硬水泡形成剤および石膏ボード製造方法
石膏ボードの泡形成に及ぼす硬水の影響を少なくする組成物およびその方法を提案する。この組成物は、水と焼成石膏のスラリーに泡を加えることにある。泡は、水、分散された空気と界面活性剤でなる。これに使用される界面活性剤は、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%で分布した疎水性部と、約0.2から約3.0のエトキシ基を有する親水性部とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された石膏パネルの泡形成組成物、および方法に関するものである。特に、本発明は、さらに特に改善された石膏パネルの泡形成のための添加剤、およびその添加剤の使用方法に関するものである。とりわけ、本発明は、石膏パネルの泡形成における硬水の影響を小さくする添加剤組成物、および使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石膏パネルは、しばしば石膏ボード、ドライウォール、ウォールボードあるいはプラスターボードとも呼ばれ、典型的に、ドライウォール建築に使用されるようなウォールボードを表面に用いて製造される。
【0003】
予め適切な泡形成装置の中で、泡形成剤、空気および水の混合物から形成された泡を、パネルスラリー混合物に加える。次いで、泡を形成した石膏スラリーを、移動している長いベルト上の紙あるいはその他基材の上に置く。このとき、第2の基材をスラリーの表面に置いて、石膏ボードの第2の面を構成するようにしてもよい。次に、このサンドイッチ状のものを成型装置に通し、石膏ボードの幅および厚さを決める。連続工程では、石膏スラリーが直ちに硬化を始め、ボードが形成される。続いて、このボードが切断され、乾燥され、商品の長さに束ねられる。
【0004】
泡を形成した石膏スラリー中での泡を形成するために混合された水は、硬度がいろいろある。硬水は、典型的に鉱物分濃度が比較的高い水として定義されている。対照的に、軟水は、鉱物が極く僅か含むか、あるいは含んでいない。含有成分は、代表的に比較的高濃度のカルシウムとマグネシウムの金属イオンを炭酸塩の形になっているが、その他いくつかの金属や、重炭酸塩、硫酸塩であることもある。
【0005】
水の硬度は、略鉱物分の濃度に対応した範囲で表記される。
【表1】
【0006】
石膏スラリーの泡内部に硬水を使用すると、形成した泡の容積を小さくし、石膏が硬化されたとき望ましくない泡の合体に関係したボードの欠陥を招くことになる。ある例では、合体をコントロールして泡の内部に比較的大きな泡空間があるようにするのが好ましい。しかしながら、殆どの場合、硬水を使用すると、予測外の泡立ちで工程のライン速度が遅くなり、所望するより遥かに大きな泡空隙となることがある。これら大きな泡空隙は、ウォールボードの強度あるいは強さの減少を含め回復および/または品質に関係してくることがある。
【0007】
石膏スラリーに加えられた泡の短期安定性は、石膏パネル製造で重要である。この安定性コントロールは、ボードコアの泡サイズをコントロールして、石膏パネルの衝撃強度に影響することになる。
【0008】
泡の安定性をコントロールするために石鹸組成物が選択され、あるいは2種の石鹸を混合する泡システムを用いて泡サイズおよび強度を上げている。大きな泡サイズは、小さな泡サイズより完成した石膏パネルにより大きな強度を与えることが認められた。しかしながら、大きな泡サイズが過度にあると、パネルの品質を悪くすることがある。
【0009】
この理由のために、界面活性剤を開発するにあたり、従来からの石鹸混合物あるいは安定な石鹸と不安定な石鹸の混合物を作る泡システムに加え、泡サイズに影響するその他要因を考慮に入れることが重要である。例えば、プロセス水は、泡の安定性に影響し、ある場合には硬水の存在などで非常に大きな泡空隙をもつボードコアを作ることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、広いプロセス条件で石膏スラリーの安定性を高め、コントロールすることができる界面活性剤組成物、およびその界面活性剤組成物の使用方法を提供する。本発明が提案する組成物は、製造時でのライン速度を増し、および/またはボードコストを下げることができる。
【0011】
本発明実施形態の使用に供された組成物は、空気の同伴を大きく、石膏パネルスラリーの使用量を少なくする。その1つの実施形態で、この組成物は界面活性剤である。
【0012】
他の実施形態では、組成物が、安定な石鹸、不安定な石鹸およびそれらの混合物である石鹸混合物である。不安定な石鹸は、容積の嵩張る泡を作り、石膏スラリーと接触したときに不安定になる泡形成剤の界面活性剤である。
【0013】
安定した石鹸は、空気の同伴を大きくし、石膏ボードスラリーでの使用量を少くするように開発された石鹸である。この安定な石鹸と不安定な石鹸を混合した組成物は、スセック(Sucech)が出願した米国特許登録番号5,643,510で知られており、ここに参考として引用する。この特許文献は、所望する泡のサイズと形を得るために安定な石鹸と不安定な石鹸の組成物を混合している。
【0014】
ある場合には、石膏スラリー中の他の成分が、過度に大きな空隙の原因となることがある。例えば、プロセス水として硬水を使用すると、過度に大きなコアサイズの泡を作り、石鹸の調節で(100%安定な石鹸でも)、コアの泡サイズを最適レベルに下げることができないことがある。
【0015】
従って、より安定した泡形成剤(界面活性剤など)を使用するだけでは、泡サイズの調節に充分でないことがある。品質とコントロールを満たすために、製造ラインは、速度を遅くし、泡形成剤の配合を変え、および/または製造コストの上昇となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの実施形態で、石膏スラリーが提案される。石膏スラリーは、焼成石膏と水とから形成される。そして、この石膏スラリーに泡が加えられる。
【0017】
泡は、水、分散された空気および界面活性剤を含んでなり、ここで界面活性剤は、疎水性部が、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%と長さの異なるアルキル鎖が分布してなり、親水性部が約0.2から約3.0のエトキシ基を有してなっている。
【0018】
本発明の実施形態では、硬水の存在下で石膏スラリー中の泡を安定化させるための組成物が提供される。この組成物は、アルキルエトキシサルフェートを含んでおり、アルキルエトキシサルフェートは、約0.2から約3.0のエトキシ基でなる親水性部を有している。アルキルエトキシサルフェートは、また、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%でなるアルキル鎖が分布した疎水性部を有している。
【0019】
本発明の別の実施形態では、硬水の存在下で石膏スラリーを形成する方法が提供される。この方法は、焼成石膏と水を混合して石膏スラリーを形成し、次いで、硬水中で安定性のある泡が加えられる。
【0020】
泡は、水、空気および界面活性剤で構成される。焼成石膏を硬水と混ぜる、あるいは泡が硬水を含む、あるいはその両方に硬水を含んでいることが考えられる。
【0021】
界面活性剤は、約0.2から約3.0のエトキシ基でなる親水性部を有している。また、界面活性剤は、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%でなるアルキル鎖が分布した疎水性部を有している。
【0022】
また本発明の別の実施形態では、硬水の存在下で形成された石膏パネルが提供される。石膏パネルは、焼成石膏と、焼成石膏と混合される水で石膏スラリーを形成し、この石膏スラリーに泡が加えられる。
【0023】
この泡は、硬水の存在下で安定であり、水、空気および界面活性剤を組み合わせて形成される。界面活性剤の親水性部は、約0.2から約3.0のエトキシ基を有している。界面活性剤は、さらに、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%でなるアルキル鎖が分布した疎水性部を有している。
【0024】
石膏パネルには、前面と後面がある。泡が形成された石膏スラリーは、前面と後面それぞれの間で硬化される。硬化された後で、石膏パネルは、仕上げ加工される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明実施例の泡試験に用いたSITA泡試験器を説明している。
