説明

硬化性組成物及びその硬化物

【課題】耐熱性及び低収縮性などに優れ、活性光線(紫外線、電子線など)の照射により硬化可能な光硬化性組成物とその硬化物(硬化膜など)を提供する。
【解決手段】硬化成分としてエチレン性不飽和化合物(多官能(メタ)アクリレートなど)とチオール化合物(ポリチオール化合物など)とを含むエン/チオール系硬化性組成物であって、前記硬化成分のうち少なくとも一方の硬化成分として、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(ジ(メタ)アクリレートなど)を全体に対して20重量%以上の割合で含む。エチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合1モルに対するチオール化合物のメルカプト基の割合は0.1〜1.5モルである。硬化性組成物は光重合開始剤を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エン/チオール系の硬化性組成物とその硬化物(硬化膜など)、特に、耐熱性及び低収縮性などに優れ、活性光線(紫外線、電子線など)の照射により硬化可能な光硬化性組成物とその硬化物(硬化膜など)に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線の照射により硬化可能な光硬化性組成物は、溶媒を必要とせず、環境への負荷を低減できる。このような光硬化性樹脂組成物には、光硬化性オリゴマー(エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレートなど)、光硬化性モノマー(多官能アクリレートなど)などのエチレン性不飽和基を含有する成分が使用され、紫外線硬化性樹脂組成物では光重合開始剤が使用されている。
【0003】
しかし、エチレン性不飽和基を含有する成分を含む樹脂組成物を硬化させると、収縮が大きい。そのため、硬化塗膜を形成すると、紙などの基材がカールしたり、金属などの基材に対する硬化塗膜の密着性が低下しやすくなる。また、前記光硬化性樹脂組成物はラジカル反応を利用しているため、酸素により硬化が阻害されやすい。
【0004】
近年、エチレン性不飽和基を有する成分とメルカプト基を有する化合物とを組み合わせたエン/チオール系硬化性組成物が提案されており、この硬化性組成物は、硬化に伴う収縮を抑制できる。
【0005】
特開2006−89623号公報(特許文献1)には、不飽和基およびカチオン性基含有エポキシ樹脂とチオール基およびカチオン性基含有エポキシ樹脂とを含むカチオン電着塗料組成物が開示され、光重合開始剤、不飽和基含有化合物および/またはチオール基含有化合物を含んでいてもよいことも記載されている。このカチオン電着塗料組成物では、エン・チオール反応を利用してブロックイソシアネート硬化剤の含有量を大幅に低減できる。
【0006】
特開2008−13690号公報(特許文献2)には、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、多官能チオール化合物またはジスルフィド化合物を所定の割合で含む電子線硬化性組成物が開示されている。さらに、特開2009−58582号公報(特許文献3)には、光重合性化合物(カルボキシル基含有アクリル系樹脂と、重合性基を有する脂環式エポキシ化合物との開環付加反応物など)、光重合開始剤、及びチオール系連鎖移動剤(メルカプト有機酸誘導体及びチオグリコール酸誘導体)を含有する光硬化性樹脂組成物を基板上に塗布し、プレベークし、選択的に露光した後、アルカリ現像してレジストパターンを形成することが開示されている。
【0007】
しかし、これらの硬化性樹脂組成物は、耐熱性を向上させることが困難である。また、硬化塗膜の光学特性を高めることもできない。
【0008】
特開2006−154775号公報(特許文献4)には、(A)カルボキシル基を有するバインダー樹脂(カルボキシル基を有するビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂など)、(B)エチレン性不飽和基を有する化合物、(C)9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するチオール化合物(9,9−ビス[4−(メルカプトアルキルカルボニルオキシ)アルキルオキシフェニル]フルオレン類など)を含む光重合開始剤系、(D)黒色顔料及び(E)有機溶剤を含有するカラーフィルターブラックマトリックスレジスト組成物が開示されている。この特許文献には、有機溶剤(E)を除いた系で、(A)カルボキシル基を有するバインダー樹脂;10〜30質量%、(B)エチレン性不飽和基を有する化合物;2〜20質量%、(C)光重合開始剤系;2〜15質量%、(D)黒色系顔料;40〜80質量%の割合で含み、光重合開始剤系(C)がチオール化合物を20〜70質量%の割合で含有することが記載されている。この文献には、(C)光重合開始剤系が、フルオレン骨格を有するチオール化合物、光ラジカル発生剤、及び増感剤を含有し、フルオレン骨格を有する新規なチオール化合物を用いると、遮光性が高く、高感度で現像マージンを向上できることが記載されている。
【0009】
しかし、前記レジスト組成物でも、耐熱性及び光学特性が低く、高い耐熱性を維持しつつ低収縮性を低減できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−89623号公報(特許請求の範囲,段落[0007])
【特許文献2】特開2008−13690号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2009−58582号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−154775号公報(特許請求の範囲、段落[0011][0029])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、高い熱的特性と低い収縮性とを両立できる硬化性組成物(又は硬化性樹脂組成物)及びその硬化物(硬化膜など)を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、高い屈折率を有し、光学的特性に優れた硬化物を形成できる硬化性組成物(又は硬化性樹脂組成物)及びその硬化物(硬化膜など)を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、紫外線、電子線などの光線の照射により、高い耐熱性及び光学特性を有する硬化膜を形成できる光硬化性組成物(又は光硬化性樹脂組成物)及びその硬化物(硬化膜など)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン性不飽和二重結合を有する特定の化合物と特定のチオール化合物とを組み合わせたエン/チオール硬化系において、エチレン性不飽和化合物およびチオール化合物のうち少なくとも一方の成分(硬化性成分)として、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を用いると、耐熱性などの熱的特性が向上するとともに、収縮性が低減すること、前記硬化成分としての9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の含有量を多くすると、さらに熱的特性が向上するとともに光学特性も向上できることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の硬化性組成物(又は硬化性樹脂組成物)は、硬化成分としてエチレン性不飽和化合物とチオール化合物とを含み、エン/チオール系硬化性組成物を形成している。そして、前記エチレン性不飽和化合物及びチオール化合物のうち少なくとも一方の成分は9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を含んでいる。このような組成物において、エチレン性不飽和化合物は複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能化合物、例えば、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物であってもよい。
【0016】
より詳細には、エチレン性不飽和化合物は下記式(1)又は(1a)で表される化合物であってもよい。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、環Z及びZは同一又は異なって芳香族炭化水素環、R2a及びR2bは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R4a及びR4bは同一又は異なってはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、R5a及びR5bは同一又は異なってはハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基を示し、X1a及びX1bは同一又は異なる連結基(例えば、エステル結合又はウレタン結合を含む連結基)、mは1〜3の整数、qは0又は1〜3の整数、rは0又は1〜3の整数を示す)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1a及びR1bはアルキレン基、nは0又は1〜10の整数を示し、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、q及びrは前記に同じ)
