説明

硬貨の判別装置および判別方法

【課題】10円硬貨と100円硬貨の判別に適し、複数の枚数の同一硬貨が集合した状態で、容器内に乱雑かつ不確定な状態で収容・配置された場合であっても、高い精度で10円硬貨と100円硬貨を判別できる硬貨の判別装置および判別方法を提供する。
【解決手段】この硬貨の判別装置は、硬貨12に対して赤色光または青色光を照射するように発光する発光素子24と、硬貨から反射される赤色光または青色光を受光する受光素子23と、受光素子から出力される受光信号に基づき、赤色光に係る反射率と青色光に係る反射率を計算する反射率演算手段と、2つの反射率の値に基づき反射率比を計算する反射率比演算手段と、反射率比と所定値との大小関係に基づき硬貨の種類を判別する判別手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨の判別装置および判別方法に関し、特に、券売機用つり銭カセット等に装備されるつり銭誤補給防止装置等に適した硬貨の判別装置および判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨判別装置に利用される色判別装置が提案されている(特許文献1)。この色判別装置は、硬貨から反射された反射光に基づいて当該硬貨の色を判別し、硬貨種を判別する。
【0003】
この色判別装置は、発光素子から発せられる照明光を硬貨に照射し、硬貨の所定の検出範囲から反射された反射光に基づいて硬貨の色を判別するものであり、さらに当該反射光を、赤色光、緑色光、青色光ごとに同時に受光して、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの強度に応じた第1〜第3の電気信号を出力する受光素子と、第1〜第3の電気信号のうちの1つの電気信号を基準電気信号として、基準電気信号を除く第1〜第3の電気信号の大きさを増幅して出力する第1および第2の差動増幅器、第1および第2の差動増幅器からの出力信号の差分を増幅して出力する第3の差動増幅器を備えるように構成される。
この色判別装置によれば、発光素子からの照明光が硬貨に照射され、その反射光が受光素子において受光されるとき、受光素子では、反射光が赤色光、緑色光、青色光の各波長成分ごとに同時に受光され、それぞれの波長成分の強度に応じた第1〜第3の電気信号が出力される。さらに、第1と第2の差動増幅器により基準電気信号を基準とした他の2つの電気信号の大きさが増幅して出力され、第3の差動増幅器によってそれら大きさの差分が増幅して出力される。このように、同時に受光された3つの波長成分のうち1つの波長成分を基準とした他の2つの波長成分の相対値を比較して出力することで、硬貨の位置や向きが変動した場合、硬貨に汚れが付着する場合でも、異なる硬貨の色の差異を精度よく判別することができる。
【0004】
また特許文献2は紙幣のカラー検出装置を開示している。この紙幣のカラー検出装置によれば、紙幣がある程度以上赤みがかっているか、または緑がかっているかを検出することができる装置である。このカラー検出装置では、正の半サイクルで発光する緑の発光素子と、負の半サイクルで発光する赤の発光素子と、これらの光を受ける受光素子を利用している。受光素子からの出力信号のレベルを増幅する増幅器と、増幅器からの出力信号を発振器の信号で位相検波する検波回路とを備え、当該検波信号に基づいて紙幣の色に赤あるいは緑の傾向があるとき、これを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−79970公報
【特許文献2】特公昭58−9478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される硬貨判別に利用される色判定装置によれば、実施例の説明から明らかなように、検知装置部の構成は、発光素子と三色の受光素子とを所定の配置関係で設けた素子ユニットを備え、当該素子ユニットに対して、予め決められた所定の水平姿勢に検知対象の1枚の硬貨を配置するようにしている。発光素子から出射された光は、水平姿勢の硬貨の表面に対して一定の角度(垂直角度も含む)で照射し、硬貨の表面から反射した光はほぼ受光素子の受光面に垂直に入射するようになっている。そして波長の異なる三色の光を利用して硬貨の表面の色の差異を検知することにより硬貨の種類を判別する用にしている。
そのため、検知対象である硬貨が、複数枚の同一硬貨(10円硬貨または100円硬貨)が集合した状態であって、さらに容器内にて乱雑でかつ不確定な収容・配置の状態である場合には、硬貨の種類を判別することは極めて困難である。
【0007】