【図2】本発明実施例において、図1のSITA試験器を使用した泡試験の結果である。
【図3】本発明実施例による脱イオン水および硬水試料での石鹸混合物の泡形成試験の結果である。
【図4】本発明の実施形態による脱イオン水および硬水試料での安定化剤の泡崩壊曲線である。
【図5】本発明の実施形態による泡サイズに及ぼす石鹸安定化剤の影響を示すボードコア試料である。
【図6】本発明の実施形態による実施例2でのコントロール試料の断面図である。
【図7】本発明の実施形態によるコントロール試料に見られる空隙を示す一連の分析写真である。
【図8】本発明の実施形態による実施例2での試験1Cの断面図である。
【図9】本発明の実施形態による試験1Cに見られる空隙を示す一連の分析写真である。
【図10】本発明の実施形態による実施例2での試験2Cの断面図である。
【図11】本発明の実施形態による試験2Cで見られた空隙を示す一連の分析写真である。
【図12】本発明の実施形態による実施例2での試験3の断面図である。
【図13】本発明の実施形態による試験3Cで見られた空隙を示す一連の分析写真である。
【図14】本発明の実施形態による実施例2での4つの試験での空隙分布を示すグラフであり、空隙の径(ミリメートル)を関数とした空隙容積%を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態から、泡形成剤または界面活性剤などの添加剤を、非常に大きい空隙をもつ泡に入れて混合すると、空隙の数とサイズを所望するように小さくすることで泡に安定性を与えると考えられる。
【0027】
さらに、硬水の存在下で泡を安定化することで、ドライウォールや天井タイルを含む多くの種々用途向けの石膏ボード、石膏パネル、ドライウォール、プラスターボードを含めた多くの分野に使用可能となると考えられる。
【0028】
また、硬水は、石膏スラリー中、あるいは泡の中、あるいはその両方に存在してよい。本発明のその他用途は、当業界の人であればわかるであろう。
【0029】
液体泡は、ガスと液体が混合されればどこでも作られる。液体泡を形成するには、典型的に軟水である液体と、空気/泡形成器、通常は泡形成器を用いて加えられて分散された空気またがガスと、石鹸などの界面活性剤との3つの要素が必要である。
【0030】
安定した泡は、液体/空気界面に界面活性剤分子が吸着して形成される。分子の並び状態が、泡の安定性に関係しており、限定するものではないが、液体の流れ、粗大化、およびフィルムの破裂など泡の不安定化を招く多くの要素がある。
【0031】
液体の流れは、典型的に高くなった部分の境界流路で、平衡状態に達するまで起きる。粗大化は、ガスが泡を通って拡散し、ある泡が大きくなり、他の泡が縮小して消えることで起きる。このプロセスの最終的な結果は、泡の平均サイズが、時間とともにより大きくなる(成長する)。そして、フィルムの破裂は、泡のフィルム(構造)が非常に薄く、弱いときに起きる。このように泡は、崩壊し、水で流れて消え易くなる。
【0032】
しかしながら、界面活性剤分子が水/空気界面で集まると、典型的には水の表面張力が下がる。純粋な水の表面張力は、典型的に約72mN/mである。泡形成剤として機能する界面活性剤の能力は、一つに溶液の表面張力を下げる効果である。表面張力を低くすると、典型的には、より小さな、より均一な泡を形成する。2つの石鹸を混合して表面張力を測定すると、石鹸の組合わせで、典型的に単独の石鹸溶液より低い表面張力を持つという結果になる。
【0033】
本発明による組成物が、安定な石鹸と不安定な石鹸の混合であるとき、不安定な石鹸に対する安定な石鹸の比率が9:1、4:1、3:1および2.3:1で、本発明の実施形態で使用が考えられている。
【0034】
しかしながら、ステパン社(Stepan Company)から市販されているアンモニウムラウレスサルフェート(ステオールCA−330(Steol CA−330))を用いた例では、表面張力が著しく変わらない点がある。
【0035】
ここに使用したアンモニウムラウレスサルフェートは、疎水性部にアルキル鎖長が炭素数12と炭素数14、親水性部に3つのエトキシ基をもっている。アンモニウムラウレスサルフェート内のこの比率は、炭素数12の鎖長が約80%と、炭素数14の鎖長が約20%である。ここに用いたCA−330石鹸の濃度は、約28%である。表面張力が大きく変わらないので、界面活性剤あるいは泡形成剤として作用するアンモニウムラウレスサルフェートの能力は、重量当たり量で増加した後減少していく。アンモニウムラウレスサルフェートの例では、表面張力は、約40%まで増加し、以降ほとんど変化しない。
【0036】
1つの実施形態では、安定な石鹸と不安定な石鹸を混合した組成物を用いるのが望ましい。ここには石鹸の混合を記載しているが、ここに記載した石鹸の混合と同じアルキル鎖長分布をもつ一つの石鹸を使用してもよいことが考えられる。また別に、2つ以上の石鹸を混合して、所望するアルキル鎖長分布にすることも考えられる。
【0037】
石膏ボードの製造に使用した安定な石鹸は、炭素数8−炭素数10あるいは炭素数10−炭素数12の比較的狭いアルキル鎖長と、0.2〜3.5のエトキシ鎖長を有する石鹸組成物である特徴を有している。
【0038】
この例には、ゲオスペシャリティケミカルズ社(Geo Specialty Chemicals)から市販されているハイオニックPFM(Hyonic PFM)、ステパン・ケミカルズ社(Stepan Chemicals)から市販されているFA−403、またはサッチャー・ケミカル社(Thatcher Chemical company)から市販されているサッチャーTF(Thatcher TF)がある。所望の泡サイズを決定する過程で、これらの石鹸は、エトキシ基がゼロの炭素数10−炭素数12アルキルサルフェート(石膏スラリー中で不安定な石鹸)を混ぜるのが好ましい。この混合操作により、典型的には石鹸を作り、石膏スラリーにおいて不安定である泡を作り、この泡が合体して石膏パネルコア中で比較的大きな泡を作り出し、パネルの強度を高めている。
【0039】
石膏スラリーが、硬水の存在下で作られると、泡は典型的に非常に大きくなる。さらに、泡形成剤中での安定界面活性剤など泡を安定にする組成物を添加すると、泡はサイズを小さくしようとする力に逆らうようになる。従って、泡サイズを変える石鹸を混合することで、硬度の高いプロセス水を用いて形成した泡のサイズを小さくすることが望まれる。最終石膏パネル製品の物理的性状には、大きな泡サイズと小さな泡サイズの間のバランスが望まれる。
【0040】
本発明の実施形態では、平均エトキシ鎖が3で炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェートの添加で、硬水の存在下でも泡を安定化させることを見出した。この使用目的で、“泡の安定化”という用語は、スラリー混合物中に硬水がある結果できる石膏スラリー中の非常に大きな空隙を少なくすることを意味している。また、硬水を泡の形成水にのみ使用してもよいと考えられる。
【0041】
さらに別に、当業者であればわかるように、硬水は、スラリー混合物と泡の形成水のいずれにも、如何なる割合で存在してよいと考えられる。炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェート添加剤を加えると、非常に大きな空隙のバランスよくする。この添加物は、泡形成剤の全重量で約40%以上の量で使用される。
【0042】
本発明では、硬水の存在下で泡を安定化させる組成物は、疎水性部と親水性部を有している。これらの組成物は、泡の形成と泡の崩壊に関係している。親水性部は、約0.2から3.5のエトキシ基、好ましくは2.5から3.0のエトキシ基を有している。組成物の親水性部は、組成物に優れた溶解性を与える。本発明による組成物は、さらに、典型的にアルキル鎖長が分布する疎水性部を有している。組成物の疎水性部は、優れた安定性を与える。上記したように、石鹸および石鹸混合物で記載した多くのアルキル鎖長は、アルキル鎖長の分布を作る。また、アルキル鎖長の分布は、石鹸を混合しなくとも達成できると考えられる。
【0043】
その他の石膏スラリー添加物は、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤あるいはナフタレンスルホネートなどがあり、石膏ボードの泡形成に影響を与え、より大きなコアの泡を作る。ある場合には、泡を形成したコア泡サイズは、非常に大きく、石鹸組成物は、最適な石膏ボード加工性と品質を得るために泡サイズを小さくするように調節しなければならない。
