説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】 発泡剤として水のみを使用し、機械的強度、断熱性能、寸法安定性に優れ、独立気泡率の高い硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリオールとポリイソシアネートとを、整泡剤、触媒、発泡剤および無機層状物質の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、発泡剤として水のみを用い、無機層状物質として、芳香族系アンモニウムイオン化合物によりカチオン交換された無機層状物質を、ポリオール100質量部に対して0.1〜10質量部用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ウレタンフォーム等の硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールとポリイソシアネートとを、整泡剤、触媒および発泡剤の存在下に反応、発泡させて、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリイソシアヌレートフォーム等の硬質発泡合成樹脂(以下まとめて、硬質フォームという。)を製造することは、広く行われている。該硬質フォームは、成形の自由度が高く、また断熱性能にも優れることから、各種の装置または建築物の断熱材として好適に採用されている。
【0003】
最近、環境への負荷が非常に小さいことから、発泡剤として水のみを用いて硬質フォームを製造することがある。特に、水のみを発泡剤として用いた場合であって、独立気泡率の高い、すなわち断熱性能の良好な硬質フォームを製造した場合には、以下の問題がある。該硬質フォームは、発泡剤としての水に由来する炭酸ガスの気泡膜透過速度が空気の気泡膜透過速度より大きいため、長期間放置すると気泡の内圧が大気圧に対して負圧になり、収縮しやすいという問題点を有している。
【0004】
また、最近、断熱性能および機械的強度を改良するために、硬質フォームの反応性原料に、有機オニウムイオン(有機アンモニウムイオン)で変性した無機層状物質を混合して硬質フォームを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
しかし、発泡剤として環境への負荷が非常に小さい水のみを用いて硬質フォームを製造する際に、これらの無機層状化合物を用いることは知られていない。
【0005】
以上のように、水のみを発泡剤として用いた硬質フォームの製造方法において、機械的強度、断熱性能、寸法安定性等をそろって充分に満足する方法は知られていなかった。特に、硬質フォームのコア密度が35kg/m3 以下の軽量な硬質フォームを製造する場合においては、機械的強度と断熱性能とを同時に満足する方法は知られていなかった。
【特許文献1】特開2003−48941号公報
【特許文献2】特開2003−119242号公報
【特許文献3】特開2003−335831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的強度、断熱性能、寸法安定性に優れ、独立気泡率が高い硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、さらに、難燃性にも優れる硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネートとを、整泡剤、触媒、発泡剤および無機層状物質の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、前記発泡剤として水のみを用い、前記無機層状物質として、芳香族系アンモニウムイオン化合物によりカチオン交換された無機層状物質を用い、かつ、前記無機層状物質を、ポリオール100質量部に対して0.1〜10質量部用いることを特徴とする。
【0008】
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの割合は、イソシアネート指数で130〜500であることが好ましい。
また、前記ポリオールは、芳香族系ポリオールを含み、該芳香族系ポリオールの割合は、ポリオール(100質量%)中、50〜100質量%であることが好ましい。
さらに、前記芳香族系ポリオールは、芳香族系ポリエステルポリオールを含み、該芳香族系ポリエステルポリオールの割合は、芳香族系ポリオール(100質量%)中、50〜100質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法によれば、機械的強度、断熱性能、寸法安定性に優れ、独立気泡率が高い硬質発泡合成樹脂を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硬質発泡合成樹脂(硬質フォーム)の製造方法においては、ポリオールとポリイソシアネートとを整泡剤、触媒、発泡剤および無機層状物質の存在下で反応させる。
以下にその詳細について説明する。
【0011】
(ポリオール)
ポリオールとしては、硬質フォームの製造に用いられる公知のポリオールが使用できる。その例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエン系ポリマー等が挙げられる。
