説明

硬化性組成物

【課題】安定性が高く、その形成被膜の仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等においても優れた性能を発揮する硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性組成物は、ポリオール化合物(a)、銀化合物(b)、及び水(c)を含む分散液(L)、イソシアネート化合物(M)、並びにセメント(N)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な硬化組成物に関するものである。本発明組成物は、特に床面に対する被覆材として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、床面用の被覆材としては、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系等の各種材料が使用されている。このような材料を用いることで、床面の保護を図ることができ、さらに床面に所望の色彩を付与することが可能となる。しかし、耐熱性、耐薬品性、強度等において高度な性能が要求される場合、上述の材料では、その要求を十分に満足することは難しいのが現状である。
【0003】
英国特許1192864号公報(特許文献1)には、セメント、シリカ、水、イソシアネート化合物、及びポリオールを必須成分とするセメント組成物が開示されている。また、特許第2898044号公報(特許文献2)には、セメント、充填剤、イソシアネート化合物、ひまし油ロジン酸エステルまたはひまし油、パイン油並びに水を必須成分とする硬化性組成物が開示されている。このような組成物によれば、耐熱性、耐薬品性、強度等の物性において、良好な性能を確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許1192864号公報
【特許文献2】特許第2898044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の組成物は、通常、ポリオール等の活性水素含有化合物と水を含む第1成分、セメントを含む第2成分、イソシアネート化合物を含む第3成分、の少なくとも3成分に分けて保存し、床面等に施工する際に、これら3成分を混合して使用するものである。しかしながら、上記特許文献の組成物では、第1成分の安定性が低下しやすく、このような第1成分を用いた場合には硬化性、仕上り性等が不十分となり、所望の被膜物性が発現されないおそれがある。
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、硬化性組成物の安定性を確保し、その形成被膜の仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等において優れた性能を発揮させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオール化合物、銀化合物、及び水を含む分散液、イソシアネート化合物、並びにセメントを含む硬化性組成物に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.ポリオール化合物(a)、銀化合物(b)、及び水(c)を含む分散液(L)、イソシアネート化合物(M)、並びにセメント(N)を含むことを特徴とする硬化性組成物。
2.前記分散液(L)が、ポリオール化合物(a)、銀化合物(b)、水(c)、及び顔料(d)を含むものであることを特徴とする1.記載の硬化性組成物。
3.前記ポリオール化合物(a)として、
水酸基及び酸基を有するアクリルポリオールを含むことを特徴とする1.または2.記載の硬化性組成物。
4.前記ポリオール化合物(a)として、
水酸基価1〜200mgKOH/g、酸価0.1〜20mgKOH/gのアクリルポリオールを含むことを特徴とする1.または2.記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化性組成物の安定性を確保し、その形成被膜の仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等において優れた性能を発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、分散液(L)、イソシアネート化合物(M)、及びセメント(N)を含むものである。このうち、分散液(L)は少なくとも、ポリオール化合物(a)、銀化合物(b)、及び水(c)を混合することによって得られるものである。
【0012】
このうち、ポリオール化合物(a)(以下「(a)成分」という)は、結合材として作用するものである。(a)成分としては、イソシアネート(M)と反応可能な各種ポリオール化合物が使用できる。具体的には、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリジエンポリオール、植物油系ポリオール、セルロース化合物等が挙げられる。本発明では、この中でも特に、アクリルポリオール、植物油系ポリオール等が好適である。
【0013】
アクリルポリオールは、その樹脂骨格が、主に(メタ)アクリル酸アルキルエステルによって形成されたポリオールである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
アクリルポリオールは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びこれと共重合可能なモノマーを共重合することにより得ることができる。アクリルポリオールを構成する全モノマー成分のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率は、好ましくは30重量部以上、より好ましくは50〜99.5重量部程度である。
【0014】
本発明では、アクリルポリオールとして、少なくとも、水酸基及び酸基を有するアクリルポリオール(a1)(以下「(a1)成分」という)を含むことが望ましい。
