硬貨払出装置
【課題】 硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知し、かつ払い出し不具合が発生しない構造が簡単に実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 チェンジスライド9は、待機状態においてはコインベース6に設けられた払出孔6aに突出して、前記ペイアウトスライド7によって硬貨が引き出される際には硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部と、該硬貨載置部から硬貨を落下方向へ案内するように形成された傾斜部とを具える。
【解決手段】 チェンジスライド9は、待機状態においてはコインベース6に設けられた払出孔6aに突出して、前記ペイアウトスライド7によって硬貨が引き出される際には硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部と、該硬貨載置部から硬貨を落下方向へ案内するように形成された傾斜部とを具える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機、両替機、サービス機器等の機器内部に配設された硬貨処理装置に関し、特に硬貨処理装置に投入されて蓄積収容された硬貨を釣銭として払い出す硬貨払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動販売機、両替機、サービス機器等の機器内部には、投入硬貨の真偽を判別して正貨を金種別に選別収容するとともに、この選別収容された硬貨を釣銭として払い出す硬貨処理装置が搭載されている。
【0003】
この硬貨処理装置の下部に配設される硬貨払出装置は、投入硬貨の正偽を判別して正貨を金種別に選別する硬貨選別部の下方にあって、該硬貨選別部から落下する硬貨を積載収納するための直線的かつ並列に設けられた複数の硬貨収納筒と、該硬貨収容筒の下方域に固着されたコインベースと、硬貨収容筒の下端とコインベースとの間にスライド自在に支承され、硬貨収納筒全ての最下層にある硬貨を一枚ずつ引き出すペイアウトスライドと、このペイアウトスライド下方に配設され、当該ペイアウトスライドにより引き出された硬貨を載置し、この硬貨の落下払出を制御するチェンジスライドから構成されている。
【0004】
なお、本出願人は、硬貨の払い出しに際して、前記硬貨収容筒内に蓄積された硬貨を最後の一枚まで有効的に釣銭として使用するとともに、硬貨の払い出しを迅速かつ確実に行うため、前記硬貨収納筒各々に対して硬貨確認センサを配置して、引き出した硬貨を検知し、さらに該硬貨確認センサを利用して、硬貨払い出し完了の確認を行う技術を開発している(特願2009−162817号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−162817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような硬貨払出装置においては、該硬貨払出装置を備える硬貨処理装置全体の大きさから、前記硬貨収納筒からペイアウトスライドによって硬貨を引き出す量を最低限にして、装置全体の小型化を図っている。
【0007】
したがって、図7に示すように、硬貨収納筒5を上から覗くと、コインベース6に形成され、前記ペイアウトスライドによって引き出された硬貨を落下させる払出孔6aの一部を確認することができる。
【0008】
図8に示すように、硬貨収容筒5内に硬貨Mが蓄積収容されている状態においては、硬貨収容筒5内に落下してきた硬貨Mは、最上層の硬貨Mに衝突し、回転して正常な姿勢(水平姿勢)になるが、図9に示すように、硬貨収納筒5が空の状態では、上述した払出孔6aの一部に落下してきた硬貨Mが入り込むことがある。
【0009】
すると、硬貨Mの一部はコインベース6とペイアウトスライド7あるいはチェンジスライド9の一部との間に引っ掛かり、回転できないこと(以下、「硬貨立ち」と称する)が発生することがある。
【0010】
硬貨立ちが発生すると、さらに、後続の硬貨によっても姿勢が正常にならず払出不可能に至る、もしくは硬貨立ちした硬貨Mとペイアウトスライド7とが衝突、ロックし、払出不可能に至る虞もある。
【0011】
