硬貨処理装置
【課題】投入硬貨が、一時保留された硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作を防止することの可能な硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部10と、硬貨識別部10によって識別された硬貨を硬貨通路A上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける第1保留部213と、硬貨通路Aにおいて第1保留部213の上流に設けられ、硬貨識別部10によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を第1保留部213に振分ける第2振分部202とを備え、第2振分部202のガイド202bは、保留許容枚数の硬貨が第1保留部213に保留されている状態において、投入硬貨の種別が前記所定種別であると硬貨識別部10によって識別されると、第2振分部202から第1保留部213までの投入硬貨の通過を一時的に規制する。
【解決手段】投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部10と、硬貨識別部10によって識別された硬貨を硬貨通路A上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける第1保留部213と、硬貨通路Aにおいて第1保留部213の上流に設けられ、硬貨識別部10によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を第1保留部213に振分ける第2振分部202とを備え、第2振分部202のガイド202bは、保留許容枚数の硬貨が第1保留部213に保留されている状態において、投入硬貨の種別が前記所定種別であると硬貨識別部10によって識別されると、第2振分部202から第1保留部213までの投入硬貨の通過を一時的に規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に内蔵され、投入された硬貨を一時保留する構造を備えた硬貨処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の硬貨処理装置として、投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部と、硬貨識別部によって識別された硬貨を硬貨通路上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける保留部と、硬貨通路において保留部の上流に設けられ、硬貨識別部によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を保留部に振分ける振分部とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この硬貨処理装置では、所定種別の硬貨(例えば100円硬貨)が投入されると、該投入硬貨が振分部によって保留部に振分けられ、硬貨通路を自由落下して保留部に一時保留される。また、保留部は、複数(例えば2枚)の100円硬貨を保留可能に構成されており、2枚の100円硬貨が保留されている状態で3枚目の100円硬貨が投入された場合に、2枚の保留100円硬貨を返却口、金庫又は硬貨収納部等の所定位置に振分けるとともに、3枚目に投入された100円硬貨を一時保留するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−99949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の硬貨処理装置では、2枚の100円硬貨が保留されている状態で3枚目の100円硬貨が投入されると、保留硬貨が所定位置に振分けられる前に投入硬貨が保留硬貨に追い着くことにより、投入硬貨が保留硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作が発生し得る。これにより、自動販売機等に搭載した際に安定した運用を実現することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、投入硬貨が、一時保留された硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作を防止することの可能な硬貨処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部と、硬貨識別部によって識別された硬貨を硬貨通路上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける保留部と、硬貨通路において保留部の上流側に設けられ、硬貨識別部によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を保留部に振分ける振分部と、保留許容枚数の硬貨が保留部に保留されている状態において、投入硬貨の種別が前記所定種別であると硬貨識別部によって識別されると、振分部から保留部までの投入硬貨の通過を一時的に規制する規制部とを備えている。
【0008】
これにより、保留許容枚数の硬貨が保留部に保留されている状態において、保留部に保留される硬貨が新たに投入されると、振分部から保留部までの投入硬貨の通過が一時的に規制されることから、投入硬貨が保留部に到達するタイミングと保留硬貨が所定位置に振分けられるタイミングとをずらすことが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、投入硬貨が保留部に到達するタイミングと保留硬貨が所定位置に振分けられるタイミングとをずらすことができるので、投入硬貨が保留硬貨に追い着いて該保留硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作を防止することができ、自動販売機等に搭載した際に安定した運用の実現を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す硬貨処理装置の背面図
【図2】硬貨処理装置の硬貨識別部及び振分部を示す内部構造図
【図3】硬貨処理装置の振分部及び硬貨収納部の構造を示す斜視図
【図4】第2振分部の動作を示す断面図
【図5】第1保留部の動作を示す断面図
【図6】保留許容枚数の硬貨が第1保留部に保持された状態を示す要部拡大図
【図7】返却指令時における第2保留部の動作を示す断面図
【図8】第2チューブ収納時における第2保留部の動作を示す断面図
【図9】金庫収納時における第2保留部の動作を示す断面図
【図10】硬貨処理装置の駆動制御回路を示すブロック図
【図11】100円硬貨処理制御を示すフロー図
【図12】投入硬貨の通過を一時的に規制する際の第1保留部の動作を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図12は本発明に係る硬貨処理装置の一実施形態を示すもので、図1は硬貨処理装置の背面図、図2は硬貨処理装置の硬貨識別部及び硬貨振分部を示す内部構造図、図3は硬貨処理装置の硬貨振分部及び硬貨収納部の構造を示す斜視図、図4は第2振分部の動作を示す断面図、図5は第1保留部の動作を示す断面図、図6は保留許容枚数の硬貨が第1保留部に保持された状態を示す要部拡大図、図7は返却指令時における第2保留部の動作を示す断面図、図8は第2チューブ収納時における第2保留部の動作を示す断面図、図9は金庫収納時における第2保留部の動作を示す断面図、図10は硬貨処理装置の駆動制御回路を示すブロック図、図11は100円硬貨処理制御を示すフロー図、図12は投入硬貨の通過を一時的に規制する際の第1保留部の動作を示す断面図である。
