説明

磁性体検知機

【課題】 MRI診断装置の強力な磁石に磁性体が吸引されないように告知する手段として、ゲートを通過しない磁性体の検知値を抑制する演算処理によって、使用者に対して適切な告知を行う磁性体検知機の提供を図る。
【解決手段】 磁束密度の変化の検出感度を高めるために複数の磁気センサをゲートの前後左右に備え、その交流信号成分を演算して各磁気センサの直流バラツキを除去し、遠方磁性体によって発生する同相信号成分を除去演算し、ゲート方向に移動しない磁性体を抑制するために前後に配置した磁気センサの信号の比率によって演算し、ゲート外を通過する磁性体を抑制するために左右単位での同相信号成分から係数を演算し、移動方向との移動速度の違いによる波高値の大きさと変動時間の違いを絶対値を演算してから積分演算することによって、ゲートを通過する近傍の磁性体のみを検出対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体検知機に関し、詳しくは、検出領域外の磁性体の動きによる影響を抑制することを可能にする磁性体検知機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の医療診断に欠かせない装置として、MRI(Magnetic Resonance Imaging)診断装置がある。この装置は、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像化する方法であり、強力な磁石を必要とする。近年、分解能向上と処理速度の向上のために、1.5T(テスラ)や3Tといった極めて強力な磁石を使用したMRI診断装置が開発されつつある。このような強力な磁石は、一般的に超伝導磁石を使用する。超伝導磁石は、絶対0度近くまで冷却する必要があり、起動させるまでに多くの時間と費用が掛かる。したがって、一度起動した超伝導磁石は常時動作させ、特別な理由がない限り停止しない。
【0003】
磁石が強力になるにしたがって、磁性体を引き付ける力も強くなる。鉄などの磁性体でできたドライバなどの工具や酸素ボンベや点滴台などの医療用品をMRI診断室に持ち込んだ場合、これらが磁石に吸い寄せられて装置に吸引される吸引事故が発生する。強力な力で吸引された酸素ボンベ等の磁性体は、人間の力では外すことができない。これらを外すには、一旦超伝導磁石を停止しなければならないが、停止や再起動するには時間が掛かり、その間診断業務が停止する。その他にも多額の費用も必要とする。
【0004】
磁性体の工具や医療用品を誤って診断室に持ち込んだ場合、被検者や検査技師等に磁性体が衝突して傷害を与える危険性もある。したがって、診断室に磁性体を持ち込むことは絶対に行ってはならない。被検者を診断室に運搬する場合も、磁性体の質量比を減らしたMRI専用のストレッチャーや車椅子を使用する必要がある。その他の点滴台や医療カートなどもMRI専用の医療用品を使用する。
【0005】
MRI診断装置に関係する検査技師や看護士は、磁石の危険性について教育を受け周知しており、基本的に磁性体の持ち込みはしない。被検者については、検査技師等が事前にペースメーカ等の体内磁性体の有無を確認するので問題はない。しかし、検査技師等が完全な知識を持っているとは限らない。例えば、フェライトは金属ではないので、磁石に付かないように見えるが、磁性体である。このような磁性体と思っていない物を持ち込む場合がある。検査中に被検者が緊急状態になり、看護士が酸素ボンベ等を持ち込んでしまう場合もある。MRI診断装置について詳しく知らない看護士もいる。磁石の危険性について知識のない作業者が、MRI診察室の整備や清掃のために脚立や工具や清掃用具などを持ち込む場合もある。
【0006】
磁性体の持込による吸引事故を防ぐためには、MRI診断室のシールドドアの前に、磁性体を検知して警告するゲート状の磁性体検知機を設置することが必要である。
【0007】
なお、ゲート状の磁性体検知機に似た装置として、空港などで使用されるゲート状の金属探知機がある。この装置は、金属に流れる渦電流を検出するものであって、アルミ等の非磁性金属も検知する。このため大部分が非磁性体で構成されているMRI専用の用品も警告する。したがって、MRI診断装置の診断室のドアに金属探知機を用いても意味はない。逆に磁性体検知機は非磁性金属には反応しない。したがって磁性体検知機を空港などで使用しても意味はない。本発明は磁性体検知機のみに関するものである。
【0008】
かかる磁性体検知機に関する先行技術として、特開平5−52962号公報(特許文献1)では、2方向のヘルムホルツコイルを用いて交互に均一磁場を発生させ、磁性体の侵入によって発生する磁束密度Bの変化を2方向の検知コイルで検知し、その起電力を増幅して検出を行う発明が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−52962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1記載の発明では、磁気センサとして2つの巻線コイルを使用しているが、単位時間的には1つの巻線コイルしか動作していないため、以下のような問題があった。
【0011】
すなわち、巻線コイルに限らず全ての磁気センサは、磁気センサが設置された場所の磁束密度を検出するものであって、近傍の小さな磁性体と遠方の大きな磁性体の区別を行うことはできない。したがって、近傍の小さな磁性体を検出する能力を持たせた場合、遠方の大きな磁性体も検出してしまう。このため検知機は、磁性体を所持していない使用者が磁性体検知機を通過した時に、偶然遠くの磁性体が動いた場合、これを検出して警告などの告知を行うこととなる。
【0012】
磁性体検知機から見た場合、磁気センサが設置された場所の磁束密度Bが変化した結果によって告知を行っているだけなので、誤動作ではない。しかし、使用者から見た場合、磁性体を所持していないのに告知されるため、誤動作したと判断してしまう。このような事態が重なった場合、使用者は磁性体検知機に対する信頼を失ってしまう。信頼を失った結果、使用者が実際に磁性体を持ち込んで告知されても無視してしまい、吸引事故が発生してしまう危険性が生じてしまう。
【0013】
また磁束密度の変化量の大きさは、磁性体の移動速度によって変化するという性質を持つ。移動速度が速い場合、磁束密度の変化量は大きくなるが、変化する時間は短い。逆に移動速度が遅い場合、変化する時間は長いが、磁束密度の変化量は小さくなる。したがって、単純に磁束密度の変化量の大きさだけで判定した場合、移動速度の遅い磁性体を検出できない可能性がある。
【0014】
上記問題点対して、本件出願人は、特願2007−092999号及び特願2007−173135号にて、解決方法を提案した。
すなわち、ゲートを通過しない物体に対しては、告知を行う必要がないため、特願2007−092999号に示すように、ゲートに赤外線などによる物体検知機を設け、ゲートを通過した時だけ告知を許可するようにした。
【0015】
ところで、実際の病院では、MRI診断室のシールドドアに磁性体が含まれている。近傍には磁性体を含む操作室のドアや更衣室のドアやロッカーのドアもある。さらに近傍の廊下では、MRI診断室に入ることを目的としない磁性体のストレッチャーや車椅子やボンベが往来する。使用者から見た場合、ゲートを通過する磁性体のみを検知し、ゲート近傍であっても通過しない磁性体については検知しない方が望ましい。すなわち、ゲートを通過する物体に限定して磁性体/非磁性体の判定を行うことが望ましい。したがって、ゲートを通過する磁性体は信号Sであり、ゲートを通過しない磁性体はノイズNである。
【0016】
ゲートを通過しない磁性体はノイズNであり、告知する必要はない。そこで前記特願2007−092999号に示したように、ゲートに物体検知機能を設け、物体が通過した時だけ告知を有効にする。この方法により、ゲートに物体が通過しなければ、不要な告知を行わないようにすることが可能になった。
【0017】
しかしながら、前記特願2007−092999号によると、磁性体を所持しない使用者がゲートを通過した時と同時に、ゲートを通過しない磁性体が移動した場合、磁気センサがこれを検知して、不要な告知を行なってしまうという問題が起こる場合があった。このとき、告知された使用者が磁性体の所持を改めて確認しても、磁性体は所持しておらず、したがって使用者は、磁性体検知機が誤動作したと判断してしまうこととなる。そこで、物体の通過の有無とは関係なく、ゲートを通過しない磁性体については、全く検知しない事が望ましい。
【0018】
一方、磁束密度の変化は、磁性体の形状と磁気センサまでの距離によって影響を受ける。その変化量は、ビオ・サバールの法則でも示されるように、距離の2乗に反比例するという性質を持っている。したがって、近い位置にある磁性体は反応が大きく、遠い位置にある磁性体は反応が小さくなる。
【0019】
このとき、ある距離に設置した磁性体と、その距離の2倍の距離に置いた4倍の大きさの磁性体によって発生する磁束密度の変化量は全く同じものである。磁気センサは、磁束密度の変化量を検出することができるが、その磁束密度の変化量を発生させた原因が、近くの小さな磁性体に起因するものなのか、遠くにある大きな磁性体に起因するものなのかを区別することは、原理的に不可能である。先程の信号SとノイズNは、使用者が自分の都合で勝手に区別しているものであって、物理法則に従って動作している磁気センサから見た場合、両者は全く同一のものである。
【0020】
しかし、磁気センサが検出する磁束密度の変化量の大きさは、単純に磁性体の大きさと距離だけで決定するものではなく、磁性体の透磁率や、静磁場の方向や、磁性体と磁気センサのベクトル的な位置関係などによって大きく変化する。近傍にある他の磁性体の形状や位置などの影響もあり、実際には複雑多岐なパラメータによって大きく異なる。
【0021】
上記問題点について、磁気の物理的な性質から、ゲートを通過しない磁性体を完全に排除する方法は原理的に存在しない。ゲートを通過しない磁性体を完全に排除する方法は存在しないが、磁性体が検知領域から遠い場合、前記特願2007−173135号に示す技術を使用すれば、磁性体検知機から遠方の磁性体を除去することが可能であった。しかしながら、磁性体がゲート近傍の場合には、それを除去することは不可能であった。
【0022】
ところで、MRI診断室に侵入する可能性がある磁性体として、点滴台が考え得る。点滴台には、台座のみが磁性体の物もある。左右に磁気センサを配置したゲート状のセンサにおいて、台座がゲート中央付近を通過した場合、磁気センサと台座の距離が最も遠くなる。このとき、距離が遠くなれば磁束密度の変化が小さくなるため、検出が困難になるという問題も生じ得る。
【0023】
また、ゲートを通過する点滴台などの医療用品について、一般的に磁性体の位置が下方に配置されている場合が多いが、これらに対して検出感度を高くすることができなかった。
さらに、点滴台などの医療用品が、ゲートの中央付近を通過する場合、磁気センサとの距離が遠くなるために磁束密度の変化が小さく、検出することが困難であった。
【0024】
なお、磁気センサは電流を使用して動作している。磁気センサと周辺回路の消費電流は、常に一定ではなく変動しており、電線に電流が流れると磁界が発生するが、電流の変動に伴い磁束密度も変動することとなる。このように磁束密度が変動すれば、磁気センサはこれを検知してしまって、誤動作を起こす場合があった。
【0025】
