説明

磁性コートキャリア及び二成分系現像剤

【目的】 現像においてカブリ、キャリア付着の少ない画像を得ることができる磁性コートキャリアを提供すること。
【構成】 磁性キャリアコア粒子と被覆層とを有する磁性コートキャリアにおいて、磁性金属酸化物粒子は、表面が親油化処理されており、磁性コートキャリアは、個数平均粒径Dnが5〜100μmであり、磁性コートキャリアは個数分布において下記式Dn/σ≧3.5[式中、Dnは磁性コートキャリアの個数平均粒径、σは磁性コートキャリアの個数分布における標準偏差を示す。]を満足し、(2/3)×Dn以下の粒径の磁性コートキャリア粒子の含有量が25個数%以下であり、且つ、被覆層が少なくともゾルゲル法によって形成された金属酸化物である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真法、静電記録法等における静電荷像を現像するための現像剤に使用される磁性コートキャリア及び該キャリアとトナーとを含有する二成分系現像剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真法として米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報、特公昭43−24748号公報等に種々の方法が記載されているが、これらの方法は何れも光導電層に原稿に応じた光像を照射することによって静電潜像を形成し、次いで静電潜像上にこれとは反対の極性を有するトナーと称される着色微粉末を付着させて該静電潜像をトナー画像として現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、熱、圧力或は溶剤蒸気等によってトナー画像を転写材に定着して複写物を得るものである。
【0003】ところで、静電潜像を現像する工程は、潜像とは反対の極性に帯電されたトナー粒子を静電引力によって吸引して静電潜像上に付着させるものであるが(反転現像の場合は、潜像の電荷と同極性の摩擦電荷を有するトナーを使用)、一般に静電潜像をトナーを用いて現像する方法としてトナーをキャリアと呼ばれる媒体に小量分散させた所謂二成分系現像剤を用いる方法が知られている。
【0004】一般に二成分系現像剤を構成するキャリアは、鉄粉に代表される導電性キャリアと鉄粉、ニッケル、フェライト等の表面を絶縁性樹脂によって被覆した所謂絶縁性キャリアとに大別される。高画質化を図るために交番電界を印加する場合、現像剤キャリアの抵抗が低いと潜像電位がキャリアを介してリークし、良好な画像を得られなくなる。
【0005】上記問題に対する対策としては、キャリアが或る程度以上の抵抗を有することが必要であり、特にキャリアコア材が導電性の場合、樹脂をコートして用いるのが好ましい。又、抵抗が或る程度高いフェライトがコア材として好ましく用いられている。
【0006】高画質用キャリアとしてみた場合、鉄粉は高磁気力のため、現像領域において硬い現像剤ブラシを形成し、ハキ目やガサツキ等を生じ、良好な画像を得ることができない。そこで、キャリアの磁気力を低くし、現像剤ブラシを柔らかくして高画質化を図るという目的でフェライトが好ましく用いられている。
【0007】又、高画質画像形成のためにキャリアの種々の特性を改良する試みもなされている。
【0008】例えば、磁気力をコントロールする技術として、特開昭59−104663号公報においてはキャリアの飽和磁化の値を50emu/g以下にすることによってハキ目の無い良好な画像を得ることができると提案されている。
【0009】しかし、飽和磁化の値を徐々に小さくしたキャリアを用いると、細線の再現性は良好になる反面、磁極から離れるに従ってキャリアが静電荷像担持体である感光ドラム上に付着する現象(キャリア付着)が顕著になってくる。
【0010】又、キャリア粒径を小さくして高画質化する試みとして、特開昭60−131549号公報には微粒子化したキャリアとトナーを用いて現像する方法が提案されている。ここでは、微粒子キャリアの使用により高画質を達成しつつ、そのとき顕著となるキャリア付着を高電界下においてもキャリアが絶縁性を保持する機能を付与することによってクリアすることを提案している。
【0011】しかしながら、高画質化するためにキャリアを微粒子化することは、キャリアが担持できるトナー量が増えるためにトナー飛散が生じ易く、又、トナー粒子間の接触機会が増えるために本来トナーが持つべき帯電極性と反対極性のトナーを生じ易く、画像にカブリが生じ易い。
【0012】又、繰り返しの複写によって現像器内ではトナー粒子とキャリア粒子或はキャリア粒子同志がメカニカルなストレスの下で互いに接触を繰り返す結果、次第にキャリア表面にトナーフィルミングと呼ばれるトナー融着やトナー表面の外添剤が脱離してキャリア表面に移行する等、キャリア表面の経時的変化が生じ、キャリアの摩擦帯電付与能力を低減させてしまう。こうした劣化キャリアはトナーの帯電を不安定なものとし、例えば逆極性のトナーの生成やトナー帯電量の絶対値を低下させてしまい、地カブリやトナー飛散の原因となって画質を損なう。このようなキャリア劣化を抑制する手段として、従来によりキャリア芯材表面を種々の樹脂によりコートする方法が提案されている。
【0013】例えば、四フッ化エチレン共重合体等のフッ素系樹脂をコートしたキャリアは臨界表面張力が低いためにトナーフィルミングは起こりにくいが、成膜性が悪く、キャリア芯材との接着性も弱く、耐摩耗性の点で不満足である。更に、その帯電系列との関係から、フッ素系樹脂コートキャリアは、負帯電特性においては十分な帯電能力を持ち得ない。
【0014】一方、スチレン・メタクリレート共重合体等のアクリル系樹脂でコートされたキャリアは、成膜性が良好で、キャリア芯材との接着性も良好である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スチレンアクリル共重合体は臨界表面張力が比較的高く、繰り返しの使用に際しては比較的トナーのフィルミングが起こり易く、現像剤の寿命に若干の問題がある。又、耐摩耗性といった観点から見ると、その表面硬度は比較的高いにも拘らず十分なものであるとは言えない。
【0016】更に、シリコーン樹脂は表面エネルギーが低く、トナーフィルミングを減少させることが知られているが、シリコーン樹脂自体の機械的強度が弱く、現像器中で撹拌している間に被覆層が摩滅し、帯電特性を安定化することは困難であった。
【0017】更に又、キャリア表面を無機物で被覆する方法も提案されている。例えば、特開昭54−78136号公報においては無機ガラスで被覆したキャリアが、又、特開昭61−188548号公報にはフェライト膜が形成されたキャリアが、更に、特開平2−116857号公報においては無電界メッキしたキャリアが提案されている。
【0018】しかしながら、こうした無機物でキャリア表面を被覆する方法は密着性や被覆性が不十分であるという問題があった。
【0019】以上のように、高画質化を図るために種々の技術が試みられてはいるものの、キャリアサイドから高画質化を達成し、且つ、カブリやキャリア付着の抑制を同時に満足するような現像剤キャリアは未だ十分なものが得られていないのが現状である。
【0020】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、現像においてカブリ、キャリア付着の少ない画像を得ることができる磁性コートキャリア及び該キャリアを含む二成分系現像剤を提供することにある。
【0021】又、本発明の目的の目的とする処は、耐トナーフィルミング性と耐摩耗性に優れ、長期に亘って安定して潜像に忠実な高画質画像を得ることができる磁性コートキャリア及び該キャリアを含む二成分系現像剤を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、バインダー樹脂及び磁性金属酸化物粒子を少なくとも有する磁性キャリアコア粒子と該磁性キャリアコア粒子の表面を被覆している被覆層とを有する磁性コートキャリアにおいて、磁性金属酸化物粒子は、表面が親油化処理されており、磁性コートキャリアは、個数平均粒径Dnが5〜100μmであり、磁性コートキャリアは個数分布において下記式Dn/σ≧3.5[式中、Dnは磁性コートキャリアの個数平均粒径、σは磁性コートキャリアの個数分布における標準偏差を示す。]を満足し、(2/3)×Dn以下の粒径の磁性コートキャリア粒子の含有量が25個数%以下であり、且つ、被覆層が少なくともゾルゲル法によって形成された金属酸化物であることを特徴とする。
