説明

磁性物選別装置

【課題】 選別された磁性物の除去のために作業を停止する必要がなく連続的な作業が可能で、粉粒体投入の衝撃等で磁性物が落下して粉粒体に再混入する虞がなく、装置構成が簡単で比較的廉価に提供可能な磁性物選別装置の実現を目的とする。
【解決手段】 少なくとも上半部分の表面の一部にその長さ方向に沿って磁石111を配列した固定中心軸11と、固定中心軸11と同心で固定中心軸11の周囲を回転する非磁性体からなる螺旋体12とを備え、螺旋体12の回転によって固定中心軸の上半部分の表面に吸着された磁性物32を固定中心軸11の長さ方向に移送させるスパイラルコンベア1を磁性物選別手段として設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体などに含まれる磁性異物を除去する磁性物選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品材料などの粉粒体に混入した鉄粉など磁性材料からなる物体を除去するために磁性物選別装置が使用されている。このような磁性物選別装置としては、次のような構造をなすものが多かった。
(従来技術1)
例えば、粉粒体を移動させる配管などに設けられて利用されるものとしては、もともと磁性異物の混入率が低いことが前提に、図6に示すように、強力磁石を用いて配管41内に固定された、または、配管41内で回転する吸着ロッド42を配置し、通過する粉粒体43に混入した磁性異物44を吸着する構成のものがある。この場合、吸着した磁性異物44を回収するには、粉粒体43の送給を一旦停止し、吸着ロッド42を取り付けたユニットを分解し清掃して除去する方法が採られる。
【0003】
(従来技術2)
また、別の方法では、磁化したふるいのメッシュ上から粉粒体を投入し、振動を与えながら、メッシュ上に磁性異物を吸着させて除去する方法もある。
【0004】
(従来技術3)
一方、スパイラルコンベアを磁性物搬送装置として用いた例もある。
図7に、このスパイラルコンベア51の側面図を示す。スパイラルコンベア51は、螺旋状突起物54を設けた非磁性で固定の外筒53内部に、螺旋状突起物54と同じピッチで螺旋状に磁石56を配置した回転軸52を設けて、この回転軸52をモータ55により回転させることにより、外筒53表面に投入される粉粒体58に含まれる磁性物59を磁石56で吸着させながら、螺旋状に設けた突起物54をガイドとして、スパイラルコンベア51の軸方向に磁性物59を移動させる。
この場合、回転軸の終端57には磁石56が取り付けられていないため、終端57までくると磁性物59は外筒53から分離する。
このような類の装置の先行技術文献としては、例えば、特許文献1に示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−230723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術1においては、もし粉粒体内の磁性異物の混入率が高い場合や、磁性異物自体が粉粒体に比べ大きい場合などには、吸着ロッド42の清掃を頻繁に行う必要が生じ、稼働率が低下するという問題があった。
また、従来技術2においても、同様の場合には、メッシュ上に磁性異物が多く溜まって目詰まりを起こしやすく、粉粒体の選別効率が低下するという問題があった。
そうして、両技術とも、磁性異物の最終の除去は非連続作業とならざるを得ず、その場合には設備の稼働を停止する時間が必要となるという問題がある。
【0007】
一方、従来技術3においては、連続的な作業が可能であるが、磁性物59は外筒53の表面を周回しながら螺旋状に移動していくため、スパイラルコンベア51上に異物が混入している粉粒体58を投入しながら、磁性物59のみを選別搬送しようとする場合に、粉粒体58の投入の衝撃等で外筒53表面に付着している磁性物59が落下する可能性がある。この磁性物59の落下を防止するためには、回転軸52表面をほぼ全面にわたって、螺旋状に磁石56や着磁面で覆う必要があり、構成が複雑になって結果的に装置が高価になりコスト面で不利になるという問題があった。
【0008】
本発明は、この問題を解決して、選別された磁性物の除去のために作業を停止する必要がなく連続的な作業が可能で、粉粒体投入の衝撃等で磁性物が落下して粉粒体に再混入する虞がなく、磁性物をその大きさに関係なく選別搬送でき、装置構成が簡単で比較的廉価に提供することができる磁性物選別装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の磁性物選別装置は、粉粒体に含まれる磁性物を選別し除去する磁性物選別装置であって、少なくとも上半部分の表面の一部にその長さ方向に沿って磁石を配列するかまたは上半部分の表面の一部をその長さ方向に沿って着磁した固定中心軸と、前記固定中心軸と同心で前記固定中心軸の周囲を回転する非磁性体からなる螺旋体とを備え、前記螺旋体の回転によって前記固定中心軸の上半部分の表面に吸着された磁性物を前記固定中心軸の長さ方向に移送させるスパイラルコンベアを磁性物選別手段として設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記固定中心軸と前記螺旋体の間に、前記固定中心軸および前記螺旋体と同心の非磁性体からなる円筒体を配したことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記固定中心軸に設けられる磁石または着磁部分は、前記固定中心軸の長さ方向に連続していることを特徴とする。
