説明

磁性粒子の空間分布を決定する方法

本発明は、検査領域における磁性粒子の空間分布を決定する方法であって、第1磁場が生成され、その第1磁場は、検査領域内に、比較的低い磁場強度を有する第1副領域と、比較的高い磁場強度を有する第2副領域とを生成する、方法に関する。それら2つの副領域の空間における位置は、その場合、第2磁場により変えられ、それにより、検査領域における磁化は変えられる。磁化の変化に依存する信号が、磁性粒子の空間分布に関する情報を抽出するように取得されて評価される。第2磁場が、第2磁場の時間微分が各々の空間成分について実質的に同じであるように生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査領域における磁性粒子の空間分布を決定する方法に関する。更に、本発明は、本発明にしたがった方法を実施するための装置及び本発明にしたがった装置を制御するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭の段落で述べた種類の方法については、独国特許第10151778号明細書において記載されている。その文献に記載されている方法の場合、先ず、磁場強度の特定の空間分布を有する磁場は、比較的低い磁場強度を有する第1副領域及び比較的高い磁場強度を有する第2副領域が検査領域において形成される。検査領域における副領域の空間における位置は、その場合、移動し、それ故、検査領域における粒子の磁化は局所的に変化する。検査領域における磁化に依存する信号が記録され、その磁化は副領域の空間における位置の移動により影響され、そして検査領域における磁性粒子の空間分布に関する情報がそれらの信号から抽出され、それ故、検査領域の画像を形成することができる。
【0003】
この従来の方法の不利点は、検査領域において得られる画像の品質が、医療診断のためには、しばしば、満足のいくものではないことである。
【特許文献1】独国特許第10151778号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の目的は、上記の種類の方法であって、形成される画像の品質を改善する、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、第1の時間的に一定の磁場及び第2の時間的に変化する磁場を有する検査領域において磁性粒子の空間分布を決定する方法により達成され、第2の時間的に変化する磁場は基本周波数及び各々の空間成分における振幅を有し、第2磁場の時間微分は、各々の空間成分について実質的に同じである、又は、第2の時間的に変化する磁場は、幾つかの第2の時間的に変化する部分磁場の全体を包含し、各々の部分磁場は基本周波数及び各々の空間成分における振幅を有し、第2磁場の時間微分及び/又は第2部分磁場は、各々の空間成分について実質的に同じである。
【0006】
第1伏竜行きが検査領域において移動する速度が空間における全ての方向において実質的に同じであるとき、磁性粒子の空間分布に関する情報を有する画像の分解能はまた、空間の各々の方向において実質的に同じであり、結果として得られる画像の品質は、上記で説明した従来技術と比べて改善される。
【0007】
特に、空間成分についての第2磁場の時間微分は、一の空間成分についての時間微分の大きさの指標が、他の空間成分についての時間微分にこの指標を適用することにより決定される値に比べて1/4より小さくなく且つ5倍大きくない値を得るとき、本発明の範囲内で、異なる空間成分について第2磁場の時間微分に実質的に同じである。この時間微分の大きさの指標は、好適には、それぞれの空間成分の時間経過における時間微分の平方平均である。それに代えて、各々の空間成分について、時間微分の最大値を指標として用いることが可能である。
【0008】
全ての空間成分について実質的に同じである第2磁場の時間微分は、振幅と基本周波数の積が各々の空間成分について実質的に同じであるということのために、請求項2に記載の特に簡単な方法で実現される。特に、一の積が5倍より大きくない又は他の積の1/5より小さくないときに、2つの積は実質的に同じである。これは、実質的に同じである2つの周波数に対して適用される。
【0009】
