説明

硬化性樹脂組成物および成形体

【課題】光学特性、耐熱性および高い成形性を有する硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】重合性不飽和結合基を側鎖に有する、単官能エポキシ化合物のエポキシ開環重合体(A)、および重合性不飽和結合基を有する化合物を含み、かつ、前記重合体(A)および/または重合性不飽和結合基を有する化合物中に脂環構造を有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物および該硬化性樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。さらに、かかる成形体の製造方法に関する。特に、光学部品の製造に有益な硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レンズ等の光学部品を製造するための、硬化性樹脂組成物が採用されている。ここで用いられる硬化性樹脂組成物は、鋳型等に注入し、硬化させて成形する。硬化性樹脂組成物中に、プレポリマーと呼ばれる重合性基を有した重合体を含有することで、硬化収縮を低減させているものも知られている。
このような硬化性樹脂組成物としては、特許文献1および特許文献2に記載のものが知られている。特許文献1に記載の硬化性樹脂組成物は、樹脂成分として、ウレタン樹脂を用いている。特許文献1に記載の硬化性樹脂組成物は、硬化による収縮が小さく、離型性がよく、耐傷性にも優れ、さらに、60℃での長期安定性にも優れている。しかしながら、吸水率が高いという問題がある。
一方、特許文献2には、アダマンチルアクリレートを含む硬化性樹脂組成物が記載されている。特許文献2に記載の硬化性樹脂組成物は、透明性が高い。しかしながら、ガラス転移温度(Tg)が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−296513号公報
【特許文献2】特開2006−213851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光学部品等の作製に用いることができる硬化性樹脂組成物であって、光学特性、耐熱性および高い成形性を有するものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)重合性不飽和結合基を側鎖に有する、単官能エポキシ化合物のエポキシ開環重合体(A)、および重合性不飽和結合基を有する化合物を含み、かつ、前記重合体(A)および/または重合性不飽和結合基を有する化合物中に脂環構造を有する硬化性樹脂組成物。
(2)前記重合体(A)が、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単位構造を含むことを特徴とする、(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基を表し、L1は二価の連結基または単結合を表す。〕
【化2】

〔一般式(1)中、R2は(メタ)アクリロイル基またはビニル基を表し、L2は二価の連結基または単結合を表し、環αは単環式または多環式の環を表す。〕
(3)L1および/またはL2が、それぞれ、−CO−、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基、または、単結合から選択される、(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
(4)重合性不飽和結合基を有する化合物として、2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)および1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)を含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
(5)重合性不飽和結合基を有する化合物の少なくとも1種が、脂環構造を有する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
(6)重合体(A)の重量分子量が、500〜1000,000である、(1)〜(5)いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
(7)重合体(A)の含有量が5〜60質量%、2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)の含有量が20〜90質量%、1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)の含有量が2〜70質量%、他の成分が5質量%以下であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
(8)光または熱の照射により硬化を開始する開始剤(D)を少なくとも2種類以上有していることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
(9)硬化後の波長589nmにおける屈折率が1.45以上であり、アッベ数が45以上であり、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
(11)前記成形体が光学部品である、(10)に記載の成形体。
(12)前記成形体がレンズ基材である、(10)または(11)に記載の成形体。
(13)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を、光照射または熱により室温における粘度を104〜108mPa.sとした後、加圧変形させ、熱硬化させることを特徴とする、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、光学特性、耐熱性および高い成形性を有する硬化性樹脂組成物を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0008】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合性不飽和結合基を側鎖に有する、単官能エポキシ化合物のエポキシ開環重合体(A)、および重合性不飽和結合基を有する化合物を含み、かつ、前記重合体(A)および/または重合性不飽和結合基を有する化合物中に脂環構造を有することを特徴とする。環状構造は、少なくとも重合体(A)に含まれることが好ましく、重合体(A)が環状構造を含み、かつ、重合性不飽和結合基を有する化合物の少なくとも1種が、環状構造を含むことがより好ましい。
【0009】
重合体(A)は、該重合体(A)を構成する繰返単位の90%以上がエポキシ化合物由来の化合物であるエポキシ開環重合体であることが好ましく、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単位構造を含むことが好ましい。
【化3】

