説明

磁性ナノ粒子によって促進されたバイオプロセス

本発明の一側面は、有機相との会合によって水性環境中におけるコロイド安定性が向上した磁性ナノ粒子に関する。有機相はフッ素化ポリマーまたは2層が互いに化学的に結合した有機炭化水素二重層である。安定化した粒子は更に無毒性であり、バイオプロセスを効果的に促進する。本発明の別の一側面は、酸素を溶解可能な流体担体と、表面が改変されたナノメートルサイズの磁性粒子を含む組成物に関する。本発明の組成物は広範な用途に用いることができるが、再利用可能な酸素担体、分離及び単離担体、及び発酵プロセスなどのバイオプロセスの培地として特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願はここにその全容を援用する2003年12月18日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第60/530,862号に基づく優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性ナノ粒子は広く研究されている(非特許文献1)。磁性ナノ粒子は臨界粒径以下では強磁性から超常磁性へとその磁性を変化させることが知られている。液体磁石や強磁性液体の製造に磁性酸化物の超微粒子を使用することができる(非特許文献2および3)。一般的にはこうした粒子を水や非極性溶媒(炭水化物)に分散する。磁性ナノ粒子は液体の流れを必要とする多くの種類の装置で使用されることから、流れることができるよう、また、即座に追従できるよう、また外部からの磁場の作用に対して磁性ヒステリシスを起こすことのないよう、分散液は凝集や沈降につい高い安定性を有さなければならない(非特許文献1−3、および特許文献1−4)。
【0003】
溶液中で磁性ナノ粒子を調製するための異なる方法が当該技術分野で知られている。水溶液中での合成法ならびに長時間の粉砕による方法では、粒径及び粒度分布の制御が難しい。ガス蒸発やスパッタリングなどの他の方法は複雑な装置を必要とし、コストが嵩む。一般的に用いられているこれらの方法の難点は、粒子の寸法制御が粒径及び粒度分布の両方において困難であることである。特にこれらの方法では凝集現象が生じる問題がある。
【0004】
磁性ナノ粒子は、水性環境下で必要なコロイド安定性を与えるものであり、磁気記録から生体診断、治療薬にいたる広範な分野におけるその重要な技術的応用のために大きな関心を集めている。界面活性剤でコーティングした金属酸化物の磁性ナノ粒子が報告されている(非特許文献4)。ナノ粒子上での自己集合多層コーティングの合成とその特徴づけを記載した文献は、ナノ構造材料および素子の新たに認識された重要性の点から重要な新たな分野である。二重層コーティングを用いたマグネタイトの安定化がHatton等により述べられている(非特許文献5)。
【0005】
表面のコーティングは、ナノ粒子の本来の物理化学的性質をしばしば変化させる。ナノ構造を有する粉末の表面に施されるコーティングは、これにより表面の電荷、機能性、及び反応性が変化し、自己集合法を用いてマグネタイト(Fe)ナノ粒子上に水中で調製された一重層及び二重層界面活性剤コーティング中でのナノ粒子の安定性及び分散性が向上するため、多大な関心を集めている(非特許文献6−9)。共有結合、イオン結合、配位結合、ファンデルワールス力、及び/または水素結合を介した磁性ナノ粒子と各種官能基との反応は当該技術分野ではよく知られている(非特許文献10−15)。有機相の存在によって物質移動係数及び界面積の両方が変化する。その場合、有機薄膜層、好ましくは炭水化物またはポリマー層を微小な固体磁性ナノ粒子に結合させることによって界面積が増大する。コーティングされた磁性粒子は酸素などの気体を可溶化することが可能であり、発酵プロセスに使用することができる。
【0006】
一般に溶解度の低い気体の液体中への吸収率は、物質移動の速度によって制限される。このことは、触媒反応(例、水素化及び酸素化反応)、バイオプロセス(例、好気性発酵、血液の酸素化における酸素移送)、及び有毒排気ガス処理の分野で問題となる。例えば、バイオプロセスの分野では、酸素移動速度によって培養細胞の生産性が制限される。微小分散(マイクロディスパージョン)有機層を酸素溶解度が向上した発酵液に加えることによって、酸素不足が緩和されることが示されている(非特許文献16−18)。マイクロディスパージョンの代わりにPFCコーティングまたは炭化水素コーティングしたナノ粒子を使用することで、物質移動係数及び物質移動で利用可能な界面積が変化するためにこうした分散層の効率は高くなる。
【0007】
気体を可溶化することができる炭化水素基を含む有機薄膜層でコーティングした微細な磁性粒子の製造方法は当該技術分野では周知である。特許文献5(1989年9月19日付与、Meguro等)には、炭化水素基を有する有機層が磁性粒子に結合した強磁性流体組成物が開示されている。この有機層は、少なくとも1個の極性基及び少なくとも10個の炭素原子を有する陰イオン性界面活性剤であって、オレイン酸などの不飽和脂肪酸またはその塩、スルホン酸石油またはその塩、合成スルホン酸エステルまたはその塩、ポリブテンコハク酸またはその塩、ポリブテンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの陰イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。しかしながらこの強磁性流体組成物によって与えられる磁性粒子は有機溶媒中でのみコロイドとして安定であり、発酵液などの水性媒体中では凝集、沈殿、沈降してしまう。同様に特許文献6(2004年8月24日付与、Hata等)には、安定した分散液である磁性粘性流体が開示されている。この流体では、1〜22個の炭素原子を有する炭化水素からなる界面活性剤に磁性粒子のコアを結合させることで磁性粒子を有機媒体中に分散させている。1〜22個の炭素原子を有する炭化水素の好ましい例としては、1〜18個の炭素原子からなるアルキル基、6〜14個の炭素原子からなるアリール基、及び7〜22個の炭素原子からなるアリールアルキル基又はアルキルアリール基が挙げられる。より好ましい例として、メチル、エチル、n−ブチル、オクチル、ドデシル基などが挙げられている。この磁性組成物もやはり水性媒体中で不安定である。
【0008】
水性媒体中で安定な、炭化水素基を有する磁性微粒子もまた当該技術分野では周知である。例えば特許文献7(1978年6月13日付与、Shimoiizaka)には水ベースの磁性流体の製造方法が開示されている。この磁性流体は、18個の炭素原子からなる不飽和脂肪酸またはその塩を、強磁性酸化物粉末のコロイド溶液に水中で加え、次いで8〜30個の炭素原子を有する陰イオン性界面活性剤または8〜20個の炭素原子を有する非イオン性界面活性剤を加えることによって調製される。流体中の強磁性粉末の各粒子は、イオン化不飽和脂肪酸の単分子層、及びこの単分子層に吸着される非イオン性または陰イオン性界面活性剤層によってコーティングされるが、磁性粒子の表面上の陰イオン性界面活性剤上に、陰イオン性界面活性剤または陽イオン性界面活性剤が、更にその上に非イオン性界面活性剤が、化学結合または共有結合によらずに吸着されていることにより、得られる二重コーティング磁性粒子は不安定なものとなる。これは、発酵液中の微生物や細胞、金属イオンやこれらに類する成分の存在下では、質量作用の法則によって第2のコーティング層が第1のコーティング層から解離、脱離してしまうためである。発酵液中に脱離、溶解した第2のコーティング層の成分は、微生物や細胞に対する毒性を有し、更に界面活性能を有することからバイオプロセスに有害な過度の発泡をもたらす。
【0009】
水性媒体中で安定な、炭化水素基を有する磁性微粒子で、第1と第2の炭化水素層が化学的に互いに結合していることにより粒子が水中に界面活性剤を放出しないような磁性粒子も当該技術分野では周知である。例えばShen等(非特許文献19)は、磁性ナノ粒子と、ナノ粒子を包囲する、少なくとも一方が10−ウンデセン酸またはウンデカン酸からなる第1または第2の脂肪酸界面活性剤の二重層とからなる磁性流体について述べている。構造中に含まれる、気体を可溶化することが可能なこうしたオレフィン単位は、外殻成分を重合化し、磁性流体の安定性を高めるためのサイトとして機能する。こうした粒子は外部の水性環境に界面活性剤を放出することはない。しかしながら本発明者等は、粒子のコロイド安定性をもたらす、第2のオレフィン層の表面に露出したカルボキシル基の好ましくないイオン化パターンのために、こうした粒子は、pH7.4を越えるpHで、コロイドとしての安定性を保つために充分な量の金属イオンを含まない水性媒体に加えなければならないことを見いだした。このため、重合化した脂肪酸によって安定化されたこうしたマグネタイトナノ粒子は、pH7.0以下で行われるバイオプロセスを行う用途や、カルシウム、マグネシウムなどの金属イオンの存在下での使用には適していない。
【0010】
ポリマーで安定化された磁性粒子は、磁気分離が比較的速やかであることから細胞分離、イムノアッセイ、核酸の濃縮といった生体医療、生体工学分野で用いられてきた(非特許文献20−23)。更に、磁性ポリマー粒子は、生体液の解毒化や、特定の薬物送達プロセスでの粒子系の磁力による誘導など、異なる分野の領域で大きな可能性を有している(非特許文献24)。Kawaguchi等はアクリルアミドを主モノマーとして用いた親水性の磁性ラテックスについて報告している(非特許文献25)。Sauzedde等は、粒子凝集法を用いた別の種類の親水性磁性粒子について報告している(非特許文献26−28)。反対の電荷を有するポリスチレン−コア/ポリ(N−イロプロピルアクリルアミド)外殻に吸着させた酸化鉄ナノ粒子をカプセル化することによって親水性の感熱性ラテックスが得られる。カプセル化は水溶性モノマーのみを使用して行うことができる(N−イソプロピルアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド及びイタコン酸)。最終的な粒子は感熱性を示す。更に天然のポリマーやタンパク質を用いた独自の方法(従来とは異なる重合化による)について検討がなされている。しかしながら、磁性ポリマーラテックスのこれらの製造法では、酸化鉄を高含量で含むサブミクロンの粒径となってしまう(一般に500nm以上)。
【0011】
フッ化したポリマーは、化学的、生物学的な活性が極めて低く、また酸素溶解能が高いといった重要な性質を有しているが、上記の研究で、磁性粒子の安定化にフッ素含有ポリマーを利用したものはない。フッ化ポリマーは、臨床の現場で酸素供給を行う血液の代用として、また生物製造の効果を高めるなどの用途において効果的な酸素の運搬物質として使用されている(非特許文献29−34)。
【0012】
特許文献8は、ナノサイズの磁性酸化鉄粒子の製造方法に関するものである。この方法では、分散相に含まれる鉄反応物質を塩基性反応物質と反応させ、酸素含有オキシダントの添加によって制御した酸化を行う。前駆粒子をマイクロエマルジョンの分散水相の液滴中で沈殿させる。前駆粒子は、慎重に制御した環境下で酸化して所望の磁性粒子を得ると同時に過酸化を防いでヘマタイトなどの望ましくない非磁性粒子が生成しないようにする。しかしながら、酸素を溶解するフルオロポリマーの存在によって、酸化の制御が不可能もしくは困難となる。
【0013】
特許文献9は、磁性酸化鉄粒子を含む金属酸化物粒子の製造方法に関するものである。この方法では、油分としてGalden HT70(高蒸気圧でフッ化したフッ化油)などを用い、水相中の金属イオンを気体もしくは蒸気反応物質を反応させた油中水マイクロエマルジョンが形成される。得られたナノ粒子は、パーフルオロポリエーテルの疎水性鎖を有し平均分子量が約3000であるリン酸モノエステルなどのパーフルオロエーテルでコーティングされており、疎水性で非水溶性である。こうした疎水性は、コーティングされたナノ粒子をフッ化オイルエマルジョンから分離することが困難であることとあいまって、水性の生物学的環境において粒子を使用する障害となっている。
【0014】
特許文献10は、混合金属酸化物の粒子の製造方法に関するものである。この方法では、パーフルオロポリエーテル油分及びパーフルオロポリエーテル界面活性剤を含むマイクロエマルジョンを使用する。この方法では更に、第1の金属を水相に、第2の金属をパーフルオロポリエーテル油相に混合する。アルカリ溶液を添加するとともに加熱して所望の酸化物を得る。得られたコーティングナノ粒子は疎水性である。
【0015】
工業的な発酵技術では、水中に浸漬された培養器への酸素の供給速度がしばしば制限因子となる。これは、拡散された空気からの酸素の移動速度が細胞による酸素の消費速度よりも小さい場合に問題となり、その場合、溶存酸素濃度が代謝活性の維持に必要な臨界濃度を下回ってしまう。従来の技術によって酸素供給されるバイオリアクターでは、酸素の溶解度が低いこと(20℃で0.28mmol/dm)と、酸素の移動速度が小さいことによりしばしば細胞の増殖が阻害されたり、他の悪影響を細胞に及ぼす。
【0016】
第2の拡散された有機相の存在下では、発酵プロセスなどのバイオプロセスで用いられる液媒中への酸素の吸収速度は、有機相中への酸素の高い溶解度及び拡散性のために大幅に大きくなる(非特許文献35−39)。培養液中での有機相の使用によって細胞の増殖及び生産性に悪影響がもたらされる場合がある(非特許文献40)。長期の有機相との接触の後では、培養システムは、微生物細胞の失活、酸素運搬物質の毒性、及び/または水/油境界面での細胞吸着度が高いことによって不安定化してしまう(非特許文献41−43)。微粒子に酸素透過性を有する有機超薄膜層が共有結合により結合していることにより、細胞と有機液との直接的な混合が避けられ、これにより直接的な混合に伴う毒性の問題を回避することができる。
【0017】
いずれの理論にも拘束されずに云えば、酸素容量が大きな固体微粒子や液滴は、気/液境界面の液体境界層における濃度勾配、ひいては気体吸収速度を変化させることが当該技術分野では知られている(非特許文献44−53)。
【特許文献1】米国特許第5,147,573号明細書
【特許文献2】米国特許第4,094,804号明細書
【特許文献3】米国特許第3,764,540号明細書
【特許文献4】米国特許第3,843,540号明細書
【特許文献5】米国特許第4,867,910号明細書
【特許文献6】米国特許第6,780,343号明細書
【特許文献7】米国特許第4,094,804号明細書
【特許文献8】米国特許第5,695,901号明細書
【特許文献9】米国特許第5,725,802号明細書
【特許文献10】米国特許第5,670,088号明細書
【非特許文献1】D.L.Leslie−Pelecky and R.D.Rieke,Chem.Mater.,1996,8,1770
【非特許文献2】M.Saynattjoki and K.Hoomberg,Synthetic Lubrication,1993,10,119
【非特許文献3】T.Hemmi,Japanese Journal of Tribology,1992,37,155
【非特許文献4】A.Ulman,R.P.Scaringe,Langmuir,1992,8,894
【非特許文献5】L.Shen,P.E.Laibinis,T.A.Hatton.,J.Magn.Matter.,1999,194,37
【非特許文献6】C.S.Weisbecker,M.V.Merrit,G.M.Whitesides,Langmuir,1996,12,3763
【非特許文献7】R.G.Nuzzo,B.R.Zegarski,L.H.Dubois,J.Am.Chem.Soc.,1987,109,733
【非特許文献8】C.J.Sandorff,S.Garoff,K.P.Leung Chem.Phys.Lett.,1983,96,547
【非特許文献9】L.Fu.,V.P.Dravid,D.L.Johnson,Appl.Surf.Sci.,2001,181,173
【非特許文献10】M.Aoyagi,H.Sato,K.Yagi,N.Fukuda,S.Nishimoto,Colloid&Polymer Science,2001,279,46
【非特許文献11】Pan,H.K.,Meagher,A.,Pineri,M.,Knapp,G.S.,Cooper,S.L.J.,Chem.Phys.,1985,82(3),1529
【非特許文献12】Xulu,P.M.;Filipcsei,G.;Zrinyl,M.,2000,33(5),1716
【非特許文献13】Shcjukin,D.G.,Radtchenko,I.L.,Sukhorukov,G.B.,J.Phys.Chem.B.,2003;107(1),86
【非特許文献14】Shen,L.,Laibinis,P.E.,Hatton,T.A.,Langmuir,1999,15(2),447
【非特許文献15】Shen,L.,Stachowiak,A.,Hatton,T.A.,Laibinis,P.E.,Langmuir,2000,16(25),9907
【非特許文献16】M.Elibol,F.Mavituna,Applied Microbiology and Biotechnology,1995,43(2),206;
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【非特許文献18】Yamane,T.,Yoshida,F.,Journal of Fermentation Technology,1974.52(7),445
【非特許文献19】Shen,L.;Stachowiak,A.;Hatton,T.A.;Laibinis,P.E.;Langmuir,2000,16(25),9907
【非特許文献20】Y.Haik,V.Pai,C.J.,Che J.Magn.Magn.Mater.,1999,194,254
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【非特許文献23】A.Elaissari,M.Rodrigue,F.Meunier,C.Herve,J.Magn.Magn.Mater.,2001,225,127
【非特許文献24】P.K.Gupta,C.T.Hung,Life Sci.,1989,44,175.
【非特許文献25】H.Kawaguchi,K.Fujimoto,Y.Nakazawa,M.Sakagawsa,Y.Ariyoshi,M.Shidara,H.Okazaki,Y.Ebisawa,Colloid Surf.A, 1996,109,147
【非特許文献26】F.Sauzedde,A.Elaissari,C.Pichot,Collid Polym.Sci.,1999,277,846
【非特許文献27】F.Sauzedde,A.Elaissari,C.Pichot,Collid Polym.Sci.,1999,277,1041
【非特許文献28】K.Furusawa,K.Nagashima,C.Anzai,Colloid Polym.Sci.,1994,272,1104
【非特許文献29】R.E.Banks,B.E.Smart,J.C.Tatlow Organofluorine Chemistry,Principles and Commercial Applications,Plenum Press,New York(1994)
【非特許文献30】S.F.Flaim,Biotech.,1994,22,1043
【非特許文献31】M.P.Krafft,J.G.Riess,J.G.Weers,The design and engineering of oxygen−delivering fluorocarbon emulsions,In:S.Benita,Editor,Submicronic Emulsions in Drug Targeting and Delivery,Harwood Academic Publ.,Amsterdam(1998),pp.235−333
【非特許文献32】G.Riess,M. Le Blanc,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1978,17,621
【非特許文献33】Dixon,DD,Holland,DG.,Fluorocarbons:properties and syntheses,Federation Proceedings,Volume 34,Issue 6,May 1975,Pages1444−1448
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【非特許文献38】Ju,L.−K.,Lee,J.F.and Armiger,W.B.,Biotechnol.Prog.,1991,7,323
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【非特許文献46】Demmink J.P.;Mehra,A.;Beenackers,A.A.C.M.Chem.Eng.Sci.,1998,53,2885
【非特許文献47】Bruining,W.J.;Joosten,G.E.H.;Beenackers,A.A.C.M.;Hofman,H.,Chem.Eng.Sci.,1986,41,1873
【非特許文献48】Rols,J.L.;Condoret,J.S.;Fonade,C.;Goma,G.Biotechnol.Bioeng,,1990,35,427
【非特許文献49】Junker,B.H.;Hatton,T.A.;Wang,D.I.C.Biotechnol.Bioeng,,1990,35,578
【非特許文献50】Junker,B.H.;Wang,D.I.C.;Hatton,T.A.Biotechnol.Bioeng.,1990,35,586
【非特許文献51】Van Ede,C.J.;van Houten,R.;Beenackers,A.A.C.M.,Chem.Eng.Sci.,1995,50,2911
【非特許文献52】Chaudhari,R.V.;Jayasree,P.;Gupte,S.P.;Delmas,H.,Chem.Eng.Sci.,1997,52,4197
【非特許文献53】Beenackers,A.A.C.M.;Van Swaaij,W.P.M.,Chem.Eng.Sci.,1993,48,3109.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明の一側面は、有機相と会合した無機化合物を含むナノ粒子であって、有機相が気体を可逆的に可溶化可能であるナノ粒子に関するものである。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が無機酸化物である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が遷移金属酸化物である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が第8〜第10族遷移金属の酸化物である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が第8族の遷移金属酸化物である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が酸化鉄である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がFeまたはFeである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がFeである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、磁性を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、無毒性である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体が酸素である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体がCOである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がフッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれている前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーがコポリマーである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーが、フッ素化部分と非フッ素化部分とを有するコポリマーである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体が酸素であり、前記フッ素含有ポリマーが水性媒体中で酸素を可逆的に結合させることが可能である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体がCOであり、前記フッ素含有ポリマーが水性媒体中でCOを可逆的に結合させることが可能である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記有機相が互いに化学的に結合された第1及び第2の炭化水素層を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層がカルボニル官能基を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層が脂肪酸を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層がオレイン酸を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第2の炭化水素層が親水性基を含む前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第2の炭化水素層が非イオン性及び陰イオン性の親水性基を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第2の炭化水素層が、ポリオキシアルキレンスルホネート部分を有する前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、第1及び第2の炭化水素層が炭素−炭素一重結合を介して互いに結合している前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体が酸素であり、前記有機相が水性媒体中で酸素を可逆的に結合させることが可能である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、水性コロイドを形成可能な前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、直径が約1〜約1000nmである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、約10〜約100nmである前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体が酸素である前記ナノ粒子に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体がCOである前記ナノ粒子に関する。
【0019】
特定の実施形態において本発明は、前記ナノ粒子のいずれかの実施形態を含む組成物に関する。特定の実施形態において前記組成物は水性コロイドである。
【0020】