【0012】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとは、触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリオールである。開始剤としては、水、多価アルコール類、多価フェノール類、アミン類等が挙げられる。開始剤は1種のみを用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
開始剤として用いられる多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、シュークロース等が挙げられる。
【0014】
開始剤として用いられる多価フェノール類としては、ビスフェノールA、レゾルシノール、フェノール類縮合物等が挙げられる。フェノール類縮合物としては、フェノール類をアルカリ触媒の存在下で過剰のホルムアルデヒド類と縮合結合させたレゾール型初期縮合物、このレゾール型初期縮合物を合成する際に非水系で反応させたベンジリック型初期縮合物、過剰のフェノール類を酸触媒の存在下でホルムアルデヒド類と反応させたノボラック型初期縮合物等が挙げられる。これらの初期縮合物の数平均分子量は、200〜10,000程度が好ましい。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられる。ホルムアルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0015】
開始剤として用いられるアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類;ピペラジン、N−アミノメチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン等の脂環族アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、アミノエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類;アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物等の芳香族アミン類が挙げられる。マンニッヒ縮合物とは、フェノール類、アルカノールアミン類およびアルデヒド類の反応生成物であり、その数平均分子量は、200〜10,000程度が好ましい。
【0016】
開始剤に開環付加重合させるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(以下、EOともいう。)、プロピレンオキシド(以下、POともいう。)、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド等が挙げられる。アルキレンオキシドは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、アルキレンオキシドとして好ましいのは、POまたはEOである。さらにPOのみの使用、または、POとEOとの併用が特に好ましい。
【0017】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、150〜800mgKOH/gが好ましく、200〜600mgKOH/gがより好ましい。ポリエーテルポリオールの水酸基価が上記範囲内であれば、ポリオールと水との相溶性が確保でき、またポリオールの反応性を高くでき、硬質フォームの接着性を確保しやすい。
ポリエーテルポリオールの平均官能基数は、2〜8が好ましく、3〜6がより好ましい。平均官能基数とは、開始剤の活性水素原子の数の平均を意味する。特に、後述するウレタン処方においては、軽量であっても硬質フォームの強度が確保しやすい点で、平均官能基数は3.5〜6が好ましい。
【0018】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとは、複数のエステル結合を有するポリオールであり、多価アルコール類と多価カルボン酸類との重縮合反応、ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応、環状エステル(ラクトン)の重合反応、ポリカルボン酸無水物への環状エーテルの重付加反応、廃ポリエチレンテレフタレートのエステル交換反応等により得られる。多価アルコール類としては、前述の多価アルコール類のうちジオール類が好ましい。具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。多価カルボン酸類としては、ジカルボン酸が好ましく、具体的にはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。環状エステルとしてはε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0019】
これらのポリエステルポリオールのうち、上記ジオール類と芳香族ジカルボン酸とを重縮合させて得られた芳香族系ポリエステルポリオールが、得られる硬質フォームの難燃性が向上する点で好ましい。さらに、後述するイソシアヌレート処方においては、これらの芳香族系ポリエステルポリオールを主として用いることが好ましい。
またポリエステルポリオールの水酸基価は、100〜450mgKOH/gが好ましく、100〜350mgKOH/gがより好ましい。
【0020】