【0044】
本発明の実施形態では、平均エトキシ鎖長が3で、炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェート(炭素数12のアルキル鎖が約80%であるステパンケミカルズ社から市販されているステオールCA−460石鹸およびCA−330石鹸など)の添加で、硬水中の泡の形成を安定化させている。ここに使用されるCA460は、疎水性部に炭素数12と炭素数14のアルキル鎖長と、親水性部に3つのエトキシ基を有している。CA460石鹸内の比率は、炭素数12の鎖長が約80%、炭素数14の鎖長が約20%である。用いたCA460石鹸の濃度は、約60%である。改善された安定性は、炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェートの添加レベルが約35%まで増加していく。炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェートの添加が約40%以上になると、硬水存在下での安定性が減少していることが観察された。
【0045】
本発明の実施形態では、硬水の存在下での石膏スラリー形成方法が提案される。この方法は、焼成石膏と水を混合して石膏スラリーを形成することにある。ある実施形態では、焼成石膏と混合される水は、硬水であってもよいと考えられる。
【0046】
石膏スラリーが形成されたら、石膏スラリーに泡を加える。加えられる泡は、硬水がある状態で安定であるのが好ましい。泡それ自身は、水、空気および界面活性剤を一緒にして形成される。
【0047】
本発明のある実施形態では、泡の形成に使用される水は、硬水であってもよいと考えられる。泡それ自身は、当業者であれば知っている従来からの泡と同様にして作ることができる。しかしながら、使用される界面活性剤は、本発明によれば、別のものである。本発明に使用する界面活性剤は、アルキルエトキシサルフェートであり、好ましくは親水性部と疎水性部を有している。親水性部分は、優れた溶解性能を与え、疎水性部は優れた安定化性能を与える。
【0048】
このように、優れた溶解性をもつ親水性部を用いるのが好ましい。例えば、約0.2から3.5のエトキシ基、より好ましくは2.5から3.0のエトキシ基を有するものを使用すると、好ましい溶解性を与えることが示された。さらに、界面活性剤の疎水性部に、アルキル鎖長の分布を有するものを使用すると、優れた安定性を与えることが示された。
【0049】
例えば、炭素数8、炭素数10、炭素数12、および炭素数14のアルキル鎖長が分布した界面活性剤が好ましいことがわかった。特に、炭素数8のアルキル鎖が約10%から約80%、炭素数10のアルキル鎖が約10%から約80%、炭素数12のアルキル鎖が約10%から約40%、および炭素数14のアルキル鎖が約2%から約15%である。好ましくは、本発明による界面活性剤のアルキル基の分布は、炭素数8のアルキル鎖が約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖が約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖が約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖が約2%から約20%である。
【0050】
本発明による界面活性剤は、予め混合していてもよく、予めある石鹸を2種以上混合したものでもよい。また、本発明での界面活性剤は、既存の石鹸を混合することなく、必要な特定の石鹸を製造しておいて形成してもよい。これは、界面活性剤の用途によるもので、当業者であれば理解できるであろう。
【0051】
上記したように、石膏スラリーに泡を形成するときに、添加剤が混合される。本発明で使用される添加剤は、好ましくは大きなコアの泡を形成するのを助長させるものである。どのような添加剤も使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0052】
好ましい添加剤には、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤、ナフタレンスルホネートおよびこれらの混合物がある。
【0053】
石膏スラリー中で泡が安定化されたら、表面紙と裏面紙を置いて石膏パネルを形成し、次いで、通常の公知技術で仕上げをする。
【実施例】
【0054】
実施例1:
泡の安定性を調べる試験は、脱イオン水および“硬“水源から得た水を用いて行った。この例での硬水源は、石灰鉱山から汲み上げられたもので、カルシウムとサルフェートが飽和している。この水の分析値を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
試験は、SITA泡試験器を使用して、石鹸および石鹸混合物を脱イオン水あるいは硬水試料と混ぜ合わせた。SITA泡試験器を図1に示しており、攪拌を上げて形成した泡の量を測定することができる。一杯に迄攪拌してから、泡容積の測定を継続して泡の崩壊を測定していく。泡の形成と崩壊を測定して、石鹸および石鹸混合物の効果が決められる。
【0057】
図1に示すように、SITA試験器100は、試料液体貯槽102にある試料液体を用いる。 試料液体を、サーモスタット付きの二重試料容器104に入れる。試料容器104の内で、ローター106が動いて泡を形成し始める。形成した泡の量は、好ましくは針検知器のあるセンサーユニット108によって測定される。泡の形成に続いて、泡の崩壊を同じセンサーユニット108を用いて測定する。噴霧環110が、洗浄液/水容器112からの洗浄液/水を用いて、自動的に試料容器104を洗浄する。洗浄されたら、洗浄液/水を泡試験器の底にあるコレクター114に集める。
【0058】
脱イオン水および硬水試料中での石鹸およびその混合物の表面張力を、クラス・テンショメーター・モデルK12・Mk6(Kruss Tensiometer Model K12 Mk6)で測定した。表面張力は、当業者に公知の他の方法でも測定できる。表面張力の減少は、泡形成の改善と関連している。
【0059】
添加剤を、硬水の存在下で泡を安定化させる能力で比較し、分析した。石鹸および添加剤は、ゲオ・スペシャリティ・ケミカルズ社(Geo Specialty Chemicals inc)から市販されているハイオニックPFM−33(Hyonic PFM−33)石鹸(エトキシ化サルフェート、アンモニウム塩、アルコール)、ステパン・ケミカルズ社(Stepan Chemicals)から市販されているステオールCA−460(Steol CA−460)石鹸(60%固形分、アンモニウムラウレスサルフェート、3エトキシ基)、ステパン・ケミカルズ社から市販されているステオールCA−330(Steol CA−330)石鹸(28%固形分、アンモニウムラウレスサルフェート、3エトキシ基)、アクゾ・ノベル社(Akzo Nobel)からのアロモックスC/12W(Aromox C/12−W)石鹸(ジヒドロキシコカミンオキシド)である。
【0060】
PFM−33石鹸は、本発明の目的に使用する安定な石鹸である。PFM−33石鹸は、炭素数6から炭素数12のアルキル鎖長を有している。ここで使用したPFM−33石鹸溶液は、約33%濃度溶液で提供される。この実施例での石鹸混合物は、石鹸安定化剤(ステオールCA−460石鹸、ステオールCA−330石鹸、およびアロモックスC/12W石鹸)を加えて、最終的な石鹸安定化剤の濃度を約10%、20%および30%にして製造した。
【0061】
本実施例で使用した石鹸溶液は、0.4gの石鹸を800gの水(脱イオン水または硬水試料)と混合して製造され、これをSITA試験器に入れる。SITA試験器を用いて、泡の形成と崩壊を測定した。泡の形成の結果を図2に示す。CA−330石鹸とCA−460石鹸は、PFM−33石鹸またはその他石鹸混合物に比べて、硬水試料で泡の形成が著しく増加した。CA−330石鹸とCA−460石鹸は、固形分%(濃度)で異なるが、同じ石鹸である。
【0062】
高い泡形成に基づいて、CA−330石鹸とCA−460石鹸の石鹸混合物について、さらに試験を行った。次の組合わせで図2の泡崩壊試験を行った。
【0063】
【表3】
【0064】
硬水試料中で安定化添加剤を用いて形成された泡の容積は、安定化添加剤なしよりも大きくなる。泡崩壊の結果を図4に示しており、特に、測定して1分以内に泡の崩壊が激しい。
【0065】
