説明

磁性シート

【課題】シートとしての必要限の物理的性能を有しつつ、磁性体機能を最大限に発揮する構造の磁性シートを提供することを目的とする。
【解決手段】シートの厚み方向において単一の磁性層2を備え、磁性層2はフェライト焼結体1によって形成され、フェライト焼結体1が磁性層2上下面を同時に形成するように配置し、磁性層2上下面にシート基材3を設けかつフェライト焼結体1に隙間を設け、その隙間をシート基材3により構成し、フェライト焼結体3の隙間を整列配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF−IDアンテナ等の磁気シールド用等に好適に用いられる磁性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの無線通信機器において、コスト削減、及び小型化を図るために部品の小型化、高密度実装化が望まれている。また、ノートブック型パソコンなどの携帯型モバイル電子機器においても、無線LANなどを用いたデータ通信を行うものが増えており、これらの電子機器内部部品の小型化、高密度実装化が望まれている。
【0003】
また、これらに用いられる無線通信用アンテナにおいても狭隙間においての付設が要求され、必然的に受発信される電磁波が密接した電子部品や基板、筐体等に与える影響や、あるいは電子部品や基板、筐体等から与えられる影響を防止するための磁性シートが使用されるようになってきている。
【0004】
従来においては、これらのアンテナもしくはその他電子機器の必要箇所にこの磁性シートを適当な大きさや形状に合わせて切断加工して貼り付ける等の方法で使用されることが多い。(特許文献1)、(特許文献2)に開示がある。
【0005】
図10、図11は従来の技術における磁性シートの断面図であり、図12は従来の技術における磁性層の平面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−349493号公報
【特許文献2】特開2000−244171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の磁性シートでは、後付けされる使い勝手の良さから加工性や取付け性を重視し、図10、図11の断面図に示すように磁性シート構成のほとんどを柔軟性等の物理的性能を求めたシート基材3で占有するため、磁性機能が十分に発揮されないという問題があった。
【0008】
図10の断面図で示す磁性シート6は、定形、あるいは不定形の磁性体粒子1aをシート基材3の中に分散して構成したものであり、この構成による磁性機能を向上させる方法は、磁性シート6中の磁性体粒子1a含有率を増加することで実現するが、磁性粒子1aの含有率を増加することで、シート基材3の柔軟性等の物理的性能を損なうことや、分散が困難となるため磁性体粒子1aの凝集密度の隔たりを生じることにより、気孔や亀裂等損傷や、機械的強度劣化や耐候性劣化等の課題があるため、十分に磁性体粒子1aの含有率を増やせず磁性機能が高められないという問題があった。
【0009】
図11の断面図、図12の平面図で示す磁性シート6は、シート基材3の中の磁性体形状を薄片1bとし、磁性体薄片1b同士を重ね合わせる、もしくは密着させて面方向にほとんど隙間なく敷き詰めることで磁性体層2bの面密度を高め、磁性機能を向上させている。また、この薄い磁性層2bをシート基材3で挟み込んだ構成としたことにより、磁性機能を高めた状態でシート基材3の物理的性能をほとんど損なうことなく構成されている

【0010】
図10の断面図で示す磁性シート6に対し、図11の断面図で示す磁性シート6は、磁性体薄片1bを層状に集合させているため、シート基材3の中の磁性体含有率をより少なくして、高い磁性機能を有することができるが、更にこの磁性機能を向上させるためには磁性体薄片1bで形成される磁性層2bを増加しなければならず、同様にシート基材3の柔軟性等の物理的性能を損なうことや、機械的強度劣化や耐候性劣化等の課題があるため、十分に磁性体薄片1bの含有率を増やせず磁性機能が高められないという問題があった。
【0011】
また、これら従来の技術による磁性シートは、磁性粉や磁性片をシート基材原材料と混合し成形して得られるため、磁気性能は磁性体そのものよりも極めて劣化するという問題があった。
【0012】
