固化体製品の形状に合わせた形状に形成されている。図1に示す型枠本体1は、例えば、ヒューム管又はマンホール等の円筒状の硫黄固化体製品を製造する場合を示しており、筒状の内型5と、筒状の外型6と、両端部に配置された妻板7とを備えている。
【0022】
上記内型5は、製造すべき円筒状製品の内周面を規定するもので、所定の長さで外周面が円柱状に形成された部材から成る。また、外型6は、製造すべき円筒状製品の外周面を規定するもので、上記内型5の外径よりも大きい内径を有し所定の長さで円筒状に形成された部材から成る。さらに、妻板7は、製造すべき円筒状製品の両端面を規定するもので、上記外型6の外径と等しいか、又はそれよりも大きい外径を有するドーナツ板状又は円形板状に形成され、上記内型5及び外型6の両端部に配置される。
【0023】
この状態で、上記内型5と外型6と妻板7とで囲まれた空間により、硫黄の融点(119℃)以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を内部に収容し密閉可能とされたキャビティが形成される。そして、上記外型6の一部、例えば上端部には、図3に示すように、上記キャビティに連通する硫黄含有資材の充填口8が設けられている。なお、図示は省略しているが、上記外型6の一部、例えば上端部には、上記キャビティに連通するエア抜き孔が形成されている。
【0024】
また、上記外型6の外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該外型6の内部を硫黄の融点以上の設定温度範囲(例えば、120〜150℃程度)内に加熱するようになっている。これにより、上記外型6内に注入された硫黄含有資材が固化せずに溶融状態に保持されて、上記内型5と外型6と妻板7とで囲まれたキャビティ内の隅々まで行き渡ることになる。
【0025】
なお、このように構成された型枠本体1は、図1に示すように、例えば振動テーブル3に載置して斜め置き状態に支持されている。このとき、上記振動テーブル3には、バイブレータ9や、ノッカー10が備えられており、上記型枠本体1の全体に振動を与えるようになっている。また、上述の筒状の型枠本体1は、その長手方向に沿って例えば半円筒状に二分割可能とされていてもよい。
【0026】
また、図1及び図3に示す型枠本体1は、硫黄固化体で円筒状の製品を成型する場合の型枠形状を示したものであるが、円筒状以外の製品を製造する場合は、その製品の形状に合わせて内型5と、外型6と、妻板7の形状を決めればよい。この場合、パイプ形状でない、板状又は盤状或いはブロック状等の製品形状のときは、内型5が不要の場合がある。
【0027】
ここで、上記硫黄含有資材について説明する。この硫黄含有資材は、常温では固体でありおよそ119〜159℃で溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上の設定温度範囲内に加熱して溶融させた硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、およそ119〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。又は、同様に加熱して溶融させた硫黄と、この溶融硫黄を変性する硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に砂や砂利、石炭灰等を混合して、上記と同様に加熱しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した改質硫黄固化体と呼ばれるものである。すなわち、硫黄含有資材の中には、上記硫黄固化体と改質硫黄固化体とを含むものであり、以下において、単に硫黄固化体と表記した場合は、改質硫黄固化体を含んだ意味であるとする。
【0028】
上記改質硫黄固化体について更に詳細に説明する。改質硫黄固化体は、硫黄と、硫黄改質剤と、微細粉と、骨材とを原料として製造される。まず、溶融した硫黄と硫黄改質剤とを混合して改質硫黄を製造する。硫黄は、通常の単体硫黄であり、例えば天然産、又は石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等が挙げられる。硫黄改質剤は、溶融硫黄を変性、例えば硫黄を重合することによって改質する。この硫黄改質剤としては、硫黄を重合し得る化合物であればよく、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン(DCPD)及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラハイドロインデン(THI)、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物が挙げられる。上記硫黄と硫黄改質剤との混合は、硫黄が溶融した状態、すなわち119〜159℃、好ましくは120〜150℃の温度で行われる。