また、チオール化合物は複数のメルカプト基を有するポリチオール化合物であってもよい。例えば、チオール化合物は下記式(2)、(2a)又は(2b)で表される化合物であってもよい。
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、Y1a及びY1bは同一又は異なる連結基、pは0又は1を示し、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、q及びrは前記に同じ)
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R1a及びR1b、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、n、q及びrは前記に同じ)
前記組成物において、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の含有量は、硬化成分として機能させるため、固形分換算で全体に対して20重量%以上であってもよい。また、エチレン性不飽和化合物(例えば、複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能エチレン性不飽和化合物)のエチレン性不飽和結合1モルに対してチオール化合物(例えば、複数のメルカプト基を有するポリチオール化合物)のメルカプト基の割合は0.1〜1.5モル程度であってもよい。
【0025】
前記硬化性組成物は、複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能エチレン性不飽和化合物[特に、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物]と、硬化物(硬化塗膜など)の特性を調整するため、分子中に1つのエチレン性不飽和結合を有する単官能エチレン性不飽和化合物[特に、(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリル系化合物]とを含んでいてもよい。さらに、硬化性組成物は重合開始剤(例えば、光重合開始剤)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明は、前記硬化性組成物とともに、硬化性組成物が硬化した硬化物(硬化膜など)、前記硬化性組成物に活性エネルギー(熱又は光エネルギー)を付与して硬化させる硬化物(硬化膜など)の製造方法も包含する。
【0027】
なお、本明細書において、アクリル系化合物とメタクリル系化合物とを「(メタ)アクリル」系化合物と総称する。そのため、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロイル基及びメタクリロイル基の双方を包含し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方を包含する。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、エン/チオール系硬化性組成物において、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を用いるため、耐熱性などの熱的特性を向上できるとともに収縮性を大きく低減できる。また、高い屈折率を有し、光学的特性に優れた硬化物を形成できる。さらに、活性エネルギー(熱又は光エネルギー)、特に紫外線、電子線などの光線の照射により、高い耐熱性及び光学特性を有する硬化物(硬化膜など)を生成できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の硬化性組成物は、硬化成分としてエチレン性不飽和化合物とチオール化合物とを含んでおり、これらの成分の少なくとも一方の成分として、エチレン性不飽和結合を有する9,9−ビスアリールフルオレン化合物及び/又はメルカプト基を有する9,9−ビスアリールフルオレン化合物を含んでいる。
【0030】
[エチレン性不飽和化合物]
エチレン性不飽和化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有していればよく、分子中に1つのエチレン性不飽和結合を有する単官能不飽和化合物であってもよいが、通常、複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能不飽和化合物を少なくとも含んでいる。単官能不飽和化合物と多官能不飽和化合物とは組み合わせて使用できる。
【0031】
単官能不飽和化合物としては、アリル基を有する化合物(アリルアルコールなど)、ビニル基を有する化合物[スチレン系単量体、N−ビニルピロリドン、ビニルエーテル類など]、(メタ)アクリロイル基を有する化合物[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのフルオロC1−10アルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート類;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。単官能不飽和化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物、これらのハーフエステルなどのカルボキシル基含有化合物、スルホン酸基含有化合物、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートなどのリン酸基含有化合物などであってもよい。これらの単官能不飽和化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
多官能不飽和化合物としては、ジアリルフタレートなどのアリル基を有する化合物も使用できるが、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート類を使用する場合が多い。多官能(メタ)アクリレート類は、ジ(メタ)アクリレート類と、3以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリレート類とに分類できる。ジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールAなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート類;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート類などが例示できる。ポリ(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパン、グリセリンなどのアルカンポリオールC2−4アルキレンオキサイド付加体のトリ(メタ)アクリレート類;トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどのトリアジン環を有するトリ(メタ)アクリレート類などが例示できる。
【0033】
さらに、多官能不飽和化合物には、エチレン性不飽和結合(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する多官能オリゴマー、例えば、多価カルボン酸とポリオールと(メタ)アクリル酸及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成するポリエステル(メタ)アクリレート類;複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物(多価アルコール型、多価カルボン酸型、ビスフェノールA、F、Sなどのビスフェノール型、ノボラック型などのエポキシ樹脂)に(メタ)アクリル酸が開環付加したエポキシ(メタ)アクリレート類;ポリイソシアネートとポリオールとの反応により生成し、かつ末端イソシアネート基を有するオリゴマーにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させたポリウレタン(メタ)アクリレート類なども含まれる。なお、ヒドロキシル基を有するオリゴマー(例えば、開環反応により生成したヒドロキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類)はカルボキシル基又は酸無水物基を有する反応性化合物(例えば、酸無水物など)と反応させ、カルボキシル基などを導入してもよい。
【0034】
これらの多官能不飽和化合物も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。エチレン性不飽和化合物としては、感度を高めるため、通常、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が使用される。また、硬化物の強度、硬度、感度などを高めるため、通常、複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能不飽和化合物、特に、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物、例えば、多官能オリゴマー及び/又は多官能(メタ)アクリレート類(ジ(メタ)アクリレート類及びポリ(メタ)アクリレート類など)を用いる場合が多い。
【0035】
エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和結合を有する9,9−ビスアリールフルオレン化合物を含むのが好ましい。このような化合物は、下記式(1)で表すことができる。