【0012】
まず、硬貨処理装置の概略構成を図1乃至図3を参照して説明する。即ち、この硬貨処理装置1は例えば自動販売機に搭載されており、硬貨投入口1aから投入された硬貨(10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨)を識別する硬貨識別部10と、硬貨識別部10で識別された硬貨を振り分ける硬貨振分部20と、硬貨振分部20で振り分けられた硬貨を収納する硬貨収納部30とから構成されており、購入商品に対する金銭処理を行っている。この硬貨収納部30は硬貨処理装置1の背面に設置されたリヤカバー1bの内側に配置されており、このリヤカバー1bを開閉することにより硬貨収納部30へのメンテナンスを行うことができる。
【0013】
硬貨識別部10は通常所定周波数の信号を投入硬貨に発信し、その受信周波数の変化に基づき、正貨、偽貨、更には10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨の種別を識別している。
【0014】
通過検出部11は周知の磁気センサ等から構成されており、後述の第1振分部201の裏側に設けられている。また、通過検出部11は、硬貨識別部10によって正貨と識別された硬貨が回動フラッパ201aの裏側を通過したことを検出する。
【0015】
硬貨振分部20は、コイン転動の上手側から下手側に向かって、第1〜第8の振分部201〜208を有している。
【0016】
ここで、第1振分部201は、回動式の回動フラッパ201aを有し、この回動フラッパ201aをソレノイドSC1で回動する。ソレノイドSC1が非励磁状態(OFF)のときは(投入硬貨が偽貨と識別されたときは)、投入硬貨が回動フラッパ201aの前面を通り、返却通路(図示省略)を通じて返却口に返却される。一方、励磁状態(ON)のときは(投入硬貨が正貨と識別されたときは)、投入硬貨を回動フラッパ201aの裏側に通し、第2振分部202に向かって落下させる。このように、第1振分部201は投入硬貨の真偽に基づき硬貨を振分けている。
【0017】
第2振分部202は、図4(a)(b)に示すように、第1振分部201で正貨と判定された硬貨を100円硬貨とその他の10円硬貨、50円硬貨及び500円硬貨に振分けるものである。この第2振分部202は二股に分岐した前後のガイド202a,202bを有し、これをソレノイドSC2で硬貨通路Aから出没させている。このソレノイドSC2が非励磁(OFF)のときは、図4(a)に示すように、10円硬貨、50円硬貨及び500円硬貨を後方のガイド202bに転動させて第3振分部203に向かって案内する。一方、励磁状態(ON)のときは図4(b)に示すように、第2振分部202を後方に向かって引かせる。これにより、100円硬貨を前方のガイド202aに落下させて第4振分部204に向かって案内している。なお、10円硬貨のコインチューブCT10や50円のコインチューブCT50が満杯の場合には、前述と同様の操作により第4振分部204に向かって10円硬貨及び50円硬貨を案内する。なお、第2振分部202は、本願請求項でいう振分部を構成している。
【0018】
第3振分部203は、第2振分部202で振り分けられた10円硬貨及び50円硬貨と500円硬貨に振分けるものである。この第3振分部203は回転軸203aから上手側に向かって延在した回動フラッパ203bを有し、この回動フラッパ203bの中央寄りの側面ピン203cにソレノイドSC3を連結し、回動フラッパ203bを回動する。また、この第3振分部203の回転軸203aから下手側には第1の500円硬貨一時保留部211が形成されている。この一時保留部211は回転軸203aから硬貨通路Aの下手側に向かって回動アーム211aが延在されており、この回動アーム211aの先端には硬貨通路Aに向かって突出した保留突起211bを有する。
【0019】
ここで、ソレノイドSC3が非励磁状態(OFF)のときは(500円硬貨を振り分けるときは)回動フラッパ203bが硬貨通路Aから離隔し硬貨通路Aを開放する一方、回動アーム211aが硬貨通路Aに向かって回転し保留突起211bの先端が硬貨通路Aを遮断する。これに対して、ソレノイドSC3が励磁状態(ON)のときは(10円及び50円硬貨を振り分けるとき)、回動フラッパ203bが硬貨通路Aに向かって回転し硬貨通路Aを閉鎖する一方、回動アーム211aが硬貨通路Aから離隔するよう回転し、保留突起211bによる硬貨通路Aの遮断を解除する。
【0020】
また、この硬貨通路Aで回転軸203aの近傍には、第2の500円硬貨一時保留部212が硬貨通路Aから出没自在に設置されている。この第2の500円硬貨一時保留部212はソレノイドSC4が非励磁状態(OFF)のときは硬貨通路Aから突出して硬貨の移動を規制し、一方、励磁状態(ON)のときは、硬貨通路Aから後退して硬貨が硬貨通路Aを移動できるようにしている。
【0021】
第4振分部204は第2振分部202で振り分けられた100円硬貨を振分けるものである。この第4振分部204は回動式の回動フラッパ204aを有し、この回動フラッパ204aを前記第2の500円硬貨一時保留部212と同様にソレノイドSC4で回動している。ここで、ソレノイドSC4が励磁状態(ON)のときは、回動フラッパ204aが金庫通路B(回動フラッパ204aの裏側)を開放する位置に回動して100円硬貨を金庫通路Bに導き、図示しない金庫に導入する。一方、非励磁状態(OFF)のときは回動フラッパ204aが金庫通路Bを閉鎖しており、100円硬貨を回動フラッパ204aの表面側に転動させ、下方に向かって落下させる。なお、10円硬貨のコインチューブCT10や50円のコインチューブCT50が満杯の場合には、前述と同様の操作により金庫通路Bに向かって10円硬貨及び50円硬貨を案内する。
【0022】
第5振分部205は、第3振分部203及び各一時保留部211,212を通って転動した500円硬貨を、返却口(図示省略)に連通する返却通路Cと硬貨収納部(金庫通路B及び500円用のコインチューブCT500)に振分けるものである。この第5振分部205は回動式の回動フラッパ205aを有し、この回動フラッパ205aをソレノイドSC5で回動する。ここで、ソレノイドSC5が非励磁状態(OFF)のときは、500円硬貨を後述する第8振分部208に導く。一方、励磁状態(ON)のときは、回動フラッパ205aが第8振分部208側への通路を閉鎖するよう回転し、500円硬貨を返却通路Cを通じて返却口に導く。
【0023】
第6振分部206、第7振分部207及び第8振分部208は、ソレノイドSC6により制御されるもので、このソレノイドSC6に連結する連結板209に一体に形成されている。
【0024】
まず、第6振分部206を説明する。第6振分部206は、第4振分部204で振分けられた100円硬貨を、100円用の第1のコインチューブ(以下、第1チューブという)CT100ー1と後述する第2の100円硬貨保留部(以下、第2保留部という)214に振分けるもので、二股に分岐した前後のガイド206a,206bをソレノイドSC6で硬貨通路Aから出没させている。また、この前側のガイド206aの上端近傍には100円硬貨を保留する保留ピン213aを設けている。この保留ピン213aは、ソレノイドSC4にて、硬貨通路Aに出没するよう形成されている。