【0023】又、本発明は、二成分系現像剤を、該現像剤に使用されるトナーは重量平均粒径が1〜10μm以下であり、且つ、請求項1〜6記載の磁性コートキャリアを含有して構成したことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】本発明が従来のキャリアの持つ諸欠点を改善し、交番電界の現像において潜像に忠実な現像で高画質を達成しつつ、カブリ、キャリア付着の少ない優れた磁性コートキャリア及び二成分系現像剤を提供できるのは以下の理由によるものと考えられる。
【0026】即ち、本発明者等が詳細な検討を行ったところ、磁性コートキャリアの粒度分布が広い場合には、キャリア付着はキャリアの平均粒径が小さくなるに従いその粒度分布の小粒径側のものが選択的に起きや易くなることが知見された。又、トナーに対する帯電付与もキャリアの粒度分布が影響し、粒度分布が広い場合には現像剤の流動性が低下することによって不安定になり易いことも知見された。更に、現像剤の流動性はトナーの粒径が小さい場合にはトナーの表面形状にも左右されることが知見された。
【0027】そこで、磁性コートキャリアの粒度分布を所定の範囲に制御するとともに、平均粒径の2/3粒径以下の粒子の存在をできる限り少なくすること及び磁性コートキャリアの磁気力を下げることによって前記記問題を解決することができることが知見された。
【0028】これはトナーの劣化を防止するためには、磁性コートキャリアの磁気力を小さくすると効果があることが知見されたが、トナー劣化を防止するのに反比例してキャリア付着が増大することも知見された。
【0029】そこで、磁性コートキャリア粒子の比抵抗、特にコア粒子の比抵抗を上げることと磁性コートキャリアの粒度分布を制御することによってキャリア付着を防止することが可能である。同時に磁性コートキャリアの粒度分布のシャープ化はトナーヘの帯電量をも良好にすることができる。
【0030】従来のキャリア製造過程において、粉砕及び分級による製造方法では微粉を取り除くことは困難であった。詳細については後述する。
【0031】本発明に係る磁性コートキャリアは、個数平均粒径は5〜100μmであり、好ましくは10〜70μmである。個数平均粒径が5μmより小さいとキャリアの粒度分布の微粒子側の粒子による非画像部へのキャリア付着を良好に防止できない場合があり、100μmより大きいと磁気ブラシの剛直さによるハキ目は生じないが、大きさ故の画像むらを生じてしまう場合がある。
【0032】本発明に係る磁性コートキャリアの粒度分布として、個数平均粒径Dnの2/3粒径以下の個数分布の累積個数割合が25個数%以下であることが必要である。好ましくは15個数%である。更に、10個数%以下であることが画像形成装置本体の現像バイアスが変動したときにおいてもキャリア付着を更に良好に防止するために好ましい。因に、25個数%を超えると、キャリアの微粉によるキャリア付着を生じる傾向がある。
【0033】更に、式Dn/σ≧3.5を満足することが必要である。好ましくはDn/σ≧4.0である。Dn/σが3.5より小さい場合には重量平均粒径が1〜10μmのような小粒径トナーを用いたとき、現像剤の流動性が低下し、トナー帯電付与性能が不安定になる場合がある。
【0034】又、本発明に用いるキャリアコア粒子のバインダー樹脂としては一部又は全部が3次元的に架橋されている樹脂であることが好ましい。これは、キャリア粒度分布の制御とキャリア製造方法とが密接に関係しているためである。一般に、磁性体分散型樹脂キャリアを製造する場合にはバインダー樹脂及び磁性粉とを所定の混合比で加熱混合し、冷却後に粉砕し、次いで分散する方法が採られていた。
【0035】特開平7−43951号公報に開示されるように、粉砕工程を改良することによって或る程度の粒度分布のシャープ化は図れるが、粉砕のメカニズムからどうしても或る程度の微粉を生じることは防止できない。特に、磁性粉が多量に含有される場合には過粉砕になり易いという問題点があった。特に、微粉は風力分級や櫛を用いた分級操作によっても完全に取り除くことができなかった。
【0036】又、バインダー樹脂として熱可塑性樹脂を使用したキャリアにおいては、多数枚の使用により分散している磁性体微粒子の脱離が問題となる。
【0037】本発明においては、例えばモノマーが均一であるような溶液中から粒子を生成する重合法の製造方法及びキャリアコア粒子中に分散する金属酸化物に親油化処理を施すことによって、粒度分布のシャープな、特に微粉の無い磁性体分散型樹脂キャリアコアを製造することができることを見出した。これはモノマーの重合が進み、高分子量化してゲル状になるのと同時に金属酸化物が取り込まれる状態で造粒が行われることにより、均一な粒度分布、特に微粉が少ないキャリアコア粒子を製造できると考えられる。又、樹脂の一部又は全部を3次元的に架橋することで分散する磁性体微粒子等を更に強固に結着できる。
【0038】又、高画質化を達成するために重量平均粒径が1〜10μmのように小粒径トナーの場合、キャリア粒径もトナーに応じて小粒径化することが好ましく、前記製造方法ではキャリア粒径が小粒径化しても平均粒径に関係なく微粉の無いキャリアを製造することができる。
【0039】又、本発明の特徴であるキャリア表面へのトナーフィルミングやトナー外添剤の付着がなく、長期に亘って高画質画像を得ることができるのは、キャリア表面に金属酸化物の被覆層を作製し、且つ、この被覆層中にカップリング剤又はオルガノアルコキシシランを含有させることによる。
【0040】即ち、本発明に係る磁性コートキャリアはキャリアコア材の表面をゾルゲル法による金属酸化物で被覆することを特徴とするものである。尚、被覆層を形成する際に被覆材の金属酸化物原材料とカップリング剤又はオルガノアルコキシシランを混合しておくことにより、金属酸化物層形成後には被覆膜中にカップリング剤やオルガノアルコキシシランが含有されることになる。
【0041】このようにして作製された磁性コートキャリアは被覆層の被膜強度やキャリアコア材との密着性が大幅に向上しているのみならず、表面の離型性や帯電付与安定性に優れる。従って、長期の使用によるキャリアの劣化、例えばキャリア表面へのトナーフィルミングや被覆層の剥がれ等によるトナーヘの帯電付与能力の低下が生じないため、安定して良好な現像を行うことができる。
【0042】キャリアコア粒子のバインダー樹脂に使用されるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーを用いることができる。例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン誘導体と、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン及び不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ジオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸及びメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;マレン酸、マレイン酸ハーフエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体;アクロレイン類等を挙げることができる。
【0043】これらのモノマーは単独又は混合して使用することができ、好ましい特性が得られるような好適な重合体組成を選択することができる。キャリアコア粒子のバインダー樹脂が一部又は全部が3次元的に架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、重合性の2重結合を1分子当たり2個以上有する架橋剤を使用することが好ましい。
【0044】架橋剤としては ジビニルベンゼン ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1 ,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N, N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフイド、ジビニルスルフォンが挙げられる。
【0045】2種以上を適宜混合して使用しても良い。斯かる架橋剤は重合性混合物に予め混合しておくこともでき、必要に応じて適宜重合の途中で添加することもできる。