本発明の別の一側面は、フッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれた無機化合物を含むナノ粒子を調製するための方法であって、(a)フッ素含有ポリマーの存在下、水溶液中で無機塩を共沈殿させることと、(b)工程(a)で得られた混合物を超音波処理することと、ナノ粒子を単離することとからなる方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記水溶液が不活性ガスによって脱気される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記水溶液がNガスによって脱気される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が遷移金属の塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が第8〜10族の遷移金属の塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が第8族の遷移金属の塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が鉄塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が塩化物塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が鉄−塩化物塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が塩化Fe(II)及び塩化Fe(III)の混合物からなる前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約65℃〜約85℃に加熱される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約70℃〜約85℃に加熱される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約75℃〜約85℃に加熱される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約80℃に加熱される前記方法に関する。
【0021】
本発明の別の一側面は、第1の炭化水素層と、第1の炭化水素層に化学的に結合した第2の炭化水素層とを含む炭化水素二重層と会合した無機化合物を含むナノ粒子を調製するための方法であって、(a)前記無機化合物と結合可能な第1の炭化水素部分の存在下、水溶液中で無機塩を共沈殿させることと、(b)工程(a)で得られた生成物を、親水性基を有する第2の炭化水素部分と反応させることとを含み、第1の炭化水素部分が第2の炭化水素部分と化学的に結合して炭化水素二重層を形成する方法に関するものである。特定の実施形態において本発明は、前記水溶液が不活性ガスによって脱気される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記水溶液がNガスによって脱気される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が遷移金属の塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が第8〜10族の遷移金属の塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が第8族の遷移金属の塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が鉄塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が塩化物塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が鉄−塩化物塩である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機塩が塩化Fe(II)及び塩化Fe(III)の混合物からなる前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素部分がカルボニル官能基を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素部分が脂肪酸を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素部分がオレイン酸を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第2の炭化水素部分が親水性基を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基が非イオン性及び陰イオン性基である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基がポリオキシエチレンスルホネートである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基がポリオキシエチレンスルホネート部分を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1及び第2の炭化水素部分が炭素−炭素一重結合で互いに結合している前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約65℃〜約85℃に加熱される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約70℃〜約85℃に加熱される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約75℃〜約85℃に加熱される前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、無機塩の前記水溶液が約80℃に加熱される前記方法に関する。
【0022】
本発明の別の一側面は、媒体中への気体の移動量を増加させるための方法であって、有機相と会合した無機化合物を有するナノ粒子を媒体に導入することを含み、前記有機相は気体を可逆的に可溶化することが可能なものである方法に関するものである。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が遷移金属酸化物である前記方法に関するものである。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が第8〜10族の遷移金属酸化物である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が第8族の遷移金属酸化物である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が酸化鉄である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がFeまたはFeである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がFeである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、気体の移動量が約400%よりも増加する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記ナノ粒子が磁性を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体が酸素である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体がCOである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がフッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれている前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーがコポリマーである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーが、フッ素化部分と非フッ素化部分とを有するコポリマーである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーが水性媒体中で気体を可逆的に結合させることが可能である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記有機相が互いに化学的に結合された第1及び第2の炭化水素層を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層がカルボニル官能基を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層が脂肪酸を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層がオレイン酸を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第2の炭化水素層が親水性基を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基が非イオン性及び陰イオン性基である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基がポリオキシアルキレンスルホネート部分を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基がポリオキシエチレンスルホネート部分を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1及び第2の炭化水素層が炭素−炭素一重結合を介して互いに結合している前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体が酸素である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記気体がCOである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、媒体を磁場に暴露して移動させることによってナノ粒子を媒体から分離する前記方法に関する。
【0023】
本発明の別の一実施形態は、発酵プロセスにおける細胞の増殖を促進するための方法であって、培養細胞を含む発酵培地に有機相と会合した無機化合物を有するナノ粒子を導入することを含み、前記有機相が可逆的に酸素を可溶化可能であることによって発酵培地への酸素の移動量が増大する方法に関するものである。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が遷移金属酸化物である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が第8〜10族の遷移金属酸化物である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が第8族の遷移金属酸化物である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物が酸化鉄である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がFeまたはFeである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がFeである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、酸素移動量が約400%よりも増加する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記ナノ粒子が磁性を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記無機化合物がフッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれている前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーがコポリマーである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーが、フッ素化部分と非フッ素化部分とを有するコポリマーである前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記フッ素含有ポリマーが水性媒体中で酸素を可逆的に結合させることが可能である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記有機相が互いに化学的に結合された第1及び第2の炭化水素層を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層がカルボニル官能基を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層が脂肪酸を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1の炭化水素層がオレイン酸を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第2の炭化水素層が親水性基を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基が非イオン性及び陰イオン性基である前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基がポリオキシアルキレンサルフェート部分を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、前記親水性基がポリオキシエチレンサルフェート部分を有する前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、第1及び第2の炭化水素層が炭素−炭素一重結合を介して互いに結合している前記方法に関する。特定の実施形態において本発明は、発酵培地を磁場に暴露して移動させることによってナノ粒子を発酵培地から分離する前記方法に関する。
【0024】
本発明の上記の実施形態、他の実施形態ならびにその特徴は以下の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、水性媒体中で安定な、発酵などのプロセスにおいて有用な高い酸素供給能を与える有機相と会合した無機化合物に一部関するものである。この有機相としては、可逆的に気体を結合させることが可能なフルオロポリマーを使用することができる。有機相としては更に、互いに化学的に結合した第1と第2の炭化水素層を備え、可逆的に気体を結合させることが可能な炭化水素二重層を使用することができる。粒子は実用的なpHの範囲で金属イオンの存在下でコロイドとして安定である。
【0026】
別の一実施形態では、本発明は本発明のナノ粒子を有する組成物に関する。更なる別の実施形態では、この組成物は水性コロイドである。
【0027】
本発明の組成物は更に、発酵の分野では一般的に用いられている好適な無機塩、グルコース及び他の賦形剤を含んでいてもよい。表面の改変によって、粒子と流体の適合性を調整可能に調節して、酸素ならびに必要に応じて他の気体の溶解度を、毒性を発現することなく有利に向上させることが可能である。改変された磁性ナノ粒子は、磁力を利用して発酵液から容易に回収することが可能であり、発酵液で再利用するのに適している。コーティングを施したナノ粒子は、ナノ粒子の分離プロセスを有利にする好ましいナノ粒子径及び表面/体積比によって更に特徴付けられる。
【0028】
本発明の磁性粒子は、無機塩の沈殿による計測可能なプロセスによって製造可能である。別の一実施形態では、本発明は、フッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれた無機化合物を含むナノ粒子を調製するための方法であって、a)フッ素含有ポリマーの存在下、水溶液中で無機塩を共沈殿させることと、b)工程(a)で得られた混合物を超音波処理することと、ナノ粒子を単離することとからなる方法に関する。
【0029】
別の一実施形態において本発明は、第1の炭化水素層と、第1の炭化水素層に化学的に結合した第2の炭化水素層とを含む炭化水素二重層と会合した無機化合物を含むナノ粒子を調製するための方法であって、(a)前記無機化合物と結合可能な第1の炭化水素部分の存在下、水溶液中で無機塩を共沈殿させることと、(b)工程(a)で得られた生成物を、親水性基を有する第2の炭化水素部分と反応させることとを含み、第1の炭化水素部分が第2の炭化水素部分と化学的に結合して炭化水素二重層を形成する方法に関するものである。
【0030】
別の一実施形態において本発明は、媒体中への気体の移動量を増加させるための方法であって、有機相と会合した無機化合物を含むナノ粒子を媒体に導入することを含み、前記有機相は気体を可逆的に可溶化することが可能なものである方法に関するものである。更なる実施形態では、有機相はフルオロポリマーである。更なる実施形態では、有機相は、互いに化学的に結合した第1の炭化水素部分と第2の炭化水素部分とを含む炭化水素二重層である。
【0031】
別の一実施形態では本発明は、発酵プロセスにおける細胞の増殖を促進するための方法であって、培養細胞を含む発酵培地に有機相と会合した無機化合物を含むナノ粒子を導入することを含み、これにより発酵培地への酸素の移動量が増大する方法に関するものである。更なる実施形態では、有機相はフルオロポリマーである。更なる実施形態では、有機相は、互いに化学的に結合した第1の炭化水素部分と第2の炭化水素部分とを含む炭化水素二重層である。
【0032】
本発明の方法によれば、前記気体の前記有機相に対する溶解度が前記気体の水に対する溶解度よりも大きいことから、前記混合物中への気体の溶解度が高められる。例えば、PFCへの酸素の溶解度は水への溶解度の12〜16倍高く、炭化水素への酸素の溶解度は水への溶解度の4〜7倍高い。更に、気体の可溶化は一般に可逆的な過程であることから、ナノ粒子は周囲の濃度勾配に応じて、媒体から気体を吸収するか、あるいは媒体に気体を放出することができる。
【0033】
用語の定義
理解を助けるため、本発明を更に説明するのに先立って、明細書、実施例ならびに特許請求の範囲で使用する特定の用語をここに集めた。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読まれるべきものであり、当業者であれば理解されるべき内容である。特に定義をしない限り、ここで使用する技術的、科学的用語のすべては当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有するものである。
【0034】
本明細書で用いる「a」及び「an」なる冠詞は、一または一よりも多い(少なくとも一つの)その冠詞の文法的目的語を指して云うものである。例えば、「要素(an element)」と云う場合、一つの要素もしくは一よりも多い要素を意味する。
【0035】
例えば「有機相と会合した無機化合物」などの語句において本明細書で用いる「〜と会合した」なる語句は、分子間に弱い、または強い、または両方の相互作用が存在する状態のことを云う。弱い相互作用の例としては、静電気、ファンデルワールス力、水素結合による相互作用が挙げられる。強い相互作用とはやはり化学的に結合した状態であり、その例としては、2個の分子間の共有結合、イオン結合や配位結合が挙げられる。「会合した」なる語句には、上記の種類の結合のいずれも存在しない場合であっても、別の分子の折り畳み構造の内部で物理的に絡み合った化合物も含まれる。例えば、ある無機化合物は、フルオロポリマーの隙間の内部に存在しているときにフルオロポリマーと会合しているとみなすことができる。
【0036】
「〜を含む(comprise)」及び「〜を有する(comprising)」なる語句は、包含的かつ開放的な意味合いで用いられ、更なる要素が含まれる可能性を示唆するものである。
【0037】
「〜を含む(including)」なる語句は「限定することなく含む」ことを意味する。「〜を含む」と「限定することなく含む」とは互換可能に用いられる。
【0038】
「ポリマー」なる語は、繰り返し単位(モノマー)の結合によって形成される大型分子を意味する。ポリマーなる語にはコポリマーも含まれる。
【0039】
「コポリマー」なる語は2以上の異なるモノマーからなるポリマーを意味する。
【0040】
本明細書で用いる「フルオロ炭素」なる語は、一部または全部の水素原子がフッ素によって置換されたハロゲン化炭素化合物を意味する。
【0041】
「フッ素含有ポリマー」は「フルオロポリマー」とも呼ばれているが、フッ素を含有するポリマーを意味する。好ましくは、フッ素含有ポリマーとは、フルオロ炭素含有ポリマーを意味する。
【0042】
「ルイス塩基」及び「ルイス塩基性」なる語は、当該技術分野では周知の用語であり、一般に所定条件下で電子対を供与することのできる化学的部分、構造断片や置換基を含むものである。ルイス塩基は、ルイス塩基及び金属イオンの種類に応じて、特定の錯体において1個の電子を供与するものとして定義される場合もあるが、多くの場合、ルイス塩基とは、2個の電子の供与体として理解されている。ルイス塩基性の部分の例としては、アルコール、チオール、及びアミンなどの非帯電化合物、アルコキシド、チオレート、カルバニオン及び他の各種有機陰イオンなどの帯電部分が挙げられる。ルイス塩基は、金属イオンに対して配位した場合、しばしば配位子と呼ばれる。
【0043】
「ルイス酸」及び「ルイス酸性」なる語は、当該技術分野では周知の用語であり、上記で述べたルイス塩基から電子対を受け取ることができる化学的部分のことを云う。
【0044】
「粒径」なる語は、例えば動的または静的光散乱法、沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光法や、ディスク遠心法などの当業者には周知の従来の粒径測定法によって測定される数または重量平均粒径を意味する。「約1000nmよりも小さい平均粒径」とは、上記の方法で測定した場合に、粒子の少なくとも約90%が約1000nmよりも小さい重量平均粒径を有することを意味する。
【0045】
「隙間」なる語は、物体や部分間の空間、特に微小または狭い空間を意味する。
【0046】
「脂肪族」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、直鎖、分枝、及び環状のアルカン、アルケンまたはアルキンを含む。特定の実施形態では、本発明の脂肪族基は、直鎖または分枝状で1〜約20個の炭素原子を有するものである。
【0047】
「アルキル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、直鎖状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基などの飽和脂肪族基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分枝状アルキルは、その主鎖が約30個以下(例、直鎖ではC〜C30、分枝鎖では、C〜C30)あるいは約20個以下の炭素原子を有する。同様にシクロアルキルは、約3個〜約10個の炭素原子をその環状構造中に有するか、あるいは約5、6または7個の炭素原子をその環状構造中に有するものである。
【0048】
炭素原子の数について特に断りがない限り、「低級アルキル」とは、上記に定義したアルキル基で1〜10個の炭素原子、あるいは1〜約6個の炭素原子をその主鎖構造中に有するアルキル基のことを云う。同様に「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は同様の鎖長を有するものである。
【0049】
「アラルキル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、アリール基(例、芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を含む。
【0050】
「アルケニル」及び「アルキニル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、その長さと可能な置換基において上述のアルキル基と同様であるが、それぞれ少なくとも1個の2重または3重結合を有する不飽和脂肪族基を含む。
【0051】
「ヘテロ原子」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を含む。ヘテロ原子の例としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、及びセレン、または酸素、窒素、硫黄が挙げられる。
【0052】
「アリール」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどの0〜4個のヘテロ原子を含み得る5、6、及び7員の単環の芳香族基を含む。環状構造にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と呼ばれる。芳香族環は、その環構造の1以上の位置において例えば上記で述べたような、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの置換基で置換されていてもよい。「アリール」なる語には、少なくとも一方が芳香族である(他方の環構造としてはシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/または複素環など)2個の隣接した環構造(これらの環構造は「縮合環」である)が2個以上の炭素原子を共有する多環式システムが更に含まれる。
【0053】
オルトメタ、及びパラなる語は当該技術分野では周知の用語であり、それぞれ1,2−、1,3−、及び1,4−の二置換ベンゼンのことを云う。例えば1,2−ジメチルベンゼンとオルト−ジメチルベンゼンとは同義語である。
【0054】
「複素環の」及び「複素環基」なる語には当該技術分野では周知の用語であり、その環構造が1〜4個のヘテロ原子を有する、例えば3〜約7員環の3〜約10員環構造が含まれる。複素環は多環構造であってもよい。複素環基の例としては、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン類、アゼチジノン及びピロリジノンなどのラクタム類、スルタム類及びスルトン類などが挙げられる。複素環はその1以上の位置において例えば上記で述べたような、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの置換基で置換されていてもよい。
【0055】
「多環の」及び「多環基」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、2個の隣接した環構造(これらの環構造は「縮合環」である)が2個以上の炭素原子を共有する、2個以上の環構造(例、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/または複素環)を有する構造が含まれる。環構造が、隣接していない原子によって連結されている(両環構造が3個以上の原子を共有している)場合、これを「架橋」環と呼ぶ。多環構造の各環が例えば上記で述べたような、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどの置換基で置換されていてもよい。
【0056】
「カルボサイクル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、環構造の各原子が炭素である芳香族及び非芳香族環が含まれる。以下の当該技術分野では周知の用語は、以下の意味を有する。すなわち、「ニトロ」なる語は−NOを意味し、「ハロゲン」なる語は−F、−Cl、−Brまたは−Iを指し、「スルフヒドリル」なる語は−SHを意味し、「ヒドロキシル」なる語は−OHを意味し、「スルホニル」なる語は−SOを意味する。
【0057】
「アミン」及び「アミノ」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分として置換または非置換のアミンを含む。
【化1】

