説明

確認素子

【課題】 安価な価格で、信頼ある作動を行う確認素子を提供する。
【解決手段】 確認素子(8)は集積回路(RFIDトランスポンダ)(6)と、この集積回路に接続されたアンテナコイル(7)とを有する。アンテナコイル(7)は下方の導電性トラック(1)と、上方の導電性トラック(2)とを有し、各トラックは複数の巻回体(3)を有し、2つのトラックは誘電層(4)の両側に配置され、2つのトラックの相対位置は、これらトラックが1つの選択された領域(5a又は5b)又は2つの選択された領域(5a及び5b)においてのみ重なるように選定される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は集積回路と、この集積回路に接続されたアンテナコイルとを有する確認素子(identification element)(RFIDトランスポンダ)に関する。
【0002】
【従来の技術】商品市場部門で特に使用されるバーコードと比べてのRFIDトランスポンダ(transponder) の利点は情報の直接交換が可能なことであり、これは、情報を伝達するために尋問装置(interrogating device)とトランスポンダとの間の可視接触が不要であることを意味する。更に、バーコードとは異なり、RFIDトランスポンダは必要時にその情報内容を直接変化させることが容易である。
【0003】もちろん、RFIDトランスポンダは、種々多様の分野、特に、保障部門のみならず、商品の製造分野、更には商品の処理及び取り扱いの分野での応用が可能である。例として、人間及び動物の確認標識、特に空港や郵便局での手荷物や小荷物の確認標識、及び生産中の車両や立体駐車場での車両の確認標識がある。
【0004】既知のRFIDトランスポンダの欠点は、バーコードと比べて価格があまりにも高いことである。これはまた、販売部門におけるRFIDトランスポンダの使用がフリンジエリアに制限されていた理由でもある。特に、大量生産品をデパートや卸売店で販売する場合に価格情報又は他のデータを提示するためにRFIDトランスポンダを使用することは、RFIDトランスポンダがDM10(10ドイルマルク)程度の価格を有することを考慮して、今まで注目されていなかった。当然、使い捨て可能な確認標識としての使用を全く考慮しないことになる。
【0005】RFIDトランスポンダは受動又は能動素子として構成される。RFIDトランスポンダを能動素子として使用した場合、集積回路を包囲するハウジングは普通バッテリーの形をした付加的なエネルギ源をも収容する。RFIDトランスポンダは種々多様の周波数レンジ、例えば、125kHzの低周波数レンジ、13.56MHzの中間周波数レンジ又は典型的には2.45GHzの高周波数レンジで作動できる。本発明は好ましくは中間周波数レンジで作動する受動トランスポンダに関するが、これに限定されない。
【0006】集積回路を備えたデータキャリはEP0682321A2号特許明細書からも分かるように従来既知である。データキャリヤはカード本体と、1個又は数個の層でできた少なくとも1つのコイルに接点素子を介して電気的に接続された集積回路とを有する。素子は組合わさって、所定の共振周波数で作動する共振回路を形成する。コイルの目的はエネルギを供給すること及び(又は)集積回路と外部の装置との間でデータを交換することである。回路及び接点素子はそれぞれ別個のモジュールとして構成される。
【0007】既知の形状のトランスポンダの製造コストは高過ぎるため、高級市場向けの製品への使用以外に適さない。可撓性の基体に装着された共振回路に集積回路を結合する方法及び対応するトランスポンダはEP0821406A1号明細書に記載されている。共振回路は可撓性の基体の両側に配置された2つの導電性のパターンを有する。共振回路はあるインダクタンス及びあるキャパシタンスを有する。集積回路と共振回路との間の信頼ある結合を保証するため、可撓性の基体上の結合領域をクリーニングする。次いで、半導体分野で知られているワイヤボンディングと呼ばれる技術により、集積回路を共振回路に接続する。結合部が外部からの衝撃により破壊するのを阻止するため、集積回路及び結合領域に保護コーティングを施す。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この既知の方法及び既知のトランスポンダの欠点は、共振回路への集積回路の結合に続いて、回路及び結合領域に保護コーティングを施すことが絶対に必要であることを考慮すると、個々の部品としてのコストが比較的高く、製造コストが比較的高いことである。典型的には、トランスポンダはラベルに組み込まれる。チップ領域におけるトランスポンダの厚さが残りの領域におけるトランスポンダの厚さより実質上大きいので、ラベルを印刷するために例えばサーマルプリンタを使用する場合の主要な問題を生じさせる。更に、共振回路を構成する導電性パターンはエッチングにより基体上に形成される。エッチングは比較的高価な方法であり、更に、重大な環境汚染問題を生じさせる。