これらの問題点に鑑み、本発明は、ゲート近傍の磁性体の影響を抑制するとともに、下方に配置される磁性体の検知能力を向上させ、ゲート中央付近を通過する点滴台などの磁性体の検知能力を向上させ、消費電流の変動を抑えることにより誤動作を抑制することが可能となる磁性体検知機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するため、本発明は、ゲート内を通過する磁性体を検知するための磁性体検知機であって、センサ部と演算部と告知機能とからなり、センサ部は少なくとも一以上の磁気センサを備えるセンサユニットが検知物の進行方向に対して前後に配置された構成となっており、演算部は交流成分演算部と同相信号除去部と前後比率演算部と積分部と判定部とから構成されており、交流成分演算部は積分演算機能と減算演算機能とを備えた磁気センサと同数の交流演算からなり、同相信号除去部は減算演算機能を備えた磁気センサと同数の同相演算と加算演算機能と除算演算機能からなり、前後比率演算部は加算演算機能と比率演算機能と乗算演算機能と絶対値演算機能とを備えた磁気センサの半数の比率演算と加算演算機能からなり、積分部は積分演算機能からなり、判定部は閾値を入力する閾値入力機能と比較演算機能からなり、告知機能は所定手段により使用者に対して警告を告知する構成となっており、ゲート近傍の磁性体の影響を抑制する構成となっている。
【0027】
上記構成からなる磁性体検知機において、複数の磁気センサを同時に動作させ、各磁気センサの検出信号の積分値を夫々交流成分演算部の積分演算機能で求め、夫々の検出信号とその積分値の減算値を交流成分演算部の減算演算機能で求め、得られた夫々減算値の加算値を同相信号除去部の加算演算機能で求め、得られた夫々加算値の除算値を同相信号除去部の除算演算機能で求め、夫々の減算値と除算値との減算値(第二減算値)を同相信号除去部の減算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の加算値(第二加算値)を前後比率演算部の加算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の比率を前後比率演算部の比率演算機能で求め、前後夫々の第二加算値と比率との乗算値を前後比率演算部の乗算演算機能で求め、得られた前後夫々の乗算値の絶対値を前後比率演算部の絶対値演算機能で求め、得られた全ての絶対値の加算値(第三加算値)を前後比率演算部の加算演算機能で求め、得られた第三加算値の積分値(第二積分値)を積分部の積分演算機能で求め、閾値を判定部の閾値入力機能で入力し、第二積分値と閾値との判定値を判定部の比較演算機能で求め、得られた判定値によって告知機能が動作されることとなる。
【0028】
また、本発明は、前記磁性体検知機において、前記センサ部におけるセンサユニットが検知物の進行方向に対して前後及び左右に配置されるとともに、前記演算部に左右同相除去部が備えられた構成となっており、左右同相除去部は二つの同相率演算機能と左右計数演算機能と乗算演算機能からなり、同相率演算機能は減算演算機能と第一の絶対値演算機能と第二の絶対値演算機能とを備えた磁気センサの半数の絶対・減算演算機能と第一の加算演算機能と第一の除算演算機能と第二の加算演算機能と第三の加算演算機能と第二の除算演算機能からなる構成を採用し得る。
【0029】
上記構成からなる磁性体検知機において、複数の磁気センサを同時に動作させ、各磁気センサの検出信号の積分値を夫々前記交流成分演算部の積分演算機能で求め、夫々の検出信号とその積分値の減算値を前記交流成分演算部の減算演算機能で求め、得られた夫々減算値の加算値を前記同相信号除去部の加算演算機能で求め、得られた夫々加算値の除算値を前記同相信号除去部の除算演算機能で求め、夫々の減算値と除算値との減算値(第二減算値)を前記同相信号除去部の減算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の加算値(第二加算値)を前記前後比率演算部の加算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の比率を前記前後比率演算部の比率演算機能で求め、前後夫々の第二加算値と比率との乗算値を前記前後比率演算部の乗算演算機能で求め、得られた前後夫々の乗算値の絶対値を前記前後比率演算部の絶対値演算機能で求め、得られた全ての絶対値の加算値(第三加算値)を前記前後比率演算部の加算演算機能で求め、左右夫々の第二減算値の絶対値(第二絶対値)を左右同相除去部の第一の絶対値演算機能で求め、左右夫々の第二減算値の加算値(第四加算値)を左右同相除去部の第一の加算演算機能で求め、得られた左右夫々の第四加算値の除算値(第二除算値)を左右同相除去部の第一の除算演算機能で求め、左右夫々の第二減算値と第二除算値との減算値(第三減算値)を左右同相除去部の減算演算機能で求め、得られた左右夫々の第三減算値の絶対値(第三絶対値)を左右同相除去部の第二の絶対値演算機能で求め、左右夫々の第二絶対値の加算値(第五加算値)を左右同相除去部の第二の加算演算機能で求め、左右夫々の第三絶対値の加算値(第六加算値)を左右同相除去部の第三の加算演算機能で求め、左右夫々の第五加算値と第六加算値との除算値(第三除算値)を左右同相除去部の第二の除算演算機能で求め、左右の第三除算値の係数を左右同相除去部の左右計数演算機能で求め、第三加算値と係数との乗算値(第二乗算値)を左右同相除去部の乗算演算機能で求め、得られた第二乗算値の積分値(第二積分値)を前記積分部の積分演算機能で求め、閾値を前記判定部の閾値入力機能で入力し、第二積分値と閾値との判定値を前記判定部の比較演算機能で求め、得られた判定値によって告知機能が動作されることとなる。
【0030】
ある磁界に磁性体が侵入した場合、磁束密度が変化する。この変化を検出する磁気センサを用いる。この磁気センサをゲートの周囲に複数配置する。近傍の磁性体によって検出される磁気センサの出力信号の位相と振幅はバラバラである。一方、遠方の磁性体によって検出される磁気センサの出力信号の位相と振幅は、ほぼ同じある。この特徴を利用し、同相信号を演算によって除去することにより、遠方の磁性体の影響を除去するものである。
【0031】
ゲート状の検知空間に2つの磁気センサを水平に配置した場合、磁気センサから見た近傍の磁性体までの方向や距離は大きく異なる。一方、磁気センサから見た遠方の磁性体までの方向や距離は、ほぼ同じである。
【0032】
異なる方向で異なる距離による磁気センサの出力は、異なる位相で異なる振幅である。一方、ほぼ同じ方向のほぼ同じ距離にある磁性体の移動による磁気センサの出力は、ほぼ同じ位相でほぼ同じ振幅である。すなわち磁気センサの同相信号成分とは、遠方の磁性体によって発生するものであり、同相でない信号成分は近傍の磁性体によって発生すると判断することができる。
【0033】
同相信号かどうかを判定するには、複数の磁気センサを備え、ゲート状の検知空間の周囲に配置し、かつ同時に動作されば良い。各磁気センサの出力のうち、同じ位相で同じ振幅の同相成分を抽出し、これを減算すれば遠方の磁性体の影響を抑制することができる。同相成分とは、各磁気センサの出力の平均値である。
【0034】
なお、磁性体の移動速度による違いを解消するために、積分演算機能を備え、移動速度が速くても遅くてもほぼ同じ演算値を得られるようにした。
【0035】
ある磁性体が磁気センサの近傍をある一定の距離である一定の方向に通過した時に、磁気センサの位置で発生する磁気エネルギーは、移動速度に関係なく一定である。これは自転車等の発電機(ダイナモ)による発電と原理的には同じである。発電機を早く回せば電球が明るく光り、ゆっくり回せば暗くなる。一見、早く回した方が出力される電力量(エネルギー)が大きくなるように見える。しかし、実際には1回転で発生する電力量は、回転速度に関係なく一定である。早く回すことによって単位時間に発生する電力量が多くなることによって、電球の明るさ=電力=電力量/時間が大きくなっただけである。したがって、磁束密度の変化量ではなく、磁気エネルギーで評価すれば、磁性体の速度に関係なく、これを検知することが可能である。磁気エネルギーは、磁束密度の変化量を時間で積分した値であり、特に複雑な演算は必要としない。
【0036】
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、前記センサ部におけるセンサユニット内に三個以上の磁気センサが鉛直方向に間隔を開けて配置されるとともに、磁気センサ間の間隔が上方よりも下方へ向かうに従って狭く配置されている構成を採ることも可能である。
【0037】
かかる構成を採用することにより、一般的に磁性体の位置が下方に配置されている医療用品について、磁気センサと磁性体との距離が短くなり、磁性体の検出感度を向上することが可能となる。
【0038】
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、少なくとも一以上の磁気センサを備える第二センサユニットが検知物の下方に付加配置されるとともに、演算機能と閾値入力機能と比較演算機能とを備える第二演算部が備えられ、かつ、論理和演算機能を備えた構成を採ることができる。
【0039】
上記構成からなる磁性体検知機において、第二センサユニットに備えられた磁気センサの出力信号の演算値を演算機能で演算し、閾値(第二閾値)を閾値入力機能で入力し、演算値と第二閾値との判定値(第二判定値)を比較演算機能で求め、前記判定値と第二判定値の論理和値を論理和演算機能で求め、得られた該論理和値によって前記告知機能が動作されることとなる。
【0040】
かかる構成を採用することにより、ゲート中央を通過する点滴台等について、磁気センサと磁性体との距離が短くなり、磁性体の検出感度を向上することが可能となる。
【0041】
そしてまた、本発明は、前記磁性体検知機において、回路電流を測定する電流検知機能と、該電流検知機能に流れる電流を一定に制御する制御機能と、該制御機能によってダミー電流を流すダミー電流機能を備え、電流検知機能にダミー電流機能を接続し、回路電流とダミー電流の合計を一定にする構成を採用し得る。
【0042】
かかる構成を採用することにより、回路の消費電流の変動を抑制し、全体の消費電流を一定にすることにより、磁気センサの誤動作を抑制することが可能になる。
【0043】
以上の構成により、本発明は、磁性体検知機において、磁気センサをゲートの左右だけでなく前後に配置し、ゲートに対して通過する方向に移動する磁性体と、通過しない方向に移動する磁性体の検出信号の違いを前後比率演算アルゴリズムにより分別し、非通過磁性体の検出値を抑制するものである。
【0044】
また、本発明は、前記磁性体検知機において、ゲートを通過する磁性体とゲート外を通過する磁性体の検出信号の違いを左右同相除去演算アルゴリズムにより分別し、ゲート外通過磁性体の検出値を抑制するものである。
【0045】
さらに、本発明は、前記磁性体検知機において、下方に集中して設置した磁気センサによって、一般的に下方に配置されている磁性体との距離を短くし、充分な検出値を得るものである。
【0046】
またさらに、本発明は、前記磁性体検知機において、床下に設置した磁気センサによって、磁性体との距離を短くし、充分な検出値を得るものである。
【0047】
さらにまた、本発明は、前記磁性体検知機において、回路電流の変動に伴う磁束密度の変化を抑制するために、回路電流の変動を補完するダミー電流を流すことによって、全体の消費電流を一定にし、磁気センサの誤動作を防ぐものである。
【発明の効果】
【0048】
本発明にかかる磁性体検知機によれば、ゲートを通過しない近傍の磁性体の動きによって発生する磁束密度の変化量の影響を抑制することができるので、検出目標であるゲートを通過する磁性体のみを検出することに効果がある。
【0049】
また、本発明にかかる磁性体検知機によれば、一般的に下方に配置されている磁性体も、磁気センサとの距離を短くすることができるので、検知感度を高めることが可能である。