表面張力の測定を下の表4に示す。脱イオン水および硬水試料に約10%、20%および30%濃度にしたCA−460石鹸とCA−330石鹸混合物について、泡の形成の結果を図3に示す。図3に示すように、PFM−33石鹸に石鹸安定化剤を約20%で加えたとき、表面張力が最小となっている。石鹸の安定性が最も大いのは、表面張が最低になるのと一致する。この結果に基づいて、硬水条件では、約20%の安定化添加剤を含む石鹸が、最も良好に作用している。
【0066】
【表4】
【0067】
実施例2
第2の試験は、硬水試料に対して、この安定な石鹸(FA−403石鹸)と共にCA−330石鹸を使用して実施した。FA−403石鹸は、組成物の疎水性部として炭素数8のアルキル鎖長と炭素数10のアルキル鎖長の両方を有していて、炭素数8のアルキル鎖長が約40%、炭素数10のアルキル鎖長が約60%である。CA−330石鹸は、プラントで代表的に使用される他の石鹸と近似した固形分パーセントであるので、ここで使用した。
【0068】
CA−460石鹸とプラントで代表的に使用される石鹸との混合は、アルコールを加えてゲルの生成を抑えないと、石鹸を混合したときにゲルを生成する。この実施例では、石鹸の混合として記載しているが、同様のアルキル鎖長分布をした単一の石鹸を使用することができることは理解できる。充分量のアルコールを加えた場合でも、処理中に特定の泡サイズを持っている他の石鹸と接したときに、ゲル生成の可能性がある。
【0069】
試験に用いた石鹸は、試験に先立って調製した。例えば、20ポンドバッチの石鹸の3つに、約10%、20%および30%濃度でCA−330石鹸と混合した。
【0070】
試験は、1/2インチのシートロック(SHEETROCK、商品名)名のビルディングパネル上で行った。先ず、プラントは、50%の石鹸混合物(50%のFA−403石鹸と50%のポリステップB25石鹸)で操業した。ポリステップB25石鹸組成物は、炭素数10のアルキル鎖長と炭素数12のアルキル鎖長の両方を含んでいる。
【0071】
特に、ポリステップB25石鹸組成物は、炭素数10のアルキル鎖長を約90%と炭素数12のアルキル鎖長を約10%含んでいる。ここに使用したポリステップB25石鹸組成物は、約38%の濃度組成物であった。この試験では、工程条件または配合を変えていない。混合物中でのFA−403石鹸を、試験の石鹸に置き換えた。
【0072】
試験した石鹸は、以下の通りである。
【表5】
【0073】
各条件での石鹸の変更は、操作に顕著な影響を与えなかった。試験中にスランプを採取して、泡コアサイズを測定した。
【0074】
ナフタレンスルホネート(分散剤)、石膏、澱粉および特定の泡サイズにする石鹸混合物の全てを一つに配合に使用すると、(水が問題でないプラントにおいてさえ)コア泡サイズを大きくする。
【0075】
試験は、泡の安定性に及ぼす硬水の影響を少なくする、あるいはなくすことを目的にしたので、泡安定化剤を加えて泡サイズを最も小さくすることが望まれた。安定化石鹸のパーセンテージが増えると、コアの泡サイズは小さくなった。ボード試料中の泡サイズを、図5に写真で示す。平均泡サイズとサイズの分布を測定するために、クレメックス・ビジョン・イメージ・アナライザー(Clemex Vision Image Analyzer)を用い、結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
コントロール試料の断面を図6に示す。図7は、空隙が“見られる”コントロール試料の一連の分析の写真である。図8は、試験1Cの断面を示し、試験1Cの一連の分析の写真を図9に示す。試験2Cの断面を図10に、空隙が“見られる”一連の分析の写真を図11に示す。試験3Cの断面を図12に、空隙が“見られる”一連の分析の写真を図13に示す。図14は、空隙の径(ミリメートルで測定)を関数として空隙容積%を示す図である。
【0078】
本組成物の特別の実施形態、および硬水中で泡を安定化させる方法を、ここに記述してきたが、これは、広い見地から本発明および以下の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者が変更および修正することができると考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された石膏パネルの泡形成組成物、および方法に関するものである。特に、本発明は、さらに特に改善された石膏パネルの泡形成のための添加剤、およびその添加剤の使用方法に関するものである。とりわけ、本発明は、石膏パネルの泡形成における硬水の影響を小さくする添加剤組成物、および使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石膏パネルは、しばしば石膏ボード、ドライウォール、ウォールボードあるいはプラスターボードとも呼ばれ、典型的に、ドライウォール建築に使用されるようなウォールボードを表面に用いて製造される。
【0003】
予め適切な泡形成装置の中で、泡形成剤、空気および水の混合物から形成された泡を、パネルスラリー混合物に加える。次いで、泡を形成した石膏スラリーを、移動している長いベルト上の紙あるいはその他基材の上に置く。このとき、第2の基材をスラリーの表面に置いて、石膏ボードの第2の面を構成するようにしてもよい。次に、このサンドイッチ状のものを成型装置に通し、石膏ボードの幅および厚さを決める。連続工程では、石膏スラリーが直ちに硬化を始め、ボードが形成される。続いて、このボードが切断され、乾燥され、商品の長さに束ねられる。
【0004】
泡を形成した石膏スラリー中での泡を形成するために混合された水は、硬度がいろいろある。硬水は、典型的に鉱物分濃度が比較的高い水として定義されている。対照的に、軟水は、鉱物が極く僅か含むか、あるいは含んでいない。含有成分は、代表的に比較的高濃度のカルシウムとマグネシウムの金属イオンを炭酸塩の形になっているが、その他いくつかの金属や、重炭酸塩、硫酸塩であることもある。
【0005】
水の硬度は、略鉱物分の濃度に対応した範囲で表記される。
【表1】
【0006】
石膏スラリーの泡内部に硬水を使用すると、形成した泡の容積を小さくし、石膏が硬化されたとき望ましくない泡の合体に関係したボードの欠陥を招くことになる。ある例では、合体をコントロールして泡の内部に比較的大きな泡空間があるようにするのが好ましい。しかしながら、殆どの場合、硬水を使用すると、予測外の泡立ちで工程のライン速度が遅くなり、所望するより遥かに大きな泡空隙となることがある。これら大きな泡空隙は、ウォールボードの強度あるいは強さの減少を含め回復および/または品質に関係してくることがある。
【0007】
石膏スラリーに加えられた泡の短期安定性は、石膏パネル製造で重要である。この安定性コントロールは、ボードコアの泡サイズをコントロールして、石膏パネルの衝撃強度に影響することになる。
【0008】
泡の安定性をコントロールするために石鹸組成物が選択され、あるいは2種の石鹸を混合する泡システムを用いて泡サイズおよび強度を上げている。大きな泡サイズは、小さな泡サイズより完成した石膏パネルにより大きな強度を与えることが認められた。しかしながら、大きな泡サイズが過度にあると、パネルの品質を悪くすることがある。
【0009】
この理由のために、界面活性剤を開発するにあたり、従来からの石鹸混合物あるいは安定な石鹸と不安定な石鹸の混合物を作る泡システムに加え、泡サイズに影響するその他要因を考慮に入れることが重要である。例えば、プロセス水は、泡の安定性に影響し、ある場合には硬水の存在などで非常に大きな泡空隙をもつボードコアを作ることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、広いプロセス条件で石膏スラリーの安定性を高め、コントロールすることができる界面活性剤組成物、およびその界面活性剤組成物の使用方法を提供する。本発明が提案する組成物は、製造時でのライン速度を増し、および/またはボードコストを下げることができる。
【0011】
本発明実施形態の使用に供された組成物は、空気の同伴を大きく、石膏パネルスラリーの使用量を少なくする。その1つの実施形態で、この組成物は界面活性剤である。
【0012】
他の実施形態では、組成物が、安定な石鹸、不安定な石鹸およびそれらの混合物である石鹸混合物である。不安定な石鹸は、容積の嵩張る泡を作り、石膏スラリーと接触したときに不安定になる泡形成剤の界面活性剤である。
【0013】
安定した石鹸は、空気の同伴を大きくし、石膏ボードスラリーでの使用量を少くするように開発された石鹸である。この安定な石鹸と不安定な石鹸を混合した組成物は、スセック(Sucech)が出願した米国特許登録番号5,643,510で知られており、ここに参考として引用する。この特許文献は、所望する泡のサイズと形を得るために安定な石鹸と不安定な石鹸の組成物を混合している。