〔一般式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基を表し、L1は二価の連結基または単結合を表す。〕
【化4】

〔一般式(1)中、R2は(メタ)アクリロイル基またはビニル基を表し、L2は二価の連結基または単結合を表し、環αは単環式または多環式の環を表す。〕
1および/またはL2は、それぞれ、−CO−、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基、または、単結合から選択されることが好ましい。
環αは、炭素数5〜7の単環であることが好ましく、炭素数6の単環であることがより好ましい。
【0010】
一般式(1)で表される繰返単位は、通常、重合性化合物の重合によって得られる。かかる重合性化合物の分子量は、50〜500が好ましく、50〜400がより好ましく、70〜250がさらに好ましい。
一般式(2)で表される繰返単位は、通常、重合性化合物の重合によって得られる。かかる重合性化合物の分子量は、50〜500が好ましく、50〜400がより好ましく、70〜250がさらに好ましい。
一般式(1)、一般式(2)で表される繰返単位は、それぞれ、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性組成物に含まれる重合性化合物成分は、一般式(1)で表される繰返単位および/または一般式(2)で表される繰返単位を構成する重合性化合物に加えて、他の重合性化合物を含んでいても良い。他の重合性化合物は、単官能エポキシ化合物であることが好ましい。
【0011】
本発明では、重合体(A)を構成する繰返単位が、実質的に、一般式(1)で表される繰返単位および/または一般式(2)で表される繰返単位のみからなっていてもよいが、他の繰返単位を有していても良い。他の繰返単位としては、環状エーテル化合物由来の繰返し単位であれば、特に定めるものではなく、好ましくは、下記一般式(3)で表される繰返単位である。
【化5】

〔一般式(3)中、環βは単環式または多環式の環を表す。〕
一般式(3)中、βは、炭素数5〜10の炭素原子を骨格とする環状構造であり、下記群から選択される構造を骨格とする環状構造であることがより好ましい。

【化6】

上記環状構造は、置換基を有していても良いし、置換基を有していなくても良い。置換基を有している場合、アルキル基が挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(3)で表される繰返単位は、通常、重合性化合物の重合によって得られる。かかる重合性化合物の分子量は、50〜500が好ましく、50〜400がより好ましく、70〜200がさらに好ましい。
【0012】
以下に、本発明で用いる重合体(A)を構成する重合性化合物の具体例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化7】