【0025】
ここで、各ソレノイドSC4,SC6が非励磁(OFF)のときは、図5(a)に示すように、保留ピン213aが硬貨通路Aに突出し、100円硬貨を第6振分部206に保留する。また、この100円硬貨の保留状態で、ソレノイドSC4が励磁(ON)し、かつ、ソレノイドSC6が非励磁となっているときは、図5(b)に示すように保留ピン213aが硬貨通路Aから後退し、保留100円硬貨が後方のガイド206bを転動して第1チューブCT100−1に落下・収納される。更に、同じく100円硬貨の保留状態で、ソレノイドSC6が励磁し、かつ、ソレノイドSC4が非励磁となっているときは、図5(c)に示すように、連結板209がソレノイドSC6により後方に引かれ、保留100円硬貨が前方のガイド206aを転動して第2保留部214に向かって落下する。
【0026】
このように、第6振分部206及び保留ピン213aは、投入された100円硬貨を保留する保留部213(以下、第1保留部213という)として機能するとともに、この保留された100円硬貨を、第1チューブCT100−1又は第2保留部214に振り分ける機能を有している。また、第1保留部213は、図6に示すように、複数枚(本実施形態では2枚)の100円硬貨を硬貨通路A上に保留可能に構成されており、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合即ち2枚の100円硬貨を保留している状態で3枚目の100円硬貨が投入された場合に、2枚の保留100円硬貨を第1チューブCT100−1又は第2保留部214に振分けるようになっている。なお、第1保留部213は、本願請求項でいう保留部を構成している。
【0027】
第7振分部207は、第3振分部203で振り分けられた10円・50円を10円用のコインチューブCT10と50円用のコインチューブCT50に振分けるものである。この第7振分部207は二股に分岐した前後のガイド207a,207bをソレノイドSC6で硬貨通路Aから出没させている。このソレノイドSC6が非励磁(OFF)のときは、10円硬貨を後方のガイド207bに落下させてコインチューブCT10に落下・収納する。一方、励磁状態(ON)のときは、連結板209を後方に引き、これにより、50円硬貨を前方のガイド207aに落下させてコインチューブCT50に落下・収納する。
【0028】
第8振分部208は、500円硬貨を金庫通路B又はコインチューブCT500に振分けるもので、図3に示すように先端に向かって平行に延びる二股の案内隔壁を有する。ここで、ソレノイドSC6が非励磁(OFF)のときは、500円硬貨をコインチューブCT500に導く一方、励磁状態(ON)のときは、500円硬貨を後方の金庫通路Bに導く。
【0029】
以上のように本実施形態に係る硬貨処理装置1において、100円硬貨が投入されたときは、図2に示すように、第1振分部201、第2振分部202、第4振分部204及び第1保留部213を通じて第1チューブCT100−1又は第2保留部214に振分けられる。
【0030】
この第2保留部214の構造を図7を参照して説明する。第2保留部214は第1保留部213の下流側に設置されたもので、上端及び下端が硬貨通路A内に交互に出没するよう、シーソの如く軸支された保留レバー214aを有している。この保留レバー214aはその上端側がソレノイドSC7に連結アーム214bを介して連結しており、ソレノイドSC7が非励磁(OFF)のときは、図7(a)(c)に示すように、保留レバー214aの下端が硬貨通路A内に突出して100円硬貨の落下を規制し、100円硬貨を硬貨通路A内に保留する。一方、ソレノイドSC7が励磁(ON)するときは、図7(b)に示すように、保留レバー214aの下端が硬貨通路Aから離脱して最下位の100円硬貨の落下規制を解除する一方、上端が硬貨通路Aに突出して、最下位から2番目の100円硬貨を硬貨通路A内に保留する。
【0031】
また、この第2保留部214は振分部215を有し、この振分部215により、硬貨通路A内に保留された100円硬貨を、返却通路、第2の100円硬貨チューブ(以下、第2チューブという)CT100−2、或いは、金庫に振分ける。この振分部215は上下に上部フラッパ216と下部フラッパ217とを有し、各フラッパ216,217はそれぞれ下端を軸支するとともに、各ソレノイドSC8,SC9に連結アーム216a,217aを介して連結し、各ソレノイドSC8,SC9の励磁・非励磁により各フラッパ216,217を回動する。
【0032】
ここで、ソレノイドSC8が励磁(ON)し、かつ、ソレノイドSC9が非励磁(OFF)となっているときは、図7に示すように、各フラッパ216,217が時計方向に回転しており、これにより、硬貨通路Aが返却通路に連通した状態となる。また、各ソレノイドSC8,SC9の両者が励磁(ON)しているときは、図8に示すように、フラッパ216が時計方向に回転する一方、フラッパ217が反時計方向に回転しており、これにより、硬貨通路Aが第2チューブCT100−2に連通した状態となっている。更に、ソレノイドSC8が非励磁(OFF)で、かつ、ソレノイドSC9が励磁(ON)してるときは、図9に示すように、各フラッパ216,217が反時計方向に回転しており、これにより、硬貨通路Aが金庫に連通した状態となる。
【0033】
次に、図10を参照して硬貨処理装置1の制御系構成について説明する。
【0034】
硬貨処理装置1は、装置全体を制御するための制御部40を有しており、制御部40はCPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータから構成されている。制御部40には、硬貨識別部10、通過検出部11及びソレノイド駆動回路41が接続されており、硬貨識別部10の識別信号、通過検出部11の検出信号が入力されるようになっている。また、制御部40は、これらの識別信号、検出信号等に基づいて、ソレノイド駆動回路45を介して各ソレノイドSC1〜SC9を駆動制御し、100円硬貨の一時保留制御及び振分け制御を行っている。さらに、制御部40には、タイマ回路40aと、硬貨のカウンタ回路40bとが設けられている。ここで、タイマ回路40aには、各ソレノイドSC1〜SC9がオンしたときの励磁時間が設定され、各ソレノイドSC1〜SC9がオンしたときは、その設定励磁時間に亘って励磁し、その後はオフするように制御される構成となっている。カウンタ回路40bは100円硬貨の投入枚数を計数する構成となっている。
【0035】
なお、制御部40は、自動販売機に設けられた商品選択ボタンや返却レバー等(何れも図示省略)から送信された信号に基づき各ソレノイドSC1〜SC9を駆動制御可能に構成されているが、商品選択ボタンや返却レバーから信号を受信した際の動作については、出願人が提案した特開2002−99949号公報に記載された技術を用いることが可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
また、本実施形態の硬貨処理装置1は、2枚の100円硬貨が第1保留部213に保留されている状態において、3枚目の100円硬貨が投入されると、第2振分部202から第1保留部213までの投入100円硬貨の通過が規制部によって一時的に規制されるように構成されている。ここで、本実施形態では、第2振分部202を、本願請求項でいう規制部として構成している。以下に、100円硬貨が投入された際の硬貨処理装置1の動作について、図11のフロー図を参照して説明する。なお、各ソレノイドSC1〜SC9は、予め非励磁状態(OFF)に設定されている。