【0014】
ある場合には、石膏スラリー中の他の成分が、過度に大きな空隙の原因となることがある。例えば、プロセス水として硬水を使用すると、過度に大きなコアサイズの泡を作り、石鹸の調節で(100%安定な石鹸でも)、コアの泡サイズを最適レベルに下げることができないことがある。
【0015】
従って、より安定した泡形成剤(界面活性剤など)を使用するだけでは、泡サイズの調節に充分でないことがある。品質とコントロールを満たすために、製造ラインは、速度を遅くし、泡形成剤の配合を変え、および/または製造コストの上昇となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの実施形態で、石膏スラリーが提案される。石膏スラリーは、焼成石膏と水とから形成される。そして、この石膏スラリーに泡が加えられる。
【0017】
泡は、水、分散された空気および界面活性剤を含んでなり、ここで界面活性剤は、疎水性部が、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%と長さの異なるアルキル鎖が分布してなり、親水性部が約0.2から約3.0のエトキシ基を有してなっている。
【0018】
本発明の実施形態では、硬水の存在下で石膏スラリー中の泡を安定化させるための組成物が提供される。この組成物は、アルキルエトキシサルフェートを含んでおり、アルキルエトキシサルフェートは、約0.2から約3.0のエトキシ基でなる親水性部を有している。アルキルエトキシサルフェートは、また、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%でなるアルキル鎖が分布した疎水性部を有している。
【0019】
本発明の別の実施形態では、硬水の存在下で石膏スラリーを形成する方法が提供される。この方法は、焼成石膏と水を混合して石膏スラリーを形成し、次いで、硬水中で安定性のある泡が加えられる。
【0020】
泡は、水、空気および界面活性剤で構成される。焼成石膏を硬水と混ぜる、あるいは泡が硬水を含む、あるいはその両方に硬水を含んでいることが考えられる。
【0021】
界面活性剤は、約0.2から約3.0のエトキシ基でなる親水性部を有している。また、界面活性剤は、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%でなるアルキル鎖が分布した疎水性部を有している。
【0022】
また本発明の別の実施形態では、硬水の存在下で形成された石膏パネルが提供される。石膏パネルは、焼成石膏と、焼成石膏と混合される水で石膏スラリーを形成し、この石膏スラリーに泡が加えられる。
【0023】
この泡は、硬水の存在下で安定であり、水、空気および界面活性剤を組み合わせて形成される。界面活性剤の親水性部は、約0.2から約3.0のエトキシ基を有している。界面活性剤は、さらに、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%でなるアルキル鎖が分布した疎水性部を有している。
【0024】
石膏パネルには、前面と後面がある。泡が形成された石膏スラリーは、前面と後面それぞれの間で硬化される。硬化された後で、石膏パネルは、仕上げ加工される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明実施例の泡試験に用いたSITA泡試験器を説明している。
【図2】本発明実施例において、図1のSITA試験器を使用した泡試験の結果である。
【図3】本発明実施例による脱イオン水および硬水試料での石鹸混合物の泡形成試験の結果である。
【図4】本発明の実施形態による脱イオン水および硬水試料での安定化剤の泡崩壊曲線である。
【図5】本発明の実施形態による泡サイズに及ぼす石鹸安定化剤の影響を示すボードコア試料である。
【図6】本発明の実施形態による実施例2でのコントロール試料の断面図である。
【図7】本発明の実施形態によるコントロール試料に見られる空隙を示す一連の分析写真である。
【図8】本発明の実施形態による実施例2での試験1Cの断面図である。
【図9】本発明の実施形態による試験1Cに見られる空隙を示す一連の分析写真である。
【図10】本発明の実施形態による実施例2での試験2Cの断面図である。
【図11】本発明の実施形態による試験2Cで見られた空隙を示す一連の分析写真である。
【図12】本発明の実施形態による実施例2での試験3の断面図である。
【図13】本発明の実施形態による試験3Cで見られた空隙を示す一連の分析写真である。
【図14】本発明の実施形態による実施例2での4つの試験での空隙分布を示すグラフであり、空隙の径(ミリメートル)を関数とした空隙容積%を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態から、泡形成剤または界面活性剤などの添加剤を、非常に大きい空隙をもつ泡に入れて混合すると、空隙の数とサイズを所望するように小さくすることで泡に安定性を与えると考えられる。
【0027】
さらに、硬水の存在下で泡を安定化することで、ドライウォールや天井タイルを含む多くの種々用途向けの石膏ボード、石膏パネル、ドライウォール、プラスターボードを含めた多くの分野に使用可能となると考えられる。
【0028】
また、硬水は、石膏スラリー中、あるいは泡の中、あるいはその両方に存在してよい。本発明のその他用途は、当業界の人であればわかるであろう。
【0029】
液体泡は、ガスと液体が混合されればどこでも作られる。液体泡を形成するには、典型的に軟水である液体と、空気/泡形成器、通常は泡形成器を用いて加えられて分散された空気またがガスと、石鹸などの界面活性剤との3つの要素が必要である。
【0030】
安定した泡は、液体/空気界面に界面活性剤分子が吸着して形成される。分子の並び状態が、泡の安定性に関係しており、限定するものではないが、液体の流れ、粗大化、およびフィルムの破裂など泡の不安定化を招く多くの要素がある。
【0031】
液体の流れは、典型的に高くなった部分の境界流路で、平衡状態に達するまで起きる。粗大化は、ガスが泡を通って拡散し、ある泡が大きくなり、他の泡が縮小して消えることで起きる。このプロセスの最終的な結果は、泡の平均サイズが、時間とともにより大きくなる(成長する)。そして、フィルムの破裂は、泡のフィルム(構造)が非常に薄く、弱いときに起きる。このように泡は、崩壊し、水で流れて消え易くなる。
【0032】
しかしながら、界面活性剤分子が水/空気界面で集まると、典型的には水の表面張力が下がる。純粋な水の表面張力は、典型的に約72mN/mである。泡形成剤として機能する界面活性剤の能力は、一つに溶液の表面張力を下げる効果である。表面張力を低くすると、典型的には、より小さな、より均一な泡を形成する。2つの石鹸を混合して表面張力を測定すると、石鹸の組合わせで、典型的に単独の石鹸溶液より低い表面張力を持つという結果になる。
【0033】
本発明による組成物が、安定な石鹸と不安定な石鹸の混合であるとき、不安定な石鹸に対する安定な石鹸の比率が9:1、4:1、3:1および2.3:1で、本発明の実施形態で使用が考えられている。
【0034】
しかしながら、ステパン社(Stepan Company)から市販されているアンモニウムラウレスサルフェート(ステオールCA−330(Steol CA−330))を用いた例では、表面張力が著しく変わらない点がある。
【0035】
ここに使用したアンモニウムラウレスサルフェートは、疎水性部にアルキル鎖長が炭素数12と炭素数14、親水性部に3つのエトキシ基をもっている。アンモニウムラウレスサルフェート内のこの比率は、炭素数12の鎖長が約80%と、炭素数14の鎖長が約20%である。ここに用いたCA−330石鹸の濃度は、約28%である。表面張力が大きく変わらないので、界面活性剤あるいは泡形成剤として作用するアンモニウムラウレスサルフェートの能力は、重量当たり量で増加した後減少していく。アンモニウムラウレスサルフェートの例では、表面張力は、約40%まで増加し、以降ほとんど変化しない。
【0036】
1つの実施形態では、安定な石鹸と不安定な石鹸を混合した組成物を用いるのが望ましい。ここには石鹸の混合を記載しているが、ここに記載した石鹸の混合と同じアルキル鎖長分布をもつ一つの石鹸を使用してもよいことが考えられる。また別に、2つ以上の石鹸を混合して、所望するアルキル鎖長分布にすることも考えられる。
【0037】