【0058】
式中、R50、R51及びR52はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61を表すか、あるいはR50とR51がそれらが結合する窒素原子とともに環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成し、R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環構造を表し、mは0または1〜8の範囲の整数である。特定の実施形態では、R50またはR51のいずれか一方のみがカルボニルである(R50、R51、及び窒素原子が互いにイミドを形成しない)。別の実施形態では、R50及びR51(及び場合によりR52)はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−R61を表す。したがって「アルキルアミン」なる語には、置換または非置換のアルキルが結合した上記に述べたようなアミン基が含まれる(R50及びR51の少なくとも一方がアルキル基である)。
【0059】
「アシルアミノ」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化2】

【0060】
式中、R50は上記と同様であり、R54は水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−R61を表し、m及びR61は上記と同様である。
【0061】
「アミド」なる語はアミノ基で置換されたカルボニル基として当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分を含む。
【化3】

【0062】
式中、R50及びR51は上記と同様である。本発明のアミドの特定の実施形態では、不安定なイミドは含まれない。
【0063】
「アルキルチオ」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、硫黄ラジカルが結合した上記に述べたようなアルキル基が含まれる。特定の実施形態では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、及び−S−(CH−R61のいずれかによって表されるものである(m及びR61は上記と同様)。代表的なアルキルチオ基としてはメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0064】
「カルボニル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化4】

【0065】
式中、X50は結合を示すか、または酸素または硫黄であり、R55は水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61、または薬学的に許容される塩であり、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−R61である(m及びR61は上記と同様)。X50が酸素であり、かつR55またはR56のいずれかが水素ではない場合、上記式は「エステル」を表す。X50が酸素であり、R55が上記と同様である場合、当該部分はカルボキシル基と呼ばれ、特にR55が水素である場合には上記式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であり、R56が水素である場合、上記式は、「蟻酸エステル」を表す。一般に上記式の酸素原子が硫黄によって置換されている場合、上記式は「チオカルボニル」基を表す。X50が硫黄でありR55またはR56のいずれかが水素でない場合、上記式は「チオエステル」を表す。X50が硫黄でありR55が水素である場合、上記式は「チオカルボン酸」を表す。X50が硫黄でありR56が水素である場合、上記式は「チオ蟻酸エステル」を表す。一方、X50が結合を示し、R55が水素でない場合、上記式は「ケトン」基を表す。X50が結合を示し、R55が水素である場合、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0066】
「アルコキシル」または「アルコキシ」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、酸素ラジカルが結合した上記で述べたようなアルキル基が含まれる。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」とは、酸素を介して共有結合した2個の炭化水素のことである。したがって、アルキルをエーテルとするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH−R61のいずれかで表されるようなアルコキシルであるか、またはこれに類似したものである(m及びR61は上記と同様)。
【0067】
「スルホネート」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化5】

【0068】
式中、R57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0069】
「サルフェート」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化6】

【0070】
式中、R57は上記と同様である。
【0071】
「スルホンアミド」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化7】

【0072】
式中、R50及びR56は上記と同様である。
【0073】
「スルファモイル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化8】

【0074】
式中、R50及びR51は上記と同様である。
【0075】
「スルホニル」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化9】

【0076】
式中、R58は下記のいずれかである。すなわち水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリールまたはヘテロアリール。
【0077】
「スルホキシド」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化10】

【0078】
式中、R58は上記と同様である。
【0079】
「ホスホアミダイト」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化11】

【0080】
式中、Q51、R50、R51及びR59は上記と同様である。
【0081】
「ホスホンアミダイト」なる語は当該技術分野では周知の用語であり、下記一般式で表すことが可能な部分が含まれる。
【化12】