いずれの現象も発生頻度は少ないが、硬貨払出機能が停止するという重大な問題であるために、解決すべき課題である。
【0012】
そこで、本発明は、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知し、かつ払い出し不具合が発生しない構造を、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明の硬貨払出装置では、チェンジスライドは、待機状態においては硬貨筒下方のコインベースに設けられた払出孔に突出して、前記ペイアウトスライドによって硬貨が引き出される際には硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部と、該硬貨載置部から硬貨を落下方向へ案内するように形成された傾斜部とを具えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬貨払出装置では、上記構成により、待機状態において、コインベースとチェンジスライドとの間に極力隙間を作らないようにするとともに、硬貨払出時において、ペイアウトスライドに引き出された硬貨が硬貨払出位置に到達するまで水平姿勢を保持するようにしたから、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知する構成を、硬貨立ち等の払い出し不具合が発生せず、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る硬貨払出装置の構成を示す要部概念破断面図。
【図2A】本発明に係るチェンジスライドの上面斜視図。
【図2B】本発明に係るチェンジスライドの平面図。
【図2C】本発明に係るチェンジスライドの右側面図。
【図3】待機状態におけるコインベースとチェンジスライドの位置関係を示す要部概念破断面図。
【図4】待機状態における硬貨払出装置の下部の構成を示す平面破断面図。
【図5】投入された硬貨が正常に収容される様子を示す要部概念破断面図。
【図6A】硬貨確認センサによる硬貨検知時における硬貨払出装置の要部概念破断面図。
【図6B】硬貨払出時における硬貨払出装置の要部概念破断面図。
【図7】待機状態における従来の硬貨払出装置の下部の構成を示す平面破断面図。
【図8】従来の硬貨払出装置において投入された硬貨が正常に収容される様子を示す要部概念破断面図。
【図9】従来の硬貨払出装置において投入された硬貨が硬貨立ちした様子を示す要部概念破断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る硬貨払出装置の一実施例を示して詳述する。
【0017】
図1に示す硬貨払出装置1は、筐体2からなる硬貨処理装置本体下部に搭載される硬貨払出部3と、筐体2に着脱自在に装着される硬貨収容部4とから構成される。
【0018】
この硬貨収容部4は、金種毎に用意された複数本の硬貨収容筒5と、硬貨収容筒5の底部となるコインベース6と、硬貨収容筒5とコインベース6との間に図1の図面左右方向へスライド自在に支承され、硬貨収容筒5に蓄積収容された硬貨Mを一枚ずつ引き出すペイアウトスライド7とを備えている。
【0019】
また、硬貨払出部3は、図示せぬ駆動モーターにより回動する図示せぬ円板形状のモーターカムと、このモーターカムに連動して図1の図面左右方向へ往復スライド移動するリンク8と、各硬貨収容筒5毎に配設され、ペイアウトスライド7より引き出された硬貨Mの下面支持とその解除とを選択的に行って硬貨の払い出しと非払い出しとを制御するチェンジスライド9と、チェンジスライド9の移動可否を決める硬貨選択ソレノイド10と、硬貨収容筒5裏側(図面右側の方向。以下も同様に「硬貨収納筒5裏側」と称する)に隣接し、ペイアウトスライド7によって引き出された硬貨Mを検知するための硬貨確認センサ11とを備えている。
【0020】
なお、リンク8とペイアウトスライド7とは、硬貨収容部4を筐体2に装着した際に互いに凹凸嵌着して連結され、ペイアウトスライド7は、リンク8を介し上記図示せぬモーターカムに連動して、図1の図面左右水平方向へコインベース6に沿って、往復スライド移動するようにしている。
【0021】