【0050】
さらに、本発明にかかる磁性体検知機によれば、ゲート中央を通過する点滴台のような磁性体も、磁気センサとの距離を短くすることができるので、検知感度を高めることが可能である。
【0051】
そしてまた、本発明にかかる磁性体検知機によれば、回路の消費電流の変動による磁束密度の変化が抑制されるため、磁気センサが誤動作することを防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明にかかる磁性体検知機は、同時に動作し、検出空間の周囲に配置する複数の磁気センサによって、交流成分を抽出し、遠方磁性体の移動による磁束密度の変化量(デルタ)Bの同相成分を除去した後に、前後に配置した磁気センサが検出した磁束密度の変化量(デルタ)Bの大きさの比率によってゲート方向に磁性体が移動しているのか、移動していないかを判定するものである。更にゲートの左右に配置された磁気センサが検出した磁束密度の変化量(デルタ)Bの同相信号成分から磁性体の距離を判定し、ゲート内を通過するのか、ゲート外を通過するのかを判定するものである。更に一般的な磁性体である鉄が重量物であることから下方に配置されるという特徴を利用し、磁気センサを不等間隔に配置し、下方の磁性体の検出値を向上するものである。更に点滴台のような磁性体の場合、重量物である鉄が台座に使用されている場合が多いという特徴を利用し、床下に磁気センサを配置することによって、磁性体と磁気センサとの距離を近接させ、磁気センサの出力を大きくすることによって磁性体の検出値を向上するものである。また、回路の消費電流の変動を検知して、ダミー電流を流し、全体の消費電流を一定にし、磁束密度の変化を抑制することによって磁気センサの誤動作を抑制することを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる磁性体検知機の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0053】
図1は、本発明にかかる磁性体検知機の構成態様を示す概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、センサ部1と演算部2と告知機能3から構成されている。
【0054】
センサ部1は、ゲート4の前後左右に配置された4つのセンサユニット5〜8から構成されている。センサユニット5〜8には複数の磁気センサ9〜16が内臓されている。図1では1つのセンサユニットに2個の磁気センサを示しているが、必要に応じた数量を備える。通過磁性体17はゲート4を通過する磁性体である。非通過磁性体18は、ゲート4を通過しない磁性体である。ゲート外通過磁性体19は、ゲート4の外側を通過する磁性体である。遠方磁性体20は、ゲート4から遠方にある磁性体である。ゲート4は、使用者や物体が通過し、通過磁性体17を検出する空間を意味する。したがってゲート4は具体的な構造物で構成する必要はない。
【0055】
演算部2は、交流成分演算部21と同相信号除去部22と前後比率演算部23と左右同相除去部24と積分部25と判定部26から構成されている。交流成分演算部21は、磁気センサ9〜16と同数の交流演算27から構成されている。交流演算27は、積分演算機能28と減算演算機能29から構成されている。同相信号除去部22は、磁気センサ9〜16と同数の同相演算30と加算演算機能31と除算演算機能32から構成されている。同相演算30は、減算演算機能33から構成されている。前後比率演算部23は、磁気センサ9〜16の半数の比率演算34と加算演算機能35から構成されている。比率演算34は、加算演算機能36と比率演算37と乗算演算機能38と絶対値演算機能39から構成されている。左右同相除去部24は、2つの同相率演算機能40と左右計算演算機能41と乗算演算機能42から構成されている。1つの同相率演算機能40は、磁気センサ9〜16の半数の絶対・減算演算機能43と加算演算機能44と除算演算機能45と加算演算機能46と加算演算機能47と除算演算機能48から構成されている。絶対・減算演算機能43は、減算演算機能49と絶対値演算機能50と絶対値演算機能51から構成されている。積分部25は、積分演算機能52から構成されている。判定部26は、閾値を入力する閾値入力機能53と比較演算機能54から構成されている。
【0056】
告知機能3は、使用者に対して警告を告知する機能である。告知する手段としては、光によるものや音声による方法などがある。また複数の手段を使用する方法もある。告知する場所も1箇所だけでなく、複数の場所で告知する方法もある。
【0057】
図2は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、一つのセンサユニット55には複数の磁気センサ56〜59が設置されているが、磁気センサ56〜59の設置間隔を上方に比べて下方を狭くしている。
【0058】
図3は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図1に示した構成の検出部1にセンサユニット60を追加し、演算部61と論理和演算機能62から構成されている。
【0059】
センサユニット60は、磁気センサ63〜64から構成し、ゲート4の下方に配置する。図3では2個の磁気センサ63〜64を示しているが、必要に応じた数量を備える。演算部61は、演算機能65と閾値を入力する閾値入力機能66と比較演算機能67から構成されている。
【0060】
図4は、本発明にかかる磁性体検知機の構成様態を示すもう一つの概略説明図である。すなわち、本磁性体検知機は、図1を構成する電気回路の一部を構成する電気回路68と電源69に、電流検知機能70と制御機能71とダミー電流機能72から構成されている。
【0061】
次に順を追って、図1及び図2及び図3及び図4に示す構成態様が有効であることを説明する。
最初に磁気センサによって磁性体を検出する原理を説明する。
図5に磁界内に磁気センサ73のみが設置された状態を示す。模式的に直流磁束密度Bのベクトルを四角錐で表現する。磁気センサ73にはスカラ量Bt1を持つ直流磁束密度75が印加されている。検出軸76と直流磁束密度75の方向は立体角θ1の関係にある。磁気センサ73が検出するものは、検出軸76の方向のスカラ成分のみであり、このスカラ量をBs1とする。なお、磁気センサ73の形状は実際の形状を表すものではなく、模式的に示したものである。
【0062】
図6に磁界内に磁性体74が入って来た状態を示す。磁性体74によって、直流磁束密度75が直流磁束密度77に変化する。スカラ量がBt1からBt2に変化し、立体角もθ1からθ2に変化する。その結果磁気センサ73の検出軸76の方向成分のスカラ量がBs1からBs2に変化し、磁性体が磁界内に入ってきたことを検知することができる。
【0063】
次に磁気センサ73の検出信号によって告知機能3を動作させる基本的な方法を以下説明する。
図7に磁気センサ73の近傍で磁性体74をある方向に動かした時の磁束密度Bfの変化を示す。地球上には30μT程度の地磁気があり、近傍に強力な磁石がない場合は、この地磁気が印加された状態で磁束密度Bが変化する。図7を見て判るように、磁気センサ73の出力信号Bfは31.4μTを中心に変化している。
【0064】
この信号を最も簡単に検出する方法として、図8に示すように比較機能54を用いた構成がある。磁気センサ73の検出信号Bfと閾値入力機能53によって入力した閾値を比較機能54を用いて判定し、告知機能3を動作させるものである。図8より、閾値として31.8μT程度に設定すれば、磁性体74を検知して告知することが可能である。
【0065】
次に、磁気センサ73の出力信号の位相と振幅と磁性体までの距離の関係を説明する。
図9に枠形状で模式的に表現したゲート4と1個の磁気センサ73を配置した例を示す。図9の磁気センサ73の水平面上で検出する磁束密度Bの感度の比率を模式的に表現したものを図10に示す。磁束密度の変化は距離の2乗に反比例するので、図10より磁気センサ73の座標から離れるにしたがって、感度比が低下していることが判る。ゲート4のうち、センサ73の反対側を通過する磁性体の感度は極めて小さくなり、場合によっては検出できないことがある。1個の磁気センサ73ではゲート4全体をカバーすることは不可能である。
【0066】
次に、図11に磁気センサ78を追加した場合のゲート4を示す。磁気センサを2個配置することにより、図12に示すように感度比の低下を抑制することが可能になる。図11では2個の磁気センサ73、78のみを示したが、縦方向にも複数の磁気センサを配置し、ゲート4全体をカバーさせる。したがって、複数の磁気センサをゲート4の周囲に配置する必要がある。
【0067】
図13に例としてB1〜B8で示す8個の磁気センサの出力Bnを示す。図13に示すように各磁気センサの出力の中心は、31.3〜31.9μTとバラバラである。これは、磁気センサが工業製品であるので、バラツキは0ではないためである。また、地磁気は時間によって多少変化する。磁気センサ自体にも温度特性や経時変化などがあり、常に出力の中心が一定とは限らない。なお、図13では8個の磁気センサの出力値を示したが、複数個であれば数量については規定しない。
【0068】
したがって、図8の構成では、閾値入力機能53を磁気センサの数量だけ備え、1個づつ常に調整し続けなければならない。この調整には専門的な知識が必要であり、一般の使用者が調整するのは極めて困難であり、現実的ではない。
【0069】
図8の構成で問題になる根本的な理由は、磁気センサの出力Bnに直流成分があり、その直流成分にバラツキが発生することである。そこで、図14に示すように、磁気センサの検出信号のうち、交流成分のみを取り出す交流成分演算機能27を備えることで解決できる。具体的な交流成分演算機能27の構成方法として、積分機能28と減算機能29を組み合わせる方法や、電気的にコンデンサと抵抗を用いて直流成分を除去する方法などがある。
【0070】
図14の構成を用いて得られる磁束密度Bfの交流成分信号bfを、図15に示す。直流成分がないため、閾値を500nT程度に設定すれば、磁性体74の通過の有無を判定することが可能である。この構成を使用すれば、複数の磁気センサを備えても、1個づつ閾値を調整する必要がなくなる。
【0071】
しかし、磁性体74が移動する方向は必ずしも同じ方向ではなく、反対方向から移動する場合もある。また、移動速度も一定ではなく、速い場合や遅い場合もある。図16に、磁性体74が図15で示した反対方向から遅い速度で移動した場合の磁気センサの出力Bsの交流成分信号bsを示す。
図16に示すように、bsの波高値の大きい極性は負側であり、閾値を500nT程度に設定した場合、bfは検出できるが、bsは検出することが不可能である。
【0072】
磁性体74がどちらの方向から移動しても大きな波高値で検出する方法として、図17に示すような絶対値演算機能39を備える方法がある。絶対値演算機能39の構成方法としては、数値演算を行う方法の他に、電気的にダイオードブリッジ等を使用して構成する方法などがある。
【0073】
図18に、図17の絶対値演算機能39を追加した場合の出力|bf|、|bs|を示す。図18に示す通り、磁性体74がどちらの方向から移動しても、大きな波高値で検出することが可能である。
【0074】
しかし、磁性体74の移動速度が遅い場合の信号|bs|は、移動速度が速い場合の信号|bf|より小さな波高値である。これは、磁性体74が移動することによって発生するエネルギーがbfとbsで同じにも係わらず、通過に要する時間がbsの方が長いため、波高値が低くなったためである。
【0075】