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、環Z及びZは同一又は異なって芳香族炭化水素環、R2a及びR2bは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R4a及びR4bは同一又は異なってはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、R5a及びR5bは同一又は異なってはハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基を示し、X1a及びX1bは同一又は異なる連結基(例えば、エステル結合又はウレタン結合などを含む連結基)、mは1〜3の整数、qは0又は1〜3の整数、rは0又は1〜3の整数を示す)
前記式(1)において、Z及びZで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、インデン環などのC6−14芳香族炭化水素環などが例示できる。好ましいZ及びZは、ベンゼン環又はナフタレン環である。
【0038】
2a及びR2bは、水素原子又はメチル基のいずれであってもよいが、硬化性および感度の点から水素原子であるのが好ましい。
【0039】
4a及びR4bで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子などが例示でき、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキル基(特に、C1−6アルキル基)などが例示できる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基などが例示でき、アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(トリル基、キシリル基、t−ブチルフェニル基など)、ナフチル基などのC6−10アリール基などが例示でき、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基などが例示できる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−8アルコキシ基(特にC1−6アルコキシ基)などが例示できる。シクロアルキルオキシ基としては、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基などが例示でき、アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基が例示でき、アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基などが例示できる。アシル基としては、アセチル基などのC1−6アシル基などが例示でき、置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基などが例示できる。好ましい置換基R4a及びR4bは、メチル基、エチル基などのC1−4アルキル基(特にメチル基)、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基などのC1−4アルコキシ基(特にメトキシ基)などである。R4a及びR4bの置換位置は特に制限されず、例えば、環Z及びZがベンゼン環の場合には、通常、2−位、3−位又は4−位である場合が多く、環Z及びZがナフタレン環の場合には、4−位、5−位、6−位又は7−位である場合が多い。
【0040】
5a及びR5bで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子などが例示でき、アルキル基としては、メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキル基(特に、C1−6アルキル基)などが例示できる。好ましいアルキル基はメチル基である。
【0041】
1a及びX1bは環Z及びZと不飽和結合とを連結する連結基であり、通常、エステル結合(又はエステル結合及びエーテル結合の双方の結合)又はウレタン結合(又はウレタン結合及びエーテル結合の双方の結合)を含む連結基である。この連結基は、環Z及びZがヒドロキシル基(アルキレンオキサイド付加体では末端のヒドロキシアルキルオキシ基)を有する場合、ヒドロキシル基と、カルボキシル基含有不飽和化合物((メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などの前記不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物など)との反応により生成するエステル結合を有する連結基、ヒドロキシル基(アルキレンオキサイド付加体では末端のヒドロキシアルキルオキシ基)と、末端イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート系化合物との反応により生成するウレタン結合を有する連結基などであってもよい。末端イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート系化合物としては、ジイソシアネートと前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応、又はジイソシアネートとジオールとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成し、末端に遊離のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネートなどが例示できる。なお、ヒドロキシル基と、エチレン性不飽和結合[(メタ)アクリロイル基、ビニル基など]を有するシランカップリング剤との反応により生成する連結基であってもよい。
【0042】
また、連結基は、環Z及びZがカルボキシル基を有する場合、カルボキシル基と、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成するエステル結合を有する連結基、カルボキシル基と、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応により生成するエステル結合を有する連結基などであってもよい。
【0043】
なお、連結基X1a及びX1bは、環Z及びZの任意の位置に置換でき、例えば、環Z及びZがベンゼン環の場合には、通常、3−位又は4−位である場合が多く、環Z及びZがナフタレン環の場合には、4−位、5−位、6−位又は7−位である場合が多い。
【0044】
係数mは1〜3の整数、特に1又は2の整数である。係数qは0又は1〜3の整数を示し、通常、0〜3(例えば、0又は1)である。係数rは0又は1〜3の整数を示し、通常、0又は1である。
【0045】
エチレン性不飽和化合物は、不飽和結合として(メタ)アクリロイル基を有するのが好ましい。このようなエチレン性不飽和化合物は、下記式(1a)で表すことができる。
【0046】
【化6】

【0047】
(式中、R1a及びR1bはアルキレン基、nは0又は1〜10の整数を示し、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、q及びrは前記に同じ)
1a及びR1bで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基が例示できる。R1a及びR1bは互いに異なる種類のアルキレン基であってもよく、アルキレン基R1a及びR1bの種類は係数nの数によって異なっていてもよい。好ましいアルキレン基は、C2−4アルキレン基、特にC2−3アルキレン基(エチレン基、プロピレン基)であり、通常、エチレン基である場合が多い。オキシアルキレン単位の繰り返し数nは0又は1〜10の整数であり、通常、1〜7、好ましくは1〜5(例えば、1〜3)、さらに好ましくは1又は2程度の整数であってもよい。
【0048】
式(1a)で表される代表的な化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]フルオレン類;9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[モノ又はジC1−4アルキル−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン;9,9−ビス[3,5−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;9,9−ビス[3,4,5−トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;これらの化合物において(R1aO)又は(OR1b)で表されるC2−4アルコキシ基がポリ(C2−4アルコキシ)基(ジエトキシ、トリエトキシ基など)で置換された化合物(9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;9,9−ビス[4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類など);さらにはこれらの化合物において環Z及びZのフェニル基にフェニル基が置換してビフェニル基を形成した化合物(9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[フェニル−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル]フルオレン類など);これらの化合物において環Z及びZがナフチル基である化合物(9,9−ビス[5又は6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−2−ナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[5又は6−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−1−ナフチル)]フルオレンなどの9,9−ビス[((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)ナフチル]フルオレン類など)などが例示できる。