【化8】

【化9】

【0013】
重合体(A)は、通常、重合性化合物を含む重合性組成物を用いて、公知の方法によって合成することができる。
重合性組成物に含まれる重合性化合物成分は、一般式(1)で表される繰返単位および/または一般式(2)で表される繰返単位を構成する重合性化合物30〜100質量%と、他の繰返単位(例えば、一般式(3)で表される繰返単位)を構成する重合性化合物0〜70重量%、他の重合性化合物5質量%以下で構成されることが好ましい。さらに、一般式(1)で表される繰返単位および/または一般式(2)で表される繰返単位を構成する重合性化合物は、40〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましい。
一般式(1)で表される繰返単位および/または一般式(2)で表される繰返単位が2種類以上含まれる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0014】
これらの重合体(A)は、硬化性樹脂組成物に1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
重合体(A)の数平均分子量は、500〜1000,000であることが好ましく、3,000〜70,000であることがより好ましい。
重合体(A)は、本発明の硬化性樹脂組成物中に、5〜60質量%の範囲で含まれることが好ましく、5〜50質量%の範囲で含まれることがより好ましく、7〜40質量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。
【0015】
[2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)]
本発明で用いることができる2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)中の重合性不飽和結合は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、または、アリル基であることが好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基、またはビニル基であることがより好ましく、アクリロイル基、またはビニル基であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明で用いることができる2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)は炭素数5〜20の脂環構造を有していることが好ましく、炭素数6〜16の脂環構造を有していることがより好ましく、炭素数6〜10の脂環構造を有していることがさらに好ましい。また多環式脂環構造であることが更に好ましい。
重合性不飽和基と脂環構造は、直接にまたは連結基を介して結合していることが好ましく、−CO−、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基から選択される二価の連結基であることがより好ましく、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基から選択される二価の連結基であることがさらに好ましい。
2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)は、重合性不飽和基の数が2つまたは3つであることが好ましい。
2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)の分子量は、100〜700であることが好ましく、130〜600であることがより好ましく、150〜400であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いることができる2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)の具体例を以下のB−1〜B−20に示すが、本発明がこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
これらの2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)は、硬化性樹脂組成物に1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)は、本発明の硬化性樹脂組成物中に、20〜90質量%の範囲で含まれることが好ましく、25〜80質量%の範囲で含まれることがより好ましく、30〜70質量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。
【0021】
[1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)]
本発明で用いることができる1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)中の重合性不飽和結合は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、または、アリル基であることが好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基、またはビニル基であることがより好ましく、アクリロイル基、またはビニル基であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明で用いることができる1つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(C)は炭素数5〜20の脂環構造を有していることが好ましく、炭素数6〜16の脂環構造を有していることがより好ましく、炭素数6〜10の脂環構造を有していることがさらに好ましい。また多環式脂環構造であることが更に好ましい。
重合性不飽和基と脂環構造は、直接にまたは連結基を介して結合していることが好ましく、−CO−、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基から選択される二価の連結基であることがより好ましく、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基から選択される二価の連結基であることがさらに好ましい。
一つの重合性不飽和基を有する化合物(C)の分子量は、100〜700であることが好ましく、150〜600であることがより好ましく、200〜400であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明で用いることができる1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)の具体例を下記C−1〜C−42示すが、本発明がこれらに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)は、硬化性樹脂組成物に1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)は、本発明の硬化性樹脂組成物中に、0〜40質量%の範囲で含まれることが好ましく、2〜40質量%の範囲で含まれることがより好ましく、5〜35質量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。
【0027】
[開始剤(D)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって硬化してもよいし、加熱によって硬化してもよい。また、光照射と熱照射の両方によって硬化するのがより好ましい。
【0028】
紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射による硬化を行う場合、光重合開始剤を添加しておくことが好ましい。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、オキシムエステル類、アシルホスフィンオキサイド類を挙げることができる。
【0029】
加熱による硬化を行う場合、熱重合開始剤を添加しておくことが好ましい。熱重合開始剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、AIBN等のアゾ化合物類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類を挙げることができる。
【0030】
本発明では、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用することが好ましい。両者を併用し、活性エネルギー線の照射を行った後、加熱することがより好ましい。このような手段を採用することにより、予め、活性エネルギー線の照射により半硬化しているため、成形金型内での硬化収縮量を抑制し、金型の形状転写性に優れ、かつ金型の隙間(クリアランス)へのモレが抑制できる。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物中における開始剤の含量は、0.001〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%が好ましい。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記のほか、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を添加することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤などを使用できる。酸化防止剤、光安定剤の具体例としては、特開2006−231851号公報の段落番号0022〜0025に記載のものが挙げられる。これらの成分は、本発明の硬化性樹脂組成物の5質量%以下であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、実質的に、溶剤を含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、溶剤の含量が、硬化性樹脂組成物の1質量%以下であることをいう。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化前において、25℃において液体とすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化前、25℃において、粘度を10〜100万Pa・sとすることができ、好ましくは50〜50万Pa・sとすることができ、さらに好ましくは100〜10万mPa.sとすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)を230℃以上とすることができ、好ましくは250℃以上とすることができ、更に好ましくは300℃以上とすることができる。上限値としては、特に定めるものではないが、通常、400℃以下である。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後の波長589nmにおける透過率を、75%以上とすることができ、好ましくは80%以上とすることができ、さらに好ましくは85%以上とすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後の硬化後の波長589nmにおける屈折率を、1.45以上とすることができ、好ましくは1.50以上とすることができる。上限値については特に定めるものではないが、通常、1.65以下である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後のアッベ数を45以上とすることができ、好ましくは50以上とすることができる。上限値については特に定めるものではないが、通常、70以下である。
【0035】
[成形体の製造方法]
本発明の硬化性樹脂組成物を用いた光学部品等の成形体を製造する方法は公知の方法を広く採用できる。例えば、鋳型に本発明の硬化性樹脂組成物を充填し、活性エネルギーの照射および/または加熱により硬化し、製造することができる。本発明では、特に、活性エネルギーの照射と加熱の両方を併用することが好ましい。このような手段を採用することにより、成形金型内での硬化収縮量を抑制するため、金型の形状転写性に優れ、かつ金型の隙間(クリアランス)へのモレが抑制できる。また、光照射または熱により室温における粘度を104〜108mPa.sとした後、加圧変形させ、熱硬化させることが好ましい。このような手段を採用することにより、金型への形状転写性に優れ、かつ金型の隙間への樹脂モレをより効果的に抑制できる。
【0036】
[成形体の用途]
本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなる成形体は、光学部品に好ましく用いられ、光学レンズにより好ましく用いられる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0038】
[分析および評価方法]
(1)光線透過率測定
厚さ1mmの基板状に成形した硬化物を作成し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置UV−3100(島津製作所製)で波長589nmの光について測定した。
(2)屈折率測定
アッベ屈折計(アタゴ社製、DR−M4)にて、波長589nmの光について行った。
(3)アッベ数(νD)測定
アッベ屈折計(アタゴ社製、DR−M4)にて、波長486nm、589nm、656nmの光についてそれぞれの屈折率を測定し、波長486nmにおける屈折率をnF、波長589nmにおける屈折率をnD、波長656nmにおける屈折率をnCとした場合に、下記の式より算出した。
【化14】

