磁性トナー、液体現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
【課題】磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される磁性トナー、及びそれを用いた液体現像剤を提供することである。当該液体現像剤を用いたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、X線回折における420にピークを有すると共に当該ピークの半値幅が0.4deg以下である磁性粉と、前記磁性粉を内包する高分子化合物と、を含むことを特徴とする磁性トナー、及びそれを用いた液体現像剤である。
【解決手段】イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、X線回折における420にピークを有すると共に当該ピークの半値幅が0.4deg以下である磁性粉と、前記磁性粉を内包する高分子化合物と、を含むことを特徴とする磁性トナー、及びそれを用いた液体現像剤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性トナー、液体現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一回の潜像形成で必要部数の印刷が可能な磁気印写装置が知られている。この磁気印写装置では、磁気記録媒体(磁気潜像保持体)に磁気的に形成された磁気潜像を保持させ、現像領域でその磁気記録媒体に磁性トナーを供給して磁気潜像をトナー像として顕像化し、転写領域で紙などの記録媒体を磁気記録媒体へ押し当て、顕像化されたトナー像を記録媒体へ転写し、更に転写後の記録媒体を定着領域に搬送して定着処理することにより印写を完成させる。この方式は、一般にマグネトグラフィと呼ばれている。
【0003】
上記においては、磁気記録媒体における磁化状態は半永久的に保たれるので、1回潜像形成すると、現像・転写のプロセスを繰り返すだけできわめて多数のコピーが得られる。また、マルチコピーを得るために潜像を記録し直す必要がないので、高速化への対応が可能である。さらに、磁気は静電気と違って環境に対して安定である上、解像度の高い画像を得ることもできる。
一方、磁気潜像は容易に磁気的に形成及び消去可能であり、刷版が不要なため、コストの低減化が実現される。
【0004】
マグネトグラフィに関しては、粉体の磁性トナーを利用したいわゆる乾式の画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。具体的なプロセスとしては、例えば磁性トナーは磁気記録媒体に対して離間位置に配置された供給ローラによって供給される。供給ローラは磁性トナー層をその周面上に保持し、磁性トナー層を磁気記録媒体へ接触させて、磁気記録媒体の磁気潜像へ磁性トナーを供給し、付着させる。
【0005】
一方、磁性トナーを液体中に分散させた液体現像剤を用いた画像形成装置(いわゆる液体マグネトグラフィ)も検討されている(例えば、特許文献3、4参照)。このプロセスにおいては、トナーが液体中に含まれるため、高画質化のためにトナー粒径を小さくしてもトナークラウド等の問題が発生することはない。
【0006】
また、磁性トナーをカラー化するために、希土類ガーネット、強磁性フェライト、イットリウム・鉄・ガーネット、カドニウム・ガリウム・テルル等の透明磁性体を用いる提案がなされている(例えば、特許文献5乃至8参照)。
【特許文献1】特開平6−4008号公報
【特許文献2】特開平9−156150号公報
【特許文献3】特公平5−87834号公報
【特許文献4】特開平5−188827号公報
【特許文献5】特開昭60−73549号公報
【特許文献6】特開昭60−73548号公報
【特許文献7】特開昭63−50856号公報
【特許文献8】特開平7−114205公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される磁性トナー、及びそれを用いた液体現像剤を提供することである。また、本発明の課題は、当該液体現像剤を用いたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下である磁性粉と、
前記磁性粉を内包する高分子化合物と、
を含むことを特徴とする磁性トナーである。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記磁性粉のCIE1976(L*a*b*)表色系における、
L*が65以上90以下
a*が−9以上15以下
b*が30以上110以下
であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナーである。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記磁性トナーの前記CIE1976(L*a*b*)表色系におけるL*が、80以上90以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁性トナー。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性トナーと、
前記磁性トナーを分散する水性媒体と、
を含むことを特徴とする液体現像剤である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
磁気潜像保持体と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項6に係る発明は、
磁気潜像保持体と、
前記磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される。
請求項2に係る発明によれば、磁性粉のトナーの色相への影響が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、トナーの明度の低下が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、現像性に優れると共に、高画質化が実現される。また、オンデマンド印刷に対応することができ、高画質な画像を得ることができるだけでなく、環境にもやさしい。
請求項5に係る発明によれば、現像不良による画像欠陥が抑制されると共に、高画質化が実現される。
請求項6に係る発明によれば、現像不良による画像欠陥が抑制されると共に、高画質化が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(液体現像剤)
本実施形態に係る磁性トナーは、高分子化合物中に磁性粉を含む磁性重合体粒子である。そして、この磁性粉は、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下である。なお、磁性粉の本特性を、「X線回折特性」と称する場合がある。
【0016】
本実施形態に係る磁性トナーでは、上記構成とすることで、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される。この理由については定かではないが以下に示す理由によるものと考えられる。
【0017】
画像の高画質化のためには、磁性トナーを小径化する必要がある。一例として、磁性トナーの大きさを個数平均粒径で例えば0.5μm以上5μm程度に小径化するためには、トナーに配合される磁性粉の大きさも平均一次粒径で例えば2μm以下に小径化することが必要である。しかし、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなる磁性粉(以下YIG粒子と称することがある)は、例えば、小径化すると結晶化度が低減すると共に磁化が低減し、磁気特性が劣化することから、磁性トナーに磁力の付与ができ難くなる。
【0018】
ここで、YIG粒子において、粉末X線回折における「面指数(420)」とはYIGの粉末X線回折パターンにあらわれるいくつかのピークのうち最も強度の大きいものであり、このピークの半値幅が所定の値以下であるということは、その結晶化度の低減が抑制されていることを示す。したがって、YIG粒子が上記X線回折特性を満たすと、小径化しても磁性特性の劣化が抑制される。
【0019】
このため、本実施形態に係る磁性トナーでは、上記特性のYIG粒子を用いることで、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される。
【0020】
また、本実施形態に係る磁性トナーは、CIE1976(L*a*b*)表色系における、L*は、80以上90以下であること好ましい。
【0021】
これまで実験を積み重ねた結果、磁性粉としてのYIG粒子を小径化すると、茶色系の色を呈する粒子が得られ易く、これを磁性トナーに含ませると画像の色相に影響(特に、イエロートナーの明度が低減するといった影響)を与えることがわかった。すなわち、磁性粉のトナー色彩への影響が低い透明磁性体として知られるYIG粒子は、小径化されると、緑色から茶色と変化する傾向にあることがわかった。YIGが緑色であれば、カラートナー(例えばイエロー、シアン、マゼンタ)の色相には影響を与え難いものの、茶色ではカラートナーの色相への影響が生じ、特にイエロートナーの明度が低減されてしまう。
【0022】
これに対し、本実施形態に係る磁性トナーは、上記X線回折特性を満たしたYIG粒子を適用することで、所定のCIE1976(L*a*b*)表色系が満たされ(特に好適なL*が満たされ)、磁性粉のトナーの色相への影響が抑制された磁性トナーとなる。これは、上記X線回折特性を満たしたYIG粒子が、アモルファス化が低減された、言い換えれば結晶化度の低減が抑制されていることから、茶色までの変色が抑制された緑色のYIG粒子であるためと考えられる。
【0023】
なお、CIE1976(L*a*b*)表色系は、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間で、日本工業規格で「JIS Z 8729」に規定されたものである。以下、同様である。
【0024】
−磁性粉−
磁性粉としてのYIG粒子は、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなる。そして、YIG粒子は、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下という特性を満たす。
【0025】
このピークの半値幅は、0.4deg以下であることが望ましく、より望ましくは0.38deg以下であり、さらに望ましくは、0.35deg以下である。このピークの半値幅が上記範囲とすることで、磁性トナーを小径化しても結晶化度の低減と共に磁化の低減が抑制される。なお、ピークの半値幅は、小さいほどシャープなピークとなり好適であるが、その下限値は測定限界値であり、例えば0.1degである。
【0026】
ここで、ピーク及びピークの半値幅を求めるための、YIG粒子の粉末X線回折パターンは次のように得る。X線回折装置(D8 DISCOVER:ブルカー・エイエックスエス(株)社製)を用い、Cuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射により測定する。この粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で2θ=32.3°付近に回折ピークを示すものが、YIGの面指数(420)にあたるピークであり、最大の強度を示す。このピークの半値幅を求めるために、バックグラウンドを2θ=30°から35°までをとって直線で近似した後、この直線からピーク極大までの高さを求め、その半分の高さでのピークの幅を計った。
【0027】
なお、ピークの半値幅は、あるピークの高さの半分の高さにおけるピーク幅をいい、この半値幅が小さくなるほど結晶性がよいといえる。
【0028】
YIG粒子の平均一次粒径は、0.02μm以上2.0μm以下の範囲であることが好ましく、より望ましくは0.05μm以上1.5μm以下であり、さらに望ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。このYIG粒子の平均一次粒径が上記範囲とすると、磁性トナーに必要とされる磁気特性をもたせることができる。
【0029】
なお、平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で100個を観察して測定した際の数平均径をいう。以下、同様である。
【0030】
YIG粒子の500Oeの磁場における磁化は、10emu/g以上であることが望ましく、より望ましくは15emu/g以上であり、さらに望ましくは20emu/g以上ある。この磁化が、上記範囲であると、磁性トナーの現像性が向上される。
【0031】
ここで、磁気特性の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10−15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大500Oe(エルステッド)まで掃引し、ついで、印加磁場を減少させ、ヒステリシスカーブを得る。このヒステリシスカーブより500Oe(エルステッド)における磁化を求める。
【0032】
YIG粒子は、CIE1976(L*a*b*)表色系における、L*が65以上90以下、a*が−9以上15以下、b*が30以上110以下を満たすことが好ましく、より好ましくはL*が68以上90以下、a*が−9以上13以下、b*が35以上110以下を満たし、さらに好ましくはL*が70以上90以下、a*が−9以上2以下、b*が60以上110以下を満たす。このCIE1976(L*a*b*)表色系をYIG粒子が満たすことで、茶色までの変色が抑制された緑色となる傾向となることから、トナーの色相への影響が抑制され、特にイエロートナーの明度の低減が抑制される。
【0033】
YIG粒子はその表面が疎水化処理されていてもよい。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行うことができるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好ましい。
YIG粒子の表面は基本的に親水性であるため、疎水化処理を行うことにより高分子化合物の疎水性単量体に対する親和性が高められ、高分子化合物中での親水性単量体及び疎水性単量体の相溶性の向上に伴い、磁性粉の磁性トナー中での分散均一性が高められる。
【0034】
YIG粒子の含有量としては、磁性トナーに求める磁力によって決定されるのであるが、本実施形態においては、磁性トナー構成成分の総量に対して2質量%以上50質量%以下とすることが望ましく、より望ましくは4質量%以上30質量%以下である。含有量を上記範囲とすることにより、磁性トナーに十分な磁力が付与され、また磁性トナーとして分散媒体に対する分散安定性が高められる。
【0035】
次に、YIG粒子の製造方法につき説明する。YIG粒子の製造方法としては、共沈法などのボトムアップ的な手法で粒子を作製する方法や、粉砕法などのトップダウン的な手法で微粒子を作製する方法があげられる。また、YIG粒子は、X線回折特性を満たしていれば、後述する市販品を用いてもよい。
【0036】
但し、YIG粒子を、製造する際、上記X線回折特性を満たすためには、例えば、以下の手法を採用することが好ましい。
1)ボトムアップ的な手法及びトップダウン的な手法のいずれの場合においても、磁化低下の原因となるYIG粒子のアモルファス化を抑制し、結晶化を促進する目的で、後処理としてアニール処理を施す手法。このアニール処理の処理温度は、例えば700℃以上1500℃以下が望ましく、より望ましくは800℃以上1200℃以下が適当である。
2)トップダウン的な手法の場合、原料YIG粒子への力学的負担を低減し、YIG粒子のアモルファス化を抑制する目的で、湿式により実施する手法。この湿式に使用する液体としては、水、アルコール(例えばイソプロピルアルコール、エタノール等)アセトン、ヘキサン等挙げられる。また、この液体の使用量は、粒子2gに対して1g以上程度である。
【0037】
ボトムアップ的な手法に代表される共沈法は、共沈現象を利用した方法であり、単独では沈殿しない物質を沈殿する物質と共存させることで、同時に沈殿させるという方法である。具体的には、イットリウム金属塩水溶液と、三価の鉄塩水溶液との混合溶液を、アルカリ水溶液に混合させることよって共沈物を生じさせる。
【0038】
なお、アルカリ水溶液としては、例えば、NaOH水溶液が好適に挙げられる。アルカリ水溶液としては、例えば、NH4OH、(NH4)2CO3、Na2CO3、NaHCO3、等の水溶液も挙げられる。アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、共沈反応時のpHを考慮しつつ適宜設定すればよい。
イットリウム金属塩としては、例えば、ハロゲン化物[塩化物(YCl3)、臭化物(YBr3)]、硝酸塩[Y(NO3)3]、塩等が挙げられる。
三価の鉄塩としては、例えば、ハロゲン化物[塩化物(FeCl3)、臭化物(FeBr3)等]、硫酸塩[Fe2(SO3)3]、硝酸塩[Fe(NO3)3]等を挙げられる。
【0039】
また、アルカリ水溶液の中にイットリウム金属塩水溶液と前記三価の鉄塩の水溶液とを滴下させつつ共沈反応を進行させて共沈物を生成させて、YIG粒子を作製する際、例えば、得られるYIG粒子の平均一次粒径を、例えば1nm以上500nm以下とするには、上記共沈反応において、アルカリ水溶液への両金属塩水溶液の滴下速度は、10ml/分以上100ml/分以下にすることが好ましく、より好ましくは、20以上60ml/分以下である。
滴下中及び滴下後の攪拌時間は、10分以上60分以下程度とすることが好ましく、30分以上60分以下とすることがより好ましい。
共沈反応時の反応水溶液の最終的なpH値は、12以上、好ましくは12.5〜13.8、より好ましくは13〜13.5である。
共沈物を乾固する場合には、50℃以上200℃以下で加熱することが好ましく、100℃以上200℃以下で加熱することがより好ましい。
【0040】
一方、トップダウン的な手法に代表される粉砕は、各種粉砕機を用いて実施される。採用する粉砕法としては、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ディスクミルなどの粉砕法が挙げられる。これらの中でも、YIG粒子への力学的な負担が少ない、ビーズミル法、特に湿式のビーズミル法が好ましい。
【0041】
なお、粉砕する原料として用いるTIG粒子は、上記共沈法により得られるYIG粒子であってもよいし、市販品のYIG粒子であってもよい。例えば、市販品のYIG粒子としては、Yttrium Iron Oxide,nanopowder(アルドリッチ社製)、イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(高純度化学社製)等が挙げられる。
【0042】
−高分子化合物−