特許文献2に開示されるカラー検出装置は、紙幣の色が赤または緑に片寄っていることを検出するための物であるから、10円硬貨と100円硬貨の硬貨の判別には使用することは非常に困難である。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、10円硬貨と100円硬貨の判別に適し、複数または多数の枚数の同一硬貨が集合した状態で、容器内に乱雑かつ不確定な状態で収容・配置された場合であっても、高い精度で10円硬貨と100円硬貨を判別することができる硬貨の判別装置および判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る硬貨の判別装置および判別方法は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
本発明に係る第1の硬貨の判別装置は、検知対象の硬貨に対して赤色光または青色光を照射するように発光する発光素子と、硬貨から反射される赤色光または青色光を受光する受光素子と、受光素子から出力される受光信号に基づき、赤色光に係る反射率と青色光に係る反射率を計算する反射率演算手段と、2つの反射率の値に基づき反射率比を計算する反射率比演算手段と、反射率比と所定値との大小関係に基づき硬貨の種類を判別する判別手段とを備えることで特徴づけられる。
【0011】
上記の硬貨の判別装置では、硬貨センサ部として青色光(短波長光)と赤色光(長波長光)を利用し、その反射光に基づいて硬貨の種類を色相で判別するようにし、青色光と赤色光のそれぞれの反射率の違いは、10円硬貨と100円硬貨との間では明確であるので、その違いは硬貨が任意の角度で傾いていたり、多数の硬貨が乱雑な配置状態になっていたとしても明確な違いとして検出することができる。
【0012】
第2の硬貨の判別装置は、上記の構成において、好ましくは、検知対象の硬貨は、容器内に乱雑状態に収容された複数の同種類の硬貨であることを特徴とする。
【0013】
第3の硬貨の判別装置は、上記の構成において、好ましくは、3つの発光素子と1つの受光素子を備える光学式センサを、その発光受光面を硬貨に向けて設け、光学式センサの中央部に受光素子を配置し、この受光素子の周りに等間隔で3つの発光素子を配置し、光学式センサの発光受光面に拡散フィルタ部材を設けたことを特徴とする。
【0014】
第4の硬貨の判別装置は、上記の構成において、好ましくは、容器はつり銭硬貨カセットであり、つり銭硬貨カセットは硬貨補給装置に装填され、硬貨補給装置に装着された硬貨計数機の硬貨放出口から、つり銭硬貨カセットに所定枚数の硬貨を補給するように構成され、硬貨補給装置に装填した状態で、硬貨補給後に、つり銭硬貨カセットに収容された硬貨の種類を、光学式センサと反射率演算手段と反射率比演算手段と判別手段によって判別するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る硬貨の判別方法は、検知対象の硬貨に対して赤色光または青色光を照射するステップと、硬貨から反射される赤色光または青色光を受光するステップと、受光ステップで得られた受光信号に基づき、赤色光に係る反射率と青色光に係る反射率を計算するステップと、2つの反射率の値に基づき反射率比を計算するステップと、反射率比と所定値との大小関係に基づき硬貨の種類を判別するステップと、を備えることで特徴づけられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る硬貨の判別装置および判別方法によれば、青色光(短波長光)と赤色光(長波長光)を利用し、その反射光に関して青色光と赤色光のそれぞれの反射率の違いに基づいて硬貨の種類を色相で判別するようにしたため、10円硬貨と100円硬貨の種別を明確に区別することができ、硬貨の配置姿勢が任意の角度で傾いていたり、多数の硬貨が乱雑な配置状態になっていたとしても10円硬貨と100円硬貨の種別を明確な違いとして検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る硬貨の判別装置の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る硬貨の判別装置の硬貨センサ部の要部を示す平面図である。
【図3】容器の底面の穴周辺の部分縦断面図および硬貨センサ部についての図2で示したA−A線で切った縦断面図である。
【図4】硬貨センサ部の電気回路の構成を示す回路図である。
【図5】硬貨判別処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】10円硬貨(A)と100円硬貨(B)の各々について特定波長光とその反射率との関係を表すグラフである。