(4)吸水率測定
厚さ1mmの基板状に成形した硬化物の重量(Wi)を測定し、を85℃85%RHに設定した環境試験機中に一週間保持した後の硬化物の重量(Wf)を測定し、下記の式より算出した。
【化15】

(5)耐熱性評価
Rheogel−E4000(株式会社ユービーエム製、動的粘弾性測定装置)を用いて、厚さ200μm、幅5mm、長さ23mmの短冊フイルム状に成形した硬化物を引張りモード、周波数10Hz、歪み10μm(一定)の条件で、30〜300℃の温度範囲における貯蔵弾性率E’を測定し、E’が200MPaとなる温度を耐熱性評価の指標とした。
【0039】
(6)成形性評価1
硬化性樹脂組成物を成形金型内で硬化させ成形体を得る工程において、金型の隙間(クリアランス)へのモレの度合いを下記基準で評価した。
成形を10回おこなった後、モレが発生している個数が0個である場合を◎、1〜3個の場合を○、4〜8個の場合を△、8個以上の場合を×とした。
(7)成形性評価2
硬化性樹脂組成物を成形金型(材質;SUS304)に任意の量投入し、開口部よりHOYA社製UL750を用いて、30mW/cm2のUV光を10秒照射し、半硬化させ、その後室温から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、圧力20kgfにて圧縮成形を行った。
成形を10回行った後、成形体の表面を光学顕微鏡で観察し、表面にシワ・キズが発生している成形体が0個である場合を◎、1〜3個の場合を○、4〜8個の場合を△、8個以上の場合を×とした。
【0040】
[材料の調製]
(1)重合体(A)の合成例
ガス導入コックを付けた1L三口フラスコに、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2000、例示化合物A−1)50.0g、および脱水トルエン490.0gを仕込み、十分に窒素置換を行った後、液温を−70℃に調整し、ついで三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体1.0gと脱水トルエン9.0gからなる溶液を約1時間かけて滴下し、反応を行った。滴下終了後、さらに1時間反応させた。その後、メタノール2Lに反応液を注ぎ、析出した白色固体を吸引ろ過により回収した。60℃で5時間減圧乾燥を行い、溶媒を除去することにより重合体P−1を得た(収率50%、数平均分子量3,100、重量平均分子量18,100)。
他の例示したポリマーについても、同様の方法で調整した(P−2〜P−8、H−1〜H−3)。
【0041】
(2)硬化性樹脂組成物の調製
表1で示した重合体(A)を表2に示す組成で各種成分と混合、溶解し、硬化性樹脂組成物を得た。下記表中において、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェノン(和光純薬工業株式会社製)をD-1、クメンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製、商品名パークミルH)をD-2と表した。
実施例18では、化合物(B)として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコートV230;表中V230と記載)、化合物(C)としてイソオクチルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名IOAA;表中IOAAと記載)を用いた。比較例1および比較例2では重合体(A)を用いなかった。比較例3、比較例4、および比較例5では、重合性不飽和結合の側鎖を有さない重合体H−1、H−2、およびH−3を用いた。比較例6では、メチルメタクリレート(MMA)およびB−15からなる硬化性樹脂組成物を用いた。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
[紫外光照射および加熱圧縮による光学部品の製造]
各実施例および各比較例の組成物を用い、レンズを下記の手順で製造した。
上記硬化性樹脂組成物を成形金型(材質;SUS304)に任意の量投入し、開口部よりHOYA社製UL750を用いて、30mW/cm2のUV光を10秒照射し、半硬化させ、その後室温から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、圧力20kgfにて圧縮成形を行い、成形体を得た。得られた硬化物の光線透過率測定、屈折率測定、アッベ数測定、吸水率測定、ガラス転移温度測定を行った。また、成形時に成形性評価をおこなった。これらの結果は以下の表3に記載した。その後、レンズ用成形体をレンズの形状に成形して、光学部品であるレンズを得た。
【0045】
【表3】