高分子化合物としては、従来から磁気記録装置に使用されている樹脂が挙げられる。具体的には、スチレン及びその置換体の単独重合体及びそれらの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系モノマーとの多元共重合体樹脂、スチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体樹脂、及び上記各樹脂の一部を架橋したものが挙げられる。更にはポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は指環族炭化水素樹脂、石油樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ワックス系樹脂等の単体又はこれらの混合体などが挙げられる。
【0043】
ここで、磁性トナーを水性媒体に均一、安定に分散させることは、高分子化合物が疎水性であること、磁性トナー表面が通常の高分子化合物粒子とは異なる特性を有していることから、通常の高分子化合物粒子の構成では容易になし得ない場合がある。
本実施形態では、上記観点から、特に以下のように重合体を構成する単量体種や組成を制御して得られた高分子化合物を用いることにより、磁性トナーの水性媒体に対する良好な分散性が得られより優れた現像性等が発揮される。以下、本実施形態に好適に用いられる高分子化合物の構成について説明する。
【0044】
高分子化合物としては、エチレン性不飽和単量体の重合体を含み、該エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体及び疎水性単量体を含み、かつ、重合体の水酸基量が0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であるものを用いることが望ましい。
【0045】
ここで、磁性トナー粒子として、一定以上の磁力を保持しつつ水性媒体中への良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基を存在させることが有効である。そして、このためには粒子を構成する高分子化合物(重合体)の構成成分が水酸基を有していることが望ましい。
高分子化合物として好適に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合体は、水酸基を有する親水性単量体及び疎水性単量体の共重合比により、水性媒体における分散性と磁性トナーの安定性との視点、さらには、磁性トナーに一定量含まれる磁性粉の含有量との関係から、重合体の水酸基量を最適の範囲としている。
【0046】
水酸基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量として定義されるものであり、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが望ましく、0.2mmol/g以上4.0mmol/g以下であることがより望ましく、0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下であることがさらに好適である。
水酸基量が0.1mmol/gに満たないと、磁性トナーの水性媒体への分散性が悪くなる場合がある。5.0mmol/gを超えると、水中での磁性トナーの膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる場合がある。
【0047】
なお、上記水酸基量は、一般的な滴定法により求められる。例えば、上記ポリマーに無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求められる。
【0048】
エチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記親水性単量体及び疎水性単量体ともに本実施形態におけるエチレン性不飽和単量体に含まれる。
水酸基を有する親水性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げられる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合反応の制御性等の観点から望ましい。
【0049】
また、重合体中には水酸基に加えてカルボキシル基を有していることが望ましい。この場合には、エチレン性不飽和単量体として、さらにカルボキシル基を有する単量体を用いることが望ましい。
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエート及びメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどを挙げられる。
これらの中では、メタクリロイルオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、磁性トナー中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から望ましい。
【0050】
疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好適には、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好適には、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどを挙げられる。
【0051】
これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが望ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に望ましい。
【0052】
親水性単量体と共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、1質量%以上99質量%以下であることが望ましく、5質量%以上95質量%以下であるこことがより望ましい。特に、エチレン性不飽和単量体として前記水酸基を有する単量体に加えてメタクリロオキシエチルモノフタレートなどのカルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、疎水性単量体の含有量は、全単量体成分中、20質量%以上99質量%以下であることが望ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好適である。
【0053】
含有量が1質量%未満では、重合体中の水酸基量が多くなりすぎ、重合体の作製の際に均一な重合ができなくなる場合があり、99質量%を超えると、重合体として水酸基による親水性の効果が得られなくなる場合がある。
【0054】
その他の単量体としては、後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)には、必要に応じて架橋剤を混合してもよい。単量体混合液中に架橋剤を添加することにより、重合中の凝集が抑制され、分散安定性が確保される。
架橋剤としては、公知の架橋剤を選択して用いることができ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。
【0055】
さらに、高分子化合物には定着性向上の観点から非架橋樹脂を含有させてもよい。非架橋樹脂としては、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。
具体的には、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体又は共重合体が例示される。
【0056】
−その他の成分−
磁性トナーには、更に着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどを含有してもよい。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を直接混合してもよいが、例えば、特に有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を混合する場合は、例えば前記非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。
【0057】
−磁性トナーの作製方法−
以上の各単量体等を含む磁性トナーの作製方法としては、例えば、まずエチレン性不飽和単量体、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
また、上記混合液への磁性粉の分散には公知の方法が適用される。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用される。
【0058】
磁性トナーを得るには、公知の方法が利用でき、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法等が好適に用いられる。さらに、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁重合してもよい。
このようにして得られた磁性トナーは、個数平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることが望ましく、より望ましくは0.5μm以上8.0μm以下であり、0.5μm以上5.0μm以下である。個数平均粒径が0.5μmに満たないと、小粒径過ぎて取り扱いが困難になる場合があり、5μmを超えると、画像形成材料として用いたときに高画質が得られない場合がある。個数平均粒径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた個数平均粒径である。
【0059】
また、高分子化合物がカルボキシル基を有する場合には、カルボキシル基量が0.005mmol/g以上0.5mmol/g以下であることが望ましい。カルボキシル基量が前記範囲にあると、水酸基に比べて少ない官能基数であっても良好な水性媒体への分散性、膨潤抑制効果が得られ、他の官能基が存在する場合の変動に対してもこれらの特性が維持される。
カルボキシル基量は、0.008mmol/g以上0.3mmol/g以下がより望ましく、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下であることがさらに好適である。
【0060】
上記カルボキシル基量は一般的な滴定法により求められる。例えば、上記高分子化合物に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求められる。
【0061】
(液体現像剤)
本実施形態に係る液体現像剤は、上記本実施形態に係る磁性トナーと、磁性トナーを分散する水性媒体と、を含む。つまり、本実施形態に係る液体現像剤は、磁性トナーを水性媒体中に分散させた粒子分散体である。
【0062】
水分散体における磁性トナーの濃度は0.5質量%以上40質量%以下の範囲とすることが望ましく、1質量%以上20質量%以下の範囲とすることがより好適である。
【0063】
水性媒体とは、水を50質量%以上含む溶媒を意味する。また、「水」とは、蒸留水、イオン交換水、超純水等、精製した水を意味する。また、水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられる。この中でも水単独が特に望ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下が望ましく、10質量%以下がより好適である。
【0064】
水性媒体には、通常の水系の粒子分散体に使用する各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
【0065】
具体的に、例えば、磁性重合粒子の分散安定性を維持するための界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等、いずれの公知の界面活性剤も使用可能である。
【0066】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、前述のほか、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント;等も挙げられる。
【0068】
また、分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体であれば有効に用いることができる。例えば、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられ、これら共重合体は、ランダム、ブロック及びグラフト共重合体等いずれの構造でもあってもよい。
また、これらの重合体は、分散性や水溶性等を向上させるために、ポリオキシエチレン基、水酸基を有するモノマー、カチオン性の官能基を有するモノマーを共重合したり、親水基が酸性基である重合体においては塩基性の化合物との塩構造であっても良い。
本実施形態において、蒸発性制御や界面特性制御の目的で、水溶性有機溶媒の使用が可能である。水溶性有機溶媒としては、水に添加したときに2相に分離しない有機溶剤であって、例えば一価もしくは多価のアルコール類、含窒素溶媒、含硫黄溶媒、その他その誘導体等が挙げられる。
【0069】
具体的には、多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等、多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等、一価のアルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等、含窒素溶媒としてはピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等、硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等、その他炭酸プロピレン、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0070】
水性媒体には、導電率、インクのpHの調整等を目的として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等の添加が可能である。
また、その他に、必要に応じて、防カビ、防腐、防錆等を目的として安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸等を添加することができる。また、酸化防止剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、キレート化剤等も添加することができる。
【0071】
特に、本実施形態では、防カビ剤として、金属イオン(例えば銀、銅、亜鉛等)をイオン交換性を持つ無機物(例えばゼオライト等)に担持させた粒子を用いることが好適である。このような防カビ剤としての粒子として好適には銀担持ゼオライトが挙げられる。この銀担持ゼオライトは、他種に比べ防カビ能が高いと共に、磁化されないので、現像されずに液体現像剤中に留まることから、形成される画像へ影響がない。
【0072】
ここで、銀担持ゼオライトは、平均一次粒径が0.1μm以上50μm以下のものが好適である。すなわち、平均一次粒径が0.1μm未満の粉末を形成することは技術的に容易でなく、逆に平均一次粒径が50μmを超えると現像液中で沈降しやすく、分散安定性が悪くなる傾向がみられるからである。そして、中でも銀担持ゼオライトは、平均一次粒径が0.5μm以上10μm以下のものが特に現像液中での分散性において好適である。
【0073】
銀担持ゼオライトの含有量は、要求される防カビ(抗菌)の程度等にもよるが、液体現像剤全体に対し、0.05重量%以上30重量%以下程度に設定されることが好適である。すなわち、含有量が0.05重量%未満では抗菌効果が低く、逆に30重量%を超えると現像液の粘度が上がり、現像性が低下するおそれがあるからである。
【0074】
銀担持ゼオライトは、例えば特開昭60−202162号公報に準じて作製したものを用いることもできるし、市販品(例えば富士ケミカル(株)製 抗菌剤バクテキラー BM−101(粒径5μm))を用いてもよい。
【0075】
液体現像剤における磁性トナーの分散粒径は、0.1μm以上20μm以下とすることが望ましく、0.5μm以上8μm以下の範囲とすることが望ましく、0.5μm以上5.0μm以下の範囲とすることがより望ましい。なお、上記磁性トナーの分散平均粒径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた個数平均粒径である。
【0076】
なお、液体現像剤中の磁性トナーとして、前記本実施形態に好適に設計された磁性トナーを用いた場合には、前述のように粒子中で磁性粉が均一に分散しているため、粒子表面にほとんど磁性粉が存在しない。また、粒子表面に水酸基を有するため、水性媒体に対して良好な分散性を示す。
このため、上記液体現像剤を用いた場合には、液中でのミクロな表面張力のばらつきがなく、しかも現像時の磁気力に対する粒子の移動性も粒子間でばらつきが小さいため、前述の磁気ドラム表面の撥水特性に基づく現像後の磁気ドラム上への液体の付着や、画像かぶりの発生が、より効率的に低減される。
【0077】
前記液体現像剤の製造は、以下の手順により行われるが、これに限られるものではない。
まず、主溶媒の水と前記各添加剤とを含む分散媒をマグネチックスターラー等を用いて調製し、これに前記磁性トナーを分散させる。分散には公知の方法が適用される。すなわち、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。また、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散する方法、超音波によって分散する方法等が挙げられる。
【0078】
液中で磁性トナー同士が単独の分散状態になったことを分取した分散液の顕微鏡観察等により確認し、その後、防腐剤等の添加物を加えて溶解していることを確認した後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去することにより画像形成用記録液としての液体現像剤が得られる。
【0079】
液体現像剤の粘度は、用いる画像形成システムにもよるが、1mPa・s以上500mPa・s以下が望ましい。液体現像剤の粘度が1mPa・s未満の場合、磁性トナーの量や添加剤の量が十分でないことから十分な画像の濃度が得られない場合がある。また、液体現像剤の粘度が500mPa・sより大きいと、粘度が高すぎるためハンドリングが難しくなったり、現像性が低下したりする場合がある。
【0080】
[画像形成装置]
以下、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、プロセスカートリッジについては、下記の画像形成装置の実施形態において併せて説明する。
【0081】
本実施形態の画像形成装置は、磁気潜像保持体(以下、「像保持体」という場合がある)と、該磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、磁性トナー及び水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、を有する。そして、液体現像剤として、上記本実施形態に係る液体現像剤を適用する。
【0082】