【0049】
なお、エチレン性不飽和化合物は、分子中に複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能エチレン性不飽和化合物(特に、分子中に複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物など)を少なくとも含むのが好ましいが、硬化物の柔軟性や組成物(エチレン性不飽和化合物も含む)のハンドリング性(粘度など)などの特性を調整するため、さらに、分子中に1つのエチレン性不飽和結合を有する単官能エチレン性不飽和化合物(特に、分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリル系化合物など)を含んでいてもよい。多官能不飽和化合物と単官能不飽和化合物との重量割合は、前者/後者=25/75〜100/0(例えば、30/70〜95/5)、好ましくは40/60〜100/0(例えば、45/55〜90/10)程度であり、50/50〜100/0(例えば、60/40〜80/20)程度であってもよい。
【0050】
[チオール化合物]
チオール化合物は、少なくとも1つのメルカプト基を有していればよく、分子中に1つのメルカプト基を有する単官能化合物(単官能チオール化合物)であってもよいが、通常、複数のメルカプト基を有する多官能化合物(ポリチオール化合物又は多官能チオール化合物)を少なくとも含んでいる。
【0051】
チオール化合物としては、例えば、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオールなどのアルカンポリチオール類;1,4−ジメルカプト−3−チア−ブタン、1,6−ジメルカプト−4−チア−ヘキサン、1,8−ジメルカプト−4−チア−オクタン、1,6−ジメルカプト−2,4−ジチア−ヘキサン、1,8−ジメルカプト−2,4−ジチア−オクタン、1,12−ジメルカプト−4,8−ジチア−ドデカンなどのポリアルカンジチオール類(又はポリチオキシアルキレンジチオール);ジメルカプトベンゼン、トリメルカプトベンゼン、1,4−ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メルカプトエチル)ベンゼンなどの芳香族ポリチオール類;メルカプト基含有カルボン酸と多価アルコールとのエステル類;2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジンなどの複素環式ポリチオール類などが例示できる。これらのチオール化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
前記メルカプト基含有カルボン酸としては、例えば、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、4−メルカプト酪酸、2−メルカプトイソ酪酸、3−メルカプトイソ酪酸、2−メルカプト−3−メチル酪酸、3−メルカプト吉草酸、4−メルカプト吉草酸、5−メルカプト吉草酸、3−メルカプト−4−メチル吉草酸などの直鎖状又は分岐鎖状メルカプト基含有C1−10アルカン−カルボン酸(好ましくはメルカプト基含有C1−6アルカン−カルボン酸)、チオシクロヘキサンカルボン酸などのメルカプト基含有C4−10シクロアルカン−カルボン酸、チオサリチル酸などのメルカプト基含有C6−12アレーン−カルボン酸などが例示できる。メルカプト基含有カルボン酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。多価アルコールとしては、例えば、アルキレングリコール類(エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−10アルカンジオール類など)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ノルボルナンジメタノールなどの脂環式又は橋架け脂環式シクロアルカンジオール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのアルカンポリオール類、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどのトリアジン環含有ポリオール類(トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート類など)、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレンなどのビスフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加体などが挙げられる。
【0053】
メルカプト基含有カルボン酸と多価アルコールとのエステル類(メルカプト基含有エステル類)のうちチオグリコール酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジチオグリコレート、ブタンジオールジチオグリコレート、ネオペンチルグリコールジチオグリコレート、ヘキサンジオールジチオグリコレートなどのアルカンジオールジチオグリコレート;トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールトリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレートなどのアルカンポリオールポリチオグリコレート;ジエチレングリコールジチオグリコレートなどのポリアルキレングリコールジチオグリコレート;1,4−シクロヘキサンジオールジチオグリコレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジチオグリコレートなどの脂環式又は橋架け脂環式シクロアルカンポリオールポリチオグリコレート類;1,3,5−トリス[2−(メルカプトメチルカルボニルオキシ)エチル]イソシアヌレートなどのトリアジン環含有ポリチオグリコレート類;2,2−ビス[4−(2−(メルカプトアセチルオキシ)エトキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス[4−(メルカプトアセチルオキシ)フェニル]フルオレンなどのビスフェノール類(ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類など)又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリチオグリコレート類などが例示できる。
【0054】
メルカプト基含有エステル類には、上記チオグリコレート類(メルカプト酢酸エステル類)に対応するメルカプトプロピオン酸エステル類(3−メルカプトプロピオン酸エステル類、3−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸エステル類など)、メルカプト酪酸エステル類(3−メルカプト酪酸エステル類、2−メルカプトイソ酪酸エステル類、3−メルカプト−3−メチル酪酸エステル類など)、メルカプト吉草酸エステル類(3−メルカプト吉草酸エステル類、4−メルカプト吉草酸エステル類、3−メルカプト−4−メチル吉草酸エステル類)などのメルカプトアルカンカルボン酸エステル類も含む。これらのメルカプト基含有エステル類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
チオール化合物のうち、アルカンジオール、アルカンポリオール類、トリアジン環含有ポリオール類、ビスフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加体から選択された多価アルコール類と、メルカプト基含有C1−6アルカン−カルボン酸とのエステルを用いる場合が多い。このようなチオール化合物としては、前記例示のチオグリコレート類に加えて、例えば、ブタンジオールジチオプロピオネート、ヘキサンジオールジチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールトリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサチオプロピオネート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートトリチオプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸エステル類;これらのメルカプトプロピオン酸エステル類に対応する3−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸エステル類;上記メルカプトプロピオン酸エステル類に対応する2−メルカプトイソ酪酸エステル類、3−メルカプト酪酸エステル類(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラ(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなど)、3−メルカプト−3−メチル酪酸エステル類、3−メルカプト−4−メチル吉草酸エステル類などが例示できる。
