説明

硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【目的】硬質ポリウレタンフォームのセル径がマイクロセルラー化するための製造方法を提供しようとするものである。
【構成】ポリイソシアネート成分と、ポリオール、水、触媒、整泡剤およびその他助剤成分を含むポリオール成分とを混合後、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造に際し、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の混合の前において、ポリオール成分に微細気泡発生装置によって発生させた微細気泡を導入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関し、より詳細には、微細気泡発生装置によって発生させた微細気泡をポリオール成分に導入することにより、得られたフォームのセル径が微細なもの(以下、「マイクロセルラー」ともいう。)となる硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームは、断熱性、施工性等に優れ、住宅、冷蔵倉庫等の断熱材や構造材として広く利用されている。該フォームは、通常ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを発泡剤の存在下で反応させることにより製造され,発泡剤としてハイドロフルオロカーボン(HFC)及び/又は二酸化炭素が使用されている。
【0003】
しかしながら、HFCは地球温暖化係数(GWP)が高いため、将来は使用が規制される方向にある。また、二酸化炭素は環境に優しい発泡剤であるが、水とポリイソシアネートの反応によって発生する二酸化炭素でスプレー発泡させた硬質ウレタンフォームは、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を使用したものに比べて、接着性の低下など施工性に問題があり、熱伝導率も高く断熱性に劣るものである。
【0004】
一方、非特許文献1は、硬質ウレタンフォームの熱伝導率への輻射の寄与について考察し、輻射はセル径が小さいほど小さくなることを示している。すなわち、セル径を小さく出来れば輻射も小さくなり、その結果、熱伝導率を下げることが出来、断熱性に優れたフォームを得ることができる。
【0005】
そして、セル径を小さくするために、例えば非特許文献2にはウレタン原料成分の攪拌過程で巻き込まれた空気が発泡時の気泡の核としてはらたき、核が多いほどウレタンフォームのセルが多くなる、すなわちセルが細かくなることを示している。
【0006】
また、特許文献1には、セル径を小さくするために、導入する気泡の粒径は20μm以下、好ましくは10μm以下であり、気体の導入方法としてはスタティックミキサーや強制攪拌翼を備えるガスローディング装置が示されている。
【0007】
そして、この文献1では、発泡剤として減粘剤でもあるペンタンを使用しているために、ポリオール成分の粘度を25℃で200 mPa・s以下にすることが出来るので、上記ガスローディング装置を用いて、20μm以下の気泡を導入することが出来る。
【0008】
しかしながら、ポリイソシアネートと水との反応によって発生する二酸化炭素を発泡剤として利用する場合、水を含むポリオール成分の粘度は25℃で500 mPa・s以上と高いものである。その結果、上記ガスローディング装置を用いて、20μm以下の気泡を導入することは困難である問題があった。
【特許文献1】特開2007-269820号公報
【非特許文献1】L. D. Booth, ”Radiation Contribution as an Element of Thermal Conductivity”, Polyurethanes World Congress 1987, p. 85-90
【非特許文献2】B. Kanner and T.G. Decker ,”Urethane Foam Formation - Role of the Silicone Surfactant” , J. Cell. Plast. 5 , (1969), p. 32-39
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリイソシアネートと水との反応によって発生する二酸化炭素を発泡剤として利用して硬質ポリウレタンフォームを得るものであり、この際の水は例えば予めポリオール成分に含有されていたり、或いは第三成分としてポリオール成分中に投入されるものである。その結果、ポリオール成分の粘度が25℃で500 mPa・s以上と高くなるが、このようにポリオール成分の粘度が高かったとしても、20μm以下の気泡をポリオール成分中に所定量導入することが出来、スプレー発泡させることによって得られた硬質ポリウレタンフォームのセル径がマイクロセルラー化するための製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール、水、触媒、整泡剤およびその他助剤成分を含むポリオール成分とを混合後、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造に際し、微細気泡発生装置によって発生させた微細気泡を高粘度のポリオール成分に導入して多数の気泡核を生成させることを特徴とするものである。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール、水、触媒、整泡剤およびその他助剤成分を含むポリオール成分とを混合後、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造に際し、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の混合の前において、ポリオール成分に微細気泡発生装置によって発生させた微細気泡を導入することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、微細気泡発生装置が多孔質セラミックスを介して気体を導入する装置であり、該多孔質セラミックスの孔径が1μm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径が20μm以下であることを特徴するものである。