そして、上記図示せぬ駆動モーターおよび払出硬貨選択ソレノイド10は、図示せぬ制御装置からの硬貨払出指令等に基づいて駆動し、それぞれ硬貨払出動作と、各硬貨収容筒5内の特定の金種のみの払い出しとを制御している。
【0022】
上述のとおり、本発明による硬貨払出装置1の基本的な構成は、特願2009−162817号に示す硬貨処理装置の構成と同様であるが、本発明においては、チェンジスライド9の形状が従来のものとは大きく異なっている。
【0023】
チェンジスライド9は、図2A、図2Bおよび図2Cに示すように、その前方に、硬貨が引き出される際に硬貨の下面の一部を支持する硬貨載置部9aと、チェンジスライド9の先端に形成された傾斜部9bとを有している。
【0024】
この硬貨載置部9aは、チェンジスライド9の全幅に設けられ、その上面が水平な平面で形成されて、チェンジスライド9が硬貨払出位置に在る状態においては、硬貨の落下を阻害しない範囲の大きさで形成されるものである(図6B参照)。
【0025】
また、傾斜部9bは、硬貨載置部9aと同様に、チェンジスライド9の全幅に設けられ、かつ、図3に示すように、待機状態においては、コインベース6に対してチェンジスライド9の先端の一部が上下方向に略重なるように、コインベース6の傾斜部6bと略同一な傾斜で形成されるものである。
【0026】
なお、硬貨払出時におけるチェンジスライド9の各部の働きについては、後に詳述する。
【0027】
上記構成により、図4において、チェンジスライド9のコインベース6と上下方向に重なっている部分を破線で示すとおり、待機状態においては、チェンジスライド9が硬貨収納筒5の下面にあるコインベース6とペイアウトスライド7との間の円弧状の隙間の略全域を塞ぐようにしている。
【0028】
このように、コインベース6とチェンジスライド9との間に極力隙間を作らないようにすることによって、図5に示すように、硬貨収容筒5が空の状態においても、投入された硬貨Mは、コインベース6とチェンジスライド9との間に引っ掛かることなく、硬貨収容筒5の最下層に正常に収容される。
【0029】
なお、チェンジスライド9の硬貨載置部9aは、上述した通り、ペイアウトスライド7によって硬貨が引き出される際には硬貨の下面の一部を支持し、チェンジスライド9が硬貨払出位置に在る状態においては、硬貨の落下を阻害しないように形成されるものなので、硬貨載置部9aの大きさは必ずしも払出孔6a(図6A等参照)すべてを塞ぐような大きさである必要はなく、引き出された硬貨に対して、その硬貨の一部の下面を支持する範囲があれば、図2A、図2Bおよび図2Cに示すように、矩形な平面であってもよい。
【0030】
また、図4に示すように、コインベース6の円弧形状に対してチェンジスライド9側が直線形状であっても、落下してきた硬貨の先端は、チェンジスライド9の傾斜部9bによって進行を妨げられた上に、コインベース6にもチェンジスライド9にも引っ掛かることなく回転して、正常に収納される。
【0031】
次に、本願の硬貨払出装置1における、硬貨払出動作について説明するとともに、本発明のチェンジスライド9の働きをより詳細に説明する。
【0032】
図示せぬ制御装置からの指令に応じて、払出硬貨選択ソレノイド10が駆動するとともに、図示せぬモーターカムが駆動してリンク8を介しペイアウトスライド7とチェンジスライド9とが硬貨収容筒5裏側の方向にスライド移動して、硬貨収容筒5内の硬貨Mが引き出される。
【0033】
図6Aに示すように、ペイアウトスライド7によって引き出された硬貨Mがコインベース6上を移動している時は、チェンジスライド9の硬貨載置部9aが、硬貨Mの下面の一部を支承するので、硬貨Mは、コインベース6とチェンジスライド9の硬貨載置部9aとによって水平姿勢を保持されたれたまま、硬貨確認センサ11の直下に到達して、硬貨確認センサ11に検知される。
【0034】
そして、コインベース6とチェンジスライド9の硬貨載置部9aとによって硬貨Mの姿勢を水平に保持したまま、ペイアウトスライド7は、さらに、硬貨Mを硬貨収容筒5裏側の方向に移動させる。
【0035】
図6Bに示すように、ペイアウトスライド7によって、硬貨Mが完全に引き出されると、硬貨Mはコインベース6から外れて、硬貨収容筒5表側から落下が始まり、硬貨確認センサ11が硬貨の払い出しを検知する。
【0036】