【0056】
なお、メルカプト基含有カルボン酸と多価アルコールとのチオエステル類は、慣用のエステル化法に従って調製できる。
【0057】
チオール化合物は、オリゴマー又はポリマー領域の分子量を有する多官能チオールであってもよく、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂などのエポキシ化合物に前記メルカプト基含有カルボン酸(直鎖状又は分岐鎖状メルカプト基含有C1−6アルカン−カルボン酸など)が開環付加した反応生成物であってもよく、ポリウレタンオリゴマー(ジイソシアネート成分に、メルカプト基含有アルカノール(メルカプトエタノールなど)のヒドロキシル基を反応させ、生成した末端にイソシアネート基を有する化合物とジオール成分との反応により生成したメルカプト基を有するポリウレタンオリゴマー)、末端にメルカプト基を有するポリサルファイドポリマー(脂肪族エーテル鎖を有するサルファイドポリマーなど)、例えば、ポリエーテル鎖(ポリC2−4アルキレンエーテル鎖など)にメルカプト基が導入された液状樹脂(東レ(株)製、「ポリチオール」)、主鎖にジスルフイド結合とエーテル鎖(C1−4アルキレンエーテル鎖など)とを有する重合体又は液状ゴム(東レ(株)製、「チオコール」)などであってもよい。
【0058】
チオール化合物は、メルカプト基を有する9,9−ビスアリールフルオレン化合物を含むのが好ましい。このような化合物は、下記式(2)で表すことができる。
【0059】
【化7】

【0060】
(式中、Y1a及びY1bは同一又は異なる連結基、pは0又は1を示し、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、q及びrは前記に同じ)
式(2)で表される化合物において、連結基Y1a及びY1bは環Z及びZとメルカプト基とを連結する連結基であり、通常、エーテル結合を含む連結基(アルキレンオキシ基など)、又は前記連結基X1a及びX1bと同様の連結基[エステル結合(又はエステル結合及びエーテル結合の双方の結合)又はウレタン結合(又はウレタン結合及びエーテル結合の双方の結合)を含む連結基]である。係数pは0(直接結合)又は1である。
【0061】
式(2)で表される化合物において、好ましい環Z及びZ、置換基R4a、R4b、R5a及びR5b、及び係数m、q及びrは前記式(1)で表される化合物と同様である。
【0062】
チオール化合物は、アルキレンオキシ基、エステル結合(又はエステル結合及びエーテル結合の双方の結合)を有するのが好ましい。このような化合物は、下記式(2a)又は(2b)で表すことができる。
【0063】
【化8】

【0064】
(式中、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R1a及びR1b、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、n、q及びrは前記に同じ)
3a及びR3bで表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、2−メチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基が例示できる。
【0065】
式(2a)又は(2b)で表される化合物において、アルキレン基R1a及びR1b、環Z及びZ、置換基R4a、R4b、R5a及びR5b、繰り返し数n、及び係数m、q及びrは前記式(1a)で表される化合物と同様である。
【0066】
式(2)において係数pが0(直接結合)である代表的な化合物(又は式(2a)においてn=0である代表的な化合物)としては、例えば、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(3−メチル−4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−メチル−4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−メルカプトフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(3−フェニル−4−メルカプトフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(フェニル−メルカプトフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(5又は6−メルカプト−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−又は6−メルカプト−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトナフチル)フルオレン類などが例示できる。
【0067】
式(2a)で表される代表的な化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−メルカプトブトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(3−メルカプトプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(4−メルカプトブトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−メルカプトC2−4アルコキシフェニル)フルオレン類;これらの化合物において(R1aO)又は(OR1b)で表されるC2−4アルコキシ基がポリ(C2−4アルコキシ)基(ジエトキシ、トリエトキシ基など)で置換された化合物(9,9−ビス(メルカプトC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−メルカプトC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン類など);これらの化合物において環Z及びZのフェニル基にフェニル基が置換してビフェニル基を形成した化合物(9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[フェニル−(メルカプトC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類など);これらの化合物において環Z及びZがナフチル基である化合物(9,9−ビス[5又は6−(2−メルカプトエトキシ)−2−ナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[5又は6−(2−メルカプトエトキシ)−1−ナフチル)]フルオレンなどの9,9−ビス[メルカプトC2−4アルコキシ)ナフチル)]フルオレン類など)などが例示できる。
【0068】
式(2b)で表される代表的な化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−メルカプトエチルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メルカプトイソプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−メルカプトプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−メルカプトイソプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−メルカプトプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジ(2−メルカプトプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリス(2−メルカプトプロピルカルボニルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[モノ、ジ又はトリ(メルカプトC2−6アルキルカルボニルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン類;前記式(1a)又は(2a)で表される化合物と同様に、これらの化合物において(R1aO)又は(OR1b)で表されるC2−4アルコキシ基がポリ(C2−4アルコキシ)基(ジエトキシ、トリエトキシ基など)で置換された化合物(9,9−ビス[メルカプトC2−6アルキルカルボニルオキシC2−4アルコキシC2−4アルコキシフェニル]フルオレン類など);さらにはこれらの化合物において、環Z及びZのフェニル基にフェニル基にフェニル基が置換してビフェニル基を形成した化合物(9,9−ビス[フェニル−メルカプトC2−6アルキルカルボニルオキシC2−4アルコキシフェニル]フルオレン類など);これらの化合物において、環Z及びZがナフチル基である化合物(9,9−ビス[メルカプトC2−6アルキルカルボニルオキシC2−4アルコキシナフチル]フルオレン類など))などが例示できる。
【0069】
[硬化性組成物]