【0029】
前記改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することで得ることができるが、このときの硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、特に1.0〜20質量%の割合が好ましい。得られた改質硫黄は、所定の温度(例えば150℃)に加温された微細粉と混合されて改質硫黄中間資材とされる。微細粉としては、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、ガラス粉末、燃料焼却灰、電気集塵灰及び貝殻粉砕物のうち1種又は2種以上を選択すればよい。
【0030】
上記得られた改質硫黄中間資材は、溶融状態を保つことのできる温度(例えば130〜140℃)に保持された状態で、例えば130〜140℃程度に加温された骨材と混合される。この骨材は、骨材として使用可能であれば特に限定されず、一般にコンクリートで用いられる骨材を使用できる。このような骨材としては、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。上記の改質硫黄中間資材と骨材とを、例えば混練装置を用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、これを冷却して固化させることで改質硫黄固化体が製造される。このような改質硫黄固化体は、例えば特許第4007997号公報に記載された改質硫黄固化体製造システムを使用して製造することができる。
【0031】
以下の説明では、このような硫黄固化体又は改質硫黄固化体を設定温度範囲内に加熱して、溶融状態の硫黄含有資材として用いる。
【0032】
上記型枠本体1の充填口8には、補充タンク2が着脱可能に取り付けられる。この補充タンク2は、図1に示すように、内部に上記硫黄含有資材を収容した投入ホッパ4から矢印Aのように供給される硫黄含有資材を、上端開口部11から受け入れて上記型枠本体1の充填口8(図3参照)を通してキャビティ内に供給するものである。
【0033】
ここで、上記投入ホッパ4は、例えば金属で漏斗状に形成され、その容積は例えば1.0m3程度とされている。そして、上記投入ホッパ4の外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該投入ホッパ4を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するようになっている。なお、この加熱の設定温度範囲としては、120〜150℃程度が好ましい。これにより、上記投入ホッパ4内に収容された溶融状態の硫黄含有資材は、固化せずに溶融状態に保持される。
【0034】
そして、上記補充タンク2は、図2に示すように、全体が例えば金属で漏斗状に形成されており、その下端注入口12が上記型枠本体1の充填口8に着脱可能に取り付けられる。この補充タンク2の内部には、図1に示す投入ホッパ4から供給される硫黄含有資材が所定量収容された状態で、上端開口部11に蓋13をボルト等の締結具14で取り付けて内部が密閉可能とされている。
【0035】
なお、上記補充タンク2の容量は、上記型枠本体1のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮する体積と同等又はそれ以上とされている。硫黄含有資材の冷却固化時の収縮率は、体積に換算して7〜8%と言われている。したがって、補充タンク2の容量は、上記型枠本体1のキャビティ内で成型される硫黄固化体製品の体積の7〜8%又はそれ以上となる。
【0036】
上記補充タンク2の蓋13には、加圧エアの供給パイプ15が接続されてその先端部が補充タンク2の内部に挿入されるようになっており、該補充タンク2の内部が所定圧力(例えば、0.05〜0.15MPa)に加圧されるようになっている。なお、図示は省略したが、上記供給パイプ15の基端部には加圧手段として例えばエアポンプが接続されており、開閉弁16により加圧エアの供給を制御する。また、図2において、符号17は上記補充タンク2内の圧力を計測する圧力メータ(蓋13に取り付けられている)を示している。
【0037】
さらに、上記補充タンク2の外周部には、電熱ヒーター、温風ヒーター又はオイルヒーター等の加熱手段が付設されると共に断熱材でカバーされており、該補充タンク2の内部を硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するようになっている。なお、この加熱の設定温度範囲としては、120〜150℃程度が好ましい。これにより、上記補充タンク2内に収容された溶融状態の硫黄含有資材は、固化せずに溶融状態に保持される。
