説明

硬質基材用フルオロポリマーブレンドのコーティング

非粘着性コーティングシステムにおいて、プライマーおよび/または少なくとも1つのミッドコートの上に塗布できるフルオロポリマーコーティング組成物。コーティング組成物は液状分散体の形態で調製し塗布できる。その組成物には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような少なくとも1つのフルオロポリマーであって、詳細には少なくとも1つの高分子量PTFE(HPTFE)の主要成分が含有される。コーティング組成物にはさらに、フルオロポリマーブレンド組成物が含有される。フルオロポリマーブレンド組成物は、少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)と少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーのブレンドである。基材の上に直接、または下塗りコーティングの上に塗布すると、HPTFEのみまたは少量の溶融加工可能なフルオロポリマーを有するHPTFEを含有する既知のコーティングと比較して、改善された耐摩耗性および耐引掻き性、並びに改善された剥離特性が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国法典第35巻特許法第119条(e)(U.S.C§119(e))の元で、2008年9月26日出願米国仮特許出願シリアル番号第61/100,311号(特許文献1)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS);2008年10月31日出願米国仮特許出願シリアル番号第61/109,950号(特許文献2)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド添加物含有のフルオロポリマートップコート」(FLUOROPOLYMER TOPCOATS INCLUDING BLENDED FLUOROPOLYMER ADDITIVES);2009年1月16日出願米国仮特許出願シリアル番号第61/145,433号(特許文献3)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS)、;および2009年1月20日出願米国仮特許出願シリアル番号第61/145,875号(特許文献4)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS)の恩恵を主張し、これらの全体の開示は参考として本明細書中に明確に援用される。
【0002】
1.技術分野
本発明はフルオロポリマーに関し、特に非粘着性表面および/または耐摩耗性が所望される調理器具またはその他の用途のような硬質基材に使用されるコーティングに関する。詳細には、本発明は改善された非粘着性または剥離特性および/または改善された耐摩耗性を有するフルオロポリマーコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーは、水素原子の一部または全てがフッ素で置換されている直鎖エチレン反復単位を主として有する長鎖ポリマーである。例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メチルフルオロアルコキシ(MFA)、フルオロエチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニルが挙げられる。
【0004】
フルオロポリマーを含有する非粘着性コーティングシステムは、異物が付着されない非粘着性コーティングを有するコーティングされた基材を提供するために基材表面に単一コートまたは多数回コートで塗布される。多層コーティングシステムでは、非粘着性コーティングには一般的に、プライマーおよびトップコートおよび所望により1つまたは複数のミッドコートが含まれる。
【0005】
基材に多層に塗布される非粘着性コーティングシステムの利用は長年知られている。そのようなシステム用のプライマーには一般的に、耐熱性有機結合剤樹脂および1つ以上のフルオロポリマー樹脂、並びに各種不透明顔料およびフィラーが含有される。ミッドコートには、主としてフルオロポリマーが含有され、若干量の不透明顔料、フィラーおよび凝集助剤が併用される。一方、トップコートは、ほとんど全てがフルオロポリマー、例えば完全に高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)だけで、または少量の溶融加工可能なフルオロポリマーを含んだHPTFEで構成される。
【0006】
従来品より優れている非粘着性コーティングシステムが必要なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国仮特許出願シリアル番号第61/100,311号
【特許文献2】米国仮特許出願シリアル番号第61/109,9500号
【特許文献3】米国仮特許出願シリアル番号第61/145,433号
【特許文献4】米国仮特許出願シリアル番号第61/145,875号
【特許文献5】米国特許出願シリアル番号第12/468,580号
【特許文献6】米国特許第4,014,834号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、非粘着性コーティングシステムにおいて、プライマーおよび/または少なくとも1つのミッドコートの上に塗布できるフルオロポリマーコーティング組成物を提供する。そのコーティング組成物は液状分散体の形態で調製および塗布でき、かつ少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、詳細には少なくとも1つの高分子量PTFE(HPTFE)を含有する。コーティング組成物は更に、フルオロポリマーブレンド組成物を含有する。そのフルオロポリマーブレンド組成物は、少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)と少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーとのブレンドである。基材に直接に、または下地塗装の上に塗布した後、そのコーティングは、既知のコーティングと比較して改善された耐摩耗性および耐引掻き性、並びに改善された剥離特性を示す。既知のコーティングにはHPTFEのみ、または少量の溶融加工可能なフルオロポリマーを有したHPTFEが含有される。
【0009】
本発明の一形態において、本発明はフルオロポリマーコーティング組成物を提供し、そのコーティング組成物は、コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして30重量%〜96重量%の間の量で存在するフルオロポリマー主要成分であって、そのフルオロポリマー主要成分は少なくとも500,000の数平均分子量(M)を有する高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)を含有する少なくとも1つのフルオロポリマーを有するフルオロポリマー主要成分;コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして4重量%〜70重量%の間の量で存在するフルオロポリマーブレンド組成物であって、そのフルオロポリマーブレンド組成物が、335℃以下の第一融点(T)を有する少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)とを含むフルオロポリマーブレンド組成物;を含む。
【0010】
フルオロポリマー主要成分は、コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、60重量%〜96重量%の間の量で存在でき、フルオロポリマーブレンド組成物は4重量%〜40重量%の間の量で存在できる。少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)は、コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、2重量%〜15重量%の間の量で存在でき、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)は2重量%〜15重量%の間の量で存在できる。
【0011】
少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーは、フルオロポリマーブレンド組成物中のフルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、20重量%〜85重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むことができる。少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーは、フルオロポリマーブレンド組成物中のフルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むことができる。
【0012】
少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)は、平均粒子径が、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、および0.2ミクロン(μm)以下からなる群から選択されるものであることができる。少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)は、第一融点(T)が、332℃以下、330℃以下、329℃以下、328℃以下、327℃以下、326℃以下、および335℃以下からなる群から選択されるものであることができる。少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)は、エマルション重合によって得られ、凝集、熱劣化、または放射線照射を受けずに、平均粒子径が1.0ミクロン(μm)以下であるLPTFE;エマルション重合によって得られ、その後の分子量低減工程を経てまたは経ないで得られるLPTFE;および懸濁重合によって得られ、その後の分子量低減工程を経てまたは経ないで得られるLPTFEミクロパウダー;からなる群から選択できる。
【0013】
少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)は、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)の重量を基準にして1重量%未満の量で変性コモノマーを含有することができる。少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)は、1.0ミクロン(μm)以下の平均粒子径を有する。
【0014】
本発明の別の実施形態では、コーティングされた物品を提供し、そのものは、硬質基材と、その硬質基材の上のコーティングとが含まれ、そのコーティングには、コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして30重量%〜96重量%の間の量で存在し、数平均金分子量(M)が少なくとも500,000である少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE);数平均金分子量(M)が500,000未満である少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFFE);および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が含まれる。
【0015】
コーティング中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、少なくとも1つのフルオロポリマーの主要成分が60重量%〜96重量%の間の量で存在し、かつ少なく1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFFE)と少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)とが合計して4重量%〜40重量%の間の量で存在することができる。コーティング中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、その少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が2重量%〜15重量%の間の量で存在し、かつ少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が2重量%〜15重量%の間の量で存在することができる。
【0016】
少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)は、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)との固形物合計重量を基準にして20重量%〜85重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むことができる。少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)は、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)との固形物合計重量を基準にして37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含んでもよい。
【0017】
コーティングは、接触角が少なくとも110°、および/または60°で測定した光沢度が少なくとも反射率25%、および/または表面粗度が100nm未満であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記事項並びにその他の特徴および利点、並びにそれらを達成する方法は、付録の図面と関連させて行われる以下の本発明の実施形態の説明によってより明らかになり、本発明自体がより良好に理解されるであろう。
【0019】
【図1】実施例6に対応する対照のトップコートのレーザー式プロファイル測定メーター画像
【図2】本開示に従って作製された実施例6のトップコートのレーザー式プロファイル測定メーター画像
【図3】HPTFE含量対実施例1トップコートのエッグ剥離試験の評点のグラフ
【図4】HPTFE含量対実施例1トップコートの往復摩耗試験結果のグラフ
【図5】HPTFE含量対実施例1トップコートの機械的引掻き付着試験(MSAT)結果 のグラフ
【図6】HPTFE含量対実施例1トップコートの60°光沢度のグラフ
【図7】HPTFE含量対実施例1トップコートの接触角のグラフ
【図8】LPTFE含量対実施例1トップコートのエッグ剥離試験の評点のグラフ
【図9】LPTFE含量対実施例1トップコートの往復摩耗試験結果のグラフ
【図10】LPTFE含量対実施例1トップコートの機械的引掻き付着試験(MSAT)結果のグラフ
【図11】LPTFE含量対実施例1トップコートの接触 のグラフ
【図12】LPTFE含量対実施例1トップコートの60°光沢度のグラフ
【図13】MPF含量対実施例1トップコートのエッグ剥離試験評点のグラフ
【図14】MPF含量対実施例1トップコートの往復摩耗試験結果のグラフ
【図15】MPF含量対実施例1トップコートの機械的引掻き付着試験(MSAT)結果 のグラフ
【図16】MPF含量対実施例1トップコートの60°光沢度のグラフ
【図17】MPF含量対実施例1トップコートの接触角のグラフ
【図18】実施例8トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットしたエッグ剥離試験結果のコンタープロット
【図19】実施例8トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした往復摩耗試験結果のコンタープロット
【図20】実施例8トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした機械的引掻き付着試験(MSAT)結果 のコンタープロット
【図21】実施例8トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした測定光沢度のコンタープロット
【図22】実施例8トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした測定接触角のコンタープロット
【図23】実施例8トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした、ドライエッグ剥離試験結果、往復摩耗試験結果、機械的引掻き付着試験(MSAT)結果、測定光沢度、および測定接触角の正規化結果のコンタープロット
【図24】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットしたドライエッグ剥離試験のコンタープロット
【図25】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした焦げミルク試験のコンタープロット
【図26】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした測定光沢度のコンタープロット
【図27】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした測定接触角のコンタープロット
【図28】実施例9において下地塗装Aの上に塗布したトップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした往復摩耗試験のコンタープロット
【図29】実施例9において下地塗装Bの上に塗布したトップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした往復摩耗試験のコンタープロット
【図30】実施例9において下地塗装Aの上に塗布したトップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした機械的引掻き付着試験(MSAT)のコンタープロット
【図31】実施例9において下地塗装Bの上に塗布したトップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした機械的引掻き付着試験(MSAT)のコンタープロット
【図32】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした摩耗試験の正規化結果のコンタープロット
【図33】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした剥離試験の正規化結果のコンタープロット
【図34】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした表面特性の正規化コンタープロット
【図35】実施例9トップコートにおける、LPTFE含量およびMPF(PFA)含量に対してプロットした、摩耗試験、剥離試験、および表面特性の正規化結果のコンタープロット
【0020】
本明細書で詳述される例示は本発明の実施形態を説明するものであり、そのような説明は、いかなる方式においても本発明の範囲を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、非粘着性コーティングシステムにおいて、プライマーの上および/またはすくなくとも1つのミッドコートの上に塗布できるフルオロポリマーコーティングを提供する。そのコーティング組成物は液状分散体の形態で調製および塗布でき、かつ少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、詳細には少なくとも1つの高分子量PTFE(HPTFE)を含有する。更にそのコーティング組成物はフルオロポリマーブレンド組成物を含有する。そのフルオロポリマーブレンド組成物は、少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)と少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーとのブレンドである。基材に直接に、または下層コーティングの上に塗布した後、そのコーティングは、既知のコーティングと比較して改善された耐摩耗性および耐引掻き性、並びに改善された剥離特性を示す。既知のコーティングにはHPTFEのみ、または少量の溶融加工可能なフルオロポリマーを有したHPTFEが含有される。
【0022】
一実施形態では、本コーティング組成物は下層コーティングまたは下塗りの上に塗布される。その下塗りは下地塗装であってもよく、下塗りは基材上に直接塗布されるコーティングであり(時にはプライマーと呼ばれる)、所望により1つ以上のミッドコートと同時に塗布される。これらの実施形態において、本コ―ティング剤は本明細書では「オーバーコート」または「トップコート」と呼ばれ、これらの用語は一般的に置き換え可能である。他の実施形態では、本コーティング組成物は基材に直接塗布してその基材と直接的に接触したコーティングを形成でき、そのためコーティングはいかなる下塗りの上にも塗布されない。更なる実施形態では、本コーティングシステム自体が下塗りであることができる。
【0023】
本コーティング組成物は一般的に、少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分および少なくとも1つのフルオロポリマーブレンド組成物を含有する。フルオロポリマー主要成分は一般的に高分子量PTFE(HPTFE)である。フルオロポリマーブレンド組成物は、少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)を含有する。
【0024】
I.フルオロポリマー主要成分
フルオロポリマー主要成分には、少なくとも1つのフルオロポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンのコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン(FEP)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとペルフルオロビニルエーテル(PFA)とポリビニリデンフロリド(PVDF)のコポリマー、およびテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、並びにニフッ化ビニリデンのコポリマー(THV)、およびその他のペルフルオロ化ポリマーが挙げられる。PTFE系のフルオロエラストマーもまた使用できる。
【0025】
一般的には、フルオロポリマー主要成分は1つ以上のペルフルオロ化フルオロポリマー、詳細には1つ以上の従来型の高分子量PTFE(HPTFE)成分であろう。
【0026】
HPTFEの数平均分子量(M)は、一般的に少なくとも500,000であり、少なくとも1,000,000であってもよい。そして液状分散体および/または粉末形態の好適なHPTFEは、多くの市販元から入手可能である。液状HPTFE分散体は一般的に、安定性のために界面活性剤を含有し、「不安定化」HPTFEは一般的に1.0重量%未満の界面活性剤を含有するが、それらは同様に入手可能であり、同様に使用できる。粉末が使用される場合、その粉末は一般的には、液体中に分散させてコーティング組成物が調製されるであろう。
【0027】
幾つかの実施形態では、HPTFEは、少量の変性コモノマーを含有していてもよく、その場合HPTFEは当技術分野で「変性PTFE」または「微量変性PTFE」として知られるコポリマーである。変性コモノマーの例には、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が挙げられ、その他の変性剤例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)が挙げられ、またはその他のペルフルオロアルキルビニルエーテル例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、もしくはペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)が挙げられる。変性コモノマーは一般的に、例えばHPTFEの重量を基準にして1%未満の量で存在するであろう。
【0028】
II.フルオロポリマーブレンド組成物
【0029】
フルオロポリマーブレンド組成物には、少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが含有される。好適なフルオロポリマー化合物およびブレンドを以下で論じ、また2009年5月19日出願米国特許出願シリアル番号第12/468,580号(特許文献5)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS)、で、本発明の譲受人に譲渡される特許においても論じられ、その開示は参考として本明細書中に明確に援用される。
【0030】
A.低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)
本フルオロポリマーブレンド組成物の中の第一のフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の液状分散体であることができ、詳細には、低分子量(LPTFE)および/または、所望により以下で詳細に論じられるその他の特性を有するPTFEの液状分散体であることができる。
【0031】
殆どの実施形態におけるLPTFEの液状分散体は水性分散体であろうが、LPTFEはその他の溶剤に分散してもよく、および/または元々水性相にあるLPTFEをヘキサン、アセトン、またはアルコールを初めとする有機溶剤のような別の溶剤に転相してもよい。
【0032】
上記のように生産された場合、LPTFEの平均粒子径は、ISO 13320に準拠したレーザー光回折を用いるような好適な方法により測定すると、1.0ミクロン(μm)以下、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、または0.2ミクロン(μm)以下であろう。幾つかの実施形態では、LPTFEの平均粒子径は、例えば30,50,100,もしくは150nmと同じくらい小さく、または200,250,もしくは350nmと同じくらい大であってもよい。
【0033】
LPTFEの数平均分子量(M)は一般的に500,000未満であろうが、殆どの実施形態では、例えば、10,000以上、もしくは20,00以上、もしくは25,000以上と同じくらい小さく、または200,000以下、もしくは100,000以下、もしくは70,000以下、もしくは60,000以下、もしくは50,000以下と同じくらい大であってもよい。
【0034】
LPTFEの分子量を特徴付ける他の方式は、例えば示差走査熱量測定(DSC)のような好適な方法によって決定されるような第一融点(T)によるものであり、それによるLPTFEの第一融点(T)は335℃以下である。他の実施形態では、LPTFEの第一融点は332℃以下、330℃以下、329℃以下、328℃以下、337℃以下、326℃以下、325℃以下であってもよい。
【0035】
LPTFEは、安定化された、不安定化された、または最小安定化された水性分散体の形態で提供できる。本明細書で用いる場合、「不安定化」または「最小安定化」は、従来型の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤などをLPTFE水性分散体の重量を基準にして1.0重量%未満で含有する水性分散体を指す。幾つかの実施形態では、LPTFE分散体は、1.0重量%未満の界面活性剤、0.8重量%未満の界面活性剤、0.6重量%未満の界面活性剤、または更には0.5重量%未満の界面活性剤を有する水性分散体の形態であってもよい。他の実施形態では、LPTFE分散体は一般的に1〜12重量%の界面活性剤を有する、「安定化」された水性分散体の形態であってもよい。しかしながら、採用される安定化対策のタイプは本発明に決定的な特性ではない。
【0036】
また、以下に論じるようにLPTFEは固形ミクロパウダーの形態で提供できる。
【0037】
LPTFEは一般的に低分子量PTFEホモポリマーの形態である。しかしながら、他の実施形態では、LPTFEは少量の変性コモノマーを含有していてもよく、その場合PTFEは当技術分野で「変性PTFE」または「微量変性PTFE」として知られるコポリマーである。変性コモノマーの例には、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が挙げられ、その他の変性剤例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)が挙げられ、またはその他のペルフルオロアルキルビニルエーテル例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、もしくはペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)が挙げられる。変性コモノマーは一般的に、例えばPTFEに対して1%未満の量で存在するであろう。
【0038】
好適なLPTFEには、SFN−D(中昊晨光化工研究院(Chenguang R.I.)、C. I, Chengdu, 610036 P.R. China、から入手可能)並びにTE3877N(デュポンから入手可能)が挙げられる。その他のLPTFEミクロパウダーには、ダイニオン(Dyneon)TF−9207(ダイニオン有限責任会社から入手可能)、LDW−410(ダイキン工業社から入手可能)、およびMP−25、MP−55、MP−8T、およびUF8TA(それぞれはローレル(Laurel)製品社から入手可能)が挙げられる。
【0039】
これらのフルオロポリマーは、以下の表1に説明される特性を有する。
表1 典型的な低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)の特性
【0040】
【表1】