【図7】本発明に係る硬貨の判別装置を適用した硬貨補給装置(硬貨計数機装着型硬貨補給装置)の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る硬貨の判別装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1〜図5に従って本発明に係る硬貨の判別装置の第1の実施形態を説明する。
【0020】
図1において、11は複数(または多数)の硬貨を収容する容器である。容器11の内に同一種類の複数の硬貨12が収容されている。容器11は、好ましくはその上壁部に、図1中左右方向(D)へスライド可能な蓋部13を開くことにより開放される硬貨補給口14を有している。同一種類の複数の硬貨12は硬貨補給口14を通して上方から落下状態で容器11の中に補給される。従って、容器11内に収容された複数の硬貨12は乱雑な状態で収容されている。ここで「乱雑な状態」とは複数の硬貨12の各々がきちんと整理された状態で配置されるのではなく、補給時の落下により成り行きで自然に収容された状態を意味する。
【0021】
なお、容器11内に補給され収容される同一種類の複数の硬貨12は、10円硬貨または100円硬貨である。従って、本発明による硬貨の判別装置によれば、容器11内に収容された硬貨が10円硬貨であるか、または100円硬貨であるかが判別される。
【0022】
硬貨を収容する容器11は、携帯型の容器であり、硬貨を収容した状態で任意の場所に搬送することができる。容器11は、例えば、券売機等にセットされるつり銭カセットである。
【0023】
上記の容器11に対して硬貨センサ部21が配置される。硬貨センサ部21は容器11の底面15の下側に所定の距離で配置される。硬貨センサ部21は、容器11の底面15に形成された穴16に対して、そのセンサ面(発光受光面)22が対向するように配置される。硬貨センサ部21は、発光素子(発光LED)と受光素子(フォトダイオード)を内蔵する光学式センサである。容器11の底面15に形成された穴16は、硬貨観測用の穴である。穴16の直径は、硬貨12が下方に落下しない程度の大きさに設定される。穴16では、通常的に、乱雑な状態で収容される硬貨12に関して、様々な収容態様の少なくとも1枚の硬貨12がその外側から視認される。この場合、一般的には例えば図3に示すように、2枚の硬貨12が重なった状態で視認される。図3において、下側に位置する左側の硬貨12の下面は水平な状態にあり、上側に位置する右側の硬貨12の下面は傾斜した状態にある。
【0024】
硬貨センサ部21の内部構造を図2と図3に示す。硬貨センサ部21は、平面形状が円形であるセンサ容器25の中央部の穴の中に例えば1つの受光素子23を配置し、さらに当該受光素子23の周囲のリング形状の凹所の中に等角度の間隔で例えば3つの発光素子24を配置している。3つの発光素子24は、その光照射方向がセンサ容器25の中心軸25Aに向くように所要の角度だけ傾斜させて配置している。3つの発光素子24の各々は赤色に発光するLEDと青色に発光するLEDを含んでいる。従って各発光素子24は、赤色の光または青色の光を選択的に発光することができる構成を有している。図3では、硬貨センサ部21のセンサ面(発光受光面)22は容器11の穴16に対面している。図3に示すように、硬貨センサ部21のセンサ容器25の上面には拡散フィルタ部材26が配置されている。拡散フィルタ部材26は、光を拡散させるフィルム状の拡散板であり、好ましくは日東樹脂工業株式会社製の製品(CLAREX(登録商標)、CR−IIIC)が使用される。拡散フィルタ部材26は、中央部に配置された円形の拡散フィルム26aと、周囲部に配置されるリング形状の拡散フィルム26bとから構成されている。円形の拡散フィルム26aは受光素子23が配置される穴の開口部を覆い、リング形状の拡散フィルム26bは3つの発光素子24が配置されるリング形状の凹所の開口部を覆っている。なお図2では、硬貨センサ部21のセンサ面における拡散フィルタ部材26は取り除かれている。硬貨センサ部21の発光受光面22に拡散フィルタ部材26を設けることにより、誤判別の原因となっていた正反射を防止することができる。
【0025】
硬貨センサ部21の3つの発光素子24の発光動作は、コントローラ(制御部)27から出力される発光信号で制御される。3つの発光素子24を、例えば、最初に赤色に発光させ、その後に赤色発光を消灯し、青色に発光させる。それを設定された一定の時間で繰り返す。赤色光の発光および青色光の発光は、一定時間を継続させてもよいし、点滅させてもよい。コントローラ27の内部には発光素子駆動部を備えている。
【0026】