【0046】その他のキャリアコア粒子のバインダー樹脂のモノマーとして、エポキシ樹脂の出発ビスフェノール類とエピクロルビドリン;フェノール樹脂のフェノール類とアルデビド類;尿素とアルデヒド類、メラミンとアルデヒド類が挙げられる。
【0047】最も好ましいバインダー樹脂はフェノール系樹脂である。その出発原料としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシン、p−tert−ブチルフェノール等のフェノール化合物、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド化合物が挙げられる。特に、フェノールとホルマリンの組合せが好ましい。
【0048】これらのフェノール樹脂又はメラミン樹脂を用いる場合には硬化触媒として塩基性触媒を用いることができる。塩基性触媒としての通常のレゾール樹脂製造に使用される種々のものを用いることができる。具体的には、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアミン類を挙げることができる。
【0049】本発明に係る磁性コートキャリアに用いる金属酸化物としては、磁性を示すMO°Fe23 又はMFe24 の一般式で表されるマグネタイト又はフェライトが挙げられる。式中、Mは3価、2価或は1価の金属イオンを示し、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb、Liが挙げられる。Mは単独或は複数で用いることができる。例えばマグネタイト、Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Ca−Mn系フェライト、Ca−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライト等の鉄系酸化物が挙げられる。
【0050】又、上記磁性を示す金属酸化物と下記非磁性の酸化物とを混合して用いても良い。例えば、非磁性の酸化物としてはAl23 、SiO2 、CaO、TiO2、V25 、CrO2 、MnO2 、α−Fe23 、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y23 、ZrO2 が挙げられる。この場合、1種類の金属酸化物を用いることもできるが、特に好ましくは少なくとも2種以上の金属酸化物を混合して用いるのが良い。尚、その場合には、比重や形状が類似している粒子を用いるのがバインダーとの密着性、キャリアコア粒子の強度を高めるためにより好ましい。例えば、マグネタイトとマタイト、マグネタイトとγ−Fe23、マグネタイトとSiO2 、マグネタイトとAl23 、マグネタイトとTiO2 、マグネタイトとCa−Mn系フェライト、マグネタイトとCa−Mg系フェライトの組合せが好ましく用いられる。中でもマグネタイトとヘマタイトの組合せを特に好ましく用いることができる。
【0051】上記金属酸化物を使用する場合、磁性を示す金属酸化物の個数平均粒径はキャリアコアの個数平均粒径によっても変わるが、0.02〜2μmのものが好ましい。又、2種以上の金属酸化物を分散させて用いる場合、磁性を示す金属酸化物の個数平均粒径は0.02〜2μmのものが好ましい。他方の金属酸化物の個数平均粒径は0.05〜5μmのものが好ましい。この場合、磁性粒子(粒径ra)に対して他方の金属酸化物(粒径rb)の粒径比rb/rbが1〜5であることが好ましい。
【0052】rb/rbが1.0以下であると比抵抗の低い強磁性を示す金属酸化物が表面に出易くなり、キャリアコアの比抵抗を上げにくく、キャリア付着を防止する効果が得られにくくなる。又、rb/rbが5.0を超えると、キャリアの強度が低下し易く、キャリア破壊を引き起こし易くなる。尚、本発明で使用する金属酸化物の粒径測定方法については後述する。
【0053】又、バインダー樹脂に分散されている金属酸化物の比抵抗は磁性粒子が1×103 Ω・cm以上の範囲のものが好ましく、特に、2種以上の金属酸化物を混合して用いる場合には、磁性を示す金属酸化物粒子の比抵抗が1×103 Ω・cm以上の範囲が好ましく、他方の非磁性金属酸化物粒子は磁性金属酸化物粒子よりも高い比抵抗を有するものを用いることが好ましい。好ましくは本発明に用いる非磁性金属酸化物の比抵抗は1×108 Ω・cm以上、より好ましくは1×1010Ω・cm以上のものが良い。
【0054】磁性金属酸化物粒子の比抵抗が1×103 Ω・cm未満であると含有量を減量しても所望の高抵抗が得られにくく、電荷注入を招き、画質を落としたり、キャリア付着を招き易い。又、2種以上の金属酸化物を使用する場合には粒径の大きな金属酸化物の比抵抗が1×108 Ω・cm未満であると磁性キャリアコアの比抵抗が低くなり、本発明の効果が得られにくくなる。尚、本発明で使用する金属酸化物の比抵抗測定方法については後述する。
【0055】本発明における金属酸化物分散樹脂コアの金属酸化物の含有量は、50重量%〜99重量%である。金属酸化物の量が50重量%未満であると帯電性が不安定になり、特に低温低湿環境下においてキャリアが帯電し、その残留電荷が残存し易くなるために微粉トナーや外添剤等がキャリア粒子表面に付着し易くなる。又、99重量%を超えるとキャリア強度が低下し、耐久によるキャリアの割れ等の問題を生じ易くなる。
【0056】更に、本発明の好ましい形態としては、2種以上の金属酸化物を分散した金属酸化物分散樹脂コアにおいて、含有する金属酸化物全体に占める磁性を有する金属酸化物の含有量が30重量%〜95重量%である。30重量%未満であるとコアの高抵抗化は良好になる反面、キャリアとしての磁気力が小さくなり、キャリア付着を招く場合がある。又、95重量%を超えると磁性を有する金属酸化物の比抵抗にもよるが、より好ましいコアの高抵抗化が図れない場合がある。
【0057】更に、本発明で使用する金属酸化物分散樹脂コアに含有される金属酸化物は親油化処理されていることが磁性キャリア粒子の粒度分布をシャープにすること及び金属酸化物微粒子のキャリアからの脱離を防止する上で好ましい。親油化処理された金属酸化物を分散させたキャリアコア粒子を形成する場合、モノマーと溶媒が均一になっている液中から重合反応が進むと同時に溶液に不溶化した粒子が生成される。そのときに金属酸化物が粒子内部に均一で且つ高密度に取り込まれる作用と粒子同士の凝集を防止して粒度分布をシャープ化する作用があると考えられる。
【0058】親油化処理はシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等カップリング剤や種々の界面活性剤で表面処理することが好ましい。
【0059】特に、シラン系カップリング剤及びチタネート系カップリング剤等カップリング剤の中から選ばれるもので表面処理することが好ましい。
【0060】シラン系カップリング剤としては、疎水性基、アミノ基或はエポキシ基を有するものを用いることができる。疎水性基を持つシラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン等を挙げることができる。アミノ基を持つシラン系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基を持つシラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0061】チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルビンゼンスルホニルチタネート、イソプロペルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等を挙げることができる。
【0062】アルミニウムカップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
【0063】界面活性剤としては、市販の界面活性剤を使用することができる。
【0064】磁性キャリアコア粒子は、溶媒中に上記モノマー、金属酸化物微粒子を分散させ、開始剤或は触媒を加えて重合する方法により製造することができる。その場合、溶媒としてはバインダー樹脂が重合の進行に伴って析出してくる物が使用される。具体的には、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族アルコール化合物;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素化合物;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化炭化水素;エーテル化合物;脂肪族;エステル化合物;含硫黄化合物水を挙げることができる。これらは単独で使用しても、混合して使用しても良い。