このような(a1)成分を含むことにより、着色均一性、発色性を高め、ひいては形成被膜の仕上り性、美観性を高めることができる。また、(a1)成分を含むことにより、着色の自由度が高く、所望の色調に着色することが可能な組成物が得られる。さらに、(a1)成分は、形成被膜の硬化反応にも寄与するものである。
【0015】
(a1)成分の水酸基価は、好ましくは1〜200KOHmg/gであり、より好ましくは3〜100KOHmg/g、さらに好ましくは5〜80KOHmg/gである。(a1)成分の水酸基価がこのような範囲内であれば、着色均一性、発色性、仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等において、十分な性能を発揮することができる。なお、本発明における水酸基価は樹脂固形分に対する値を示すものである。
【0016】
(a1)成分の水酸基は、例えば、重合時のモノマー成分として水酸基含有モノマーを使用する方法、重合後の付加反応により水酸基を生成させる方法等によって樹脂中に導入することができる。
このうち、前者の方法では、水酸基含有モノマーを他の共重合可能なモノマーと共重合すればよい。具体的に、水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;無水マレイン酸等の酸無水基含有モノマーと、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類とのモノエステル化物またはジエステル化物;ヒドロキシエチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール等の第1級水酸基含有モノマー、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸とα−オレフィンエポキシド等のモノエポキシ化合物との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、脂肪酸類等の一塩基酸との付加物等の第2級水酸基含有モノマー等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0017】
水酸基含有モノマーと共重合可能なモノマーとしては、前述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に、例えば酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、スチレン誘導体、塩化ビニル、酢酸ビニル、マレイン酸ジアルキルエステル、フルオロオレフィン、反応性シリル基含有ビニル系化合物等を使用することができる。
【0018】
重合後の付加反応により水酸基を生成させる方法としては、例えば、樹脂中のカルボキシル基にα−オレフィンエポキシド等のモノエポキシ化合物を付加させる方法や、樹脂中のエポキシ基に酢酸、プロピオン酸、脂肪酸類等の一塩基酸を付加させる方法等が挙げられる。
【0019】
(a1)成分は、上記水酸基に加え酸基を有するものである。この酸基は、着色均一性、発色性、仕上り性等の向上に作用するとともに、被膜形成時の硬化性にも有利に作用し、耐熱性、耐薬品性、強度等の向上に寄与するものである。
(a1)成分の酸価は、好ましくは0.1〜20mgKOH/gであり、より好ましくは0.3〜10KOHmg/g、さらに好ましくは0.5〜5KOHmg/gである。(a1)成分の酸価がこのような範囲内であれば、着色均一性、発色性、仕上り性等において十分な性能を発揮することができ、耐熱性、耐薬品性、強度等の向上を図ることもできる。なお、本発明における酸価は樹脂固形分に対する値を示すものである。
【0020】
(a1)成分に酸基を導入するには、上記モノマーとともに酸基含有モノマーを共重合すればよい。酸基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸等が挙げられ、この中でも不飽和カルボン酸が好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等、あるいはこれらの塩等が挙げられる。酸基含有モノマーとしては、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0021】
(a1)成分としては、さらにアミノ基を有するものも使用できる。(a1)成分にアミノ基を導入するには、上記モノマーとともにアミノ基含有モノマーを共重合すればよい。この場合、(a1)成分におけるアミン価は0.05〜10KOHmg/g(好ましくは0.1〜3KOHmg/g)程度とすればよい。なお、アミン価は樹脂固形分に対する値を示すものである。
【0022】
(a1)成分の重量平均分子量は、1000〜100000、好ましくは10000〜50000である。このような重量平均分子量であれば、着色均一性、発色性等を高めつつ、耐熱性、耐薬品性、強度等の向上を図ることができる。
(a1)成分のガラス転移点(以下「Tg」ともいう)は、好ましくは−50〜80℃程度、より好ましくは−20〜60℃程度である。
【0023】
(a1)成分は、後述の液状有機化合物に溶解及び/または分散可能なものが望ましい。特に、(a1)成分は、液状有機化合物中の溶剤に溶解可能なものが望ましい。このような(a1)を用いることにより、上記効果を十分に高めることができる。
【0024】
ポリオール化合物(a)として(a1)を使用する場合、(a1)成分は、固形分換算で、ポリオール化合物(a)中に0.5〜30重量%(より好ましくは1〜20重量%)含まれることが望ましい。
【0025】
(a)成分のうち、植物油系ポリオール(a2)(以下「(a2)成分」という)としては、大豆油系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。このうち、特にひまし油系ポリオールが好適である。ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油、ひまし油のアルキレンオキシド付加物、ひまし油のエポキシ化物、ひまし油のハロゲン化物、ひまし油と多価アルコールとのエステル交換物、及びこれらの水素化物等を使用することができる。
【0026】