図4は硬貨センサ部21の電気回路の構成を示す。硬貨センサ部21において、3つの発光素子24の各々は赤色LED28と青色LED29を有し、受光素子23はフォトダイオード(PD)から構成されている。コントローラ27は、3つの発光素子24の各々の赤色LED28に共通して給電を行う出力線31と、3つの発光素子24の各々の青色LED29に共通して給電を行う出力線32とを備えている。また受光素子23が光を受けて電流を生じると、入力線33を経由してコントローラ27に流れ込む。
【0027】
発光素子24の発光動作で生じた赤色光または青色光は、拡散フィルタ部材26の拡散フィルム26bを通過して穴16の領域に照射され、当該赤色光等は穴16から露出する硬貨12の表面で反射される。硬貨12の表面で反射された赤色光または青色光は、拡散フィルタ部材26の拡散フィルム26aを通過して硬貨センサ部21の受光素子23により受光される。こうして、硬貨センサ部21によって、容器11の穴16から外側に臨む2つの硬貨12の表面状態を光学的にかつ非接触にて検出することができる。コントローラ27内の信号処理部41では、硬貨センサ部21で検出された受光信号により、後述するごとき赤色と青色の長短2波長の光の反射率比特性に基づいて、穴16から露出する硬貨12の種類が10円硬貨であるか、または100円硬貨であるかを判別する。信号処理部41はマイコン等で構成されており、メモリ42を備えている。
【0028】
次に、図5に示したフローチャートに基づいて、コントローラ27における信号処理部41による硬貨12の種類の判別について説明する。
【0029】
本実施形態において上記の容器11は例えばつり銭カセット(以下「つり銭カセット11」と記す)であるとする。このつり銭カセット11は、硬貨補給装置に装填され、当該硬貨補給装置によって多数のつり銭硬貨が内部に補給される。つり銭カセット11は、予め、10円硬貨用つり銭カセットあるいは100円硬貨用つり銭カセットと決められている。従って、つり銭カセット11には、予め定められた種類の硬貨が補給されなければならない。本発明に係る硬貨の判別装置は、好ましい利用の形態として、硬貨補給装置に付設されるように構成されており、硬貨補給装置によってつり銭カセットに補給されたつり銭硬貨の種類が、つり銭カセット11に予め定められた硬貨の種類と一致するか否かを判断するのに利用される。図5に示したフローチャートでは、硬貨補給装置によるつり銭硬貨の補給プロセスの中に、本発明に係る硬貨の判別装置に基づく硬貨の種類判別のプロセス(判別方法)が組み込まれている。
【0030】
図7に上記の硬貨補給装置の一例を全体図として示す。硬貨補給装置51において、下側部分52に本発明に係る硬貨の判別装置が組み込まれており、上側部分53に硬貨補給を行う装置部分が設けられている。さらに硬貨補給装置51は、その上側部分53に硬貨計数機54を装備している。実際上、硬貨補給装置51と硬貨計数機54とは実質的に一体のものとして構成されている。すなわち、硬貨計数機54を備えた硬貨補給装置51は、つり銭カセット11に必要な硬貨を補給すると同時に、補給された硬貨の枚数を計数するという機能を併せて備えている。つり銭カセット11は、硬貨の判別装置が設けられた硬貨補給装置51の下側部分52に装填されている。このときつり銭カセット11の上面に開放された硬貨補給口14を有している。当該硬貨補給口14の上側に、硬貨補給装置51の硬貨放出口55が設けられている。56は操作部であり、各種の操作ボタンが配備されている。
【0031】
硬貨補給装置51に本発明に係る硬貨の判別装置が組み込まれるとき、上記のコントローラ27の信号処理部41の処理機能は、好ましくは、硬貨補給装置51におけるマイコンによる処理部の一部機能として構成される。
【0032】
図5において、最初のステップS11は、容器11である上記のつり銭カセットを硬貨補給装置に装填するステップである。当該装填は、通常、係員によって行われる。硬貨補給装置は、上記のマイコンによる処理部において、装填されたつり銭カセット11の種類が10円硬貨用カセットかあるいは100円硬貨用カセットかを判別するつり銭カセット種判別機能を有している。硬貨補給装置の当該つり銭カセット種判別機能に基づいてつり銭カセットの硬貨種別が判別され、かつ硬貨補給装置の処理部に付設されたメモリに判別結果(つり銭カセット種)が記憶される(ステップS12)。その後、硬貨補給装置による硬貨補給機能に基づいて、つり銭カセット11の上面における開放された硬貨補給口14からカセット内部に硬貨が補給される(ステップS13)。
【0033】
次に、硬貨補給装置に付設された硬貨の判別装置に基づく検査が開始される。この検査は、ステップS13によって補給された硬貨の種類が何であるかを検査するプロセスである。ステップS14で、硬貨補給装置に備えられた検査開始ボタンがオンされる。検査開始ボタンをオンすることにより、硬貨の判別装置の硬貨判別機能が動作する。
【0034】