【0038】
そして、前述のように構成された型枠本体1の充填口8に補充タンク2を取り付けて、投入ホッパ4から溶融状態の硫黄含有資材を上記補充タンク2へ供給することにより、上記型枠本体1のキャビティ内に硫黄含有資材を供給し、該型枠本体1のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却して収縮するのに従って、上記補充タンク2内に収容された硫黄含有資材を上記キャビティの内部に該補充タンク2内の加圧圧力により補充するようになっている。
【0039】
次に、このように構成された硫黄固化体製品の型枠装置の使用状態について、図3〜図7を参照して説明する。まず、図1において、型枠本体1を例えば振動テーブル3に載置して斜め置き状態に支持する。次に、この状態で、図3に示す型枠本体1の外型6の上端部に設けられた充填口8に、補充タンク2を取り付ける。
【0040】
このとき、図4に示すように、補充タンク2の下端注入口12に接続された取付管18の下端に斜め状態に設けられた取付板19を上記型枠本体1の充填口8に位置合わせして、上記補充タンク2の下端注入口12と型枠本体1の充填口8とを連通状態とする。そして、図5に示すように、上記取付板19の四隅部をボルト等の締結具20で締め付けることにより、型枠本体1の外型6の充填口8に補充タンク2を取り付ける。この場合、上記補充タンク2の取付板19は、ボルト等の締結具20で留められているので、補充タンク2は、型枠本体1の充填口8に着脱可能に取り付けられる。また、この状態では、上記補充タンク2には、図2に示す蓋13は取り付けられていない。
【0041】
このような状態で、図1に示すように、上記補充タンク2の上方に投入ホッパ4を位置合わせし、該投入ホッパ4の投入口21から矢印Aのように硫黄含有資材を補充タンク2の上端開口部11へ供給する。これにより、補充タンク2は、硫黄含有資材を上端開口部11から受け入れて上記型枠本体1の充填口8(図3参照)を通してキャビティ内に順次供給する。
【0042】
このようにして、上記型枠本体1のキャビティ内に硫黄含有資材が一杯に充填されると共に、上記補充タンク2の内部にも所定量だけ硫黄含有資材が収容されると、前記投入ホッパ4からの硫黄含有資材の投入を停止する。そして、図6に示すように、図1に示す補充タンク2の上端開口部11に蓋13を取り付けて内部を密閉し、該蓋13には加圧エアの供給パイプ15を接続してその先端部を補充タンク2の内部に挿入する。上記供給パイプ15の基端部には、図示外のエアポンプを接続して圧力調整機22を介して加圧エアを供給する。このとき、補充タンク2の内部は、常時、例えば0.05〜0.15MPa程度に加圧される。
【0043】
この状態で、図6において、型枠本体1の加熱手段の動作を停止して内部に充填された硫黄含有資材の加熱を止め、そのまま型枠本体1を放置する。すると、上記型枠本体1が常温の雰囲気中で徐々に冷却されるに従って、該型枠本体1のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却されて収縮、沈下して行く。そして、上記型枠本体1内の硫黄含有資材の収縮に従って、補充タンク2内に収容された硫黄含有資材が該補充タンク2内の加圧圧力によって型枠本体1のキャビティの内部に補充される。
【0044】
例えば、図7(a)に示すように、上記型枠本体1のキャビティ内に硫黄含有資材が一杯に充填された直後においては、補充タンク2の内部には符号23aで示す材料位置まで硫黄含有資材が収容されていたとする。その後、上述のように、型枠本体1の加熱手段の動作を停止して型枠本体1を放置して冷却し、適宜の時間が経過したら、図7(b)に示すように、補充タンク2内の硫黄含有資材は、符号23bで示す材料位置まで下がったとする。この場合は、上記型枠本体1内の硫黄含有資材の収縮、沈下に従って、補充タンク2内の硫黄含有資材が材料位置23aから材料位置23bまで下がった分の体積量が、該型枠本体1のキャビティ内に自動的に補充される。このように、型枠本体1を放置して冷却し(図7(a)参照)、補充タンク2から所定量の硫黄含有資材を上記型枠本体1内に補充する(図7(b)参照)のに要する時間は、例えば2時間〜2時間30分程度である。
【0045】
その後、図7(b)において、補充タンク2の取付管18の下端の取付板19を取り外して、該補充タンク2を型枠本体1から取り外す。そして、上記型枠本体1をその長手方向に沿って例えば半円筒状に二分割して、内部において冷却固化された硫黄固化体製品を取り出す。この状態では、型枠本体1のキャビティ内で硫黄含有資材が冷却して収縮するのに従って、その収縮した分だけ補充タンク2から硫黄含有資材が自動的に補充されて固化され、空隙の存在しないきれいな硫黄固化体製品が成型される。