(ポリオールの組成)
ポリオールは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールの1種のみからなっていてもよく、2種以上の混合物であってもよい。また、ポリカーボネートポリオール等の他のポリオールを含んでいてもよい。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールのうち、開始剤として上記多価アルコール類と脂環族アミン類との混合物を用いて得られたポリエーテルポリオールが好ましい。特に、グリセリン、シュークロース、N−(2−アミノエチル)ピペラジンの混合物にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリエーテルポリオールは、水との相溶性がよく、得られた硬質フォームの機械的強度、気泡外観が向上する点でより好ましい。
【0021】
また、ポリオールとしては、芳香族系ポリオールを、ポリオール(100質量%)中、50〜100質量%含むポリオールが好ましい。この範囲であれば、得られる硬質フォームの機械的強度の特徴を備えつつ、難燃性も向上する。芳香族系ポリオールとは、分子中に芳香環を有するポリオールを意味する。芳香環は、ベンゼン環等の炭素原子のみを環を構成する原子とするものであってもよく、環を構成する原子としてヘテロ原子を含んでいるもの(ピリジン環等。)であってもよい。
【0022】
芳香族系ポリオールとしては、芳香族系ポリエーテルポリオールまたは芳香族系ポリエステルポリオールが好ましい。特に、芳香族系ポリエステルポリオールの割合は、芳香族系ポリオール(100質量%)中、50〜100質量%であることが好ましい。この範囲であれば、得られる硬質フォームの機械的強度の特徴を備えつつ、難燃性も向上する。
【0023】
芳香族系ポリエーテルポリオールとしては、開始剤として前記多価フェノール類、芳香族アミン類等の芳香環を有する開始剤を用い、これにアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造されたポリエーテルポリオールが好ましい。さらに、該開始剤としては、ポリオールの反応性が高くでき、硬質フォームの接着性を確保しやすく、難燃性が向上する点で、トリレンジアミン、マンニッヒ縮合物が好ましい。
芳香族系ポリエステルポリオールとしては、ジオール類と芳香族ジカルボン酸とを重縮合させて得られたポリエステルポリオールが好ましい。
【0024】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。変性ポリイソシアネートとしては、前記ポリイソシアネートのプレポリマー型変性体、イソシアヌレート型変性体、ウレア型変性体、カルボジイミド型変性体等が挙げられる。これらのうち、TDI、MDI、クルードMDI、またはこれらの変性体が好ましい。
【0025】
ポリイソシアネートの使用量は、イソシアネート指数で、50〜500が好ましい。イソシアネート指数とは、ポリオールおよびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表した数値をいう。触媒としてウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方においては、ポリイソシアネートの使用量は、イソシアネート指数で、50〜130がより好ましい。また、触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるイソシアヌレート処方においては、ポリイソシアネート化合物の使用量は、イソシアネート指数で、130〜500がより好ましい。本発明においては、難燃性等の観点から、イソシアヌレート処方を採用することが好ましく、前記イソシアネート指数は140〜300がより好ましい。
【0026】
(無機層状物質)
無機層状物質とは、結晶層間に交換性カチオンを有する層状の無機化合物である。該化合物としては、特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が好ましい。このうち、硬質フォームの製造においては、原料への分散性等の点からモンモリロナイトが特に好ましい。前記無機層状物質は、天然物または合成物のいずれであってもよい。また、これらの無機層状物質は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0027】
前記無機層状物質の結晶層間に存在する交換性カチオンとは、結晶表面上に存在するナトリウムやカルシウム等の金属イオンのことであり、これらの金属イオンは、カチオン性物質とカチオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を前記無機層状物質の結晶層間に挿入(以下、インターカレーションという。)することができる。
【0028】
前記無機層状物質のカチオン交換容量としては、特に限定されないが、50〜200ミリ当量/100gが好ましい。カチオン交換容量を50ミリ当量/100g以上とすることにより、カチオン交換により結晶層間にインターカレーションできるカチオン性物質の量が多くなるため、結晶層間が充分に有機化される。その結果、無機層状物質とポリオールとの親和性が高くなる。無機層状物質のカチオン交換容量は、通常200ミリ当量/100g以下である。
【0029】