【0082】
式中、Q51、R50、R51及びR59は上記と同様であり、R60は低級アルキルまたはアリールを表す。
【0083】
アルケニル及びアルキニル基に対して同様の置換を行うことによって、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを得ることが可能である。
【0084】
アルキル、m、nなどの各表現の定義は、これらの表現がいずれかの構造において2度以上用いられる場合、特に明言するか、内容的に明らかでない限り、それ以外の部分での同様の構造の定義とは独立なものとする。
【0085】
本発明の目的では、化学元素は元素の周期表にしたがって同定した(Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,67th Ed.,1986−87,inside cover)。
【0086】
無機化合物
本発明のナノ粒子の調製に使用する無機化合物は一般に水性媒体中で調製されるいずれの無機化合物であってもよい。別の一実施形態では、この無機化合物は金属塩の前駆物質を水性媒体に溶解することによって調製される金属酸化物である。金属としては、周期表の第1〜15族に属する陽イオンを使用することができる。これらの金属の例としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd及びHgが挙げられる。「金属」なる語は第13〜第15族に属するメタロイドも含まれる。これらのメタロイドとしては、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、及びBiが含まれる。金属陽イオンは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Pd及びPtを含む第8〜第10族に属するものであることが好ましい。好ましくは金属酸化物は磁性金属酸化物である。磁性金属酸化物はFeをFe(II)、Fe(III)、またはFe(II)/Fe(III)の混合物として含有していればよい。こうした酸化物の非限定的な例として、FeO、Fe、Feが挙げられる。無機化合物はM1M23−X型の混合酸化物であってもよい(ただしM1は2価の金属イオンを表し、M2は3価の金属イオンを表す)。例えば、無機化合物として式M1Feで表される磁性フェライトを使用することが可能である(ただしM1は以下から選択される2価の金属イオンである:Mn、Co、Ni、Cu、Zn、またはBa。これらは単独、もしくは互いの混合物として、もしくは鉄イオンとの混合物として用いられる)。
【0087】
フッ素含有ポリマー
本発明で用いるフッ素含有ポリマーは、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子によって置換された任意のポリマーまたはコポリマーであり、水性NHOH中で分散液を形成するものである。このようなポリマーの例としては、下記から選択される繰り返し単位を含むフッ素含有ポリマーが挙げられる。すなわち、(CFCFO)、(CFO)、(CFCFCFO)、(CFCF、(CFCFCHO)、(CF(CF)CFO)、(CF(CF)O)またはこれらの組合せ。これらの繰り返し単位は、水性NHOH中への分散性を高める官能基で更に置換されていてもよく、あるいは分散性を高める官能基でエンドキャッピングされていてもよい。フッ素含有ポリマーがコポリマーである場合、各繰り返し単位はコポリマー全体にわたって統計的またはランダムに分布していてもよい。コポリマーの場合には、非フッ素化部分が水性NHOH中への分散性を高めるようにしてもよい。
【0088】
フルオロポリマーまたはフルオロコポリマーの一般的な例としては、パーフルオロポリエーテル、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、ヘキサフルオロプロペンオキシド、ヘキサフルオロプロピレンエポキシド、ヘキサフルオロプロペンエポキシド、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロペンが挙げられる。好適なフルオロポリマー及びフルオロコポリマーは、FOMBLIN Y(登録商標)、FOMBLIN Z(登録商標)、及びGALDEN(登録商標)(以上すべてAusimontUSA社)、KRYTOX(登録商標)、ZONYL(登録商標)FSA、及びNAFION(登録商標)(以上すべてDupont社)及び3M社のDYNEON(商標)の商品名で市販されてもいる。
【0089】
粒子の特徴付け
実施例1で述べる磁性ナノ粒子は、その粒径に関しては動的光散乱装置(Brookhaven Instrument社)によって、その電気泳動特性についてはSmoluchowskiζ電位モデルを用いたビルトインソフトウェアを有するZetaPalsゼータ電位分析器(Brookhaven Instrument社)によって、特徴付けることができる。この結果を図1に示した。図に示されるように、粒子は約150nmの重量平均径と、バイオプロセスに適したpH範囲において負の表面電荷を示した。したがってこの粒子は電荷的に安定であり、永続的に分散状態に保たれる。
【0090】
ナノ粒子の粒径は好ましくは0.001〜100μmである。粒径が約10nmよりも小さい場合、ブラウン運動の影響のために、磁場を作用させた場合に磁性粒子を充分に運動させることが困難となる。粒径が1000nmを上回る場合、磁性粒子は分散媒体中で沈降し、分散安定性が損なわれる。より好ましい粒径の範囲は10〜100nmである。
【0091】
フルオロポリマーでコーティングされたナノ粒子及び該ナノ粒子を含む磁性流体の無害性
弱酸性電荷を有するフルオロポリマーによって安定化されたFeナノ粒子
実施例1で述べるような、弱酸性電荷を有する予め調製されたフルオロポリマー(Fluorolink(商標))を用いて合成されたナノ粒子のE.coli細胞に対する毒性について、実施例2で述べる振盪フラスコバッチ実験を行って試験した。図2に示されるようにフルオロポリマーでコーティングした磁性粒子は無毒性であり、細胞の増殖を阻害しなかった。
【0092】
強酸性電荷を有するフルオロポリマーによって安定化されたFeナノ粒子
実施例6で述べるように、強酸性電荷を有するフルオロポリマーを用いてナノ粒子を調製した。この粒子が細菌細胞の増殖に与える潜在的影響について評価を行った。振盪フラスコバッチ実験を行って粒子のE.coli細胞に対する毒性について試験した。試験の条件は実施例2に述べたとおりである。図5及び図6に示されるように、フルオロポリマーでコーティングした磁性粒子は無毒性であり、細胞の増殖を阻害しなかった。細胞/粒子懸濁液に発泡は見られなかった。
【0093】
一連の個別の実験において、所定重量の磁性粒子を所定重量の発酵及び培養原液に加えて、振盪実験を行った(発酵液及び振盪実験の説明は実施例2を参照)。次いで細胞及び磁性ナノ粒子が入った15mlポリプロピレン製容器を、Model L1 Frantz等力磁力分離器を使用して分離にかけた(S.G.Frantz社、ニュージャージー州トレントン)。フルオロポリマーでコーティングした粒子は、強力な磁場をかけると速やかに容器の底に沈降し、浮遊細胞が上部に残る。暗褐色の粒子の層と黄色味がかった浮遊細胞層とは明らかに区別される。浮遊細胞を含んだ液層をピペットで静かに取り除き、等量の脱イオン化水を加えた。粒子の懸濁液を振盪し、再び磁場により分離にかけた。この液体置換、分離及び除去の手順を3回繰り返した。分離と洗浄を繰り返した後、磁性粒子をオーブンに入れて重量が一定となるまで90℃で乾燥し、最終重量を同様のサンプルの最初の粒子含量と比較した。5つのサンプルについて粒子の回収率を試験したところ、99±5%であった。すなわち磁性粒子を完全に回収することができた。
【0094】
フッ素化コポリマーとしてポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−コ−ジフルオロメチレンオキシド)α,ω−ジカルボン酸を用いた磁性流体
フッ素化コポリマーとしてポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−コ−ジフルオロメチレンオキシド)α,ω−ジカルボン酸(Aldrich Chemical社より入手)を用いて実施例4に述べるようにナノ粒子を調製した。ナノ粒子の毒性について実施例5に述べるように試験を行った。図4に示されるように、磁性流体を用いない対照実験では、磁性流体を用いた実験と比較して細胞の増殖が早かった。これは媒体中に存在するモノマーによって導入されたなんらかの毒性による結果と考えられる。しかし、粒子存在下の細胞もやがて増殖し、より高い細胞密度に達した。この現象は、磁性粒子存在下での細胞数が明らかにより多かった第2の実験においてより明確に観察された。
【0095】
発酵プロセスにおけるフルオロポリマーコーティングを有するナノ粒子によるE.coli増殖の促進
本発明の粒子の促進効果を調べるための発酵実験を行った。実施例1で合成した粒子を用いて実施例3に示す実験状況下で発酵を行った。本発明のナノ粒子の細胞増殖促進効果を実証する主な結果を図3に示した。
【0096】
フルオロポリマー改変磁性ナノ粒子を用いた他の発酵実験を更に行った。酸素移動速度(全体の質量移動係数によって測定される)が大幅に増大するという重要な結果が得られた。これらの発酵の結果を下記に表1にまとめて示した。表1の結果から、2%(w/v)のフルオロポリマー改変磁性ナノ粒子を使用した場合、対照発酵実験(0%)と比較して全体の酸素移動量で425%の増加が、4%(w/v)のフルオロポリマー改変磁性ナノ粒子を使用した場合、全体の質量移動係数で443%の増加が見られたことが分かる。酸素移動係数におけるこうした増加は、組換え細胞や一次及び二次代謝産物を産生する細胞による生産物の濃度の増大につながる。
【表1】

【0097】
この方法にはいくつもの効果がある。第一に、従来の攪拌、通気型の発酵器において何らの機械的変更を行うことなく酸素移動速度の増加を実現できることである。第二に、いずれのタイプの発酵器を使用しても酸素移動速度の増加が期待できると考えられることである。例えば、別のタイプの発酵器としては、機械的攪拌を行わない従来の気体拡散式発酵器や、ドラフト管を有するエアリフト式発酵器がある。これらの結果は、本発明の磁性ナノ粒子による細胞増殖の促進効果を実証するものである。
【0098】
実施例8で調製したZONYL8740で改変した磁性ナノ粒子に関しても、2%の粒子固形分濃度で振盪フラスコ実験を行って細胞増殖に対するナノ粒子の影響について試験した。この粒子試験の詳細は実施例5に述べた。この粒子試験の結果を図9に示した。この結果は、対照と比較して吸光度が3倍高かったことに示されるように、フルオロポリマー改変マグネタイト粒子によって細胞増殖が促進されることを示すものである。
【0099】
走査電子顕微鏡法(SEM)
実施例7で調製したフルオロゲルでコーティングした磁性ナノ粒子、及び凍結乾燥したフルオロゲルをSEMによって調べた。乾燥させたサンプルをSEMのスタブに非導電性の接着剤とともに載せ、100〜200ÅのAu/Pdをスパッタリングでコーティングした。粒子の画像をJEOL6320 FE−SEM顕微鏡で異なる倍率で撮影した。磁性粒子なしのフルオロゲルの写真を図7に示した。
【0100】
図に示されるようにフルオロゲルは高次の多孔構造を有し、水中で膨潤する。こうした構造のために、溶存酸素及び他の溶質のフルオロポリマー層を通じた浸透が妨げられることがなく、発酵プロセスにおける酸素供給が促進される。
【0101】
図8は、凝集したフルオロゲル構造中で沈殿したマグネタイト粒子の構造を示したものである。このマグネタイト粒子は結晶性が高く、より大きなポリマー性凝集塊中でクラスター構造として観察される(図8の右側の写真)。
【0102】
炭化水素二重層:第1の炭化水素部分
フルオロポリマー以外に、本発明のナノ粒子の有機相としては炭化水素二重層を用いることができる。炭化水素二重層は、互いに化学的に結合した第1及び第2の炭化水素部分を含む。
【0103】
第1の炭化水素部分としては、無機粒子に結合可能であるとともに第2の炭化水素部分に化学的に結合可能なあらゆる炭化水素を用いることができる。第1の炭化水素部分を無機粒子に結合させる結合基は、当該無機化合物に対して共有結合、イオン結合、または配位結合(ルイス塩基とルイス酸との相互作用)を形成することができるいかなる官能基であってもよい。無機化合物が金属酸化物を含む場合、金属は正の酸化状態にある。正の酸化状態にある金属はほとんどすべての場合においてルイス酸性であり、したがってルイス塩基として働く異なる部分に対して結合できる。一般にルイス塩基として働く部分はpKaが約7よりも小さく、より好ましくは5よりも小さい強酸性基であり、適当な条件下で金属イオンに電子対を供与して配位結合を形成するだけの充分に強いルイス塩基として働く共役塩基を生ずる。このルイス酸/ルイス塩基の相互作用の強さは、特定の金属イオンだけではなく、配位する部分自体の関数である。これは配位部分は、塩基性度、サイズ、及び立体的アクセシビリティーにおいて異なるためである。
【0104】
第1の炭化水素部分に含まれうる、酸素含有部分からなるルイス塩基部分の例には、酸、アルコール、アルコキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、無水物などが含まれる。
【0105】
第1の炭化水素部分に含まれうる、硫黄含有部分からなるルイス塩基部分の例には、チオール、スルフィド、チオカルボニル(例、チオールカルボキシル、チオエステル及びチオホルミル基)、チオエーテル、メルカプタン、スルホン酸、スルホキシド、硫酸塩、スルホン酸塩、スルホン、スルホンアミド、スルファモイル、スルフィニルなどが含まれる。
【0106】
第1の炭化水素部分に含まれうる、窒素含有部分からなるルイス塩基部分の例には、アミン(1級、2級及び3級)及び芳香族アミン、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノアルコール、ニトリル、イミノ基、イソニトリル、シアネート、イソシアネート、カルバモイル基などが含まれる。
【0107】
第1の炭化水素部分に含まれうる、リン含有部分からなるルイス塩基部分の例には、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、ホスフィン、酸化ホスフィン、ホスホロチオエート、ホスホアミダイト、リン酸エステルなどが含まれる。
【0108】
第1の炭化水素部分に含まれうる他の好適なルイス塩基としては、下記のルイス塩基が挙げられる。すなわち、アルシン、スチルビン、チオエーテル、セレノエーテル、テルロエーテル、チオケトン、イミン、ホスフィンイミン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、チオフェン、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、アミド、アルコキシ、アリオキシ、セレノール、テルロール、シルオキシ、ピラゾイルボレート、カルボキシレート、アシル、アミデート、トリフレート、チオカルボキシレートなどが含まれる。
【0109】
第1の炭化水素部分の炭化水素鎖は、分枝状または非分枝状炭化水素であってよい。炭化水素鎖は、その鎖中にヘテロ原子を含んでもよく、鎖に一般的な有機基が結合していてもよい。炭化水素鎖中の炭素原子量は、炭素原子約4〜約50個、または約10〜約40個、または約15〜約30個である。炭化水素鎖はさらにアリール基のような芳香族部分を有していてもよい。第1の炭化水素部分を第2の炭化水素部分に結合させる結合基は、第2の炭化水素部分に対して共有結合、イオン結合、または配位結合を形成することができるいかなる官能基であってもよい。この結合基は求核性または求電子性のものであってよい。この結合基が求核性のもの(例、アミン、水酸基、チオールなど)である場合、第2の炭化水素部分上の化学結合を形成する結合基は求電子性である。逆に、この結合基が求電子性のもの(例、アルデヒド、ケトン、エステルなど)である場合、第2の炭化水素部分上の化学結合を形成する結合基は求核性である。第1の炭化水素部分を第2の炭化水素部分に結合させる結合基は、不飽和の炭素−炭素結合であってもよい。例えば、第2の炭化水素部分上の結合基は求核性基であってもよく、あるいは別の不飽和炭素−炭素結合であってもよい。前者の例では、炭素とヘテロ原子間に共有結合が形成され、後者の例では、炭素−炭素結合が形成される。
【0110】
炭化水素二重層:第2の炭化水素部分
第2の炭化水素部分は、第1の炭化水素部分の結合基に結合可能な結合基を有し、約3〜約50個の炭素原子からなる炭化水素部分からなる点は第1の炭化水素部分と同様であるが、無機化合物に結合可能な結合基の代わりに親水性基を有する点で異なっている。親水性基は当該技術分野で一般的に知られるいずれの親水性基であってもよい。親水性基は一般に極性基であり、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性及び双性イオン性の4つのカテゴリーのいずれかに該当する。陰イオン性基の非限定的な例としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。陽イオン性基の非限定的な例としては、アンモニウム及び4級アンモニウムが挙げられる。非イオン性基の非限定的な例としては、水酸基、ケトン及びアルデヒドなどのカルボニル基、ポリオキシエチレンなどのポリオキシアルキレン、スクロース、ソルビタン、グリセロール及びエチレングリコールなどのポリオールが挙げられる。双性イオン性基の非限定的な例としては、ベタイン、スルホベタイン、アミノ酸、及びポリペプチドが挙げられる。2以上のカテゴリーから選ばれる2以上の親水性基を組合わせて親水性基を形成することも可能である。例えば一実施形態では、親水性基はスルホネート基を末端に有するアルキレンオキシドであってもよい。この親水性基は、ナノ粒子の水性懸濁液中でのコロイド安定性に寄与していると考えられている。
【0111】
気体の可逆的可溶化
本発明のナノ粒子の特徴として、可逆的に気体を可溶化することが可能な有機相を有する点がある。この有機相は、こうした特性を有するいかなる有機相であってもよい。有機相は、ポリマーやコポリマーなどの1種類の化合物からなる均質なものであってもよい。こうした有機相の例として、フルオロポリマーやフルオロコポリマーがある。有機相は炭化水素二重層のような2以上の化合物からなる2以上の異なる相を含んでいてもよい。重要な点として、異なる種類の有機相に共通の特性として、例えば酸素などの気体を可逆的に可溶化できることがある。気体を可逆的に可溶化可能なこうした性質のために本発明のナノ粒子は発酵などの各種のバイオプロセスにおいて理想的である。
【0112】
気体を可逆的に可溶化する性質を測定する幾つかの方法が当該分野で知られている。以下はこの性質の同定及び定量化に用いることができる方法の非限定的な例である。
【0113】
第1の方法は、電極法(Gassing−out法)の使用によって無細胞媒体中での酸素移動の促進を測定する技術を利用したものである(実施例11)。
【0114】
この方法の目的は、簡単な電極法を用い、溶存酸素濃度を測定することによって、実験室系で、有機相が酸素の物質移動容積係数(ka)にどのような影響を与えるかを評価することである。
【0115】
実験に使用する器具は、溶液(水のみ、または水と有機相含有物質)を充填した円筒形のビーカーである。溶存酸素は、データ取得計(YSI5100)に接続された溶存酸素ポーラログラフィックセンサー(YSI5010)によって測定する。この溶存酸素計は、各測定間での若干の大気圧の変動を補正する内蔵型の気圧計を有している。ビーカーの温度は水浴によって37±0.5℃に調節され、溶液のpHは実験開始前に7,0に調整される。
【0116】
本発明のナノ粒子の有機相について、この方法における応答曲線を図12に示した。この応答曲線は、第1の工程において、溶存酸素濃度が0に低下するまで窒素をスパージし、次いで第2の工程において、液体の自由面が室内の空気に触れることによる溶存酸素濃度の増加を観測することによって得られたものである(図12にはこの第2工程のみを示した)。一定の気液界面を確保して実験を容易に行うために、第2工程では空気のスパージングを行わなかった。比較的長時間(〜1時間)で実験を行うことで、プローブの時定数によって応答曲線が影響されることがない。
【0117】
図11のデータは、粒子濃度の増大にともなって応答時間が減少することを示している。
【0118】
物質移動係数の促進率を定量化するため、以下の分析を行った。
【0119】
液相への酸素移動速度は、下記一般式によって表される。
【数1】