そこで、|bn|を時間で積分する積分演算機能52を追加する構成を図19に示す。積分演算機能52の構成方法としては、数値演算を行う方法の他に、電気的にコンデンサと抵抗で構成する方法などがある。
【0076】
図20に、図19の積分演算機能52を追加した場合の出力DSf、DSsを示す。図20より、磁性体74の移動速度の影響を抑制し、ほぼ同じ値を示していることを示す。図20の場合、閾値を200nT・sec程度に設定すれば、DSfもDSsも検知することが可能である。このように変化量(デルタ)を積分(シグマ)する演算手法をデルタ・シグマ演算法と呼ぶ。
【0077】
図21に、複数の磁気センサを備えた場合の構成を示す。各磁気センサの演算処理を行う機能ブロック27と絶対値演算機能39を複数備え、それらの出力信号|bn|を加算機能35を用いて加算し、積分演算機能52を用いてデルタ・シグマ値DSを求め、比較機能54で比較する。加算演算と積分演算は、順番が逆であっても同じ結果になる。ここでは加算演算後に積分演算を行う。この方法によって、磁性体74がゲート4を通過する位置や、移動方向や、移動速度による影響を抑制して検出することが可能になる。
【0078】
図13で示した8個の磁気センサの出力信号Bnは、図7で使用した磁性体74より小さな磁性体を用いた。この信号を図21で示した演算処理機能を用いて得られた結果DSを、図22に示す。図24より小さな磁性体であっても検出することが可能であることを確認した。
【0079】
以上説明したように、磁気センサが設置された場所の磁束密度の変化を演算することによって、磁性体の検知を行うことが可能である。しかし、磁束密度を変化させる磁性体が必ずゲート4を通過するとは限らない。図23にゲート4と磁性体の平面的な位置関係を示す。図23に示すように、使用者にとって検出したい磁性体は、ゲートを通過する通過磁性体17のみである。
【0080】
磁性体を持たない使用者がゲート4を通過した時と同時に、他の磁性体が動いた場合、磁気センサは磁束密度の変化を検出し、告知する。その結果、使用者は磁性体を所持していないため、磁性体検知機が誤動作したと判断してしまう。このような状態が何度も繰り返された場合、磁性体検知機に対する信頼性が低下してしまう。実際に使用者が磁性体を所持して、これを告知されても、告知を無視して磁性体を持ち込む可能性が高くなってしまう。したがってゲート4を通過しない非通過磁性体18や、ゲート外を通過するゲート外通過磁性体19や、遠方にある遠方磁性体20は検出しない方が望ましい。
【0081】
使用者にとって、通過磁性体17は有用な信号Sであるが、非通過磁性体18やゲート外通過磁性体19や遠方磁性体20は無用なノイズNである。従って、ゲート4を通過する通過磁性体17のみを検出し、それ以外の磁性体を全て無視することが望ましい。しかし、磁気センサは使用者の意図を理解して動作するデバイスではなく、磁束密度の変化を検出するデバイスである。使用者が信号Sと考えるかノイズNと考えるかには全く関係がなく、磁束密度の変化があれば、これを検出する。
【0082】
ゲート4を通過する通過磁性体17以外を排除する方法として、前記特願2007−092999号に示したようにゲート4に物体検知機能を設け、物体が通過した時だけ告知を有効にする方法がある。この手段によって、使用者や磁性体などの物体がゲート4を通過しなければ、告知することはない。
【0083】
しかし磁性体を所持しない使用者がゲート4を通過した時に、ゲート4を通過しない磁性体が移動した場合、磁気センサがこれを検知して、不要な告知を行なってしまう。したがって物体検知機能を付加しただけでは充分ではない。通過磁性体17以外を抑制する手段が必要である。
【0084】
ゲート4を通過する通過磁性体17以外を抑制する方法はいくつか存在する。一つの方法の例として、図24に示すように透磁率が高い磁性体による磁気シールド113を施し、周囲の磁性体の影響を遮断する方法である。ゲート4の前後に磁気シールドを施した磁気シールドドア114を設ける必要があるが、影響がなくなる無限遠に近い距離に設置すればよい。磁気シールド材としてはケイ素鉄などがある。しかし、このような装置は長大で設置が困難であり、コスト的にも実用的でない。
【0085】
図24に示したように、磁気的な方法を用いてゲート4を通過する通過磁性体17のみを検出する事は、極めて困難である。磁気的な対策方法を使用しない場合、磁気センサが全ての磁性体を検出することを前提にする必要がある。磁気センサ自体は、磁束密度を変化させた原因が、どの磁性体であるのかを判断する機能を持たない。したがって使用者にとって無用な磁性体を完全に除去することは理論上不可能であり、抑制するしか方法はない。本発明では、磁気センサの位置と演算によってゲート4を通過する通過磁性体17以外を抑制する手段を提供する。
【0086】
次に、遠方磁性体20の影響の抑制について以下特願2007−173135号の内容を含み説明する。
図25に磁性体がほとんど動いていない時の8個の磁気センサの信号Bnを示し、図26に遠方で大きな遠方磁性体20が動いた時の各磁気センサの信号Bnを示す。図25と図26を比較すると、殆ど違いがないように見える。しかし、これらの信号を図21に示した演算処理を行ったDSの値を図27と図28に示す。磁性体がほとんど動いていない図27ではDSの値が小さいが、遠方磁性体20が動いた図28ではDSの値が大きくなっていることが判る。
【0087】
使用者から見た場合、ゲート4を通過する近傍の通過磁性体17のみを信号Sとして検出し、ゲート4から離れた遠方磁性体20はノイズNとして検出しないことが望ましい。しかし、磁気センサ単体から見た場合、どちらも同じ信号であり、図21の演算処理では区別することはできない。
【0088】
ここで図29に、磁気センサ73と磁気センサ78から遠方の位置にある大きな遠方磁性体20によって変化する磁束密度Bのベクトルの模式図を示す。大きな遠方磁性体20の近傍では磁束密度Bのベクトルが大きく変化しているが、磁気センサ73及び磁気センサ78の位置でのベクトル変化B1AとB2Aは小さい。また2つのベクトル変化B1AとB2Aのスカラ量は、ほぼ同じである。
【0089】
また図30に、磁気センサ73と磁気センサ78の近傍かつほぼ中間の位置にある小さな通過磁性体17によって変化する磁束密度Bのベクトルの模式図を示す。通過磁性体17が小さいため、磁気センサ73及び磁気センサ78の位置でのベクトル変化B1BとB21Bは小さい。また2つのベクトル変化B1BとB2Bのスカラ量は、ほぼ同じである。
【0090】
図29と図30に示す磁気センサ73及び磁気センサ78の位置でのスカラ量の変化は、ほぼ同じであり区別することはできない。これは、磁性体までの距離L1AとL2A及びL1BとL2Bがほぼ同じであるためである。
【0091】
しかし図29と図30における、磁気センサ73のベクトル変化と磁気センサ78の位置でのベクトル変化では向きが逆であるという違いがある。すなわち、図29に示す遠方の磁性体によって発生するベクトルの変化B1AとB2Aは同相であるが、図30に示す近傍の磁性体によって発生するベクトルの変化B1BとB2Bは同相ではないという特徴を持っている。これは、磁性体との角度θ1Aとθ2Aはほぼ同じであるが、θ1Bとθ2Bには大きな違いがあるためである。
【0092】
図31に、磁気センサ73と磁気センサ78の近傍かつ片方に寄った位置にある小さな磁性体17によって変化する磁束密度Bのベクトルの模式図を示す。この場合2つのベクトル変化B1CとB2Cのスカラ量は、同じではない。すなわち、同相成分の大きさは同じではないという意味になる。
【0093】
図29と図30と図31の結果から、遠方磁性体20によって発生する磁束密度Bの変化は、ほぼ同相でほぼ同じ大きさであることが判る。したがって、各磁気センサから同相成分を減算すれば、遠方磁性体20の影響を抑制することが可能になる。同相信号を除去するには、図32に示すように交流成分演算を行った後で、同相信号除去機能22を用いて除去する。同相信号除去機能22は、同相成分である平均値bavを各磁気センサの交流成分bnから減算する機能である。
【0094】
同相信号除去機能22は、磁気センサと同数の同相演算機能30と、加算演算機能31と除算演算機能32から構成する。同相演算機能30は、減算演算機能33から構成する。全ての磁気センサの交流成分bnを加算演算機能31で加算し、除算演算機能32で同相成分である平均値bavを求める。各磁気センサの交流成分bnから平均値bavを減算演算機能33を用いて減算すれば、同相成分を除去した信号bdnが得られる。同相信号除去機能22の構成方法としては、数値演算を行う方法の他に、電気的に減算回路と加算回路と抵抗分圧等で構成する方法などがある。
【0095】
図13と図25と図26で示した8個の磁気センサの交流成分信号bnと、それらの同相成分である平均値bavを図33と図34と図35に示す。近傍の小さな通過磁性体17が動いた場合の図33では、各センサの交流成分信号bnがバラバラに変化し、その平均値bavの変化は小さい。磁性体がほとんど動いていない場合の図34では、各センサの交流成分信号bnがバラバラに変化し、その平均値bavの変化は小さい。遠方の大きな遠方磁性体20が動いた場合の図35では、各磁気センサの交流成分信号bnがほぼ同じ位相で、かつ、ほぼ同じ大きさで変化し、その平均値bavも同じように変化することが判る。
【0096】
図33と図34と図35で示した各磁気センサの交流成分信号bnから平均値bavを減算した同相信号除去演算値bdnを、図36と図37と図38に示す。遠方磁性体20が動いていない図36と図37では、ほとんど交流成分信号bnと同相信号除去演算値bdnの波形の変化がないが、遠方磁性体20が動いている図38では、同相信号除去演算値bdnが大幅に小さくなっていることが判る。
【0097】
図13と図25と図26で示した8個の磁気センサが検出した磁束密度Bnを図21で示した演算処理によって求めたDS値と、図32で示した演算処理によって求めた積分値を、図39と図40と図41に示す。図39より、近傍の小さな通過磁性体17が動いた場合、どちらの演算処理でもこれを検知することが可能であることが判る。図40より、磁性体がほとんど動いていない場合は、どちらの演算処理でも検知していないことが判る。図41より、遠方の大きな遠方磁性体20が動いた場合、図21の演算処理ではこれを検知してしまうが、図32の演算処理ではこれを検知ないことが判る。図32に示す演算処理を行うことによって、使用者から見た場合の信号Sである近傍の通過磁性体17を検出し、ノイズNである遠方磁性体20を抑制することが可能になる。
【0098】
次に本発明に係わる近傍の磁性体の影響の抑制のうち、ゲート4を通過しない非通過磁性体18を除去する前後比率演算アルゴリズムについて以下説明する。
図32に示した演算アルゴリズムでは、近傍の磁性体と遠方磁性体20の区別を行い、遠方磁性体20の検知値を抑制することが可能である。しかし、近傍の磁性体には、ゲート4を通過する通過磁性体17とゲート4を通過しない非通過磁性体18とゲート4の外側を通過するゲート外通過磁性体19の3種類がある。図32に示した演算アルゴリズムでは、これらの3種類の磁性体を区別することは不可能である。
【0099】
ゲート4を通過する通過磁性体17と、ゲート4を通過しない非通過磁性体18では、磁性体が移動する方向が異なる。従ってこの方向を判定する手段を設ければ良い。そこでゲート4の前後方向に、2個の磁気センサユニットを設ける。動作を説明するための平面的な模式図を図42に示し、左上側の磁気センサ9、11で説明する。この磁気センサ9、11に対して通過磁性体17や非通過磁性体18が移動する。
【0100】