本発明においては、無機層状物質として、あらかじめ特定の有機アンモニウムイオンでカチオン交換されたものを用いる。あらかじめ特定のカチオン交換処理を行うことにより、無機層状物質と硬質フォーム原料(特にポリオール)との親和性が高まり、無機層状物質を硬質フォーム中により均一に分散させることができる。
【0030】
カチオン交換処理の方法は制限されない。代表的な方法としては以下の方法が挙げられる。まず、中性または酸性の水、好ましくは温水に、無機層状物質のカチオン交換容量に対して当量以上の有機アンモニウムイオン化合物を溶解する。この有機アンモニウムイオン化合物が溶解された水に、無機層状物質を添加して充分に撹拌し、有機アンモニウムイオンでカチオン交換された無機層状物質の沈殿を得る。そして、この沈殿を充分に水洗した後、乾燥して、有機アンモニウムイオンでカチオン交換された無機層状物質(以下、アンモニウム変性無機層状物質という。)を得る。
【0031】
本発明においては、無機層状物質のカチオン交換処理には、得られる硬質フォームの機械的強度、寸法安定性、外観が優れる点で、芳香族系アンモニウムイオン化合物を用いる。芳香族系アンモニウムイオン化合物とは、芳香環を有するアンモニウムイオン化合物である。該芳香環は、ベンゼン環等の炭素原子のみを環を構成する原子とするものであってもよく、環を構成する原子としてヘテロ原子を含んでいるもの(ピリジン環等。)であってもよい。
【0032】
芳香族系アンモニウムイオン化合物としては、ジメチルベンジルアルキルアンモニウムイオン化合物、メチルベンジルジアルキルアンモニウムイオン化合物、ジベンジルジアルキルアンモニウムイオン化合物等のベンジル系アンモニウムイオン化合物類;トリメチルフェニルアンモニウムイオン化合物等のフェニル系アンモニウムイオン化合物類;アルキルピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環を有する複素環系アンモニウムイオン化合物類等が挙げられる。これらのうちベンジル系アンモニウムイオン化合物類が好ましい。さらに、ジメチルベンジルステアリルアンモニウムイオン化合物、ジメチルベンジルミリスチルアンモニウムイオン化合物、ジメチルベンジルラウリルアンモニウムイオン化合物等が好ましい。入手性の観点から特にジメチルベンジルステアリルアンモニウムイオン化合物が好ましい。これらの芳香族系アンモニウムイオン化合物は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
また、芳香族系アンモニウムイオン化合物にさらに、脂肪族系アンモニウムイオン化合物を併用してもよい。脂肪族系アンモニウムイオン化合物としては、トリメチルアルキルアンモニウムイオン化合物、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物、メチルトリアルキルアンモニウム化合物、テトラアルキルアンモニウム化合物等のアンモニウムイオン化合物が好ましく、ジメチルジステアリルアンモニウムイオン化合物がより好ましい。
【0033】
アンモニウム変性無機層状物質の使用量は、ポリオール100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、1〜8質量部が好ましい。該使用量を0.1質量部以上とすることにより、無機層状物質を用いる効果が得られる。該使用量を10質量部以下とすることにより、セル荒れが発生しにくい。すなわち、上記特定の無機層状物質の使用量を前記範囲内とすれば、セルが荒れることもなく、断熱性が良好で、かつ、機械的強度に優れた硬質フォームが得られる。
【0034】
(発泡剤)
発泡剤としては、環境に負荷が小さいという点から水のみを用いる。発泡剤としての水の使用量は、ポリオール100質量部に対して、3〜10質量部が好ましく、5〜10質量部が特に好ましい。水の使用量が上記範囲内であれば、硬質フォームの密度を高くすることなく(軽量に保つことができ)、原料の貯蔵安定性にも優れる。
【0035】
(触媒)
触媒としては、ウレタン化反応を促進するウレタン化触媒であれば特に制限はない。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等の3級アミン類;ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
また、イソシアネート基の三量化反応を促進させるイソシアヌレート化触媒を併用してもよい。イソシアヌレート化触媒としては、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩;N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。本発明においては、得られる硬質フォームの難燃性を高くできる点でイソシアヌレート化触媒を上記ウレタン化触媒と併用することが好ましい。
【0036】
また、硬質フォームの製造方法としてスプレー発泡を採用する場合には、反応を短時間で完結させるために、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒を併用することが好ましい。
触媒の使用量は、ポリオール100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
【0037】
(整泡剤)