石膏ボードの製造に使用した安定な石鹸は、炭素数8−炭素数10あるいは炭素数10−炭素数12の比較的狭いアルキル鎖長と、0.2〜3.5のエトキシ鎖長を有する石鹸組成物である特徴を有している。
【0038】
この例には、ゲオスペシャリティケミカルズ社(Geo Specialty Chemicals)から市販されているハイオニックPFM(Hyonic PFM)、ステパン・ケミカルズ社(Stepan Chemicals)から市販されているFA−403、またはサッチャー・ケミカル社(Thatcher Chemical company)から市販されているサッチャーTF(Thatcher TF)がある。所望の泡サイズを決定する過程で、これらの石鹸は、エトキシ基がゼロの炭素数10−炭素数12アルキルサルフェート(石膏スラリー中で不安定な石鹸)を混ぜるのが好ましい。この混合操作により、典型的には石鹸を作り、石膏スラリーにおいて不安定である泡を作り、この泡が合体して石膏パネルコア中で比較的大きな泡を作り出し、パネルの強度を高めている。
【0039】
石膏スラリーが、硬水の存在下で作られると、泡は典型的に非常に大きくなる。さらに、泡形成剤中での安定界面活性剤など泡を安定にする組成物を添加すると、泡はサイズを小さくしようとする力に逆らうようになる。従って、泡サイズを変える石鹸を混合することで、硬度の高いプロセス水を用いて形成した泡のサイズを小さくすることが望まれる。最終石膏パネル製品の物理的性状には、大きな泡サイズと小さな泡サイズの間のバランスが望まれる。
【0040】
本発明の実施形態では、平均エトキシ鎖が3で炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェートの添加で、硬水の存在下でも泡を安定化させることを見出した。この使用目的で、“泡の安定化”という用語は、スラリー混合物中に硬水がある結果できる石膏スラリー中の非常に大きな空隙を少なくすることを意味している。また、硬水を泡の形成水にのみ使用してもよいと考えられる。
【0041】
さらに別に、当業者であればわかるように、硬水は、スラリー混合物と泡の形成水のいずれにも、如何なる割合で存在してよいと考えられる。炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェート添加剤を加えると、非常に大きな空隙のバランスよくする。この添加物は、泡形成剤の全重量で約40%以上の量で使用される。
【0042】
本発明では、硬水の存在下で泡を安定化させる組成物は、疎水性部と親水性部を有している。これらの組成物は、泡の形成と泡の崩壊に関係している。親水性部は、約0.2から3.5のエトキシ基、好ましくは2.5から3.0のエトキシ基を有している。組成物の親水性部は、組成物に優れた溶解性を与える。本発明による組成物は、さらに、典型的にアルキル鎖長が分布する疎水性部を有している。組成物の疎水性部は、優れた安定性を与える。上記したように、石鹸および石鹸混合物で記載した多くのアルキル鎖長は、アルキル鎖長の分布を作る。また、アルキル鎖長の分布は、石鹸を混合しなくとも達成できると考えられる。
【0043】
その他の石膏スラリー添加物は、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤あるいはナフタレンスルホネートなどがあり、石膏ボードの泡形成に影響を与え、より大きなコアの泡を作る。ある場合には、泡を形成したコア泡サイズは、非常に大きく、石鹸組成物は、最適な石膏ボード加工性と品質を得るために泡サイズを小さくするように調節しなければならない。
【0044】
本発明の実施形態では、平均エトキシ鎖長が3で、炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェート(炭素数12のアルキル鎖が約80%であるステパンケミカルズ社から市販されているステオールCA−460石鹸およびCA−330石鹸など)の添加で、硬水中の泡の形成を安定化させている。ここに使用されるCA460は、疎水性部に炭素数12と炭素数14のアルキル鎖長と、親水性部に3つのエトキシ基を有している。CA460石鹸内の比率は、炭素数12の鎖長が約80%、炭素数14の鎖長が約20%である。用いたCA460石鹸の濃度は、約60%である。改善された安定性は、炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェートの添加レベルが約35%まで増加していく。炭素数12−炭素数14のアルキル−エーテルサルフェートの添加が約40%以上になると、硬水存在下での安定性が減少していることが観察された。
【0045】
本発明の実施形態では、硬水の存在下での石膏スラリー形成方法が提案される。この方法は、焼成石膏と水を混合して石膏スラリーを形成することにある。ある実施形態では、焼成石膏と混合される水は、硬水であってもよいと考えられる。
【0046】
石膏スラリーが形成されたら、石膏スラリーに泡を加える。加えられる泡は、硬水がある状態で安定であるのが好ましい。泡それ自身は、水、空気および界面活性剤を一緒にして形成される。
【0047】
本発明のある実施形態では、泡の形成に使用される水は、硬水であってもよいと考えられる。泡それ自身は、当業者であれば知っている従来からの泡と同様にして作ることができる。しかしながら、使用される界面活性剤は、本発明によれば、別のものである。本発明に使用する界面活性剤は、アルキルエトキシサルフェートであり、好ましくは親水性部と疎水性部を有している。親水性部分は、優れた溶解性能を与え、疎水性部は優れた安定化性能を与える。
【0048】
このように、優れた溶解性をもつ親水性部を用いるのが好ましい。例えば、約0.2から3.5のエトキシ基、より好ましくは2.5から3.0のエトキシ基を有するものを使用すると、好ましい溶解性を与えることが示された。さらに、界面活性剤の疎水性部に、アルキル鎖長の分布を有するものを使用すると、優れた安定性を与えることが示された。
【0049】
例えば、炭素数8、炭素数10、炭素数12、および炭素数14のアルキル鎖長が分布した界面活性剤が好ましいことがわかった。特に、炭素数8のアルキル鎖が約10%から約80%、炭素数10のアルキル鎖が約10%から約80%、炭素数12のアルキル鎖が約10%から約40%、および炭素数14のアルキル鎖が約2%から約15%である。好ましくは、本発明による界面活性剤のアルキル基の分布は、炭素数8のアルキル鎖が約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖が約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖が約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖が約2%から約20%である。
【0050】
本発明による界面活性剤は、予め混合していてもよく、予めある石鹸を2種以上混合したものでもよい。また、本発明での界面活性剤は、既存の石鹸を混合することなく、必要な特定の石鹸を製造しておいて形成してもよい。これは、界面活性剤の用途によるもので、当業者であれば理解できるであろう。
【0051】
上記したように、石膏スラリーに泡を形成するときに、添加剤が混合される。本発明で使用される添加剤は、好ましくは大きなコアの泡を形成するのを助長させるものである。どのような添加剤も使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0052】
好ましい添加剤には、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤、ナフタレンスルホネートおよびこれらの混合物がある。
【0053】
石膏スラリー中で泡が安定化されたら、表面紙と裏面紙を置いて石膏パネルを形成し、次いで、通常の公知技術で仕上げをする。
【実施例】
【0054】
実施例1:
泡の安定性を調べる試験は、脱イオン水および“硬“水源から得た水を用いて行った。この例での硬水源は、石灰鉱山から汲み上げられたもので、カルシウムとサルフェートが飽和している。この水の分析値を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
試験は、SITA泡試験器を使用して、石鹸および石鹸混合物を脱イオン水あるいは硬水試料と混ぜ合わせた。SITA泡試験器を図1に示しており、攪拌を上げて形成した泡の量を測定することができる。一杯に迄攪拌してから、泡容積の測定を継続して泡の崩壊を測定していく。泡の形成と崩壊を測定して、石鹸および石鹸混合物の効果が決められる。
