説明

硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】柔軟な硬化物が得られ、かつ重合時の硬化収縮率が低く、密着性、電気絶縁性、耐水性が良好で、さらに透明性に優れ、熱及び光に対して安定であり、光又は熱により硬化が可能な樹脂組成物、その硬化物を提供する。
【解決手段】末端に1個又は2個の水酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂(a1)、有機ジイソシアネート(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)を反応させてなる水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)及び炭素数が6以上の脂肪族アルキル基をもつモノ(メタ)アクリレート(B)とからなる硬化性樹脂組成物及びその硬化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物が柔軟で、かつ重合時の硬化収縮率が低く、密着性、電気絶縁性、耐水性が良好であり、さらに、透明性に優れ、熱及び光に対して安定であり、光又は熱により硬化が可能な硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子材料分野では、機器の高性能化に伴い、電気絶縁性に優れ、かつ基材との密着強さが高く、耐湿性が良好な接着性樹脂が求められている。さらに、光学分野に使用される部品の場合、これらの特徴に加えて透明性が必要であり、熱及び光に対して長期的に安定な樹脂が求められている。また、電子材料及び光学材料の分野における材料のフレキシブル化に伴い、両分野で使用される接着剤及びコーティング剤なども先に掲げた性能に加えて柔軟性が求められている。さらに、樹脂組成物の硬化収縮などに起因する内部応力が被着体となるプラスチック部品に及ぼす影響は無視できないため、柔軟性に優れ、かつ硬化収縮の低い接着性樹脂の開発が望まれている。
【0003】
このような接着性樹脂として、FRP、被覆用樹脂又は土木建築用途などに用いられるウレタン(メタ)アクリレートがいくつか提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、これらの特許文献に記されているポリエーテル又はポリエステル構造のものは、吸水性が高く、また、電気絶縁性が劣る傾向にあり、電子部品などに適用した場合、回路の腐食を生じる恐れがある。
また、吸水性、電気絶縁性を改善するために、ゴム系オリゴマーと(メタ)アクリロイル基とをウレタン結合によって結合させた液状ポリジエン系(メタ)アクリレートがいくつか提案されている(例えば、特許文献3、4、5参照)。ここで提案されている樹脂の硬化物は柔軟であり、耐水性、電気絶縁性、密着性は見られるが、ポリマー主鎖に不飽和基が残存することから、熱又は光により、着色、変形、ひび割れが発生するため、長期的な安定性にかける。
さらに、これらに関連してゴム系オリゴマーの水素添加物と(メタ)アクリロイル基とをウレタン結合によって結合させた液状水添ポリジエン系(メタ)アクリレートがいくつか提案されている(例えば、特許文献6、7、8参照)。ここで提案されている樹脂の硬化物は低収縮性があり、耐水性、電気絶縁性に優れているが、脂環式(メタ)アクリルモノマーを多量に含んでいる影響で、硬化物の柔軟性が十分でなく、さらに密着性も満足なものが得られない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−51423号公報
【特許文献2】特開平7−13173号公報
【特許文献3】特開2002−371101公報
【特許文献4】特開2004−299263公報
【特許文献5】特開2005−317523公報
【特許文献6】特開平6−65334号公報
【特許文献7】特開2005−76017公報
【特許文献8】特開2006−124411公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柔軟な硬化物が得られ、かつ重合時の硬化収縮率が低く、密着性、電気絶縁性、耐水性が良好で、さらに透明性に優れ、熱及び光に対して安定であり、光又は熱により硬化が可能な樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた。その結果、(A)末端に1個又は2個の水酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂(a1)、有機ジイソシアネート(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)を反応させてなる水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及び(B)炭素数が6以上の脂肪族アルキル基をもつモノ(メタ)アクリレートからなる硬化性樹脂組成物、その硬化物が上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)末端に1個又は2個の吸い酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂(a1)、有機ジイソシアネート(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)を反応させてなる水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)及び炭素数が6以上の脂肪族アルキル基をもつモノ(メタ)アクリレート(B)とからなる硬化性樹脂組成物、