【0041】
本発明で使用できるLPTFEの典型的タイプを以下で論じる。
i.分散重合またはエマルション重合物のLPTFEであって生産後に凝集、放射線照射、または熱劣化が行われないもの。
【0042】
本発明の第一の実施形態において、LPTFEは分散重合またはエマルション重合のような当技術分野で良く知られた重合方法で生産される。これらの重合プロセスは、生産されるフルオロポリマーの平均分子量を低減させる連鎖移動剤を用いて行われるか、および/または重合プロセスを制御して重合させ、低分子量を有するPTFE(LPTFE)粒子の液状分散体を直接的に形成させる別の方法によって行われる。
【0043】
これらの実施形態では、LPTFEは、分散重合またはエマルション重合により生産された後で凝集、放射線照射または熱劣化が行われない。詳細には、LPTFEは製造工程中でいかなる凝集工程も受けずに、従って小さい粒子径を保持する。更にLPTFEは熱劣化を受けて分子量を低減されることがない。その上LPTFEは、高エネルギー電子ビームのような放射線照射を受けて分子量を低減させることがない。これらの実施形態では、LPTFE分散体は、電子常磁性共鳴(ESR)分光または電子スピン共鳴(ESR)分光にかけたときにスペクトルが示されないおよび/または検出限界以下である。そのことは、照射されたPTFEではそのようなスペクトルが示され、および/または別方法で検出可能なフリーラジカルを有することとは対照的である。
【0044】
これらのタイプのLPTFE分散体は水性分散体として提供され、それらは制御された分散重合またはエマルション重合プロセスによって得られ、LPTFE重合物が直接的に生産され、生産後に凝集、熱劣化、または放射線照射を受けることがない。当業者は、これらのタイプのLPTFE分散体が、市販のその他のPTFEと異なっていると認識するであろう。
【0045】
第一に、これらのLPTFE分散体は、粒状重合または懸濁重合として当技術分野で良く知られる重合プロセスによって製造されるPTFEとは異なっている。粒状重合または懸濁重合は粒状PTFE樹脂または粒状PTFE成形粉として当技術分野で知られるPTFEを生じる。粒状PTFEは一般的に、少なくとも1,000,000以上の数平均分子量(M)のような高分子量を有し、かつ335℃より高い、典型的には335℃よりもはるかに高い第一融点(T)を有する。粒状PTFE樹脂は一般的に、数ミクロン、典型的には10〜700ミクロン(μm)の平均粒子径を有する粒子を含有する固形または粉末形態で提供される。これらの樹脂はまた、例えば20〜40ミクロン(μm)の平均粒子径を有する粒度分画樹脂としても供給され得る。
【0046】
更に、これらのタイプのLPTFE分散体は一般的に0.2〜20ミクロン(μm)の間の粒子径を有し、粒状PTFEミクロパウダーとして知られる、低分子量材料を形成するために高分子量PTFE樹脂から放射線照射または熱劣化による分解で調製された低分子量材料とは区別できる。粒状PTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)(Zonyl)MP1200、MP1300およびMP1400樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)が挙げられる。
【0047】
第二に、これらのタイプのLPTFE分散体はまた、それにより高分子量PTFEに重合させるために連鎖移動剤を用いない分散重合またはエマルション重合から作製される高分子量PTFE分散体とも異なる。高分子量PTFEは、少なくとも1,000,000以上の数平均分子量(M)を有し、335℃より高い、一般的には335℃よりもはるかに高い第一融点(T)を有する。これらの高分子量PTFE分散体は一般的に、1.0重量%、典型的には1.0重量%よりもはるかに多い量で存在する従来型の界面活性剤を用いて安定化されている。
【0048】
更に、これらのタイプのLPTFE分散体は、分散重合またはエマルション重合によって生産され、その後で凝固または凝集される高分子量PTFE分散体とも異なる。
【0049】
その上、これらのタイプのLPTFE分散体は、分散重合またはエマルション重合によって生産され、その後で凝固または凝集され、次いで熱劣化または放射線照射を受けて、当技術分野でPTFEミクロパウダーとして知られる低分子量PTFEを形成する高分子量PTFE分散体と異なる。そのPTFEミクロパウダーは、例えば押出し成形およびその他の用途のために0.2〜20ミクロン(μm)の粒子径を有する固形粉末として提供される。PTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)(Zonyl)MP1000、MP1100、MP1500およびMP1600樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)が挙げられる。しかしながら、以下に論じられるように、これらのタイプのLPTFEミクロパウダーもまた本発明の第2の実施形態で使用できる。
【0050】
第三に、これらのタイプのLPTFE分散体は、LPTFEミクロパウダーとは異なる。LPTFEミクロパウダーは連鎖移動剤の存在下の分散重合またはエマルション重合によって重合させ、その後凝集させて例えば、0.2〜20ミクロン(μm)の平均粒子径を有するPTFEミクロパウダーを形成する。
【0051】
ii.LPTFEミクロパウダー
本発明の第二の実施形態では、LPTFEはLPTFEミクロパウダーの形態であることができる。
【0052】
第一タイプのLPTFEミクロパウダーは、分散重合またはエマルション重合によって生産される高分子量PTFE分散体から誘導される。その分散体はその後凝固または凝集され、次いで熱劣化または放射線照射を受けて、当技術分野でPTFEミクロパウダーとして知られる低分子量PTFE粉末を形成し、本明細書ではこれをLPTFEミクロパウダーと呼ぶ。このLPTFEミクロパウダーは一般的に、0.2〜20ミクロン(μm)の代表的な粒径を有する固形の粉末として供給される。
【0053】
これらのLPTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)(Zonyl)MP1000、MP1500およびMP1600樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)、およびMP−25、MP−55およびUF8TA(それぞれはローレル製品社から入手可能)が挙げられる。
【0054】
第二タイプのLPTFEミクロパウダーは、高分子量の粒状PTFE樹脂から誘導される。その樹脂は放射線照射または熱劣化によって熱分解され、粒状PTFEミクロパウダーとして知られる低分子量材料を形成し、この粒状LPTFEミクロパウダーは一般的に、0.2〜20ミクロン(μm)の範囲にある代表的な粒径を有する。
【0055】
これらのタイプのLPTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)MP−1200、MP−1300およびMP−1400樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)、およびMP−8TおよびMP−10(ローレル製品社から入手可能)が挙げられる。
【0056】
第三タイプのこれらのLPTFEミクロパウダーは、連載移動剤の存在下の分散重合またはエマルション重合によって重合され、その後凝集されて、例えば0.2〜20ミクロン(μm)の代表的な平均粒子径を有するLPTFEミクロパウダーを形成することができる。
【0057】
B.溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)
フルオロポリマーブレンド組成物の第二のフルオロポリマーは、1つ以上の溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)からなる液状分散体であることができ、その溶融加工可能なフルオロポリマーは、例えばペルフルオロアルコキシ(PFA)(テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロアルキルビニルエーテルとのコポリマー)などであることができ、それらには、メチルフルオロアルコキシ(MFA)(テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)とのコポリマー)、およびエチルフルオロアルコキシ(EFA)(エトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)とのコポリマー)が挙げられ;およびフッ素化エチレンプロピレン(FEP)であることができる。
【0058】
MPFは、当技術分野で分散重合またはエマルション重合としてよく知られる重合プロセスによって生産できる。これらの重合プロセスは、生産されるフルオロポリマーの平均分子量を低減させる連鎖移動剤を用いて、および/または重合プロセスを制御してMPFが直接的に重合した粒子の液状分散体が形成される他の方法を用いて行われる。
【0059】
殆どの実施形態では、そのMPFが分散重合またはエマルション重合によって生産され、その後の凝集、放射線照射、または熱劣化が行われない。詳細には、MPFはその製造工程中でいかなる凝集工程も受けないので、以下に説明するように小さい平均粒径を保持する。
【0060】
殆どの実施形態におけるMPFの液状分散体は、水性分散体であろうが、そのMPFは、その他の溶剤に分散してもよく、および/または元々水性相にあるMPFをヘキサン、アセトン、またはアルコールを初めとする有機溶剤のような別の溶剤に転相してもよい。
【0061】
MPFは、上記の用に生産された場合、一般的に平均粒子径は1.0ミクロン(μm)以下、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、または0.2ミクロン(μm)以下であろう。詳細にはMPFの平均粒子径は、例えば30,50,100,もしくは150nmと同じくらい小さく、または200,250,もしくは350nmと同じくらい大であってもよい。
【0062】
その他の実施形態では、MPF粉末も使用できるであろう。
【0063】
MPFは、安定化された、不安定化された、または最小安定化された水性分散体の形態で提供できる。本明細書で用いる場合、「不安定化」または「最小安定化」は、従来型の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤などをMPF水性分散体の重量を基準にして1.0重量%未満で含有する水性分散体を指す。幾つかの実施形態では、MPF分散体は、1.0重量%未満の界面活性剤、0.8重量%未満の界面活性剤、0.6重量%未満の界面活性剤、または更には0.5重量%未満の界面活性剤を有する水性分散体の形態であってもよい。 他の実施形態では、MPF分散体は一般的に1〜12重量%の界面活性剤を有する、「安定化」された水性分散体の形態であることができる。
【0064】
ASTM D1238に準拠して測定されるMPFの溶融流動速度(MFR、メルトフローレート)は、一般的に0.5g/10分であり、ある実施形態では2g/10分以上である場合がある。
【0065】
また、MPFは、コモノマー含量、すなわちテトラフルオロエチレン(TFE)以外の1つ以上のモノマーの含量が、一般的に約3.0重量%以上であり、例えば、4.0重量%以上、4.5重量%以上、5.0重量%以上、5.5重量%以上、または6.0重量%以上などである。
【0066】
好適なMPF分散体には、TE7224(PFA)(デュポン社から入手可能)、6900Z(PFA)(ダイニオン有限責任会社から入手可能)、TE9568(FEP)(デュポン社から入手可能)、ネオフロン(Neoflon)ND−110(FEP)(ダイキン社から入手可能)、およびハイフロン(Hyflon)XPH6202−1(MFA)(ソルベイ(Solvay)社から入手可能)が挙げられる。これらのMPF分散体は、以下の表2に説明される特性を有する。
表2.典型的な溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)の特性
【0067】
【表2】