【0046】
上記表から明らかなとおり、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることにより、成形性が良く、屈折率が1.45より大きく、アッベ数が45より大きく、透明性が良好であり、吸水率が小さく、ガラス転移温度が高い、良好な光学部品が得られた。また、2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)および1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)の一方を含まない場合(実施例11、12)、耐熱性または成形性がやや劣る傾向にあることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和結合基を側鎖に有する、単官能エポキシ化合物のエポキシ開環重合体(A)、および重合性不飽和結合基を有する化合物を含み、かつ、前記重合体(A)および/または重合性不飽和結合基を有する化合物中に脂環構造を有する硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)が、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単位構造を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(1)中、R1は(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基を表し、L1は二価の連結基または単結合を表す。〕
【化2】

〔一般式(1)中、R2は(メタ)アクリロイル基またはビニル基を表し、L2は二価の連結基または単結合を表し、環αは単環式または多環式の環を表す。〕
【請求項3】
1および/またはL2が、それぞれ、−CO−、−O−、−CH2−及びこれらの組み合わせからなる基、または、単結合から選択される、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
重合性不飽和結合基を有する化合物として、2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)および1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
重合性不飽和結合基を有する化合物の少なくとも1種が、脂環構造を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
重合体(A)の重量分子量が、500〜1000,000である、請求項1〜5いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
重合体(A)の含有量が5〜60質量%、2つ以上の重合性不飽和基を有する化合物(B)の含有量が20〜90質量%、1つの重合性不飽和基を有する化合物(C)の含有量が2〜70質量%、他の成分が5質量%以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
光または熱の照射により硬化を開始する開始剤(D)を少なくとも2種類以上有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
硬化後の波長589nmにおける屈折率が1.45以上であり、アッベ数が45以上であり、波長589nmにおける厚さ1mm換算の光線透過率が75%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【請求項11】
前記成形体が光学部品である、請求項10に記載の成形体。
【請求項12】
前記成形体がレンズ基材である、請求項10または11に記載の成形体。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を、光照射または熱により室温における粘度を104〜108mPa.sとした後、加圧変形させ、熱硬化させることを特徴とする、成形体の製造方法。

【公開番号】特開2012−31331(P2012−31331A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173639(P2010−173639)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】