(2)水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、炭素数が6以上の脂肪族アルキル基をもつモノ(メタ)アクリレート(B)との配合割合(質量比)(A)/(B)が90/10〜40/60である上記(1)に記載の硬化性樹脂組成物、(3)さらに、重合開始剤(C)を含む上記(1)又は(2)に記載の硬化性樹脂組成物、(4)上記(1)又は(2)に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟な硬化物が得られ、かつ重合時の硬化収縮率が低く、密着性、電気絶縁性、耐水性が良好で、さらに透明性に優れ、熱及び光に対して安定であり、光又は熱により硬化が可能な樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いられる水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の反応原料である、末端に1個又は2個の水酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂(a1)としては、特に限定されるものではないが、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の共役ポリジエン樹脂の水素添加物の末端に1個又は2個の水酸基を有する樹脂、ポリペンタジエン、ポリヘキサジエン、ポリオクタジエン等の非共役ポリジエン樹脂の水素添加物の末端に1個又は2個の水酸基を有する樹脂、ポリシクロペンタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリエチリデンノルボルネン等の環状ポリジエン樹脂等の水素添加物の末端に1個又は2個の水酸基を有する樹脂等を挙げることができるが、柔軟性の点から、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ポリジエンの水素添加物の末端に1個又は2個の水酸基を有する樹脂が特に好ましい。
ここで、末端に2個の水酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂とは、2個の水酸基が水素添加ポリジエン樹脂の両末端にそれぞれ1個結合した構造の樹脂をいう。
また、水素添加ポリジエン樹脂とは、ポリジエン樹脂の不飽和結合を水素化して飽和させた樹脂のことをいう。
【0010】
また、水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の反応原料である有機ジイソシアネート(a2)としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のジイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート類が挙げられる。
【0011】
また、水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の反応原料であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、特に限定されるものではないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
【0012】
本発明で用いられる水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の製法は特に限定されるものではないが、例えば、末端に1個又は2個の水酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂(a1)の水酸基nモル(nは1以上の整数である)に対し、有機ジイソシアネート(a2)のNCO基2nモルのモル比で反応させた後に、更に、該反応生成物にヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)nモルを反応させることが好ましい。
【0013】
また、これらの反応においては、反応触媒として、以下に示す公知のものを使用することができる。すなわち、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の第三級アミンやナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクトエ酸銅、ジブチルチンジラウレート等の有機酸塩及び有機金属化合物を使用することができる。
【0014】
水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の重量平均分子量は、3,000〜25,000が好ましく、8,000〜20,000がより好ましい。重量平均分子量が3,000〜25,000の範囲内であると硬化物が脆くなることもなく、硬化性が悪化することもない。なお、重量平均分子量はゲル パーミエーション クロマトグラフィー法(GPC法)(標準ポリスチレン換算)等で測定される。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物を構成する成分(B)である炭素数が6以上の脂肪族アルキル基を持つ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、該成分(B)の成分(A)との配合割合(質量比)A/Bは90/10〜40/60が好ましく、80/20〜50/50がより好ましい。該配合割合が、90/10〜40/60の範囲内であると、初期においても充分な接着性が得られ、内部応力が大きくなることもなく、接着性が十分に保持される。また、成分(B)が炭素数6以上であっても、シクロヘキシル(メタ)アクリレートジシクロペンテニルアクリレートなどの脂環式構造を含むモノ(メタ)アクリレートの場合は、十分な柔軟性、密着強度が得られない。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させるには、従来からウレタンアクリレート樹脂で用いられている硬化方法、すなわち、重合開始剤(C)例えば、光重合開始剤を用いた光硬化法や有機過酸化物開始剤を用いた加熱硬化法の通常の方法を用いることができる。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させるのに用いる光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させるのに用いる有機過酸化物開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステルなど公知のものを用いることができ、具体的には以下のようなものを例示することができる。ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサンなどが挙げられる。
【0019】