【0009】本発明の目的は、安価な価格で、信頼ある作動を行う確認素子を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段並びに作用効果】この目的を達成するため、本発明の確認素子においては、アンテナコイルが下方の導電性のトラックと、上方の導電性のトラックとを有し、各トラックが複数の巻回体を有し、これら2つのトラックが誘電層の両側に配置され、2つのトラックの相対位置は、これらトラックが1つ又は2つの選択された領域においてのみ重なるように選定される。
【0011】本発明のこの構成の利点は、2つのトラックが多数の巻回体を有する結果、アンテナコイルのインダクタンスが比較的高くなることである。特に、インダクタンスは、所定のスペース内の所定の尋問フィールドで、出力電圧が集積回路を活動即ち作動させるのに十分となるように、寸法決めすることができる。更に、実質上内端及び(又は)外端でのみ2つのトラックを重ね合わせることを含む特徴が、トラックの重なり領域により大半のキャパシタンスが得られ、他の重なり領域(即ち、トラックが交差する領域)により得られるキャパシタンスは無視できるほど小さいという効果を奏する。このため、アンテナコイルの所定の励磁周波数で集積回路を作動させるための一層高いインダクタンス、従って、一層高い誘起電圧を得ることが可能となる。
【0012】有利な態様として、トラックの2つの重なり領域のうちの一方(好ましくは、トラックの外側重なり領域)において電気的に相互接続されるようになった2つのアンテナコイルを設ける。
【0013】本発明の確認素子の更に有利な特徴では、集積回路をカプセルで包まれていないチップとする。明らかに、これは著しく経済的な解決策を提供する。確認素子をラベルに組み込んだ場合、カプセルで包まれていないトランスポンダがカプセルで包まれたトランスポンダよりも実質上薄いので、例えばサーマルプリンタによる印刷が実質上一層容易になる。
【0014】好ましくは、導電性トラックは金属箔材料からダイスタンピング加工により作られた部分である。共振ラベルの極めて安価な製造方法はEP0655705A1号明細書から分かるように従来既知である。同明細書に開示された製造方法は本発明の特にアンテナコイルの製造に適用できる。
【0015】本発明の有利な態様によれば、誘電層として誘電接着剤を使用する。この態様は上述のヨーロッパ公開特許明細書にも記載されている。カプセルで包まれていないチップで構成された集積回路の作動電圧は2ボルト程度である。本発明の確認素子の有利な態様においては、トラックが多数の巻回体を有し、その巻回体の数はアンテナコイルのインダクタンス、従って、誘起電圧に比例し、トラックの重なり領域の寸法は、アンテナコイルの出力電圧が所定のスペース内で所定の尋問フィールドを有するボルト範囲となるように選定される。
【0016】製造公差を補償するために、本発明の有利な実施の形態に係る確認素子においては、選択された領域(単数又は複数)に熱及び圧力を作用させることにより、所望の共振周波数となるように製造後のアンテナコイルを調整(チューニング)できる。好ましくは、調整は、アンテナコイルが集積回路の作動に必要な共振周波数を供給するような態様で、加熱可能なラムによりトラックの重なり領域内の2つのトラック間の距離を調節することによって、行われる。また、集積回路がアンテナコイルに結合されたときにこのような微調整を行うことも可能である。
【0017】本発明の確認素子の好ましい実施の形態によれば、アンテナコイル及び集積回路は導電性の接着剤を介して相互接続される。使用する接着剤は半導体製造分野で周知の等方性又は異方性の接着剤である。これを用いる方法は極めて安価な結合方法である。更に、この方法は、カプセルで包まれていないチップ及びダイスタンピング加工されたトラックから作られた上述のアンテナコイルに容易に適用でき、特に適している。
