説明

硬貨処理装置

【課題】部品点数の削減を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができる硬貨処理装置を提供すること。
【解決手段】各開口32aに硬貨を嵌合した状態で移動して硬貨を引き出す払出板32と、各開口32aに対応して移動可能に設けられた受け板33と、対象硬貨に対応する受け板33が払出板32と一体的に移動することを許容して開口32aを開放して対象硬貨を払出可能にする一方、対象外硬貨に対応する受け板33が払出板32と一体的に移動することを規制して開口32aを閉塞して対象外硬貨の払い出しを規制する選択ユニット40と、硬貨選択指令が与えられた場合にはモータMからの駆動力を選択ユニット40に伝達して対象外硬貨と嵌合する開口32aに対応する受け板33の移動を規制する一方、硬貨払出指令が与えられた場合にはモータMからの駆動力を払出板32に伝達して払出板32を駆動させる伝達ユニット40を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨処理装置に関し、より詳細には、例えば自動販売機等に適用され、保持する硬貨を金種毎に選択して所定の釣銭を払い出すようにした硬貨処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動販売機等には、投入された硬貨の真偽を判別して硬貨を収納かつ保持し、必要に応じて保持する硬貨を釣銭として払い出す硬貨処理装置が適用されている。このような硬貨処理装置では、各金種に共通の払出板をモータ等により駆動させて往復移動させ、更に金種毎に設けたクラッチピンを動作させることで各金種毎に対応して設けられた受け板を選択的に移動させることにより、所望の金種の硬貨だけを釣銭として払い出すようにしている。
【0003】
かかる硬貨処理装置では、クラッチピンを上述したように金種毎に設けるとともに、クラッチピンを動作させるソレノイドを個別に設けていたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−223395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したような特許文献1に提案されている硬貨処理装置では、払出板を駆動させる駆動モータだけでなく、金種毎に設けられたクラッチピンを動作させるソレノイドがクラッチピン毎に設けられているので、部品点数の増大化だけでなく、消費電力量の増大化を招来していた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、部品点数の削減を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができる硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る硬貨処理装置は、硬貨を金種毎に保持する硬貨保持手段から前記硬貨を所定金額分だけ選択して払い出す硬貨払出手段を備えた硬貨処理装置において、前記硬貨払出手段は、前記硬貨に嵌合可能な複数の開口が形成され、駆動する場合に各開口に硬貨を嵌合した状態で移動して前記硬貨保持手段より金種毎に一枚ずつ硬貨を引き出す払出板と、前記払出板の下方域において各開口に対応して移動可能に設けられた複数の受け板と、払出対象となる対象硬貨については、対象硬貨と嵌合する開口に対応する受け板が前記払出板と一体的に移動することを許容して該開口を開放して対象硬貨を払出可能にする一方、払出対象以外の対象外硬貨については、対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板が前記払出板と一体的に移動することを規制して該開口を閉塞して対象外硬貨の払い出しを規制する規制手段と、硬貨選択指令が与えられた場合には、駆動源からの駆動力を前記規制手段に伝達して対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板の移動を規制する一方、硬貨払出指令が与えられた場合には、前記駆動源からの駆動力を前記払出板に伝達して該払出板を駆動させる伝達手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る硬貨処理装置は、上述した請求項1において、前記伝達手段は、動力源から動力が付与された場合には、駆動源からの駆動力を前記規制手段に伝達して対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板の移動を規制する一方