【0068】
本発明のフルオロポリマーブレンド組成物を形成するために、LPTFE液状分散体およびMPF液状分散体が混合される。液状分散体が使用される場合、分散体は固形物含量を変更してよく、当業者は、LPTFEおよびMPF液状分散体の湿重量が、それら分散体の固形物含量および得られるブレンド組成物において所望されるLPTFEとMPFとの所望の相対的重量%比率を基準にして選択できることを認識するであろう。
【0069】
とりわけ、分散体の混合の場合、上記に説明した小さい平均粒子径を有する液状分散体の形態で提供されるLPTFEおよびMPFが提供されるので、LPTFEおよびMPFの粒子は、それら分散体が例えば乾燥されまたは融解される後加工の工程の前に、サブミクロンのレベルで互いに接触されるようになる。上記に論じたように、一実施形態ではLPTFEおよびMPFは混合前に凝集されていないので、LPTFEおよびMPFのサブミクロン相互作用は、特別な結晶形態の乾燥または硬化したフルオロポリマーブレンドの形成を促進すると考えられ、このことが本ブレンド組成物で得られる有益な結果を獲得するために重要であると考えられる。
【0070】
以下に説明されるフルオロポリマーブレンド組成物における、LPTFEとMPFとの相対的な比率、画分、または重量%は、LPTFEおよびMPFフルオロポリマーの固形物合計重量を基準にしている。そのため、存在する可能性のあるLPTFEおよびMPF以外のその他のフルオロポリマー、並びに非フッ素化ポリマー成分、例えば水またはその他の溶剤、界面活性剤、顔料、フィラー、およびその他の調合物などは除外される。
【0071】
LPTFEは、フルオロポリマーブレンド組成物中の重量で、5重量%、10重量%、もしくは15重量%と同じくらい少なく、または85重量%、90重量%、もしくは95重量%と同じくらい多く含まれることができる。そして他の実施形態では、LPTFEは、ブレンド組成物中で40重量%〜60重量%、ブレンド組成物中で45重量%〜55重量%、またはフルオロポリマーブレンド組成物中約50重量%で含まれることができる。従ってMPFは、フルオロポリマーブレンド組成物中の重量で、85重量%、90重量%、もしくは95重量%と同じくらい多く、または5重量%、10重量%、もしくは15重量%と同じくらい少なく含まれることができる。そして他の実施形態では、MPFは 、ブレンド組成物中で60重量%〜40重量%、ブレンド組成物中で55重量%〜45重量%、またはフルオロポリマーブレンド組成物中約50重量%で含まれることができる。
【0072】
LPTFEおよびMFAのブレンドには、一実施形態で35重量%〜90重量%のMFA、および10重量%〜65重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには35重量%〜76重量%のMFA、および24重量%〜65重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには56重量%〜76重量%のMFA、および24重量%〜44重量%のLPTFEが含まれることができる。 別の実施形態で、そのようなブレンドには63重量%〜70重量%のMFA、および30重量%〜37重量%のLPTFEが含まれることができる。更なる実施形態で、そのようなブレンドには67重量%のMFA、および33重量%のLPTFEが含まれることができる。
【0073】
LPTFEおよびFEPのブレンドには、一実施形態で25重量%〜90重量%のFEP、および10重量%〜75重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには35重量%〜90重量%のFEP、および10重量%〜65重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには35重量%〜55重量%のFEP、および45重量%〜65重量%のLPTFEか、または65重量%〜90重量%のFEP、および10重量%〜40重量%のLPTFEかのどちらかで含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには40重量%〜50重量%のFEP、および50重量%〜60重量%のLPTFEか、または75重量%〜85重量%のFEP、および15重量%〜25重量%のLPTFEかのどちらかで含まれることができる。更なる実施形態で、そのようなブレンドには50重量%のFEP、および50重量%のLPTFか、または75重量%のFEP、および25重量%のLPTFEかのどちらかで含まれることができる。
【0074】
LPTFEおよびPFAのブレンドには、一実施形態で37重量%〜80重量%のPFA、および20重量%〜63重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには37重量%〜65重量%のPFA、および35重量%〜63重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには43重量%〜63重量%のPFA、および37重量%〜57重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには50重量%〜60重量%のPFA、および40重量%〜50重量%のLPTFEが含まれることができる。更なる実施形態で、そのようなブレンドには53重量%のPFA、および47重量%のLPTFEが含まれることができる。
【0075】
III.コーティング組成物の配合および塗布
本組成物を形成するために、本コーティング組成物成分の水性分散体は任意の順番で、フルオロポリマー粒子に対する凝集、凝固、もしくは繊維形成の可能性を最小化する方法、例えばゆっくりとした攪拌、または別の低せん断もしくは中せん断の方法で攪拌しながら混合できる。液状分散体が使用される場合、その分散体は各種の固形物含量を有し、当業者は、HPTFE、LPTFEおよびMPFの液状分散体の湿重量が、それら分散体の固形物含量および得られるブレンド組成物において所望されるHPTFE、LPTFE、およびMPFの所望の相対的重量%比率を基準にして選択できることを認識するであろう。
【0076】
本コーティング組成物はまた、所望により補助的な成分または組成物、例えばフィラー、強化材組成物、顔料、およびフィルム形成剤などを、そのコーティング組成物の最終使用用途に応じて含有できる。本コーティング組成物は、料理器具、ベーキング器具、型、小型電気器具、締結具、複写用ローラー、およびその他の用途のような硬質基材に塗布できる。
【0077】
一実施形態では、本コーティング組成物の全フルオロポリマー成分の固形物含量を基準にして、フルオロポリマーの主要成分は、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、55重量%、60重量%、もしくは70重量%と同じくらい低い量で、または80重量%、90重量%、95重量%、96重量%、もしくは98重量%と同じくらい多い量で、または前記値の任意の対の間で規定される範囲内の量で存在する。それと共にフルオロポリマーブレンド組成物は、4重量%、5重量%、10重量%、もしくは20重量%と同じくらい低い量で、または30重量%、40重量%、45重量%、55重量%、60重量%、65重量%、もしくは70重量%と同じくらい多い量であって、前記値の任意の対の間で規定される範囲内の量で存在する。
【0078】
特定の実施形態では、HPTFEは、コーティング組成物中の全フルオロポリマー成分の固形物含量を基準にして、75重量%〜95重量%、80重量%〜95重量%、85重量%〜95重量%、もしくは90〜95重量%の量で組成物中に存在できる。それと共にLPTFE/MPFのフルオロポリマーブレンド組成物は、本コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物含量を基準にして、5重量%〜25重量%、5重量%〜20重量%、5重量%〜15重量%、もしくは5重量%〜10重量%の対応する量で存在できる。
【0079】
LPTFEおよびMPFの互いに関連する量については、特定の実施形態において、LPTFEが、LPTFEおよびMPF成分を組み合わせた固形物含量を基準にして、33重量%〜66重量%、40重量%〜60重量%、45重量%〜55重量%の量で、もしくは50重量%の量で存在できる。それと共にMPFについては、対応する量であって、LPTFEおよびMPF成分を組み合わせた固形物含量を基準にして、33重量%〜66重量%、40重量%〜60重量%、45重量%〜55重量%の量で、もしくは50重量%の量で存在できる。換言すれば、LPTFE/MPF比率は、LPTFEおよびMPF成分を組み合わせた固形物含量を基準にして、2:1〜1:2、1.5:1〜1:1.5、1.2:1〜1:1.2で、もしくは1:1であることができる。
【0080】
本組成物は任意の標準的調合技法、例えば単純な添加混合または低せん断混合により調製できる。組成物は、任意の既知技法によって下地塗装もしくはプライマーおよび/またはミッドコートの上に塗布でき、次いで硬化させて、改善された光沢度、非粘着性能、および耐摩耗性並びに耐引掻き性を有するコーティングを備えたコーティングされた基材を提供することができる。プライマーおよび/またはミッドコートの特定の組成物は広く変更してもよく、本明細書に開示されるコーティングによって示される改善された特性に対して決定的なものであるとは考えられない。
【0081】
本コーティングは一般的に、塗布された厚さおよび硬化温度に応じて400〜430℃の温度で3〜15分の間で加熱硬化できる。本コーティングは一般的に、用途に応じて、10〜30ミクロンの乾燥膜厚(DFT)に塗布される。
【0082】
分散体の混合は、HPTFE、LPTFEおよびMPFのサブミクロンレベルでの相互作用を促進させ、均質なブレンドを促進させる結果、そのブレンドしたフルオロポリマーが乾燥された場合、フルオロポリマー真のアロイを示す結晶構造が形成され、ブレンド物は個別のフルオロポリマーのものとは異なった溶融特性を有することが分かった。そのフルオロポリマーブレンドを使用して、改善された耐摩耗性、光沢性、およびより大きい接触角を有するコーティングが提供できる。
【0083】
IV.コーティング特性
本コーティング組成物は、基材に対して基材に直接、または下地コーティングの上に塗布された場合、水滴に対してヤング式(Young Relation)に従って測定したときに、少なくとも110°の接触角を示し、そして例えば少なくとも120°、125°、130°、135°または140°の接触角を有することができる。接触角は、任意の好適な市販の機器、例えばドイツ国ハンブルグのクルス(Kruss)社から入手可能な「液滴型分析」システム(DSA10)を用いて、ASTM D7334−08に準拠して測定できる。
【0084】
本コーティング組成物は、基材に対して基材に直接、または下地コーティングの上に塗布された場合、100nm未満の表面粗度(Ra、粗さプロファイルの算術平均粗さで、nmで測定される)を示し、そして例えば80nm未満、60nm未満、または50nm未満の表面粗度を有することができる。表面粗度は、例えばASME Y14.36M−1996、またはISO 1302:2002に準拠したレーザー式プロファイロメーターによって決定される。
【0085】
本コーティング組成物は、基材に対して基材に直接、または下地コーティングの上に塗布された場合、少なくとも15という、60°での%反射率で測定された光沢度を示し、そして例えば少なくとも25、30、35、40、または45の測定光沢度を有することができる。光沢度は、任意の好適な市販の機器、例えばミクログロス(Microgloss)60°光沢計(Byk−ガードナー社から入手可能)を用いて、以下の規格:BS3900/D5、DIN EN ISO2813、DIN67530、EN ISO7688、ASTM D523、ASTM D1455、ASTM C346、ASTM C584、ASTM D2457、JIS Z8741、MFT 30064、TAPPI T480に準拠して測定される。測定値の単位は%反射率として表わされる。
【0086】
その他、本コーティング組成物によって形成されたコーティングの特性を決定するいくらか主観的方法を以下の実施例で詳細に論じる。
【実施例】
【0087】
実施例 1−7
【0088】
以下に述べる限定的な実施例は、本発明の種々の特徴および特性を示めすが、それらに限定されるものと解釈されるべきではない。実施例および本明細書の他の箇所を通じて、特に指示がない限り、パーセントは重量%である。
【0089】
実施例1.トップコートの配合および硬質基材への塗布
この実施例では、本発明に従って作製されたトップコートを、アルミニウムパネル形態の硬質基材に対する通常の下塗り(「下地塗装」)の上に塗布した。本発明に従ったトップコート配合を対照トップコートと対照して評価した。
【0090】
A.下地塗装の説明
当技術分野では、ポリアミック酸の水溶液は、ポリアミド−イミド(PAI)、例えばトーロン(Torlon)(登録商標)AI−10(ソルベイ先端ポリマー有限責任会社(Solvay Advanced Polymers, LLC)より入手可能、トーロンはソルベイ先端ポリマー有限責任会社の登録商標である)の粉末を、ジメチルエタノールアミン(DMAE)のようなアミン並びにフルフリルアルコールおよびN−メチルピロリドン(NMP)のような共溶媒を初めとする各種成分が存在する水の中に、溶解することにより調製できることが周知である。PAI水溶液の調製に関する更に詳細な説明は、米国特許第4,014,834号(特許文献6)に見出され、その開示は参照として本明細書に明確に援用される。次いでそのポリアミック酸溶液に各種組成物を添加して下地塗装を配合できる。
【0091】
上記に説明したように調製し、下記の表3に表示した二種の下地塗装(下地塗装Aまたは下地塗装B)の中の1つの上にトップコート配合物をコーティングした。
【0092】
表3 下地塗装配合
【0093】
【表3】