ここで、液体現像剤を用いたいわゆる液体マグネトグラフィでは、通常、現像直後の像保持体上のトナー像は、多量の余剰現像液を含むことから、用紙等の記録媒体へのトナー画像の転写の前に乾燥工程を設けて、余剰現像液を除去しなければならない場合がある。
【0083】
そこで、像保持体としては、表面が撥水性を有する像保持体を適用することが望ましい。液体現像剤における分散媒として水性媒体を用いると、水が水素結合により表面張力が大きいため、表面が撥水性を有する像保持体と組み合わせることで、現像の際に液体現像剤が像保持体と接触しても分散媒である液体が像保持体に転移しにくく、液体を像保持体上に残さない状態でトナー像を記録媒体に転写される。したがって、像保持体上の残留溶媒を除去するためのスクイズローラ等が不要であり、トナー像が転写された記録媒体もほとんど乾燥させる必要がない。
【0084】
さらに、現像の際には表面張力の大きい水性媒体は像保持体表面に濡れ広がることが抑制され、一方現像剤中に高い易動性を有して均一に分散している磁性トナーは、像保持体との接触と同時に磁気潜像のみに磁気力で転移するため、画像かぶりがほとんど発生しにくい現像環境をつくり出される。
【0085】
したがって、オフィスなどの使用環境に適応させつつ、現像後に磁気潜像保持体上の残留液体の影響を抑え、画像かぶりなどの発生を低減させた高画質な画像を安定して形成される。
【0086】
本実施形態に適用される画像形成プロセスは、いわゆる電子写真プロセスや、誘電体上にイオンなどで静電潜像を形成するプロセス(イオノグラフィ)、帯電した誘電体にサーマルヘッドの熱により画像情報に応じて静電潜像を形成するプロセスなど、静電潜像を利用するものではなく、像保持体上に磁気潜像を形成してトナー像を形成するプロセスである。
【0087】
以下、本実施形態における、液体現像剤を用いた磁気現像プロセスによる画像形成装置を図面を参照しつつ説明する。
【0088】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、磁気ドラム(磁気潜像保持体)10、磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)12、現像装置(現像剤貯留手段及び現像剤供給手段)14、中間転写体(転写手段)16、クリーナ18、消磁装置(消磁手段)20、転写定着ローラ(転写手段)28を含んで構成される。磁気ドラム10は円柱形状を有し、該磁気ドラム10の外周に磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18及び消磁装置20が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0089】
まず、磁気ヘッド12が、例えば図示しない情報機器と接続され、該情報機器から送られた2値化された画像データを受ける。磁気ヘッド12は、磁気ドラム10の側面上を走査しながら磁力線を放出することによって、磁気ドラム10に磁気潜像22を形成する。なお、図1では磁気潜像22は磁気ドラム10における斜線を付した部分で示される。
現像装置14は、現像ローラ(現像剤供給手段)14aと現像剤貯蔵容器(現像剤貯留手段)14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤貯蔵容器14bに貯蔵される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。
【0090】
液体現像剤24中では、トナー粒子は均一に分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材によって所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子の濃度の位置ばらつきは低減される。これにより図の矢印A方向に回転する現像ローラ14aには、トナー粒子の濃度バラツキが低減された液体現像剤24が供給される。
【0091】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、後述する規制部材によって一定の供給量に制限された状態で磁気ドラム10に搬送され、現像ローラ14aと磁気ドラム10とが近接(あるいは接触)する位置で磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されてトナー像26となる。
【0092】
上記現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する磁気ドラム10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、磁気ドラム10からのトナー像の剥離効率を含めた記録媒体への転写効率を向上させ、さらに記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。
中間転写体16への転写は、トナー粒子が電荷をほとんど有していないため、シアリング転写(非電界転写)により行うことが好適である。具体的には、矢印B方向に回転する磁気ドラム10と矢印C方向に回転する中間転写体16とを一定のニップ(移動方向の接触幅を有する接触面)を持って接触させ、トナー像26に対して磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させる。このとき、磁気ドラム10及び中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0093】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写され、同時に定着される。
転写定着ローラ28は、中間転写体16とによって用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写し、同時に用紙上にトナー像を定着される。トナー像の定着は、トナーの特性により加圧によってのみ行ってもよいし。転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧及び加熱により行ってもよい。
【0094】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した磁気ドラム10では、転写残トナーがクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。クリーニング後、磁気潜像22を保持したまま磁気ドラム10は消磁位置まで回転移動する。
消磁装置20は、磁気ドラム10に形成された磁気潜像22を消去する。前記クリーナ18と消磁装置20とによって磁気ドラム10は画像形成前の磁性層の帯磁状態にばらつきがない状態に戻される。以上の動作を繰返すことによって、前記情報機器から次々に送られてくる画像を連続的に短時間で形成する。なお、上記画像形成装置100に備えられる磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、クリーナ18及び消磁装置20は、すべて磁気ドラム10の回転速度と同期をとって動作されている。
【0095】
次に、本実施形態の画像形成装置の各構成を順次説明する。
(磁気潜像保持体)
磁気ドラム(磁気潜像保持体)10の構成は、例えばアルミニウムなどの金属でできたドラム上に、Ni、Ni−Pなどの下地層をおよそ1〜30μmの厚さで形成し、この上にCo−Ni、Co−P、Co−Ni−P、Co−Zn−P、Co−Ni−Zn−Pなどの磁気記録層を0.1μm以上10μm以下程度の厚さで形成し、更にNi、Ni−Pなどの保護層を0.1μm以上5μm以下程度の厚さで形成する。下地層のメッキにピンホールなどの欠陥があると、磁気記録層にも欠陥ができてしまうので細密でむらのないメッキを行うことが好適である。メッキ以外にも、スパッタや蒸着などの方法もある。更に、下地層及び保護層については、非磁性であることが望ましい。各層の表面はテープ研磨などで表面精度を保つことが、磁気潜像を形成する磁気ヘッド12との間隙が精度良く維持する上で好適である。
【0096】
磁気記録層の膜厚は0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが望ましく、磁気記録層の磁気特性は、保磁力が16000A/m以上80000A/m以下(200エルステッド以上1000エルステッド(Oe)以下)程度、残留磁束密度を100mT以上200mT以下(1000ガウス以上2000ガウス(G)以下)程度とすることが好適である。
以上は、水平磁気記録式の場合の磁気ドラム10の構成であるが、垂直磁気記録式の場合には、非磁性層の上にCo−Ni−Pなどの記録層を設けた構成としたり、該記録層の下に透磁率の高い軟磁性層を設けた構成としてもよく、いずれかに限定されるものではない。また磁気潜像保持体としては、本実施形態におけるドラム状のものに限られず、ベルト状に形成されたものでもよい。
【0097】
本実施形態では、撥水性を有する磁気ドラム10を用いる。ここで撥水性とは水をはじく性質のことを意味し、具体的には純水との接触角が70度以上であることをいう。
また、本実施形態では磁気ドラム10の純水に対する接触角が、70度以上であることが望ましく、100度以上であることがより望ましい。接触角が70度に満たないと、後述する水性媒体を使用した液体現像剤により現像を行っても、現像後に磁気ドラム上に液体が残存したり画像かぶりが発生する場合がある。
【0098】
なお、上記磁気ドラム10表面の接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を磁気ドラムの表面に3.1μl滴下し、15秒後の接触角を求めた。なお、測定は端部、中央部で周方向に4点測定し、これらの平均値を接触角とした。
【0099】
磁気ドラム10の表面を上記好適な接触角を有する表面とするには、前記のようにして構成される磁気ドラム表面に表面コートを行うことが望ましい。
上記表面コートとしては、フッ素潤滑めっき、フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを用いたコーティング等が挙げられる。フッ素潤滑メッキとは、無電解ニッケルめっきにフッ素樹脂(ポリ四弗化エチレン:PTFE)を複合・共析させた機能めっきであり、形成される皮膜中にはPTFE粒子が均一に析出しており無電解ニッケルめっきとPTFE樹脂の両特性を兼ね備える。
また、前記フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを使用したコーティングとしては、例えば、含フッ素環状構造を有するポリマー、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの共重合体、光重合型フッ素樹脂組成物等を前記保護層表面に塗布してもよいし、該保護層表面にフッ素原子含有ポリマーをスパッタリングし全面を被覆してもよい。
【0100】
これらのうちでは、下層のめっき層との密着性や耐久性等の観点から、フッ素潤滑めっきが好適である。なお、上記フッ素潤滑めっきやフッ素樹脂コーティングは、前記保護層を形成した上に行ってもよいし、フッ素潤滑めっき等により形成した層をそのまま保護層としてもよい。
表面コートにより形成される表面層の膜厚は0.1μm以上5μm以下とすることが望ましく、0.3μm以上3μm以下とすることがより望ましい。
【0101】
(磁気潜像形成手段)
磁気潜像形成装置(磁気潜像形成手段)は、基本的には磁気ヘッド12とその駆動回路から成る。磁気ヘッド12には、おもにフルライン型磁気ヘッドとマルチチャンネル型磁気ヘッドがあり、フルライン型磁気ヘッドの場合には磁気ヘッド12を走査する必要はないが、マルチチャンネル型磁気ヘッドの場合には磁気ドラム10に対して磁気ヘッド12を走査する必要がある。走査の方法にはシリアル走査とヘリカル走査とがあり、ヘリカル走査の方は潜像形成工程だけ特別に磁気ドラム10の回転速度を変更してやれば記録速度が速くすることが可能である。
【0102】
一方、フルライン型磁気ヘッドの場合としては、例えば解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)とするとA4サイズの紙の幅方向の記録幅をカバーするためには500チャネル程度のヘッドが必要である。それらを並べてフルライン化すればヘッドを走査する必要がなく極めて高速な記録が可能になる。また上記フルライン化するためには、ヘッドコアとヘッドコアとの重ね合わせが必要になるが、高解像度になるにしたがいトラックピッチも狭くなるためヘッドコアに挿入されるコイルも可能な限り薄いもの、例えば平面状のシートコイルが用いられる。
【0103】
磁気ヘッド12の各チャンネルのコイルに電流を流すことにより磁極先端部から漏洩磁束が生じ、これにより磁気記録媒体を磁化することによって磁気潜像を形成する。磁気ヘッド12からの出力は、磁気ドラム10における磁気記録層の保磁力の2〜3倍必要である。ここで形成した磁気潜像は消磁装置20で消去しない限り消えることはなく、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返せばマルチコピー機能を有する。また、磁気潜像は湿度の影響を受けにくいため、静電式に比べ環境安定性に優れている。
【0104】
(現像剤貯留手段、現像剤供給手段)
図2に、図1における現像領域を拡大した模式図を示す。
現像装置(現像剤供給手段)14は、現像剤貯蔵容器14bと、現像剤貯蔵容器14b内に貯留された液体現像剤24をトナー供給領域(以下、「供給領域」という場合がある)において磁気ドラム10へ供給する現像ローラ14aとを具備する。図2に示すように、現像ローラ14aはその周面上に層状の液体現像剤24を保持し、磁気ドラム10に対し離間位置に配置されている(例えば、この磁気ドラム及び現像装置によりプロセスカートリッジが構成される)。また供給領域の上流位置に液体現像剤24の層厚を所定の厚さに維持する規制部材13が配置されている。規制部材13は現像ローラ14aの軸線方向へ全幅にわたって延びる板状の部材であり、その一縁部が所望のトナー層厚に対応した所定距離だけ現像ローラ14aの周面から離間するよう配置されている。
【0105】
現像装置14では、トナー粒子26aと水性媒体とを含む液体現像剤24が現像剤貯蔵容器14bに貯留されている。液体現像剤24は、現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材15によって所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子26aの濃度の位置ばらつきが低減される。したがって現像ローラ14aには、トナー粒子濃度のバラツキが低減された液体現像剤24が供給される。
なお、図2には示してないが、上記液体現像剤の現像ローラ14aへの供給のために、現像ローラ14aに接触あるいは近接して回転する供給ローラを具備してもよい。
【0106】
現像ローラ14aは、例えばその内部にS極の磁極とN極の磁極とを含む複数の磁極を周方向へ備え、これら磁極は現像ローラ14aと共に回転しないよう固定されている。これら磁極の一つは特に規制部材13及び前記供給領域間に配設されている。したがって、現像ローラ14aに保持された磁性トナーを含む液体現像剤24は、これらの磁極の磁力線(現像磁場)によって保持され磁気ドラム10方向へ搬送される。
なお、現像ローラ14aとしては、ローラ表面そのものに液体現像剤の搬送力があれば、磁性ローラである必要はなく、例えばアニロックスローラやスポンジローラなども使用してもよい。
【0107】
規制部材13は、前記のように現像ローラ14aが現像剤貯蔵容器14bの液体現像剤24を保持してから、磁気ドラム10に供給するまでの位置に設けられる。規制部材13と現像ローラ14aとによって形成される間隙で磁気潜像22に供給される液体現像剤24の量が決定される。材質としては、ゴムやりん青銅などが好適である。規制部材13によって一定の供給量に制限された液体現像剤24が磁気ドラム10に搬送され、磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されトナー像26となる。
【0108】
また前記現像に際しては、トナー粒子が磁性トナーであるため、現像ローラ14aに磁場を印加しなくても現像を行うことは可能であるが、より効率的な現像を行うために現像ローラ14aに磁場を印加してもよい。
【0109】
(転写手段、定着手段)
現像装置14で顕像化されたトナー像は、転写手段によって用紙30に転写される。前述のように、本実施形態では磁気ドラム10から直接用紙上にトナー像を転写するのではなく、中間転写体16に一旦転写した後、用紙30に転写定着する方式を用いている。まず、中間転写体16への転写について説明する。
【0110】
中間転写体16は、磁気ドラム10に接触してトナー像を転写する。転写方式としては、一般に静電転写方式、圧力転写方式、これらを併用した静電圧力方式などがあるが、前記のように、本実施形態ではトナー粒子が電荷を有していないため、静電転写方式や静電圧力方式は使用できない。一方、前記圧力転写方式は、通常は磁気ドラム10及び転写媒体間の圧力により、トナー像を塑性変形させながら転写媒体の表面に付着させ転写するものであり、シアリング転写と併用してもよい。
【0111】
本実施形態では、前記のように磁気ドラム10上のトナー像26に対して、磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させるため、中間転写体16に粘着性を持たせて粘着転写を行うことが好適である。このため、中間転写体16の表面には例えば低硬度シリコーンゴム層を形成することが望ましい。
【0112】
次いで、中間転写体16に転写されたトナー像26は用紙に転写される。
図1における中間転写体16を挟んで磁気ドラム10の反対側には、転写定着ローラ28が中間転写体16に対してニップ形成するように配置されており、中間転写体16上のトナー像26にタイミングを合わせて、用紙30が中間転写体16及び転写定着ローラ28間のニップへ送給される。転写定着ローラ28は、例えば、ステンレス基体、シリコーンゴム層、フッ素ゴム層により構成されており、ニップを通過する用紙30を中間転写体16に押圧することにより、中間転写体16上のトナー像が用紙30に転写される。
【0113】
本実施形態では、上記中間転写体16から用紙30にトナー像26が転写されると同時に、該トナー像26が用紙30に定着される構成となっている。具体的には、中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16、転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ、押圧ローラに準じた構成となって定着機能を発揮される。すなわち、用紙30が前記ニップを通過する際、トナー像が転写されると同時に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して押圧され、これにより、トナー像を構成するトナー粒子が軟化すると共に用紙30の繊維中に浸潤する。
【0114】