、前記動力源からの動力の付与が停止した場合には、前記駆動源からの駆動力を前記払出板に伝達して該払出板を駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬貨処理装置によれば、伝達手段が、硬貨選択指令が与えられた場合には、駆動源からの駆動力を規制手段に伝達して対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板の移動を規制する一方、硬貨払出指令が与えられた場合には、駆動源からの駆動力を払出板に伝達して該払出板を駆動させるので、一の駆動源からの駆動力を規制手段及び払出板に択一的に伝達することが可能になり、従来のようにモータや複数のソレノイドを設ける必要がなく、部品点数を低減させることができるともに、消費電力量を低減させることが可能になる。従って、部品点数の削減を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である硬貨処理装置の外観構成を示す正面図である。
【図2】図2は、硬貨払出部の概略構成を示す説明図である。
【図3】図3は、図2に示した伝達ユニットの要部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示した第1伝達ギア及び第2伝達ギアを拡大して示す説明図である。
【図5】図5は、図2に示したクラッチレバーの水平移動を示す説明図である。
【図6】図6は、図3に示した要部の縦断面を示す説明用断面図である。
【図7】図7は、図2に示した払出ユニットの構成及び動作を模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、図2に示した払出ユニットの構成及び動作を模式的に示す説明図である。
【図9】図9は、図2に示した硬貨払出部の内部構造を示す説明図であり、払出ギアの図示を省略している。
【図10】図10は、各硬貨カムの切欠位置パターンを示す説明図である。
【図11】図11は、図10に示した各パターンに対応する対象硬貨を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る硬貨処理装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態である硬貨処理装置の外観構成を示す正面図である。ここで例示する硬貨処理装置は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等を販売する自動販売機に適用されるものであり、ケーブルCを通じて該自動販売機と電気的に接続してあり、自動販売機側から必要な信号や電力を受け取ることが可能なものである。このような硬貨処理装置は、装置本体10の上部に形成された投入口11より自動販売機に投入された硬貨を受け入れるよう構成してあり、操作部12、判定部13、硬貨保持部(硬貨保持手段)14及び硬貨払出部(硬貨払出手段)15を備えている。
【0013】
操作部12は、装置本体10の正面上部に設けてあり、収納された硬貨に関する情報を表示するモニタランプや硬貨の判別や払い出しに関する設定操作用のボタンを有している。判定部13は、装置本体10の正面中央部に設けてあり、投入された硬貨の金種判別、真偽判定等を行うものであり、判定結果に応じて硬貨保持部14を構成する釣銭チューブ14a(図7及び図8参照)等に硬貨を振り分けて導く硬貨通路等も有している。
【0014】
硬貨保持部14は、装置本体10の正面下部に設けてあり、金種毎に硬貨を積み重ねた状態で収納する複数(例えば5つ)の釣銭チューブ14aを有している。各釣銭チューブ14aには、図には明示しないが、収納された硬貨が満杯状態であるか否かを検知する満杯検知センサ、空になったか否かを検知する釣銭無センサ等が配置してある。
【0015】
硬貨払出部15は、硬貨保持部14の下部に設けてある。この硬貨払出部15は、複数の釣銭チューブ14aから任意のものを選択して、装置本体10の下部の払出口16から所定金額の釣銭を払い出すためのものである。かかる硬貨払出部15の詳細については後述する。
【0016】
図2は、硬貨払出部15の概略構成を示す説明図である。ここで例示する硬貨払出部15は、伝達ユニット20、払出ユニット30及び選択ユニット(規制手段)40を備えて構成してある。
【0017】
伝達ユニット20は、第1伝達ギア21、第2伝達ギア22及びクラッチレバー23を備えて構成してある。
【0018】