【0120】
式中、O.T.R.は酸素移動速度であり、kは液相の物質移動係数であり、aは界面の比表面積であり、Cは気液界面における酸素濃度であり、Cは液相中の酸素濃度である。
【0121】
式[1]の積分形を用いて図12に示した応答曲線のデータからkaを計算することができる。
【数2】

【0122】
ただしt=0のときC=0であり、Rは積分定数である。時間に対してln(C−C)をプロットした対数グラフの負の傾きがkaの値である。
【0123】
図12の傾きを調べることによって、0.5%及び1%の粒子を使用することにより、それぞれ物質移動係数が37%及び80%の促進率で促進されたことが分かる。これらの図は、0.5%及び1%の曲線を対照の傾きで割ることによって得られたものである。
【0124】
別の方法は、亜硫酸塩酸化法(実施例13)を用いることによって実験室スケールの発酵器における酸素移動の促進を調べるものである。
【0125】
この方法の目的は、発酵の分野ではよく知られた方法である亜硫酸ナトリウム法を用いることによって、実験室スケールの通気発酵器において、有機相が酸素の物質移動容積係数(ka)にどのような影響を与えるかを評価することである。この方法は亜硫酸ナトリウム溶液を使用して行った。亜硫酸ナトリウム溶液はCu2+触媒の存在下では下記反応によって酸化される。
【数3】

【0126】
本反応の速度論は亜流酸塩濃度とは独立であり、酸素の消費速度が充分に大きいことから、化学的反応ではなく、気体から液体への酸素の輸送速度が律速段階となる。したがって、反応の速度を測定することによりkaを計算することが可能である。本発明のナノ粒子を用い、オフガス組成を測定し、反応器中の酸素に質量バランスを行うことによってこれを行った。
【数4】

【0127】
式中、(FN2inは反応器に供給されるNの流速であり、CO2及びCN2は、反応器に供給される、あるいは反応器から排出される酸素及び窒素の濃度であり、Vは作用容積である。
【0128】
これにより物質移動容積係数は下式によって求められる。
【数5】

【0129】
ただし、式[5]中のすべての項は式[1]において先に定義したものである。気液界面における平衡濃度であるCの値は、排気口での平衡値に相当する。したがってこの値を用いることにより液相が完全に混合されているものと仮定することができる。
【0130】
表2に、一方は粒子なしの対照として行い、他方は1.4%(w/v)の粒子を用いて行った本発明のナノ粒子に関する2つの実験において得られた結果をまとめた。用いた攪拌速度及び通気速度の範囲において物質移動係数が顕著に促進されたことが分かる。
【表2】

【0131】
aの測定値は一定の通気速度において単位容積当りの入力との相関が見られた。得られた機能性を図15に示した。
【0132】
気体を可溶化する性質を測定及び定量化するための第3の方法では、発酵実験を行って有機相の酸素物質移動促進性能を調べる。この実験では、発酵プロセスにおける例えばE.coliなどの細胞の増殖の促進能を測定する。対照及び実験的発酵プロセスを行う。実験的プロセスで有機相含有物質を用いる(実施例14)。
【0133】
本発明のナノ粒子を用いた発酵プロセスの結果を図16〜18に示した。これらの結果は、粒子が酸素の物質移動を促進することによって細胞増殖を促進する能力を有することを示すものである。図16は、わずか0.56%(w/v)の磁性ナノ粒子を使用することによって、酸素移動が制限された条件下で細胞を培養した場合に高い細胞増殖速度が維持されることを示している(図16では、酸素制限下での増殖開始は約5時間であり、いずれの培養細胞も酸素制限条件下で実験終了まで増殖した。)。図17は、培養細胞が酸素制限条件下で培養された場合、5時間後では、細胞の増殖率の指標であるグルコース消費が磁性ナノ粒子の存在下でより早いことを示しており、図16のデータを裏づけするものである。最後に図17は、質量分析器(Perkin Elmer MGA1600)によって測定される、オフガス分析の指示値から計算した上記2実験における酸素吸収速度を示したものである。酸素制限培養期間中、0.56%(w/v)の粒子の存在下で培養した培養細胞によって吸収された酸素の全体量は、対照におけるよりも50%大きい。したがって酸素の物質移動容積係数は磁性ナノ粒子の存在下では50%大きい。
【0134】
酸素移動係数のこうした増大は、組換え細胞や一次及び二次代謝産物を産生する細胞による生産物の濃度の増大につながる。
【0135】
したがって、酸素移動速度の増加が、従来の攪拌、通気型の発酵器において発酵器に何らの機械的改変を行うことなく実現されたことになる。第二に、いずれのタイプの発酵器を使用しても酸素移動速度の増加が期待できると発明者等は確信している。例えば、機械的攪拌を行わない従来の気体拡散式発酵器や、ドラフト管を有するエアリフト式発酵器である。これらの結果は、本発明の磁性ナノ粒子による細胞増殖の促進効果を実証するものである。
【0136】
酸素などの気体を可逆的に可溶化することが可能な有機相の非限定的な例としては、少なくとも1個の極性基を有すると共に少なくとも10個の炭素原子を有する陰イオン性及び陽イオン性界面活性剤、オレイン酸などの不飽和脂肪酸またはその塩、スルホン化油またはその塩、合成または天然スルホネートまたはその塩、ポリブテンコハク酸またはその塩、ポリブテンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、アクリルアミドやパーフルオロポリマーなどのポリマーが挙げられる。
【0137】
更なる応用例
酸素移動促進剤以外にも、本発明の磁性ナノ粒子とその水性コロイドには、医療科学やバイオテクノロジーの分野において有望な応用例が考えられる。こうした応用例としては、これらに限定されるものではないが、磁力によって促進された細胞分離や、in vivoでの薬剤のターゲティングなどがある。In vivoでの薬剤のターゲティングは、磁性粒子のコーティングに薬剤を選択的に吸着させ、これに外部から磁場を作用させて体内の特定の組織に集中させることによって行うことが可能である。このように組織の特定部位に磁性流体を誘導する方法は、網膜修復治療などにおける利用が期待されている。
【0138】
同様に興味深い応用例として、磁性ナノ粒子及び磁性ナノ粒子を用いた磁性流体を利用した多くの機械的用途がある。磁性流体はその優れた性質(長期安定性、高い磁気飽和及び初期の磁化率、低粘度及び蒸気圧、顕著な凝集を起こさない、重力場中での安定性、適正な熱伝導率)のために下記のような多くの応用例が考えられる。
【0139】
1.熱伝達の集中;
2.ハードディスクドライブ用などの、連結部がなく保守の要らない高速回転シール(液体O−リング);
3.ラウドスピーカーシステムの音声コイル用の制動素子;
4.熱担体;
5.磁気記録技術によって読み取られる署名やバーコード用のインクジェット印刷用の磁気インク;
6.非磁性材料の磁気分離(リサイクリング技術);及び
7.測定機器、トランスデューサ、センサーなど。
【0140】
例として、磁気流体によって機械的、電磁気的、及び航空力学または流体力学的計測用の異なる種類のセンサーの製造において多くの利用が考えられる(Rosenzweig,R.E.,Ferrohydrodynamics,Cambridge Univ.Press 1985;I.Anton,I.De Sabata,L.Vekas,Application oriented researches on magnetic fluids,Jour.Mag.Mag.Mater.85,219,1990;K.Raj,B.Moskowitz,R.Casciari,Advances in ferrofluid technology,Jour.Mag.Mag.Mater.149,174,1995)。特に、必要とされる加速度計素子の特定の磁気流体条件(質量サスペンション、弾性定数、慣性質量、比例減衰、磁気流体浮上サーボループ)を満たすことから、加速度計の設計及び製造における磁性流体の利用が好ましい(M.I.Piso,Magnetic Liquid Accelerometers,Rom.Jour.Phys.47,437,1995)。幾つかのタイプの加速度計及び傾角計が実現され、その応用分野は油田探索から基礎研究分野にまで亘っている。10−10〜100ms−2の範囲の感度、静止状態から数10Hzの周波数領域、及び最大で16ビットの精度が実現されている(K.Raj,B.Moskowitz,R.Casciari,Advances in ferrofluid technology,Jour.Mag.Mag.Mater.149,174,1995:M.I.Piso,Magnetic Liquid Accelerometers,Rom.Jour.Phys.47,437,1995)。
【0141】
この種のセンサーの主な特徴は、準静的及び低周波数の慣性及び重力変動に対する顕著な応答であり、これは多くの一般的センサーにとっては困難な課題である。高感度及び直線性計測の分野において必要とされる性能が実現可能であり、慣性磁性流体センサーによって同等の性能で小型化及び省コスト化が可能である。地球潮汐や地震観測、地球物理学的調査、慣性誘導などの先進的な応用例では、これらのセンサーは超伝導素子と性能において競合するものである。磁性流体を用いたセンサーや、場合によっては磁性流体材料の特定の内在的効果によって直線及び角運動の双方を感知することが可能である。
【0142】
更に磁性ナノ粒子には、複写用途用の磁性インクトナーとしての用途が考えられる。複写プロセシングでは、紙などのシート状基材に印刷イメージを形成する。複写プロセシングの例としては、ファクシミリ通信、コピーの作成、コンピューターに電子的に保存された情報の印刷などがある。過去数年間の技術的進歩によって高品質かつ比較的低コストの白黒印刷用途のファクシミリ、コピー機やプリンターが普及してきた。しかしながらカラー印刷用途では同様の低コスト、高品質の機器は開発されていない。
【0143】
近年、高品質のカラーインクジェットプリンターが登場した。こうしたプリンターでは、液体のジェット噴射を利用して紙にカラーイメージを形成している。印刷されたイメージは高品質であるものの、この印刷プロセスはスピードが遅く、特殊な紙を必要とするためにコストが嵩む。
【0144】
カラーレーザープリンターも登場した。カラーレーザープリンターでは、乾燥トナーをドラムに機械的に塗布して所望のイメージを現像する。しかしながらこうしたカラーレーザープリンターは多重現像方式であり、各色を個別に現像して最終的な所望の複合カラーイメージを形成しなければならない。多重現像方式では個別のカラーイメージは中間装置に転写されて保存され、ここで個別のカラーイメージを重ね合わせることによって複合イメージが形成される。完成した複合イメージは紙に転写されて印刷される。したがって各色は個別の工程で現像されるため、印刷動作が非常に遅くなり、中間保存装置のためにコストが嵩み装置が複雑化してしまう。
【0145】
ドラムに機械的にトナーを塗布する必要のない白黒印刷では、高速で比較的安価なレーザープリンターが普及している。こうしたプリンターでは、トナー粒子中に包埋された磁性粒子の働きによってトナー粒子がギャップを「ジャンプ」してドラムに到達し、イメージが現像される、「ジャンプギャップ」技術を用いている。このようなジャンプギャッププロセシングではドラムにトナーを機械的に塗布する必要がない。したがって現在のカラーレーザープリンターの多重現像方式の負担やコストをともなわずに、こうしたレーザープリンターでカラー印刷を実現できる可能性がある。しかしながら、ジャンプギャップ技術をカラー印刷に適用する際に問題となる点として、トナーに使用される磁性粒子の本来の色によって、所望の色を与えるためにトナーに用いられる顔料や色素の鮮明度がぼやけたり、歪んだりしてしまうことがある。
【0146】
磁性粒子による色のぼやけや歪みを低減させる一つの提案として、磁性粒子としてγ−Feナノ粒子を使用することがある(R.F.Ziolo et al.,Matrix−Mediated Synthesis of Nanocrystalline gamma−Fe2O3:A New Optically Transparent Magnetic Material,Science,vol257,July 1992,pp.219−223)。こうした粒子は粒径が小さいことから、トナー組成物に現在用いられている大型の磁性粒子よりも透明性が高いと考えられ、現在用いられている磁性粒子ほどには色の歪みがないと考えられている。
【0147】
ナノ粒子技術及び磁性分野の当業者であれば上記に述べたものよりも更に多くの応用例が想到されよう。上記の応用例は、飽くまで例示的なものであっていかなる意味でも発明を限定するものではない。
【実施例】
【0148】
ここまで本発明を一般的に説明してきたが、本発明は以下の実施例を参照することでより容易に理解されよう。以下の実施例は、飽くまで本発明の特定の側面及び実施形態の説明を目的として記載するものであって本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。
【0149】
実施例1
弱酸性電荷を有するフルオロポリマーによって安定化されたFeナノ粒子の合成
以下の化学反応はナノ粒子の合成を説明したものである。
【化13】