【0037】
まず、投入された100円硬貨が偽貨であると硬貨識別部10によって識別された場合には、制御部40は返却処理を行う(ステップS1,S2)。この返却処理について具体的に説明すると、制御部40は、ソレノイドSC1を非励磁状態(OFF)にして、第1振分部201の回動フラッパ201aを待機状態に保持させる。これにより、図2に示すように、投入硬貨が回動フラッパ201aの表側を通り、返却口に返却される。
【0038】
一方、制御部40は、100円硬貨が正貨であると硬貨識別部10によって識別された場合に、この投入硬貨の枚数を計数する(ステップS3)。ここで、投入100円硬貨の枚数が4枚以上のときは、制御部40は前述の返却処理を行う(ステップS4)。その他(投入硬貨が1枚、2枚又は3枚)の場合には、制御部40は、ソレノイドSC1を所定時間励磁(ON)する(ステップS5)。これにより、第1振分部201の回動フラッパ201aが回動し、図2に示すように、100円硬貨が回動フラッパ201aの裏側に導かれる。
【0039】
次に、制御部40は、100円硬貨が回動フラッパ201aの裏側に導かれる際に通過検出部11によって検出されると、タイマ回路40aによる計時処理を開始する(ステップS6)。また、制御部40は、図4(b)に示すように、ソレノイドSC1の励磁(ON)とほぼ同時にソレノイドSC2を所定時間励磁(ON)させる(ステップS7)。これにより、100円硬貨が第2振分部202のガイド202aに落下し、第4振分部204に向かって案内される。ここで、ソレノイドSC4が非励磁状態(OFF)となっているため、回動フラッパ204aが金庫通路Bを閉鎖している。従って、100円硬貨が回動フラッパ204aの表面側に転動して、第1保留部213に導かれる。
【0040】
なお、100円硬貨の投入枚数が2枚の場合には、上記ステップS1、S3、S4、S5、S6、S7の処理が繰返して行われることにより、2枚の100円硬貨が、図6に示すように第1保留部213に保留される(ステップS8)。そして、3枚目の100円硬貨が投入された場合には、制御部40は、上記ステップS7までの処理を行った後に、ソレノイドSC6を励磁(ON)させる(ステップS9)。これにより、第1保留部213に保留されている2枚の100円硬貨が第6振分部206のガイド206aを転動して第2保留部214に向かって落下する。また、制御部40は、3枚目に投入された100円硬貨が通過検出部11によって検出されてから所定時間経過後に(ステップS10)、ソレノイドSC2を非励磁状態(OFF)にする(ステップS11)。ここで、所定時間とは、3枚目に投入された100円硬貨が通過検出部11から第2振分部202まで案内されるまでの時間である。この場合、所定時間経過後のタイミングでソレノイドSC2が非励磁(OFF)になると、図12に示すように、3枚目に投入された100円硬貨が、硬貨通路Aに出現した第2振分部202のガイド202bに接触する。これにより、第1保留部213までの100円硬貨の通過が、第2振分部202によって一時的に規制される。
【0041】
また、制御部40は、所定時間経過後に(ステップS12)、ソレノイドSC1及びソレノイドSC6を非励磁状態(OFF)にする(ステップS13,S14)。これにより、図5(a)に示すように、3枚目に投入された100円硬貨が第1保留部213に保留されることから、投入100円硬貨が2枚の保留100円硬貨とともに第2保留部214に振分けられることがない。
【0042】
このように、保留許容枚数(2枚)の100円硬貨が第1保留部213に保留されている状態において、3枚目の100円硬貨が投入されると、第2振分部202から第1保留部213までの投入硬貨の通過が第2振分部202のガイド202bによって一時的に規制されることから、3枚目に投入された100円硬貨が第1保留部213に到達するタイミングと2枚の保留100円硬貨が第2保留部214に振分けられるタイミングとをずらすことが可能になる。
【0043】
なお、上記フローでは説明を省略したが、ステップS9において、2枚の保留硬貨を第2保留部214ではなく第1チューブCT100−1に落下・収納させるように制御部40を構成してもよい。
【0044】
以上のように本実施形態に係る硬貨処理装置1によれば、投入100円硬貨が第1保留部213に到達するタイミングと保留100円硬貨が第2保留部214に振分けられるタイミングとをずらすことができるので、投入100円硬貨が保留100円硬貨に追い着いて該保留100円硬貨とともに第2保留部214に振分けられるという誤動作を防止することができ、自動販売機等に搭載した際に安定した運用の実現を図ることができる。
【0045】
また、規制部を、硬貨通路に出没するガイド202bからなる第2振分部202により構成したので、投入100円硬貨が保留100円硬貨に追い着いて該保留100円硬貨とともに第2保留部214に振分けられるという誤動作を、既存の構成を用いて防止することができる。従って、既存部に係る新たな部材を必要としないことから、製造コストの低減を図ることができる。
【0046】
さらに、規制部を、硬貨通路Aに出現させたガイド202bを第1保留部213側に振分けられた投入100円硬貨に接触させることにより、投入100円硬貨の通過を一時的に規制するように構成したので、前述した誤動作を、ガイド202bを硬貨通路Aに出現させるという既存の制御内容を用いて防止することができる。従って、制御内容の大幅な改造が不要となることから、製造コストの低減をより一層図ることができる。
【0047】
さらにまた、硬貨通路Aを通過する投入硬貨を検出する通過検出部11を備え、規制部は、投入硬貨が通過検出部11によって検出されると、所定時間経過後に投入硬貨の規制動作を開始するので、投入硬貨が通過するタイミングに合わせて規制動作を行うことができる。
【0048】
なお、上記実施形態は本発明の具体例に過ぎず、本発明が上記実施形態のみに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、第2振分部202を規制部として構成したが、他の部材を規制部として設けてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、一つの通過検出部11を設けたが、複数の通過検出部11を硬貨通路Aに設けて各通過検出部11の硬貨検出タイミングに応じて規制部の規制開始時間を変更するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…硬貨識別部、11…通過検出部、40…制御部、202…第2振分部、202b…ガイド、213…第1保留部、A…硬貨通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に内蔵され、投入された硬貨を一時保留する構造を備えた硬貨処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の硬貨処理装置として、投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部と、硬貨識別部によって識別された硬貨を硬貨通路上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける保留部と、硬貨通路において保留部の上流に設けられ、硬貨識別部によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を保留部に振分ける振分部とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この硬貨処理装置では、所定種別の硬貨(例えば100円硬貨)が投入されると、該投入硬貨が振分部によって保留部に振分けられ、硬貨通路を自由落下して保留部に一時保留される。