第1伝達ギア21は、図3にも示すように、駆動源であるモータMの出力軸M1に噛合するギア24aと噛合しており、該ギア24aを介してモータMからの駆動力が伝えられることにより自身の中心軸、すなわち自身の中心部における貫通孔211を貫通する第1クラッチ軸25aの中心軸回りに回転するものである。
【0019】
ここで第1クラッチ軸25aは、図4に示すように、第1伝達ギア21だけでなく、第1伝達ギア21の下方に配設された払出ギア26の中心部における貫通孔261(図6参照)を貫通している。この第1クラッチ軸25aには、第1伝達ギア21の貫通孔211及び払出ギア26の貫通孔261の内径に適合する拡径部25a1(図6参照)が形成してあり、拡径部25a1が第1伝達ギア21の貫通孔211にのみ適合する場合には、該第1伝達ギア21とともに一体的に自身の中心軸回りに回転し、該拡径部25a1が第1伝達ギア21及び払出ギア26を跨る態様で各貫通孔211,261に適合する場合には、第1伝達ギア21及び払出ギア26と一体的に自身の中心軸回りに回転するものである。つまり、払出ギア26は、第1クラッチ軸25aの拡径部25a1が自身の貫通孔261にも適合する場合には、第1伝達ギア21とともに第1クラッチ軸25aの中心軸回りに回転するものである。
【0020】
第2伝達ギア22は、図3にも示すように、第1伝達ギア21と噛合しており、該第1伝達ギア21を介してモータMからの駆動力が伝えられることにより自身の中心軸、すなわち自身の中心部における貫通孔221を貫通する第2クラッチ軸25bの中心軸回りに回転するものである。
【0021】
ここで第2クラッチ軸25bは、図4に示すように、第2伝達ギア22だけでなく、第2伝達ギア22の下方に配設された傘歯車を有する選択ギア27の中心部における貫通孔271を貫通している。この第2クラッチ軸25bには、第2伝達ギア22の貫通孔221及び選択ギア27の貫通孔271の内径に適合する拡径部25b1(図6参照)が形成してあり、拡径部25b1が第2伝達ギア22及び選択ギア27を跨る態様で各貫通孔221,271に適合する場合には、第2伝達ギア22及び選択ギア27と一体的に自身の中心軸回りに回転するものである。つまり、選択ギア27は、第2クラッチ軸25bの拡径部25b1が自身の貫通孔271に適合するとともに第2伝達ギア22の貫通孔221にも適合する場合には、第2伝達ギア22とともに第2クラッチ軸25bの中心軸回りに回転するものである。
【0022】
クラッチレバー23は、板状部材を屈曲させて形成したものであり、モータMの側方域に配設してある。このクラッチレバー23は、常態においては、図5の(a)に示すように基準位置に配置され、隣接するソレノイド(動力源)Sが励磁された場合には、図5の(b)に示すように該ソレノイドSに近接する態様で水平移動するものである。
【0023】
このようなクラッチレバー23の正面側板及び背面側板には一対の挿通孔231,232が形成してある。かかる挿通孔231,232は、左右方向が長手方向となる長孔状のものであり、ソレノイドSから離隔するに連れて(モータMに近接するに連れて)漸次上方に傾斜している。正面側板の挿通孔231には、第1クラッチ軸25aの上端部に連結された第1ピン部材25cの突起25c1が挿通してあり、背面側板の挿通孔232には、第2クラッチ軸25bの上端部に連結された第2ピン部材25dの突起25d1が挿通してある。ここで、第1ピン部材25cは、第1クラッチ軸25aを該第1クラッチ軸25aの中心軸回りに回転可能となる態様で支持するものであり、第2ピン部材25dは、第2クラッチ軸25bを該第2クラッチ軸25bの中心軸回りに回転可能となる態様で支持するものである。
【0024】
そして、第1ピン部材25c及び第2ピン部材25dの突起25c1,25d1は、クラッチレバー23が基準位置に位置する場合には、それぞれ対応する挿通孔231,232のソレノイドSに近接する側の縁部、すなわち下端縁部に当接した状態で挿通しており、クラッチレバー23がソレノイドSに近接する態様で水平移動する場合には、それぞれ対応する挿通孔231を相対的に移動することになる。つまり、各挿通孔231,232は、ソレノイドSから離隔するに漸次上方に傾斜する長孔状のものであるから、クラッチレバー23がソレノイドSに近接する態様で水平移動すると、各挿通孔231,232に挿通する第1ピン部材25c及び第2ピン部材25dは上方に向けて変位することとなり、これにより第1クラッチ軸25a及び第2クラッチ軸25bも上方に向けて変位することとなる。
【0025】