通過磁性体17を移動させた時の磁気センサ9、11の出力の交流成分b1とb3を図43に示す。図43より、通過磁性体17を移動させた場合、ほぼ同じ振幅で同じ位相でタイミングが異なるb1とb3の波形が出力される。これは、通過磁性体17と2つの磁気センサ9と11に最接近する方向と距離がほぼ等しく、2つの磁気センサ9と11に最接近する時間が異なるためである。
【0101】
次に非通過磁性体18を移動させた時の磁気センサ9と11の出力の交流成分b1とb3を図44に示す。図44より、非通過磁性体18を移動させた場合、ほぼ同じ位相で異なる振幅でほぼ同じタイミングのb1とb3の波形が出力される。これは、非通過磁性体18が2つの磁気センサ9と11に最接近する距離が異なり、2つの磁気センサ9と11に最接近する時間がほぼ同じになるためである。
【0102】
通過磁性体17と非通過磁性体18では、図43と図44に示すように、磁気センサ9と11の出力の交流成分b1とb3に違いがある。したがってこの違いを抽出し、非通過磁性体18による検出値を抑制すれば実現可能である。
【0103】
図45に通過磁性体17が移動した時と、非通過磁性体18が移動した時の2つの磁気センサ9と11の出力の交流成分b1とb3の模式図を示す。図45より、通過磁性体17を移動させた場合、同時刻におけるb1とb3の振幅の比率sjは1に近い値になる。一方、非通過磁性体18を移動させた場合、同時刻におけるb1とb3の振幅の比率sjは1により小さな値になる。従って2つの信号の振幅の比率を求めれば、その磁性体が通過磁性17であるのか、非通過磁性体18であるのかを判断することが可能である。
【0104】
比率sjを求める方法には色々な方法があるが、最も簡単な方法として小さな値を大きな値で除算し、絶対値を求める方法がある。図45ではb1の方がb3より大きな信号になっているが、磁性体が反対の位置で非通過した場合は、b3の方がb1より大きくなる。従って、b1とb3の絶対値を比較して、小さい値を大きな値で除算する必要がある。また、b1とb3が同時に0になる場合もある。0で除算を行うことは不可能であるので、強制的にsjをある値にする特例も必要である。2つの信号の加算値adfrを求め、比率sjを乗算すれば、乗算値majを求めることができる。
【0105】
磁気センサ9と11の出力の交流成分b1とb3が、磁性体を検知していない場合、0に近い出力信号になる。0に近い値であってもホワイトノイズ成分があるため、b1とb3の値に相関関係がなくなる。したがって比率sjは不定になってしまう。比率sjは不定になるが、2つの加算値adfrは0に近い値になるため、乗算値majは0に近い値になる。したがって比率sjが不定であっても演算処理を妨げることはない。
【0106】
乗算値majを求める方法としては、図46に示すように加算演算機能36と比率演算機能37と乗算演算機能38で構成することができる。比率演算機能37は、絶対値演算機能79と絶対値演算機能80と切替機能81と切替機能82と除算機能83と比較機能84と比較機能85と比較機能86と論理積演算機能87と切替機能88で行なうことができる。2つの入力信号の絶対値を絶対値演算機能79と80で求め、どちらが大きいかを比較演算機能84で比較する。比較した結果に従って、切替機能81と82を用いて2つの入力のうち、小さい方の値を除算演算機能83の分子に、大きな方の値を分母にする。除算演算機能83を用いて分子を分母で除算することにより、比率sjを求めることができる。特例として、比較演算機能85と比較演算機能86を用いて2つの入力信号を0と比較し、同時に0になった場合を論理積演算機能87を用いて判定する。同時に0になったと判定された場合、切替機能88を用いて分母を0以外の定数とし、0で除算することを防止する。これらの演算は、数値的な演算方法の他に、乗算回路や除算回路などによる電気的な演算回路で構成する方法などがある。
【0107】
図43と図44で示した通過磁性体17と非通過磁性体18の波形について、図46で示した演算アルゴリズムを用いて乗算値majを求めた結果を図47と図48に示す。図47より通過磁性体17が移動した場合、乗算値majは元の信号b1とb3より若干小さな値になっていることが判る。一方、図48より通非過磁性体18が移動した場合、乗算値majは元の信号b1とb3より大幅に小さな値になっていることが判る。したがって図46の演算アルゴリズムを使用することにより、非過磁性体18を抑制することが可能である。
【0108】
図46で示した演算アルゴリズムを組み込んだ演算アルゴリズムを図49に示す。図49で示した演算アルゴリズムを用いて、ゲート4の前後に配置した磁気センサ9〜16全てに演算し、その加算値dspを用いたデルタ・シグマ演算値をDSPとする。
【0109】
図50に16個の磁気センサを用い、通過磁性体17を移動させた場合の演算値DSとデルタ・シグマ演算値DSPを示し、図51に非通過磁性体18を移動させた場合の演算値DSとデルタ・シグマ演算値DSPを示す。図50より通過磁性体17を移動させた場合、DSとDSPの値には大きな違いはない。しかし図51より非通過磁性体18を移動させた場合、DSに比べてDSPの値が抑圧されて小さくなっている。したがって図49に示す前後比率演算アルゴリズムによって、通過磁性体17と非通過磁性体18を区別できる。使用者にとって不要な非通過磁性体18を抑制しており、効果がある。
【0110】
次に本発明に係わる近傍の磁性体の影響の抑制のうち、ゲート外通過磁性体19を除去する左右同相除去演算アルゴリズムについて以下説明する。
ゲート4近傍にある使用者にとって不要な磁性体には、非通過磁性体18の他に、ゲートの外側を通過するゲート外通過磁性体19もある。図52に通過磁性体17とゲート外通過磁性体19の平面的な動きを示す。磁気センサは模式的に上側だけを示す。
【0111】
図53にゲート外通過磁性体19を移動させた時の、図32に示した演算アルゴリズムによる演算値DSと、図49に示した前後比率演算アルゴリズムによる演算値DSPを示す。図53よりDSとDSPの値には大きな違いはない。従って、図49に示した前後比率演算アルゴリズムは、ゲート外通過磁性体19に対しては効果がない。図52に示すように、ゲート4を通過する通過磁性体17とゲート外通過磁性体19は同じ向きに移動する。従って、前後比率演算アルゴリズムでは両者の違いが無いため、これを区別することは原理的に不可能である。
【0112】
ここで、センサユニット9〜16と通過磁性体17とゲート外通過磁性体19の位置関係を、立体的に表現した模式図を図54に示す。通過磁性体17と磁気センサ9〜11の距離は比較的近い。したがって各磁気センサ9〜11と通過磁性体17までの方向と距離はバラバラである。
【0113】
ゲート外通過磁性体19と近い方の磁気センサ13〜16の距離も比較的近い。したがって近い方の磁気センサ13〜16と通過磁性体19までの方向と距離もバラバラである。しかし、ゲート外通過磁性体19と遠い方の磁気センサ9〜12の距離は比較的遠い。したがって遠い方の磁気センサ9〜12とゲート外通過磁性体19までの方向と距離は、ほぼ同じである。
【0114】
1個のセンサユニットに4個の磁気センサを設けた条件において、通過磁性体17を移動させた時の左右各8個づつの遠方同相信号を除去した信号bdnの波形を図55と図56に示す。また、ゲート外通過磁性体19を移動させた時の左右各8個づつのbdnの波形を図57と図58に示す。図55と図56に示すように、通過磁性体17を移動させた場合は、左右8個のbdnの位相と振幅はバラバラである。図57に示すように、ゲート外通過磁性体19を移動させた場合、近い方の8個のbdnの位相と振幅もバラバラである。しかし、図58に示すように、遠い方の8個のbdnの位相と振幅はほぼ同じである。
【0115】
この現象は、磁気センサのbdnの位相と振幅が、磁性体までの方向と距離によって決定されるためである。異なる方向と異なる距離ならば、異なる位相と異なる振幅になる。遠方磁性体20による影響と同様に、ほぼ同じ方向とほぼ同じ距離ならば、ほぼ同じ位相とほぼ同じ振幅になる。
【0116】
同じ位相で同じ振幅の信号を除去する方法は、遠方磁性体20の影響を抑制する方法と基本的に同じである。遠方磁性体20の場合、全ての磁気センサの同相成分を除去したが、左右単位で同相成分を除去し、同相成分除去信号wdbnを求める。同相成分を除去する方法は、図59に示すように加算演算機能44と除算演算機能45と磁気センサと同数の減算演算機能49で構成し、同相信号である平均値wavを減算演算する。
【0117】
図55〜図58に示したdbn波形を図59の演算機能を用いて演算した結果を図60〜図63に示す。図60と図61に示すように、通過磁性体17を移動させた場合は、同相成分除去信号wdbnは、元々の信号であるdbnの波形と大きな違いはない。図62に示すように、ゲート外通過磁性体19を移動させた場合、近い方の8個の同相成分除去信号wdbnも、元々の信号dbnの波形と大きな違いはない。しかし図63に示すように、遠い方の8個の同相成分除去信号wdbnは、極めて小さな値になるという特徴がある。したがってこの特徴を抽出し、ゲート外通過磁性体19による検出値を抑制すれば実現可能である。
【0118】
しかし、図60〜図63に示した値だけでは、磁性体が近いのか遠いのかを判断することはできない。磁性体との距離が遠い場合であっても、磁性体の大きさが大きい場合は、絶対的な値が大きくなるからである。磁性体の大きさに影響されない値に変換しなければならない。図55〜図58と図60〜63を比較すると、同相信号を除去する前と除去した後で、センサユニット5〜8のうち、ゲート外通過磁性体19が遠い方を通過した場合だけが大きく変化している。従って、同相信号除去後の信号wdbnを同相信号除去前の信号dbnで除算し、同相率wsjを求めれば判断することが可能である。しかし、wdbnとdbnの各信号は正負のどちらにも変化するため、絶対値を求めてからそれぞれ加算し、加算値|swdb|と|sdb|を求めてから除算を行い、同相率wsjを求める。
【0119】
左右単位の2つの同相率wsjを求める事は可能であるが、最終的に1つの演算値にする必要がある。2つの同相率wsjから左右係数wfを求める。左右係数wfを求めるには、2つの同相率wsjの平均値演算や比率演算や最小値選択など、いくつかの演算手段があり、その演算手段によって左右方向の除去率が変化する。あまり極端に左右方向を除去した場合、ゲート通過磁性体17であっても、ゲートの端を通過した時に除去し過ぎて、検知できない場合もある。本説明では平均値演算を使用した例を示す。
【0120】
図64に左右同相除去演算機能24を示す。左右同相除去演算機能24は、左右2つの同相率演算機能40と左右係数演算機能41と乗算演算機能42から構成する。一つの同相率演算機能40は、磁気センサの半数の絶対・減算演算機能43と加算演算機能44と除算演算機能45と加算演算機能46と加算演算機能47と除算演算機能48から構成する。絶対・減算演算機能43は、減算演算機能49と絶対値演算機能50と絶対値演算機能51から構成する。なお除算演算機能48には0で除算を行わないように例外処理を持たせる。これらの演算は、数値的な演算方法の他に、乗算回路や除算回路などによる電気的な演算回路で構成する方法などがある。
【0121】
図65に通過磁性体17が移動した時の同相率wsjと左右係数wfを示す。図65より、通過磁性体17が移動した時は、2つの同相率wsjが100%に近い値を示す。したがって2つの同相率wsjの平均値である左右係数wfも100%に近い値を示す。
【0122】
図66にゲート外通過磁性体19が移動した時の同相率wsjと左右係数wfを示す。図66より、ゲート外通過磁性体19が移動した時は、近い方の同相率wsjは100%に近い値を示すが、遠い方の同相率wsjは0%に近い値を示す。したがって左右係数wfは50%に近い値を示す。