【0014】
また、請求項4に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、微細気泡の導入量が、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との合計量に対して、1〜20vol%であることを特徴するものである。
【0015】
また、請求項5に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、微細気泡発生装置により導入される気体が、空気、窒素、二酸化炭素のいずれかであることを特徴するものである。
【0016】
また、請求項6に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、硬質ポリウレタンフォームのセル径が、150μm以下であることを特徴するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリオール成分が高粘度であっても、ポリオール成分に多数の微細気泡を導入することができ、このためにスプレー発泡させて得られた硬質ポリウレタンフォームは、セル径が150μm以下のマイクロセルラーとすることができるので、輻射による伝熱が抑制され、二酸化炭素発泡にも係わらず熱伝導率を0.024w/(m・K)以下にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール、水、触媒、整泡剤およびその他助剤成分を含むポリオール成分とを混合し、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームにおいて、ポリオール成分に微細気泡発生装置によって発生させた微細気泡を導入した後、両者を混合し、スプレー発泡する。その結果、得られる硬質ポリウレタンフォームのセル径をマイクロセルラー化出来るものである。
【0019】
微細気泡発生装置としては、以下に記載する4つの方式が挙げられる。
【0020】
1)流路内の構造を複雑化して液の流通駆動力により発生した主として過流由来の大きな粘性剪断力により気体を粉砕するスタティックミキサー方式、
2)超音波によるキャビテーション方式、
3)微細な孔径を持つ多孔質体を介して気体を圧入分散させることにより発生させる微細孔方式、
4)気液二相の高速旋回又は衝突によって気体を剪断する気液剪断方式である。
【0021】
そして、本発明は、ポリイソシアネートと水との反応によって発生する二酸化炭素を発泡剤として利用して硬質ポリウレタンフォームを製造するものであり、ポリオール成分の粘度は、水の添加方法(予めポリオール成分に加える、又は第三成分として加える)に拘わらず25℃で500 mPa・s以上と高いものである。その結果、上記1)スタティックミキサー方式や上記2)超音波方式では、20μm以下の気泡を導入することが困難であった。
【0022】
また、上記気液剪断方式は、気液二相流体を高速旋回させて気体を剪断する高速旋回装置又は気液二相に高圧の液体を衝突混合させて発生させる装置はいずれも大型のため、硬質ウレタンフォームのスプレー発泡装置には取り付け難い。したがって、スプレー発泡装置には、小型である微細孔方式が好ましく用いられる。
【0023】
本発明の微細気泡発生装置として用いる微細孔方式とは、多孔質セラミックスを介して気体を導入するものであり、該多孔質セラミックスの孔径が1μm以下の微細且つ均一な孔径を持つものが用いられ、好ましくは、孔径が0.02〜0.4μmのものである。また、孔径が1μmを超えると微細気泡を発生させることが困難となり易く、孔径が0.02μm未満ではポリオール成分に対する気体の圧入が困難である。また、該多孔質セラミックスとしては、例えばシラス多孔質ガラス(以下、「SPG膜」ともいう。)やファインセラミックス(以下、「セラミックフィルタ」ともいう。)が挙げられる。
【0024】
本発明の微細気泡発生装置によりポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径は20μm以下、好ましくは、10μm以下である。また、20μmを超えると、得られる硬質ポリウレタンフォームのセル径がマイクロセルラーになり難い。
【0025】
また、微細気泡の導入量はポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計量に対し、1〜20vol%が好ましい。1vol%未満であるとマイクロセルラーになり難く、20vol%を超えるとスプレー(吹付け)ガンによるスプレーパターンが不安定となり易い。
【0026】
また、微細気泡発生装置は、ポリオール成分タンクからミキシングヘッドに至る流路において設置することができる。例えば、特開2004-107376号公報に記載されているように水と液体状態の二酸化炭素とをポリオール成分タンクからミキシングヘッドに至る流路において導入する場合には、水と液体状態の二酸化炭素とが導入された後からミキシングヘッドに至る流路において、微細気泡発生装置を設置することが好ましく、さらに好ましくは、ポリオール成分の流路において、ミキシングヘッドの直前に設けられた加温ホース中に、微細気泡発生装置を設置するものである。