ここで第1クラッチ軸25aは、第1ピン部材25cの突起25c1が対応する挿通孔231の下端縁部に当接した状態にある場合、すなわちクラッチレバー23が基準位置に位置する場合には、図6の(a)に示すように、自身の拡径部25a1が第1伝達ギア21及び払出ギア26に跨る態様で各貫通孔211,261に適合している。また第2クラッチ軸25bは、第2ピン部材25dの突起25d1が対応する挿通孔232の下端縁部に当接した状態にある場合、すなわちクラッチレバー23が基準位置に位置する場合には、図6の(a)に示すように、自身の拡径部25b1が選択ギア27の貫通孔271にのみ適合している。
【0026】
その一方、ソレノイドSが励磁することによりクラッチレバー23がソレノイドSに近接する態様で水平移動する場合には、図6の(b)に示すように、第1クラッチ軸25aは、上方に変位して自身の拡径部25a1が第1伝達ギア21の貫通孔211にのみ適合し、第2クラッチ軸25bは、上方に変位して自身の拡径部25b1が第2伝達ギア22及び選択ギア27に跨る態様で各貫通孔221,271に適合している。
【0027】
払出ユニット30は、駆動ベース31、払出板32(図7及び図8参照)及び受け板33を備えて構成してある。駆動ベース31は、平板状のプレート材であり、駆動カム311を介して駆動ギア312に連結してある。駆動ギア312は、自身の中心軸回りに回転可能となるものであり、複数の払出用連係ギア24bを介して払出ギア26に連係してある。この駆動ギア312は、払出ギア26が回転する場合に、複数の払出用連係ギア24bを介して回転力が伝達され、自身の中心軸回りに回転するものである。駆動カム311は、従来公知のものであり、駆動ギア312が回転することにより伝達される回転力を駆動ベース31が前後方向に沿って往復移動する力に変換するものである。これにより駆動ベース31は、駆動ギア312が回転することにより前後方向に沿って往復移動することになる。
【0028】
払出板32は、図7の(a)及び図8の(a)に示すように、平板状のプレート材であり、駆動ベース31に係止してある。つまり、払出板32は、駆動ベース31と一体的に前後方向に沿って往復移動するものである。この払出板32には、釣銭チューブ14aの数に応じた(図7及び図8では1つしか示していない)開口32aが形成してある。これら開口32aは、それぞれ該当する釣銭チューブ14aに収納される硬貨に嵌合する大きさを有している。このような払出板32は、従来公知のものと同様に、釣銭チューブ14aとその下方にあるコイン受部14bとの間に位置する場合に、各釣銭チューブ14aの最下位の硬貨Kを対応する開口32aに嵌合させ、駆動ベース31とともに後方に向けて移動することにより、金種毎に1枚ずつ硬貨Kを引き出すものである。ここで、コイン受部14bの上面上を移動している場合には、該コイン受部14bにより開口32aに嵌合する硬貨Kが落下してしまうことはない。
【0029】
受け板33は、払出板32の開口32aの数だけ設けてあり、それぞれが駆動ベース31に配置してある。これら受け板33は、払出板32の下方域において各開口32aに対応して前後方向に沿って移動可能に設けてある。これら受け板33は、それぞれ水平延在部331と、この水平延在部331の後端部より上方に向けて延在する垂上部332とを有している。水平延在部331は、対応する開口32aを閉塞するのに十分な大きさを有している。
【0030】
選択ユニット40は、図9に示すように、払出板32の開口32aの数(5つ)に対応した硬貨カム41を備えて構成してある。以下においては、説明の便宜上、これら硬貨カム41を左側から第1硬貨カム41a、第2硬貨カム41b、第3硬貨カム41c、第4硬貨カム41d、第5硬貨カム41eとも称する。
【0031】
これら硬貨カム41は、それぞれ受け板33の後方側において自身の下端部が該受け板33の垂上部332の上端部に当接可能な位置に配設してあり、伝達ユニット20を構成する選択ギア27から駆動力が伝達されることで、それぞれ自身の中心軸回りに所定の角度ずつ回転するものである。より詳細に説明すると、第3硬貨カム41cは、硬貨C(図11参照)に対応するものであり、選択ギア27に噛合するギア24cに噛合する第1選択用連係ギア24dに噛合している。この第1選択用連係ギア24dは、硬貨D(図11参照)に対応する第4硬貨カム41dにも噛合している。第2硬貨カム41bは、硬貨B(図11参照)に対応するものであり、第3硬貨カム41cに噛合する第2選択用連係ギア24eに噛合しており、第1硬貨カム41aは、硬貨A(図11参照)に対応するものであり、第2硬貨カム41bに噛合する第3選択用連係ギア24fに噛合している。第5硬貨カム41eは、硬貨E(図11参照)に対応するものであり、第4硬貨カム41dに噛合する第4選択用連係ギア24gに噛合している。これにより、これら硬貨カム41は、それぞれ同方向に回転可能となっている。