【0046】
図8は、本発明の型枠装置の他の実施形態を示す斜視図である。この実施形態は、型枠本体1を図示省略のテーブル又は支持台に縦置き状態に支持すると共に、その型枠本体1の外型6の上端部に着脱可能に補充タンク2を取り付けたものである。それ以外は、図1に示す実施形態と同様である。
【0047】
図9は、本発明の型枠装置の更に他の実施形態を示す斜視図である。この実施形態は、型枠本体1を図示省略のテーブル又は支持台に横置き状態に支持すると共に、その型枠本体1の外型6の上面部に複数個、例えば3個の補充タンク2a,2b,2cを着脱可能に取り付けたものである。補充タンク2の個数は、型枠本体1の容量に応じて適宜変更してもよい。それ以外は、図1に示す実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による硫黄固化体製品の型枠装置の実施形態を示す概要図である。
【図2】上記型枠装置における補充タンクを示す正面図である。
【図3】上記型枠装置における型枠本体を示す斜視図である。
【図4】上記型枠本体に補充タンクを取り付ける状態を示す斜視図である。
【図5】上記型枠本体に補充タンクを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】上記補充タンクに蓋及び加圧手段を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】上記補充タンクから型枠本体内に硫黄含有資材が自動的に補充される状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の型枠装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の型枠装置の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1…型枠本体
2…補充タンク
4…投入ホッパ
5…内型
6…外型
7…妻板
8…充填口
11…上端開口部
12…下端注入口
13…蓋
15…供給パイプ
18…取付管
19…取付板
20…締結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱されて溶融状態の硫黄含有資材を内部に収容し密閉可能とされたキャビティを有する外型の一部に、上記キャビティに連通する硫黄含有資材の充填口を設け、上記外型の内部が上記の設定温度範囲内に加熱される型枠本体と、
上記型枠本体の充填口に下端注入口が着脱可能に取り付けられ、内部に上記硫黄含有資材を収容した投入ホッパから供給される硫黄含有資材を、上端開口部から受け入れて上記型枠本体の充填口を通してキャビティ内に供給し、内部に上記硫黄含有資材が所定量収容された状態で上端開口部に蓋を取り付けて内部が密閉可能とされると共に所定圧力に加圧され、かつ内部が上記の設定温度範囲内に加熱される補充タンクと、を備え、
上記型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が該キャビティ内で冷却して収縮するのに従って、上記補充タンク内に収容された硫黄含有資材を上記キャビティの内部に該補充タンク内の加圧圧力により補充するようにしたことを特徴とする硫黄固化体製品の型枠装置。
【請求項2】
上記補充タンクの容量は、上記型枠本体のキャビティ内に一杯に充填された硫黄含有資材が冷却して収縮する体積と同等又はそれ以上としたことを特徴とする請求項1記載の硫黄固化体製品の型枠装置。
【請求項3】
上記型枠本体及び補充タンクを、硫黄の融点以上の設定温度範囲内に加熱するために、それぞれの構成要素自体に加熱手段を付設したことを特徴とする請求項1又は2記載の硫黄固化体製品の型枠装置。
【請求項4】
上記型枠本体の充填口は、外型の一部に1個又は複数個設け、上記補充タンクは、上記型枠本体に対して1個又は複数個取り付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硫黄固化体製品の型枠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−64409(P2010−64409A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234316(P2008−234316)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(597147832)不二コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】