また、保留部は、複数(例えば2枚)の100円硬貨を保留可能に構成されており、2枚の100円硬貨が保留されている状態で3枚目の100円硬貨が投入された場合に、2枚の保留100円硬貨を返却口、金庫又は硬貨収納部等の所定位置に振分けるとともに、3枚目に投入された100円硬貨を一時保留するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−99949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の硬貨処理装置では、2枚の100円硬貨が保留されている状態で3枚目の100円硬貨が投入されると、保留硬貨が所定位置に振分けられる前に投入硬貨が保留硬貨に追い着くことにより、投入硬貨が保留硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作が発生し得る。これにより、自動販売機等に搭載した際に安定した運用を実現することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、投入硬貨が、一時保留された硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作を防止することの可能な硬貨処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部と、硬貨識別部によって識別された硬貨を硬貨通路上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける保留部と、硬貨通路において保留部の上流側に設けられ、硬貨識別部によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を保留部に振分ける振分部と、保留許容枚数の硬貨が保留部に保留されている状態において、投入硬貨の種別が前記所定種別であると硬貨識別部によって識別されると、振分部から保留部までの投入硬貨の通過を一時的に規制する規制部とを備えている。
【0008】
これにより、保留許容枚数の硬貨が保留部に保留されている状態において、保留部に保留される硬貨が新たに投入されると、振分部から保留部までの投入硬貨の通過が一時的に規制されることから、投入硬貨が保留部に到達するタイミングと保留硬貨が所定位置に振分けられるタイミングとをずらすことが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、投入硬貨が保留部に到達するタイミングと保留硬貨が所定位置に振分けられるタイミングとをずらすことができるので、投入硬貨が保留硬貨に追い着いて該保留硬貨とともに所定位置に振分けられるという誤動作を防止することができ、自動販売機等に搭載した際に安定した運用の実現を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す硬貨処理装置の背面図
【図2】硬貨処理装置の硬貨識別部及び振分部を示す内部構造図
【図3】硬貨処理装置の振分部及び硬貨収納部の構造を示す斜視図
【図4】第2振分部の動作を示す断面図
【図5】第1保留部の動作を示す断面図
【図6】保留許容枚数の硬貨が第1保留部に保持された状態を示す要部拡大図
【図7】返却指令時における第2保留部の動作を示す断面図
【図8】第2チューブ収納時における第2保留部の動作を示す断面図
【図9】金庫収納時における第2保留部の動作を示す断面図
【図10】硬貨処理装置の駆動制御回路を示すブロック図
【図11】100円硬貨処理制御を示すフロー図
【図12】投入硬貨の通過を一時的に規制する際の第1保留部の動作を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図12は本発明に係る硬貨処理装置の一実施形態を示すもので、図1は硬貨処理装置の背面図、図2は硬貨処理装置の硬貨識別部及び硬貨振分部を示す内部構造図、図3は硬貨処理装置の硬貨振分部及び硬貨収納部の構造を示す斜視図、図4は第2振分部の動作を示す断面図、図5は第1保留部の動作を示す断面図、図6は保留許容枚数の硬貨が第1保留部に保持された状態を示す要部拡大図、図7は返却指令時における第2保留部の動作を示す断面図、図8は第2チューブ収納時における第2保留部の動作を示す断面図、図9は金庫収納時における第2保留部の動作を示す断面図、図10は硬貨処理装置の駆動制御回路を示すブロック図、図11は100円硬貨処理制御を示すフロー図、図12は投入硬貨の通過を一時的に規制する際の第1保留部の動作を示す断面図である。
【0012】
まず、硬貨処理装置の概略構成を図1乃至図3を参照して説明する。即ち、この硬貨処理装置1は例えば自動販売機に搭載されており、硬貨投入口1aから投入された硬貨(10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨)を識別する硬貨識別部10と、硬貨識別部10で識別された硬貨を振り分ける硬貨振分部20と、硬貨振分部20で振り分けられた硬貨を収納する硬貨収納部30とから構成されており、購入商品に対する金銭処理を行っている。この硬貨収納部30は硬貨処理装置1の背面に設置されたリヤカバー1bの内側に配置されており、このリヤカバー1bを開閉することにより硬貨収納部30へのメンテナンスを行うことができる。
【0013】
硬貨識別部10は通常所定周波数の信号を投入硬貨に発信し、その受信周波数の変化に基づき、正貨、偽貨、更には10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨の種別を識別している。
【0014】
通過検出部11は周知の磁気センサ等から構成されており、後述の第1振分部201の裏側に設けられている。また、通過検出部11は、硬貨識別部10によって正貨と識別された硬貨が回動フラッパ201aの裏側を通過したことを検出する。
【0015】
硬貨振分部20は、コイン転動の上手側から下手側に向かって、第1〜第8の振分部201〜208を有している。
【0016】
ここで、第1振分部201は、回動式の回動フラッパ201aを有し、この回動フラッパ201aをソレノイドSC1で回動する。ソレノイドSC1が非励磁状態(OFF)のときは(投入硬貨が偽貨と識別されたときは)、投入硬貨が回動フラッパ201aの前面を通り、返却通路(図示省略)を通じて返却口に返却される。一方、励磁状態(ON)のときは(投入硬貨が正貨と識別されたときは)、投入硬貨を回動フラッパ201aの裏側に通し、第2振分部202に向かって落下させる。このように、第1振分部201は投入硬貨の真偽に基づき硬貨を振分けている。
【0017】
第2振分部202は、図4(a)(b)に示すように、第1振分部201で正貨と判定された硬貨を100円硬貨とその他の10円硬貨、50円硬貨及び500円硬貨に振分けるものである。この第2振分部202は二股に分岐した前後のガイド202a,202bを有し、これをソレノイドSC2で硬貨通路Aから出没させている。このソレノイドSC2が非励磁(OFF)のときは、図4(a)に示すように、10円硬貨、50円硬貨及び500円硬貨を後方のガイド202bに転動させて第3振分部203に向かって案内する。一方、励磁状態(ON)のときは図4(b)に示すように、第2振分部202を後方に向かって引かせる。これにより、100円硬貨を前方のガイド202aに落下させて第4振分部204に向かって案内している。なお、10円硬貨のコインチューブCT10や50円のコインチューブCT50が満杯の場合には、前述と同様の操作により第4振分部204に向かって10円硬貨及び50円硬貨を案内する。なお、第2振分部202は、本願請求項でいう振分部を構成している。