【0032】
このような硬貨カム41においては、それぞれ所定パターンに従って切欠411が形成してある。かかる切欠411は、少なくとも受け板33の垂上部332が通過できる大きさに形成してある。これにより、図7に示すように硬貨カム41の下端部に切欠411が位置しない場合には、後方に向けて移動する駆動ベース31に配置された受け板33の垂上部332が該硬貨カム41の下端部に当接することになり、後方への移動が規制される。これにより、図7の(b)に示すように駆動ベース31と一体的に後方に向けて移動する払出板32に対して受け板33の水平延在部331が対応する開口32aの下方側を閉塞することになり、該開口32aに嵌合させた硬貨Kが落下することを抑制することになる。
【0033】
その一方、図8に示すように硬貨カム41の下端部に切欠411が位置する場合には、後方に向けて移動する駆動ベース31に配置された受け板33は、自身の垂上部332が該硬貨カム41の下端部の切欠411を通過することになり、駆動ベース31とともに後方へ移動することになる。これにより駆動ベース31とともにと一体的に後方に向けて移動する払出板32の対応する開口32aは、コイン受部14bから離脱した際に下方側を開放され、該開口32aに嵌合させた硬貨Kが落下して、払出口16から払い出されることになる。
【0034】
また、第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cに対する第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eの周期を1/2にしてある。つまり、第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転する場合に、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが30°回転するように構成してある。更に、第1硬貨カム41aの所定個所には磁石が埋め込まれており、かかる磁石を図示せぬ磁力センサにて検知することで、各硬貨カム41の回転基準となる待機位置を検出できるようになっている。尚、図9中の符号PSは、フォトセンサであり、第3硬貨カム41cに形成された突起物41c1の有無を検知するものである。このように突起物41c1の有無を検知することで、各硬貨カム41の切欠411の位置を検出することが可能になる。
【0035】
図10は、各硬貨カム41の切欠位置パターンを示すものであり、本実施の形態では全12パターンがある。図10中の(1)の状態は、各硬貨カム41の待機位置を示すもので、第1硬貨カム41aに埋め込まれた磁石を磁力センサが検知した状態である。かかる(1)の状態では、各硬貨カム41の下端部には切欠411が位置しないために、駆動ベース31が後方に向けて駆動することになっても各受け板33が後方に向けて移動することを規制することになり、結果的に払出板32の各開口32aを閉塞して該開口32aに嵌合させた硬貨Kが落下することを抑制して払出不可とする。つまり、(1)の状態では、払出対象となる対象硬貨が無しとなる。
【0036】
図10の(2)の状態は、(1)の待機位置から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第1〜第3硬貨カム41a,41b,41cの下端部には切欠411が位置する一方、第4及び第5硬貨カム41d,41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨A〜Cについては払出可能であり、硬貨D及びEについては払出不可とする。つまり、(2)の状態では、対象硬貨が硬貨A〜Cである。
【0037】
図10の(3)の状態は、(2)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第4硬貨カム41dの下端部には切欠411が位置する一方、第1〜3及び第5硬貨カム41a,41b,41c,41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨Dについては払出可能であり、硬貨A〜C及びEについては払出不可とする。つまり、(3)の状態では、対象硬貨が硬貨Dである。
【0038】
図10の(4)の状態は、(3)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、各硬貨カム41の下端部には切欠411が位置しない。従って、すべての硬貨については払出不可である。つまり、(4)の状態では、対象硬貨が無しとなる。