【0065】キャリアコアを重合法で生成する場合に、分散安定剤を使用しても良い。分散安定剤としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、スチレンーブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシスチレン、塩化ビニル、ポリビニルアセタール、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アルキル化セルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、具体的にはヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、飽和アルキルポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。これらは単独で使用しても良く、混合して使用することができる。
【0066】前記モノマーを重合する際に重合開始が使用される。使用する重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が挙げられる。例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス−(N,N−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド等のアミジン化合物;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫化物系開始剤が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
【0067】又、硬化系フェノール樹脂を有するキャリアコア粒子の製造方法としては水性溶媒中で金属酸化物を分散したフェノール類とアルデビド類を塩基性触媒の存在下で重合する方法が挙げられる。
【0068】塩基性触媒としては、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチルトリアミン等が挙げられる。
【0069】又、重合時に連鎖移動剤を用いても良い。例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、二臭化酢酸エチル、酸臭化酢酸エチル、二臭化エチルベンゼン、二臭化エタン、二塩化エタン等ハロゲン化炭化水素化合物;ジアゾチオエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の炭化水素類化合物:ターシャリードデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ジイソプロピルザントゲンジスルフィド等のジスルフィド化合物が挙げられる。
【0070】キャリアコアを好ましく製造する方法としては、モノマー及び溶媒が均一な溶液となっていることが好ましく、更には金属酸化物が親油化処理されていることが好ましく、更には重合反応を始める前にそれらを十分良好に分散させ、触媒又は重合開始剤を添加して重合反応して磁性キャリアコア粒子の粒度分布をシャープにするこのが好ましい。重合反応後、溶媒を用いて洗浄濾過した後、真空乾燥等の乾燥工程を経て、必要によっては分級操作を行って、キャリアコア粒子の粒度分布をシャープにする。分級は振動櫛、慣性力を利用した多分割分級装置による微粉及び粗粉のカットを行う。
【0071】本発明に係る磁性コートキャリアはキャリア表面がゾルゲル法による金属酸化物によって被覆されていることが特徴である。
【0072】本発明のゾルゲル法による金属酸化物のキャリアコアに対する被覆量は0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜1.0重量%である。0.1重量%未満の被覆量では均一な被覆膜を得るのが困難であり、又、10重量%以上の被覆量は実質的にコーティングの効果に変化がないばかりか、コートに際してキャリア粒子同士の造粒等の弊害が目立ってくる。
【0073】被覆膜はキャリアコア上にゾルゲルの加水分解放を塗布し、焼成することにより形成する。ゾルゲルの加水分解放は出発物質を溶剤に添加し、酸又は塩基を添加し、適度のpH、温度、時間で加水分解することにより作製したものを使用する。
【0074】ゾルゲル法に使用される金属化合物の出発物質としては金属アルコキシド、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、ジアルキルアミド体、有機酸或は酸無水物とのエステル、β−ジケトン或はβ−ケトアミン又はβ−ケトエステルとのキレート、アルカノールアミンとの反応生成物が用いられる。亜鉛について例を挙げると、Zn(OAc)2 ・2H2 O、Zn(AcAc)2 ・H2 O、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アルキル亜鉛が好ましく、特に好ましくはアルキル亜鉛が膜の緻密さの点で挙げられる。尚、出発物質は2種類以上混合しても使える。
【0075】溶剤としては出発物質を溶解するものは使用できる。代表的な溶剤としてはアルコール類、β−ジケトン等のケトン類、その他トルエン、キシレンも使用できる。溶剤の選択においては単に出発物質を溶解させる目的で使用したものの他に出発物質とアルコール交換反応を起こさせる目的で使用したもの、加水分解の反応速度を制御する目的で使用したりする。
【0076】加水分解に使用する触媒には酸、塩基等が使用できる。酸としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸等が使用でき、又、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0077】又、本発明に係る磁性コートキャリアはキャリアコアが金属酸化物で被覆されており、この被覆層中にはカップリング剤又はオルガノアルコキシシランを含有していても良い。ここで使用されるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、又はチタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤等の中から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることが好ましい。具体的には、シラン系カップリング剤としては、疎水性基やエポキシ基を有するものを用いることができる。疎水性基を持つシラン系カップリング剤として、例えばビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン等を挙げることができる。エポキシ基を持つシラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0078】チタネート系カップリング剤としてチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタチネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等を挙げることができる。
【0079】アルミニウム系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
【0080】又、本発明ではアミノ基を有するカップリング剤を好ましく用いることができ、シラン系カップリング剤、又はチタネート系カップリング剤等の中から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることが好ましい。具体的には、シラン系カップリング剤としてはγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0081】チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピル−4−アミノベンゼンスルホニル−ジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート等を挙げることができる。