【0012】
また、前記スパイラルコンベアに磁性物を含む粉粒体を投入するガイドとして、前記スパイラルコンベア上に排出口を有するホッパーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、固定中心軸の少なくとも上半部分の表面の一部にその長さ方向に沿って磁石を配列するか着磁することで、上部から投入された粉粒体のうち磁性物を吸着選別することが可能となる。そうして、この固定中心軸と同心で、かつ該固定中心軸の外側を回転する非磁性材料からなる螺旋体を配し回転させることで、吸着した磁性物をその大きさに関係なく、回転の中心軸の長さ方向に、しかも、この固定中心軸の上半部分の表面上に沿って直線的に推動移送させることができる。
これにより、装置を停止させることなく連続的に磁性物を含む粉粒体から磁性物を選別除去することができ、その上、粉粒体を投入する際の衝撃などで磁性物が再混入する虞がない磁性物選別装置を実現することができる。しかも、構成が比較的単純なため、廉価に製造することができ、また、固定中心軸と螺旋体との間に粉粒体や磁性物が入って目詰まりする虞がなく、さらに、ホッパーを用いることで粉粒体を効率よくスパイラルコンベア上に投入することが可能な磁性物選別装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の外観側面図である。
【図2】図1に示す実施形態の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態の外観側面図である。
【図5】図4に示す実施形態の断面図である。
【図6】従来の磁性物選別装置の一例を示す断面図である。
【図7】従来のスパイラルコンベアの一例を示す外観側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る磁性物選別装置について説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の磁性物選別装置の第1の実施形態の外観側面図で、図2は第1の実施形態の螺旋体が回転する回転軸に直角方向のA−A断面図である。
【0017】
図1および図2において、符号1はスパイラルコンベア、符号3は未選別の粉粒体、符号11は固定中心軸、符号12は螺旋体、符号14はモータ、符号21は投入ガイド、符号22は回収ガイド、符号23は異物選別ガイド、符号111は磁石、符号112は固定回転軸11の軸端、符号121は螺旋体12の回転軸である。
【0018】
本実施の形態では、磁性物選別装置は、磁石111をその上半部分の表面に配した固定中心軸11と、固定中心軸11の外側にあり、かつ固定中心軸11と同心の回転軸を有する螺旋体12と、螺旋体12を回転させるモータ14からなるスパイラルコンベア1と、未選別の粉粒体3を投入する投入ガイド21と、選別済みの粉粒体31を回収する回収ガイド22と、磁性物32を選別する異物選別ガイド23から構成されている。
ここで、磁石111は固定中心軸11の上半部分の表面に、長さ方向に連続して設けるものとする。また、磁石に代えて、固定中心軸11を磁性体で形成し、その上半部分の表面側を長さ方向に連続して着磁しても良い。磁石111または着磁部は、上半部分の表面に直線状に設けられるので、連続的に配置するのは容易である。
【0019】
本実施の形態では、投入ガイド21に誘導されてスパイラルコンベア1の上方から投入された未選別の粉粒体3は、固定中心軸11の上半部分の表面にぶつかりつつ下方へ落下し、回収ガイド22に誘導され選別済み粉粒体31として回収される。その際、磁石111の磁力により、粉粒体3に混入した磁性物32は、固定回転軸11の上半部分の表面に吸着される。
【0020】
固定回転軸11の上半部分の表面に吸着され磁性物32は、螺旋体12が回転することにより、磁石111が配設された固定回転軸11の上半部分の表面を脱落することなく、螺旋体12の回転軸121と平行に推動させられる。このとき磁性物32は、固定回転軸11の表面および螺旋体12の表面を滑動することになる。
【0021】
ここで、固定回転軸11の軸端112には、磁石111を配設しない部分を設けておく。これにより、推動させられた磁性物32は固定回転軸11に吸着する根拠を失い、重力により下方へ落下し異物選別ガイド23に誘導され回収される。
なお、軸端112に推動させられた磁性物32のそれ以上の移動を停止させて異物選別ガイド23に落下させるためのストッパーを設けても良い。
【0022】
本実施の形態においては、未選別の粉粒体3を投入して、選別済み粉粒体31および磁性物32をそれぞれ選別回収するのに、装置を停止することなく連続的に実施することができる。また、磁性物32は常に固定回転軸11の上半部分の表面に吸着して移動するため、粉粒体3を一度に大量に投入した際に衝撃が生じても、推動途中で下方へ落下することがなく、軸端112までそのまま移送される。