検査開始ボタンが押し下げられオンされると、コントローラ27の出力線31から駆動信号が出力され、先ず硬貨センサ部21の3つの発光素子24を同時に動作させ、最初に赤色LED28を点灯させる(ステップS15)。点灯した赤色LED28から発する赤色光は、つり銭カセット11の底面15に形成された穴16に照射され、穴16から露出する硬貨12に反射して受光素子23に受光される。その結果、受光素子23からは受光信号が出力される。受光素子23の受光信号は入力線33を経由してコントローラ27の信号処理部41に供給される。コントローラ27の信号処理部41では、赤色光に関する反射率を例えば3回計測し、その平均値(R)を計算して求める(ステップS16)。求められた平均値(R)はメモリ42に保持される。
【0035】
次のステップS17では、コントローラ17からの出力線31,32を経由した駆動信号のオン・オフに基づいて、硬貨センサ部21の3つの発光素子24の赤色LED28を消灯し、青色LED29を点灯させる。
【0036】
その後、点灯した青色LED29から発する青色光は、つり銭カセット11の底面15に形成された穴16に照射され、穴16から露出する硬貨12に反射して受光素子23に受光される。受光素子23から出力される受光信号は入力線33を経由してコントローラ27の信号処理部41に供給される。コントローラ27の信号処理部41では、青色光に関する反射率を例えば3回計測し、その平均値(B)を計算して求める(ステップS18)。求められた平均値(B)はメモリ42に保持される。
【0037】
その後、硬貨センサ部21の3つの発光素子24の青色LED29は消灯させる(ステップS19)。
【0038】
次いで、赤色光に関する反射率(R)と青色光に関する反射率(B)に基づいて反射率比(H)を計算する(ステップS20)。反射率比(H)を計算する式はH=(R−C)/(B−C)である。ここで「C」は最暗時でのそれぞれの色の測定値である。そして計算して求めた反射率比(H)が、予め設定された閾値(L)以上であるか否かを判断し(ステップS21)、当該判断ステップS21でYESのときには10円硬貨であると判断し(ステップS22)、NOのときには100円硬貨であると判断する(ステップS23)。
【0039】
上記において、閾値(L)は次のように定められる。この硬貨の種類の判別機能によれば、硬貨の色相(スペクトル単色光の波長)で判別するようにしている。この根拠は次の通りである。10円硬貨と100円硬貨の各々について特定波長光とその反射率との関係を表すと、図6の(A),(B)に示すグラフのようになる。青色帯(短波長光)の反射率(B)に基づいて赤色帯(長波長)の反射率(R)を正規化した数値を、上記の「反射率(H)」と仮定したとき、下記の表1に示すように10円硬貨と100円硬貨とでは大幅に異なることが確認できる。
【0040】
【表1】

【0041】
上記の表1に示された10円硬貨の反射率の値「4.0」と100円硬貨の反射率の値「1.8」との間において、これらを適切に識別できる閾値(L)が適宜に定められる。
【0042】
上記により、ステップS21,S22,S23によって、反射率(H)が閾値(L)以上であるときには10円硬貨と判別され、反射率(H)が閾値(L)より小さいときには100円硬貨であると判別される。以上により、本発明に係る硬貨の判別装置に基づく硬貨種類の判別機能が終了する。
【0043】
上記のステップS22,S23の後、硬貨の判別装置に基づく硬貨種類の判別結果と、先のステップS12で得られたつり銭カセット種の記憶結果との一致または不一致が判断される(ステップS24,S25)。ステップS22に続く判断ステップS24においてYESのときには正常補給と判断され(ステップS26)、NOのときには誤補給と判断される(ステップS27)。ステップS23に続く判断ステップS25においてYESのときには正常補給と判断され(ステップS26)、NOのときには誤補給と判断される(ステップS27)。
【0044】
上記の第1実施形態に係る硬貨の判別装置および判別方法によれば、硬貨センサ部21として青色光(短波長光)と赤色光(長波長光)を利用し、その反射光に基づいて硬貨の種類を色相で判別するようにした。青色光と赤色光のそれぞれの反射率の違いは、10円硬貨と100円硬貨との間では明確であり、その違いは硬貨がきちんとした姿勢でなくても、すなわち任意の角度で傾いていたり、多数の硬貨が乱雑な配置状態になっていたとしても明確な違いとして検出することができる。このため、つり銭カセット等の容器11内に乱雑状態で収容される硬貨であってもその種別を明確に識別することができる。
【0045】
