説明

硬質物複合シーツおよびその製造方法

【課題】 鉱物等の硬質の物がシーツ内で可動状態に保持されるシーツおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 粘性を有し所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質1を用いて硬質物2を第一のシート3の所定位置に固定する硬質物配置工程と、第二のシート4を、硬質物2を挟んで第一のシート3に重ね、硬質物2を包持する空間を形成するように第一のシート3と第二のシート4を接合する接合工程と、を経て硬質物複合シーツを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルマリンや玄武岩等の硬質物を保持する硬質物複合シーツおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トルマリンや石英、ブラックシリカ等の鉱物が、遠赤外線や微弱電流、マイナスイオン等を発生し人体に有益な影響を与えることが注目されており、このような鉱物を利用する製品が多く開発されている。
【0003】
例えば、不織布等のシートの間にトルマリン等の鉱物を敷設し、当該シーツを圧着してなるシーツが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−112381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような鉱物は外部からの水分や圧力、電磁波、熱エネルギー等によって種々の機能を発揮するものであり、従来のシーツのように鉱物がシーツの間に固定されている状態や不要な接着剤等で覆われている状態では、このような機能を十分に発揮することができなかった。
【0006】
そこで本発明者等は、シート上に鉱物を配置した状態でシート同士を縫い、鉱物を所定のシート間の閉じた空間内に可動状態で保持することを考えたが、製造時の震動等により鉱物の位置がずれ易く、縫い針等が鉱物に当たって破損する等の問題があった。
【0007】
そこで本発明は、鉱物等の硬質の物がシーツ内で可動状態に保持されるシーツおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬質物複合シーツの製造方法は、粘性を有し所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質を用いて硬質物を第一のシートの所定位置に固定する硬質物配置工程と、第二のシートを前記硬質物を挟んで第一のシートに重ね、前記硬質物を包持する空間を形成するように前記第一のシートと第二のシートを接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、更に前記接合工程の後に前記溶媒溶解性物質を前記溶媒に溶解させて除去する溶媒溶解性物質除去工程を有することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記硬質物配置工程は、前記溶媒溶解性物質と前記硬質物との混合物を前記第一のシート上に配置するか、または、前記溶媒溶解性物質を前記第一のシート上に塗布した後に前記硬質物を配置すれば良い。また、前記溶媒は水である方が好ましい。また、前記接合工程は、前記第一のシートと第二のシートとを縫合により接合することができる。また、前記硬質物は鉱物等が該当し、例えば玄武岩、トルマリン、ブラックシリカ、北投石、麦飯石、医王石、石英、ゲルマニウム含有石のいずれか1以上よりなる方が好ましい。また、前記硬質物は、前記空間内に複数配置される。
【0011】
また、本発明の硬質物複合シーツは、硬質物と、所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質と、前記硬質物が包持される空間を形成するように第一のシートと第二のシートを接合してなるシーツと、を具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の硬質物複合シーツは、硬質物と、前記硬質物が可動な状態で包持される複数の空間を形成するように第一のシートと第二のシートを接合してなるシーツと、を具備することを特徴とする。
【0013】
この場合、硬質物複合シーツは、上述した本発明の硬質物複合シーツの製造方法によって形成することができる。また、前記硬質物は鉱物等が該当し、例えば玄武岩、トルマリン、ブラックシリカ、北投石、麦飯石、医王石、石英、ゲルマニウム含有石のいずれか1以上よりなる方が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬質物複合シーツの製造方法は、硬質物が所定の位置に正確に固定されるので、第一のシートと第二のシートを接合する際に硬質物がずれて接合の邪魔になったり、各空間に包持される硬質物の量が不均一になったりすることを防止することができる。