【0018】本発明の確認素子の有利な態様によれば、アンテナコイルの2つの導電性トラックは実質上同じ寸法を有し、導電性トラックは互いに反対方向に巻かれる。更に、好ましくは、2つのトラックのうちの少なくとも一方のトラックの外側巻回体の端部及び内側巻回体の端部はトラックの他の領域よりも大きな幅を有する。上述のように、選択されたトラックの重なり領域はアンテナコイルのこのような内側及び(又は)外側端部に位置する。これらの領域が残りのトラック領域よりも大きな幅を有するので、キャパシタンスの集中が対応するトラックの重なり領域内で生じる。重なり領域の近傍において、チップ即ち集積回路はアンテナコイルに接続される。集中した全キャパシタンスは複数の個々のキャパシタンスの合計として得られる全キャパシタンスよりも実質上一層好ましい。その理由は、チップの近傍の所望の地点において、全キャパシタンス、従って、集積回路を作動させるエネルギを容易に集めることができるからである。
【0019】本発明の確認素子の有利な実施の形態によれば、トランスポンダ即ちチップは確認素子の対称軸の領域において2つのトラックの2つの内側巻回体間に位置する。この構成は、後述する確認素子の更なる特徴に関連して特に有利である。この更なる特徴によれば、チップが位置する領域の外側で、2つの導電性トラック間に誘電箔の2つのウエブを設ける。この箔は2つの導電性トラックの相対距離を増大させ、アンテナコイルを不作動にさせるような短絡が2つの導電性トラックの重なり領域内で発生するのを阻止する。好ましくは、誘電箔はポリエステルで作る。
【0020】
【発明の実施の形態】図1はアンテナコイル7の下方の導電性トラック1の上平面図である。下方のトラック1はほぼ3つの巻回体3を有するが、図2の上平面図から明らかなように、上方のトラック2はほぼ3つの巻回体3を有する。比較的多数の巻回体は高インダクタンスを生じさせ、最終的に、集積回路6を活動させるための十分高い誘起電流を提供する。2つのトラック1、2は互いに反対方向に巻かれている。図3は2つの導電性トラック1、2を有する完成した確認素子8を示す。
【0021】下方のトラック1の内端5a及び外端5b、並びに、上方のトラック2の外端5bはトラック1、2の残りの部分よりも大きな幅を有する。好ましくは、2つのトラック1、2は金属箔(特に、アルミニウム箔)からダイスタンピング加工により作る。もちろん、箔は銅の如き他の導電性材料から作ることができる。
【0022】アンテナコイル7を得るために、2つのトラック1、2間に誘電層4を配置する。2つのトラック1、2の相対位置は、これらのトラックが実質上選択された領域5a、5bにおいてのみ重なるように選定される。好ましい実施の形態によれば、トラック1、2は外側の巻回体3の重なり領域5bにおいて電気的に相互接続される。最も簡単な場合、トラックの重なり領域5bにおいて2つのトラックを貫通する穴をポンチング加工することにより、トラック間の結合を行う。ただし、他の結合方法も適用できる。
【0023】好ましくは、2つのトラック1、2間に配置された誘電層4は誘電性のホットメルト接着剤である。誘電層4は2つのトラック1、2を電気的に絶縁する。2つのトラック1、2が片寄って配置されているため、トラックの重なり領域5a、5bにより大半のキャパシタンスが得られ、2つのトラック1、2が交差する領域である他の重なり領域10により得られるキャパシタンスは全体のキャパシタンスに対して無視できるほど小さい。このような構成のため、キャパシタンス(従って、アンテナコイルのエネルギ)は必要な地点(即ち、チップのごく近傍)に集中する。
【0024】好ましくはカプセルで包まれていないチップ6で構成される集積回路6は、アンテナコイル7の中心線11のごく近傍で、下方のトラック1の端領域と上方のトラック2の端領域との間に位置する。
【0025】好ましくは、チップ6とトラック1、2との結合は、導電性接着剤を用いて、フリップ・チップボンディングとして参照される方法により行われる。もちろん、半導体製造分野で既知の他の結合方法を本発明に関連して適用できることは言うまでもない。
【0026】アンテナコイル7及びこれを備えた確認素子8を不作動にするような短絡が重なり領域10で発生するのを阻止するため、少なくともこのような領域10において、付加的な誘電箔9又は他の付加的な誘電層を設ける。
【0027】図4は本発明の確認素子8の他の実施の形態を示す。先の図面に示す確認素子8と異なる点は、デザインのみである。
【図面の簡単な説明】
【図1】下方の導電性トラックの上平面図である。
【図2】上方の導電性トラックの上平面図である。
【図3】本発明の確認素子の形状を示す上平面図である。
【図4】本発明の確認素子の別の形状を示す上平面図である。