【0018】
第3振分部203は、第2振分部202で振り分けられた10円硬貨及び50円硬貨と500円硬貨に振分けるものである。この第3振分部203は回転軸203aから上手側に向かって延在した回動フラッパ203bを有し、この回動フラッパ203bの中央寄りの側面ピン203cにソレノイドSC3を連結し、回動フラッパ203bを回動する。また、この第3振分部203の回転軸203aから下手側には第1の500円硬貨一時保留部211が形成されている。この一時保留部211は回転軸203aから硬貨通路Aの下手側に向かって回動アーム211aが延在されており、この回動アーム211aの先端には硬貨通路Aに向かって突出した保留突起211bを有する。
【0019】
ここで、ソレノイドSC3が非励磁状態(OFF)のときは(500円硬貨を振り分けるときは)回動フラッパ203bが硬貨通路Aから離隔し硬貨通路Aを開放する一方、回動アーム211aが硬貨通路Aに向かって回転し保留突起211bの先端が硬貨通路Aを遮断する。これに対して、ソレノイドSC3が励磁状態(ON)のときは(10円及び50円硬貨を振り分けるとき)、回動フラッパ203bが硬貨通路Aに向かって回転し硬貨通路Aを閉鎖する一方、回動アーム211aが硬貨通路Aから離隔するよう回転し、保留突起211bによる硬貨通路Aの遮断を解除する。
【0020】
また、この硬貨通路Aで回転軸203aの近傍には、第2の500円硬貨一時保留部212が硬貨通路Aから出没自在に設置されている。この第2の500円硬貨一時保留部212はソレノイドSC4が非励磁状態(OFF)のときは硬貨通路Aから突出して硬貨の移動を規制し、一方、励磁状態(ON)のときは、硬貨通路Aから後退して硬貨が硬貨通路Aを移動できるようにしている。
【0021】
第4振分部204は第2振分部202で振り分けられた100円硬貨を振分けるものである。この第4振分部204は回動式の回動フラッパ204aを有し、この回動フラッパ204aを前記第2の500円硬貨一時保留部212と同様にソレノイドSC4で回動している。ここで、ソレノイドSC4が励磁状態(ON)のときは、回動フラッパ204aが金庫通路B(回動フラッパ204aの裏側)を開放する位置に回動して100円硬貨を金庫通路Bに導き、図示しない金庫に導入する。一方、非励磁状態(OFF)のときは回動フラッパ204aが金庫通路Bを閉鎖しており、100円硬貨を回動フラッパ204aの表面側に転動させ、下方に向かって落下させる。なお、10円硬貨のコインチューブCT10や50円のコインチューブCT50が満杯の場合には、前述と同様の操作により金庫通路Bに向かって10円硬貨及び50円硬貨を案内する。
【0022】
第5振分部205は、第3振分部203及び各一時保留部211,212を通って転動した500円硬貨を、返却口(図示省略)に連通する返却通路Cと硬貨収納部(金庫通路B及び500円用のコインチューブCT500)に振分けるものである。この第5振分部205は回動式の回動フラッパ205aを有し、この回動フラッパ205aをソレノイドSC5で回動する。ここで、ソレノイドSC5が非励磁状態(OFF)のときは、500円硬貨を後述する第8振分部208に導く。一方、励磁状態(ON)のときは、回動フラッパ205aが第8振分部208側への通路を閉鎖するよう回転し、500円硬貨を返却通路Cを通じて返却口に導く。
【0023】
第6振分部206、第7振分部207及び第8振分部208は、ソレノイドSC6により制御されるもので、このソレノイドSC6に連結する連結板209に一体に形成されている。
【0024】
まず、第6振分部206を説明する。第6振分部206は、第4振分部204で振分けられた100円硬貨を、100円用の第1のコインチューブ(以下、第1チューブという)CT100ー1と後述する第2の100円硬貨保留部(以下、第2保留部という)214に振分けるもので、二股に分岐した前後のガイド206a,206bをソレノイドSC6で硬貨通路Aから出没させている。また、この前側のガイド206aの上端近傍には100円硬貨を保留する保留ピン213aを設けている。この保留ピン213aは、ソレノイドSC4にて、硬貨通路Aに出没するよう形成されている。
【0025】
ここで、各ソレノイドSC4,SC6が非励磁(OFF)のときは、図5(a)に示すように、保留ピン213aが硬貨通路Aに突出し、100円硬貨を第6振分部206に保留する。また、この100円硬貨の保留状態で、ソレノイドSC4が励磁(ON)し、かつ、ソレノイドSC6が非励磁となっているときは、図5(b)に示すように保留ピン213aが硬貨通路Aから後退し、保留100円硬貨が後方のガイド206bを転動して第1チューブCT100−1に落下・収納される。更に、同じく100円硬貨の保留状態で、ソレノイドSC6が励磁し、かつ、ソレノイドSC4が非励磁となっているときは、図5(c)に示すように、連結板209がソレノイドSC6により後方に引かれ、保留100円硬貨が前方のガイド206aを転動して第2保留部214に向かって落下する。
【0026】
このように、第6振分部206及び保留ピン213aは、投入された100円硬貨を保留する保留部213(以下、第1保留部213という)として機能するとともに、この保留された100円硬貨を、第1チューブCT100−1又は第2保留部214に振り分ける機能を有している。また、第1保留部213は、図6に示すように、複数枚(本実施形態では2枚)の100円硬貨を硬貨通路A上に保留可能に構成されており、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合即ち2枚の100円硬貨を保留している状態で3枚目の100円硬貨が投入された場合に、2枚の保留100円硬貨を第1チューブCT100−1又は第2保留部214に振分けるようになっている。なお、第1保留部213は、本願請求項でいう保留部を構成している。
【0027】
第7振分部207は、第3振分部203で振り分けられた10円・50円を10円用のコインチューブCT10と50円用のコインチューブCT50に振分けるものである。この第7振分部207は二股に分岐した前後のガイド207a,207bをソレノイドSC6で硬貨通路Aから出没させている。このソレノイドSC6が非励磁(OFF)のときは、10円硬貨を後方のガイド207bに落下させてコインチューブCT10に落下・収納する。一方、励磁状態(ON)のときは、連結板209を後方に引き、これにより、50円硬貨を前方のガイド207aに落下させてコインチューブCT50に落下・収納する。
【0028】
第8振分部208は、500円硬貨を金庫通路B又はコインチューブCT500に振分けるもので、図3に示すように先端に向かって平行に延びる二股の案内隔壁を有する。ここで、ソレノイドSC6が非励磁(OFF)のときは、500円硬貨をコインチューブCT500に導く一方、励磁状態(ON)のときは、500円硬貨を後方の金庫通路Bに導く。
【0029】
以上のように本実施形態に係る硬貨処理装置1において、100円硬貨が投入されたときは、図2に示すように、第1振分部201、第2振分部202、第4振分部204及び第1保留部213を通じて第1チューブCT100−1又は第2保留部214に振分けられる。