【0015】
また、このように形成された硬質物複合シーツは、当該接合工程の後の溶媒溶解性物質除去工程によって、溶媒溶解性物質を溶媒に溶解させて除去するので、硬質物2が可動な状態で包持される複数の空間が形成される。したがって、従来のシーツのように、硬質物の周りに余分なものを必要とせず、外部からの水分や圧力、熱エネルギー等によって種々の機能を発揮するのを促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の硬質物複合シーツ10の製造方法は、粘性を有し所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質1を用いて粒状の硬質物2を第一のシート3の所定位置5に固定する硬質物配置工程と、第二のシート4を、硬質物2を挟んで第一のシート3に重ね、硬質物2を包持する空間6を形成するように第一のシート3と第二のシート4を接合する接合工程と、当該接合工程の後に溶媒溶解性物質1を溶媒に溶解させて除去する溶媒溶解性物質除去工程とを有するものである。
【0017】
ここで、溶媒溶解性物質1とは、所定の溶媒に溶解できるものを意味する。一般的に、極性物質は極性溶媒に溶け易く、無極性物質は無極性溶媒に溶け易い。例えば、極性溶媒である水を用いたい場合には溶媒溶解性物質1として糊等を用いれば良く、無極性溶媒としてアルコールやアセトン、ヘキサン等を用いたい場合には、有機性の接着剤等を用いれば良い。コストや安全性等を考慮すると、溶媒溶解性物質1としては、溶媒として水を使用可能な水溶性のものを用いるのが好ましい。
【0018】
また、溶媒溶解性物質1は、少なくとも接合工程が終了するまで硬質物2を第一のシート3に固定できるだけの粘性を有するものが良く、更に好ましくは、第一のシート3又は硬質物2に第二のシート4を固定できるだけの粘性を有する方が好ましい。なお、溶媒溶解性物質1は、固定後に固化するものであっても構わない。
【0019】
硬質物2としてはどのような物を用いても良く、鉱物やセラミック等を用いることができる。特に、人体に有益な機能を持つものが好ましく、次のような機能が挙げられる。
【0020】
<遠赤外線>
遠赤外線は、人体の内部から体を温めて血行を促進し、新陳代謝を高めて細胞を活性化させることができ、疲労回復や胃腸の活性化、凝りの緩和、冷え性の緩和、発毛促進などの効果を有する。
【0021】
<微弱電流>
圧電体として機能する硬質物は、一定の圧力によって微弱電流を発生する。これが、ツボや神経に程よい刺激を与えて、細胞を活性化や血液の浄化、抵抗力の増進、自立神経の調整などの効果を発揮する。
【0022】
<脱臭、脱水>
多孔質性の硬質物は、この孔に臭いや水分を吸収することができ、嫌なにおいを取り除いたり、心地よい肌触りを提供することができる。
【0023】
<電磁波の遮蔽・吸収>
硬質物によっては、一定の電磁波を遮蔽したり、電磁波を吸収して熱に変換したりする機能を有するものがある。これによって、携帯電話やパソコン等の電気機器から生じる電磁波から身体を守ったり、発生した熱を利用したりすることができる。
【0024】
<マイナスイオン>
マイナスイオンは、細胞の活性化や精神的、肉体的にリラックス、リフレッシュさせる効果があると言われている。
【0025】
その他、汚れ等を落とす界面活性機能、浄化機能、防腐機能、微生物活性機能、pH調節機能、酸化・還元機能等が挙げられる。また、心理的な効果のあるものでも良い。
【0026】
なお、硬質物2は、天然の物でも人工のものでも構わない。
【0027】
具体的には、トルマリン、六晶石(登録商標)、ブラックシリカ、北投石、麦飯石、医王石、石英、ゲルマニウム含有石等の鉱物が挙げられる。
【0028】
トルマリンは、弱い圧電体の一種で、圧電効果と焦電効果を有するものである。また、マイナスイオンを発生し、精神的、肉体的にリラックス、リフレッシュさせる効果があると言われている。
【0029】
六晶石(登録商標)は、双晶した短冊状の斜長石(白・灰色)と輝石(青・赤色)で構成され、溶岩中の気泡に由来する空隙を埋めるように成長した海緑石(glauconite)を一部に有する玄武岩である。電磁波の熱変換効率が高いため、電子レンジ等で簡単に加熱することができ、また熱容量が大きいため冷めにくい。また、遠赤外線放射率も高い。したがって、温パッド等に利用することができる。また、焦電効果があり、生体内と同程度の微弱電流を発生してつぼや細胞を刺激するので、体の調子を整えるとも言われている。更に、マイナスイオンを発生することもできる。
【0030】