【0123】
図64に示した左右同相除去演算アルゴリズムによる左右係数wfを用い、図49で示した前後比率演算アルゴリズムの演算結果dspと乗算演算機能42で乗算した演算結果dswを用い、積分演算した結果である検出値DSWを求める機能が図1に示す演算機能である。
【0124】
図67に通過磁性体17を移動させた場合の図32で示した演算アルゴリズムによる検出値DSと図49に示した前後比率演算アルゴリズムによる検出値DSPと図1に示す左右同相除去演算アルゴリズムを加えて処理した検出値DSWを示す。図67より通過磁性体17を移動させた場合、3つの検出値DSとDSPとDSWには大きな違いはない。
【0125】
図68にゲート外通過磁性体19を移動させた場合の図32で示した演算アルゴリズムによる検出値DSと図49に示した前後比率演算アルゴリズムによる検出値DSPと図1に示す左右同相除去演算アルゴリズムを加えて処理した検出値DSWを示す。図68よりゲート外通過磁性体19を移動させた場合、2つの検出値DSとDSPには大きな違いはない。しかし、左右同相除去演算アルゴリズムを付加した検出値DSWは前者に比べて小さな値になっている。したがって使用者にとって無用な非通過磁性体19を抑制しており、効果がある。
【0126】
図1の機能を具体的に構成する方法には、色々な方法がある。図69に示すように、磁束密度Bを電気に変換する磁気センサ73の出力を、オペアンプや抵抗やコンデンサ等によって構成するアナログ演算回路89で処理しても可能である。また、図70に示すように、磁束密度Bを電気に変換する磁気センサ73の出力を、アナログ値からディジタル値に変換するアナログ・ディジタル変換回路90を用いて数値に変換し、以降数値処理を行うディジタル演算装置91を用いる方法もある。その他にも磁束密度Bを機械的に変換して機構的に処理したり、これらを複数組み合わせる方法もある。
【0127】
また、演算の方法にも色々な方法がある。例えば乗算してから除算しても、除算してから乗算しても結果は同じである。同様に、複数の積分機能を使って積分してから加算しても、加算してから1個の積分機能を使って積分しても結果は同じである。一般的な数式と同じように、演算結果が同じならば、演算の順番や演算素子の構成には関係はない。従って、必ずしも図1に示す順番や構成で実現する必要はない。
【0128】
次に本発明に係わる下方に配置されている磁性体の検出値を向上する発明について、以下説明する。
実際の病院における用品には、色々な種類がある。医療に係わる医療用品以外にも、脚立などの工事用品や、ポリッシャーなどの清掃用品もある。これらの用品は、磁性体の比率が小さいMRI用品もあれば、磁性体の比率が大きい非MRI用品もある。
【0129】
磁性体の材料には色々な種類があるが、最も多く使用されている磁性体材料は鉄である。鉄は丈夫で安価で入手が容易なため、非MRI用品に多用されている。また鉄は比重が大きいという特徴がある。比重が大きい鉄を下方に配置すれば、重心が下方になるため安定度が高くなる。
【0130】
図71に一般的な医療用品等の例として、ストレッチャー92や車椅子93や点滴台94やボンベ95がある。非MRI用の医療用品では、鉄が多用されている。ストレッチャー92や車椅子93や点滴台94では、安定度を高めるために重量物である鉄材を下方に配置する場合が多い。特に点滴台では安定度を重視し、重い鉄製の台座を用いて重心を下方に設定する物も多い。支柱には透磁率が低いステンレスや軽量の非磁性体であるアルミなどを使用している場合も多い。ボンベ95のうち鉄製のボンベは重量物である。単体で運搬する場合、使用者96は手にぶら下げて持ち運ぶ場合が多い。ボンベ95をストレッチャー92や車椅子93に固定して運搬する場合には、落下した場合に危険であるので、高い位置に設置せずに、低い位置に設置するのが一般的である。以上のように重量物で磁性体である鉄は、一般的にゲート4の上方ではなく、下方の床面97の近くで移動する場合が多いという特徴がある。
【0131】
距離に関しビオ・サバールの法則から、磁束密度の変化量は、磁気センサと磁性体の距離の2乗に反比例する。即ち、距離が長くなるに従って、磁気センサの出力が急激に減少するという事を意味している。磁性体の検出値を向上させるには、磁性体と磁気センサとの距離を短くすることが望ましい。
【0132】
図72に示すように、1本のセンサユニット55に複数の磁気センサ56〜59を等間隔に配置した場合を想定する。なお、図72では4個の磁気センサで表記したが、必要に応じて数量は変えても同じである。各磁気センサ56〜59と下方にある磁性体17までの距離は、一番下に設置した磁気センサ59との距離da4が最も近く、磁気センサの位置が高くなるに従ってda3、da2、da1の順に遠くなる。磁束密度の変化は、磁気センサ56〜59と磁性体17の距離の2乗に反比例するため、それぞれの磁気センサの検出出力は、59、58、57、56の順に小さくなる。
【0133】
下方にある磁性体17だけを検出するならば、全ての磁気センサ56〜59を下方に設置すれば、磁気センサの検出出力を大きくすることが可能である。しかし、ゲート4を通過する通過磁性体17が必ず下方を移動するとは限らない。したがって上方にも磁気センサは必要である。
【0134】
上方や下方の全ての位置の磁性体の検出出力を大きくするには、沢山の磁気センサを備えればよい。しかし磁気センサは高価であり、沢山使用した場合に製品コストが上昇するという問題がある。そこで、磁気センサの数量を増やさずに、下方にある磁性体17の検出出力を高める必要がある。
【0135】
図72では、dha1=dha2=dha3とし、磁気センサ56〜59の間隔を等間隔に配置した場合を示した。一方、図73にdhb1≧dhb2≧dhb3とし、磁気センサ56〜59の間隔を下方は短く、上方は広く配置した場合を示す。一番上の磁気センサ56と一番下の磁気センサ59の床面97からの位置が同じならば、磁気センサ56と磁気センサ59の検出出力は同じである。
【0136】
しかし、中間にある磁気センサ57と58は、図72に示す等間隔に配置された場合より、図73に示す不等間隔に配置された場合の方が磁性体17に近くなる。従って、磁気センサ57と58の検出出力は、図72より図73の方が大きくなる。したがって、図72に示すように磁気センサ56〜59を等間隔に配置するより、図73に示すように不等間隔に配置した方が、磁性体17の検出出力が大きくなる。
【0137】
磁気センサの数量を増やさずに、磁気センサの間隔を不等間隔にすることにより、下方にある磁性体の検出値を向上させることが可能であり、効果がある。
【0138】
次に、本発明に係わるゲートの中央付近を通過する磁性体の検出値を向上する発明について、以下説明する。
実際の病院におけるMRI診断装置の吸引事故のうち、点滴台94によるものが高い割合を占めている。従って点滴台94を検知して警告する必要がある。点滴台94には安定度を高めるために重い鉄製の台座を使用して、重心を下方に設定する物も多い。支柱には透磁率が低いステンレスや軽量の非磁性体であるアルミなどを使用している場合も多い。このような鉄製台座の点滴台94は、磁性体部が床面近くにあるという特徴がある。
【0139】
使用者96がゲート4を通って通過磁性体17を持ち込む場合、どの位置を通過するかは不定である。右側のセンサユニット7〜8近傍の場合もあれば、左側のセンサユニット5〜6近傍の場合もあれば、左右のセンサユニットの中央を通過する場合もある。図74に示すように中央を通過した場合、磁気センサ10、14からの距離ddp2とddp6が最も遠くなる。
【0140】
距離に関しビオ・サバールの法則から、磁束密度の変化量は、磁気センサと磁性体の距離の2乗に反比例する。即ち、距離が長くなるに従って、磁気センサの出力が急激に減少するという事を意味している。磁性体の検出値を向上させるには、磁性体と磁気センサとの距離を短くすることが望ましい。
【0141】
磁気センサの出力を大きくするには、高価になってしまうが磁性体の近くに磁気センサを追加して設置すれば良い。しかし、磁気センサをゲート4の中央に設置した場合、通行を妨げてしまう。
【0142】
そこで図74に示すように、磁気センサ63〜64を備えた床下センサユニット60を床面97の下に設置する。床面97の下に設置すれば、点滴台のような通過磁性体17までの距離ddp9、ddp10を短くすることが可能であり、かつ、通行の妨げにならない。磁気センサ63〜64の数量は必要に応じて1個以上を備えればよい。
【0143】
図3に示すように、磁気センサ63〜64と演算処理機能65と閾値入力機能66と比較機能67と論理和演算機能62を備え、演算部2又は演算部61の判定結果のどちらかが磁性体の通過を判定した場合に告知機能3を動作させて告知する。
【0144】
左右に設置した磁気センサ9〜16より、床下に設置した磁気センサ63〜64の方が、ゲート4の中央を通過する点滴台のような通過磁性体17までの距離が短かくなるため、検出出力を大きくすることができる。検出出力が大きければ、S/N比を高くすることができるため、効果がある。
【0145】
次に本発明に係わる回路構成について、以下説明する。
図1に示すように、本発明では1本のセンサユニット5〜8に複数の磁気センサを使用する。従って図75に示すように、磁気センサ73近傍に別の磁気センサや他の回路から構成される電気回路68は電源69と電線98〜99を経由して接続される。また電線98〜99は、磁気センサ73の近傍に配置される。
【0146】
電気回路68は消費電流100が一定ではなく、電流が変動する変動負荷である。電気回路68に消費電流100の変動が発生した場合、電線98には消費電流100と等しい電流107が流れるためアンペールの法則に従って磁場101が変動する。電線98から距離dc1離れた磁気センサ73の位置には磁場101の変動によって磁束密度の変化102が発生する。同時に、電線99にも電流107が流れるため磁場103が変動する。電線99から距離dc2離れた磁気センサ73の位置には磁場103の変動によって磁束密度の変化104が変動する。磁束密度の変化102と磁束密度の変化104は逆方向のため、その差分である磁束密度の変化105が磁気センサ73の位置に発生する。
【0147】
磁気センサ73は、磁束密度の変化を検知する。したがって電気回路68の消費電流100の変動によって磁束密度の変化105が発生すれば、これを検知して誤動作する。
【0148】
誤動作を防ぐためには、磁気センサ73の位置に発生する磁束密度の変化105を0にすれば良い。電線98と磁気センサ73の距離dc1と、電線99と磁気センサ73の距離dc2が同じであれば、磁束密度の変化102と磁束密度の変化104は同じ大きさで逆向きであるため、磁束密度の変化105は0になり、誤動作しない。したがって、距離dc1と距離dc2が等しい値になるように設置すれば誤動作しない。
【0149】
しかし、電線98と電線99の位置を正確に同じ距離に配置するのは極めて困難である。図75では電線98と電線99を単純な平行線で示したが、傾きがある場合は、補正を行わなければならない。途中で電線が曲がった場合も補正しなければならない。これらの作業を行うには多大な時間が必要であり、作業コストが高くなってしまう。
【0150】
磁束密度の変化105を0にするもう一つの手段として、電気回路68の消費電流100の変動を0にする方法がある。消費電流100の変動が0であれば、磁束密度の変化105も0であるので誤動作することがない。しかし電気回路68の消費電流100は、色々な要因によって決定されるものであり、完全に一定にすることは不可能である。
【0151】