【0150】
容量1000mlの三口フラスコ中で脱イオン化水(100mL)を室温で攪拌しながら窒素をバブリングして脱気した。次いで47gの塩化鉄(III)六水和物(Aldrich,97%,CAS10025−77−1,Cat.No.23,648−9,Lot 06029HU,MW270.30 FeCl.6HO)と17.2gの塩化鉄(II)四水和物(Aldrich,99%,CAS13478−10−9,Cat.No.22,029−9,Lot#19329LI,MW198.81 FeCl.4HO)を加え、各塩が溶解するまで窒素気流下でフラスコを攪拌し、油浴中で80℃に昇温した。窒素のバブリングを停止した。80℃に達した時点で、720mLのFluorolink(商標)(pH14、分散液:30%NHOH=1:1v/v)の12.5%溶液を激しく攪拌しながら一度に加えた。溶液は直ちに黒色に変化した。この混合物を攪拌しながら80℃に30分保ち、室温にまで冷却して装置を分解した。粒子の懸濁液を約6分間超音波処理した。得られた分散液は磁性を有し、室温で一晩静置したところ不安定であった。この合成を5回繰り返し、得られたフルオロポリマー改変粒子を大きなバッチで回収した。
【0151】
各バッチを加え合わせ、室温で静置して沈殿させた。沈殿物を上清から分離して60℃で3時間乾燥した。得られた粒子の黒色の塊をZonylFSAで希釈し(粒子:Zonyl=1:1w/w)、混合物を4日間、時折攪拌しながら放置して平衡化させた。
【0152】
得られた粘性溶液を透析管(MWCO6〜8kDa)に流し、脱イオン化水に対して一週間、毎日5回水を交換して透析した(毎回の交換での水の量=20L(バケツで))。
【0153】
得られた粒子懸濁液を10分間超音波処理し、室温で少なくとも1週間静置したところ粒子の沈降はまったく見られず安定であった。粒子は高フッ素含量(44wt%)であり、鉄を含有していた(5wt%)。粒子は非常に強い磁性を有していた。
【0154】
実施例2
フルオロポリマーでコーティングされたナノ粒子の無害性
以下の細胞株と培地を用いて振盪フラスコバッチ実験を行い、実施例1で調製したナノ粒子の毒性を試験した。
【0155】
・菌株:コラーゲン様ポリマーCLP3.1を発現させるためにpET−15b(CLP3.1)を導入したE.coli BL21(DE3)。
【0156】
・種培養(/L)用のLB培地
NaCl 10g
トリプトン 10g
酵母抽出物 5g
・発酵培養(/L)用のMR培地
KHPO 13.5g
(NHHPO 4.0g
MgSO・7HO 0.7g
クエン酸 0.85g
10g/L FeSO・7HO 10.0mL
微量金属溶液(TE) 10.0mL
20g/L CaCl・2HO 1.0mL
試験では以下の手順を行った。
【0157】
・種培養
−500mL振盪フラスコ中100mL LB
−37℃、220rpmで一晩培養
・発酵培養
−振盪フラスコでのバッチ培養
−500mL振盪フラスコ中、20g/Lグルコースを加えた100mL MR培地
−10%(v/v)播種容積
−PCMPの量:0、0.5、1.0、2.0、4.0%(w/v)
−37℃、220rpm
実施例3
発酵プロセスにおけるフルオロポリマーコーティングを有する磁性ナノ粒子によるE.coli増殖の促進
本発明の粒子の促進効果を調べるための発酵実験を行った。実施例1で合成した粒子を用いて下記に示す実験状況下で発酵を行った。
【0158】
・種培養
−500mL振盪フラスコ中100mL LB
−37℃、220rpmで一晩培養
・発酵培養(7.5L 発酵器)
−播種容積:10%(v/v)
−初期発酵容積:3L
−温度:37℃
−遥動速度:600rpm
−pH=6.8−6.9、4M(NHOH:MaOH=2:2)にて調整
発酵は以下のように二段階で行った。
【0159】
第1段階:グルコースが0に低下するまでバッチ培養(8〜9時間)
第2段階:(500g/L フルコース+10g/L MgSO・7HO)を与えたpH安定栄養供給バッチ培養。
【0160】
実施例4
フッ素化コポリマーとしてポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−コ−ジフルオロメチレンオキシド)α,ω−ジカルボン酸を用いた磁性流体の調製
酸化鉄粒子の改変に用いたポリマーは、Aldrich Chemical社から入手したポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−コ−ジフルオロメチレンオキシド)α,ω−ジカルボン酸である。このポリマーは、その鎖の両端に2個のカルボン酸基を有している。ポリマーは非水溶性であるが、28〜30%NHOHには完全に溶解する。
【0161】
35mLのMilli−Q水を激しく攪拌しながら約20分間Nガスを通気して脱気した。窒素雰囲気下で2.35gのFeClと0.86gのFeClを加え、熱電対で制御された油浴中で溶液を72℃に昇温した。温度が72℃に達した時点でNラインを外し、10mLの濃NHOHに溶解した6gのポリマーを素早く溶液に加えた。激しく攪拌しながら80℃で30分間反応を行い、磁性流体を得た。
【0162】
この懸濁液を希釈し、磁気フィルターに通して未反応の望ましくない遊離ポリマーを媒体から除去した。この磁性流体溶液を濃縮するため、分子量10,000をカットオフ値とする超遠心透析膜を用いた。
【0163】
実施例5
実施例4で調製した磁性流体を用いた毒性試験
対照1
3本の250mL培養フラスコにそれぞれ25mLのMR培地(実施例2及び3で述べたもの)を入れ、各フラスコをオートクレーブにかけた。オートクレーブ終了後、2mLの濾過(1μmの孔による)グルコース(500g/L)を各フラスコに加えた。各フラスコに50μLの抗生物質を加えた。3mLの種培養(実施例3及び4)を各フラスコに加えて10%溶液とした。
【0164】
粒子1
25mLのMR培地に代えて、22mLのMR培地と3mLの1wt%MFを加えた以外は、対照1と同様に調製した。
【0165】
対照2
3本の250mLフラスコのそれぞれに入れられた27mLのMR培地をオートクレーブにかけた。10時間後の対照1溶液を3mL、MR培地に加えた。
【0166】
粒子2
24mLのMR培地と3mLのMF溶液が入れられた3本の250mLフラスコのそれぞれをオートクレーブにかけた。10時間後の粒子1溶液を3mL、MR培地に加えた。
【0167】
実施例6
強酸性電荷を有するフルオロポリマーによって安定化されたFeナノ粒子の合成
この実施例は、強酸性のスルホン基を有する予め調製されたフルオロポリマーによって改変された磁性ナノ粒子の合成法ならびに性質を説明するためのものである。
【0168】
この合成法を説明する化学反応は実施例1の化学反応と概ね同様である。すなわち、アンモニアと特定のフルオロポリマーの存在下でFe3+/Fe2+水溶液から沈殿させることによってマグネタイトナノ粒子を合成する。本実施例で用いたフルオロポリマーは、Dupont Fluoroproducts社(デラウェア州ウィルミントン)からNafion Dispersionの商標名で販売されているパーフルオロスルホン酸/テトラフルオロエテンコポリマーである。Nafion樹脂は、テトラフルオロエテン(TFE)と、パーフルオロアルキルスルホニルフルオリド側鎖を有するトリフルオロビニルエーテルとの共重合反応による生成物である。パーフルオロアルキルスルホニルフルオリド側鎖は、加水分解後にスルホン酸生成物に変えられる。
【化14】

【0169】
合成反応の条件下で、磁性ナノ粒子の顕著な凝集を引き起こさない最も適当なNafion樹脂を評価するために一連の合成反応を行った。低級脂肪族アルコールと水の混合物にNafion(登録商標)(eqMW1,100)を溶解した溶液(Aldrich 52,712−2,lot#10723EO,CAS31175−20−9)を用いた場合、得られた粒子は大型(直径数ミリメートル)のゴム状の粉砕不能な凝集物であり、ほとんど水に分散しないものであった。しかしながら、Nafion(登録商標)(Type DE1021,lot#SG01−002)の水性分散液では下記に述べるような好適な生成物が得られることが判明した。
【0170】
容量500mlの三口フラスコ中で脱イオン化水(30mL)を室温で攪拌しながら窒素をバブリングして脱気した。次いで14.1gの塩化鉄(III)六水和物(Sigma−Aldrich,98%,CAS10025−77−1,Cat.No.207926,batch#12806BA,MW270.30 FeCl.6HO)と5.16gの塩化鉄(II)四水和物(Aldrich,99%,CAS13478−10−9,Cat.No.22,029−9,Lot#16324JO,MW198.81 FeCl.4HO)を加え、各塩が溶解するまで窒素気流下でフラスコを攪拌し、油浴中で80℃に昇温した。窒素のバブリングを停止した。80℃に達した時点で、Nafion(登録商標)の12%溶液(200ml,DuPont Type DE1021,lot#SG01−002)と50mLの28%NHOH水溶液の混合物を激しく攪拌しながら一度に加えた。溶液は直ちに黒色に変化した。この混合物を攪拌しながら80℃に2時間(分)保ち、室温にまで冷却してフラスコを分解した。粒子の懸濁液を約15分間超音波処理した。得られた微小分散液を重量が一定となるまで90℃で乾燥した。得られた粒子は強い磁性を有し、平均径は約2〜10μmであった。走査電子顕微鏡によって、フルオロ炭素コーティングされた粒子の内部に粒径が8〜10nmの磁性沈殿物の塊が観察された。室温で1mM KClに懸濁した200ppmマイクロ粒子懸濁液で、pHを5M HCl及びNaOHで調整してζ電位を測定した。ζ電位の測定値は、pH1.9、6.5、及び12.4でそれぞれ−18.35±0.67、−17.95±0.50、及び−19.05±0.65mVであった。すなわち、ζ電位は負の値であってpHに依存していた。このことは粒子表面に強酸性基があることを示すものである。負の電荷によって懸濁液は発酵実験の間、コロイドとして安定化した。
【0171】
実施例7
In situで調製したフルオロポリマーで改変されたFeナノ粒子の合成
この実施例は、磁性ナノ粒子の沈殿と同時に起こるフリーラジカル重合反応によって調製されるコポリマーで改変された磁性ナノ粒子の調製方法を説明するためのものである。
【0172】
このコポリマーの構造には幾つかのビニルモノマーが含まれる。すなわち、疎水性のフッ素含有モノマー、2−(パーフルオロアルキル)エチルメタクリレート(Zonyl(登録商標) TM)、帯電性モノマー、メタクリル酸(MA)、及び架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)である:
CH=C(CH)COOCHCH(CF)
ZONYL(登録商標);n=8、M534、フッ素含量60%
CH=C(CH)COOH
メタクリル酸
[CH=C(CH)COOCH−]
エチレングリコールジメタクリレート
【0173】
合成は、共通の溶媒として良好であることが示されたクロロホルムにすべてのモノマーを溶解して行う。この溶液を乳濁安定化剤としてパーフルオロドデカン酸を用いて水中に乳濁する。重合化反応はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)によって開始する。得られるコポリマーは架橋されたゲルである。合成法を下記に詳細に述べる。
【0174】
容量1000mlの三口フラスコ中で脱イオン化水(20mL)を室温で攪拌しながら窒素をバブリングして脱気した。次いで1.41gの塩化鉄(III)六水和物(Aldrich,98%,CAS10025−77−1,Cat.No.23,648−9,Batch 12806BA,MW270.30 FeCl.6HO)と0.516gの塩化鉄(II)四水和物(Aldrich,99%,CAS13478−10−9,Cat.No.22,029−9,Lot#19324JO,MW198.81 FeCl.4HO)を加え、各塩が溶解するまで窒素気流下でフラスコを攪拌し、油浴中で80℃に昇温した。
【0175】
一方、3.0gのZonyl(登録商標) TM(CAS 65530−66−7,Cat.#42,148−0,lot#C5223BU)、400μLのメタクリル酸、400μLのエチレングリコールジメタクリレート、150mgのアゾイソブチロニトリル(すべてAlddorich)、2mLのクロロホルム、10mgのパーフルオロドデカン酸(PN2121−3−29,Lot#7C−67,CAS307−55−1)及び3mLのNHOH(28%)の混合物を調製した。混合後、溶液を短時間超音波処理して乳濁液とした。
【0176】
80℃に達した時点で、乳濁液を前述の塩化鉄溶液に窒素ブランケット下で激しく攪拌しながら加えた。溶液は直ちに黒色に変化した。この混合物を攪拌、窒素バブリングを行いながら80℃に2時間保ち、室温にまで冷却して反応装置を分解した。
【0177】
黒色かつ粉末状のほぼ乾燥した沈殿物が生成した。この沈殿物を10mLの脱イオン化水に懸濁して、超音波処理によって均質な懸濁液とした。この懸濁液は数時間にわたって安定であった。懸濁液は強い磁性を示した。懸濁液を一定の重量となるまで90℃で乾燥し、乳鉢と乳棒で粉砕し、室温で保存した。
【0178】
別の一連の実験を、塩化鉄を添加しないことを除いて同様の手順で行って、高強度の透明なゲル粒子を得た。このゲル粒子を乾燥し、乳鉢と乳棒で粉砕し、水に懸濁して凍結乾燥した。
【0179】
室温で1mM KClに懸濁した200ppmマイクロ粒子懸濁液で、pHを5M HClまたはNaOHで調整してζ電位を測定した。フルオロゲル改変粒子の懸濁液のζ電位の測定値は、pH1.9、6.5、及び12.4でそれぞれ0.35±0.42、−12.56±0.78、及び−18.05±1.24mVであった。すなわち、ζ電位は中性pHでは負の値であった。このことは発酵プロセスでは一般的なpHでのコロイド安定性を示すものである。ζ電位のpH依存性は、粒子表面に弱酸性のカルボキシル基が存在することを示している。
【0180】
実施例8
市販のフルオロポリマーで改変されたFeナノ粒子の合成
100gの脱イオン化水に70.5gのFeCl・6HOと25.8gのFeCl・nHOを加えた溶液を窒素で連続的にパージしながら80℃に昇温した。次いで水にZONYL8740(パーフルオロアルキルメタクリルコポリマー、30%固形分)を分散させた分散液(Dupont,Lot#66,pH4)330mLを加え、得られた懸濁液を80℃に1時間保った。この分散液にNHOHの水溶液(28%、200mL)を加えると黒色の沈殿物の生成が直ちに見られた。沈殿物を80℃で乾燥して乳鉢と乳棒で粉砕した。
【0181】
実施例9
共有結合した有機層によってコーティングされた磁性ナノ粒子の合成
この実施例は、コロイドとして安定した磁性ナノ粒子の調製法を説明するためのものである。この高いコロイド安定性は、第1の炭化水素層に共有結合した第2の有機層中に、ポリ(エチレンオキシド)とスルホネート基を有する親水性部分が存在することによるものである。
【0182】
100gの水に94gのFeCl・6HOと34.4gのFeCl・4HOを加えた溶液を窒素ブランケット下、80℃で30分攪拌した。次いで水に40%オレイン酸カリウムを分散したペースト状分散液(Aldrich,CAS 143−18−0,pH12.5)を加え、得られた混合物を80℃で30分攪拌した。粘性を有する茶色の懸濁液が得られた。次いでNHOHの28%水溶液(100mL)を混合物に加えると、黒色で、オレイン酸のコーティングを有する磁性ナノ粒子が沈殿した。攪拌、窒素バブリングを行いながら80℃で30分反応を行った。この後、Hitenol BC−10の分散液(Daiichi Kogyo Seiyaki,Lot#044760)(100g)をコーティングされた磁性粒子に加えた。攪拌とバブリングを継続し、新たに調製した過硫酸アンモニウムの溶液(20mLの水に5g)を反応混合物に加えた。窒素ブランケット下、激しく攪拌しながら80℃で2時間反応を行い、Hitenolのプロペニル基の共有結合と、オレイン酸のアルキル鎖の二重結合を反応させた。次いで反応装置を室温にまで冷却して分解した。強い磁性を有し、コロイド安定性が高い黒褐色の液体が生成した。この分散液を透析水に対して透析し、70℃で乾燥した。得られた粒子を水に再分散すると、この分散液は任意のpHにおいて水中でのコロイド安定性が高く、発酵液の存在下でのコロイド安定性が高かった。Hitenol BC−10の化学式をスキーム1に示す。スキーム1には、合成マグネタイトのコロイド安定性を与えるポリ(エチレンオキシド基)とスルホネート基が示されている。
【化15】