ブラックシリカは、遠赤外線を発生することができ、体を温めたり血行を促進したりすることができる。また、汚水浄化濾剤として使用すると浄化微生物の活性化により浄化が促進されることや、土壌に含有させることで農作物の収量が増えたり糖分が増えたりすることなどが知られている。また、電磁波を吸収して熱に変える働きも持っており、電磁波を遮蔽することができる。更に、臭いや汚れを分解することもできる。また、マイナスイオンを発生することができるとも言われている。
【0031】
北投石は、ラジウム等を多く含み放射性をもつことが知られている。
【0032】
麦飯石は、無数の微細な孔を有する岩石であり、この孔で水道水のカルキや臭い、雑菌を吸着することができる。
【0033】
医王石は、防腐作用、浄水作用、pH調節作用、酸化・還元作用有する。また、マイナスイオンを発生することができるとも言われている。
【0034】
石英は、圧電体であり、圧力が加わると電気を発生することができる。また、古くから神秘的なものと考えられており、心理的な効果もある。
【0035】
ゲルマニウム含有石は、半導体であるゲルマニウムを含有するもので、所定温度で電気を通し、体内に流れる生体電流に影響して体の調子を整えると言われている。
【0036】
また硬質物2は、配置された空間から移動するのを防止するため、第一のシート3や第二のシート4の目、第一のシート3と第二のシート4の接合部分より大きく形成される。
【0037】
第一のシート3及び第二のシート4は、硬質物2を通さないものであればどのような物でも良く、例えば、織物や編物、不織布等を用いれば良い。また、第一のシート3及び第二のシート4の材質は、上述した溶媒に溶解したり、侵されたりするものでなければどのようなものでも良く、第一のシート3と第二のシート4の材質が、異なっていても構わない。
【0038】
硬質物配置工程では、溶媒溶解性物質1の粘性を利用して硬質物2を第一のシート3の所定位置5に固定するものである。所定位置とは、後述する接合工程において、少なくとも硬質物が接合の邪魔にならない位置を指す。また、硬質物2の固定はどのようにしても良いが、例えば、溶媒溶解性物質1を第一のシート3上の所定位置5に塗布した後(図1参照)に硬質物2を配置する(図2参照)か、あるいは、溶媒溶解性物質1と硬質物2とを混合した混合物を用意し、これを第一のシート3上に直接配置するようにすれば良い。また、硬質物2を固定できるのであれば、硬質物2を配置しておいてから溶媒溶解性物質1を供給するようにしても構わない。
【0039】
また硬質物2は、所定の位置に一つだけ固定しても複数固定しても良い。また、硬質物2を固定する位置も、第一のシート3の複数箇所に固定しても良い。
【0040】
接合工程では、まず第二のシート4を、硬質物2を挟んで第一のシート3に重ねる(図3参照)。この際、溶媒溶解性物質1の粘性を利用して第一のシート3と第二のシート4、または硬質物2と第二のシート4を固定すると、第一のシート3と第二のシート4を接合する際にずれることがなく好ましい。
【0041】
このように重ねた第一のシート3と第二のシート4を、硬質物2を包持する空間6を形成するように接合する。空間の形は硬質物2を包持できるものであれば、特に限定されない。また、接合は、硬質物2が空間から漏れないように第一のシート3と第二のシート4を接合できるものであればどのようなものでも良く、例えば図4に示すように糸7によって縫合したり、接着剤等により接着したりすることができる。
【0042】
これにより、硬質物2と、所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質1と、硬質物2が包持される空間を形成するように第一のシート3と第二のシート4を接合してなるシーツと、を具備する硬質物複合シーツ10が形成される。
【0043】
硬質物複合シーツ10をこのように形成することで、硬質物2が所定の位置に正確に固定されるので、第一のシート3と第二のシート4を接合する際に硬質物2がずれて接合の邪魔になったり、各空間に包持される硬質物2の量が不均一になったりすることを防止することができる。
【0044】
また、このように形成された硬質物複合シーツ10は、当該接合工程の後の溶媒溶解性物質除去工程によって、溶媒溶解性物質1を溶媒に溶解させて除去することができる。
【0045】
これにより、硬質物2が可動な状態で包持される複数の空間を形成するように第一のシート3と第二のシート4を接合してなる硬質物複合シーツ20を形成することができる(図5参照)。
【0046】
硬質物複合シーツ20をこのように形成することで、従来の硬質物複合シーツのように、硬質物2の周りに余分な接着剤等を必要としない。したがって、外部からの水分や圧力、熱エネルギー等によって種々の機能を発揮するのを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】溶媒溶解性物質を塗布した第一のシートを示す平面図である。