この際、チェンジスライド9の硬貨載置部9aは、硬貨Mの落下を阻害しない範囲において、払出孔6aの硬貨収納筒5裏側方向の一部を塞いだままであるようにして、確実に硬貨収容筒5表側から硬貨Mの落下が始まるように、硬貨の落下方向を規制している。
【0037】
また同時に、チェンジスライド9の先端に形成された傾斜部9bによって、硬貨Mを落下方向に案内するようにしている。
【0038】
以後、動作は継続し、リンク8とペイアウトスライド7とチェンジスライド9とは、図1に示す待機位置に戻り、払出硬貨選択ソレノイド10および図示せぬモーターカムの駆動が停止して待機状態に戻る。
【0039】
上記硬貨Mの払い出しに際して、硬貨検出センサ11による硬貨Mの検出と硬貨Mの落下払い出しとを確実に行うために、ペイアウトスライド7が硬貨Mを引き出して、図6Bに示す硬貨払出位置に達した際に、ペイアウトスライド7の動作が停止する時間を設けるようにしてもよい。
【0040】
なお、硬貨非払出時においては、払出硬貨選択ソレノイド10が作動せず、チェンジスライド9は待機位置に維持される一方で、他の硬貨筒5内の硬貨を払い出すためにリンク8およびペイアウトスライド7は硬貨筒5裏側方向に移動するとともに、ペイアウトスライド7が硬貨Mを引き出して、硬貨確認センサ11が硬貨Mを検出する。
【0041】
ペイアウトスライド7は、さらに、硬貨Mを硬貨筒5裏側方向に図5Bに示す硬貨払出位置まで移動させるが、チェンジスライド9が硬貨Mの下面を支持して硬貨Mの落下を規制するため、硬貨Mの払い出しは行われない。
【0042】
その後、リンク8とペイアウトスライド7と硬貨Mとは硬貨筒5表側方向に移動を続け、図1に示す待機位置まで戻る。
【0043】
このように、本発明の硬貨払出装置では、待機状態において、コインベースとチェンジスライドとの間に極力隙間を作らないようにするとともに、硬貨払出時において、ペイアウトスライドに引き出された硬貨が硬貨払出位置に到達するまで水平姿勢を保持するようにしている。
【0044】
これによって、本発明は、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知する構成を、硬貨立ち等の払い出し不具合が発生せず、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することができる。
【0045】
なお、本実施例においては、チェンジスライドの先端形状を、図2A、図2Bおよび図2Cに示すように矩形形状にしているが、チェンジスライドの先端形状は、上記実施例のものに限るものではなく、上述の如き構成および作用効果を満たすものであれば、どのような形状であってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 硬貨払出装置
2 筐体(硬貨処理装置本体)
3 硬貨払出部
4 硬貨収容部
5 硬貨収容筒
6 コインベース
6a 払出孔
6b 傾斜部
7 ペイアウトスライド
8 リンク
9 チェンジスライド
9a 硬貨載置部
9b 傾斜部
10 払出硬貨選択ソレノイド
11 硬貨確認センサ
M 硬貨
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機、両替機、サービス機器等の機器内部に配設された硬貨処理装置に関し、特に硬貨処理装置に投入されて蓄積収容された硬貨を釣銭として払い出す硬貨払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動販売機、両替機、サービス機器等の機器内部には、投入硬貨の真偽を判別して正貨を金種別に選別収容するとともに、この選別収容された硬貨を釣銭として払い出す硬貨処理装置が搭載されている。
【0003】
この硬貨処理装置の下部に配設される硬貨払出装置は、投入硬貨の正偽を判別して正貨を金種別に選別する硬貨選別部の下方にあって、該硬貨選別部から落下する硬貨を積載収納するための直線的かつ並列に設けられた複数の硬貨収納筒と、該硬貨収容筒の下方域に固着されたコインベースと、硬貨収容筒の下端とコインベースとの間にスライド自在に支承され、硬貨収納筒全ての最下層にある硬貨を一枚ずつ引き出すペイアウトスライドと、このペイアウトスライド下方に配設され、当該ペイアウトスライドにより引き出された硬貨を載置し、この硬貨の落下払出を制御するチェンジスライドから構成されている。