本発明は、シートとしての必要限の物理的性能を有しつつ、磁性体機能を最大限に発揮する構造の磁性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、シートの厚み方向において単一の磁性層を備え、前記磁性層はフェライト焼結体によって形成され、前記フェライト焼結体が前記磁性層上下面を同時に形成するように配置し、前記磁性層上下面にシート基材を設けかつ前記フェライト焼結体に隙間を設け、その隙間を前記シート基材により構成し、前記フェライト焼結体の前記隙間を整列配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、磁性シートを単一の磁性層であるフェライト焼結体で構成し、しかもこのフェライト焼結体が磁性層上下面を同時に形成するように配置したので、磁性シートの構成範囲においてフェライト焼結体の固片体積を最大限に大きくすることができ、従ってフェライト焼結体の固体性能を最大限に利用することができる。
【0015】
更に、フェライト焼結体に形成される隙間を整列配置することにより、磁性シートの曲げ、たわみを磁性シートにおいて均一にすることができ、安定した柔軟性の磁性シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態における磁性シートの断面図
【図2】本発明の実施の形態における磁性シートの断面図
【図3】本発明の実施の形態における磁性シートの断面図
【図4】本発明の実施の形態における磁性シートの断面図
【図5】本発明の実施の形態における磁性シートの断面図
【図6】本発明の実施の形態における磁性シートの断面図
【図7】本発明の実施の形態における磁性層の斜視図
【図8】本発明の実施の形態における磁性層の斜視図
【図9】本発明の実施の形態における磁性層の斜視図
【図10】従来の技術における磁性シートの断面図
【図11】従来の技術における磁性シートの断面図
【図12】従来の技術における磁性層の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明は、シートの厚み方向において単一の磁性層を備え、前記磁性層はフェライト焼結体によって形成され、前記フェライト焼結
体が前記磁性層上下面を同時に形成するように配置し、前記磁性層上下面にシート基材を設けかつ前記フェライト焼結体に隙間を設け、その隙間を前記シート基材により構成し、前記フェライト焼結体の前記隙間を整列配置したことを特徴とするものである。
【0018】
これにより、磁性シートの構成範囲においてフェライト焼結体の固片体積を最大限に大きくすることができ、従ってフェライト焼結体の固体性能を最大限に利用することができる。また、フェライト焼結体に形成される隙間を整列配置することにより磁性シートの曲げ、たわみを磁性シートにおいて均一にすることができ、安定した柔軟性の磁性シートを得ることができる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記隙間が形成するそれぞれの長手方向は、前記磁性シートのそれぞれの端部と平行であることを特徴とするものであり、これにより、磁性シートのサイズに係らず安定した柔軟性を得ることができる。
【0020】
以下、図面を用いて説明する。
【0021】
図1、図2、図3、図4、図5、図6はそれぞれ本発明の実施の形態における磁性シートの断面図である。図7、図8、図9はそれぞれ本発明の実施の形態における磁性層の斜視図である。
【0022】
図1において、1は磁性体、2は磁性層、3はシート基材である。また4a、4bは磁性層2の上下2面を示す。
【0023】
また、本発明の実施の形態においては、磁性層2自体は層状ではないが、磁性シート6の上下面7a,7b間の磁性範囲を示す表現として磁性層とした。
【0024】
磁性体1は、フェライトやパーマロイ、センダスト、珪素合板等の金属磁性材料で構成されるところのいずれか単一の固片とする。この磁性体1全ての固片が磁性層2の上下面4a,4bを同時に形成するように配置したので、磁性シート6に要求される厚み寸法、機械的強度、その他の物理的性能の範囲において磁性体1の最大限の体積を利用することができ、また、磁性体層2全体における磁性体1の比表面積が小さくなるため、シート基材3の量を少なくすることができ、高い磁気性能を得ることができる。
【0025】
また、図7、図8において示すように、磁性体1を略同一形状としたことで、各々の磁性体1と各々の磁性体の隙間5を整列配置することが可能なため、磁気特性や絶縁特性などの特性や、磁気シートの曲げ、たわみ性等物理的性能や切断等加工性能に対する設計を容易にすることができる。
【0026】
また、図9においては、磁性層2の一部もしくは複数部を略同一形状の磁性体1cの集合部で形成し、異形状の磁性体1d,1eの集合部を組み合わせることにより、磁性シート6の標準形状、寸法の種類等の自由度を向上することができる。