この状態でも、用いるトナー粒子によっては用紙30への固定が可能であるが、定着が十分でない場合には、転写定着ローラ28等により加熱することでトナー像は溶融し用紙30の繊維の中まで入り込み固着して定着像29となる。この状態では、用紙30を折り曲げたり、粘着テープを貼った後剥しても定着像29が剥がれることはない。
【0115】
なお、本実施形態では用紙30への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。この場合には、磁気ドラム10からトナー像を転写する転写ローラが、前記中間転写体16に準じた機能を有することとなる。
【0116】
(クリーナ)
一方、前記磁気ドラム10から中間転写体16へのトナー像の転写効率が100%に至らない場合には、転写後の磁気ドラム10上にトナー像26の一部分が残留することになる。これを除去するのがクリーナ18であり、基本的に、ゴムなどのクリーニングブレードと残留磁性トナーの容器とから構成される。
なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
【0117】
(消磁手段)
再度新しい画像形成を行なう場合には、磁気ヘッド12で磁気潜像を形成する前に磁気潜像を消去する必要がある。消磁装置20には、永久磁石式と電磁石式との2通りがある。永久磁石式の場合には、磁気ドラム10の円周方向に磁化して局所的に磁束が漏洩しないようにするもので、電力等のエネルギーが不要で安価である。ただし、磁気潜像を消去しない場合には、消磁装置20を磁気ドラム10に対して移動させ磁気的な距離を大きくして消去磁界を弱くする必要がある。これに対して電磁石式は、ヨークとコイルとから成り電流を流す必要があるが、磁気潜像を消去する必要がない場合には電流を切ることにより消去磁界がゼロになるため制御が比較的自由である。
本実施形態では、前記永久磁石式及び電磁石式のいずれも用いてもよい。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0119】
[実施例A]
(YIG粒子の作製)
−YIG粒子A1−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12を準備した。このYIG粒子のSEM観察行った結果、YIG粒子の平均一次粒径は2.0μmであった。
【0120】
−YIG粒子A2−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)2gをイソプロピルアルコール2mlと共に遊星ボールミル(1mmφジルコニウムビーズ 57g)に入れ、43時間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIGの平均一次粒径は0.32μmであった。
【0121】
−YIG粒子A3−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)400g及び水2リットルをフロー式ビーズミル(アシザワファインテック製:スターミルLMZ06)に入れ30分間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIGの平均一次粒径は0.24μmであった。
【0122】
−比較YIG粒子A1−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)2gを遊星ボールミル(1mmφジルコニウムビーズ 57g)に入れ、48時間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIG粒子の平均一次粒径は0.40μmであった。
【0123】
−比較YIG粒子A2−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)2gをイソプロピルアルコールと共に遊星ボールミル(1mmφジルコニウムビーズ57g)に入れ、62時間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIG粒子の平均一次粒径は0.36μmであった。
【0124】
(YIG粒子の評価)
−X線回折プロファイル−
各YIG粒子のX線回折プロファイルを調べ、面指数(420)のピークの半値幅を調べた。X線回折の方法は上記の通りである。
なお、図3にYIG粒子A1、A2、A3及び比較YIG粒子A1、A2のX線回折プロファイルを示す。図3に示すX線回折プロファイルに示すように、YIG粒子A1、A2、A3については、YIGのガーネット構造に帰属されるパターンが観察されるが、比較例1のYIG微粒子にはピークが観察されず、比較例A2の各ピークはブロードなものであった。これは、比較YIG粒子A1、A2の結晶性が乱れていることを示している。
【0125】
−磁化−
各YIG粒子について、500Oeにおける磁化(emu/g)について測定した。測定方法は上記の通りである。
【0126】
−CIE1976(L*a*b*)表色系−
各YIG粒子 50部とラテックス粒子(スチレン−アクリル(St−Ac)粒子:重量平均分子量Mw=15000、平均一次粒径0.2μm)50部とを混合し、フィルタリングを行った混合物を、この混合物を4.0g/m2で層状に形成し、これを熱定着して、色サンプルを作製した。そして、この色サンプルを反射濃度計X−rite939(X−rite社製)を用いて測色し、CIE1976(L*a*b*)表色系を調べた。
【0127】
以上の結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
(実施例A1〜A3、比較例A1〜A3)
磁性粉として上記得られた各YIG粒子を用いて、以下のようにして磁性トナー、及び液体現像剤を作製した。これらを実施例A1〜A3、比較例A1〜A2とした。
また、磁性粉としてマグネタイト(商品名:戸田工業製MTS−010、500Oeにおける磁化42.2emu/g、平均一次粒径0.2μm)を用いて、磁性トナー、及び液体現像剤を作製し、これを比較例A3とした。
【0130】
−磁性トナーの作製−
まず、各YIG粒子またはマグネタイト粒子600部に、スチレンアクリル樹脂(エスレックP−SE−0020、積水化学(株)製)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された表面処理磁性粉(磁性粉含有率:60%)6種類を得た。
【0131】
(実施例A1を用いた磁性トナーの作製)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)17部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)57部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、これに前記YIG粒子A1の表面処理磁性粉を33部加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0132】
塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、ルミナス)30部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。
この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化した。
【0133】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。
反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で洗浄後、500mlのエタノール中に30分間超音波分散と遠心分離を3回繰り返して洗浄を行い、磁性トナーを得た。
【0134】
この磁性トナーを60℃のオーブンで乾燥した後、孔径10μmのメッシュを通して粗大粒子を分離した後、個数平均粒径を測定したところ、5.0μmであった。
【0135】
(実施例A2〜比較例A3を用いた磁性トナーの作製)
YIG粒子A2、YIG粒子A3、比較例A1、比較例A2、比較例A3(マグネタイト)を用いた磁性トナーは、上記磁性粉分散液(上記実施例A1を用いた磁性トナーの作製における磁性粉分散液)における表面処理磁性粉量をそれぞれ、47部、40部、85部,60部,40部を加えた以外は上記と同じ方法で作製した。
作製したそれぞれのトナー径は、4.7μm(実施例A2)、3.9μm(実施例A3)、4.7μm(比較例A1)、4.4μm、(比較例A2)、3.6μm(比較例A3)であった。
【0136】
−液体現像剤の作製−
ポリビニルアルコール(PVA、クラレ(株)製、クラレポバール217、重合度:1700、けん化度:88モル%)5部を冷却したイオン交換水95部に加え、マグネチックスターラーで攪拌しながら分散した後、さらにウォーターバスで70℃に加熱ながら3時間攪拌溶解して、PVA水溶液(5%溶液)を調製した。
【0137】
・磁性トナー:5部
・PVA水溶液:10部
・ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(和光純薬(株)製):0.5部
・イオン交換水:84.5部
以上の成分を混合し、ボールミルで3時間分散し、前記磁性トナーを磁性トナーとした液体現像剤とした。この液体現像剤を0.1ml採取し、測定液アイソトン(ベックマン・コールター(株)製)100mlに分散し、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株)製)を用いて体積平均粒径(分散平均粒径)を測定したところ、3.0μmであった。
【0138】
−現像性の評価−
図1に示した構成の画像形成装置100を用意し、現像剤として前記液体現像剤を用いた。
磁気ドラム10としては、アルミドラム上に、下地層としてNi−Pを膜厚15μm、磁気記録層としてCo−Ni−Pを膜厚0.8μmとなるようにめっきし、さらにその表面に、Ni−P−PTFE粒子によるフッ素潤滑めっきを行い膜厚1.5μmの保護層を形成した。なお、前記磁気記録層の保持力は400Oe、残留磁束密度は7000Gであった。
この磁気ドラム10表面に対する、25℃、50%RHにおける純水の接触角は110度であった。
【0139】
磁気ヘッド12としては、Mn−Znフェライトからなる600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)相当の画素を形成する4チャネルのフルライン型磁気ヘッドを用意した。
【0140】
現像装置14としては、現像ローラ14aとしてアルミニウム製の非磁性スリーブ中に円筒状の永久磁石が同心円状に配置されたマグネットロールを備え、現像剤貯蔵容器14bに内部で液体現像剤を攪拌する攪拌羽とを設けた現像装置14を用いた。この現像剤貯蔵容器14bに前記液体現像剤を投入し、非磁性スリーブ表面と磁気ドラム10表面とのギャップが50μmとなるように現像装置14を配置した。
【0141】
中間転写体16としては、表面に厚さが7.5mmのシリコーンゴム層を有し、磁気ドラム10と同一周速で回転するアルミニウム製の中間転写ドラムを用いた。また、転写定着ローラ28としては、ステンレス製の芯材の外周にシリコーンゴム層、フッ素ゴム層をこの順に被覆してなる弾性ロールを用い、さらにこの弾性ロールは発熱体により表面温度が170℃となるように加熱する構成とした。
【0142】
以上の構成の画像形成装置100により印字条件を下記のように設定した。
・磁気ドラム線速:100mm/秒。
・現像ローラ周速/磁気ドラム周速比:1.2。
・転写条件(中間転写):中間転写体の磁気ドラムへの押圧力を0.147MPa(1.5kgf/cm2)に設定。
・転写定着条件:中間転写体に対する転写定着ローラの押圧力を0.245MPa(2.5kgf/cm2)に設定。
【0143】
以上の条件により、磁気ヘッド12により磁気ドラム10上に30μm/本の縞模様の磁気潜像(ハーフトーン相当)を形成し、これに前記現像ローラにより液体現像剤を接触させて現像を行った。そして、現像されたトナー像を中間転写体16に転写後、記録用紙に転写・定着して、画像を得た。得られた画像を観察して評価した。評価基準は顕微鏡にて定着像のライン幅を測定し、45μm以下であれば現像性が良好であるとした。
【0144】
−CIE1976(L*a*b*)表色系の評価−
得られた磁性トナーを、4.0g/m2で層状に形成し、これを熱定着(温度157℃)して、色サンプルを作製した。そして、この色サンプルを反射濃度計X−rite939(X−rite社製)を用いて測色し、CIE1976(L*a*b*)表色系を調べた。
【0145】
また、磁性粉を配合しない以外は上記同様に作製した磁性粉無しトナーを作製し、同様にして測色して、これとの色差△Eを下記式に基づき算出した。なお、磁性粉無しトナーのL*referenceは92.7、a*referenceは−8.7、b*referenceは113.5であった。
・ΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
・ΔL*=L*reference−L*sample
・Δa*=a*reference−a*sample
・Δb*=b*reference−b*sample
(ここで、L*sample、a*sample、b*sampleは磁性粉配合磁性トナーのCIE1976(L*a*b*)表色系を示す。)
【0146】
以上結果を表2に示す。
【0147】
【表2】
【0148】
なお、表2における磁性粉としてのYIG粒子の表面処理磁性粉の配合量は、YIG粒子の磁化とマグネタイトの磁化との比(YIG粒子磁化/マグネタイト磁化)に対して、マグネタイトの配合量(10cm2のフィルター、現像トナー量4.0g/m2、トナー全体対するマグネタイト重量比5重量%のケースでの配合量)を乗じて決定した値である。
【0149】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、磁性粉としてのYIG粒子の磁性特性の劣化が抑制されつつトナーの小径化が実現され、現像性も良好で、高画質な画像が形成されることがわかる。また、本実施例は、比較例に比べ、磁性粉としてのYIG粒子のトナーの色相への影響、特にイエロートナーの明度の低下が抑制されていることがわかる。
【0150】
[実施例B]
(磁性トナーの作製)
上記実施例Aにおいて作製した、磁性粉としてYIG粒子を配合した磁性トナーを準備した。
【0151】
(銀担持ゼオライトの作製)
A型ゼオライトの微粉末乾燥品を各250g採取し、各々に0.1M硝酸銀水溶液を加えて得られた混合物を室温にて3時間攪拌下に保持してイオン交換を行った。こうして得られた銀担持ゼオライトをろ過した後、水洗して過剰の銀イオンを除去した。次にこの水洗済み銀担持ゼオライトを100℃で乾燥した後粉砕し、平均一次粒径5μmの銀担持ゼオライトを作製した。
(実施例B1〜B4)
−実施例B1−
・磁性トナー:5部
・トリトン−X100(和光純薬製)溶液:1部
・銀担持ゼオライト:10部
・イオン交換水:89部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0152】
−実施例B2−
・磁性トナー:5部
・トリトン−X100(和光純薬製)溶液:1部
・銀担持ゼオライト:1部
・イオン交換水:89部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0153】
−実施例B3−
・磁性トナー:5部
・トリトン−X100(和光純薬製)溶液:1部
・銀担持ゼオライト:0.01部
・イオン交換水:89部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0154】
−実施例B4−
・磁性トナー:5部
・トリトンX溶液:1部
・銀担持ゼオライト: なし
・イオン交換水:96部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0155】
−カビ抵抗性の試験評価−
液体現像液のカビ抵抗性の試験を、東京硝子器械(株)製 ウォーターサンプラー(MT0010025:総生菌用)を用いて行った。調製した現像液にウォーターサンプラーを30秒浸して約1mlを吸収させた。ついで、35℃に設定したインキュベーターを用いて培養を行い、所定時間を経たサンプラー表面を観察した。具体的には1日後、10日後、20日後、30日後のサンプラー上に形成されたコロニーをカウントした。結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
上記結果から、銀担持ゼオライトを配合した実施例B1〜B3では、配合しない実施例B4に比べ、カビ抵抗性に優れることがわかる。また、所定量以上銀担持ゼオライトを配合した実施例B1、B2は、実施例B3に比べ、特にカビ抵抗性に優れることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例における現像領域の拡大模式図である。
【図3】実施例で作製したYIG粒子A1、A2、A3、比較YIG粒子A1、A2のX線回折プロファイルを示す図である。
【符号の説明】
【0159】
10 磁気ドラム(磁気潜像保持体)
12 磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)
13 規制部材
14 現像装置(現像剤供給手段)
15 攪拌部材
16 中間転写体
18 クリーナ
20 消磁装置(消磁手段)
22 磁気潜像
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写手段)
29 定着像
30 記録媒体
100 画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性トナー、液体現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一回の潜像形成で必要部数の印刷が可能な磁気印写装置が知られている。この磁気印写装置では、磁気記録媒体(磁気潜像保持体)に磁気的に形成された磁気潜像を保持させ、現像領域でその磁気記録媒体に磁性トナーを供給して磁気潜像をトナー像として顕像化し、転写領域で紙などの記録媒体を磁気記録媒体へ押し当て、顕像化されたトナー像を記録媒体へ転写し、更に転写後の記録媒体を定着領域に搬送して定着処理することにより印写を完成させる。この方式は、一般にマグネトグラフィと呼ばれている。
【0003】
上記においては、磁気記録媒体における磁化状態は半永久的に保たれるので、1回潜像形成すると、現像・転写のプロセスを繰り返すだけできわめて多数のコピーが得られる。また、マルチコピーを得るために潜像を記録し直す必要がないので、高速化への対応が可能である。さらに、磁気は静電気と違って環境に対して安定である上、解像度の高い画像を得ることもできる。
一方、磁気潜像は容易に磁気的に形成及び消去可能であり、刷版が不要なため、コストの低減化が実現される。
【0004】
マグネトグラフィに関しては、粉体の磁性トナーを利用したいわゆる乾式の画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。具体的なプロセスとしては、例えば磁性トナーは磁気記録媒体に対して離間位置に配置された供給ローラによって供給される。供給ローラは磁性トナー層をその周面上に保持し、磁性トナー層を磁気記録媒体へ接触させて、磁気記録媒体の磁気潜像へ磁性トナーを供給し、付着させる。