ポリオール化合物(a)として、(a1)成分及び(a2)成分を含む場合においては、固形分換算でポリオール化合物(a)中に、(a1)成分が0.5〜30重量%(より好ましくは1〜20重量%)含まれることが望ましく、(a2)成分が70〜99.5重量%(より好ましくは80〜99重量%)含まれることが望ましい。このような比率であれば、上述の効果を十分に発揮することが可能となる。
【0027】
銀化合物(b)(以下「(b)成分」という)は、分散液(L)の安定性向上に寄与する成分である。本発明では、(b)成分が含まれることにより、分散液(L)における分散安定性が高まり、経時的な分離等が抑制される。このように安定化された分散液(L)を用いることにより、本発明硬化組成物では、硬化性、仕上り性、耐熱性、耐薬品性、強度等においても安定した性能が発揮される。このような効果が奏される理由は明確ではないが、ポリオール中の水酸基等と銀との間に、何らかの相互作用が生じることが寄与しているものと推測される。
【0028】
(b)成分としては、有機系または無機系の銀化合物が使用できる。銀化合物としては、例えば、炭酸銀、酸化銀、リン酸銀、塩化銀、フッ化銀、ヨウ化銀、臭化銀、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0029】
銀化合物は、基体粒子に担持された形態で使用することもできる。このような基体粒子としては、例えば、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
これらの基体粒子に銀化合物を担持させる方法は、公知の方法を用いればよく、例えば物理吸着または化学吸着により担持させる方法、イオン交換反応により担持させる方法、結合剤により担持させる方法、銀化合物を基体粒子に打ち込むことにより担持させる方法、蒸着、溶解析出反応、スパッタ等の薄膜形成法により基体粒子の表面に銀化合物の薄層を形成させて担持させる方法等が挙げられる。
【0030】
(b)成分の比率は、固形分換算で(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.0001〜2重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.5重量部である。このような比率であれば、(b)成分による安定性向上効果を得ることができる。
【0031】
水(c)(以下「(c)成分」という)は、分散液(L)、イソシアネート化合物(M)、及びセメント(N)を混合した際の硬化反応に寄与するものである。
(c)成分の比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部である。
【0032】
本発明における分散液(L)は、顔料(d)(以下「(d)成分」という)を含むことができる。本発明では、この(d)成分を含むことにより、硬化性組成物を所望の色に調製することが可能となる。また本発明では、分散液(L)が(d)成分を含む場合においても、分散液(L)の安定性を十分に確保することができ、着色均一性、発色性等の点でも好適である。
【0033】
(d)成分としては、各種の着色顔料が使用でき、着色顔料と体質顔料を併せて用いることもできる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒色酸化鉄、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、珪藻土、タルク、硫酸バリウム等が挙げられる。(d)成分の粒子径は、好ましくは50μm未満(より好ましくは0.1〜30μm)である。
【0034】
このような(d)成分の1種または2種以上を適宜選択・混合して用いることにより、様々な色調を表出することが可能となる。
(d)成分の比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0035】
本発明における分散液(L)は、液状有機化合物(e)(以下「(e)成分」という)を含むことができる。(e)成分は、常温で液体の有機化合物であり、具体的には、溶剤(e1)及び/または可塑剤(e2)が使用できる。本発明では、分散液(L)に(e)成分が含まれることにより、分散液(L)の安定性が一層向上し、本発明の効果を安定して得ることが可能となる。
【0036】
溶剤(e1)としては、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の非水系溶剤が好適である。具体的に、脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカンのほか、テルピン油やミネラルスピリット等が挙げられる。また、芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等;エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等;ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤(e1)としては、これらの1種または2種以上が使用できる。
このような非水系溶剤としては、その50重量%以上(好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上)が脂肪族炭化水素であるもの、特に、トルエン及びキシレンを含まず、引火点21℃以上の消防法第四類第2石油類に該当するものが好適である。
【0037】