【0027】
図7、図8、図9においては、成形の容易さによって個々の磁性体1形状を角柱や円柱で代表して示したが、その他三角柱、多角柱、もしくは角錐、円錐、球、あるいは針状であってもよく、また逆に、磁性体1の成形工数を削減するために不定形状の磁性体1を配置してもよい。
【0028】
図1〜図5において、磁性体1とシート基材3の構成例を示す。
【0029】
図1においては、磁性体1がシート基材3に埋設された構成を示している。ここにおいても磁性層2を単一層にし、磁性体1の厚みを最大限に構成したこと
で、シート基材3の量を大きく削減することができるが、更に図2においては、磁性層2の上下面4a,4bの両面でシート基材3によって磁性体1を保持した構成を示している。図2の構成では、磁性体1の側面が隙間5となっており、シート基材3の使用量を更に減らすことができるだけでなく、磁性シート6に曲げ、たわみなどの負荷が加わった場合においても、隙間5が緩衝層となり磁性体1に応力歪を与えることなく安定した性能を発揮することができる。
【0030】
また、図3においては、磁性層2の上下面4a,4bの両面において、シート基材3を排除し、磁性体1の側面部のみにおいてシート基材3を構成した形態を示した。この場合磁性シート6の上下面7a,7bに磁性層2の上下面4a,4bが一致する構成となる。従って、磁性シート6の上下面7a,7bにおいて、磁性体1が露出するため、直接磁性体1の磁性性能を利用する場合に有効となる。
【0031】
同様に、図4は磁性シート6の一方の面7aと磁性層2の一方の面4aが一致した構成を示す。
【0032】
更に図5においては磁性層2の一方の面4bだけで、磁性体1をシート基材3で保持した構成を示した。
【0033】
本発明の実施の形態においては、磁性シートの上下面7a,7b間において、単一の磁性層2を備え、磁性層2が同形状もしくは異形状の複数の磁性体1によって形成され、磁性体1全ての固片が磁性層2の上下面4a,4bを同時に形成するように配置したので、磁性層2の一方の面4bだけで、磁性体1をシート基材3で保持することが可能となる。
【0034】
この構成においては、シート基材3について、磁性体1間の隙間5が開く方向に曲げる、たわませるなどの加工を施した場合においても、磁性体1に対して大きなストレスが加わることなく、磁性体1本来の磁性性能を発揮することができる。例えば図6で示すような屈曲した形状に対応する形態を実現することも容易となる。
【0035】
シート基材3としては、樹脂もしくはゴムを好適に用いるが、曲げやたわみ等に対する柔軟性だけではなく、耐熱性、耐湿性等耐候性を考慮した選定をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
単一の磁性層が同形状もしくは異形状の複数の磁性体によって形成され、かつ磁性体全ての固片が単一の磁性層上下面を同時に形成するように配置し、シート基材により磁性層を保持した構成とし、磁性機能を磁性体によって最大限に発揮した薄型で高性能な磁性シートを提供する。
【符号の説明】
【0037】
1、1a、1b 磁性体
2、2a、2b 磁性層
3 シート基材
4a、4b 磁性層の面
5 隙間
6 磁性シート
7a、7b 磁性シートの面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの厚み方向において単一の磁性層を備え、前記磁性層はフェライト焼結体によって形成され、前記フェライト焼結体が前記磁性層上下面を同時に形成するように配置し、前記磁性層上下面にシート基材を設けかつ前記フェライト焼結体に隙間を設け、その隙間を前記シート基材により構成し、前記フェライト焼結体の前記隙間を整列配置したことを特徴とする磁性シート。
【請求項2】
前記隙間が形成するそれぞれの長手方向は、前記磁性シートのそれぞれの端部と平行であることを特徴とする磁性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−249850(P2011−249850A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190298(P2011−190298)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【分割の表示】特願2004−365726(P2004−365726)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】