【0030】
この第2保留部214の構造を図7を参照して説明する。第2保留部214は第1保留部213の下流側に設置されたもので、上端及び下端が硬貨通路A内に交互に出没するよう、シーソの如く軸支された保留レバー214aを有している。この保留レバー214aはその上端側がソレノイドSC7に連結アーム214bを介して連結しており、ソレノイドSC7が非励磁(OFF)のときは、図7(a)(c)に示すように、保留レバー214aの下端が硬貨通路A内に突出して100円硬貨の落下を規制し、100円硬貨を硬貨通路A内に保留する。一方、ソレノイドSC7が励磁(ON)するときは、図7(b)に示すように、保留レバー214aの下端が硬貨通路Aから離脱して最下位の100円硬貨の落下規制を解除する一方、上端が硬貨通路Aに突出して、最下位から2番目の100円硬貨を硬貨通路A内に保留する。
【0031】
また、この第2保留部214は振分部215を有し、この振分部215により、硬貨通路A内に保留された100円硬貨を、返却通路、第2の100円硬貨チューブ(以下、第2チューブという)CT100−2、或いは、金庫に振分ける。この振分部215は上下に上部フラッパ216と下部フラッパ217とを有し、各フラッパ216,217はそれぞれ下端を軸支するとともに、各ソレノイドSC8,SC9に連結アーム216a,217aを介して連結し、各ソレノイドSC8,SC9の励磁・非励磁により各フラッパ216,217を回動する。
【0032】
ここで、ソレノイドSC8が励磁(ON)し、かつ、ソレノイドSC9が非励磁(OFF)となっているときは、図7に示すように、各フラッパ216,217が時計方向に回転しており、これにより、硬貨通路Aが返却通路に連通した状態となる。また、各ソレノイドSC8,SC9の両者が励磁(ON)しているときは、図8に示すように、フラッパ216が時計方向に回転する一方、フラッパ217が反時計方向に回転しており、これにより、硬貨通路Aが第2チューブCT100−2に連通した状態となっている。更に、ソレノイドSC8が非励磁(OFF)で、かつ、ソレノイドSC9が励磁(ON)してるときは、図9に示すように、各フラッパ216,217が反時計方向に回転しており、これにより、硬貨通路Aが金庫に連通した状態となる。
【0033】
次に、図10を参照して硬貨処理装置1の制御系構成について説明する。
【0034】
硬貨処理装置1は、装置全体を制御するための制御部40を有しており、制御部40はCPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータから構成されている。制御部40には、硬貨識別部10、通過検出部11及びソレノイド駆動回路41が接続されており、硬貨識別部10の識別信号、通過検出部11の検出信号が入力されるようになっている。また、制御部40は、これらの識別信号、検出信号等に基づいて、ソレノイド駆動回路45を介して各ソレノイドSC1〜SC9を駆動制御し、100円硬貨の一時保留制御及び振分け制御を行っている。さらに、制御部40には、タイマ回路40aと、硬貨のカウンタ回路40bとが設けられている。ここで、タイマ回路40aには、各ソレノイドSC1〜SC9がオンしたときの励磁時間が設定され、各ソレノイドSC1〜SC9がオンしたときは、その設定励磁時間に亘って励磁し、その後はオフするように制御される構成となっている。カウンタ回路40bは100円硬貨の投入枚数を計数する構成となっている。
【0035】
なお、制御部40は、自動販売機に設けられた商品選択ボタンや返却レバー等(何れも図示省略)から送信された信号に基づき各ソレノイドSC1〜SC9を駆動制御可能に構成されているが、商品選択ボタンや返却レバーから信号を受信した際の動作については、出願人が提案した特開2002−99949号公報に記載された技術を用いることが可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
また、本実施形態の硬貨処理装置1は、2枚の100円硬貨が第1保留部213に保留されている状態において、3枚目の100円硬貨が投入されると、第2振分部202から第1保留部213までの投入100円硬貨の通過が規制部によって一時的に規制されるように構成されている。ここで、本実施形態では、第2振分部202を、本願請求項でいう規制部として構成している。以下に、100円硬貨が投入された際の硬貨処理装置1の動作について、図11のフロー図を参照して説明する。なお、各ソレノイドSC1〜SC9は、予め非励磁状態(OFF)に設定されている。
【0037】
まず、投入された100円硬貨が偽貨であると硬貨識別部10によって識別された場合には、制御部40は返却処理を行う(ステップS1,S2)。この返却処理について具体的に説明すると、制御部40は、ソレノイドSC1を非励磁状態(OFF)にして、第1振分部201の回動フラッパ201aを待機状態に保持させる。これにより、図2に示すように、投入硬貨が回動フラッパ201aの表側を通り、返却口に返却される。
【0038】
一方、制御部40は、100円硬貨が正貨であると硬貨識別部10によって識別された場合に、この投入硬貨の枚数を計数する(ステップS3)。ここで、投入100円硬貨の枚数が4枚以上のときは、制御部40は前述の返却処理を行う(ステップS4)。その他(投入硬貨が1枚、2枚又は3枚)の場合には、制御部40は、ソレノイドSC1を所定時間励磁(ON)する(ステップS5)。これにより、第1振分部201の回動フラッパ201aが回動し、図2に示すように、100円硬貨が回動フラッパ201aの裏側に導かれる。
【0039】
次に、制御部40は、100円硬貨が回動フラッパ201aの裏側に導かれる際に通過検出部11によって検出されると、タイマ回路40aによる計時処理を開始する(ステップS6)。また、制御部40は、図4(b)に示すように、ソレノイドSC1の励磁(ON)とほぼ同時にソレノイドSC2を所定時間励磁(ON)させる(ステップS7)。これにより、100円硬貨が第2振分部202のガイド202aに落下し、第4振分部204に向かって案内される。ここで、ソレノイドSC4が非励磁状態(OFF)となっているため、回動フラッパ204aが金庫通路Bを閉鎖している。従って、100円硬貨が回動フラッパ204aの表面側に転動して、第1保留部213に導かれる。
【0040】
なお、100円硬貨の投入枚数が2枚の場合には、上記ステップS1、S3、S4、S5、S6、S7の処理が繰返して行われることにより、2枚の100円硬貨が、図6に示すように第1保留部213に保留される(ステップS8)。そして、3枚目の100円硬貨が投入された場合には、制御部40は、上記ステップS7までの処理を行った後に、ソレノイドSC6を励磁(ON)させる(ステップS9)。これにより、第1保留部213に保留されている2枚の100円硬貨が第6振分部206のガイド206aを転動して第2保留部214に向かって落下する。また、制御部40は、3枚目に投入された100円硬貨が通過検出部11によって検出されてから所定時間経過後に(ステップS10)、ソレノイドSC2を非励磁状態(OFF)にする(ステップS11)。ここで、所定時間とは、3枚目に投入された100円硬貨が通過検出部11から第2振分部202まで案内されるまでの時間である。この場合、所定時間経過後のタイミングでソレノイドSC2が非励磁(OFF)になると、図12に示すように、3枚目に投入された100円硬貨が、硬貨通路Aに出現した第2振分部202のガイド202bに接触する。これにより、第1保留部213までの100円硬貨の通過が、第2振分部202によって一時的に規制される。