【0094】
前洗浄したアルミニウムパネルの上に下地塗装Aおよび下地塗装Bをスプレーし、続いて100℃オーブン中で2分間加熱して試験サンプルを調製した。トップコート1〜10を下地塗装Aの上に塗布し、一方トップコート11〜17を下地塗装Bの上に塗布した。
【0095】
B. トップコートの塗装
【0096】
以下に説明されるような配合トップコートを試験サンプルにスプレーによって塗布した。次いでコーティングしたパネルを430℃オーブン中で10分間硬化した。塗布した場合、下地塗装の乾燥膜厚(DFT)は約8μmであり、トップコートの乾燥膜厚は約25μmであった。
【0097】
トップコートの実施例は3種のフルオロポリマー分散体およびトップコートベースの組合せを用いて作製した。トップコートのフルオロポリマー成分には以下に述べるものの1つ以上が含有される。すなわち、1つ以上の高分子量PTFE(HPTFE)分散体、1つ以上の溶融加工可能なフルオロポリマー分散体(MPF)であって本明細書ではペルフルオロアルコキシ(PFA)として例示されるもの、および1つ以上の低分子量PTFE(LPTFE)である。
【0098】
下記のトップコート2〜10で示されるトップコートの第一集合は、分散重合またはエマルション重合によって生産されかつその後の凝集、放射線照射、または熱劣化がされないLPTFEを使用して配合した。下記のトップコート11〜17で示されるトップコートの第二集合は、LPTFEミクロパウダーを使用して配合した。
【0099】
1.分散重合またはエマルション重合で生産され、かつその後の凝集、放射線照射、または熱劣化がなされないLPTFEを用いて配合されたトップコート
【0100】
HPTFE成分に加えて、本トップコートは、MPFおよびLPTFE成分の混合物が含有される。下記の幾つかの配合では、MPFとLPTFEの比率は、使用されるHPTFEの量を一定に保持しながら変化する。下記に説明されるその他の配合では、MPFおよびLPTFEの比率を一定に保持しながら、使用されるHPTFEの量を変化させる。
【0101】
本実施例の各トップコート配合に使用されるトップコートベースの配合を下記の表4に表示する。
【0102】
表4.トップコートベース
【0103】
【表4】