可塑剤(e2)としては、例えば、フタル酸化合物、アジピン酸化合物、セバチン酸化合物、リン酸化合物、アルキルスルホン酸エステル化合物等が使用できる。具体的に、フタル酸化合物としては、例えば、フタル酸ジ(n−ブチル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル等が挙げられる。アジピン酸化合物としては、例えば、アジピン酸ジ(n−ブチル)、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等;セバチン酸化合物としては、例えば、セバチン酸ジブチル等;フマル酸化合物としては、例えば、フマル酸ジブチル等;リン酸化合物としては、例えば、リン酸トリクレジル、リン酸クレジルジフェニル等;アルキルスルホン酸エステル化合物としては、例えば、デカンスルホン酸フェニルエステル、ウンデカンスルホン酸フェニルエステル、ドデカンスルホン酸フェニルエステル、トリデカンスルホン酸フェニルエステル、テトラデカンスルホン酸フェニルエステル、ペンタデカンスルホン酸フェニルエステル、ペンタデカンスルホン酸クレジルエステル、ヘキサデカンスルホン酸フェニルエステル、ヘプタデカンスルホン酸フェニルエステル、オクタデカンスルホン酸フェニルエステル、ノナデカンスルホン酸フェニルエステル、イコサンデシルスルホン酸フェニルエステル等が挙げられる。可塑剤(c2)としては、これらの1種または2種以上が使用できる。
本発明では、特に(e)成分として、溶剤(e1)及び可塑剤(e2)を含むものが好適である。
【0038】
(e)成分の比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは20〜200重量部程度である。
溶剤(e1)及び可塑剤(e2)を含む場合、溶剤(e1)の比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは1〜50重量部(より好ましくは2〜20重量部)とし、可塑剤(e2)の比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは20〜200重量部(より好ましくは30〜150重量部)とすればよい。
【0039】
分散液(L)は、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分、必要に応じ(d)成分、(e)成分等を常法により、均一に混合することによって製造することができる。この際、消泡剤、界面活性剤、反応調整剤、減水剤、繊維類、防腐剤、防藻剤、防カビ剤等の添加剤を混合することも可能である。
【0040】
イソシアネート化合物(M)としては、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物が使用できる。具体的には、例えば、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化反応等により誘導体化したものが挙げられる。また、イソシアネートとポリオールの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーも使用可能である。イソシアネート化合物としては、これらの1種または2種以上を用いることができる。
イソシアネート化合物(M)は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは50〜800重量部、より好ましくは100〜500重量部となる範囲内で混合すればよい。
【0041】
セメント(N)としては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントのほか、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、ポルトランドセメントが好ましい。
セメント(N)は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは100〜1000重量部、より好ましくは200〜800重量部となる範囲内で混合すればよい。
【0042】
本発明組成物では、上記成分に加え、さらに細骨材を混合することができる。このような細骨材を混合することにより、被膜の強度向上、厚膜化等を図ることができる。
細骨材としては、例えば、天然石粉砕物、陶磁器粉、珪砂、セラミック粉、ゴム粒、金属粒等、あるいはこれらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。細骨材の粒子径は、通常0.05〜1mm程度である。
細骨材は、(a)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは200〜2000重量部、より好ましくは500〜1500重量部となる範囲内で混合すればよい。
また、本発明では、上記細骨材よりも粒子径の大きな粗骨材を混合することにより、被膜表面に微細な凹凸を形成させ、防滑性を付与することもできる。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、流通時には分散液(L)、イソシアネート化合物(M)、及びセメント(N)を、それぞれ別のパッケージに保存した状態とし、使用時にこれらを混合すればよい。細骨材や粗骨材は、通常、上記(N)成分と同一のパッケージ内に混合しておけばよい。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を使用時に混合し、その混合物を基材に塗付することにより、被膜を形成することができる。本発明組成物は、耐熱性、耐薬品性、強度等において優れた物性を発揮することができるため、とりわけコンクリート等の床面に適用する材料として好ましいものである。
【0045】
塗付時においては、コテ塗り、流し込み、吹き付け等種々の方法を採用することができる。硬化後の厚みは、通常2〜10mm程度である。このような厚みとなる範囲内で、複数回に分けて塗分けることも可能である。
塗装及びその後の乾燥は、通常、常温(0〜40℃)で行えばよい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0047】
(分散液の製造)
表1に示す配合に従い、各成分を均一に混合して分散液を製造した。なお、分散液においては、以下の原料を使用した。
【0048】
・樹脂1:アクリルポリオール(水酸基価30KOHmg/g、酸価1.5KOHmg/g、重量平均分子量15000、ガラス転移温度30℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット)
・樹脂2:アクリルポリオール(水酸基価10KOHmg/g、酸価3KOHmg/g、重量平均分子量20000、ガラス転移温度40℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット)