【0041】
また、制御部40は、所定時間経過後に(ステップS12)、ソレノイドSC1及びソレノイドSC6を非励磁状態(OFF)にする(ステップS13,S14)。これにより、図5(a)に示すように、3枚目に投入された100円硬貨が第1保留部213に保留されることから、投入100円硬貨が2枚の保留100円硬貨とともに第2保留部214に振分けられることがない。
【0042】
このように、保留許容枚数(2枚)の100円硬貨が第1保留部213に保留されている状態において、3枚目の100円硬貨が投入されると、第2振分部202から第1保留部213までの投入硬貨の通過が第2振分部202のガイド202bによって一時的に規制されることから、3枚目に投入された100円硬貨が第1保留部213に到達するタイミングと2枚の保留100円硬貨が第2保留部214に振分けられるタイミングとをずらすことが可能になる。
【0043】
なお、上記フローでは説明を省略したが、ステップS9において、2枚の保留硬貨を第2保留部214ではなく第1チューブCT100−1に落下・収納させるように制御部40を構成してもよい。
【0044】
以上のように本実施形態に係る硬貨処理装置1によれば、投入100円硬貨が第1保留部213に到達するタイミングと保留100円硬貨が第2保留部214に振分けられるタイミングとをずらすことができるので、投入100円硬貨が保留100円硬貨に追い着いて該保留100円硬貨とともに第2保留部214に振分けられるという誤動作を防止することができ、自動販売機等に搭載した際に安定した運用の実現を図ることができる。
【0045】
また、規制部を、硬貨通路に出没するガイド202bからなる第2振分部202により構成したので、投入100円硬貨が保留100円硬貨に追い着いて該保留100円硬貨とともに第2保留部214に振分けられるという誤動作を、既存の構成を用いて防止することができる。従って、既存部に係る新たな部材を必要としないことから、製造コストの低減を図ることができる。
【0046】
さらに、規制部を、硬貨通路Aに出現させたガイド202bを第1保留部213側に振分けられた投入100円硬貨に接触させることにより、投入100円硬貨の通過を一時的に規制するように構成したので、前述した誤動作を、ガイド202bを硬貨通路Aに出現させるという既存の制御内容を用いて防止することができる。従って、制御内容の大幅な改造が不要となることから、製造コストの低減をより一層図ることができる。
【0047】
さらにまた、硬貨通路Aを通過する投入硬貨を検出する通過検出部11を備え、規制部は、投入硬貨が通過検出部11によって検出されると、所定時間経過後に投入硬貨の規制動作を開始するので、投入硬貨が通過するタイミングに合わせて規制動作を行うことができる。
【0048】
なお、上記実施形態は本発明の具体例に過ぎず、本発明が上記実施形態のみに限定されることはない。例えば、上記実施形態では、第2振分部202を規制部として構成したが、他の部材を規制部として設けてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、一つの通過検出部11を設けたが、複数の通過検出部11を硬貨通路Aに設けて各通過検出部11の硬貨検出タイミングに応じて規制部の規制開始時間を変更するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…硬貨識別部、11…通過検出部、40…制御部、202…第2振分部、202b…ガイド、213…第1保留部、A…硬貨通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部と、
硬貨識別部によって識別された硬貨を硬貨通路上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける保留部と、
硬貨通路において保留部の上流に設けられ、硬貨識別部によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を保留部に振分ける振分部と、
保留許容枚数の硬貨が保留部に保留されている状態において、投入硬貨の種別が前記所定種別であると硬貨識別部によって識別されると、振分部から保留部までの投入硬貨の通過を一時的に規制する規制部とを備えた
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記規制部を、硬貨通路に出没するガイドからなる振分部により構成した
ことを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記規制部を、硬貨通路に出現させた前記ガイドを保留部側に振分けられた投入硬貨に接触させることにより、投入硬貨の通過を一時的に規制するように構成した
ことを特徴とする請求項2記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
硬貨通路を通過する投入硬貨を検出する通過検出部を備え、
前記規制部は、投入硬貨が通過検出部によって検出されると、所定時間経過後に投入硬貨の規制動作を開始する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の硬貨処理装置。
【請求項1】
投入された硬貨の種別を識別する硬貨識別部と、
硬貨識別部によって識別された硬貨を硬貨通路上に保留するとともに、保留硬貨の枚数が保留許容枚数を超える場合に、該保留硬貨を所定位置に振分ける保留部と、
硬貨通路において保留部の上流に設けられ、硬貨識別部によって識別された硬貨のうち所定種別の硬貨を保留部に振分ける振分部と、
保留許容枚数の硬貨が保留部に保留されている状態において、投入硬貨の種別が前記所定種別であると硬貨識別部によって識別されると、振分部から保留部までの投入硬貨の通過を一時的に規制する規制部とを備えた
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記規制部を、硬貨通路に出没するガイドからなる振分部により構成した
ことを特徴とする請求項1記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記規制部を、硬貨通路に出現させた前記ガイドを保留部側に振分けられた投入硬貨に接触させることにより、投入硬貨の通過を一時的に規制するように構成した
ことを特徴とする請求項2記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
硬貨通路を通過する投入硬貨を検出する通過検出部を備え、
前記規制部は、投入硬貨が通過検出部によって検出されると、所定時間経過後に投入硬貨の規制動作を開始する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の硬貨処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−60069(P2011−60069A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210099(P2009−210099)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
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