【0104】
各種フルオロポリマーのブレンド比をトップコートベースとHPTFE、LPTFE、およびMPF(PFA)の成分の各種比率とを組合わせて検討した。重量%で表示した、フルオロポリマーの合計成分は実施例配合中の67.8重量%であったが、一方トップコートベ―スは、下記の表5によって各トップコート配合中の残部32.2重量%を有した。
【0105】
表5.トップコート配合実施例
【0106】
【表5】

【0107】
トップコート配合では、HPTFE成分はダイキンのD−310PTFE分散体(固形物60%)であり、LPTFE成分はSFN−D PTFE分散体(固形物50%)であり、およびMPF成分はタイプ1(ダイニオン6900GZ PFA分散体(固形物50%))またはタイプ2(デュポンTE7224PFA分散体(固形物60%))のいずれかであった。
【0108】
下記の表6および7には、下記に説明される更なる実施例の中で参照される予定の各種トップコート実施例に関する配合および性能データーが含まれる。性能データーに対する試験手順は、下記の試験方法のセクションに説明する。
表6.トップコート実施例1〜5
【0109】
【表6】

【0110】
表7.トップコート実施例6〜10
【0111】
【表7】

【0112】
2.LPTFE ミクロパウダーを用いて配合したトップコート
【0113】
LPTFEミクロパウダー分散体を表8により配合した。
表8.LPTFEミクロパウダー分散体
【0114】
【表8】

【0115】
50%水性分散体は、分散器を使用して最初にミクロパウダーを湿潤させた。湿潤後その分散体をシルバーソン(Silverson)ミキサーに移して#2スクリーン(スクリーンは1〜4に番号付けされ、4が最大メッシュサイズ)を使用して分散を続けた。これらのプレミックスはシルバーソンミキサーを用いて50%速度で30分間分散させた。
【0116】
トップコートは次いで、上記に説明したのと同じトップコートベースを使用して、表9により配合し、前記と同じ手順を用いて試験サンプルに塗布した。
表9.LPFEミクロパウダートップコート
【0117】
【表9】

【0118】
評価したミクロパウダーを下記の表10に表示する。
表10.評価したLPTFEミクロパウダー
【0119】
【表10】

【0120】
下記の表11には、配合データー、および表示されたLPTFEミクロパウダーを用いて配合した各実施例トップコートに関する性能データーが含まれる。
表11.トップコート実施例11〜15
【0121】
【表11】

【0122】
上記のデーターから以下のことが分かる。トップコート11〜17(それらはLPTFEミクロパウダーを用いて配合した)に対する機械的引掻き試験結果は、トップコート2〜10(それらは分散重合またはエマルション重合で生産され、かつその後の凝集、放射線照射、または熱劣化がされていないLPTFEを用いて配合した)に対して観測された最良の結果に満たない傾向がある。しかしながら、トップコート15,16,および17は(それぞれは、UF−8TA、9207、およびMP−10のLPTFEミクロパウダーであって、試験したLPTFEミクロパウダーの中で比較的高い分子量および第一融点(T)を有するものを用いて配合した)、表11の試験の中でも許容可能な性能を示し、特に料理器具用途に適切である。このことは、327℃〜332℃の第一融点(T)を有するLPTFEミクロパウダーが、恐らくはこれらの用途により理想的に適合しているということを示している。
【0123】
また、トップコート12および13は、それぞれが、試験したLPTFEパウダーの中で比較的低い分子量および第一融点(T)を有するLPTFEミクロパウダーMP−8TおよびMP−55を用いて配合を行った。このような低分子量材料に基づく配合は、ストーブ頂面の料理条件下では軟化する傾向があり、結果として劣った剥離特性が観察される。しかしながら、そのような配合でも、より低い使用温度において有用性があるであろうと予測される。
【0124】
下記の表12は、トップコート1〜17のフルオロポリマー成分の相対的重量%の要約である。
表12.トップコート1〜17に関するフルオロポリマー配合の要約
【0125】
【表12】

【0126】
実施例2〜7
【0127】
下記の実施例2〜7では、トップコート1〜10の性能データーを更に詳細に論じる。
実施例2 LPTFE/MPFの無い対照トップコートとLPTFE/MPFを含有するトップコートの比較
【0128】
LPTFEの無い対照トップコート(トツプコート1)とLPTFEを含有するトップコート(トップコート2)との間の性能特性比較を表13に表示する。
表13
【0129】
【表13】

【0130】
表13のデーターの検討により、コーティング配合に本発明に従ったLPTFE/MPFフルオロポリマーブレンドを少量添加すると、結果としてコーティングの摩耗性および剥離性に顕著な改善があることが容易に分かる。
RATおよび機械的引掻き試験は所定のシステムの耐摩耗性および耐久性の測定に使用される通常の検査法である。トップコート2は、耐摩耗性および強靱性の両方において対照実験と比較して大幅な改善を示した。
【0131】
料理した食物を非粘着性表面から掃除するまたは取り除くことのしやすさは、剥離性と称する。焦げミルク試験(下記の表19に表示)およびドライエッグ剥離試験は、料理器具産業で剥離性の有効な測定法として認められている。対照と比較したトップコート2に関して、焦げミルク試験によって測定されたような剥離性の顕著な改善が見られた。同様に、だがそれほど顕著でない改善がトップ2のドライエッグ剥離試験で測定された剥離性に見られた。
【0132】
実施例3 LPTFE/MPFブレンドにおけるLPTFEの量変更の検討
HPTFEをベースにしたトップコートに対するLPTFE添加の効果を試験した。トップコート3をトップコート1におけるMPF成分に対して重量%のLPTFEで置換して作製した。トップコート3は耐摩耗性、機械的引掻き付着性、およびドライエッグ剥離性を評価することによって、トップコート1と比較した。試験パネルおよび平鍋は、前洗浄したアルミニウムパネル基材の上に下地塗装Aをスプレーし、続いて100℃オーブン中で2分間加熱して準備した。
【0133】
次いでトップコート1および3を、プライマー処理し冷却した基材に、上記表6に成分が示された評価トップコートを用いてスプレーによって、それぞれの試験サンプルに塗布した。コーティングされた基材を430℃オーブン中で10分間硬化させた。塗布後の、下地塗装の乾燥膜厚(DFT)は約8μmであり、トップコートのDFTは約25μmであった。性能特性の間における比較は下記の表14に表示される。
表14
【0134】
【表14】

【0135】
表14の検討から、トップコート1中のMPF成分に対するLPTFE置換は、トップコート3によって例示されるように、結果として剥離性および摩耗性において改善を示すだけでなく、機械的引掻き付着試験に反映されるような耐久性の低下を示すトップコート配合をもたらすことが容易に分かる。
【0136】
耐摩耗性および剥離性は重要なコーティング特性であるが、機械的引掻き付着試験は料理器具の消費者使用および誤使用を最もよくシミュレートする。
【0137】
実施例4 フルオロポリマーブレンドとHPTFEレベルの最適化
トップコート中のフルオロポリマーブレンドのHPTFE成分レベルに対する比率の変更を、耐摩耗性、機械的引掻き付着性、および剥離性に関して評価した。試験パネルおよび平鍋は、前洗浄した基材の上に下地塗装Aをスプレーし、続いて100℃オーブン中で2分間加熱して準備した。
【0138】
次いでトップコートを、プライマー処理し冷却した基材に、上記表6および7に配合が示された評価トップコートを用いてスプレーによって塗布した。コーティングされた基材を430℃オーブン中で10分間硬化させた。塗布後の、下地塗装の乾燥膜厚(DFT)は約8μmであり、トップコートのDFTは 約25μmであった。性能特性の間における比較は下記の表15に表示される。
【0139】
表15
【0140】
【表15】

【0141】
表15の検討により、全フルオロポリマー中に約5重量%LPTFEおよび5%重量PFAを含有するトップコート9が最良の全特性組合せをもたらすことが分かる。概して、コーティング中にLPTFEとMPFの両方を含有するフルオロポリマーで70重量%以上のHPTFEがある場合、対照と比較して多少の特性向上が見られた。表11によって、約1:1のMPF:LPTFEが好ましいと分かる。最適特性を目指すHPFTEのレベルは下記の実施例5に与える。
【0142】
実施例5 HPTFEレベルを変更しフルオロポリマーブレンド比を固定(LPTFE:MPFを1:1)したものの特性評価
LPTFEとMPF成分の存在比を約1:1に一定させ、トップコート配合中のHPTFE成分の使用量を変更させる研究を、耐摩耗性、機械的引掻き付着性および剥離性に関して行った。試験パネルおよび平鍋は、前洗浄した基材の上に下地塗装Aをスプレーし、続いて100℃オーブン中で2分間加熱して準備した。
【0143】
次いでトップコートを、プライマー処理し冷却した基材に、上記表6および7に配合が示された評価トップコートを用いてスプレーによって塗布した。コーティングされた基材を430℃オーブン中で10分間硬化させた。塗布後の、下地塗装の乾燥膜厚(DFT)は約8μmであり、トップコートのDFTは 約25μmであった。性能特性の間における比較は下記の表16に表示される。
表16
【0144】
【表16】