【0183】
実施例10
実施例9で述べたナノ粒子の特徴付け
実施例9で述べた磁性ナノ粒子を、その粒径に関しては動的光散乱装置(Brookhaven Instrument社)によって、その電気泳動特性についてはSmoluchowskiζ電位モデルを用いたビルトインソフトウェアを有するZetaPalsゼータ電位分析器(Brookhaven Instrument社)によって、特徴付けを行った。この結果を図10に示した。図に示されるように、粒子は約20nmの数平均径を有し、バイオプロセスに典型的なpH(約7)を含む非常に広範囲のpHにおいて負の表面電荷を示した。したがってこの粒子は電荷的に安定であり、永続的に分散状態に保たれる。室温にて1mM KClに懸濁した1000ppmナノ粒子懸濁液で、pHを酢酸またはNaOHで調整してζ電位を測定した。
【0184】
実施例11
電極法(Gassing−out法)による無細胞培地における酸素移動促進の特徴付け
実験に使用する器具は、200mLの溶液(水のみ、または水と磁性ナノ粒子)を充填した250mLの円筒形のビーカーである。溶存酸素は、データ取得計(YSI5100)に接続された溶存酸素ポーラログラフィックセンサー(YSI5010)によって測定する。この溶存酸素計は、各測定間での若干の大気圧の変動を補正する内蔵型の気圧計を有している。ビーカーの温度は水浴によって37±0.5℃に調節され、溶液のpHは実験開始前に7,0に調整される。
【0185】
結果を図12に示す。この結果は、第1の工程において、溶存酸素濃度が0に低下するまで窒素をスパージし、次いで第2の工程において、液体の自由面が室内の空気に触れることによる溶存酸素濃度の増加を観測することによって得られたものである(図12にはこの第2工程のみを示した)。一定の気液界面を確保して実験を容易に行うために、第2工程では空気のスパージングを行わなかった。比較的長時間(〜1時間)で実験を行うことで、プローブの時定数によって応答曲線が影響されることがなくなる。
【0186】
図11のデータは、粒子濃度の増大にともなって応答時間が減少することを示している。
【0187】
実施例12
炭化水素コーティングを有する磁性ナノ粒子の無害性
実施例9で合成したナノ粒子のE.coli細胞に対する毒性について振盪フラスコ実験で試験した。使用したE.coli菌株は、BL21(DE3)[pUC18]である。初めにLB培地で種培養を行った。LB培地の組成(/L)は下記のとおり。10gNaCl、10gトリプトン、5g酵母抽出物。E.Coli細胞を、500mLの振盪フラスコに入れた100mLのLB培地中で、37℃、220rpmで一晩培養した。その後、発酵培養用のMR培地が入れられた500mL振盪フラスコに種培養をピペットで加えた。各フラスコには15g/Lのグルコースと10%(v/v)の播種された種培養を含む100mLのMR培地が入れられている。MR培地の組成(/L)は次のとおり。13.5gKHPO、4.0g(NHHPO、0.7gMgSO・7HO、0.85gクエン酸、10.0mLの10g/L FeSO・7HO、10.0mLの微量金属溶液(TE)、及び1.0mLの20g/L CaCl・2HO。各フラスコには更に以下の濃度で異なる量の磁性ナノ粒子が加えられている。すなわち全部で4本のフラスコに対して0%(対照)、0.5%、1%、2%である。4本のフラスコを用いて37℃、220rpmで発酵培養を行った。分光光度計(Hewlett Packard8452A)で600nmの光学密度を測定し、細胞増殖の指標とした。
【0188】
図13及び14に示されるように、炭化水素コーティングを有する磁性粒子は無毒性であり、細胞増殖を阻害しない。
【0189】
実施例13
実験室スケールの発酵器における酸素移動促進の亜硫酸塩酸化法による特徴付け
Ingold型のpH電極、溶存酸素電極(Bioafitte)及び温度プローブを備えた20L(5.5L作用容積)攪拌槽型反応装置(Bioafitte fermentor system, model BL20.2)で実験を行った。攪拌槽は、4基のブランド回転式スパージャーからなる底部通気部を有し、3枚羽タービン型遥動器によって遥動させた。初めに反応装置に0.67Mの亜硫酸ナトリウム溶液を供給し、次いで硫酸銅触媒の1x10−3M溶液を加えた。初めに硫酸でpHを約8.0程度に調整して高pHの亜硫酸ナトリウム溶液で通常見られる反応の加速を防止した。温度は37±0.5℃に維持した。添加した亜硫酸ナトリウムの量は溶存酸素濃度を長時間にわたって0に近い値に保つのに充分な量である。本実験では所定の遥動速度と所定の通気速度として定義される実験条件を選択し、質量分析器(Perkin Elmer MGA1600)を用いてオフガス組成を記録した。オフガス組成の値が安定化した時点で、式[4]及び[5]を用いて物質移動係数の値を計算した。この手順を異なる実験条件について繰り返した。
【0190】
実施例14
発酵プロセスにおける炭化水素コーティングを有する磁性ナトリウムによるE.coli増殖の促進
発酵実験を行って本発明の粒子の酸素に対する物質移動促進能を調べた。実施例9で合成した磁性ナノ粒子を0.56%(w/v)の濃度で発酵実験に用い、下記の実験条件で実験を行った。
【0191】
−最初にそれぞれ100mlのLB培地が入れられた5本の500mlの振盪フラスコ中、37℃、220rpmで一晩種培養を行った。
【0192】
−次に20L発酵器(5.5L作用容積)で発酵培養を行った。
【0193】
接種容積は種培養から10%(v/v)とし、温度、pH、通気速度及び遥動はそれぞれ37℃、7.0±0.1、5.0slpm及び300rpmとした。発酵は、50g/Lのグルコース濃度から開始してバッチモードで行い、この濃度が0に低下するまで行った。使用した培地は実施例12で使用したものと同じMR培地に50μg/mlのアンピシリンを添加したものを用いた。実験全体を通じ、細胞の代謝によって生成する細胞外生成物や粒子による発泡を、DOW CorningQ7−2243及びSIGMA204消泡剤の組合せを用いて制御した。
【0194】
実施例15
二酸化炭素の移動が可能な共有結合有機層によってコーティングされた磁性ナノ粒子の合成
100gの水に47gのFeCl・6HOと17.2gのFeCl・4HOを加えた溶液を窒素ブランケット下、80℃で30分攪拌した。次いで水にオレイン酸カリウムを加えた溶液(100g、20%)(Aldrich,CAS 143−18−0,pHを氷酢酸によって12.5から7.0に調整)を加え、得られた混合物を80℃で30分攪拌した。粘性を有する茶色の懸濁液が得られた。次いで[2−(メタクリルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウムクロリド(Aldrich,MW 207.7,d=1.105,CAS 5039−78−1)の75%溶液を混合物に加えた。攪拌とバブリングを継続し、4g過硫酸アンモニウムの水溶液(全体で10mL)を混合物に加え、得られた懸濁液を攪拌下、80℃に1時間保った。次いでNHOHの28%水溶液50mLを加えると、分散液は黒色に変化した。攪拌及び窒素バブリングを行いながら80℃で30分反応を行い、反応装置を室温にまで冷却し、分解した。強い磁性を有する磁性流体が生成した。磁性流体は室温で永続的なコロイド安定性を示した。
【0195】
実施例16
磁性粒子による二酸化炭素の移動
実施例15で合成した磁性ナノ粒子の、100mM NaClを含む10%水溶液を調製した。溶液のpHは最初にNaOHで12.5に調整した。この溶液500mLを、600mLのビーカー中で、23.4℃の一定温度にて攪拌下、CO(識別番号:UN1013)でスパージングし、COの吸収によるpHの変化をpHプローブ(Beckman fTM40)にて記録した。水溶液中では、二酸化炭素は異なる形態で存在する。まず二酸化炭素は水に溶解する:
CO(g)→CO(aq)
次に溶存COとHCO(炭酸)との間に平衡状態が確立される。
【0196】
CO(aq)+HO(l)→HCO(aq)
図19は、上記に述べた磁性ナノ粒子溶液のCOスパージングによるpHの低下を対照のpH低下と比較して示したものである。対照は水に100mM NaClが溶解したもので磁性粒子を加えていないものである。系におけるCOの流速が同じである場合、pHの変化は磁性ナノ粒子で大幅に遅いことが観察される。
【0197】
こうしたpHの遅い変化は、ナノ粒子の炭化水素コーティングにCOが選択的に可溶化した結果と考えられる。
【0198】
文献援用
本明細書で引用した特許ならびに刊行物をすべてここに援用するものである。
【0199】
均等物
当業者であれば、通常の実験以上のことを行わずしてここに述べた発明の特定の実施の形態に多くの均等物が存在することが認識されるか、もしくはそれを実証することが可能である。こうした均等物は特許請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1は、実施例1で述べる、フルオロポリマーによって改変された磁性ナノ粒子のζ電位及び重量平均径をpHの関数として示す図である。
【図2】図2は、実施例1で合成したフルオロポリマー改変磁性ナノ粒子の毒性試験の結果を示す図である。E.coliの細胞の増殖を600nmでの光学密度を測定することによって観測した。ナノ粒子の重量比率を図に示す。
【図3】図3は、フルオロポリマー改変磁性ナノ粒子(発酵培地中4wt%)が、発酵プロセスにおけるE.coliの増殖に与える影響を示す図である。
【図4】図4は、実施例5で調製した磁性液体の毒性試験の結果を示す図である。
【図5】図5は、実施例7で合成したフルオロポリマー改変磁性ナノ粒子の毒性試験の結果を示す図である。E.coliの細胞の増殖を600nmでの粒子/細胞懸濁液の光学密度を測定することによって観測した。粒子の含量を容量比率で図に示す。
【図6】図6は、実施例7で合成したフルオロポリマー改変磁性ナノ粒子の毒性試験の結果を、細胞増殖及び分裂の指標であるグルコース消費量の観点から示す図である。粒子の含量を容量比率で図に示す。
【図7】図7は、Zonyl(登録商標)TM、MA、及びEGDMAからなるフルオロゲルを破砕後、水中で膨潤させ、凍結乾燥したもののSEM顕微鏡写真である。
【図8】図8は、Zonyl(登録商標)TM、MA、及びEGDMAからなるフルオロゲルを破砕後、水中で膨潤させ、凍結乾燥したものの内部のマグネタイト粒子のSEM顕微鏡写真である。
【図9】図9は、フルオロポリマー(Zonyl8740)でコーティングした磁性粒子について「振盪フラスコ」実験を行った試験結果を示す図である。粒子を加えない標準的増殖培地で対照試験を行った。E.coli細胞の増殖は、600nmでの相対吸光度の増加で示される。
【図10】図10は、実施例9で述べる、炭化水素及びHitenolによって改変された磁性ナノ粒子のζ電位及び数平均径をpHの関数として示す図である。
【図11】図11は、磁性ナノ粒子濃度の上昇にともなう溶存酸素の応答曲線である。
【図12】図12は、異なる粒子濃度における溶存酸素の応答曲線の線形化を示す図である。傾きの絶対値はka値を示す。
【図13】図13は、実施例9で合成した粒子の毒性試験を示す図である。E.coliの細胞増殖を600nmでの光学密度を測定することによって観測した
【図14】図14は、実施例9で合成した粒子の毒性試験を示す図である。グルコースの消費量は細胞の増殖を示している。
【図15】図15は、対照(0%粒子)と比較した場合の、1.4%(w/v)の粒子の存在下でのkaと単位体積当りの入力(Pg/VL)との相関を示す図である。kaの単位はmmol(Lhratm)であり、Pg/Vの単位はHP/1000Lである。気体化入力は通気数相関を用いて算出した(Oyama, U., Endoh, K., Chem. Eng., 1955, 19, 2)。
【図16】図16は、粒子を用いずに行った発酵と比較した場合の、0.56%(w/v)の炭化水素でコーティングした磁性ナノ粒子を用いた発酵の、時間に対する光学密度を示す図である。
【図17】図17は、粒子を用いずに行った発酵と比較した場合の、0.56%(w/v)の炭化水素でコーティングした磁性ナノ粒子を用いた発酵の、時間に対するグルコース濃度を示す図である。
【図18】図18は、粒子を用いずに行った発酵と比較した場合の、0.56%(w/v)の炭化水素でコーティングした磁性ナノ粒子を用いた発酵の、時間に対する酸素吸収量を示す図である。
【図19】図19は、実施例16で調製した磁性ナノ粒子の10%水溶液における、COスパージによる経時的pHの変化を示す図である。
【図20】図20は、発酵における酸素移動量と、幾つかの関連したパラメータ及び測定値を示す図である。
【図21】図21は、コアが炭化水素二重層をともなっている本発明の一実施形態を示す図である。
【図22】図22は、コアが酸化鉄であり、炭化水素二重層がオレイン酸コーティング及びHitenolコーティングを有する本発明の一実施形態を示す図である。
【図23】図23は、粒子が存在する場合の水中のO濃度の初期の物理的状態を粒子が存在しない場合と比較した図である。
【図24】図24は、遥動ビーカーで物質移動の特徴付けを行うための実験装置を示す図である。この装置では、簡単なシステムで粒子をスクリーニングして物質移動を促進することが可能である。この装置の利点としては、1)初めにパージしたシステムの表面の通気による酸素吸収を調べることができる、2)緩慢な速度論を簡単に調べることができる、3)境界層効果のみであり、気泡のサイズやホールドアップ効果による問題がない、といった点が挙げられる。
【図25】図25は、式:促進率=(ka)粒子/(ka)水 によって測定される、異なる粒子の比率及び異なるRPMで得られる酸素促進率を示す図である。
【図26】図26は、経験的ラングミュア型等温線と促進率データとのフィットを示す図である。
【図27】図27は、亜硫酸酸化法の物質移動の特徴付けを行うための実験装置と異なるパラメータを示す図である。亜硫酸酸化反応は、式[3]によって説明される。酸素吸収速度は式[4]を用いて計算される。[SO2−]=0.67M、及び[Cu2+]=1x10−3Mである。
【図28】図28は、亜硫酸酸化法におけるln(ka)とln(Pg/V)及びln(V)を示す図である。Pg/Vは、単位体積当りの入力であり、Vは、見かけの速度である。
【図29】図29は、亜硫酸酸化法における一定の見かけ速度及び一定の単位体積当りの入力における促進効果を示す図である。
【図30】図30は、提案された促進効果の機構を示す図である。
【図31】図31は、ナノ粒子の界面活性を確立するための方法を示す図である。ナノ粒子を以下の方法によって精製して、すべての遊離界面活性剤を除去した。すなわち、1)48時間の透析(微量の遊離界面活性剤が残留する)及び、2)浸透液に界面活性が見られなくなるまで遠心濾過のサイクルを繰り返す。
【図32】図32は、平衡状態の表面張力の濃度依存度を測定し、ギブズ吸収等温線を用いたデータを分析することによって表面過剰性を推定するための方法を示す図である。
【図33】図33は、粒子のGL界面への拡散の特徴的時間スケールの算出法を示す図である。
【図34】図34は、E.coliを供給して行ったバッチ発酵プロセスの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機相と会合した無機化合物を含むナノ粒子であって、前記有機相が気体を可逆的に可溶化可能であることを特徴とするナノ粒子。
【請求項2】
前記無機化合物が無機酸化物であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記無機化合物が遷移金属の酸化物であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記無機化合物が第8〜第10族の遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記無機化合物が第8族の遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記無機化合物が酸化鉄であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記無機化合物がFeまたはFeであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記無機化合物がFeであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項9】
磁性を有することを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項10】
無毒性であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記気体が酸素であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記気体がCOであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記無機化合物がフッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれていることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記フッ素含有ポリマーがコポリマーであることを特徴とする請求項13記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記フッ素含有ポリマーが、フッ素化部分と非フッ素化部分とを有するコポリマーであることを特徴とする請求項13記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記気体が酸素であり、前記フッ素含有ポリマーが水性媒体中で酸素を可逆的に結合させることが可能であることを特徴とする請求項13記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記気体がCOであり、前記フッ素含有ポリマーが水性媒体中でCOを可逆的に結合させることが可能であることを特徴とする請求項13記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記有機相が互いに化学的に結合された第1及び第2の炭化水素層を有することを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項19】