【0039】
図10の(5)の状態は、(4)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第2硬貨カム41bの下端部には切欠411が位置する一方、第1、3〜5硬貨カム41a,41c,41d,41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨Bについては払出可能であり、硬貨A、C〜Eについては払出不可とする。つまり、(5)の状態では、対象硬貨が硬貨Bである。
【0040】
図10の(6)の状態は、(5)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第3硬貨カム41cの下端部には切欠411が位置する一方、第1、2、4、5硬貨カム41a,41b,41d,41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨Cについては払出可能であり、硬貨A、B、D、Eについては払出不可とする。つまり、(6)の状態では、対象硬貨が硬貨Cである。
【0041】
図10の(7)の状態は、(6)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第5硬貨カム41eの下端部には切欠411が位置する一方、第1〜4硬貨カム41a〜41dの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨Eについては払出可能であり、硬貨A〜Dについては払出不可とする。つまり、(7)の状態では、対象硬貨が硬貨Eである。
【0042】
図10の(8)の状態は、(7)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第2及び第3硬貨カム41b,41cの下端部には切欠411が位置する一方、第1、4、5硬貨カム41a,41d,41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨B及びCについては払出可能であり、硬貨A、D、Eについては払出不可とする。つまり、(8)の状態では、対象硬貨が硬貨B及びCである。
【0043】
図10の(9)の状態は、(8)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、各硬貨カム41の下端部には切欠411が位置しない。従って、すべての硬貨については払出不可である。つまり、(9)の状態では、対象硬貨が無しとなる。
【0044】
図10の(10)の状態は、(9)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第1硬貨カム41aの下端部には切欠411が位置する一方、第2〜5硬貨カム41b〜41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨Aについては払出可能であり、硬貨B〜Eについては払出不可とする。つまり、(10)の状態では、対象硬貨が硬貨Aである。
【0045】
図10の(11)の状態は、(10)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第2、4、5硬貨カム41b,41d,41eの下端部には切欠411が位置する一方、第1及び3硬貨カム41a,41cの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨B、D、Eについては払出可能であり、硬貨A及びCについては払出不可とする。つまり、(11)の状態では、対象硬貨が硬貨B、D、Eである。
【0046】
図10の(12)の状態は、(11)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転したものである。この状態では、第3硬貨カム41cの下端部には切欠411が位置する一方、第1、2、4、5硬貨カム41a,41b,41d,41eの下端部には切欠411が位置しない。従って、硬貨Cについては払出可能であり、硬貨A、B、D、Eについては払出不可とする。つまり、(12)の状態では、対象硬貨が硬貨Cである。
【0047】
そして(12)の状態から第2硬貨カム41b及び第3硬貨カム41cが60°回転し、第1硬貨カム41a、第4硬貨カム41d及び第5硬貨カム41eが同方向に30°回転すると(1)の状態、すなわち待機位置に戻ることになる。これら図10の(1)〜(12)の状態及び対象硬貨については図11にまとめて示す。