【0145】
表16は、フルオロポリマーブレンドが好適な1:1比である場合のHPFEレベルは、トップコートの全フルオロポリマー含量中で80%より大が好ましいことを示す試験結果が報告されている。
【0146】
実施例6 変性フルオロポリマーブレンドトップコートの平滑性研究
本発明に従った変性フルオロポリマーブレンドのトップコートは、LPTFE成分が無い状態で同様に配合された従来配合トップコートと同様のまたはより高い光沢度を示すとことが見出された。本発明に従って配合されたトップコートは同様に、従来の非変性トップコートと比較してより平滑な手触り感を示す。
【0147】
本発明に従って配合されたトップコートでは、トップコートが塗布された基材で加速された機械的引掻き試験を実施し、試験領域のトップコートを目視観察すると、非変性のトップコートと比較して改善された平滑性が示される。しかしながらこれらの観察は主観的であるので、本実施例では、対照トップコート表面と本発明に従って配合されたトップコート表面とのレーザー式プロファイロメーター比較を、ワイコ(Wyko)1100光学プロファイロメーター(ビーコ(Veeco)社製)を用いて実施した。
【0148】
図1はトップコート1で作製した対照トップコートのレーザー式プロファイロメーター画像であり、図2は本発明に従って配合されたトップコート2の場合のトップコートのレーザー式プロファイロメーター画像である。
【0149】
以下に述べる3つの表面粗度測定を図1および図2に、並びに下記の表17にも表示する。
・Ra=粗さプロファイルの算術平均粗さで、ナノメーター(nm)で測定される。
・Rq=粗さプロファイルの二乗平均平方根粗さで、ナノメーター(nm)で測定される。
・Rt=評価領域における、プロファイルの最高ピーク高さと、プロファイルの最大谷深さとの合計で、ミクロン(μm)で測定される。
【0150】
表17
【0151】
【表17】

【0152】
表17の検討により、トップコート2は対照トップコート1よりもはるかに平滑性に優れていることが容易に分かる。
実施例7 コーティング特性に及ぼすフルオロポリマー成分の相対含量の影響の研究
【0153】
トップコート1〜10と関連した実施例1〜6に提示されたデーターを、本発明コーティング組成物中の各種フルオロポリマー成分の相対含量対そのコーティングの測定特性をプロットした図の形で図3〜17に要約した。
【0154】
詳細には、図3〜7ではHPTFE成分の重量%の関数としてのトップコートの測定特性をプロットし、図8〜12ではLPTFE成分の重量%の関数としてのトップコートの測定特性をプロットし、および図13〜17ではMPF成分の重量%の関数としてのトップコートの測定特性をプロットし示される。図3〜17は概略的には、ブレンド中のフルオロポリマー成分が2〜20重量%の間のLPTFE、および2〜20重量%の間のMPFを含有する場合に得られる所望特性の全組合せを示している。
実施例8 コーティング特性に関するフルオロポリマー成分のコンタープロット
【0155】
図18〜23は、トップコート1〜10に関連して、トップコート中のMPF(PFA)成分およびLPTFE成分の乾燥固形物重量%の関数としての、エッグ剥離、RAT試験、機械的引掻き試験、光沢度、接触角、および「正規化全データー」のそれぞれのコンタープロットを示す。最後の用語「正規化全データー」は以下の記述式から求まる。
式1:正規化全データーの計算
平均化{[ドライエッグ剥離性−最小(ドライエッグ剥離性)]/
[最高(ドライエッグ剥離性)−最小(ドライエッグ剥離性)]、
[湿RAT回/μmDFT−最小(湿RAT回/μmDFT)]/
[最高(湿RAT)−最小(湿RAT)]、
[MAST−最小(MSAT)] /
[最高(MSAT)−最小(MSAT)]、
[60°光沢度−最小(60°光沢度)]/
[最高(60°光沢度)−最小(60°光沢度)]、
[接触角−最小(接触角)]/
[最高(接触角)−最小(接触角)]}
(MSATは機械的引掻き付着試験である)
【0156】
すなわち、各試験に関して、全てのサンプルに対して測定された[実際値−試験で観測された最大値]をその試験の範囲値で除算し、これによりデーターは正規化され、0〜1の尺度値である。次いで、全テストを単一の値に組み合わせるために、正規化された全ての平均値が取られる。
【0157】
図18〜23の検討によって、光沢度、RATおよび機械的引掻き性能は良好なドライエッグ剥離に対応し、一方接触角とエッグ剥離の間では幾分はっきりしない関係があることが明らかになる。
【0158】
図23は、上記式1で得られる正規化データーを示し、そこでは一実施形態において、トップコート中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、約5重量%〜15重量%がLPTFE、および5重量%〜15重量%がMPFであり、残余がHPTFEを含有するトップコートによって有利な特性組合せが得られることが示す。
【0159】
実施例9 追加のトップコート配合
【0160】
下記の表18に、上記のように調製された追加のトップコート配合を表示する。トップコート1〜10は上記実施例のトップコート1〜10の再提示であり、表には下位に追加の配合が共に含まれる。全ての追加配合は、分散重合またはエマルション重合で生産され、かつ重合後の凝集、放射線照射、または熱劣化がされないLPTFEを用いて配合した。上記実施例中のトップコート11〜17は、 それらがLPTFEミクロパウダーを用いて配合されているので表18から除外した。下位のトップコート18〜52は、実施例1の下地塗装AまたはBのどちらかを用いて調製し、下記の表18および19の要所において明示した。
表18 追加のトップコート配合
【0161】
【表18−1】