前記エチレン性不飽和化合物およびチオール化合物は硬化成分として利用される。すなわち、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するチオール化合物も、本発明では光重合開始剤の成分としてではなく、エン/チオール反応により硬化する成分として機能する。特に、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を硬化成分として用いると、熱的特性及び光学的特性を向上できるとともに低収縮性を付与できる。そのため、本発明では、耐熱性などの熱的性質及び寸法安定性(低収縮性)を実現するため、前記エチレン性不飽和化合物およびチオール化合物のうち少なくとも一方の成分が9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を含む。すなわち、本発明の組成物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエチレン性不飽和化合物とチオール化合物(ビスアリールフルオレン骨格を有さない多官能チオール化合物)との組み合わせであってもよく、エチレン性不飽和化合物(ビスアリールフルオレン骨格を有さない多官能不飽和化合物)と9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するチオール化合物との組み合わせであってもよく、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエチレン性不飽和化合物と9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するチオール化合物との組み合わせであってもよい。
【0070】
本発明において、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の含有量は、耐熱性などの熱的性質、光学特性を向上できる範囲であれば広い範囲から選択でき、通常、固形分(又は不揮発分)換算で組成物全体に対して20重量%以上(例えば、20〜100重量%)、好ましくは25〜90重量%(例えば、30〜80重量%)、さらに好ましくは35〜70重量%(例えば、40〜60重量%)程度であり、30〜50重量%(例えば、35〜45重量%)程度であってもよい。なお、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の含有量を多くすると、硬化物(又は硬化成形物)の耐熱性及び光学特性を大きく向上できる。
【0071】
エチレン性不飽和化合物(特に、複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能エチレン性不飽和化合物)に対するチオール化合物(特に、複数のメルカプト基を有するポリチオール化合物)の割合は、エチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合1モルに対してチオール化合物のメルカプト基のモル数0.1〜1.5(例えば、0.15〜1.3)程度の範囲から選択でき、通常、0.15〜1.25(例えば、0.25〜1.25)、好ましくは0.3〜1.2(例えば、0.4〜1)さらに好ましくは0.4〜0.9(例えば、0.5〜0.8)程度であってもよい。9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の特色を有効に発現させるためには、0.4〜1.1(例えば、0.45〜1)程度であってもよい。なお、エチレン性不飽和化合物及び/又はチオール化合物が複数の成分で構成されている場合、上記エチレン性不飽和結合及びメルカプト基は、加重平均を利用して算出できる。
【0072】
なお、エチレン性不飽和化合物とチオール化合物との重量割合は、各成分の分子量及び官能基数などに応じて広い範囲から選択でき、エチレン性不飽和化合物100重量部に対するチオール化合物の割合は、1〜1000重量部(特に10〜500重量部)程度の範囲から選択でき、通常、1〜500重量部(例えば、5〜500重量部)、好ましくは10〜250重量部(例えば、15〜200重量部)、さらに好ましくは20〜200重量部(例えば、30〜150重量部)、特に40〜130重量部(例えば、50〜125重量部)程度であってもよい。なお、一般的にチオール化合物の割合が大きくなるにつれて、収縮率が低下するとともに柔軟性が大きくなる場合が多い。
【0073】
[重合開始剤]
本発明の硬化性組成物に活性エネルギー(熱又は光エネルギー)を作用させると、不飽和結合とメルカプト基との反応により硬化する。そのため、重合開始剤は必ずしも必要ではないが、本発明の硬化性組成物は重合開始剤を含んでいてもよく、重合開始剤は熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は光重合開始剤である。
【0074】
[光重合開始剤]
光重合開始剤又は光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など);アセトフェノン類(アセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−フェニル−2−ヒドロキシ−アセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど);プロピオフェノン類(p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなど);ブチリルフェノン類[1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オンなど];アミノアセトフェノン類[2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オンなど];ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン、N,N’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジルなどのN,N’−ジアルキルアミノベンゾフェノンなど);ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど);チオキサンテン類(チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテンなど);アントラキノン類(2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなど);(チオ)キサントン類(チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど);アクリジン類(1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタンなど);トリアジン類(2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジンなど);スルフィド類(ベンジルジフェニルサルファイドなど);アシルフォスフィンオキサイド類(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなど);チタノセン系光重合開始剤;オキシムエステル類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0075】
なお、光重合開始剤は、市販品、例えば、商品名「イルガキュア」「ダロキュア」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、商品名「サイラキュア」(ユニオンカーバイド社製)などとして入手できる。
【0076】
熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイドなど)など]、過酸エステル類[過酢酸t−ブチル、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの過カルボン酸アルキルエステルなど]、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)など]、アゾアミド化合物{2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}など}、アゾアミジン化合物{2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩など}、アゾアルカン化合物[2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)など]、オキシム骨格を有するアゾ化合物[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)など]などのアゾ化合物などが含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0077】
重合開始剤の割合は、エチレン性不飽和化合物及びチオール化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部(例えば、0.5〜10重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、1〜10重量部(例えば、1〜5重量部)、好ましくは1〜5重量部(例えば、1〜3重量部)程度であってもよい。
【0078】
なお、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、慣用の成分、例えば、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミルなどのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンなど]、トリフェニルホスフィンなどのフォスフィン類、N,N−ジメチルトルイジンなどのトルイジン類、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどのアントラセン類などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0079】