【0082】又、本発明に使用するオルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0083】これらのカップリング剤やオルガノアルコキシシランの添加量はゾルゲル法による金属酸化物の被覆量に対して0.01〜50重量%であることが好ましい。更には、0.1重量%〜20重量%の範囲であることが最も好適である。金属酸化物被覆層に対して添加量が0.01%未満ではカップリング剤やオルガノアルコキシシランの添加による帯電安定化や表面離型性の効果が発揮されず、又、50重量%以上では被覆層の強度が不十分となったり、均一な被覆膜が形成されなかったりする。
【0084】本発明の磁性コートキャリアを好ましく製造する方法としては、キャリアコア材を浮遊流動させながらコート溶液をスプレーし、コア材表面にコート膜を形成する方法及びスプレードライ法が挙げられる。
【0085】又、その他のコート方法として、剪断応力を加えながら溶媒を徐々に揮発させる等の他のコート方法によっても本発明の磁性コートキャリアを製造することができる。
【0086】本発明に係る磁性コートキャリアはカップリングやオルガノアルコキシシランを含有した金属酸化物被覆層を前記方法で形成した後に、焼成を常温又は加熱して行う。雰囲気は空気雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気、アルゴン雰囲気等で行うことができる。被覆層を焼成する際の加熱温度は40℃〜800℃が好ましく、更に好ましくは60℃〜300℃である。加熱温度が高過ぎると金属酸化物中に含有させているカップリング剤やオルガノアルコキシシランが揮発してしまったり、焼失してしまう場合があり、被覆膜の性能が損なわれてしまう可能性がある。又、高温過ぎる焼成は磁性体分散型のコアが分解したり焼失の可能性がある。
【0087】尚、本発明においてはゾルゲル法により作製した金属酸化物被覆キャリアの表面を更に樹脂で被覆することも可能である。
【0088】例えば、キャリア被覆樹脂としては、熱硬化性樹脂としては、具体的には例えばフェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、無水マレイン酸−テレフタル酸−多価アルコールの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アルキッドシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂は単独でも使用できるが、それぞれを混合して使用しても良い。
【0089】又、熱可塑性樹脂としては具体的には例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−アクリレート系共重合体やスチレン−メタクリレート系共重合体等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートのような芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂を挙げることができる。上述の樹脂は単独で使用しても、2種以上を混合しても用いることができる。
【0090】本発明においては、又、前記熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂には硬化剤等を混合して使用することもできる。
【0091】本発明に係る二成分系現像剤に使用することができるトナーとしては、重量平均粒径が1〜10μm、好ましくは3〜8μmの範囲であることが好適である。1μm以下のトナーでは均一な帯電付与が困難であり、カブリや濃度ウスの原因となり、10μm以上のトナーでは潜像に対して忠実な現像が行えないために画質が低下してしまう。
【0092】トナーの重量平均粒径は種々の方法によって測定できる。本発明に用いる粒度分布の測定には、例えばレーザー走査型粒度分布計のCIS−100(GLAI社製)を使用する方法を挙げることができる。
【0093】本発明に使用されるトナーの結着剤樹脂としては、具体的には例えばポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその誘導体から得られる高分子化合物、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類、ジフェノール類から選択される単量体を構造単位として有するポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、架橋したスチレン系樹脂及び架橋したポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0094】スチレン−アクリル系共重合体に使用される重合可能な単量体としては具体的には、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミリ等のエチレン性2重結合を有するアクリル酸エステル類、例えばマレイン酸、マレイン酸ブチル等のマレイン酸のハーフエステル及びジエステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエステル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類を挙げることができる。
【0095】上述した架橋剤としては、主として不飽和結合を2個以上有する化合物を挙げることができ、具体的には例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の不飽和結合を2個有するカルボン酸エステル、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物及び不飽和結合を3個以上有する化合物を単独若しくは混合して使用することができる。上述の架橋剤は、結剤着樹脂に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で使用するのが好適である。
【0096】加圧定着方式を用いる場合には、圧力定着トナー用結剤着樹脂を使用することが可能であり、具体的には例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチレン、ポリウレタンエラストマー、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、線状飽和ポリエステル、パラフィン及び他のワックス類を挙げることができる。
【0097】本発明に使用されるトナーには、荷電制御剤をトナーに配合して使用することもできる。荷電制御剤の添加によって現像システムに応じた最適の帯電量とすることができる。斯かる正荷電制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩誘導体、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ビドロキシ−4ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフロロボレート等の4級アンモニウム塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスジオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズポレートを単独或は2種以上組み合わせて用いることができる。上述した荷電制御剤のうち特にニグロシン系、4級アンモニウム塩等の荷電制御剤が好適である。
【0098】又、本発明では負荷電制御剤を使用することもでき、具体的には例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャルブチルサリチル酸クロムを挙げることができる。特に、アセチルアセトンの金属錯体(モノアルキル置換体、ジアルキル置換体を包含する)サリチル酸系金属錯体(モノアルキル置換体、ジアルキル置換体を包含する)又はそれらの塩が好ましく、特にはサリチル酸系金属塩が好適である。上述の荷電制御剤はトナーに添加する際には、結着剤樹脂に対して0.1〜200重量部より好ましくは0.2〜10重量部で使用されることが好適である。特に、カラー画像形成に使用される場合には無色若しくは淡色の荷電制御剤を使用することが好ましい。本発明に使用されるトナーにはシリカ、アルミナ、酸化チタン、ポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコーン等の微粉末を添加することが好適である。トナーに対して前記微粉末を添加することによって、トナーとキャリア或はトナー相互の間に微粉末が存在することになり、現像剤の流動性が向上され、且つ、更に現像剤の寿命も向上されることになる。上述した微粉末の表面積としては、BET法による窒素吸着によった比表面積が30m2 /g以上、特に50〜400m2 /gの範囲のものが良好な結果が得られる。斯かる微粉末の添加量は、トナーに対して0.1〜20重量%で使用することが好適である。