【0004】
なお、本出願人は、硬貨の払い出しに際して、前記硬貨収容筒内に蓄積された硬貨を最後の一枚まで有効的に釣銭として使用するとともに、硬貨の払い出しを迅速かつ確実に行うため、前記硬貨収納筒各々に対して硬貨確認センサを配置して、引き出した硬貨を検知し、さらに該硬貨確認センサを利用して、硬貨払い出し完了の確認を行う技術を開発している(特願2009−162817号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−162817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような硬貨払出装置においては、該硬貨払出装置を備える硬貨処理装置全体の大きさから、前記硬貨収納筒からペイアウトスライドによって硬貨を引き出す量を最低限にして、装置全体の小型化を図っている。
【0007】
したがって、図7に示すように、硬貨収納筒5を上から覗くと、コインベース6に形成され、前記ペイアウトスライドによって引き出された硬貨を落下させる払出孔6aの一部を確認することができる。
【0008】
図8に示すように、硬貨収容筒5内に硬貨Mが蓄積収容されている状態においては、硬貨収容筒5内に落下してきた硬貨Mは、最上層の硬貨Mに衝突し、回転して正常な姿勢(水平姿勢)になるが、図9に示すように、硬貨収納筒5が空の状態では、上述した払出孔6aの一部に落下してきた硬貨Mが入り込むことがある。
【0009】
すると、硬貨Mの一部はコインベース6とペイアウトスライド7あるいはチェンジスライド9の一部との間に引っ掛かり、回転できないこと(以下、「硬貨立ち」と称する)が発生することがある。
【0010】
硬貨立ちが発生すると、さらに、後続の硬貨によっても姿勢が正常にならず払出不可能に至る、もしくは硬貨立ちした硬貨Mとペイアウトスライド7とが衝突、ロックし、払出不可能に至る虞もある。
【0011】
いずれの現象も発生頻度は少ないが、硬貨払出機能が停止するという重大な問題であるために、解決すべき課題である。
【0012】
そこで、本発明は、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知し、かつ払い出し不具合が発生しない構造を、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明の硬貨払出装置では、チェンジスライドは、待機状態においては硬貨筒下方のコインベースに設けられた払出孔に突出して、前記ペイアウトスライドによって硬貨が引き出される際には硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部と、該硬貨載置部から硬貨を落下方向へ案内するように形成された傾斜部とを具えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬貨払出装置では、上記構成により、待機状態において、コインベースとチェンジスライドとの間に極力隙間を作らないようにするとともに、硬貨払出時において、ペイアウトスライドに引き出された硬貨が硬貨払出位置に到達するまで水平姿勢を保持するようにしたから、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知する構成を、硬貨立ち等の払い出し不具合が発生せず、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る硬貨払出装置の構成を示す要部概念破断面図。
【図2A】本発明に係るチェンジスライドの上面斜視図。
【図2B】本発明に係るチェンジスライドの平面図。
【図2C】本発明に係るチェンジスライドの右側面図。
【図3】待機状態におけるコインベースとチェンジスライドの位置関係を示す要部概念破断面図。
【図4】待機状態における硬貨払出装置の下部の構成を示す平面破断面図。
【図5】投入された硬貨が正常に収容される様子を示す要部概念破断面図。
【図6A】硬貨確認センサによる硬貨検知時における硬貨払出装置の要部概念破断面図。
【図6B】硬貨払出時における硬貨払出装置の要部概念破断面図。
【図7】待機状態における従来の硬貨払出装置の下部の構成を示す平面破断面図。
【図8】従来の硬貨払出装置において投入された硬貨が正常に収容される様子を示す要部概念破断面図。