光増感剤の使用量は、前記光重合開始剤100重量部に対して、例えば、0.1〜150重量部(例えば、1〜100重量部)、好ましくは5〜75重量部(例えば、10〜50重量部)程度であってもよい。
【0080】
[樹脂]
本発明の硬化性組成物は、必要により樹脂、例えば、水不溶性樹脂(アクリル系樹脂など)、水溶性樹脂(ポリビニルアルコール、セルロースエーテル類など)、アルカリ可溶性樹脂などを含んでいてもよい。例えば、リソグラフィ技術を利用して所定のパターンをアルカリ現像により形成するため、アルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂などであってもよい。
【0081】
カルボキシル基含有アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸などの前記例示の不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物と、共重合性単量体との共重合体で構成でき、共重合性単量体としては、例えば、前記例示の単官能不飽和化合物[例えば、メチル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート類;シクロアルキル(メタ)アクリレート類;橋架け環式(メタ)アクリレート類;ヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドなど]、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)、脂肪酸ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)などが例示できる。共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0082】
カルボキシル基含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、ポリスチレン換算で0.5×10〜50×10、好ましくは1×10〜5×10程度であってもよい。また、カルボキシル基含有アクリル系樹脂の酸価は、15〜400mgKOH/g、好ましくは30〜300mgKOH/g、さらに好ましくは40〜200mgKOH/g程度であってもよい。
【0083】
カルボキシル基含有エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との開環付加反応により生成したヒドロキシル基含有生成物(エポキシ(メタ)アクリレート)と、生成したエポキシ(メタ)アクリレートのヒドロキシル基と酸無水物(無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物など)とを反応させることにより得ることができる。
【0084】
カルボキシル基含有エポキシ樹脂(カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート)の重量平均分子量は、例えば、ポリスチレン換算で0.2×10〜5×10、好ましくは0.3×10〜1×10程度であってもよい。また、カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートの酸価は、15〜250mgKOH/g、好ましくは30〜200mgKOH/g、さらに好ましくは50〜150mgKOH/g程度であってもよい。
【0085】
樹脂の使用量は、エチレン性不飽和化合物及びチオール化合物の総量100重量部に対して、例えば、1〜500重量部程度の範囲から選択でき、通常、10〜250重量部、好ましくは25〜200重量部、さらに好ましくは50〜100重量部程度であってもよい。
【0086】
[溶剤]
さらに、硬化性組成物は、塗布性を向上させるため、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酪酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなど)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルなど)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテートなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒が挙げられる。有機溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
【0087】
なお、本発明の組成物は、必要であれば、種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、熱重合禁止剤(ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテルなど)、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(抗酸化剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、界面活性剤、溶解促進剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、レベリング剤、分散剤、分散助剤などが例示できる。添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0088】
溶媒を含む組成物の固形分(又は不揮発分)濃度は、例えば、0.5〜60重量%、好ましくは、2〜40重量%(例えば、5〜30重量%)程度であってもよい。溶媒を含む組成物の粘度は、温度25℃において、例えば、5〜500mPa・s、好ましくは10〜100mPa・s、さらに好ましくは20〜50mPa・s程度であってもよい。
【0089】
本発明の硬化性組成物は、慣用の方法、例えば、各成分を混合し、必要によりフィルタでろ過することにより調製できる。
【0090】
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギーを付与することによりエン/チオール反応により容易に硬化する。そのため、本発明の硬化性組成物は、活性エネルギーとして、熱エネルギー及び/又は光エネルギーを利用して硬化物を形成するのに有用である。硬化物は三次元構造を有していてもよく、通常、硬化膜である場合が多い。また、硬化膜は膜パターン(特に薄膜パターン)であってもよい。硬化膜は、硬化性組成物を基材又は基板に塗布し、必要により乾燥した後、加熱又は活性光線を露光することにより形成でき、膜パターンは、基材又は基板に形成した塗膜を活性光線で選択的に露光し、生成した潜像パターンを現像することにより形成できる。
【0091】
基材又は基板は、用途に応じて選択でき、木材などの多孔質体、アルミニウム、銅などの金属、ガラス、石英などのセラミックス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートなどのプラスチックなどであってもよい。塗布方法は特に制限されず、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などであってもよい。
【0092】
溶媒を含む硬化性組成物では、塗布した後、乾燥(例えば、40〜150℃程度で乾燥)し、感光層を形成できる。感光層の厚みは、用途によって異なるが、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜10μm(特に0.1〜5μm)程度であってもよい。
【0093】
加熱により塗膜を硬化させる場合、加熱温度は、例えば、60〜200℃(例えば、80〜180℃)、好ましくは100〜150℃程度であってもよい。
【0094】
露光工程での露光は用途に応じて全面露光してもよく、フォトマスクなどを利用して選択的に露光してパターン状の潜像を形成してもよい。露光には、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線などが利用でき、通常、紫外線である場合が多い。光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm程度の範囲から選択でき、75〜2000mJ/cm、さらに好ましくは100〜1000mJ/cm(例えば、100〜500mJ/cm)程度であってもよい。なお、本発明の硬化性組成物は酸素による重合阻害が少ない。そのため、本発明の硬化性組成物は空気中で露光しても塗膜が効率よく硬化する。
【0095】
必要により露光後に加熱処理(アフターキュア又はポストベークなど)してもよい。加熱温度は、例えば、60〜200℃、好ましくは100〜150℃程度であってもよい。
【0096】
生成した潜像パターンを現像することにより、顕像化された塗膜パターンを形成できる。現像剤としては、水、アルカリ水溶液(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)、酸性水溶液、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類など)や、これらの混合液などが使用できる。現像は、浸漬、洗い流し、噴射又はスプレー現像などを利用して行うことができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において硬化膜の特性は次のようにして測定した。
【0098】
[屈折率]