【0099】本発明で使用されるトナーに添加することができる着色剤としては、従来知られている染料及び顔料を使用することができ、具体的には例えばカーボンブラック、マグネタイト、フタロシアニンブルー、ピーコックブルー、パーマネントレッド、レーキレッド、ローダミンレーキ、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、ベンジジンイエロー等を使用することができる。その際の添加料としては、結着剤樹脂に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量部、更にはトナー像の好適なOHPフィルムの透過性を考慮すると12重量%以下の範囲で使用されるのが好ましく、通常0.5〜9重量%であるのが最も好適である。
【0100】本発明のトナーには更に熱ロール定着時の離型性を向上させる目的でポリエチレン、ポリプロピレン、マイクロクリスタリングワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、パラフインワックス等のワックス成分を添加することもできる。
【0101】このような組成を有するトナーは、ビニル系、非ビニル系の熱可塑成樹脂、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤を混合機により十分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の混練機を用いて溶融、混練して樹脂類を十分に混合して樹脂類を互いに混合し、その中に顔料若しくは染料を分散させる。これを冷却した後、粉砕分級を行なってトナー粒子を得ることができる。該トナー粒子はそのままで使用することもできるが、必要に応じた種類及び量の微分体を外添して使用することもできる。
【0102】斯かる微粉末の外添処理は、ヘンシェルミキサー等の混合機を使用して行うことができる。このようにして得られたトナーは本発明のキャリア粒子と混合されて二成分系現像剤とされる。この2成分系現像剤を形成する場合、現像プロセスにも依存するが、典型的には現像剤中のトナーの割合が1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲であることが好適である。又、斯かる2成分現像剤の摩擦帯電量としては5〜100μC/gの範囲であることが好適であり、最も好ましくは5〜60μC/gである。
【0103】被覆膜はキャリア芯材上にゾルゲルの加水分解放を塗布し、焼成することにより形成する。ゾルゲルの加水分解液は出発物質を溶剤に添加し、酸又は塩基を添加し、適度のpH、温度、時間で加水分解することにより作製したものを使用する。
【0104】ゾルゲル法に使用される金属化合物の出発物質としては金属アルコキシド、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、ジアルキルアミド体、有機酸或は酸無水物とのエステル、β−ジケトン或はβ−ケトアミン或はβ−ケトエステルとのキレート、アルカノールアミンとの反応生成物が用いられる。亜鉛について例を挙げると、Zn(OAc)2 ・2H2 O、Zn(AcAc)2 ・H2 O、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アルキル亜鉛が好ましく、特に好ましくはアルキル亜鉛が膜の緻密さの点で挙げられる。尚、出発物質は2種類以上混合しても使える。
【0105】溶剤としては出発物質を溶解するものは使用できる。代表的な溶剤としてはアルコール類、β−ジケトン等のケトン類、その他トルエン、キシレンも使用できる。溶剤の選択においては単に出発物質を溶解させる目的で使用したものの他に出発物質とアルコール交換反応を起こさせる目的で使用したもの、加水分解の反応速度を制御する目的で使用したりする。
【0106】加水分解に使用する触媒は酸、塩基等が使用できる。酸としては塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸等が使用でき、又、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0107】塗布方法としてはスプレー塗布、浸漬塗布、ナイフ塗布、ロール塗布等の方法を適宜使用する。焼成は常温又は加熱して行う。雰囲気は空気雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気、アルゴン雰囲気等で行うことができる。
【0108】又、本発明の磁性コートキャリアはゾルゲル法による金属酸化物被膜の更に上に樹脂で被覆して用いることもできる。
【0109】本発明に使用することができるキャリア被覆樹脂としては、熱硬化性樹脂としては、具体的には例えば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、無水マレイン酸−テレフタル酸−多価アルコールの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アルキッドシリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。上述した樹脂は、単独でも使用できるが、それぞれを混合して使用しても良い。
【0110】又、熱可塑性樹脂としては、具体的には例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−アクリレート系共重合体やスチレン−メタクリレート系共重合体等のアクリル系樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂を挙げることができる。上述の樹脂は単独で使用しても2種以上を混合しても用いることができる。
【0111】本発明においては、上述の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂には硬化剤等を混合して使用することもできる。
【0112】以下に本発明で使用した種々の測定方法について説明する。
【0113】本発明で使用したキャリア粒径の測定方法を記載する。本発明のキャリアの粒径は、走査電子顕微鏡(100〜5000倍)によりランダムに粒径1μm以上のキャリア粒子200個以上抽出した写真画像を拡大し、コンピュータに接続したタブレット(ワコム社製)上に拡大写真像を載せて手動により粒子の略水平方向の最大幅を2点インプットし、コンピュータにより粒径換算の処理を行い、これを個数粒子径とする。又、コンピュータにより、個数平均粒子径及び標準偏差σを計算し、この条件で測定した個数基準の粒度分布により個数平均粒径の1/2倍径累積分布以下の累積割合を求め、1/2倍径累積分布以下の累積値を計算する。
【0114】本発明で使用するキャリアの磁気特性は理研電子(株)製の振動磁場型磁気特性自動記録装置BHV−30を用いて測定する。キャリア粉体の磁気特性値は1キロエルステッドの外部磁場を作り、そのときの磁化の強さを求める。キャリアは円筒状のプラスチック容器に十分密になるようにパッキングした状態に作製する。この状態で磁化モーメントを測定し、試料を入れたときの実際の重量を測定して、磁化の強さを求める。次いで、キャリア粒子の真比重を乾式自動密度計アキュピック1330(島津製作所(株)社製)により求め、磁化の強さ(emu/g)に真比重を掛けることで本発明の単位体積当たりの磁化の強さ(emu/cm3 )を求める。
【0115】本発明に係る磁性コートキャリアの比抵抗測定は図1に示す測定装置を用いて行う。
【0116】図1に示す測定装置において、1は下部電極、2は上部電極、3は絶縁物、4は電流計、5は電圧計、6は定電圧装置、7は測定サンプル、9はガイドリング、Aは抵抗測定セルである。セルAにキャリアを充填し、該充填キャリアに接するように電極1,2を配し、該電極1,2間に電圧を印加し、そのとき流れる電流を測定することにより比抵抗を求める方法を用いる。