【0005】
一方、磁性トナーを液体中に分散させた液体現像剤を用いた画像形成装置(いわゆる液体マグネトグラフィ)も検討されている(例えば、特許文献3、4参照)。このプロセスにおいては、トナーが液体中に含まれるため、高画質化のためにトナー粒径を小さくしてもトナークラウド等の問題が発生することはない。
【0006】
また、磁性トナーをカラー化するために、希土類ガーネット、強磁性フェライト、イットリウム・鉄・ガーネット、カドニウム・ガリウム・テルル等の透明磁性体を用いる提案がなされている(例えば、特許文献5乃至8参照)。
【特許文献1】特開平6−4008号公報
【特許文献2】特開平9−156150号公報
【特許文献3】特公平5−87834号公報
【特許文献4】特開平5−188827号公報
【特許文献5】特開昭60−73549号公報
【特許文献6】特開昭60−73548号公報
【特許文献7】特開昭63−50856号公報
【特許文献8】特開平7−114205公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される磁性トナー、及びそれを用いた液体現像剤を提供することである。また、本発明の課題は、当該液体現像剤を用いたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下である磁性粉と、
前記磁性粉を内包する高分子化合物と、
を含むことを特徴とする磁性トナーである。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記磁性粉のCIE1976(L*a*b*)表色系における、
L*が65以上90以下
a*が−9以上15以下
b*が30以上110以下
であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナーである。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記磁性トナーの前記CIE1976(L*a*b*)表色系におけるL*が、80以上90以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁性トナー。
【0011】
請求項4に係る発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性トナーと、
前記磁性トナーを分散する水性媒体と、
を含むことを特徴とする液体現像剤である。
【0012】
請求項5に係る発明は、
磁気潜像保持体と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項6に係る発明は、
磁気潜像保持体と、
前記磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される。
請求項2に係る発明によれば、磁性粉のトナーの色相への影響が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、トナーの明度の低下が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、現像性に優れると共に、高画質化が実現される。また、オンデマンド印刷に対応することができ、高画質な画像を得ることができるだけでなく、環境にもやさしい。
請求項5に係る発明によれば、現像不良による画像欠陥が抑制されると共に、高画質化が実現される。
請求項6に係る発明によれば、現像不良による画像欠陥が抑制されると共に、高画質化が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(液体現像剤)
本実施形態に係る磁性トナーは、高分子化合物中に磁性粉を含む磁性重合体粒子である。そして、この磁性粉は、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下である。なお、磁性粉の本特性を、「X線回折特性」と称する場合がある。
【0016】
本実施形態に係る磁性トナーでは、上記構成とすることで、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される。この理由については定かではないが以下に示す理由によるものと考えられる。
【0017】
画像の高画質化のためには、磁性トナーを小径化する必要がある。一例として、磁性トナーの大きさを個数平均粒径で例えば0.5μm以上5μm程度に小径化するためには、トナーに配合される磁性粉の大きさも平均一次粒径で例えば2μm以下に小径化することが必要である。しかし、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなる磁性粉(以下YIG粒子と称することがある)は、例えば、小径化すると結晶化度が低減すると共に磁化が低減し、磁気特性が劣化することから、磁性トナーに磁力の付与ができ難くなる。
【0018】
ここで、YIG粒子において、粉末X線回折における「面指数(420)」とはYIGの粉末X線回折パターンにあらわれるいくつかのピークのうち最も強度の大きいものであり、このピークの半値幅が所定の値以下であるということは、その結晶化度の低減が抑制されていることを示す。したがって、YIG粒子が上記X線回折特性を満たすと、小径化しても磁性特性の劣化が抑制される。
【0019】
このため、本実施形態に係る磁性トナーでは、上記特性のYIG粒子を用いることで、磁気特性の低減を抑制しつつ、トナーの小径化が実現される。
【0020】
また、本実施形態に係る磁性トナーは、CIE1976(L*a*b*)表色系における、L*は、80以上90以下であること好ましい。
【0021】
これまで実験を積み重ねた結果、磁性粉としてのYIG粒子を小径化すると、茶色系の色を呈する粒子が得られ易く、これを磁性トナーに含ませると画像の色相に影響(特に、イエロートナーの明度が低減するといった影響)を与えることがわかった。すなわち、磁性粉のトナー色彩への影響が低い透明磁性体として知られるYIG粒子は、小径化されると、緑色から茶色と変化する傾向にあることがわかった。YIGが緑色であれば、カラートナー(例えばイエロー、シアン、マゼンタ)の色相には影響を与え難いものの、茶色ではカラートナーの色相への影響が生じ、特にイエロートナーの明度が低減されてしまう。
【0022】
これに対し、本実施形態に係る磁性トナーは、上記X線回折特性を満たしたYIG粒子を適用することで、所定のCIE1976(L*a*b*)表色系が満たされ(特に好適なL*が満たされ)、磁性粉のトナーの色相への影響が抑制された磁性トナーとなる。これは、上記X線回折特性を満たしたYIG粒子が、アモルファス化が低減された、言い換えれば結晶化度の低減が抑制されていることから、茶色までの変色が抑制された緑色のYIG粒子であるためと考えられる。
【0023】
なお、CIE1976(L*a*b*)表色系は、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間で、日本工業規格で「JIS Z 8729」に規定されたものである。以下、同様である。
【0024】
−磁性粉−
磁性粉としてのYIG粒子は、イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなる。そして、YIG粒子は、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下という特性を満たす。
【0025】
このピークの半値幅は、0.4deg以下であることが望ましく、より望ましくは0.38deg以下であり、さらに望ましくは、0.35deg以下である。このピークの半値幅が上記範囲とすることで、磁性トナーを小径化しても結晶化度の低減と共に磁化の低減が抑制される。なお、ピークの半値幅は、小さいほどシャープなピークとなり好適であるが、その下限値は測定限界値であり、例えば0.1degである。
【0026】
ここで、ピーク及びピークの半値幅を求めるための、YIG粒子の粉末X線回折パターンは次のように得る。X線回折装置(D8 DISCOVER:ブルカー・エイエックスエス(株)社製)を用い、Cuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射により測定する。この粉末X線回折パターンにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で2θ=32.3°付近に回折ピークを示すものが、YIGの面指数(420)にあたるピークであり、最大の強度を示す。このピークの半値幅を求めるために、バックグラウンドを2θ=30°から35°までをとって直線で近似した後、この直線からピーク極大までの高さを求め、その半分の高さでのピークの幅を計った。
【0027】
なお、ピークの半値幅は、あるピークの高さの半分の高さにおけるピーク幅をいい、この半値幅が小さくなるほど結晶性がよいといえる。
【0028】
YIG粒子の平均一次粒径は、0.02μm以上2.0μm以下の範囲であることが好ましく、より望ましくは0.05μm以上1.5μm以下であり、さらに望ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。このYIG粒子の平均一次粒径が上記範囲とすると、磁性トナーに必要とされる磁気特性をもたせることができる。
【0029】
なお、平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で100個を観察して測定した際の数平均径をいう。以下、同様である。
【0030】
YIG粒子の500Oeの磁場における磁化は、10emu/g以上であることが望ましく、より望ましくは15emu/g以上であり、さらに望ましくは20emu/g以上ある。この磁化が、上記範囲であると、磁性トナーの現像性が向上される。
【0031】
ここで、磁気特性の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10−15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大500Oe(エルステッド)まで掃引し、ついで、印加磁場を減少させ、ヒステリシスカーブを得る。このヒステリシスカーブより500Oe(エルステッド)における磁化を求める。
【0032】
YIG粒子は、CIE1976(L*a*b*)表色系における、L*が65以上90以下、a*が−9以上15以下、b*が30以上110以下を満たすことが好ましく、より好ましくはL*が68以上90以下、a*が−9以上13以下、b*が35以上110以下を満たし、さらに好ましくはL*が70以上90以下、a*が−9以上2以下、b*が60以上110以下を満たす。このCIE1976(L*a*b*)表色系をYIG粒子が満たすことで、茶色までの変色が抑制された緑色となる傾向となることから、トナーの色相への影響が抑制され、特にイエロートナーの明度の低減が抑制される。
【0033】
YIG粒子はその表面が疎水化処理されていてもよい。疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行うことができるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好ましい。
YIG粒子の表面は基本的に親水性であるため、疎水化処理を行うことにより高分子化合物の疎水性単量体に対する親和性が高められ、高分子化合物中での親水性単量体及び疎水性単量体の相溶性の向上に伴い、磁性粉の磁性トナー中での分散均一性が高められる。
【0034】
YIG粒子の含有量としては、磁性トナーに求める磁力によって決定されるのであるが、本実施形態においては、磁性トナー構成成分の総量に対して2質量%以上50質量%以下とすることが望ましく、より望ましくは4質量%以上30質量%以下である。含有量を上記範囲とすることにより、磁性トナーに十分な磁力が付与され、また磁性トナーとして分散媒体に対する分散安定性が高められる。
【0035】
次に、YIG粒子の製造方法につき説明する。YIG粒子の製造方法としては、共沈法などのボトムアップ的な手法で粒子を作製する方法や、粉砕法などのトップダウン的な手法で微粒子を作製する方法があげられる。また、YIG粒子は、X線回折特性を満たしていれば、後述する市販品を用いてもよい。
【0036】
但し、YIG粒子を、製造する際、上記X線回折特性を満たすためには、例えば、以下の手法を採用することが好ましい。
1)ボトムアップ的な手法及びトップダウン的な手法のいずれの場合においても、磁化低下の原因となるYIG粒子のアモルファス化を抑制し、結晶化を促進する目的で、後処理としてアニール処理を施す手法。このアニール処理の処理温度は、例えば700℃以上1500℃以下が望ましく、より望ましくは800℃以上1200℃以下が適当である。
2)トップダウン的な手法の場合、原料YIG粒子への力学的負担を低減し、YIG粒子のアモルファス化を抑制する目的で、湿式により実施する手法。この湿式に使用する液体としては、水、アルコール(例えばイソプロピルアルコール、エタノール等)アセトン、ヘキサン等挙げられる。また、この液体の使用量は、粒子2gに対して1g以上程度である。
【0037】
ボトムアップ的な手法に代表される共沈法は、共沈現象を利用した方法であり、単独では沈殿しない物質を沈殿する物質と共存させることで、同時に沈殿させるという方法である。具体的には、イットリウム金属塩水溶液と、三価の鉄塩水溶液との混合溶液を、アルカリ水溶液に混合させることよって共沈物を生じさせる。
【0038】
なお、アルカリ水溶液としては、例えば、NaOH水溶液が好適に挙げられる。アルカリ水溶液としては、例えば、NH4OH、(NH4)2CO3、Na2CO3、NaHCO3、等の水溶液も挙げられる。アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、共沈反応時のpHを考慮しつつ適宜設定すればよい。
イットリウム金属塩としては、例えば、ハロゲン化物[塩化物(YCl3)、臭化物(YBr3)]、硝酸塩[Y(NO3)3]、塩等が挙げられる。
三価の鉄塩としては、例えば、ハロゲン化物[塩化物(FeCl3)、臭化物(FeBr3)等]、硫酸塩[Fe2(SO3)3]、硝酸塩[Fe(NO3)3]等を挙げられる。
【0039】
また、アルカリ水溶液の中にイットリウム金属塩水溶液と前記三価の鉄塩の水溶液とを滴下させつつ共沈反応を進行させて共沈物を生成させて、YIG粒子を作製する際、例えば、得られるYIG粒子の平均一次粒径を、例えば1nm以上500nm以下とするには、上記共沈反応において、アルカリ水溶液への両金属塩水溶液の滴下速度は、10ml/分以上100ml/分以下にすることが好ましく、より好ましくは、20以上60ml/分以下である。
滴下中及び滴下後の攪拌時間は、10分以上60分以下程度とすることが好ましく、30分以上60分以下とすることがより好ましい。
共沈反応時の反応水溶液の最終的なpH値は、12以上、好ましくは12.5〜13.8、より好ましくは13〜13.5である。
共沈物を乾固する場合には、50℃以上200℃以下で加熱することが好ましく、100℃以上200℃以下で加熱することがより好ましい。
【0040】
一方、トップダウン的な手法に代表される粉砕は、各種粉砕機を用いて実施される。採用する粉砕法としては、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル、ディスクミルなどの粉砕法が挙げられる。これらの中でも、YIG粒子への力学的な負担が少ない、ビーズミル法、特に湿式のビーズミル法が好ましい。
【0041】
なお、粉砕する原料として用いるTIG粒子は、上記共沈法により得られるYIG粒子であってもよいし、市販品のYIG粒子であってもよい。例えば、市販品のYIG粒子としては、Yttrium Iron Oxide,nanopowder(アルドリッチ社製)、イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(高純度化学社製)等が挙げられる。
【0042】
−高分子化合物−
高分子化合物としては、従来から磁気記録装置に使用されている樹脂が挙げられる。具体的には、スチレン及びその置換体の単独重合体及びそれらの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系モノマーとの多元共重合体樹脂、スチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体樹脂、及び上記各樹脂の一部を架橋したものが挙げられる。更にはポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は指環族炭化水素樹脂、石油樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ワックス系樹脂等の単体又はこれらの混合体などが挙げられる。
【0043】
ここで、磁性トナーを水性媒体に均一、安定に分散させることは、高分子化合物が疎水性であること、磁性トナー表面が通常の高分子化合物粒子とは異なる特性を有していることから、通常の高分子化合物粒子の構成では容易になし得ない場合がある。
本実施形態では、上記観点から、特に以下のように重合体を構成する単量体種や組成を制御して得られた高分子化合物を用いることにより、磁性トナーの水性媒体に対する良好な分散性が得られより優れた現像性等が発揮される。以下、本実施形態に好適に用いられる高分子化合物の構成について説明する。
【0044】
高分子化合物としては、エチレン性不飽和単量体の重合体を含み、該エチレン性不飽和単量体が水酸基を有する単量体及び疎水性単量体を含み、かつ、重合体の水酸基量が0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であるものを用いることが望ましい。
【0045】
ここで、磁性トナー粒子として、一定以上の磁力を保持しつつ水性媒体中への良好な分散性を得るためには、粒子表面に水酸基を存在させることが有効である。そして、このためには粒子を構成する高分子化合物(重合体)の構成成分が水酸基を有していることが望ましい。
高分子化合物として好適に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合体は、水酸基を有する親水性単量体及び疎水性単量体の共重合比により、水性媒体における分散性と磁性トナーの安定性との視点、さらには、磁性トナーに一定量含まれる磁性粉の含有量との関係から、重合体の水酸基量を最適の範囲としている。
【0046】
水酸基量は、磁性粉の含有量によって異なるので、磁性粉を除いた重合体成分の水酸基量として定義されるものであり、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが望ましく、0.2mmol/g以上4.0mmol/g以下であることがより望ましく、0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下であることがさらに好適である。