【0057】
図1に示すように、SITA試験器100は、試料液体貯槽102にある試料液体を用いる。 試料液体を、サーモスタット付きの二重試料容器104に入れる。試料容器104の内で、ローター106が動いて泡を形成し始める。形成した泡の量は、好ましくは針検知器のあるセンサーユニット108によって測定される。泡の形成に続いて、泡の崩壊を同じセンサーユニット108を用いて測定する。噴霧環110が、洗浄液/水容器112からの洗浄液/水を用いて、自動的に試料容器104を洗浄する。洗浄されたら、洗浄液/水を泡試験器の底にあるコレクター114に集める。
【0058】
脱イオン水および硬水試料中での石鹸およびその混合物の表面張力を、クラス・テンショメーター・モデルK12・Mk6(Kruss Tensiometer Model K12 Mk6)で測定した。表面張力は、当業者に公知の他の方法でも測定できる。表面張力の減少は、泡形成の改善と関連している。
【0059】
添加剤を、硬水の存在下で泡を安定化させる能力で比較し、分析した。石鹸および添加剤は、ゲオ・スペシャリティ・ケミカルズ社(Geo Specialty Chemicals inc)から市販されているハイオニックPFM−33(Hyonic PFM−33)石鹸(エトキシ化サルフェート、アンモニウム塩、アルコール)、ステパン・ケミカルズ社(Stepan Chemicals)から市販されているステオールCA−460(Steol CA−460)石鹸(60%固形分、アンモニウムラウレスサルフェート、3エトキシ基)、ステパン・ケミカルズ社から市販されているステオールCA−330(Steol CA−330)石鹸(28%固形分、アンモニウムラウレスサルフェート、3エトキシ基)、アクゾ・ノベル社(Akzo Nobel)からのアロモックスC/12W(Aromox C/12−W)石鹸(ジヒドロキシコカミンオキシド)である。
【0060】
PFM−33石鹸は、本発明の目的に使用する安定な石鹸である。PFM−33石鹸は、炭素数6から炭素数12のアルキル鎖長を有している。ここで使用したPFM−33石鹸溶液は、約33%濃度溶液で提供される。この実施例での石鹸混合物は、石鹸安定化剤(ステオールCA−460石鹸、ステオールCA−330石鹸、およびアロモックスC/12W石鹸)を加えて、最終的な石鹸安定化剤の濃度を約10%、20%および30%にして製造した。
【0061】
本実施例で使用した石鹸溶液は、0.4gの石鹸を800gの水(脱イオン水または硬水試料)と混合して製造され、これをSITA試験器に入れる。SITA試験器を用いて、泡の形成と崩壊を測定した。泡の形成の結果を図2に示す。CA−330石鹸とCA−460石鹸は、PFM−33石鹸またはその他石鹸混合物に比べて、硬水試料で泡の形成が著しく増加した。CA−330石鹸とCA−460石鹸は、固形分%(濃度)で異なるが、同じ石鹸である。
【0062】
高い泡形成に基づいて、CA−330石鹸とCA−460石鹸の石鹸混合物について、さらに試験を行った。次の組合わせで図2の泡崩壊試験を行った。
【0063】
【表3】
【0064】
硬水試料中で安定化添加剤を用いて形成された泡の容積は、安定化添加剤なしよりも大きくなる。泡崩壊の結果を図4に示しており、特に、測定して1分以内に泡の崩壊が激しい。
【0065】
表面張力の測定を下の表4に示す。脱イオン水および硬水試料に約10%、20%および30%濃度にしたCA−460石鹸とCA−330石鹸混合物について、泡の形成の結果を図3に示す。図3に示すように、PFM−33石鹸に石鹸安定化剤を約20%で加えたとき、表面張力が最小となっている。石鹸の安定性が最も大いのは、表面張が最低になるのと一致する。この結果に基づいて、硬水条件では、約20%の安定化添加剤を含む石鹸が、最も良好に作用している。
【0066】
【表4】
【0067】
実施例2
第2の試験は、硬水試料に対して、この安定な石鹸(FA−403石鹸)と共にCA−330石鹸を使用して実施した。FA−403石鹸は、組成物の疎水性部として炭素数8のアルキル鎖長と炭素数10のアルキル鎖長の両方を有していて、炭素数8のアルキル鎖長が約40%、炭素数10のアルキル鎖長が約60%である。CA−330石鹸は、プラントで代表的に使用される他の石鹸と近似した固形分パーセントであるので、ここで使用した。
【0068】
CA−460石鹸とプラントで代表的に使用される石鹸との混合は、アルコールを加えてゲルの生成を抑えないと、石鹸を混合したときにゲルを生成する。この実施例では、石鹸の混合として記載しているが、同様のアルキル鎖長分布をした単一の石鹸を使用することができることは理解できる。充分量のアルコールを加えた場合でも、処理中に特定の泡サイズを持っている他の石鹸と接したときに、ゲル生成の可能性がある。
【0069】
試験に用いた石鹸は、試験に先立って調製した。例えば、20ポンドバッチの石鹸の3つに、約10%、20%および30%濃度でCA−330石鹸と混合した。
【0070】
試験は、1/2インチのシートロック(SHEETROCK、商品名)名のビルディングパネル上で行った。先ず、プラントは、50%の石鹸混合物(50%のFA−403石鹸と50%のポリステップB25石鹸)で操業した。ポリステップB25石鹸組成物は、炭素数10のアルキル鎖長と炭素数12のアルキル鎖長の両方を含んでいる。
【0071】
特に、ポリステップB25石鹸組成物は、炭素数10のアルキル鎖長を約90%と炭素数12のアルキル鎖長を約10%含んでいる。ここに使用したポリステップB25石鹸組成物は、約38%の濃度組成物であった。この試験では、工程条件または配合を変えていない。混合物中でのFA−403石鹸を、試験の石鹸に置き換えた。
【0072】
試験した石鹸は、以下の通りである。
【表5】
【0073】
各条件での石鹸の変更は、操作に顕著な影響を与えなかった。試験中にスランプを採取して、泡コアサイズを測定した。
【0074】
ナフタレンスルホネート(分散剤)、石膏、澱粉および特定の泡サイズにする石鹸混合物の全てを一つに配合に使用すると、(水が問題でないプラントにおいてさえ)コア泡サイズを大きくする。
【0075】
試験は、泡の安定性に及ぼす硬水の影響を少なくする、あるいはなくすことを目的にしたので、泡安定化剤を加えて泡サイズを最も小さくすることが望まれた。安定化石鹸のパーセンテージが増えると、コアの泡サイズは小さくなった。ボード試料中の泡サイズを、図5に写真で示す。平均泡サイズとサイズの分布を測定するために、クレメックス・ビジョン・イメージ・アナライザー(Clemex Vision Image Analyzer)を用い、結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
コントロール試料の断面を図6に示す。図7は、空隙が“見られる”コントロール試料の一連の分析の写真である。図8は、試験1Cの断面を示し、試験1Cの一連の分析の写真を図9に示す。試験2Cの断面を図10に、空隙が“見られる”一連の分析の写真を図11に示す。試験3Cの断面を図12に、空隙が“見られる”一連の分析の写真を図13に示す。図14は、空隙の径(ミリメートルで測定)を関数として空隙容積%を示す図である。
【0078】
本組成物の特別の実施形態、および硬水中で泡を安定化させる方法を、ここに記述してきたが、これは、広い見地から本発明および以下の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者が変更および修正することができると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを最少で約40mg/L含む硬水での石膏スラリー中における泡安定化組成物であって、約0.2から約3.0のエトキシ基を有する親水性部と、炭素数8のアルキル鎖長を約20〜約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2から約20%で分布した疎水性部とを有するアルキルエトキシサルフェートでなることを特徴とする泡安定化組成物。
【請求項2】
前記アルキルエトキシサルフェートが、予め混合された石鹸であることを特徴とする請求項1に記載の泡安定化組成物。
【請求項3】
前記アルキルエトキシサルフェートが、1種以上の石鹸の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の泡安定化組成物。
【請求項4】
焼成石膏と水を混合して石膏スラリーを作り、硬水中で安定な泡を加える、のステップを含む硬水での石膏スラリーの形成方法であって、