第1の炭化水素層がカルボニル官能基を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項20】
第1の炭化水素層が脂肪酸を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項21】
第1の炭化水素層がオレイン酸を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項22】
第2の炭化水素層が親水性基を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項23】
第2の炭化水素層が非イオン性及び陰イオン性の親水性基を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項24】
第2の炭化水素層が、ポリオキシアルキレンスルホネート部分を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項25】
第2の炭化水素層が、ポリオキシエチレンスルホネート部分を有することを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項26】
第1及び第2の炭化水素層が、炭素−炭素一重結合を介して互いに結合していることを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項27】
前記気体が酸素であり、前記有機相が水性媒体中で酸素を可逆的に結合させることが可能であることを特徴とする請求項18記載のナノ粒子。
【請求項28】
水性コロイドを形成可能であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項29】
直径が約1〜約1000nmであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項30】
直径が約10〜約100nmであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項31】
前記気体が酸素であることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項32】
前記気体がCOであることを特徴とする請求項1記載のナノ粒子。
【請求項33】
請求項1から32いずれか1項記載のナノ粒子を含む組成物。
【請求項34】
水性コロイドであることを特徴とする請求項33記載の組成物。
【請求項35】
フッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれた無機化合物を含むナノ粒子を調製する方法であって、
(a)フッ素含有ポリマーの存在下、水溶液中で無機塩を共沈殿させ;
(b)前記工程(a)で得られた混合物を超音波処理し、さらにナノ粒子を単離する;工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記水溶液が不活性ガスによって脱気されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記水溶液がNガスによって脱気されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記無機塩が遷移金属の塩であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記無機塩が第8〜10族の遷移金属の塩であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項40】
前記無機塩が第8族の遷移金属の塩であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項41】
前記無機塩が鉄塩であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項42】
前記無機塩が塩化物塩であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項43】
前記無機塩が鉄−塩化物塩であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項44】
前記無機塩が塩化Fe(II)及び塩化Fe(III)の混合物を含むことを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項45】
無機塩の前記水溶液が、約65℃〜約85℃に加熱されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項46】
無機塩の前記水溶液が約70℃〜約85℃に加熱されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項47】
無機塩の前記水溶液が約75℃〜約85℃に加熱されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項48】
無機塩の前記水溶液が約80℃に加熱されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項49】
第1の炭化水素層と該第1の炭化水素層に化学的に結合した第2の炭化水素層とを含む炭化水素二重層と会合した無機化合物を含むナノ粒子を調製する方法であって、
(a)前記無機化合物と結合可能な第1の炭化水素部分の存在下、水溶液中で無機塩を共沈殿させ;さらに
(b)前記工程(a)で得られた生成物を、親水性基を有する第2の炭化水素部分と反応させる;工程を含み、
前記第1の炭化水素部分が前記第2の炭化水素部分と化学的に結合して炭化水素二重層を形成することを特徴とする方法。
【請求項50】
前記水溶液が不活性ガスによって脱気されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記水溶液がNガスによって脱気されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項52】
前記無機塩が遷移金属の塩であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項53】
前記無機塩が第8〜10族の遷移金属の塩であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項54】
前記無機塩が第8族の遷移金属の塩であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項55】
前記無機塩が鉄塩であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項56】
前記無機塩が塩化物塩であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項57】
前記無機塩が鉄−塩化物塩であることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項58】
前記無機塩が塩化Fe(II)及び塩化Fe(III)の混合物を含むことを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項59】
第1の炭化水素部分がカルボニル官能基を有することを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項60】
第1の炭化水素部分が脂肪酸を有することを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項61】
第1の炭化水素部分がオレイン酸を有することを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項62】
第2の炭化水素部分が親水性基を有することを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項63】
前記親水性基が非イオン性基及び陰イオン性基を含むことを特徴とする請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記親水性基がポリオキシアルキレンスルホネートであることを特徴とする請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記親水性基がポリオキシエチレンスルホネート部分を有することを特徴とする請求項64記載の方法。
【請求項66】
第1及び第2の炭化水素部分が炭素−炭素一重結合で互いに結合していることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項67】
無機塩の前記水溶液が約65℃〜約85℃に加熱されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項68】
無機塩の前記水溶液が約70℃〜約85℃に加熱されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項69】
無機塩の前記水溶液が約75℃〜約85℃に加熱されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項70】
無機塩の前記水溶液が約80℃に加熱されることを特徴とする請求項49記載の方法。
【請求項71】
媒体中への気体の移動量を増加させる方法であって、有機相と会合した無機化合物を有するナノ粒子を媒体に導入することを含み、前記有機相は気体を可逆的に可溶化可能なものであることを特徴とする方法。
【請求項72】
前記無機化合物が遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記無機化合物が第8〜10族の遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項74】
前記無機化合物が第8族の遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項75】
前記無機化合物が酸化鉄であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項76】
前記無機化合物がFeまたはFeであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項77】
前記無機化合物がFeであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項78】
気体の移動量が約400%よりも増加することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項79】
前記ナノ粒子が磁性を有することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項80】
前記気体が酸素であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項81】
前記気体がCOであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項82】
前記無機化合物がフッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれていることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項83】
前記フッ素含有ポリマーがコポリマーであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項84】
前記フッ素含有ポリマーが、フッ素化部分と非フッ素化部分とを有するコポリマーであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項85】
前記フッ素含有ポリマーが、水性媒体中で気体を可逆的に結合させることが可能であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項86】
前記有機相が互いに化学的に結合された第1及び第2の炭化水素層を有することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項87】
第1の炭化水素層がカルボニル官能基を有することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項88】
第1の炭化水素層が脂肪酸を有することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項89】
第1の炭化水素層がオレイン酸を有することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項90】
第2の炭化水素層が親水性基を有することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項91】
前記親水性基が非イオン性基及び陰イオン性基を含むことを特徴とする請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記親水性基がポリオキシアルキレンスルホネート部分を有することを特徴とする請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記親水性基がポリオキシエチレンスルホネート部分を有することを特徴とする請求項92記載の方法。
【請求項94】
第1及び第2の炭化水素層が炭素−炭素一重結合を介して互いに結合していることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項95】
前記気体が酸素であることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項96】
前記気体がCOであることを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項97】
媒体を磁場に暴露して移動させることによってナノ粒子を媒体から分離することを特徴とする請求項71記載の方法。
【請求項98】
発酵処理における細胞の増殖を促進する方法であって、培養細胞を含む発酵培地に有機相と会合した無機化合物を有するナノ粒子を導入することを含み、前記有機相が可逆的に酸素を可溶化可能であり、それによって発酵培地への酸素の移動量を増加させることを特徴とする方法。
【請求項99】
前記無機化合物が遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項100】
前記無機化合物が第8〜10族の遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項101】
前記無機化合物が第8族の遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項102】
前記無機化合物が酸化鉄であることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項103】
前記無機化合物がFeまたはFeであることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項104】
前記無機化合物がFeであることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項105】
酸素移動量が約400%よりも増加することを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項106】
前記ナノ粒子が磁性を有することを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項107】
前記無機化合物がフッ素含有ポリマーの隙間に取り込まれていることを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項108】
前記フッ素含有ポリマーがコポリマーであることを特徴とする請求項107記載の方法。
【請求項109】
前記フッ素含有ポリマーが、フッ素化部分と非フッ素化部分とを有するコポリマーであることを特徴とする請求項107記載の方法。
【請求項110】
前記フッ素含有ポリマーが、水性媒体中で酸素を可逆的に結合させることが可能であることを特徴とする請求項107記載の方法。
【請求項111】
前記有機相が、互いに化学的に結合された第1及び第2の炭化水素層を有することを特徴とする請求項98記載の方法。
【請求項112】
第1の炭化水素層がカルボニル官能基を有することを特徴とする請求項111記載の方法。
【請求項113】
第1の炭化水素層が脂肪酸を有することを特徴とする請求項112記載の方法。
【請求項114】
第1の炭化水素層がオレイン酸を有することを特徴とする請求項111記載の方法。
【請求項115】
第2の炭化水素層が親水性基を有することを特徴とする請求項111記載の方法。
【請求項116】
前記親水性基が非イオン性基及び陰イオン性基を含むことを特徴とする請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記親水性基がポリオキシアルキレンサルフェート部分を有することを特徴とする請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記親水性基がポリオキシエチレンサルフェート部分を有することを特徴とする請求項117記載の方法。
【請求項119】
第1及び第2の炭化水素層が、炭素−炭素一重結合を介して互いに結合していることを特徴とする請求項111記載の方法。
【請求項120】
発酵培地を磁場に暴露して移動させることによってナノ粒子を発酵培地から分離することを特徴とする請求項98記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2007−521220(P2007−521220A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545509(P2006−545509)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/042590
【国際公開番号】WO2005/063617
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】