水酸基量が0.1mmol/gに満たないと、磁性トナーの水性媒体への分散性が悪くなる場合がある。5.0mmol/gを超えると、水中での磁性トナーの膨潤性が大きくなり操作性が悪くなる場合がある。
【0047】
なお、上記水酸基量は、一般的な滴定法により求められる。例えば、上記ポリマーに無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を一定量加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求められる。
【0048】
エチレン性不飽和単量体とは、ビニル基などのエチレン性不飽和基を有する単量体をいう。そして、下記親水性単量体及び疎水性単量体ともに本実施形態におけるエチレン性不飽和単量体に含まれる。
水酸基を有する親水性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げられる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一つを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、重合反応の制御性等の観点から望ましい。
【0049】
また、重合体中には水酸基に加えてカルボキシル基を有していることが望ましい。この場合には、エチレン性不飽和単量体として、さらにカルボキシル基を有する単量体を用いることが望ましい。
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエート及びメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどを挙げられる。
これらの中では、メタクリロイルオキシエチルモノフタレートを用いることが、後述する疎水性単量体との共重合比のコントロール、磁性トナー中の磁性粉の分散、重合反応の制御性等の観点から望ましい。
【0050】
疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;炭素数1〜18(より好適には、2〜16)のアルキル基若しくはアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等);炭素数1〜12(より好適には、2〜10)のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エキトシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アリクレート、n−ブトキシメチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等);アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等);アクリロニトリル、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどを挙げられる。
【0051】
これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが望ましく、更には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に望ましい。
【0052】
親水性単量体と共重合可能な疎水性単量体の含有量としては、全単量体成分中、1質量%以上99質量%以下であることが望ましく、5質量%以上95質量%以下であるこことがより望ましい。特に、エチレン性不飽和単量体として前記水酸基を有する単量体に加えてメタクリロオキシエチルモノフタレートなどのカルボキシル基を有する単量体を用いる場合には、疎水性単量体の含有量は、全単量体成分中、20質量%以上99質量%以下であることが望ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好適である。
【0053】
含有量が1質量%未満では、重合体中の水酸基量が多くなりすぎ、重合体の作製の際に均一な重合ができなくなる場合があり、99質量%を超えると、重合体として水酸基による親水性の効果が得られなくなる場合がある。
【0054】
その他の単量体としては、後述する水性媒体に分散される反応性の混合物(前記エチレン性不飽和単量体等を含むもの)には、必要に応じて架橋剤を混合してもよい。単量体混合液中に架橋剤を添加することにより、重合中の凝集が抑制され、分散安定性が確保される。
架橋剤としては、公知の架橋剤を選択して用いることができ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。
【0055】
さらに、高分子化合物には定着性向上の観点から非架橋樹脂を含有させてもよい。非架橋樹脂としては、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。
具体的には、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体又は共重合体が例示される。
【0056】
−その他の成分−
磁性トナーには、更に着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどを含有してもよい。その場合には磁性粉が分散された前記単量体等の混合物に前記各添加剤を直接混合してもよいが、例えば、特に有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料を混合する場合は、例えば前記非架橋樹脂にあらかじめロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の公知の方法で混合分散し、これを前記重合性単量体等の混合物に混合することが望ましい。
【0057】
−磁性トナーの作製方法−
以上の各単量体等を含む磁性トナーの作製方法としては、例えば、まずエチレン性不飽和単量体、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
また、上記混合液への磁性粉の分散には公知の方法が適用される。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性粉を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用される。
【0058】
磁性トナーを得るには、公知の方法が利用でき、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法等が好適に用いられる。さらに、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁重合してもよい。
このようにして得られた磁性トナーは、個数平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることが望ましく、より望ましくは0.5μm以上8.0μm以下であり、0.5μm以上5.0μm以下である。個数平均粒径が0.5μmに満たないと、小粒径過ぎて取り扱いが困難になる場合があり、5μmを超えると、画像形成材料として用いたときに高画質が得られない場合がある。個数平均粒径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた個数平均粒径である。
【0059】
また、高分子化合物がカルボキシル基を有する場合には、カルボキシル基量が0.005mmol/g以上0.5mmol/g以下であることが望ましい。カルボキシル基量が前記範囲にあると、水酸基に比べて少ない官能基数であっても良好な水性媒体への分散性、膨潤抑制効果が得られ、他の官能基が存在する場合の変動に対してもこれらの特性が維持される。
カルボキシル基量は、0.008mmol/g以上0.3mmol/g以下がより望ましく、0.01mmol/g以上0.1mmol/g以下であることがさらに好適である。
【0060】
上記カルボキシル基量は一般的な滴定法により求められる。例えば、上記高分子化合物に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求められる。
【0061】
(液体現像剤)
本実施形態に係る液体現像剤は、上記本実施形態に係る磁性トナーと、磁性トナーを分散する水性媒体と、を含む。つまり、本実施形態に係る液体現像剤は、磁性トナーを水性媒体中に分散させた粒子分散体である。
【0062】
水分散体における磁性トナーの濃度は0.5質量%以上40質量%以下の範囲とすることが望ましく、1質量%以上20質量%以下の範囲とすることがより好適である。
【0063】
水性媒体とは、水を50質量%以上含む溶媒を意味する。また、「水」とは、蒸留水、イオン交換水、超純水等、精製した水を意味する。また、水性媒体としては、水、若しくは水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を加えたものが好適に用いられる。この中でも水単独が特に望ましい。水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、懸濁させる単量体の性状にもよるが、全溶媒に対し30質量%以下が望ましく、10質量%以下がより好適である。
【0064】
水性媒体には、通常の水系の粒子分散体に使用する各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
【0065】
具体的に、例えば、磁性重合粒子の分散安定性を維持するための界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等、いずれの公知の界面活性剤も使用可能である。
【0066】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、前述のほか、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント;等も挙げられる。
【0068】
また、分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体であれば有効に用いることができる。例えば、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられ、これら共重合体は、ランダム、ブロック及びグラフト共重合体等いずれの構造でもあってもよい。
また、これらの重合体は、分散性や水溶性等を向上させるために、ポリオキシエチレン基、水酸基を有するモノマー、カチオン性の官能基を有するモノマーを共重合したり、親水基が酸性基である重合体においては塩基性の化合物との塩構造であっても良い。
本実施形態において、蒸発性制御や界面特性制御の目的で、水溶性有機溶媒の使用が可能である。水溶性有機溶媒としては、水に添加したときに2相に分離しない有機溶剤であって、例えば一価もしくは多価のアルコール類、含窒素溶媒、含硫黄溶媒、その他その誘導体等が挙げられる。
【0069】
具体的には、多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等、多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等、一価のアルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等、含窒素溶媒としてはピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等、硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等、その他炭酸プロピレン、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0070】
水性媒体には、導電率、インクのpHの調整等を目的として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等の添加が可能である。
また、その他に、必要に応じて、防カビ、防腐、防錆等を目的として安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸等を添加することができる。また、酸化防止剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、キレート化剤等も添加することができる。
【0071】
特に、本実施形態では、防カビ剤として、金属イオン(例えば銀、銅、亜鉛等)をイオン交換性を持つ無機物(例えばゼオライト等)に担持させた粒子を用いることが好適である。このような防カビ剤としての粒子として好適には銀担持ゼオライトが挙げられる。この銀担持ゼオライトは、他種に比べ防カビ能が高いと共に、磁化されないので、現像されずに液体現像剤中に留まることから、形成される画像へ影響がない。
【0072】
ここで、銀担持ゼオライトは、平均一次粒径が0.1μm以上50μm以下のものが好適である。すなわち、平均一次粒径が0.1μm未満の粉末を形成することは技術的に容易でなく、逆に平均一次粒径が50μmを超えると現像液中で沈降しやすく、分散安定性が悪くなる傾向がみられるからである。そして、中でも銀担持ゼオライトは、平均一次粒径が0.5μm以上10μm以下のものが特に現像液中での分散性において好適である。
【0073】
銀担持ゼオライトの含有量は、要求される防カビ(抗菌)の程度等にもよるが、液体現像剤全体に対し、0.05重量%以上30重量%以下程度に設定されることが好適である。すなわち、含有量が0.05重量%未満では抗菌効果が低く、逆に30重量%を超えると現像液の粘度が上がり、現像性が低下するおそれがあるからである。
【0074】
銀担持ゼオライトは、例えば特開昭60−202162号公報に準じて作製したものを用いることもできるし、市販品(例えば富士ケミカル(株)製 抗菌剤バクテキラー BM−101(粒径5μm))を用いてもよい。
【0075】
液体現像剤における磁性トナーの分散粒径は、0.1μm以上20μm以下とすることが望ましく、0.5μm以上8μm以下の範囲とすることが望ましく、0.5μm以上5.0μm以下の範囲とすることがより望ましい。なお、上記磁性トナーの分散平均粒径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた個数平均粒径である。
【0076】
なお、液体現像剤中の磁性トナーとして、前記本実施形態に好適に設計された磁性トナーを用いた場合には、前述のように粒子中で磁性粉が均一に分散しているため、粒子表面にほとんど磁性粉が存在しない。また、粒子表面に水酸基を有するため、水性媒体に対して良好な分散性を示す。
このため、上記液体現像剤を用いた場合には、液中でのミクロな表面張力のばらつきがなく、しかも現像時の磁気力に対する粒子の移動性も粒子間でばらつきが小さいため、前述の磁気ドラム表面の撥水特性に基づく現像後の磁気ドラム上への液体の付着や、画像かぶりの発生が、より効率的に低減される。
【0077】
前記液体現像剤の製造は、以下の手順により行われるが、これに限られるものではない。
まず、主溶媒の水と前記各添加剤とを含む分散媒をマグネチックスターラー等を用いて調製し、これに前記磁性トナーを分散させる。分散には公知の方法が適用される。すなわち、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。また、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散する方法、超音波によって分散する方法等が挙げられる。
【0078】
液中で磁性トナー同士が単独の分散状態になったことを分取した分散液の顕微鏡観察等により確認し、その後、防腐剤等の添加物を加えて溶解していることを確認した後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去することにより画像形成用記録液としての液体現像剤が得られる。
【0079】
液体現像剤の粘度は、用いる画像形成システムにもよるが、1mPa・s以上500mPa・s以下が望ましい。液体現像剤の粘度が1mPa・s未満の場合、磁性トナーの量や添加剤の量が十分でないことから十分な画像の濃度が得られない場合がある。また、液体現像剤の粘度が500mPa・sより大きいと、粘度が高すぎるためハンドリングが難しくなったり、現像性が低下したりする場合がある。
【0080】
[画像形成装置]
以下、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、プロセスカートリッジについては、下記の画像形成装置の実施形態において併せて説明する。
【0081】
本実施形態の画像形成装置は、磁気潜像保持体(以下、「像保持体」という場合がある)と、該磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、磁性トナー及び水性媒体を含む液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、を有する。そして、液体現像剤として、上記本実施形態に係る液体現像剤を適用する。
【0082】
ここで、液体現像剤を用いたいわゆる液体マグネトグラフィでは、通常、現像直後の像保持体上のトナー像は、多量の余剰現像液を含むことから、用紙等の記録媒体へのトナー画像の転写の前に乾燥工程を設けて、余剰現像液を除去しなければならない場合がある。
【0083】
そこで、像保持体としては、表面が撥水性を有する像保持体を適用することが望ましい。液体現像剤における分散媒として水性媒体を用いると、水が水素結合により表面張力が大きいため、表面が撥水性を有する像保持体と組み合わせることで、現像の際に液体現像剤が像保持体と接触しても分散媒である液体が像保持体に転移しにくく、液体を像保持体上に残さない状態でトナー像を記録媒体に転写される。したがって、像保持体上の残留溶媒を除去するためのスクイズローラ等が不要であり、トナー像が転写された記録媒体もほとんど乾燥させる必要がない。
【0084】
さらに、現像の際には表面張力の大きい水性媒体は像保持体表面に濡れ広がることが抑制され、一方現像剤中に高い易動性を有して均一に分散している磁性トナーは、像保持体との接触と同時に磁気潜像のみに磁気力で転移するため、画像かぶりがほとんど発生しにくい現像環境をつくり出される。
【0085】
したがって、オフィスなどの使用環境に適応させつつ、現像後に磁気潜像保持体上の残留液体の影響を抑え、画像かぶりなどの発生を低減させた高画質な画像を安定して形成される。
【0086】
本実施形態に適用される画像形成プロセスは、いわゆる電子写真プロセスや、誘電体上にイオンなどで静電潜像を形成するプロセス(イオノグラフィ)、帯電した誘電体にサーマルヘッドの熱により画像情報に応じて静電潜像を形成するプロセスなど、静電潜像を利用するものではなく、像保持体上に磁気潜像を形成してトナー像を形成するプロセスである。
【0087】
以下、本実施形態における、液体現像剤を用いた磁気現像プロセスによる画像形成装置を図面を参照しつつ説明する。