【図9】従来の硬貨払出装置において投入された硬貨が硬貨立ちした様子を示す要部概念破断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る硬貨払出装置の一実施例を示して詳述する。
【0017】
図1に示す硬貨払出装置1は、筐体2からなる硬貨処理装置本体下部に搭載される硬貨払出部3と、筐体2に着脱自在に装着される硬貨収容部4とから構成される。
【0018】
この硬貨収容部4は、金種毎に用意された複数本の硬貨収容筒5と、硬貨収容筒5の底部となるコインベース6と、硬貨収容筒5とコインベース6との間に図1の図面左右方向へスライド自在に支承され、硬貨収容筒5に蓄積収容された硬貨Mを一枚ずつ引き出すペイアウトスライド7とを備えている。
【0019】
また、硬貨払出部3は、図示せぬ駆動モーターにより回動する図示せぬ円板形状のモーターカムと、このモーターカムに連動して図1の図面左右方向へ往復スライド移動するリンク8と、各硬貨収容筒5毎に配設され、ペイアウトスライド7より引き出された硬貨Mの下面支持とその解除とを選択的に行って硬貨の払い出しと非払い出しとを制御するチェンジスライド9と、チェンジスライド9の移動可否を決める硬貨選択ソレノイド10と、硬貨収容筒5裏側(図面右側の方向。以下も同様に「硬貨収納筒5裏側」と称する)に隣接し、ペイアウトスライド7によって引き出された硬貨Mを検知するための硬貨確認センサ11とを備えている。
【0020】
なお、リンク8とペイアウトスライド7とは、硬貨収容部4を筐体2に装着した際に互いに凹凸嵌着して連結され、ペイアウトスライド7は、リンク8を介し上記図示せぬモーターカムに連動して、図1の図面左右水平方向へコインベース6に沿って、往復スライド移動するようにしている。
【0021】
そして、上記図示せぬ駆動モーターおよび払出硬貨選択ソレノイド10は、図示せぬ制御装置からの硬貨払出指令等に基づいて駆動し、それぞれ硬貨払出動作と、各硬貨収容筒5内の特定の金種のみの払い出しとを制御している。
【0022】
上述のとおり、本発明による硬貨払出装置1の基本的な構成は、特願2009−162817号に示す硬貨処理装置の構成と同様であるが、本発明においては、チェンジスライド9の形状が従来のものとは大きく異なっている。
【0023】
チェンジスライド9は、図2A、図2Bおよび図2Cに示すように、その前方に、硬貨が引き出される際に硬貨の下面の一部を支持する硬貨載置部9aと、チェンジスライド9の先端に形成された傾斜部9bとを有している。
【0024】
この硬貨載置部9aは、チェンジスライド9の全幅に設けられ、その上面が水平な平面で形成されて、チェンジスライド9が硬貨払出位置に在る状態においては、硬貨の落下を阻害しない範囲の大きさで形成されるものである(図6B参照)。
【0025】
また、傾斜部9bは、硬貨載置部9aと同様に、チェンジスライド9の全幅に設けられ、かつ、図3に示すように、待機状態においては、コインベース6に対してチェンジスライド9の先端の一部が上下方向に略重なるように、コインベース6の傾斜部6bと略同一な傾斜で形成されるものである。
【0026】
なお、硬貨払出時におけるチェンジスライド9の各部の働きについては、後に詳述する。
【0027】
上記構成により、図4において、チェンジスライド9のコインベース6と上下方向に重なっている部分を破線で示すとおり、待機状態においては、チェンジスライド9が硬貨収納筒5の下面にあるコインベース6とペイアウトスライド7との間の円弧状の隙間の略全域を塞ぐようにしている。
【0028】
このように、コインベース6とチェンジスライド9との間に極力隙間を作らないようにすることによって、図5に示すように、硬貨収容筒5が空の状態においても、投入された硬貨Mは、コインベース6とチェンジスライド9との間に引っ掛かることなく、硬貨収容筒5の最下層に正常に収容される。
【0029】
なお、チェンジスライド9の硬貨載置部9aは、上述した通り、ペイアウトスライド7によって硬貨が引き出される際には硬貨の下面の一部を支持し、チェンジスライド9が硬貨払出位置に在る状態においては、硬貨の落下を阻害しないように形成されるものなので、硬貨載置部9aの大きさは必ずしも払出孔6a(図6A等参照)すべてを塞ぐような大きさである必要はなく、引き出された硬貨に対して、その硬貨の一部の下面を支持する範囲があれば、図2A、図2Bおよび図2Cに示すように、矩形な平面であってもよい。