電気回路68の消費電流100が一定でなくても、電線98と電線99に流れる電流107が一定であれば、磁束密度の変化105は0である。そこで、図76に示すように、電流検知機能70と制御機能71とダミー電流106を流すダミー電流機能72を備え、回路68の消費電流100の変動分を補完するダミー電流106を流す。消費電流100とダミー電流106の総和は一定であるので、電線98と電線99に流れる合計電流107は一定である。したがって、磁束密度の変化105は発生しない。
【0152】
図76に図4に示した機能の具体的な回路例を示す。電流検知機能70は抵抗108から構成されている。制御機能71は定電圧ダイオード109と抵抗110と演算増幅器111から構成されている。ダミー電流機能72はトランジスタ112から構成されている。
【0153】
演算増幅器111は抵抗108に流れる電流によって発生する電圧Vnと、定電圧ダイオード109と抵抗110によって発生する電圧Vpが等しくなるように、トランジスタ112を制御する。回路68の消費電流100の変動分を補うようにダミー電流106が流れるため、消費電流100とダミー電流106の合計値である電流107には変動がない。電流107に変動がなければ、磁束密度の変化105は発生しない。したがって磁気センサ73に磁気的な影響を与えないので、誤動作しない。
【0154】
図76に示した構成は、この機能を実現するための一例である。電流検知機能70として、抵抗108の他に電流トランスやホール素子などの色々な方法がある。その他にアナログ回路だけでなく、ディジタル回路で構成したり、アナログとディジタルを混合して構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明にかかる磁性体検知機の一の構成態様を示す概略説明図である。
【図2】本発明にかかる磁性体検知機の一の構成態様を示す概略説明図である。
【図3】本発明にかかる磁性体検知機の一の構成態様を示す概略説明図である。
【図4】本発明にかかる磁性体検知機の一の構成態様を示す概略説明図である。
【図5】磁界内に磁気センサを設置した場合の磁束密度を示す概略説明図である。
【図6】磁界内に磁気センサと磁性体を設置した場合の磁束密度を示す概略説明図である。
【図7】磁気センサが磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図8】比較機能を用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図9】検知空間と1個の磁気センサの構成例を示す概略説明図である。
【図10】1個の磁気センサの感度比を示す概略説明図である。
【図11】検知空間と2個の磁気センサの構成例を示す概略説明図である。
【図12】2個の磁気センサの感度比を示す概略説明図である。
【図13】8個の磁気センサが近傍の小さな磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図14】交流成分演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図15】交流成分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図16】逆方向から遅い速度で移動する磁性体の交流成分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図17】絶対値演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図18】絶対値演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図19】積分演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図20】積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図21】複数の磁気センサを用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図22】8個の磁気センサを用いた近傍の小さな磁性体を検出した時の積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図23】ゲートと通過磁性体と非通過磁性体とゲート外通過磁性体と遠方磁性体の位置関係を示す概略説明図である。
【図24】通過磁性体のみを検知する磁気シールドを示す概略説明図である。
【図25】8個の磁気センサが磁性体を検出していない時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図26】8個の磁気センサが遠方の大きな磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図27】8個の磁気センサが磁性体を検出していない時の積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図28】8個の磁気センサが遠方の大きな磁性体を検出した時の積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図29】2個の磁気センサから遠方に配置した大きな磁性体による磁束密度の変化を示す概略説明図である。
【図30】2個の磁気センサの中間の近傍に配置した小さな磁性体による磁束密度の変化を示す概略説明図である。
【図31】2個の磁気センサの片方の近傍に配置した小さな磁性体による磁束密度の変化を示す概略説明図である。
【図32】同相信号除去演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図33】8個の磁気センサを用いた近傍の小さな磁性体を検出した時の交流成分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図34】8個の磁気センサを用いた磁性体を検出していない時の交流成分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図35】8個の磁気センサを用いた遠方の大きな磁性体を検出した時の交流成分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図36】8個の磁気センサを用いた近傍の小さな磁性体を検出した時の同相信号除去演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図37】8個の磁気センサを用いた磁性体を検出していない時の同相信号除去演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図38】8個の磁気センサを用いた遠方の大きな磁性体を検出した時の同相信号除去演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図39】8個の磁気センサを用いた近傍の小さな磁性体を検出した時の同相信号除去演算機能と積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図40】8個の磁気センサを用いた磁性体を検出していない時の同相信号除去演算機能と積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図41】8個の磁気センサを用いた遠方の大きな磁性体を検出した時の同相信号除去演算機能と積分演算機能の出力結果例を示す概略説明図である。
【図42】ゲートと通過磁性体と非通過磁性体の位置関係を示す概略説明図である。
【図43】2個の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図44】2個の磁気センサを用いた非通過磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図45】2個の磁気センサを用いた通過磁性体と非通過磁性体を検出した時の出力結果例と前後比率演算を示す概略説明図である。
【図46】前後比率演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例の前後比率演算機能部を示す概略説明図である。
【図47】2個の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の前後比率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図48】2個の磁気センサを用いた非通過磁性体を検出した時の前後比率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図49】前後比率演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例を示す概略説明図である。
【図50】16個の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の前後比率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図51】16個の磁気センサを用いた非通過磁性体を検出した時の前後比率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図52】ゲートと通過磁性体とゲート外通過磁性体の位置関係を示す概略説明図である。
【図53】16個の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の前後比率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図54】ゲートと通過磁性体とゲート外通過磁性体の立体的な位置関係を示す概略説明図である。
【図55】8個の右側の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図56】8個の左側の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図57】8個の右側の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図58】8個の左側の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の出力結果例を示す概略説明図である。
【図59】左右同相演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例の同相演算機能部を示す概略説明図である。
【図60】8個の右側の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の同相演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図61】8個の左側の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の同相演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図62】8個の右側の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の同相演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図63】8個の左側の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の同相演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図64】左右同相演算機能を用いて磁性体を告知する機能構成例の左右同相率演算機能部を示す概略説明図である。