多波長アッベ屈折計(アタゴ製、DR−M2<循環式恒温水槽 60−C3使用>)を用い、温度25℃を保持し、589nmでの屈折率を測定した。なお、屈折率については、「○」:屈折率1.58以上、「×」:屈折率1.58未満の基準で評価した。
【0099】
[透過率(%)]
色差濁度測定器(日本電色工業(株)製、COH−300A)を用い、試験管(マルエム(株)製、A−24(24×200)、直口)又は10×10mm石英セルに試料を入れて測定した。なお、透過率の評価基準は、「○」:89%以上、「×」:89%未満とした。
【0100】
[ガラス転移温度Tg(℃)]
得られたサンプルをDSC測定用アルミパンに約10mg秤量し、紫外線照射機(H015−L31:アイグラフィックス(株)社製)を用いて2,000mJ/cm照射し硬化物を作製。その後DSC(DSC6220:SII社製)を10℃/分で昇温し、30〜300℃の範囲でのガラス転移温度の測定を行った。
【0101】
[カール]
実施例1にて得られた塗布膜を5cm角にカットして、平坦面に頂部を接触させて置き、平坦面からの4隅の高さを測定し、平均した値をカールの指標とした。
【0102】
[実施例1]
エチレン性不飽和化合物として、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、オグソールEA−0200)50重量部と、フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートPOA)50重量部とを用いた。エチレン性不飽和化合物100重量部と、ペンタエリスリトール テトラ(3−メルカプトブチレート)(昭和電工(株)製、カレンズMT PE1)10重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、イルガキュア184)3重量部とを室温で混合してコーティング剤を調製し、このコーティング剤を剥離基材に塗布し、厚み約100μmの塗膜を形成した。その後、紫外線照射機(H015−L31:アイグラフィックス(株)社製)を用いて500mJ/cmで照射し、硬化膜を作製し、各種物性を測定した。
【0103】
[実施例2〜5]
実施例1で用いたエチレン性不飽和化合物とチオール化合物とを表1に示す割合で用いる以外、実施例1と同様にして塗膜を硬化させ、各種物性を測定した。
【0104】
[比較例1]
実施例1で用いたエチレン性不飽和化合物に代えて、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジアクリレート(2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、日立化成(株)製、FA−324A)を用いる以外、実施例1と同様にして塗膜を硬化させ、各種物性を測定した。
【0105】
[比較例2]
エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジアクリレートとチオール化合物とを表1に示す割合で用いる以外、実施例1と同様にして塗膜を硬化させ、各種物性を測定した。
【0106】
結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例1〜5の屈折率は1.58〜1.61と高い値を示し、比較例1及び2の屈折率は1.55〜1.56であった。また、実施例及び比較例の透過率は89.0〜90.8%であった。
【0109】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では高い屈折率を有するとともに耐熱性の高い硬化塗膜が得られた。また、実施例2と比較例1との対比から、同じガラス転移温度で比較すると、実施例ではカールも少なく低収縮性であった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の硬化性組成物及び硬化物(又は硬化成形物)は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を硬化成分とするため、ガラス転移温度が高く、熱的特性に優れている。また、硬化に伴う収縮率が小さいため、寸法精度に優れた硬化物(又は硬化成形物)を形成でき、基材に対する密着性も高い。さらに、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を含むため、屈折率が高く複屈折の小さな硬化物(硬化塗膜など)を形成できる。そのため、本発明の硬化性組成物は、コーティング技術やリソグラフィ技術を利用して、耐熱性が高く低収縮の種々の薄膜を形成するのに有用である。特に、屈折率などの光学的特性が向上した硬化物(薄膜などの硬化成形物)を形成するのに有用である。なお、硬化膜は、パターン状に形成してもよい。硬化膜又は硬化膜パターンは、必要により基材から剥離して又は基材とともに光学フィルムなどとして利用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化成分としてエチレン性不飽和化合物とチオール化合物とを含む硬化性組成物であって、前記エチレン性不飽和化合物及びチオール化合物のうち少なくとも一方の硬化成分が9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を含む硬化性組成物。
【請求項2】
エチレン性不飽和化合物が複数のエチレン性不飽和結合を有する多官能化合物であり、チオール化合物が複数のメルカプト基を有するポリチオール化合物である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
エチレン性不飽和化合物が複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物である請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の含有量が固形分換算で全体に対して20重量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
エチレン性不飽和化合物が下記式(1)で表される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化1】

(式中、環Z及びZは同一又は異なって芳香族炭化水素環、R2a及びR2bは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R4a及びR4bは同一又は異なってはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、R5a及びR5bは同一又は異なってはハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基を示し、X1a及びX1bは同一又は異なる連結基、mは1〜3の整数、qは0又は1〜3の整数、rは0又は1〜3の整数を示す)
【請求項6】
エチレン性不飽和化合物が下記式(1a)で表される化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化2】

(式中、R1a及びR1bはアルキレン基、nは0又は1〜10の整数を示し、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、q及びrは前記に同じ)
【請求項7】
チオール化合物が下記式(2)で表される化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化3】

(式中、Y1a及びY1bは同一又は異なる連結基、pは0又は1を示し、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、q及びrは前記に同じ)
【請求項8】
チオール化合物が下記式(2a)又は(2b)で表される化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化4】

(式中、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R1a及びR1b、Z及びZ、R4a及びR4b、R5a及びR5b、m、n、q及びrは前記に同じ)
【請求項9】
エチレン性不飽和化合物のエチレン性不飽和結合1モルに対してチオール化合物のメルカプト基を0.1〜1.5モルの割合で含む請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
エチレン性不飽和化合物が、複数の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル系化合物と、分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリル系化合物とを含む請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、光重合開始剤を含む請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの硬化性組成物が硬化した硬化物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかの硬化性組成物に活性エネルギーを付与して硬化させる硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−254732(P2010−254732A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102774(P2009−102774)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】