【0027】
さらに、微細孔方式の微細気泡発生装置を用いて、ポリオール成分に微細気泡を導入する際、微細孔を有するシラス多孔質ガラス(SPG膜)又はファインセラミックを使用し、圧縮空気ボンベから圧力をかけてポリオール成分に導入する。この時の圧力は、少なくとも配管中を流れているポリオール成分の圧力よりも大きいことが必要である。例えば、配管中を流れているポリオール成分の圧力が、6.5〜7.5Mpaの場合、微細孔方式の微細気泡発生装置を用いて気体をポリオール成分に導入する圧力は7〜8Mpaでポリオール成分の圧力よりも大きいことが必要である。
【0028】
ポリオール成分に導入した微細気泡の平均粒径は、例えば画像式粒度分布計で測定することができる。
【0029】
本発明は、ポリイソシアネートと水との反応によって発生する二酸化炭素を発泡剤として利用して硬質ポリウレタンフォームを製造するものであり、すなわち、ポリオール成分に予め水を添加しているものであるが、特開2004-107376号公報に記載されているようにポリイソシアネート成分とポリオール成分の混合の前において水や液体状態の二酸化炭素とをポリオール成分に加えてもよく、また、液体状態の二酸化炭素及び水の使用量並びに使用されるポリオール、ポリイソシアネート、触媒、難燃剤などの種類と使用量等は、特開2004-107376号公報に記載された通りである。
【0030】
また、特開2004-107376号公報に記載されているように、ポリオール成分に液体状態の二酸化炭素及び水を投入する位置からミキシングヘッドまでの間にスタティックミキサーを設けてもよく、その場合、ポリオール成分中に水と液体状態の二酸化炭素とを効率的に混合させることが出来る。
【0031】
本発明を、実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0032】
実施例及び比較例において使用した原料は以下の通りである。
【0033】
ポリイソシアネート:ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(NCO%:31.0%)
ポリオールA:ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルポリオール(水酸基価110)
ポリオールB:マンニッヒ系ポリエーテルポリオール(水酸基価315)
シリコーン整泡剤:東レ・ダウコーニング(株)製、SH193
触媒A:ペンタメチルジエチレントリアミン(エアプロダクツ(株)製、POLYCAT 5)
触媒B:トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン(エアプロダクツ(株)製、ポリキャット41)
触媒C:オクチル酸鉛(大日本インキ化学(株)製、Pb-Oc)
難燃剤:トリスクロロプロピルホスフェート(大八化学(株)製、TMCPP)
減粘剤:プロピレンカーボネート
【0034】
次に、硬質ポリウレタンフォームの製造する装置について図1を参照して説明する。
【0035】
ポリイソシアネート成分1は、タンク2から配管4を介して接続された計量ポンプ3で計量され、設定温度に加温するためのヒーター部18、加温ホース19を経て、ミキシングヘッド5に移送される。
【0036】
ポリオール成分11は、タンク12から配管13を介して接続された計量ポンプ14で計量され、設定温度に加温するためのヒーター部10、加温ホース9、微細気泡発生装置20、加温ホース9を経て、ミキシングヘッド5に移送される。
【0037】
水貯蔵タンク15の水は、各ポンプと連動して動作する計量ポンプ16によって計量され、配管13に接続した配管17を通ってポリオール成分に投入され、ミキシングヘッド5に至る流路で移送中のポリオール成分中に混合される。
【0038】
二酸化炭素ボンベ6の液体状態の二酸化炭素は、各ポンプと連動して動作する計量ポンプ7によって計量され、配管13に接続した配管8を通ってポリオール成分に投入され、ミキシングヘッド5に至る流路で移送中のポリオール成分中に混合される。
【0039】
微細気泡発生装置20として微細孔方式を採用し、具体的には、シラス多孔質ガラス(SPG膜)又はセラミックフィルター(CF)を図1に示すように、ヒーター部10とミキシングヘッド5の間(すなわち、加温ホース9の所定位置)に設置される。
【0040】
そして、図2に示すように微細気泡発生装置20を用いて、ポリオール成分中に微細気泡となる気体(図2の「高圧気体」に相当。)を導入する。なお、気体の導入量は、質量流量計で測定した。
【0041】
ポリイソシアネート成分と、二酸化炭素及び水が混合されたポリオール成分は、加温ホース内にて温度と圧力が、50℃、7Mpaに保持される。さらに、ポリオール成分は、微細孔方式の微細気泡発生装置20によって20μm以下の微細気泡が導入され、その後、ミキシングヘッド5内でその微細気泡が導入されたポリオール成分とポリイソシアネート成分とがが衝突混合されて大気中に液状或いは泡状のミストで噴出される。その後、反応硬化して硬質ポリウレタンフォームが形成される。
【0042】
(実施例1)
表1に記載の処方に従ってポリオール成分を作成した。また、微細孔方式の発生装置20としては、SPGテクノ(株)製の0.4μmの孔径を有するシラス多孔質ガラス(表1において、「SPG膜」とする。)を装着したモジュールを使用し、圧縮空気ボンベから圧力8 MPaで、且つポリイソシアネート成分とポリオール成分との合計に対して10 vol%の空気を図2に示す高圧気体としてポリオール成分に導入した。