【0023】
もちろん本実施の形態とは異なり、磁石111を固定回転軸11の下半部へも広げて配設しても差し支えないが、選別吸着効果に大差はなく、コスト面から考慮しても本実施の形態の構成が有利といえる。また、スパイラルコンベア1は、必ずしも水平ではなく、傾斜していても構わない。
【0024】
(第2の実施形態)
図3に、本発明の第2の実施形態に係る磁性物選別装置の螺旋体12が回転する回転軸121に直角方向の断面図を示す。図3において、便利のために、同一機能の要素については、符号は図1および図2に示す第1の実施形態と同一にした。
本実施形態では、固定回転軸11と螺旋体12の間に非磁性材料からなる円筒体13を設けている。これにより第1の実施形態と同様に、磁石111は円筒体13を介して磁性物32を吸着し、円筒体13表面を推動移送させることができる。
【0025】
このとき円筒体13は、固定回転軸11と同様の非回転の固定体でもあってもよい。しかし、螺旋体12と同期して回転することにより、あるいは、螺旋体12と一体化することにより、間隙をなくして、第1の実施形態では生じやすい螺旋体12と固定回転軸11との間隙に磁性物32などを含む未選別の粉粒体3が入って目詰まりを起こすといった不具合を防止することができる。
【0026】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の磁性物選別装置の第3の実施形態の外観側面図で、図5はこの実施形態の螺旋体12が回転する回転軸121に直角方向のA−A断面図である。図4、図5において、便利のために、同一機能の要素については、符号は図1および図2に示す第1の実施形態と同一にした。
本実施形態は、第1の実施形態の図1に示した投入ガイド21を、ホッパー24に変更したものである。
【0027】
このとき、ホッパー24の排出口241はスパイラルコンベア1の上に適度な位置および大きさに配置することにより、未選別の粉粒体を効率よく投入することが可能となる。例えば、図5に示すように、排出口241を、螺旋体12の外径寸法と略同寸法の幅にすることで、投入した粉粒体3が投入部分で横もれすることを防ぎながら、効率よく磁性材32を選別吸着して、軸端112まで推動移送することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、以上に述べたように構成されることにより、粉粒体の中に含まれている磁性物を装置を停止させることなく連続的に選別除去することができるので、食品、化学、薬品、プラスチック、窯業、鉱業などのあらゆる産業分野で広く利用される可能性を有している。
また類似の構成で、切削油から切粉を分離する装置を実現することもでき、機械工業分野にも利用される可能性も有している。
【符号の説明】
【0029】
1 スパイラルコンベア
3 未選別の粉粒体
11 固定中心軸
12 螺旋体
13 円筒体
14 モータ
21 投入ガイド
22 回収ガイド
23 異物選別ガイド
24 ホッパー
31 選別済み粉粒体
32 磁性物
111 磁石
112 軸端
121 回転軸
241 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体に含まれる磁性物を選別し除去する磁性物選別装置であって、
少なくとも上半部分の表面の一部にその長さ方向に沿って磁石を配列するかまたは上半部分の表面の一部をその長さ方向に沿って着磁した固定中心軸と、前記固定中心軸と同心で前記固定中心軸の周囲を回転する非磁性体からなる螺旋体とを備え、前記螺旋体の回転によって前記固定中心軸の上半部分の表面に吸着された磁性物を前記固定中心軸の長さ方向に移送させるスパイラルコンベアを磁性物選別手段として設けたことを特徴とする磁性物選別装置。
【請求項2】
前記固定中心軸と前記螺旋体の間に、前記固定中心軸および前記螺旋体と同心の非磁性体からなる円筒体を配したことを特徴とする請求項1に記載の磁性物選別装置。
【請求項3】
前記固定中心軸に設けられた前記磁石または前記着磁部分は、前記固定中心軸の長さ方向に連続していることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性物選別装置。
【請求項4】
前記スパイラルコンベアに磁性物を含む粉粒体を投入するガイドとして、前記スパイラルコンベア上に排出口を有するホッパーを備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁性物選別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−260003(P2010−260003A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112829(P2009−112829)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(592002558)
【Fターム(参考)】