・樹脂3:アクリルポリオール(水酸基価30KOHmg/g、酸価1.5KOHmg/g、重量平均分子量120000、ガラス転移温度30℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット)
・樹脂4:アクリル樹脂(酸価2KOHmg/g、重量平均分子量18000、ガラス転移温度30℃、固形分50重量%、媒体:ミネラルスピリット)
・樹脂5:ポリエーテルポリオール(水酸基価35KOHmg/g、固形分50重量%)
・樹脂6:ひまし油系ポリオール(水酸基価160KOHmg/g、酸価1KOHmg/g、固形分100重量%)
・銀化合物1:酸化銀担持粒子の2重量%分散液(基体粒子;酸化チタン、基体粒子と酸化銀の重量比率=20:1)
・銀化合物2:酸化銀担持粒子の2重量%分散液(基体粒子:シリカ・アルミナ複合物、基体粒子と酸化銀の重量比率=20:1)
・顔料1:酸化チタン
・顔料2:カーボンブラック
・顔料3:黄色酸化鉄
・顔料4:フタロシアニンブルー
・顔料5:黄色酸化鉄水分散液(50重量%)
・顔料6:フタロシアニンブルー水分散液(28重量%)
・液状有機化合物1:可塑剤(フタル酸ビス(2−エチルヘキシル))
・液状有機化合物2:可塑剤(アルキルスルホン酸フェニルエステル)
・添加剤1:界面活性剤
・添加剤2:消泡剤
【0049】
上記方法にて得られた各分散液につき、以下の試験を行った。試験結果を表1に示す。
(1)安定性
分散液を製造後、直ちにプラスチック製容器に封入し、50℃恒温器中に7日間貯蔵した。貯蔵後、分散液の外観を目視にて観察した。評価は、分離等の異常が認められなかったものを「○」、異常が認められたものを「×」として行った。
【0050】
【表1】

【0051】
(硬化性組成物の製造)
分散液と、イソシアネート化合物と、セメント及び細骨材とを均一に混合して、硬化性組成物を得た。混合比率は、分散液中の樹脂固形分100重量部に対し、イソシアネート化合物265重量部、セメント370重量部、細骨材860重量部とした。分散液以外の原料としては、以下のものを使用した。
・イソシアネート化合物:ポリメリックMDI
・セメント:白色ポルトランドセメント
・細骨材:白色珪砂(粒子径0.2〜0.8mm)
【0052】
上記方法にて得られた各硬化性組成物につき、以下の試験を行った。
【0053】
(2)着色均一性
硬化後の厚みが4mmとなるように、各硬化組成物をスレート板にコテ塗りし、72時間養生した後、その被膜の着色均一性を目視にて確認した。評価は、色むらがなく均一な被膜が形成されたものを「A」、色むらが生じたものを「C」とする3段階(優:A>B>C:劣)で行った。なお、塗装及び養生は、いずれも標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で行った。
【0054】
(3)仕上り性
硬化後の厚みが4mmとなるように、各硬化組成物をスレート板にコテ塗りし、72時間養生した後、その被膜の仕上り性を目視にて確認した。評価は、平滑で均一な被膜が形成されたものを「A」、平滑性が損われたもの及び/または穴が生じたものを「C」とする3段階(優:A>B>C:劣)で行った。なお、塗装及び養生は、いずれも標準状態で行った。
【0055】
(4)強度
硬化後の厚みが4mmとなるように、各硬化組成物をスレート板にコテ塗りし、72時間養生した。なお、塗装、及び養生は、いずれも標準状態で行った。
得られた被膜の表面に接着剤でジグを取り付け、引張試験機を用い、標準状態下での付着強さを測定した。評価は、付着強さ3N/mm以上のものを「A」、2.5N/mm以上3N/mm未満のものを「B」、2.5N/mm未満のものを「C」とする3段階(優:A>B>C:劣)で行った。
【0056】
(5)耐薬品性
硬化後の厚みが4mmとなるように、各硬化組成物をスレート板にコテ塗りし、72時間養生した。なお、塗装及び養生は、いずれも標準状態で行った。
得られた被膜の表面に薬品2mlをスポット状に乗せ、標準状態で24時間放置後、被膜の状態を目視にて確認した。評価は、異常が認められないものを「A」、変色等の異常が認められるものを「C」とする3段階(優:A>B>C:劣)で行った。
耐薬品性1では、水酸化ナトリウム30重量%水溶液を用いた。耐薬品性2では、次亜塩素酸ナトリウム10重量%水溶液を用いた。また、耐薬品性3では、酢酸エチルを用いた。
【0057】
試験結果を表2に示す。
実施例1〜9では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
【0058】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(a)、銀化合物(b)、及び水(c)を含む分散液(L)、イソシアネート化合物(M)、並びにセメント(N)を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記分散液(L)が、ポリオール化合物(a)、銀化合物(b)、水(c)、及び顔料(d)を含むものであることを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリオール化合物(a)として、
水酸基及び酸基を有するアクリルポリオールを含むことを特徴とする請求項1または2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(a)として、
水酸基価1〜200mgKOH/g、酸価0.1〜20mgKOH/gのアクリルポリオールを含むことを特徴とする請求項1または2記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2011−241237(P2011−241237A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111565(P2010−111565)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(510114125)株式会社エフコンサルタント (32)
【Fターム(参考)】