上記光重合開始剤や有機過酸化物開始剤などの重合開始剤(C)の使用量は硬化性樹脂組成物に対して0.8〜10質量%程度の範囲が好ましい。
【0020】
上記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)以外に硬化性樹脂組成物の粘度を調整するために、希釈用重合性ビニルモノマーを、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
該希釈用重合性ビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0021】
硬化性樹脂組成物の硬化速度や硬化物の架橋度をコントロールするために、架橋用重合性モノマーを使用してもよい。架橋用重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤や酸性リン酸エステル等の密着性向上剤、貯蔵安定性を向上させるための酸化防止剤、その他、硬化促進剤、消泡剤、染料、充填剤、顔料、チキソトロピー付与剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えることができる。
【実施例】
【0023】
実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0024】
下記の要領でウレタンアクリレート樹脂を製造した。
合成例1
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート(a2)152.9g及び末端に水酸基を有する水素添加ポリイソプレン樹脂(a1、出光興産株式会社製、エポール)を764.5g仕込み、60℃で反応させた。残存イソシアネート基が1モル%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(a3)81.7gを仕込み、70℃まで昇温して反応を行なった。イソシアネート基がなくなった時点で反応を終了させ、水素添加ポリイソプレン含有ウレタンアクリレート樹脂(UA1、重量平均分子量18000)を得た。
【0025】
合成例2
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート(a2)101.2g及び末端に水酸基を有する水素添加ポリブタジエン樹脂(a1)を844.3g仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が1モル%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルメタクリレート53.9gを仕込み70℃まで昇温して反応を行なった。イソシアネート基がなくなった時点で反応を終了させ、水素添加ポリブタジエン含有ウレタンアクリレート樹脂(UA2、重量平均分子量15000)を得た。
【0026】
比較合成例
温度計、撹拌器、滴下ロート、乾燥管付き冷却管を備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(a2)140.9g及び末端に水酸基を有するポリイプレン樹脂(出光興産株式会社製、Poly ip)を782.7g仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が1モル%以下となった時点で、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(a3)75.4gを仕込み70℃まで昇温して反応を行なった。イソシアネート基がなくなった時点で反応を終了させ、ポリイプレン含有ウレタンアクリレート樹脂(UA3、重量平均分子量14000)を得た。
【0027】
実施例1
合成例1で得られたUA1樹脂60質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(B)40質量部及び重合開始剤(C)ダロキュア(登録商標、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1173 4質量部からなる硬化性樹脂組成物を調製し、該硬化性樹脂組成物をガラス板の間にはさんで、高圧水銀灯(5kW)の照射装置を用いて紫外線365nm、積算光量2000mJ/cm2の硬化条件で硬化せしめて、厚さ3mm、縦100mm、横100mmの透明な硬化物を成形した。
【0028】
実施例2
合成例2で得られたUA2樹脂70質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(B)30質量部及び重合開始剤(C)ダロキュア(登録商標、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1173 4質量部からなる硬化性樹脂組成物を調製し、該硬化性樹脂組成物をガラス板の間にはさんで、高圧水銀灯(8kW)の照射装置を用いて紫外線365nm、積算光量2000mJ/cm2の硬化条件で硬化せしめて、厚さ3mm、縦100mm、横100mmの透明な硬化物を成形した。
【0029】
実施例3
合成例1で得られたUA1樹脂60質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(B)40質量部及び重合開始剤(C)であるパーオクタ(登録商標、日本油脂株式会社製)0.1質量部とパーロイル(登録商標、日本油脂株式会社製)TCP 0.5質量部とからなる硬化性樹脂組成物をガラス板の間にはさんで、100℃の硬化炉に1時間入れて加熱硬化せしめて、厚さ3mm、縦100mm、横100mmの透明な硬化物を成形した。
【0030】
比較例1
合成例1で得られたUA1樹脂60質量部、ジシクロペンテニルアクリレート40質量部及び重合開始剤(C)ダロキュア(登録商標、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1173 4質量部からなる硬化性樹脂組成物をガラス板の間にはさんで、高圧水銀灯(8kW)の照射装置を用いて紫外線365nm、積算光量2000mJ/cm2の硬化条件で硬化せしめて、厚さ3mm、縦100mm、横100mmの透明な硬化物を成形した。
【0031】
比較例2