前記泡が、水、空気および界面活性剤でなり、前記界面活性剤が、約0.2から約3.0のエトキシ基を含む親水性部と、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%で分布した疎水性部を有してなることを特徴とする石膏スラリーの形成方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、予め混合された石鹸であることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項6】
前記石膏スラリーを作るステップは、さらに、より大きな泡コアの形成を促す添加剤を加えることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項7】
前記添加剤が、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤、ナフタレンスルホネート、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項8】
焼成石膏に加えられて石膏スラリーを作る水が、硬水であることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項9】
空気と前記界面活性剤と一緒にして泡を作る水が、硬水であることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項10】
a)焼成石膏と、b)前記焼成石膏に加えられて石膏スラリーを形成する水と、およびc)水、空気、および約0.2から約3.0のエトキシ基を含む親水性部と、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%で分布した疎水性部を有してなる界面活性剤を混合して形成され、硬水で安定であり、前記石膏スラリーに加えられる泡とで構成されて、硬水の存在下で形成された石膏パネルであって、
前記泡の入った石膏スラリーが前面と後面それぞれの間で硬化されて、硬化された前面と後面が、仕上げ加工されることを特徴とする石膏パネル。
【請求項11】
前記焼成石膏に加えられて石膏スラリーを形成する水が、硬水であることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項12】
空気と前記界面活性剤と混合して泡を形成する水が、硬水であることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項13】
前記界面活性剤が、予め混合された石鹸であることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項14】
前記石膏スラリーは、さらに、より大きな泡コアの形成を促す添加剤を加えることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項15】
前記添加物は、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤、ナフタレンスルホネート、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項14に記載の石膏パネル。
【請求項1】
カルシウムを最少で約40mg/L含む硬水での石膏スラリー中における泡安定化組成物であって、約0.2から約3.0のエトキシ基を有する親水性部と、炭素数8のアルキル鎖長を約20〜約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2から約20%で分布した疎水性部とを有するアルキルエトキシサルフェートでなることを特徴とする泡安定化組成物。
【請求項2】
前記アルキルエトキシサルフェートが、予め混合された石鹸であることを特徴とする請求項1に記載の泡安定化組成物。
【請求項3】
前記アルキルエトキシサルフェートが、1種以上の石鹸の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の泡安定化組成物。
【請求項4】
焼成石膏と水を混合して石膏スラリーを作り、硬水中で安定な泡を加える、のステップを含む硬水での石膏スラリーの形成方法であって、
前記泡が、水、空気および界面活性剤でなり、前記界面活性剤が、約0.2から約3.0のエトキシ基を含む親水性部と、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%で分布した疎水性部を有してなることを特徴とする石膏スラリーの形成方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、予め混合された石鹸であることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項6】
前記石膏スラリーを作るステップは、さらに、より大きな泡コアの形成を促す添加剤を加えることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項7】
前記添加剤が、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤、ナフタレンスルホネート、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項8】
焼成石膏に加えられて石膏スラリーを作る水が、硬水であることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項9】
空気と前記界面活性剤と一緒にして泡を作る水が、硬水であることを特徴とする請求項4に記載の石膏スラリーの形成方法。
【請求項10】
a)焼成石膏と、b)前記焼成石膏に加えられて石膏スラリーを形成する水と、およびc)水、空気、および約0.2から約3.0のエトキシ基を含む親水性部と、炭素数8のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数10のアルキル鎖長を約20%から約60%、炭素数12のアルキル鎖長を約14%から約36%、および炭素数14のアルキル鎖長を約2%から約20%で分布した疎水性部を有してなる界面活性剤を混合して形成され、硬水で安定であり、前記石膏スラリーに加えられる泡とで構成されて、硬水の存在下で形成された石膏パネルであって、
前記泡の入った石膏スラリーが前面と後面それぞれの間で硬化されて、硬化された前面と後面が、仕上げ加工されることを特徴とする石膏パネル。
【請求項11】
前記焼成石膏に加えられて石膏スラリーを形成する水が、硬水であることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項12】
空気と前記界面活性剤と混合して泡を形成する水が、硬水であることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項13】
前記界面活性剤が、予め混合された石鹸であることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項14】
前記石膏スラリーは、さらに、より大きな泡コアの形成を促す添加剤を加えることを特徴とする請求項10に記載の石膏パネル。
【請求項15】
前記添加物は、澱粉、ポリカルボキシレートエーテル分散剤、ナフタレンスルホネート、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項14に記載の石膏パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2011−508720(P2011−508720A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540760(P2010−540760)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086412
【国際公開番号】WO2009/085635
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086412
【国際公開番号】WO2009/085635
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】
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