【0043】
また、使用したSPG膜は、耐圧が1MPaと低いので破壊を防止するため図3に示すように、SPG膜の外側と内側に小孔を有する金属管を設けた。なお、図3(a)に示すものは、微細孔方式の発生装置20に設けられている状態図であり、図3(b)に示すものは、図3(a)の構造を説明するために展開した図である。
【0044】
なお、発生装置20により微細気泡が導入された後のポリオール成分において、微細気泡の平均粒径の測定を行った。測定方法は、液体状態の二酸化炭素をポリオール成分に添加しない表1の配合処方のポリオール成分に対して、発生装置20により微細気泡を導入し、ミキシングヘッド5から抜き取ったポリオール成分中の気泡の平均粒子径を(株)日本レーザー製の画像解析式粒子計測システムVisiSizerにて測定した。その結果、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径は3μmであった。
【0045】
表1に記載の配合処方にしたがい、図1に示す装置(グラコ社製FF1600発泡機)を使用してポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合し、厚さ12mmの合板にフォーム厚みが30mmとなるようにスプレー発泡して硬質ポリウレタンフォームを得た。
【0046】
得られたフォームから、密度、熱伝導率、セルサイズを測定した。その結果、表1に示したように、フォーム密度は、27.5kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは145 μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0239W/(m・K)であった。
【0047】
なお、表1に示す各物性は、次のような方法により測定した。
フォーム密度(kg/m3):JIS A-9511に準拠
熱伝導率(W/m・K):JIS A-1412に示される熱流計法により英弘精機社製オートΛHC-074を用いて平均温度23℃で測定した。
セルサイズ:電子顕微鏡で測定した。
【0048】
(実施例2)
導入空気量が20 vol%にした以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、27.7kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは140μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0238W/(m・K)であった。
【0049】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、3μmであった。
【0050】
(実施例3)
導入気体(図2に示す高圧気体)を二酸化炭素とし、導入二酸化炭素量を15 vol%とした以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、27.0kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは140μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0236W/(m・K)であった。
【0051】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、4μmであった。
【0052】
(実施例4)
導入気体(図2に示す高圧気体)を窒素とし、導入窒素量を15 vol%とした以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、27.4kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは145μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0238W/(m・K)であった。
【0053】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、4μmであった。
【0054】
(実施例5)
微細気泡発生装置20が(株)ノリタケカンパニーリミテッド製の0.05μmの孔径を有するセラミックフィルタ(表1において、「CF」とする。)である以外は、実施例2と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、27.3kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは140μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0237W/(m・K)であった。
【0055】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、4μmであった。
【0056】
なお、ノリタケカンパニーリミテッド製の0.05μmの孔径を有するセラミックフィルタは、耐圧が1Mpaよりも高いものであるため、図3に示すような外・内金属管を用いなくともよい。
【0057】
(比較例1)
微細孔方式の発生装置を用いない以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、27.7kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは255μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0270W/(m・K)であった。