比較合成例で得られたUA3樹脂60質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(B)40質量部及び重合開始剤(C)ダロキュア(登録商標、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1173 4質量部からなる硬化性樹脂組成物をガラス板の間にはさんで、高圧水銀灯(8kW)の照射装置を用いて紫外線365nm、積算光量2000mJ/cm2の硬化条件で硬化せしめて、厚さ3mm、縦100mm、横100mmの透明な硬化物を成形した。
【0032】
実施例、比較例で得られた硬化性樹脂組成物又は硬化物を用いて下記の方法で、(1)硬化収縮率、(2)吸水率、(3)表面硬度、(4)電気特性、(5)耐候性及び(6)密着性の評価を行い、その結果を表1にまとめて示した。
【0033】
(1)硬化収縮率
得られた硬化性樹脂組成物の23℃における液比重と、上記の各硬化条件で得られた硬化物(試験体)の23℃における硬化物層の比重を各々測定し、下記の定義に基づいて硬化収縮率を算出し、評価した。
<硬化収縮率の算出定義>
23℃における硬化前の液比重(X1)と、硬化して得られた硬化物層の23℃における比重(X2)をそれぞれ測定し、下記の式(1)により求めた値を硬化収縮率(%)とした。
硬化収縮率(%)=〔(X2−X1)/X2〕×100 ・・・式(1)
硬化収縮率が6.5%未満の場合を○、6.5%以上の場合を×とした。
【0034】
(2)吸水率
実施例1〜3及び比較例1、2に記載した硬化条件で作成した硬化物(試験体)について、23℃の水中に24時間放置し、JIS K7209に準拠して吸水率を測定し、下記基準に基づいて評価した。
吸水率が0.1%未満の場合を○、0.1%以上の場合を×とした。
【0035】
(3)表面硬度
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた硬化物(試験体)について、JIS K−6253に準拠して、デュロメータ硬度計タイプAを使用して表面硬度を測定し、下記基準に基づいて評価した。
タイプA硬度が70未満の場合を○、タイプA硬度が70以上の場合を×とした。
【0036】
(4)電気特性
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた硬化物(試験体)について、ヒューレットパッカード株式会社製ベクトルネットワークアナライザHP8753Eを用い、1.5mm×1.5mm×75mmの角柱状試験片を用いて空洞共振器摂動法にて測定周波数5GHzにて誘電率および誘電正接を測定し、下記基準に基づいて評価した。
誘電率が3.0未満かつ誘電正接が0.005未満の場合を○、
誘電率が3.0未満かつ誘電正接が0.005以上の場合を×とした。
【0037】
(5)耐候性
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた硬化物(試験体)を用い、照射前の全光線透過率(村上色彩技術研究所製ヘイズメータHM−150)及び表面光沢(村上色彩技術研究所製グロスメータGM−26PRO)を測定した。その後、キセノンウエザーメーター(東洋精機製作所製ALTASウェザーメータCi−4000)中(ブラックパネル温度65℃、照射2時間中降雨18分、照射エネルギー100W/m2)で照射1000時間後の、全光線透過率および表面光沢の保持率を測定した。表中の○は、1000時間照射後の全光線透過率保持率が90%以上でかつ表面光沢の保持率が90%以上のものを示す。
【0038】
(6)密着性
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた重合開始剤入りの硬化性樹脂組成物を、厚さ125μmのポリエステルフィルム上に厚みが50μmになるように塗布した後、紫外線を1000mJ/cm2照射した。実施例3のみ50μmになるように塗布した後、100℃の硬化炉にて2時間加熱硬化させた。これらの塗膜の密着性を碁盤目セロハンテープ〈登録商標〉剥離試験法により、碁盤目100個中の剥離碁盤目数を測定し、下記の基準で密着性を評価した。
○:密着性非常に良好(90/100以上)
△:密着性良好(80/100以上90/100未満)
×:密着性不良(80/100未満)
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、各種基材に対し高い接着強度を有し、高湿度下での強度低下が極めて小さく、且つ硬化時に発生する内部応力が小さく柔軟な硬化性樹脂組成物であることから、内部応力が影響するプラスチック製電子材料への接着の適用が可能となる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、透明性に優れ、且つ熱又は光に対して長期的に安定であるため、内部応力が影響するプラスチック製光学材料の接着にも適応が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に1個又は2個の水酸基を有する水素添加ポリジエン樹脂(a1)、有機ジイソシアネート(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)を反応させてなる水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、炭素数が6以上の脂肪族アルキル基をもつモノ(メタ)アクリレート(B)とからなる硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
水素添加ポリジエン含有ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、炭素数が6以上の脂肪族アルキル基をもつモノ(メタ)アクリレート(B)との配合割合(質量比)(A)/(B)が90/10〜40/60である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、重合開始剤(C)を含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。

【公開番号】特開2008−260898(P2008−260898A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106328(P2007−106328)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】