本発明においては、良好な気泡を形成するために、整泡剤を用いる。整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。
整泡剤の使用量は、適宜選定すればよいが、ポリオール100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0038】
(その他の配合剤)
本発明では、上述したポリオール、ポリイソシアネート、無機層状物質、発泡剤、触媒、整泡剤の他に、任意の配合剤を用いることができる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0039】
(硬質フォーム)
本発明の製造方法で得られる硬質フォームの密度は、25〜40kg/m3 が好ましい。密度は、発泡剤の量により調節でき、発泡剤を多く用いれば軽くできる。発泡剤を多く用いると得られた硬質フォームが収縮しやすい傾向がある。
【0040】
硬質フォームの独立気泡率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。独立気泡率が高いとは、硬質フォームの発泡の際に形成される気泡が閉じている割合が高いことを意味し、断熱性能が高いことに通じる。一方、独立気泡率が低ければ、気泡は通気性を有することとなり、断熱性能は低いこととなる。独立気泡率は、ASTM D2856に準拠して測定され、ポリオールの種類、触媒の種類または使用量で制御でき、主に整泡剤の種類や使用量で制御される。
本発明の製造方法で得られる硬質フォームは、断熱材として好適に使用される。特に、本発明の製造方法は、スプレー発泡による建築物の壁面への施工に好適である。
【0041】
(作用)
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法によれば、発泡剤として水のみを用いているため、環境への負荷を抑制できる。また、本発明により得られる硬質発泡合成樹脂の独立気泡率が高いため、断熱性能が高い。なお、独立気泡率が高い硬質発泡合成樹脂は、特に密度が低い場合には、機械的強度に劣るものとなりやすい。しかし、本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法によれば、芳香族系アンモニウムイオン化合物によりカチオン交換された無機層状物質を、ポリオール100質量部に対して0.1〜10質量部用いているため、独立気泡率が高いにもかかわらず、機械的強度を高くすることができ、かつ寸法安定性にも優れる。これは、当該無機層状物質がポリオールに充分に分散することにより、機械的強度を効果的に高めているためと考えられる。特に発泡剤として水を多量に用いて軽量の硬質発泡合成樹脂を製造した場合であっても、充分な機械的強度が発揮され、寸法安定性にも優れる。
【実施例】
【0042】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。例1〜3、8、9は実施例、例4〜7、10は比較例である。また、表にそれぞれの処方およびその評価結果を示す。表中の処方欄の数値の単位は質量部である。実施例および比較例で用いた原料は、各表に示したとおりであり、その詳細は以下のとおりである。
【0043】
(ポリオール)
ポリオールA:シュークロース、グリセリンおよび1−(2−アミノエチル)ピペラジンの混合物(質量比で5.6:3.4:1)にPOを開環付加重合させて得られた、25℃における粘度が2100mPa・s、水酸基価が340mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールB:ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、水酸基価が250mgKOH/gのポリエステルポリオール。
ポリオールC:トルエンジアミンにEOを開環付加重合させ、ついでPOを開環付加重合させ、ついでEOを開環付加重合させて得られた、25℃における粘度が7000mPa・s、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。POとEOとの合計量に対するEOの割合は、33質量%であった。
ポリオールD:エチレンジアミンにPOを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0044】
(無機層状物質)
モンモリロナイトA:ナトリウム型モンモリロナイトをジメチルベンジルステアリルアンモニウムイオン化合物でカチオン交換したアンモニウム変性モンモリロナイト。
モンモリロナイトB:ナトリウム型モンモリロナイトをジメチルジステアリルアンモニウムイオン化合物でカチオン交換したアンモニウム変性モンモリロナイト。
モンモリロナイトC:ナトリウム型モンモリロナイトをジメチルベンジルステアリルアンモニウムイオン化合物でカチオン交換したアンモニウム変性モンモリロナイトとナトリウム型モンモリロナイトをジメチルジステアリルアンモニウムイオン化合物でカチオン交換したアンモニウム変性モンモリロナイトを混合したもの。
【0045】
(触媒)
アミン触媒A:N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(商品名:TOYOCAT−MR、東ソー(株)製)。
アミン触媒B:N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン(商品名:ポリキャット41、エアプロダクツ社製)。