【0058】
このように比較例1は微細気泡を導入していないためにセル径が大きく、熱伝導率も高い結果であった。
【0059】
(比較例2)
導入空気量を0.5vol%にした以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、27.2kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは210μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0255W/(m・K)であった。
【0060】
このように比較例2は微細孔方式による空気の導入量が1vol %未満であったためにセル径が大きく、熱伝導率も高い結果であった。
【0061】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、3μmであった。
【0062】
(比較例3)
SPG膜の孔径を2μmとした以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーし、硬質ポリウレタンフォームを得た。この得られたフォームの物性を同様にして測定した結果は、表1中に示したように、フォームの密度は、25.0kg/m3、電子顕微鏡で測定した平均セルサイズは240μmであり、発泡24時間後の熱伝導率は0.0268W/(m・K)であった。
【0063】
このように比較例3は、微細孔方式による微細孔の径が1μmを超えるものであったためにセル径が大きく、熱伝導率も高い結果であった。
【0064】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、25μmであった。
【0065】
(比較例4)
導入空気量を30vol%にした以外は、実施例1と同じ方法にてスプレーした。しかしながら、空気の導入量が20 vol %を超えていたため、吹付けパターンが変化するために均一な厚さの硬質ウレタンフォームを得ることができなかった。したがって、密度、セル径、熱伝導率を測定することが出来なかった。
【0066】
なお、ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径についても実施例1と同じ方法にて測定を行った。その結果、4μmであった。
【0067】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】硬質ポリウレタンフォームの製造装置の一態様を示す図である。
【図2】微細気泡発生装置20について説明するための図である。
【図3】SPG膜(又はCF)の外側と内側に金属管を設けた一態様を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ポリイソシアネート成分 2 ポリイソシアネート成分タンク
3 ポンプ 4 配管
5 ミキシングヘッド 6 液体状態の二酸化炭素ボンベ
7 計量ポンプ 8 配管
9 加温ホース 10 ヒーター
11 ポリオール成分 12 ポリオール成分タンク
13 配管 14 計量ポンプ
15 水貯蔵タンク 16 計量ポンプ
17 配管 18 ヒーター
19 加温ホース 20 微細気泡発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分と、
ポリオール、水、触媒、整泡剤およびその他助剤成分を含むポリオール成分とを混合後、スプレー発泡させて得られる硬質ポリウレタンフォームの製造に際し、
ポリイソシアネート成分とポリオール成分の混合の前において、ポリオール成分に微細気泡発生装置によって発生させた微細気泡を導入することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
微細気泡発生装置は多孔質セラミックスを介して気体を導入する装置であり、
該多孔質セラミックスの孔径が1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリオール成分に導入された微細気泡の平均粒径が20μm以下であることを特徴する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
微細気泡の導入量がポリイソシアネート成分とポリオール成分との合計量に対して、1〜20vol%であることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
微細気泡発生装置により導入される気体が、空気、窒素、二酸化炭素のいずれかであることを特徴する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームのセル径が150μm以下であることを特徴する硬質ポリウレタンフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−242535(P2009−242535A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90098(P2008−90098)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係わる特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト委託研究,産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】