【0030】
また、図4に示すように、コインベース6の円弧形状に対してチェンジスライド9側が直線形状であっても、落下してきた硬貨の先端は、チェンジスライド9の傾斜部9bによって進行を妨げられた上に、コインベース6にもチェンジスライド9にも引っ掛かることなく回転して、正常に収納される。
【0031】
次に、本願の硬貨払出装置1における、硬貨払出動作について説明するとともに、本発明のチェンジスライド9の働きをより詳細に説明する。
【0032】
図示せぬ制御装置からの指令に応じて、払出硬貨選択ソレノイド10が駆動するとともに、図示せぬモーターカムが駆動してリンク8を介しペイアウトスライド7とチェンジスライド9とが硬貨収容筒5裏側の方向にスライド移動して、硬貨収容筒5内の硬貨Mが引き出される。
【0033】
図6Aに示すように、ペイアウトスライド7によって引き出された硬貨Mがコインベース6上を移動している時は、チェンジスライド9の硬貨載置部9aが、硬貨Mの下面の一部を支承するので、硬貨Mは、コインベース6とチェンジスライド9の硬貨載置部9aとによって水平姿勢を保持されたれたまま、硬貨確認センサ11の直下に到達して、硬貨確認センサ11に検知される。
【0034】
そして、コインベース6とチェンジスライド9の硬貨載置部9aとによって硬貨Mの姿勢を水平に保持したまま、ペイアウトスライド7は、さらに、硬貨Mを硬貨収容筒5裏側の方向に移動させる。
【0035】
図6Bに示すように、ペイアウトスライド7によって、硬貨Mが完全に引き出されると、硬貨Mはコインベース6から外れて、硬貨収容筒5表側から落下が始まり、硬貨確認センサ11が硬貨の払い出しを検知する。
【0036】
この際、チェンジスライド9の硬貨載置部9aは、硬貨Mの落下を阻害しない範囲において、払出孔6aの硬貨収納筒5裏側方向の一部を塞いだままであるようにして、確実に硬貨収容筒5表側から硬貨Mの落下が始まるように、硬貨の落下方向を規制している。
【0037】
また同時に、チェンジスライド9の先端に形成された傾斜部9bによって、硬貨Mを落下方向に案内するようにしている。
【0038】
以後、動作は継続し、リンク8とペイアウトスライド7とチェンジスライド9とは、図1に示す待機位置に戻り、払出硬貨選択ソレノイド10および図示せぬモーターカムの駆動が停止して待機状態に戻る。
【0039】
上記硬貨Mの払い出しに際して、硬貨検出センサ11による硬貨Mの検出と硬貨Mの落下払い出しとを確実に行うために、ペイアウトスライド7が硬貨Mを引き出して、図6Bに示す硬貨払出位置に達した際に、ペイアウトスライド7の動作が停止する時間を設けるようにしてもよい。
【0040】
なお、硬貨非払出時においては、払出硬貨選択ソレノイド10が作動せず、チェンジスライド9は待機位置に維持される一方で、他の硬貨筒5内の硬貨を払い出すためにリンク8およびペイアウトスライド7は硬貨筒5裏側方向に移動するとともに、ペイアウトスライド7が硬貨Mを引き出して、硬貨確認センサ11が硬貨Mを検出する。
【0041】
ペイアウトスライド7は、さらに、硬貨Mを硬貨筒5裏側方向に図5Bに示す硬貨払出位置まで移動させるが、チェンジスライド9が硬貨Mの下面を支持して硬貨Mの落下を規制するため、硬貨Mの払い出しは行われない。
【0042】
その後、リンク8とペイアウトスライド7と硬貨Mとは硬貨筒5表側方向に移動を続け、図1に示す待機位置まで戻る。
【0043】
このように、本発明の硬貨払出装置では、待機状態において、コインベースとチェンジスライドとの間に極力隙間を作らないようにするとともに、硬貨払出時において、ペイアウトスライドに引き出された硬貨が硬貨払出位置に到達するまで水平姿勢を保持するようにしている。
【0044】
これによって、本発明は、硬貨収納筒から引き出した硬貨を、硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで確実に検知する構成を、硬貨立ち等の払い出し不具合が発生せず、簡単に、新たに部品を追加したり、周辺部品の構成を変えたり、硬貨処理装置全体のサイズを大きくしたりせず、従来と同じ部品構成で実現でき、以って量産化の推進が可能である硬貨払出装置を提供することができる。