【0088】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、磁気ドラム(磁気潜像保持体)10、磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)12、現像装置(現像剤貯留手段及び現像剤供給手段)14、中間転写体(転写手段)16、クリーナ18、消磁装置(消磁手段)20、転写定着ローラ(転写手段)28を含んで構成される。磁気ドラム10は円柱形状を有し、該磁気ドラム10の外周に磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18及び消磁装置20が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0089】
まず、磁気ヘッド12が、例えば図示しない情報機器と接続され、該情報機器から送られた2値化された画像データを受ける。磁気ヘッド12は、磁気ドラム10の側面上を走査しながら磁力線を放出することによって、磁気ドラム10に磁気潜像22を形成する。なお、図1では磁気潜像22は磁気ドラム10における斜線を付した部分で示される。
現像装置14は、現像ローラ(現像剤供給手段)14aと現像剤貯蔵容器(現像剤貯留手段)14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤貯蔵容器14bに貯蔵される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。
【0090】
液体現像剤24中では、トナー粒子は均一に分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材によって所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子の濃度の位置ばらつきは低減される。これにより図の矢印A方向に回転する現像ローラ14aには、トナー粒子の濃度バラツキが低減された液体現像剤24が供給される。
【0091】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、後述する規制部材によって一定の供給量に制限された状態で磁気ドラム10に搬送され、現像ローラ14aと磁気ドラム10とが近接(あるいは接触)する位置で磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されてトナー像26となる。
【0092】
上記現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する磁気ドラム10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、磁気ドラム10からのトナー像の剥離効率を含めた記録媒体への転写効率を向上させ、さらに記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。
中間転写体16への転写は、トナー粒子が電荷をほとんど有していないため、シアリング転写(非電界転写)により行うことが好適である。具体的には、矢印B方向に回転する磁気ドラム10と矢印C方向に回転する中間転写体16とを一定のニップ(移動方向の接触幅を有する接触面)を持って接触させ、トナー像26に対して磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させる。このとき、磁気ドラム10及び中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0093】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写され、同時に定着される。
転写定着ローラ28は、中間転写体16とによって用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写し、同時に用紙上にトナー像を定着される。トナー像の定着は、トナーの特性により加圧によってのみ行ってもよいし。転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧及び加熱により行ってもよい。
【0094】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した磁気ドラム10では、転写残トナーがクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。クリーニング後、磁気潜像22を保持したまま磁気ドラム10は消磁位置まで回転移動する。
消磁装置20は、磁気ドラム10に形成された磁気潜像22を消去する。前記クリーナ18と消磁装置20とによって磁気ドラム10は画像形成前の磁性層の帯磁状態にばらつきがない状態に戻される。以上の動作を繰返すことによって、前記情報機器から次々に送られてくる画像を連続的に短時間で形成する。なお、上記画像形成装置100に備えられる磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、クリーナ18及び消磁装置20は、すべて磁気ドラム10の回転速度と同期をとって動作されている。
【0095】
次に、本実施形態の画像形成装置の各構成を順次説明する。
(磁気潜像保持体)
磁気ドラム(磁気潜像保持体)10の構成は、例えばアルミニウムなどの金属でできたドラム上に、Ni、Ni−Pなどの下地層をおよそ1〜30μmの厚さで形成し、この上にCo−Ni、Co−P、Co−Ni−P、Co−Zn−P、Co−Ni−Zn−Pなどの磁気記録層を0.1μm以上10μm以下程度の厚さで形成し、更にNi、Ni−Pなどの保護層を0.1μm以上5μm以下程度の厚さで形成する。下地層のメッキにピンホールなどの欠陥があると、磁気記録層にも欠陥ができてしまうので細密でむらのないメッキを行うことが好適である。メッキ以外にも、スパッタや蒸着などの方法もある。更に、下地層及び保護層については、非磁性であることが望ましい。各層の表面はテープ研磨などで表面精度を保つことが、磁気潜像を形成する磁気ヘッド12との間隙が精度良く維持する上で好適である。
【0096】
磁気記録層の膜厚は0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが望ましく、磁気記録層の磁気特性は、保磁力が16000A/m以上80000A/m以下(200エルステッド以上1000エルステッド(Oe)以下)程度、残留磁束密度を100mT以上200mT以下(1000ガウス以上2000ガウス(G)以下)程度とすることが好適である。
以上は、水平磁気記録式の場合の磁気ドラム10の構成であるが、垂直磁気記録式の場合には、非磁性層の上にCo−Ni−Pなどの記録層を設けた構成としたり、該記録層の下に透磁率の高い軟磁性層を設けた構成としてもよく、いずれかに限定されるものではない。また磁気潜像保持体としては、本実施形態におけるドラム状のものに限られず、ベルト状に形成されたものでもよい。
【0097】
本実施形態では、撥水性を有する磁気ドラム10を用いる。ここで撥水性とは水をはじく性質のことを意味し、具体的には純水との接触角が70度以上であることをいう。
また、本実施形態では磁気ドラム10の純水に対する接触角が、70度以上であることが望ましく、100度以上であることがより望ましい。接触角が70度に満たないと、後述する水性媒体を使用した液体現像剤により現像を行っても、現像後に磁気ドラム上に液体が残存したり画像かぶりが発生する場合がある。
【0098】
なお、上記磁気ドラム10表面の接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を磁気ドラムの表面に3.1μl滴下し、15秒後の接触角を求めた。なお、測定は端部、中央部で周方向に4点測定し、これらの平均値を接触角とした。
【0099】
磁気ドラム10の表面を上記好適な接触角を有する表面とするには、前記のようにして構成される磁気ドラム表面に表面コートを行うことが望ましい。
上記表面コートとしては、フッ素潤滑めっき、フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを用いたコーティング等が挙げられる。フッ素潤滑メッキとは、無電解ニッケルめっきにフッ素樹脂(ポリ四弗化エチレン:PTFE)を複合・共析させた機能めっきであり、形成される皮膜中にはPTFE粒子が均一に析出しており無電解ニッケルめっきとPTFE樹脂の両特性を兼ね備える。
また、前記フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを使用したコーティングとしては、例えば、含フッ素環状構造を有するポリマー、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの共重合体、光重合型フッ素樹脂組成物等を前記保護層表面に塗布してもよいし、該保護層表面にフッ素原子含有ポリマーをスパッタリングし全面を被覆してもよい。
【0100】
これらのうちでは、下層のめっき層との密着性や耐久性等の観点から、フッ素潤滑めっきが好適である。なお、上記フッ素潤滑めっきやフッ素樹脂コーティングは、前記保護層を形成した上に行ってもよいし、フッ素潤滑めっき等により形成した層をそのまま保護層としてもよい。
表面コートにより形成される表面層の膜厚は0.1μm以上5μm以下とすることが望ましく、0.3μm以上3μm以下とすることがより望ましい。
【0101】
(磁気潜像形成手段)
磁気潜像形成装置(磁気潜像形成手段)は、基本的には磁気ヘッド12とその駆動回路から成る。磁気ヘッド12には、おもにフルライン型磁気ヘッドとマルチチャンネル型磁気ヘッドがあり、フルライン型磁気ヘッドの場合には磁気ヘッド12を走査する必要はないが、マルチチャンネル型磁気ヘッドの場合には磁気ドラム10に対して磁気ヘッド12を走査する必要がある。走査の方法にはシリアル走査とヘリカル走査とがあり、ヘリカル走査の方は潜像形成工程だけ特別に磁気ドラム10の回転速度を変更してやれば記録速度が速くすることが可能である。
【0102】
一方、フルライン型磁気ヘッドの場合としては、例えば解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)とするとA4サイズの紙の幅方向の記録幅をカバーするためには500チャネル程度のヘッドが必要である。それらを並べてフルライン化すればヘッドを走査する必要がなく極めて高速な記録が可能になる。また上記フルライン化するためには、ヘッドコアとヘッドコアとの重ね合わせが必要になるが、高解像度になるにしたがいトラックピッチも狭くなるためヘッドコアに挿入されるコイルも可能な限り薄いもの、例えば平面状のシートコイルが用いられる。
【0103】
磁気ヘッド12の各チャンネルのコイルに電流を流すことにより磁極先端部から漏洩磁束が生じ、これにより磁気記録媒体を磁化することによって磁気潜像を形成する。磁気ヘッド12からの出力は、磁気ドラム10における磁気記録層の保磁力の2〜3倍必要である。ここで形成した磁気潜像は消磁装置20で消去しない限り消えることはなく、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返せばマルチコピー機能を有する。また、磁気潜像は湿度の影響を受けにくいため、静電式に比べ環境安定性に優れている。
【0104】
(現像剤貯留手段、現像剤供給手段)
図2に、図1における現像領域を拡大した模式図を示す。
現像装置(現像剤供給手段)14は、現像剤貯蔵容器14bと、現像剤貯蔵容器14b内に貯留された液体現像剤24をトナー供給領域(以下、「供給領域」という場合がある)において磁気ドラム10へ供給する現像ローラ14aとを具備する。図2に示すように、現像ローラ14aはその周面上に層状の液体現像剤24を保持し、磁気ドラム10に対し離間位置に配置されている(例えば、この磁気ドラム及び現像装置によりプロセスカートリッジが構成される)。また供給領域の上流位置に液体現像剤24の層厚を所定の厚さに維持する規制部材13が配置されている。規制部材13は現像ローラ14aの軸線方向へ全幅にわたって延びる板状の部材であり、その一縁部が所望のトナー層厚に対応した所定距離だけ現像ローラ14aの周面から離間するよう配置されている。
【0105】
現像装置14では、トナー粒子26aと水性媒体とを含む液体現像剤24が現像剤貯蔵容器14bに貯留されている。液体現像剤24は、現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材15によって所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子26aの濃度の位置ばらつきが低減される。したがって現像ローラ14aには、トナー粒子濃度のバラツキが低減された液体現像剤24が供給される。
なお、図2には示してないが、上記液体現像剤の現像ローラ14aへの供給のために、現像ローラ14aに接触あるいは近接して回転する供給ローラを具備してもよい。
【0106】
現像ローラ14aは、例えばその内部にS極の磁極とN極の磁極とを含む複数の磁極を周方向へ備え、これら磁極は現像ローラ14aと共に回転しないよう固定されている。これら磁極の一つは特に規制部材13及び前記供給領域間に配設されている。したがって、現像ローラ14aに保持された磁性トナーを含む液体現像剤24は、これらの磁極の磁力線(現像磁場)によって保持され磁気ドラム10方向へ搬送される。
なお、現像ローラ14aとしては、ローラ表面そのものに液体現像剤の搬送力があれば、磁性ローラである必要はなく、例えばアニロックスローラやスポンジローラなども使用してもよい。
【0107】
規制部材13は、前記のように現像ローラ14aが現像剤貯蔵容器14bの液体現像剤24を保持してから、磁気ドラム10に供給するまでの位置に設けられる。規制部材13と現像ローラ14aとによって形成される間隙で磁気潜像22に供給される液体現像剤24の量が決定される。材質としては、ゴムやりん青銅などが好適である。規制部材13によって一定の供給量に制限された液体現像剤24が磁気ドラム10に搬送され、磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されトナー像26となる。
【0108】
また前記現像に際しては、トナー粒子が磁性トナーであるため、現像ローラ14aに磁場を印加しなくても現像を行うことは可能であるが、より効率的な現像を行うために現像ローラ14aに磁場を印加してもよい。
【0109】
(転写手段、定着手段)
現像装置14で顕像化されたトナー像は、転写手段によって用紙30に転写される。前述のように、本実施形態では磁気ドラム10から直接用紙上にトナー像を転写するのではなく、中間転写体16に一旦転写した後、用紙30に転写定着する方式を用いている。まず、中間転写体16への転写について説明する。
【0110】
中間転写体16は、磁気ドラム10に接触してトナー像を転写する。転写方式としては、一般に静電転写方式、圧力転写方式、これらを併用した静電圧力方式などがあるが、前記のように、本実施形態ではトナー粒子が電荷を有していないため、静電転写方式や静電圧力方式は使用できない。一方、前記圧力転写方式は、通常は磁気ドラム10及び転写媒体間の圧力により、トナー像を塑性変形させながら転写媒体の表面に付着させ転写するものであり、シアリング転写と併用してもよい。
【0111】
本実施形態では、前記のように磁気ドラム10上のトナー像26に対して、磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させるため、中間転写体16に粘着性を持たせて粘着転写を行うことが好適である。このため、中間転写体16の表面には例えば低硬度シリコーンゴム層を形成することが望ましい。
【0112】
次いで、中間転写体16に転写されたトナー像26は用紙に転写される。
図1における中間転写体16を挟んで磁気ドラム10の反対側には、転写定着ローラ28が中間転写体16に対してニップ形成するように配置されており、中間転写体16上のトナー像26にタイミングを合わせて、用紙30が中間転写体16及び転写定着ローラ28間のニップへ送給される。転写定着ローラ28は、例えば、ステンレス基体、シリコーンゴム層、フッ素ゴム層により構成されており、ニップを通過する用紙30を中間転写体16に押圧することにより、中間転写体16上のトナー像が用紙30に転写される。
【0113】
本実施形態では、上記中間転写体16から用紙30にトナー像26が転写されると同時に、該トナー像26が用紙30に定着される構成となっている。具体的には、中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16、転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ、押圧ローラに準じた構成となって定着機能を発揮される。すなわち、用紙30が前記ニップを通過する際、トナー像が転写されると同時に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して押圧され、これにより、トナー像を構成するトナー粒子が軟化すると共に用紙30の繊維中に浸潤する。
【0114】
この状態でも、用いるトナー粒子によっては用紙30への固定が可能であるが、定着が十分でない場合には、転写定着ローラ28等により加熱することでトナー像は溶融し用紙30の繊維の中まで入り込み固着して定着像29となる。この状態では、用紙30を折り曲げたり、粘着テープを貼った後剥しても定着像29が剥がれることはない。
【0115】
なお、本実施形態では用紙30への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。この場合には、磁気ドラム10からトナー像を転写する転写ローラが、前記中間転写体16に準じた機能を有することとなる。
【0116】
(クリーナ)
一方、前記磁気ドラム10から中間転写体16へのトナー像の転写効率が100%に至らない場合には、転写後の磁気ドラム10上にトナー像26の一部分が残留することになる。これを除去するのがクリーナ18であり、基本的に、ゴムなどのクリーニングブレードと残留磁性トナーの容器とから構成される。
なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
【0117】
(消磁手段)
再度新しい画像形成を行なう場合には、磁気ヘッド12で磁気潜像を形成する前に磁気潜像を消去する必要がある。消磁装置20には、永久磁石式と電磁石式との2通りがある。永久磁石式の場合には、磁気ドラム10の円周方向に磁化して局所的に磁束が漏洩しないようにするもので、電力等のエネルギーが不要で安価である。ただし、磁気潜像を消去しない場合には、消磁装置20を磁気ドラム10に対して移動させ磁気的な距離を大きくして消去磁界を弱くする必要がある。これに対して電磁石式は、ヨークとコイルとから成り電流を流す必要があるが、磁気潜像を消去する必要がない場合には電流を切ることにより消去磁界がゼロになるため制御が比較的自由である。
本実施形態では、前記永久磁石式及び電磁石式のいずれも用いてもよい。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0119】
[実施例A]
(YIG粒子の作製)
−YIG粒子A1−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12を準備した。このYIG粒子のSEM観察行った結果、YIG粒子の平均一次粒径は2.0μmであった。