【0117】上記測定方法においては、キャリアが粉末であるために充填率に変化が生じ、それに伴い比抵抗が変化する場合があるため注意を要する。本発明における比抵抗の測定条件は、充填キャリアと電極1,2との接触面積S=約2.3cm2 、厚みd=約2mm、上部電極2の荷重180g、印加電圧100Vとする。
【0118】又、本発明で使用する金属酸化物の粒径測定方法を以下に説明する。
【0119】本発明の金属酸化物の個数平均粒径は、日立製作所(株)社製透過型電子顕微鏡H−800により5000〜20000倍に拡大した写真画像を用い、ランダムに粒径0.01μm以上の粒子を300個以上抽出し、ニレコ社(株)製の画像処理解析装置Luzex3により水平方向フェレ径をもって金属酸化物粒径として測定し、平均化処理して個数平均粒径を算出するものとする。
【0120】本発明に使用する金属酸化物の比抵抗測定はキャリア比抵抗の方法に準じる。
【0121】図1のセルAに金属酸化物を充填し、充填された金属酸化物に接するように電極1,2を配し、該電極1,2間に電圧を印加し、そのとき流れる電流を測定することにより比抵抗を求める方法を用いる。
【0122】上記測定方法においては、金属酸化物の充填に際して電極1,2が試料7に対して均一に接触するように上部電極1を左右に回転させつつ充填を行う。この測定方法において比抵抗の測定条件は、充填金属酸化物と電極1,2との接触面積S=約2.3cm2 、厚みd=約2mm、上部電極2の荷重180g、印加電圧100Vとする。
【0123】キャリアの架橋の程度は、一定のキャリアを500℃で2時間焼いた後、その前後での重量の差分を全樹脂量とする。一方、一定量のキャリアをテトラヒドラフラン(THF)に2時間浸漬した後、その前後での重量の差分を架橋していない樹脂分として、それらの値から架橋割合を下式に従って算出する。
【0124】(全樹脂分−架橋していない樹脂分)/全樹脂分×100= 架橋割合(%)
本発明で使用するトナー粒径測定の具体例を示す。
【0125】純水100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、レーザースキャン粒度分布アナライザーCIS−100(GALAI社製)を用いて粒度分布等を測定する。本発明では0.5μm〜60μmの粒子を測定し、この条件で測定した個数平均粒径、重量平均粒径をコンピユータ処理により求める。
【0126】摩擦帯電量の測定方法について説明する。
【0127】トナーとキャリアをトナー重量が5重量%となるように混合し、ターブラミキサーで60秒混合する。この混合粉体(現像剤)を底部に635メッシュの導電性スクリーンを装着した金属製の容器に入れ、吸引機で吸引し、吸引前後の重量差と容器に接続されたコンデンサーに蓄積された電位から摩擦帯電量を求める。この際、吸引圧を250mmHgとする。この方法によって、摩擦帯電量を下記式を用いて算出する。
【0128】
Q(μC/g)=(C×V)×(W1 −W2 )−1(式中、W1 は吸引前の重量、W2 は吸引後の重量、Cはコンデンサーの容量、Vはコンデンサーに蓄積された電位である。)
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明は実施例よって制限されるものではない。
【0129】
<実施例1> フェノール 7重量部 ホルマリン溶液 10.5重量部 (ホルムアルデビド約40、メタノール役10%、残りは水)
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 1.0重量部で親油化処理したマグネタイト微粒子 53重量部 (粒径0.25μm、比抵抗5×105 Ωcm)
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 1.0重量部で親油化処理したα−Fe23 微粒子 35重量部 (粒径0.60μm、比抵抗2×1091Ωcm)
ここで用いたマグネタイト及びα−Fe23 の親油化処理は、マグネタイト50重量部に対しでα−Fe23 50重量部に対して1.0重量部のγ−アミノプロピルトリメトキシシランを加え、ヘンシェルミキサー内で100℃で30分間、予備混合撹拌することによって行った。
【0130】上記材料及び水11重量部を40℃に保ちながら1時間混合を行った。このスラリーに塩基性触媒として28重量%、アンモニア水2重量部及び水15重量部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら40分間で85℃まで昇温・保持し、3時間反応・硬化させた。その後、30℃まで冷却し、100重量部の水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗して風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)に180℃で乾燥して、マグネタイトとヘマタイトとをフェノール樹脂をバインダー樹脂としたマグネタイト微粒子含有球状のキャリアコア粒子を得た。得られたコアの抵抗は、6.2×1010Ω・cmであった。この粒子を60メッシュ及び100メッシュの櫛によって粗大粒子の除去を行い、個数平均粒径30μmのキャリアコア粒子を得た。磁性キャリアコア粒子の架橋の程度は99%であった。
【0131】(キャリアコート液の調製)Zn(OAc)2 ・2H2 O13.5gを水62g、エタノール75g混合液に溶解させた後、6N塩酸2gを加えて30分間リフラックスを行った。その後、酢酸5g、1−ブタノール10h、2−エトキシエタノール20g、ジエチレングリコール5gで希釈してMOX 2.5%の液を作製した。更に、この溶液中に3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.05gを添加し、キャリアコート液を調製した。
【0132】上記キャリアコート液を流動床式スプレーコーティング装置を用いて前記キャリアコア粒子1.0kgにスプレー塗布した。スプレー終了後、得られたキャリアを流動化ベッド室中で温度200℃で2時間保持して酸化亜鉛被覆の磁性コートキャリアを得た。この磁性コートキャリアを100メッシュ櫛で粗大粒子をカットし、磁性コートキャリアを得た。得られた磁性コートキャリアの平均粒径は31μmであり、粒度分布は2/3倍径以下の個数分布累積値が0.5個数%であった。又、Dn/σは5.4であった。又、キャリア粒子の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、キャリアコア材がほぼ完全に酸化亜鉛膜で被覆されていることが判明した。
【0133】一方、プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸を 縮合して得られたポリエステル樹脂 100重量部 銅フタロシアニン顔料 5重量部 ジ−tert−ブチルサリチル酸のクロム錯塩 4重量部を十分予備混合を行った後、溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粒径約1〜2mm程度に粗粉砕した。次いで、エアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。更に、得られた微粉砕物をエルボージェット分級機を用いて分級し、重量平均粒径が8.3μmの負帯電性のシアン色の微粉体を得た。
【0134】上記シアン微粉体100重量部と、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したシリカ微粉体0.5重量部とアルミナ微粉体0.3重量部とをヘンシェルミキサーにより混合してシアントナーを調製した。
【0135】上記キャリアとトナーとをトナー濃度8.0重量%となるように混合して現像剤を得た。この現像剤をキヤノン製フルカラーレーザー複写機CLC−500改造機を用いて1万枚の画像出し耐久試験を行った。
【0136】この結果、初期から1万枚に至るまでベタ画像の濃度1.4〜1.5と安定して高く、又、カブリもなく、ハーフトーン部の再現性、ライン画像の再現性も良好であった。又、現像時のトナー飛散も認められなかった。又、1万枚画像出し終了後に現像器から現像剤を取り出して走査型電子顕微鏡(FE−SEM)でキャリア表面を観察したところ、トナーのフィルミングや被覆層の剥がれは認められなかった。更に、耐久後の現像剤を回収してトナーの帯電量を測定したところ、−26(μC/g)であり、初期の現像剤の−25(μC/g)に対して殆ど変化が認められなかった。