【0162】
【表18−2】

【0163】
【表18−3】

【0164】
下記の表19は表18のトップコートの試験から得られる結果を表示する。
表19 追加トップコート配合の試験データー
【0165】
【表19−1】

【0166】
【表19−2】

【0167】
文字A〜Xで符号化した表18および19の特定頭書きを下記に説明する。
A)トップコート配合における全フルオロポリマー(FP)含量(1.0)の分率としてのLPTFE成分の固体体積分率(volume solid)。例えば、0.07は、全FP固体体積分率の7体積%がLPTFEであることを意味する。
B)トップコート配合における全フルオロポリマー(FP)含量(1.0)の分率としてのHPTFE成分の固体体積分率。
C)トップコート配合における全フルオロポリマー(FP)含量(1.0)の分率としてのPFA成分(溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF))の固体体積分率。
D)全トップコートドライフィルム体積におけるチェングワン( 中昊晨光化工研究院)SFN−DNs(25固形物重量%の非安定化LPTFE分散体)の固体体積%。
E)全トップコートドライフィルム体積におけるチェングワン( 中昊晨光化工研究院)SFN−D(50固形物重量%の安定化LPTFE分散体)の固体体積%。
F)全トップコートドライフィルム体積におけるダイキンLDW−410(60固形物重量%の安定化LPTFE分散体)の固体体積%。
G)全トップコートドライフィルム体積におけるデュポンゾニールTE−3887N(60固形物重量%の安定化LPTFE分散体)の固体体積%。
H)全トップコートドライフィルム体積におけるダイニオンPFA6900GZ(50固形物重量%の安定化MPF分散体)の固体体積%。
I)全トップコートドライフィルム体積におけるデュポンTE−7224PFA(60固形物重量%の安定化MPF分散体)の固体体積%。
J)全トップコートドライフィルム体積におけるダイキンD−310(60固形物重量%の安定化HPTFE分散体)の固体体積%。
K)全トップコートドライフィルム体積におけるダイニオンTF5035Z(58固形物重量%の安定化HPTFE分散体)の固体体積%。
L)全トップコートドライフィルム体積におけるチェングワン( 中昊晨光化工研究院)SFN−CO1(60固形物重量%の安定化HPTFE分散体)の固体体積%。
M)ドライエッグ剥離(DER)試験結果、1〜5に評点化、5が最良。
N)焦げミルク剥離試験結果、1〜4に評点化、4が最良。
O)光沢度計を使用する60°での%反射率として記録された光沢度読み。
P)水を使用する°単位の接触角測定値。
Q)下地塗装Aの上に塗布されたトップコートの湿時往復摩耗試験(RAT)。結果は、μ単位で測定された全形成フィルムの(下地塗装膜とトップコート膜の合計した)厚さ当たりの湿RAT回数で表示した。
R)下地塗装Bの上に塗布されたトップコートの湿時往復摩耗試験(RAT)。結果は、μ単位で測定された全形成フィルムの(下地塗装膜とトップコート膜の合計した)厚さ当たりの湿RAT回数で表示した。
S)下地塗装Aの上に塗布されたトップコートの機械的引掻き付着試験(MSAT)結果。評点=1〜9、9が最良。
T)下地塗装Bの上に塗布されたトップコートの機械的引掻き付着試験(MSAT)結果。評点=1〜9、9が最良。
U)下記の式により計算したときの正規化された摩耗試験結果。
平均化{[(Q)湿RAT下地塗装A−最小((Q)湿RAT下地塗装A)]/
[最高((Q)湿RAT下地塗装A)−最小((Q)湿RAT下地塗装A)]、
[(R)湿RAT下地塗装A−最小((R)湿RAT下地塗装A)]/
[最高((R)湿RAT下地塗装B)−最小((R)湿RAT下地塗装B)]、
[MSAT下地塗装B−最小(MSAT下地塗装B]/
[最高(MSAT下地塗装A)−最小(MSAT下地塗装A)]、
[MSAT下地塗装B−最小(MSAT下地塗装B)]/
[最高(MSAT下地塗装B)−最小(MSAT下地塗装B)]}
V)下記の式で計算したときの正規化剥離試験結果。
平均化{[(M)ドライエッグ剥離−最小((M)ドライエッグ剥離)]/
[最高((M)ドライエッグ剥離)−最小((M)ドライエッグ剥離)]、
[(N)焦げミルク試験−最小((N)焦げミルク試験)]/
[最高((N)焦げミルク試験)−最小((N)焦げミルク試験)]}
W)下記の式で計算したときの正規化表面試験結果
平均化{[(O)光沢度−最小((O)光沢度)]/
[最高((O)光沢度)−最小((O)光沢度)]、
[(P)接触角−最小((P)接触角)]/
[最高((P)接触角)−最小((P)接触角)]}
X)下記の式で計算したときの正規化全試験結果
平均化{(U)正規化摩耗、(V)正規化剥離、(W)正規化表面}
【0168】
図24〜36は表19のデーターから導出されたコンタープロットを示し、それらの図は、全フルオロポリマー含量を基準にして、5〜20重量%のLPTFEおよび5〜20重量%のMPFを含有する一実施形態の、並びに5〜15重量%のLPTFEおよび5〜15重量%のMPFを含有する別の実施形態のトップコートに関して有益な特性が得られることを示す。
【0169】
試験方法
往復摩耗試験(RAT)、機械的引掻き付着試験、焦げミルク付着試験、およびドライエッグ剥離試験の試験手順を以下に説明する。
【0170】
I.往復試験摩耗試験(RAT)
往復摩耗試験は、以下に記述の変更をともなって説明される完結した基準に基づいて実行した。変更点は、(1)コーティングサンプルは基材が10%暴露するまで試験した、(2)試験は周囲温度で3kg加重を用いて実施した、および(3)スコッチブライト(Scotchbrite)7447パッド(3M社)は2000回転ごとに取り替えた、(4)試験は試験開始前に平鍋に120mLの0.5%トリトンX−100の脱イオン水溶液を添加することによる湿潤で行った。
【0171】
完結した試験基準は次のとおりである。
【0172】
目的。この試験は往復運動するスコッチブライトパッドによる摩耗に対するコーティングの耐性を測定する。試験ではコーティングを前後運動の摩耗にかける。本試験は、洗浄によって生じる摩損およびその他類似形態の損傷にさらされたコーティングの耐用寿命を測定するものである。TM 135Cは、ホイットフォード社(ペンシルバニア州ウエストチェスター)で組立てられる試験装置の特に有名である。しかしながら、英国工業規格( British Standard )7069−1988に記載されるもののような同様な試験方式が適用可能である。
【0173】
装置および材料。
【0174】
(1)テスト機は、固定された力で試験される表面に対して特定サイズのスコッチブライト摩耗パッドを保持でき、そのパッドを前後の(往復)運動で10〜15cm(4〜6インチ)の距離に渡って移動させることができる。力および運動は、自由落下する加重スタイラスによって適用する。機械はカウンターを装備する必要があり、好ましくは所定の回転数の後で停止するように設定できるものである。
【0175】
(2)要求される摩耗性を有するスコッチブライトパッドを必要なサイズにカットする。スコッチブライトパッドは、3M社研摩材システム部(ミネソタ州55144−1000,セントポール)で製造される。パッドは以下のような各種摩耗レベルの等級で提供される:
最低−7445、7448、6448、7447、6444、7446、7440、5440−最高。
【0176】
スコッチブライトパッドは、150℃(300°F)までの温度で使用できる。等価なパッドを使用してもよい。
【0177】
(3)試験試料の加熱用ホットプレート(任意選択)
【0178】
(4)液体を用いてその中で行う試験用の洗剤溶液またはオイル(任意選択)
【0179】
手順
【0180】
試験を開始する前に、終点を定めておく必要がある。その終点は通常、基材の一部が露出される時と規定される。しかしながら、終点は例え基材が露出されないでも所定のストローク数として規定してもよい。本発明者は、標準的な終点の定義として、擦過面積に渡って基材の10%暴露を使用する。その他の終点を使用してもよい。
【0181】
往復パッドの下で試験される成形品を固定する。その成形品はボルト、クランプ、またはテープで堅固に固定させる必要がある。成形品はできるだけ平坦にし、パッドは端部で脱輪することがないように十分な長さである必要がある。表面における隆起は最初に磨耗され、端部脱輪はパッドを引裂く可能性があり、早まった摩損および誤った結果をもたらすであろう。
【0182】
必要とされる摩耗性のスコッチブライトの片をスタイラスの「足部」のサイズに正確にカットする。本発明では、標準として等級7447を使用し、テスト機上のスタイラスの「足部」は5cm(2インチ)直径である。パッドを「足部」の底に取り付ける。スコッチブライトパッドを、一枚の糊付き「ベルクロ(Velcro)」によって足部の底に固定する。
【0183】
その機械が調節可能なストローク長を有する場合、必要な長さに設定する。本発明者は標準として10cm(4インチ)のストローク長を用いる。パッドを試験片の表面に下げる。加重の動きが完全に自由であることを確認する。本発明者は 標準として3.0kg加重を使用したが、加重は変更してもよい。
【0184】
機械がカウンターを装備している場合、カウンターを必要なストローク回数に設定する。一ストロークは一方向における一運動である。機械が自動カウンターを持たない場合、カウンターを監視し、適正な回数で機械を停止するようにしなければならない。機械を各種間隔で停止し、摩耗パッドを交換する。パッドの摩耗性は、パッドにクズが充満するにつれて変化する(通常は効果がより少なくなる)。本発明者は1,000ストローク間隔でパッド交換した。1000ストロークはパッド交換するのに好ましい間隔である。
【0185】
試験機を始動する。終点に到達するまでまたはパッド交換前のストロークの必要回数が達成されるまで動作させる。
【0186】
各始動の開始点および終点において、試験片を注意深く検査する。終点に近付くに連れて、基材がコーティングを通して見え始めるであろう。終点の付近では、試験片を常に観察する。終点に到達したら機械を停止させる。
【0187】
評価
【0188】
試験機に関して以下の事項を記録する。
【0189】
1.スコッチブライトパッドの等級およびサイズ
【0190】
2.スタイラス上の荷重
【0191】
3.パッド交換の間のストローク数
【0192】
4.ストローク長
【0193】
5.終点の定義
【0194】
6.終点までのストローク数
【0195】
繰返し試験によりより高い信頼性が得られる。終点が単一の結果であるか数回の結果の平均であるかを明示する。
【0196】
コーティングの説明、塗膜厚さ、並びに基材および表面調製について記録する。
【0197】
試験が特定のストローク数まで実行された場合は、ストローク数を記録する。摩耗量、例えば露出された基材の%、または最初の基材露出に対するストローク数などを記録する。場合により、膜厚さおよび/または試験前後の重量を記録する。
【0198】
試験を高い温度で実施した場合、試験の温度を記録する。液体を用いて実施した場合は液体の仕様を記録する。
【0199】
補足事項/注意事項
スコッチブライトパッドの両面を使用してよい。パッドは「足部」に寸法が合うように正確にカットしなければならない。パッド上のホツレのある辺部および起伏点があると不正確な結果を与える。試験片は平坦であり、夾雑物またはその他の粒子がないようにする必要がある。この試験方法は、BS7069:1988付録A1に記載の摩耗試験と類似している。試験をBS7069に準拠して行う場合、試験片を家庭用皿洗い洗剤の5g/リッター水の溶液50cm3 中に浸漬する。その試験は50回ごとにパッドを交換しながら250回続行する。
【0200】
II.機械的引掻き付着試験(MSAT)
1.目的。料理器具用のコーティングは、誤使用および金属製調理具を用いる引掻きおよび切断による損傷を受けやすい。コーティングに対して誤使用を与える手順および機器を記述する本方法は、再現性があり、客観的で、迅速な方法である。バランスアームに重りをつけたボールペン先端を取り付けてターンテーブル上で回転するコーティング表面上に置く。同時に、バランスアームは公転カムによって左右に揺動する。ターンテーブルおよびカムは定速直流モーターによって駆動される。ターンテーブルおよびカムの速度は可変直流電源によって制御される。揺動の振幅はカムの偏心度によって制御される。加重は変更可能である。モーター速度および振幅を調節して各種引掻きのパターンが得られる。これによって表面積の大小に適応させる調節ができる。
【0201】
非粘着性の料理器具コーティングの想定される状態を更にシュミレーションするために、試験片(パネルまたは平鍋)を熱オイルで被覆した。オイル温度は赤外線加熱ランプを用いて維持し、温度計または熱電対でモニタする。
【0202】
2.装置および材料
重りセットを備える機械的引掻き付着試験機
中程度規格のボールペンカートリッジの差し替え品(ペンテック 部分番号85330またはこれの同等品)
熱板
料理オイル
温度計または熱電対線を備えたデジタル読み出し
小型Cクランプ
約10インチ(25cm)直径の浅い平鍋
250ワットの赤外線加熱用のスタンドランプのセット(2または3個)
【0203】
3.手順
【0204】
3.1 ボールペン差し替え品をスタイラスアッセンブリに挿入する。(注意−各試験では新品の差し替え品を使用する。)試験片を定置しバランスアームの釣り合いおよび水平を確認する。必要であれば調節する。試験片を取り外す。適切なカム設定を選定して揺動の振幅を設定する。(代表的なカム設定はセンターから2番目のネジ穴である。)バランスアーム止めネジを緩めてカムの両端において調節して最大径および最小径を設定する。通常は約2インチ(51mm)の中心円の試験パターンが可能である。
【0205】
3.2 バランスアームの重みを外し、ペンをターンテーブルの上部に保持し、ターンテーブルおよびカムの速度を調節する。反復するパターンを無くすまたは最小にするようにターンテーブルとカムの両方の速度を調節することが重要である。ペンは、新経路においてできるだけ多くの摩耗面積に渡って移動する必要がある。他の速度も許容できるが、以下に述べる速度が初期トラブルを低減した。ターンテーブル速度が15rpm、または39.4〜39.6秒に10回転である。カム速度が21rpm、または28.5〜28.9秒に10回転である。
【0206】
3.3 ターンテーブル上に紙の一片を設置しテープで固定させる。軽量のペン(約200g)を装着する。ペンを紙の上に設置しペンがたどる引掻きパターン軌跡を書き付ける。反復パターンが発生する場合、ターンテーブルまたはカムの速度を調節する。パターンを記録する。これはペンの機能確認でもある。ペンの書き付けがなければペンを交換する。
【0207】
紙を取り外す。平鍋をターンテーブルの中心に置く。パネルを試験する場合、ターンテーブル上に浅い平鍋を設置し、パネルをその中に設置する。パネルは引掻きパターンを十分収容できる大きさにする必要がある。Cクランプを使用して平鍋およびパネルをターンテーブルに固定する。試験片の上部にペンを保持し、ターンテーブルおよびカムを回転させ、数回転を観察して試験片上の引掻きパターンが完全であることを確認する。装置電源を切る。
【0208】
3.5 試験表面を約1/8〜1/4インチ(3〜6mm)まで被覆するに十分な料理オイルを加熱する。試験温度、一般的に300°F(150℃)に加熱する。(注意:約150℃を超えると、料理オイルは煙および強い臭気を発生する。同時に料理オイルはかなり燃えやすくなる。150℃以上で行う場合、良好に換気した区域、好ましくはドラフト内で試験する。)熱オイルを平鍋に注ぐ。赤外線ランプを平鍋に近づけて位置決めし、スィッチを入れてオイル温度を維持する。ランプを適切な位置に置いた予備試験を数回行い、温度が40°F(5℃)の範囲内で維持される必要がある。試験中5分毎に監視し、この許容範囲内にあるようにランプの位置を調節する。(この測定のためには連続読み取り温度計が最も便利である。)
【0209】
3.6バランスアームに適正な重りを付ける。一般的に重りは250〜1000gで変えられ、500gが最も多く使用される。両方のモーターを開始させペンをコーティング表面上にそっと置く。必要な時間で試験を継続させる。
【0210】
4.評価
【0211】
4.1 以下の情報を記録する。
rpmでのターンテーブルおよびカムの速度
カム振幅の設定値(数またはcmでの内側の半径から外側の半径までの距離)
グラムでのペン先の荷重
オイル温度
試験継続時間
試験片の全パラメーター(基材および基材調製、コーティング、厚さ、硬化等)
【0212】
4.2 試験片を取り出し、オイルを流し出し、温水およびマイルドな洗剤で洗浄する。ペーパータオルで拭きとり乾燥する。コーティングの損傷を目視観察する。この観察は他の試験検体との比較基準で実施してよい。一般的に性能レベルは、以下のように評点付けする。
機械的引掻き付着の評点付け
【0213】
【表20】