【符号の説明】
1 下方の導電性トラック
2 上方の導電性トラック
3 巻回体
4 誘電層
5a トラック重なり領域(内端)
5b トラック重なり領域(外端)
6 集積回路
7 アンテナコイル
8 確認素子
9 誘電箔
11 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 集積回路と、同集積回路に接続されたアンテナコイルとを有する確認素子において上記アンテナコイル(7)が下方の導電性のトラック(1)と、上方の導電性のトラック(2)とを有し、上記各トラック(1、2)が複数の巻回体(3)を有し、誘電層(4)が当該2つのトラック(1、2)間に配置され、該2つのトラック(1、2)の相対位置は、同トラックが実質上1つの選択された領域(5a又は5b)又は2つの選択された領域(5a及び5b)においてのみ重なるように選定されていることを特徴とする確認素子。
【請求項2】 上記集積回路がカプセルで包まれていないチップ(6)を有することを特徴とする請求項1に記載の確認素子。
【請求項3】 上記アンテナコイル(7)及び上記集積回路(6)が導電性の接着剤により相互接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の確認素子。
【請求項4】 上記導電性のトラック(1、2)が金属箔材料からダイスタンピング加工により形成された部品であることを特徴とする請求項1に記載の確認素子。
【請求項5】 上記誘電層(4)が誘電接着剤で形成されることを特徴とする請求項1に記載の確認素子。
【請求項6】 上記アンテナコイル(7)のインダクタンスを決定する上記トラック(1、2)の巻回体(3)の数、及び、当該トラック(1、2)が重なる上記領域(5a、5b)の寸法は、当該アンテナコイル(7)の出力電圧が所定のスペース内で所定の尋問フィールドを有するボルト範囲となるように選定されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の確認素子。
【請求項7】 製造後に、上記選択された領域(5a又は5b)又は選択された領域(5a及び5b)に熱及び圧力を加えることにより、上記アンテナコイル(7)を所望の共振周波数に調整できることを特徴とする請求項1又は6に記載の確認素子。
【請求項8】 上記アンテナコイル(7)の上記2つの導電性のトラック(1、2)が実質上同じ寸法を有し、当該トラック(1、2)が互いに反対方向に巻かれていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の確認素子。
【請求項9】 上記2つのトラック(1、2)のうちの少なくとも一方のトラックの外側巻回体(3)の端部(5b)及び内側巻回体(3)の端部(5a)が対応する同トラック(1;2)の他の領域よりも大きな幅を有することを特徴とする請求項1又は7に記載の確認素子。
【請求項10】 上記2つのトラック(1、2)が2つの外側巻回体(3)の端部(5b)で電気的に相互接続されていることを特徴とする請求項1又は9に記載の確認素子。
【請求項11】 上記チップ(6)即ちトランスポンダ(6)が確認素子(8)の中心線(11)の領域において上記2つのトラック(1、2)の2つの内側巻回体(3)間に位置することを特徴とする請求項2又は10に記載の確認素子。
【請求項12】 上記2つのトラック(1、2)の間で、かつ、上記チップ(6)が位置する領域の外側に、付加的な誘電層(9)を設けたことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の確認素子。
【請求項13】 上記誘電層がポリエステルで作った誘電箔の2つのウエブ(9)を有することを特徴とする請求項12に記載の確認素子。
【請求項14】 集積回路を備えた確認素子に使用するアンテナコイル(7)において、下方の導電性のトラック(1)と、上方の導電性のトラック(2)とを有し;上記各トラック(1、2)が複数の巻回体(3)を有し、当該2つのトラック(1、2)間に誘電層(4)を配置し、該2つのトラック(1、2)の相対位置は、該トラックが実質上1つの選択された領域(5a又は5b)又は2つの選択された領域(5a及び5b)においてのみ重なるように選定されていることを特徴とするアンテナコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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