【0045】
なお、本実施例においては、チェンジスライドの先端形状を、図2A、図2Bおよび図2Cに示すように矩形形状にしているが、チェンジスライドの先端形状は、上記実施例のものに限るものではなく、上述の如き構成および作用効果を満たすものであれば、どのような形状であってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 硬貨払出装置
2 筐体(硬貨処理装置本体)
3 硬貨払出部
4 硬貨収容部
5 硬貨収容筒
6 コインベース
6a 払出孔
6b 傾斜部
7 ペイアウトスライド
8 リンク
9 チェンジスライド
9a 硬貨載置部
9b 傾斜部
10 払出硬貨選択ソレノイド
11 硬貨確認センサ
M 硬貨
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金種毎に用意された複数本の硬貨収容筒と、
該硬貨収容筒の下方域に固着されたコインベースと、
前記硬貨収容筒と前記コインベースとの間にスライド自在に支承されて、前記複数の硬貨収容筒の下端からそれぞれ一枚ずつ硬貨を同時に引き出すペイアウトスライドと、
該ペイアウトスライドにより引き出された各硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って前記引き出された硬貨の払い出しと非払い出しとを制御する複数本のチェンジスライドとを有し、
前記ペイアウトスライドによって引き出した硬貨を前記硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで検知してから落下させて払い出す硬貨払出装置において、
前記チェンジスライドは、待機状態においてはコインベースに設けられた払出孔に突出して、前記ペイアウトスライドによって硬貨が引き出される際には硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部と、該硬貨載置部から硬貨を落下方向へ案内するように形成された傾斜部とを具えることを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項2】
前記硬貨載置部は、前記チェンジスライドの移動方向に対して直交する方向に延在し、かつ前記チェンジスライドの先端の全幅に形成されることを特徴とする請求項1に記載の硬貨払出装置。
【請求項1】
金種毎に用意された複数本の硬貨収容筒と、
該硬貨収容筒の下方域に固着されたコインベースと、
前記硬貨収容筒と前記コインベースとの間にスライド自在に支承されて、前記複数の硬貨収容筒の下端からそれぞれ一枚ずつ硬貨を同時に引き出すペイアウトスライドと、
該ペイアウトスライドにより引き出された各硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って前記引き出された硬貨の払い出しと非払い出しとを制御する複数本のチェンジスライドとを有し、
前記ペイアウトスライドによって引き出した硬貨を前記硬貨収納筒裏側に設けた硬貨確認センサで検知してから落下させて払い出す硬貨払出装置において、
前記チェンジスライドは、待機状態においてはコインベースに設けられた払出孔に突出して、前記ペイアウトスライドによって硬貨が引き出される際には硬貨の一部の下面を支持する硬貨載置部と、該硬貨載置部から硬貨を落下方向へ案内するように形成された傾斜部とを具えることを特徴とする硬貨払出装置。
【請求項2】
前記硬貨載置部は、前記チェンジスライドの移動方向に対して直交する方向に延在し、かつ前記チェンジスライドの先端の全幅に形成されることを特徴とする請求項1に記載の硬貨払出装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−118597(P2012−118597A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265124(P2010−265124)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】
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