【0048】
以上のような構成を有する硬貨処理装置においては、次のようにして所望の硬貨(対象硬貨)を釣銭として払い出すことができる。
【0049】
まず硬貨選択指令が与えられることにより、硬貨処理装置の硬貨払出部15においては、モータMが駆動するとともにソレノイドSが励磁される。
【0050】
モータMが駆動することにより、該モータMの出力軸M1に噛合するギア24aと噛合する第1伝達ギア21と、この第1伝達ギア21に噛合する第2伝達ギア22とがそれぞれ自身の中心軸回りに回転することとなる。また、ソレノイドSが励磁されることでクラッチレバー23がソレノイドSに近接する態様で水平移動し、第1クラッチ軸25a及び第2クラッチ軸25bは、図6の(b)に示すように上方に変位し、第1クラッチ軸25aの拡径部25a1が第1伝達ギア21の貫通孔211にのみ適合し、第2クラッチの拡径部25b1が第2伝達ギア22及び選択ギア27に跨る態様で各貫通孔221,271に適合する。これにより、第1クラッチ軸25aは第1伝達ギア21とともに回転することになり、第2クラッチ軸25bは第2伝達ギア22及び選択ギア27とともに回転する。つまり、選択ギア27は、第2クラッチ軸25bを介して第2伝達ギア22と回転することになる。
【0051】
このようにして選択ギア27が回転することで、各選択用連係ギア24d〜24gを介して各硬貨カム41が所定の角度だけ回転することになる。この各硬貨カム41の回転は、フォトセンサPSにより検知されることで検出され、図10に示したいずれかのパターンとなる。すなわち、払出対象となる対象硬貨に対応する硬貨カム41の下端部には切欠411が位置し、払出対象外である対象外硬貨に対応する硬貨カム41の下端部には切欠411が位置しないようにする。
【0052】
このようにして各硬貨カム41の回転角度が所望の大きさに決められた後に硬貨払出指令が与えられることにより、硬貨処理装置の硬貨払出部15においては、モータMの駆動を維持したままソレノイドSの励磁を終了させる。
【0053】
これによりクラッチレバー23がソレノイドSから離隔する方向に水平移動して基準位置に位置する。クラッチレバー23が基準位置に位置することで、第1クラッチ軸25a及び第2クラッチ軸25bは、図6の(a)に示すように下方に変位し、第1クラッチ軸25aの拡径部25a1が第1伝達ギア21及び払出ギア26に跨る態様で各貫通孔211,261に適合し、第2クラッチの拡径部25b1が選択ギア27の貫通孔271にのみ適合する。これにより、第2クラッチ軸25bは第2伝達ギア22の回転を許容した状態で自身は回転を停止し、第1クラッチ軸25aは第1伝達ギア21及び払出ギア26とともに回転する。つまり、払出ギア26は、第1クラッチ軸25aを介して第1伝達ギア21と回転することになる。このようにして払出ギア26が回転することで、複数の払出用連係ギア24bを介して駆動ギア312が回転し、駆動カム311を介して駆動ベース31が前後方向に沿って移動する。
【0054】
そして、対象硬貨については、図8に示すように該当する硬貨カム41の下端部に切欠411が位置するので、後方に向けて移動する駆動ベース31に配置された受け板33の垂上部332が該硬貨カム41の下端部の切欠411を通過し、駆動ベース31とともに後方へ移動することで、払出板32と一体的に後方に向けて移動することを許容する。これにより該払出板32の対応する開口32aは、コイン受部14bから離脱した際に下方側が開放され、該開口32aに嵌合された対象硬貨Kが落下して、払出口16から払い出されることになる。
【0055】
その一方、対象外硬貨については、図7に示すように該当する硬貨カム41の下端部に切欠411が位置しないので、後方に向けて移動する駆動ベース31に配置された受け板33の垂上部332が該硬貨カム41の下端部に当接し、後方へ移動することを規制する。つまり、対象外硬貨と嵌合する開口32aに対応する受け板33が払出板32と一体的に移動することを規制する。この結果、受け板33の水平延在部331が対応する開口32aの下方側を閉塞することになり、該開口32aに嵌合させた対象外硬貨Kが落下することを抑制し払い出されることがない。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態である硬貨処理装置においては、硬貨払出部15を構成する伝達ユニット20が、硬貨選択指令が与えられることによりモータMが駆動するとともにソレノイドSが励磁されると、モータMの駆動力を選択ユニット40に伝達する一方、硬貨払出指令が与えられることによりソレノイドSの励磁が終了すると該モータMの駆動力を払出ユニット30に伝達するので、一のモータMとソレノイドSのみで動作させることができ、部品点数を低減させることができるとともに、消費電力量を低減させることができる。従って、本実施の形態である硬貨処理装置によれば、部品点数の削減を図るとともに、消費電力量の低減化を図ることができる。特に部品点数の削減を図ることで、製造コストの低減化を図ることも可能である。