アミン触媒C:N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(商品名:TOYOCAT−DT、東ソー(株)製)。
アミン触媒D:トリエチレンジアミンをジプロピレングリコールにて33質量%に希釈したもの(商品名:TEDA L33、東ソー(株)製)。
【0046】
(硬質フォームの製造例)
表1、2に示したポリオール(合計で100質量部)を混合してそれぞれ用いた。また同様に表1、2に示した処方にしたがい、ポリオール混合物、発泡剤、無機層状物質、触媒に以下の整泡剤、難燃剤を添加、充分に撹拌混合してポリオール組成物(ポリオールシステム液)とした。整泡剤としては、シリコーン整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を用いた。難燃剤としては、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:ファイロールPCF、アクゾジャパン社製)を用いた。またポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業(株)製)を用いた。
調製したポリオールシステム液と前記ポリイソシアネートとを液温20℃で混合し、縦200mm、横200mm、高さ200mmの木製の箱内に投入し、硬質フォームを製造した。
【0047】
(硬質フォームの評価)
得られた硬質フォームの評価を、表1、2に示す各項目について行った。コア密度(単位:kg/m3 )、高温寸法変化率(単位:%)、高温高湿寸法変化率(単位:%)は得られた硬質フォームから縦75mm、横150mm、高さ100mmの試験片を切り出して測定した。高温寸法変化率は70℃で48時間経過後の発泡方向に対して垂直方向の寸法変化率を、高温高湿寸法変化率は70℃、95%で48時間経過後の発泡方向に対して垂直方向の寸法変化率を示す。圧縮強度(単位:MPa)は、JIS A9511に準拠して測定した。熱伝導率(単位:mW/m・K)は、JIS A1412に準拠し、熱伝導率測定装置(オートラムダHC−074型、英弘精機(株)製)を用いて測定した。独立気泡率(単位:%)は、高精度自動体積計(VM−100型、エステック社製)を用いて測定した。難燃性に関しては、JIS A9511に準拠し、自己消火性試験(単位:mm)を測定した。
また、気泡外観については、得られたフォームを切断し内部の気泡状態を目視で観察し○:良好、△:普通、×:不良の3段階で評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
(例1〜7)
例1〜3は、特定構造の無機層状物質を用いているため、無機層状物質を用いていない例4〜5に対して気泡外観、断熱性等を損なうことなく、圧縮強度、寸法変化率において優れた値を示した。例6は、無機層状物質が、特定構造の無機層状化合物ではないため、効果が得られなかった。例7は、無機層状物質の割合が所定範囲から外れているため、気泡荒れを生じさせ、その断熱性および圧縮強度が低下した。
【0051】
(例8〜10)
表2は、イソシアヌレート処方の硬質フォームの製造例である。例8〜9は、特定構造の無機層状物質を用いているため、特定構造の無機層状物質を用いていない例10に対して気泡外観、断熱性、難燃性等を損なうことなく、圧縮強度において優れた値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、発泡剤として環境への負荷が低い水のみを使用し、断熱性能、寸法安定性、難燃性に優れ、独立気泡率が高い硬質発泡合成樹脂の製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネートとを、整泡剤、触媒、発泡剤および無機層状物質の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、
前記発泡剤として水のみを用い、
前記無機層状物質として、芳香族系アンモニウムイオン化合物によりカチオン交換された無機層状物質を用い、かつ、
前記無機層状物質を、ポリオール100質量部に対して0.1〜10質量部用いることを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの割合が、イソシアネート指数で130〜500である、請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオールが、芳香族系ポリオールを含み、
該芳香族系ポリオールの割合が、ポリオール(100質量%)中、50〜100質量%である、請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記芳香族系ポリオールが、芳香族系ポリエステルポリオールを含み、
該芳香族系ポリエステルポリオールの割合が、芳香族系ポリオール(100質量%)中、50〜100質量%である、請求項3に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2006−124689(P2006−124689A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284417(P2005−284417)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】