図8に、本発明の第2実施形態に係る硬貨の判別装置の要部構成を示す図である。上記の実施形態では、容器11の底面15に形成された穴16から下方に臨む例えば2つの硬貨の色相に基づいて当該硬貨の種類を検出する構成としたが、第2の実施形態では、トレイ61の上に乱雑状態で配置される多数の硬貨12を、上方に設置した硬貨センサ部21、およびコントローラ27に基づいて検出するように構成したものである。このような構成によっても、前述した第1の実施形態と同様に、トレイ61上に置かれた多数の同一種の硬貨12の当該種類を明確に判別することができる。
【0046】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る硬貨の判別装置および判別方法は、券売機等にセットされるつり銭カセット等の容器に補給される硬貨の種類が当該容器に合致した正しいものか否かを判断するのに利用される。
【符号の説明】
【0048】
11 容器
12 硬貨
13 硬貨補給口
16 穴
21 硬貨センサ部
22 センサ面(発光受光面)
23 受光素子
24 発光素子
25 センサ容器
26 拡散フィルタ部材
27 コントローラ
28 赤色LED
29 青色LED
41 信号処理部
51 硬貨補給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象の硬貨に対して赤色光または青色光を照射するように発光する発光素子と、
前記硬貨から反射される前記赤色光または前記青色光を受光する受光素子と、
前記受光素子から出力される受光信号に基づき、前記赤色光に係る反射率と前記青色光に係る反射率を計算する反射率演算手段と、
2つの前記反射率の値に基づき反射率比を計算する反射率比演算手段と、
前記反射率比と所定値との大小関係に基づき前記硬貨の種類を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とする硬貨の判別装置。
【請求項2】
検知対象の前記硬貨は、容器内に乱雑状態に収容された複数の同種類の硬貨であることを特徴とする請求項1に記載の硬貨の判別装置。
【請求項3】
3つの前記発光素子と1つの前記受光素子を備える光学式センサを、その発光受光面を前記硬貨に向けて設け、
前記光学式センサの中央部に前記受光素子を配置し、この受光素子の周りに等間隔で前記3つの発光素子を配置し、
前記光学式センサの前記発光受光面に拡散フィルタ部材を設けた、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の硬貨の判別装置。
【請求項4】
前記発光素子と前記受光素子は、容器の底部に形成された開口部を通して前記硬貨に対向することを特徴とする請求項2に記載の硬貨の判別装置。
【請求項5】
前記光学式センサの発光受光面は、容器の底部に形成された開口部を通して前記硬貨に対向することを特徴とする請求項3に記載の硬貨の判別装置。
【請求項6】
前記容器はつり銭硬貨カセットであり、
前記つり銭硬貨カセットは硬貨補給装置に装填され、
硬貨補給装置に装着された硬貨計数機の硬貨放出口から、前記つり銭硬貨カセットに所定枚数の前記硬貨を補給するように構成され、
前記硬貨補給装置に装填した状態で、硬貨補給後に、前記つり銭硬貨カセットに収容された前記硬貨の種類を、前記光学式センサと前記反射率演算手段と前記反射率比演算手段と前記判別手段によって判別するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の硬貨の判別装置。
【請求項7】
検知対象の硬貨に対して赤色光または青色光を照射するステップと、
前記硬貨から反射される前記赤色光または前記青色光を受光するステップと、
前記受光ステップで得られた受光信号に基づき、前記赤色光に係る反射率と前記青色光に係る反射率を計算するステップと、
2つの前記反射率の値に基づき反射率比を計算するステップと、
前記反射率比と所定値との大小関係に基づき前記硬貨の種類を判別するステップと、
を備えることを特徴とする硬貨の判別方法。
【請求項8】
検知対象の前記硬貨は、容器内に乱雑状態に収容された複数の同種類の硬貨であることを特徴とする請求項7に記載の硬貨の判別方法。
【請求項9】
前記発光素子および前記受光素子と、前記硬貨との間に拡散フィルタ部材を設けて光を拡散させるようにしたことを特徴とする請求項7または8に記載の硬貨の判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−95922(P2011−95922A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248095(P2009−248095)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】