【図65】16個の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の左右同相率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図66】16個の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の左右同相率演算出力結果例を示す概略説明図である。
【図67】16個の磁気センサを用いた通過磁性体を検出した時の左右同相率演算出力による演算結果例を示す概略説明図である。
【図68】16個の磁気センサを用いたゲート外通過磁性体を検出した時の左右同相率演算出力による演算結果例を示す概略説明図である。
【図69】アナログ演算回路を用いた磁性体検知機を示すブロック図である。
【図70】アナログ・ディジタル変換回路と数値演算機能を用いた磁性体検知機を示すブロック図である
【図71】ゲートを通過する各物体の位置関係を示す概略説明図である。
【図72】等間隔に配置した磁気センサとゲートの下方を通過する磁性体の位置関係を示す概略説明図である。
【図73】非等間隔に配置した磁気センサとゲートの下方を通過する磁性体の位置関係を示す概略説明図である。
【図74】床下に配置した磁気センサとゲートの下方を通過する磁性体の位置関係を示す概略説明図である。
【図75】電線と磁気センサの位置関係を示す概略説明図である。
【図76】電線に流れる電流を一定にする回路例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0156】
1 センサ部
2 演算部
3 告知機能
4 ゲート
5 センサユニット
6 センサユニット
7 センサユニット
8 センサユニット
9 磁気センサ
10 磁気センサ
11 磁気センサ
12 磁気センサ
13 磁気センサ
14 磁気センサ
15 磁気センサ
16 磁気センサ
17 通過磁性体
18 非通過磁性体
19 ゲート外通過磁性体
20 遠方磁性体
21 交流成分演算部
22 同相信号除去部
23 前後比率演算部
24 左右同相除去部
25 積分部
26 判定部
27 交流演算
28 積分演算機能
29 減算演算機能
30 同相演算
31 加算演算機能
32 除算演算機能
33 減算演算機能
34 比率演算
35 加算演算機能
36 加算演算機能
37 比率演算
38 乗算演算機能
39 絶対値演算機能
40 同相率演算機能
41 左右計算演算機能
42 乗算演算機能
43 絶対・減算演算機能
44 加算演算機能
45 除算演算機能
46 加算演算機能
47 加算演算機能
48 除算演算機能
49 減算演算機能
50 絶対値演算機能
51 絶対値演算機能
52 積分演算機能
53 閾値入力機能
54 比較演算機能
55 センサユニット
56 磁気センサ
57 磁気センサ
58 磁気センサ
59 磁気センサ
60 センサユニット
61 演算部
62 論理和演算機能
63 磁気センサ
64 磁気センサ
65 演算機能
66 閾値入力機能
67 比較演算機能
68 電気回路
69 電源
70 電流検知機能
71 制御機能
72 ダミー電流機能
73 磁気センサ
74 磁性体
75 直流磁束密度
76 検出軸
77 直流磁束密度
78 磁気センサ
79 絶対値演算機能
80 絶対値演算機能
81 切替機能
82 切替機能
83 除算機能
84 比較機能
85 比較機能
86 比較機能
87 論理積演算機能
88 切替機能
89 アナログ演算回路
90 アナログ・ディジタル変換回路
91 ディジタル演算装置
92 ストレッチャー
93 車椅子
94 点滴台
95 ボンベ
96 使用者
97 床面
98 電線
99 電線
100 消費電流
101 磁場
102 磁束密度の変化
103 磁場
104 磁束密度の変化
105 磁束密度の変化
106 ダミー電流
107 電流
108 抵抗
109 定電圧ダイオード
110 抵抗
111 演算増幅器
112 トランジスタ
113 磁気シールド
114 磁気シールドドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート内を通過する磁性体を検知するための磁性体検知機であって、
センサ部と、演算部と、告知機能と、からなり、
センサ部は、少なくとも一以上の磁気センサを備えるセンサユニットが検知物の進行方向に対して前後に配置された構成となっており、
演算部は、交流成分演算部と、同相信号除去部と、前後比率演算部と、積分部と、判定部と、から構成されており、
交流成分演算部は、積分演算機能と減算演算機能とを備えた磁気センサと同数の交流演算からなり、
同相信号除去部は、減算演算機能を備えた磁気センサと同数の同相演算と、加算演算機能と、除算演算機能からなり、
前後比率演算部は、加算演算機能と比率演算機能と乗算演算機能と絶対値演算機能とを備えた磁気センサの半数の比率演算と、加算演算機能からなり、
積分部は、積分演算機能からなり、
判定部は、閾値を入力する閾値入力機能と、比較演算機能からなり、
告知機能は、所定手段により使用者に対して警告を告知する構成となっており、
複数の磁気センサを同時に動作させ、各磁気センサの検出信号の積分値を夫々交流成分演算部の積分演算機能で求め、夫々の検出信号とその積分値の減算値を交流成分演算部の減算演算機能で求め、得られた夫々減算値の加算値を同相信号除去部の加算演算機能で求め、得られた夫々加算値の除算値を同相信号除去部の除算演算機能で求め、夫々の減算値と除算値との減算値(第二減算値)を同相信号除去部の減算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の加算値(第二加算値)を前後比率演算部の加算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の比率を前後比率演算部の比率演算機能で求め、前後夫々の第二加算値と比率との乗算値を前後比率演算部の乗算演算機能で求め、得られた前後夫々の乗算値の絶対値を前後比率演算部の絶対値演算機能で求め、得られた全ての絶対値の加算値(第三加算値)を前後比率演算部の加算演算機能で求め、得られた第三加算値の積分値(第二積分値)を積分部の積分演算機能で求め、閾値を判定部の閾値入力機能で入力し、第二積分値と閾値との判定値を判定部の比較演算機能で求め、得られた判定値によって告知機能を動作することを特徴とする磁性体検知機。
【請求項2】
前記磁性体検知機において、
前記センサ部におけるセンサユニットが検知物の進行方向に対して前後及び左右に配置されるとともに、前記演算部に左右同相除去部が備えられた構成となっており、
左右同相除去部は、二つの同相率演算機能と、左右計数演算機能と、乗算演算機能からなり、
同相率演算機能は、減算演算機能と第一の絶対値演算機能と第二の絶対値演算機能とを備えた磁気センサの半数の絶対・減算演算機能と、第一の加算演算機能と、第一の除算演算機能と、第二の加算演算機能と、第三の加算演算機能と、第二の除算演算機能からなり、
複数の磁気センサを同時に動作させ、各磁気センサの検出信号の積分値を夫々前記交流成分演算部の積分演算機能で求め、夫々の検出信号とその積分値の減算値を前記交流成分演算部の減算演算機能で求め、得られた夫々減算値の加算値を前記同相信号除去部の加算演算機能で求め、得られた夫々加算値の除算値を前記同相信号除去部の除算演算機能で求め、夫々の減算値と除算値との減算値(第二減算値)を前記同相信号除去部の減算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の加算値(第二加算値)を前記前後比率演算部の加算演算機能で求め、前後夫々2個の磁気センサの第二減算値の比率を前記前後比率演算部の比率演算機能で求め、前後夫々の第二加算値と比率との乗算値を前記前後比率演算部の乗算演算機能で求め、得られた前後夫々の乗算値の絶対値を前記前後比率演算部の絶対値演算機能で求め、得られた全ての絶対値の加算値(第三加算値)を前記前後比率演算部の加算演算機能で求め、左右夫々の第二減算値の絶対値(第二絶対値)を左右同相除去部の第一の絶対値演算機能で求め、左右夫々の第二減算値の加算値(第四加算値)を左右同相除去部の第一の加算演算機能で求め、得られた左右夫々の第四加算値の除算値(第二除算値)を左右同相除去部の第一の除算演算機能で求め、左右夫々の第二減算値と第二除算値との減算値(第三減算値)を左右同相除去部の減算演算機能で求め、得られた左右夫々の第三減算値の絶対値(第三絶対値)を左右同相除去部の第二の絶対値演算機能で求め、左右夫々の第二絶対値の加算値(第五加算値)を左右同相除去部の第二の加算演算機能で求め、左右夫々の第三絶対値の加算値(第六加算値)を左右同相除去部の第三の加算演算機能6で求め、左右夫々の第五加算値と第六加算値との除算値(第三除算値)を左右同相除去部の第二の除算演算機能で求め、左右の第三除算値の係数を左右同相除去部の左右計数演算機能で求め、第三加算値と係数との乗算値(第二乗算値)を左右同相除去部の乗算演算機能で求め、得られた第二乗算値の積分値(第二積分値)を前記積分部の積分演算機能で求め、閾値を前記判定部の閾値入力機能で入力し、第二積分値と閾値との判定値を前記判定部の比較演算機能で求め、得られた判定値によって告知機能を動作することを特徴とする請求項1に記載の磁性体検知機。
【請求項3】
前記磁性体検知機において、
前記センサ部におけるセンサユニット内に三個以上の磁気センサが鉛直方向に間隔を開けて配置されるとともに、磁気センサ間の間隔が上方よりも下方へ向かうに従って狭く配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性体検知機。
【請求項4】
前記磁性体検知機において、
少なくとも一以上の磁気センサを備える第二センサユニットが検知物の下方に付加配置されるとともに、演算機能と閾値入力機能と比較演算機能とを備える第二演算部が備えられ、かつ、論理和演算機能を備えた構成となっており、
第二センサユニットに備えられた磁気センサの出力信号の演算値を演算機能で演算し、閾値(第二閾値)を閾値入力機能で入力し、演算値と第二閾値との判定値(第二判定値)を比較演算機能で求め、前記判定値と第二判定値の論理和値を論理和演算機能で求め、得られた該論理和値によって前記告知機能を動作することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の磁性体検知機。
【請求項5】
前記磁性体検知機において、
回路電流を測定する電流検知機能と、該電流検知機能に流れる電流を一定に制御する制御機能と、該制御機能によってダミー電流を流すダミー電流機能を備え、
電流検知機能にダミー電流機能を接続し、回路電流とダミー電流の合計を一定にすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の磁性体検知機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図43】
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【公開番号】特開2010−25599(P2010−25599A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184266(P2008−184266)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(501415523)株式会社ディード (11)