【図2】硬質物配置工程後の第一のシートを示す平面図である。
【図3】第一のシートと第二のシートを重ねる際の状態を示す平面図である。
【図4】接合工程後の硬質物複合シーツを示す平面図である。
【図5】溶媒溶解性物質除去工程後の硬質物複合シーツを示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 溶媒溶解性物質
2 硬質物
3 第一のシート
4 第二のシート
5 所定位置
6 空間
7 糸
10 硬質物複合シーツ
20 硬質物複合シーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性を有し所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質を用いて硬質物を第一のシートの所定位置に固定する硬質物配置工程と、
第二のシートを前記硬質物を挟んで第一のシートに重ね、前記硬質物を包持する空間を形成するように前記第一のシートと第二のシートを接合する接合工程と、
を有することを特徴とする硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程の後に前記溶媒溶解性物質を前記溶媒に溶解させて除去する溶媒溶解性物質除去工程を有することを特徴とする請求項1記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項3】
前記硬質物配置工程は、前記溶媒溶解性物質と前記硬質物との混合物を前記第一のシート上に配置することを特徴とする請求項1又は2記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項4】
前記硬質物配置工程は、前記溶媒溶解性物質を前記第一のシート上に塗布した後に前記硬質物を配置することを特徴とする請求項1又は2記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は水であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項6】
前記接合工程は、前記第一のシートと第二のシートとを縫合により接合することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項7】
前記硬質物は、鉱物であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項8】
前記硬質物は、玄武岩、トルマリン、ブラックシリカ、北投石、麦飯石、医王石、石英、ゲルマニウム含有石のいずれか1以上よりなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項9】
前記硬質物は、前記空間内に複数配置されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の硬質物複合シーツの製造方法。
【請求項10】
硬質物と、
所定の溶媒に溶解する溶媒溶解性物質と、
前記硬質物が包持される空間を形成するように第一のシートと第二のシートを接合してなるシーツと、
を具備することを特徴とする硬質物複合シーツ。
【請求項11】
硬質物と、
前記硬質物が可動な状態で包持される複数の空間を形成するように第一のシートと第二のシートを接合してなるシーツと、
を具備することを特徴とする硬質物複合シーツ。
【請求項12】
請求項2記載の硬質物複合シーツの製造方法によって形成されたことを特徴とする硬質物複合シーツ。
【請求項13】
前記硬質物は、鉱物であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の硬質物複合シーツ。
【請求項14】
前記硬質物は、玄武岩、トルマリン、ブラックシリカ、北投石、麦飯石、医王石、石英、ゲルマニウム含有石のいずれか1以上よりなることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の硬質物複合シーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−90502(P2010−90502A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260564(P2008−260564)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(507404961)株式会社英雅堂 (2)
【Fターム(参考)】