【0120】
−YIG粒子A2−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)2gをイソプロピルアルコール2mlと共に遊星ボールミル(1mmφジルコニウムビーズ 57g)に入れ、43時間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIGの平均一次粒径は0.32μmであった。
【0121】
−YIG粒子A3−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)400g及び水2リットルをフロー式ビーズミル(アシザワファインテック製:スターミルLMZ06)に入れ30分間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIGの平均一次粒径は0.24μmであった。
【0122】
−比較YIG粒子A1−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)2gを遊星ボールミル(1mmφジルコニウムビーズ 57g)に入れ、48時間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIG粒子の平均一次粒径は0.40μmであった。
【0123】
−比較YIG粒子A2−
YIG粒子として、高純度化学製 イットリウム・鉄・ガーネットY3Fe5O12(平均一次粒径2.0μm)2gをイソプロピルアルコールと共に遊星ボールミル(1mmφジルコニウムビーズ57g)に入れ、62時間粉砕を行った。TEM観察を行った結果、粉砕処理したYIG粒子の平均一次粒径は0.36μmであった。
【0124】
(YIG粒子の評価)
−X線回折プロファイル−
各YIG粒子のX線回折プロファイルを調べ、面指数(420)のピークの半値幅を調べた。X線回折の方法は上記の通りである。
なお、図3にYIG粒子A1、A2、A3及び比較YIG粒子A1、A2のX線回折プロファイルを示す。図3に示すX線回折プロファイルに示すように、YIG粒子A1、A2、A3については、YIGのガーネット構造に帰属されるパターンが観察されるが、比較例1のYIG微粒子にはピークが観察されず、比較例A2の各ピークはブロードなものであった。これは、比較YIG粒子A1、A2の結晶性が乱れていることを示している。
【0125】
−磁化−
各YIG粒子について、500Oeにおける磁化(emu/g)について測定した。測定方法は上記の通りである。
【0126】
−CIE1976(L*a*b*)表色系−
各YIG粒子 50部とラテックス粒子(スチレン−アクリル(St−Ac)粒子:重量平均分子量Mw=15000、平均一次粒径0.2μm)50部とを混合し、フィルタリングを行った混合物を、この混合物を4.0g/m2で層状に形成し、これを熱定着して、色サンプルを作製した。そして、この色サンプルを反射濃度計X−rite939(X−rite社製)を用いて測色し、CIE1976(L*a*b*)表色系を調べた。
【0127】
以上の結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
(実施例A1〜A3、比較例A1〜A3)
磁性粉として上記得られた各YIG粒子を用いて、以下のようにして磁性トナー、及び液体現像剤を作製した。これらを実施例A1〜A3、比較例A1〜A2とした。
また、磁性粉としてマグネタイト(商品名:戸田工業製MTS−010、500Oeにおける磁化42.2emu/g、平均一次粒径0.2μm)を用いて、磁性トナー、及び液体現像剤を作製し、これを比較例A3とした。
【0130】
−磁性トナーの作製−
まず、各YIG粒子またはマグネタイト粒子600部に、スチレンアクリル樹脂(エスレックP−SE−0020、積水化学(株)製)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された表面処理磁性粉(磁性粉含有率:60%)6種類を得た。
【0131】
(実施例A1を用いた磁性トナーの作製)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)17部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)57部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、これに前記YIG粒子A1の表面処理磁性粉を33部加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0132】
塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、ルミナス)30部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。
この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化した。
【0133】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は良好な分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。
反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で洗浄後、500mlのエタノール中に30分間超音波分散と遠心分離を3回繰り返して洗浄を行い、磁性トナーを得た。
【0134】
この磁性トナーを60℃のオーブンで乾燥した後、孔径10μmのメッシュを通して粗大粒子を分離した後、個数平均粒径を測定したところ、5.0μmであった。
【0135】
(実施例A2〜比較例A3を用いた磁性トナーの作製)
YIG粒子A2、YIG粒子A3、比較例A1、比較例A2、比較例A3(マグネタイト)を用いた磁性トナーは、上記磁性粉分散液(上記実施例A1を用いた磁性トナーの作製における磁性粉分散液)における表面処理磁性粉量をそれぞれ、47部、40部、85部,60部,40部を加えた以外は上記と同じ方法で作製した。
作製したそれぞれのトナー径は、4.7μm(実施例A2)、3.9μm(実施例A3)、4.7μm(比較例A1)、4.4μm、(比較例A2)、3.6μm(比較例A3)であった。
【0136】
−液体現像剤の作製−
ポリビニルアルコール(PVA、クラレ(株)製、クラレポバール217、重合度:1700、けん化度:88モル%)5部を冷却したイオン交換水95部に加え、マグネチックスターラーで攪拌しながら分散した後、さらにウォーターバスで70℃に加熱ながら3時間攪拌溶解して、PVA水溶液(5%溶液)を調製した。
【0137】
・磁性トナー:5部
・PVA水溶液:10部
・ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(和光純薬(株)製):0.5部
・イオン交換水:84.5部
以上の成分を混合し、ボールミルで3時間分散し、前記磁性トナーを磁性トナーとした液体現像剤とした。この液体現像剤を0.1ml採取し、測定液アイソトン(ベックマン・コールター(株)製)100mlに分散し、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株)製)を用いて体積平均粒径(分散平均粒径)を測定したところ、3.0μmであった。
【0138】
−現像性の評価−
図1に示した構成の画像形成装置100を用意し、現像剤として前記液体現像剤を用いた。
磁気ドラム10としては、アルミドラム上に、下地層としてNi−Pを膜厚15μm、磁気記録層としてCo−Ni−Pを膜厚0.8μmとなるようにめっきし、さらにその表面に、Ni−P−PTFE粒子によるフッ素潤滑めっきを行い膜厚1.5μmの保護層を形成した。なお、前記磁気記録層の保持力は400Oe、残留磁束密度は7000Gであった。
この磁気ドラム10表面に対する、25℃、50%RHにおける純水の接触角は110度であった。
【0139】
磁気ヘッド12としては、Mn−Znフェライトからなる600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)相当の画素を形成する4チャネルのフルライン型磁気ヘッドを用意した。
【0140】
現像装置14としては、現像ローラ14aとしてアルミニウム製の非磁性スリーブ中に円筒状の永久磁石が同心円状に配置されたマグネットロールを備え、現像剤貯蔵容器14bに内部で液体現像剤を攪拌する攪拌羽とを設けた現像装置14を用いた。この現像剤貯蔵容器14bに前記液体現像剤を投入し、非磁性スリーブ表面と磁気ドラム10表面とのギャップが50μmとなるように現像装置14を配置した。
【0141】
中間転写体16としては、表面に厚さが7.5mmのシリコーンゴム層を有し、磁気ドラム10と同一周速で回転するアルミニウム製の中間転写ドラムを用いた。また、転写定着ローラ28としては、ステンレス製の芯材の外周にシリコーンゴム層、フッ素ゴム層をこの順に被覆してなる弾性ロールを用い、さらにこの弾性ロールは発熱体により表面温度が170℃となるように加熱する構成とした。
【0142】
以上の構成の画像形成装置100により印字条件を下記のように設定した。
・磁気ドラム線速:100mm/秒。
・現像ローラ周速/磁気ドラム周速比:1.2。
・転写条件(中間転写):中間転写体の磁気ドラムへの押圧力を0.147MPa(1.5kgf/cm2)に設定。
・転写定着条件:中間転写体に対する転写定着ローラの押圧力を0.245MPa(2.5kgf/cm2)に設定。
【0143】
以上の条件により、磁気ヘッド12により磁気ドラム10上に30μm/本の縞模様の磁気潜像(ハーフトーン相当)を形成し、これに前記現像ローラにより液体現像剤を接触させて現像を行った。そして、現像されたトナー像を中間転写体16に転写後、記録用紙に転写・定着して、画像を得た。得られた画像を観察して評価した。評価基準は顕微鏡にて定着像のライン幅を測定し、45μm以下であれば現像性が良好であるとした。
【0144】
−CIE1976(L*a*b*)表色系の評価−
得られた磁性トナーを、4.0g/m2で層状に形成し、これを熱定着(温度157℃)して、色サンプルを作製した。そして、この色サンプルを反射濃度計X−rite939(X−rite社製)を用いて測色し、CIE1976(L*a*b*)表色系を調べた。
【0145】
また、磁性粉を配合しない以外は上記同様に作製した磁性粉無しトナーを作製し、同様にして測色して、これとの色差△Eを下記式に基づき算出した。なお、磁性粉無しトナーのL*referenceは92.7、a*referenceは−8.7、b*referenceは113.5であった。
・ΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
・ΔL*=L*reference−L*sample
・Δa*=a*reference−a*sample
・Δb*=b*reference−b*sample
(ここで、L*sample、a*sample、b*sampleは磁性粉配合磁性トナーのCIE1976(L*a*b*)表色系を示す。)
【0146】
以上結果を表2に示す。
【0147】
【表2】
【0148】
なお、表2における磁性粉としてのYIG粒子の表面処理磁性粉の配合量は、YIG粒子の磁化とマグネタイトの磁化との比(YIG粒子磁化/マグネタイト磁化)に対して、マグネタイトの配合量(10cm2のフィルター、現像トナー量4.0g/m2、トナー全体対するマグネタイト重量比5重量%のケースでの配合量)を乗じて決定した値である。
【0149】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、磁性粉としてのYIG粒子の磁性特性の劣化が抑制されつつトナーの小径化が実現され、現像性も良好で、高画質な画像が形成されることがわかる。また、本実施例は、比較例に比べ、磁性粉としてのYIG粒子のトナーの色相への影響、特にイエロートナーの明度の低下が抑制されていることがわかる。
【0150】
[実施例B]
(磁性トナーの作製)
上記実施例Aにおいて作製した、磁性粉としてYIG粒子を配合した磁性トナーを準備した。
【0151】
(銀担持ゼオライトの作製)
A型ゼオライトの微粉末乾燥品を各250g採取し、各々に0.1M硝酸銀水溶液を加えて得られた混合物を室温にて3時間攪拌下に保持してイオン交換を行った。こうして得られた銀担持ゼオライトをろ過した後、水洗して過剰の銀イオンを除去した。次にこの水洗済み銀担持ゼオライトを100℃で乾燥した後粉砕し、平均一次粒径5μmの銀担持ゼオライトを作製した。
(実施例B1〜B4)
−実施例B1−
・磁性トナー:5部
・トリトン−X100(和光純薬製)溶液:1部
・銀担持ゼオライト:10部
・イオン交換水:89部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0152】
−実施例B2−
・磁性トナー:5部
・トリトン−X100(和光純薬製)溶液:1部
・銀担持ゼオライト:1部
・イオン交換水:89部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0153】
−実施例B3−
・磁性トナー:5部
・トリトン−X100(和光純薬製)溶液:1部
・銀担持ゼオライト:0.01部
・イオン交換水:89部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0154】
−実施例B4−
・磁性トナー:5部
・トリトンX溶液:1部
・銀担持ゼオライト: なし
・イオン交換水:96部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、液体現像剤を得た。
【0155】
−カビ抵抗性の試験評価−
液体現像液のカビ抵抗性の試験を、東京硝子器械(株)製 ウォーターサンプラー(MT0010025:総生菌用)を用いて行った。調製した現像液にウォーターサンプラーを30秒浸して約1mlを吸収させた。ついで、35℃に設定したインキュベーターを用いて培養を行い、所定時間を経たサンプラー表面を観察した。具体的には1日後、10日後、20日後、30日後のサンプラー上に形成されたコロニーをカウントした。結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
上記結果から、銀担持ゼオライトを配合した実施例B1〜B3では、配合しない実施例B4に比べ、カビ抵抗性に優れることがわかる。また、所定量以上銀担持ゼオライトを配合した実施例B1、B2は、実施例B3に比べ、特にカビ抵抗性に優れることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例における現像領域の拡大模式図である。
【図3】実施例で作製したYIG粒子A1、A2、A3、比較YIG粒子A1、A2のX線回折プロファイルを示す図である。
【符号の説明】
【0159】
10 磁気ドラム(磁気潜像保持体)
12 磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)
13 規制部材
14 現像装置(現像剤供給手段)
15 攪拌部材
16 中間転写体
18 クリーナ
20 消磁装置(消磁手段)
22 磁気潜像
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写手段)
29 定着像
30 記録媒体
100 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下である磁性粉と、
前記磁性粉を内包する高分子化合物と、
を含むことを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
前記磁性粉のCIE1976(L*a*b*)表色系における、
L*が65以上90以下
a*が−9以上15以下
b*が+30以上110以下
であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
【請求項3】
前記磁性トナーの前記CIE1976(L*a*b*)表色系におけるL*が、80以上90以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁性トナー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性トナーと、
前記磁性トナーを分散する水性媒体と、
を含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項5】
磁気潜像保持体と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
磁気潜像保持体と、
前記磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)からなり、粉末X線回折において面指数(420)のピークの半値幅が0.4deg以下である磁性粉と、
前記磁性粉を内包する高分子化合物と、
を含むことを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
前記磁性粉のCIE1976(L*a*b*)表色系における、
L*が65以上90以下
a*が−9以上15以下
b*が+30以上110以下
であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
【請求項3】
前記磁性トナーの前記CIE1976(L*a*b*)表色系におけるL*が、80以上90以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁性トナー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性トナーと、
前記磁性トナーを分散する水性媒体と、
を含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項5】
磁気潜像保持体と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
磁気潜像保持体と、
前記磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、
請求項4に記載の液体現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記液体現像剤を磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に供給する現像剤供給手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2009−151006(P2009−151006A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327519(P2007−327519)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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