【0214】
5.補足事項/注意事項
【0215】
5.1 この試験を実行するのに好ましい取り組み方法は、ターンテーブルおよびカムの速度、揺動の振幅、並びにオイル温度に関する一連の操作パラメーターを確立することである。次いで荷重および時間を変える。方法が確立されると、個別の試験の実施は素早くスムーズに進められる。
【0216】
5.2 バランスアームが緩んだり変化したりしていないことを確認するために、バランスアームの釣り合いおよび揺動を頻繁にチェックする。
【0217】
5.3 ターンテーブルおよびカムの速度を頻繁にチェックし、それに応じて調節する。
【0218】
5.4 この試験を冷条件、すなわち加熱オイルがない条件で行われる。
【0219】
5.5 別のスタイラスおよびカムの回転が無い状態でこの試験を、ボール貫入試験(Ball Penetration Test)、ウィットフォード(Whitford)試験方法137Bとして行ってよい。その他のスタイラスを使用して別の特性を試験してもよい。
【0220】
III.焦げミルク付着試験
この試験は基本的には、料理器具製造者協会(Cookware Manufacturer’s Association)による焦げミルク付着試験:CMA21.6.2の記述と同一であるが、より少量のミルクを使用するように変更した(150mL対237mL)。ミルクは完全な炭化の前により多く付着する傾向があるので、試験ではミルク「パンケーキ」表面が95%より多く赤銅色(少しの、黄褐色でより淡い領域がまだ見られる)のときに加熱停止する。そして合否以外の評点方式を追加した。平鍋の加熱を停止した後、スパチュラを用いて熱い「パンケーキ」の縁(縁〜縁から1cm内部)を持ち上げる。この縁部を約30秒冷却する。冷却した後、この冷えた縁部によって「パンケーキ」を平鍋から持ち上げる。結果を以下の体系によって最良から最低に評点付けする。
【0221】
焦げミルク付着の評点付け
【0222】
【表21】

【0223】
IV.エッグ剥離試験
1.目的。 この手順は、料理器具用の非粘着性コーティングから食物が剥離される性能を迅速に決定する方法として利用する。注意して使用すれば、この試験はオンライン試験に使用して生産の一貫性を測定することができる。試験はいくらか主観的であり、使用される機器および試験者の技能に依存する。
【0224】
2.機器および材料
【0225】
2.1 8インチ(20cm)の、1500ワット定格電気バーナーバーナー、またはガスレンジバーナー。
【0226】
2.2 接触式パイロメーターまたは赤外線温度計ガン(500°F/260℃まで測定可能な)
【0227】
2.3 プラスチック、金属またはコーティングしたスパチュラ。
【0228】
2.4 秒針を備えるタイマーまたは時計。
【0229】
2.5 冷えた、新鮮な、大きなサイズの鶏卵。
【0230】
2.6 水道水、マイルドな皿洗剤、ペーパータオル。
【0231】
3.手順
【0232】
3.1 コーティングされた試験用調理具を水およびマイルドな洗剤溶液で洗浄する。熱い水道水で数回洗い流し、ペーパータオルで拭きとり乾燥する。
【0233】
3.2 電気バーナーの電源を入れるまたはガスバーナーを着火し、中程度にセットする(電気バーナーでは「5」、またはガスバーナーでは1/2)。一定温度に達するまで3〜5分間加熱する。
【0234】
3.3 調理具をバーナーの中心部に置く。パイロメーターまたは赤外線温度計ガンで温度を監視しながら加熱する。調理具を290〜310°F(143〜154℃)に加熱する。あるいはパイロメーターが利用できなければ、温度は、調理具を加熱しながら水滴を表面に周期的に点在させて判定してもよい。試験温度に到達した場合、水滴は、蒸気を出し、表面と接触するとすぐに「踊る」。
【0235】
3.4 1個の冷えた新鮮な鶏卵を割り、内容物を調理具の中心部に静かに置く。調理具を傾けたり旋回させたりしないこと、さもないとエッグは動くことになる。
【0236】
3.5 エッグを2分間そのままにして調理する。エッグの調理中、平鍋の温度に注意する。調理具の温度を記録する。2分後の調理具の温度は、380〜420°F(193〜215℃)に上昇するはずである。終点の温度がこの範囲を外れる場合、バーナー制御を上方または下方に調節して試験を繰り返す。(注意:的確なバーナー制御設定は、前もって試験調理具と同一構成の別の調理具を使用して決定できる。)
【0237】
3.6 2分後にエッグをスパチュラで持ち上げる。加える力の量を注意しながらエッグを表面から完全に遊離させる。一旦エッグを遊離させたら調理具をバーナーから取り出して傾ける。調理具の底部でエッグをスライドさせるのが容易であるか困難であるかを書き留める。
【0238】
3.7 調理具をバーナーに戻す。エッグを反転させ卵黄をスパチュラで割る。エッグを別の2分調理にかける。工程3.6を繰り返す。さらに、どんな汚れかおよび調理具に付着する材料量を書き留める。
【0239】
4.評価
【0240】
4.1 エッグを表面から遊離させるのに必要な力を記録する。表面から容易に持ち上げられ、周辺縁部に粘着が無いエッグは、優れた剥離性を示す。エッグを持ち上げるのに要する力の量によって、完全な粘着に至るまでの剥離性の減少を書き留める。
【0241】
4.2 数字および評点化体系は以下のようである。
エッグ剥離試験の評点化
【0242】
【表22】

【0243】
4.3 対照サンプルが利用できる場合は、結果を対照より大幅に良好、良好、同等、劣る、または大幅に劣る、のように記録する。
【0244】
5.補足事項/注意事項
【0245】
5.1 この試験結果は主観的であり、対照として既知の標準品を使用して相対的基準で適用されるのが最良である。同一の試験者および機器に対して再現性は良好であろう。再現性は、同一の機器を使用する熟練の試験者であれば改善されるであろう。
【0246】
5.2 結果は、異なった材質、構造、またはサイズの調理具で比較すれば、変化する可能性がある。いずれの場合でも、結果ついて最良の相関関係を得るには、バーナー制御設定を調節して同一の昇温プロファイルを提供することが必要である。
【0247】
V.60°光沢度
光沢度測定は、ビックガードナー(Byk−Gardner)社から入手可能な、ミクログロス60°光沢計を使用して得た。光沢計は以下の標準に従った:BS 3900/D5、DIN ENISO 2813、DIN 67530、ENISO 7688,ASTM D523、ASTM D1455、ASTM C346、ASTM C584、ASTM D2457、JIS Z8741、MFT 30064、TAPPI T480。測定値の単位は%反射率として表示される。
【0248】
VI.接触角
接触角は水滴に関して測定し、°で表示される。測定は、ヤング式に従って、ドイツのハンブルグのクルス(Kruss)社から入手可能な「液滴型分析」システム(DSA10)を用いて、ASTM D7334−08に準拠して行った。
【0249】
好ましい設計を有するものとして本発明を説明してきたが、本発明は本開示の精神および範囲の中で更なる改変が可能である。従って本出願は、その一般的な原理を用いる任意の変更、使用または適応を網羅することを意図する。更に本出願は、本開示から離れるが、本発明がかかわる技術分野にある公知のまたは慣用の実施方法に入るようなものを網羅し、そして添付の特許請求の範囲に従うものと意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーコーティング組成物が、
前記コーティング組成物中の全フルオロポリマー固形物合計重量を基準にして、30重量%〜96重量%の間の量で存在するフルオロポリマー主要成分を含み、前記フルオロポリマー主要成分が少なくとも500,000の数平均分子量(M)を有する高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)を含む少なくとも1つのフルオロポリマーを有するフルオロポリマー主要成分と、
前記コーティング組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、4重量%〜70重量%の間の量で存在するフルオロポリマーブレンド組成物とを含むフルオロポリマーコーティング組成物であって、
前記フルオロポリマーブレンド組成物が、
335℃以下の第一融点(T)を有する少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)、
および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)を含むフルオロポリマーブレンド組成物である、
フルオロポリマーコーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物中の全フルオロポリマー固形物合計重量を基準にして、前記フルオロポリマー主要成分が60重量%〜96重量%の間の量で存在し、前記フルオロポリマーブレンド組成物が4重量%〜40重量%の間の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物中の全フルオロポリマー固形物合計重量を基準にして、前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が2重量%〜15重量%の間の量で存在し、前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が2重量%〜15重量%の間の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記フルオロポリマーブレンド組成物中の前記フルオロポリマー固形物合計重量を基準にして、20重量%〜85重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記フルオロポリマーブレンド組成物中の前記のフルオロポリマー固形物合計重量を基準にして、37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、および0.2ミクロン(μm)以下からなる群から選択される平均粒子径を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が、332℃以下、330℃以下、329℃以下、328℃以下、327℃以下、326℃以下、および325℃以下からなる群から選択される第一融点(T)を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が、
エマルション重合によって得られ、凝集、熱劣化、または放射線照射を受けずに、かつ1.0ミクロン(μm)以下の平均粒子径を有するLPTFE、
エマルション重合によって得られ、その後の分子量低減工程を経てまたは経ないで得られるLPTFEミクロパウダー、および
懸濁重合物によって得られ、その後の分子量低減工程を経てまたは経ないで得られるLPTFEミクロパウダーからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)が、前記高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)の重量を基準にして1重量%未満の量で変性コモノマーを含有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が1.0ミクロン(μm)以下の平均粒子径を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
硬質基材と、
前記硬質基材上のコーティングであって、
少なくとも500,000の数平均分子量(M)を有し、かつ前記コーティング組成物の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして30重量%〜96重量%の間の量で存在する、少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)と、
500,000未満の数平均分子量(M)を有する、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と、
および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)とを含むコーティングとを含む、コーティングされた物品。
【請求項12】
前記コーティング中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、前記少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分が60重量%〜96重量%の間の量で存在し、かつ前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)および前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が合計で4重量%〜40重量%の間の量で存在する、請求項11に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
前記コーティング中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が2重量%〜15重量%の間の量で存在し、かつ前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が2重量%〜15重量%の間の量で存在する、請求項11に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が、前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)との固形物合計重量を基準にして20重量%〜85重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項11に記載のコーティングされた物品。

【請求項15】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が、前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)との固形物合計重量を基準にして37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項14に記載のコーティングされた物品。
【請求項16】
前記コーティングが少なくとも100°の接触角を有する、請求項11に記載のコーティングされた物品。
【請求項17】
前記コーティングが少なくとも25という60°での%反射率で測定された光沢度を有する、請求項11に記載のコーティングされた物品。
【請求項18】
前記コーティングが100nm未満の表面粗度(Ra)を有する、請求項11に記載のコーティングされた物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2012−504176(P2012−504176A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529269(P2011−529269)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/058407
【国際公開番号】WO2010/036911
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VELCRO
【出願人】(511064199)ウィットフォード コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】