【0057】
上記硬貨処理装置によれば、一のモータMとソレノイドSのみで動作させることができるので、従来のように複数のソレノイドを要していたのに比して装置全体の質量を低減させることができる。
【0058】
また、上記硬貨処理装置によれば、一のモータMとソレノイドSのみで動作させることができるので、従来のように複数のソレノイドを要する場合に比して各種磁力が相互に影響し受け板33の移動制御が不安定となってしまう虞れがない。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0060】
上述した実施の形態では、ソレノイドSが励磁された場合に選択ユニット40にモータMの駆動力を伝達し、ソレノイドSの励磁が終了した場合に払出ユニット30にモータMの駆動力を伝達していたが、本発明においては、ソレノイドSの励磁が終了した場合に選択ユニット40に駆動源の駆動力を伝達し、ソレノイドSが励磁された場合に払出ユニット30にモータMの駆動力を伝達しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係る硬貨処理装置は、例えば缶入り飲料やペットボトル入り飲料等を販売する自動販売機に有用である。
【符号の説明】
【0062】
10 装置本体
14 硬貨保持部
14a 釣銭チューブ
15 硬貨払出部
16 払出口
20 伝達ユニット
21 第1伝達ギア
22 第2伝達ギア
23 クラッチレバー
231 挿通孔
232 挿通孔
25a 第1クラッチ軸
25a1 拡径部
25b 第2クラッチ軸
25b1 拡径部
25c 第1ピン部材
25c1 突起
25d 第2ピン部材
25d1 突起
26 払出ギア
27 選択ギア
30 払出ユニット
31 駆動ベース
32 払出板
32a 開口
33 受け板
331 水平延在部
332 垂上部
40 選択ユニット
41 硬貨カム
411 切欠
M モータ
S ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を金種毎に保持する硬貨保持手段から前記硬貨を所定金額分だけ選択して払い出す硬貨払出手段を備えた硬貨処理装置において、
前記硬貨払出手段は、
前記硬貨に嵌合可能な複数の開口が形成され、駆動する場合に各開口に硬貨を嵌合した状態で移動して前記硬貨保持手段より金種毎に一枚ずつ硬貨を引き出す払出板と、
前記払出板の下方域において各開口に対応して移動可能に設けられた複数の受け板と、
払出対象となる対象硬貨については、対象硬貨と嵌合する開口に対応する受け板が前記払出板と一体的に移動することを許容して該開口を開放して対象硬貨を払出可能にする一方、払出対象以外の対象外硬貨については、対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板が前記払出板と一体的に移動することを規制して該開口を閉塞して対象外硬貨の払い出しを規制する規制手段と、
硬貨選択指令が与えられた場合には、駆動源からの駆動力を前記規制手段に伝達して対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板の移動を規制する一方、硬貨払出指令が与えられた場合には、前記駆動源からの駆動力を前記払出板に伝達して該払出板を駆動させる伝達手段と
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記伝達手段は、動力源から動力が付与された場合には、駆動源からの駆動力を前記規制手段に伝達して対象外硬貨と嵌合する開口に対応する受け板の移動を規制する一方、前記動力源からの動力の付与が停止した場合には、前記駆動源からの駆動力を前記払出板に伝達して該払出板を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−146084(P2012−146084A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3338(P2011−3338)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】