【0137】<実施例2>実施例1で用いたキャリアコート溶液において、3−アミノプロピルトリメトキシシランの添加しないこと以外は全て実施例1と同様にしてスプレーコートを行い、磁性コートキャリアを得た。この磁性コートキャリアを100メッシュ櫛で粗大粒子をカットして磁性コートキャリアを得た。得られた磁性コートキャリアの平均粒径は30μmであり、粒度分布は2/3倍径以下の個数分布累積値が0.5個数%であった。
【0138】又、Dn/σは5.5であった。又、キャリア粒子の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、キャリアコア材がほぼ完全に酸化亜鉛膜で被覆されていることが判明した。この磁性コートキャリアを用いて実施例1と同様にして画像出し耐久試験を行った。その結果、初期から1万枚に至るまでベタ画像の濃度1.6〜1.7と安定して高く、又、カブリも無く、ハーフトーン部の再現性、ライン画像の再現性も良好であった。又、現像時のトナー飛散も認められなかった。又、1万枚画像出し終了後に現像器から現像剤を取り出して走査型電子顕微鏡(FE−SEM)でキャリア表面を観察したところ、トナーのフィルミングや被覆層の剥がれは認められなかった。又、耐久後の現像剤を回収してトナーの帯電量を測定したところ、−22(μC/g)であり、初期の現像剤の−23(μC/g)に対して殆ど変化が認められなかった。
【0139】<実施例3>(キャリアコート液の調製)Zr(AcAc)4 20gをメタノール150gに溶解させた後、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン1.0gを添加し、更に6N塩酸2gを加えて30分間リフラックスを行った。その後、n−ブタノール50gで希釈してMOX 10%としてキャリアコート液を調製した。
【0140】このキャリアコート溶液を実施例1と同様にして実施例1で用いた磁性キャリアコアにスプレー塗布し、スプレー終了後、得られたキャリアを流動化ベッド室中で温度150℃で10分間保持して酸化ジルコニウム被覆キャリアを得た。
【0141】この磁性コートキャリアを100メッシュ櫛で粗大粒子をカットし、磁性コートキャリアを得た。得られた磁性コートキャリアの平均粒径は30μmであり、粒度分布は2/3倍径以下の個数分布累積値が0.4個数%であった。又、Dn/σは5.3であった。
【0142】又、キャリア表面を走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察したところ、キャリアコア材がほぼ完全に酸化ジルコニウム膜で被覆されていることが判明した。
【0143】この磁性コートキャリアを用いて実施例1と同様にして画像出し耐久試験を行った。その結果、初期から1万枚に至るまでベタ画像の濃度1.4〜1.6と安定して高く、又、カブリも無く、ハーフトーン部の再現性、ライン画像の再現性も良好であった。又、現像時のトナー飛散も認められなかった。又、1万枚画像出し終了後に現像器から現像剤を取り出して走査型電子顕微鏡(FE−SEM)でキャリア表面を観察したところ、トナーのフィルミングや被覆層の剥がれは認められなかった。又、耐久後の現像剤を回収してトナーの帯電量を測定したところ、−32(μC/g)であり、初期の現像剤の−30(μC/g)に対して殆ど変化が認められなかった。
【0144】<比較例1>キャリアコート溶液を以下のように調製した。
【0145】スチレン−MMA共重体(重量組成比率40:60、重量平均分子量12000 )
上記重合体5gをトルエン100gに溶解し、5重量%のコート樹脂溶液を調整した。
【0146】この溶液を平均粒径50μmのフェライト粒子に実施例1と同様にしてスプレー塗布したところ、被覆樹脂量が0.5重量%の樹脂被覆キャリアを得た。この樹脂被覆キャリアを流動させながら150℃で2時間乾燥後に100メッシュによる粗大粒子を取り除いて樹脂被覆キャリアを得た。
【0147】得られた樹脂被覆キャリアの表面を走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察したところ、所々キャリアコア材の露出が認められた。
【0148】このキャリアを用いて実施例1と同様にして画像耐久試験を行なった。その結果、初期から1000枚に至るまでベタ画像の濃度1.3〜1.5と安定していたが、次第に画像濃度が高くなる傾向が認められ、1 万枚後には1.9にまで達した。又、1万枚後の画像上にはカブリが認められ、一部トナー飛散が発生していた。又、1万枚画像出し終了後に現像器から現像剤を取り出して走査型電子顕微鏡(FE−SEM)でキャリア表面を観察したところ、トナーのフィルミングが認めれた。又、耐久後の現像剤を回収してトナーの帯電量を測定したところ、−16(μC/g)であり、初期の現像剤の−30(μC/g)に対して可成り低下していることが判明した。
【0149】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、磁性コートキャリアは表面をキャリアコアとして磁性体分散型コアを用い、この上にゾルゲル法による金属酸化物の被覆を行っているため、カブリやトナー飛散が無く、又、耐久による被覆層の剥がれやトナーフィルミングが発生しないため、長期に亘って安定した高画質画像を得ることができる。
【0150】又、本発明に係る磁性コートキャリアとトナーを用いた二成分系現像剤によれば、長期に亘って安定して良好な現像が可能となり、高画質画像を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性コートキャリアの比抵抗測定装置の構成図である。
【符号の説明】
1 下部電極
2 上部電極
3 絶縁物
4 電流計
5 電圧計
6 定電圧装置
7 測定サンプル
9 ガイドリング
A 抵抗測定セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 バインダー樹脂及び磁性金属酸化物粒子を少なくとも有する磁性キャリアコア粒子と該磁性キャリアコア粒子の表面を被覆している被覆層とを有する磁性コートキャリアにおいて、磁性金属酸化物粒子は、表面が親油化処理されており、磁性コートキャリアは、個数平均粒径Dnが5〜100μmであり、磁性コートキャリアは個数分布において下記式Dn/σ≧3.5[式中、Dnは磁性コートキャリアの個数平均粒径、σは磁性コートキャリアの個数分布における標準偏差を示す。]を満足し、(2/3)×Dn以下の粒径の磁性コートキャリア粒子の含有量が25個数%以下であり、且つ、被覆層が少なくともゾルゲル法によって形成された金属酸化物であることを特徴とする磁性コートキャリア。
【請求項2】 バインダー樹脂は架橋構造を有することを特徴とする請求項1記載の磁性コートキャリア。
【請求項3】 バインダー樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁性コートキャリア。
【請求項4】 被覆層がカップリング剤又はオルガノアルコキシシランを含有して成ることを特徴とする請求項1,2又は3記載の磁性コートキャリア。
【請求項5】 カップリング剤がアミノ基を含有するシラン系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤群の中から選ばれる1種以上のものを使用することを特徴とする請求項4記載の磁性コートキャリア。
【請求項6】 被覆層の金属酸化物が亜鉛、シリコン、アルミニウム、チタン及びジルコニウムの酸化物から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1又は5記載の磁性コートキャリア。
【請求項7】 二成分系現像剤であって、該現像剤に使用されるトナーは重量平均粒径が1〜10μm以下であり、且つ、請求項1〜6記載の磁性コートキャリアを含有して成ることを特徴とする二成分系現像剤。

【図1】
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【公開番号】特開2002−207322(P2002−207322A)
【公開日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−2349(P2001−2349)
【出願日】平成13年1月10日(2001.1.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】