請求項3に記載の実施形態においては、第2磁場の各々の空間成分についての基本周波数は実質的に同じである。各々の空間成分について、それ故、空間の各々の方向において、実質的に同じ基本周波数の効果は、段階c)において取得される信号が空間の各々の方向において実質的に同じ周波数を有し、その結果、信号対ノイズ比は空間の各々の方向で実施的に同じであり、そのことはまた、検査領域における磁性粒子の空間分布に関する情報を有する画像の品質を改善することである。
【0010】
情報を抽出するように用いられる取得された信号は、適切な取得手段において、例えば、コイルにおいて、検査領域における磁化を変化させることにより誘導される。一般に知られているように、誘導信号の信号値は、磁化における変化率が大きくなるにつれて大きくなる。請求項4に記載された実施形態においては、第2磁場の時間的フーリエ変換は第1周波数範囲における値を有し、それらの値は、第2磁場のゆっくり変化するオフセットによりもたらされ、第1周波数範囲は基本周波数の各々に比べて小さい値を有する。即ち、基本周波数は、そのオフセットによりもたらされる第2磁場のフーリエ変換の周波数より高い。特に、請求項5に記載されているように、基本周波数は、第1周波数範囲にある最大周波数の10倍より大きく、好適には、100倍より大きく、その結果、第1副領域は検査領域において速く移動する。このことは、検査領域における速い磁化変化、それ故、大きい誘導信号値に繋がる。本発明にしたがった第2磁場は、それ故、良好な信号対ノイズ比を有する誘導信号が取得することを可能にし、その結果、検査領域における磁性粒子の空間分布に関する情報の質が更に改善される。
【0011】
更に、基本周波数において振動する第2磁場の一部によりもたらされる第1副領域の速い移動以外に、時間に伴ってゆっくり変化するオフセットは第1副領域の付加的なゆっくりした移動をもたらし、その結果、第1副領域の大きい範囲が記録され、検査領域は拡大される。オフセットにおける変化により誘導される信号は、第1副領域のゆっくりした移動のために非常に小さいため、それらのオフセットが、段階d)において評価される信号に対する寄与がない又は何れの寄与が殆どないように非常にゆっくり変化する。
【0012】
請求項6に記載されているように、基本周波数の少なくとも1つが時間と共に変化するときに、及び、特に、基本周波数の少なくとも1つが時間と共に高くなるときに、画像のコントラストにおける、それ故、画像品質における改善が得られる。
【0013】
請求項7に記載の実施形態は、検査領域における2つの副領域の位置が、第1副領域が少なくとも所定の最小距離の範囲まで検査領域における各々のポイントに近づくような方式で変化することを確実にする。それ故、本発明にしたがった方法が実行されるとき、適切な最小距離の選択により、検査領域における各々のポイントを記録することが可能である。
【0014】
請求項8に記載の最小距離の選択は、本発明にしたがった方法の分解能が、大き過ぎる最小距離により低下されないことを確実にする。
【0015】
少なくとも1つの取得手段において、特に、少なくとも1つの受信コイルにおいて、信号を誘導することにより、請求項9に記載の副領域の位置における変化に依存する信号の取得は技術的に達成することが容易であり、後続の信号の評価は検査領域における磁性粒子の空間分布に関する高品質の情報を与える。
【0016】
本発明にしたがった方法を実行するための装置については、請求項10に記載されている。請求項11においては、本発明にしたがった第2磁場が特に容易に生成される実施形態について、記載されている。請求項12においては、請求項10に記載の装置を制御するためのコンピュータプログラムについて記載されている。
【0017】
本発明の上記の及び他の特徴については、以下に詳述する実施形態に関連する非制限的な実施例として説明され、明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明にしたがった装置9の実施形態について示している。被検体、この場合、患者は、患者支持台の上に位置付けられている。例えば、患者に対して支援する、例えば、液体又は食材中の磁性粒子が、患者の中に、例えば、胃腸管中に及び装置9の検査領域において存在する。検査領域の寸法は、下記で説明するように、特に、用いられる磁場及び磁性粒子に依存する。
【0019】
磁性粒子は図2に示されている。その磁性粒子は、ガラスから成る球状基体100を有し、その基体は軟らかい磁性層101で覆われ、その磁性層は、例えば、5nmの厚さを有し、例えば、鉄ニッケル合金(例えば、パーマロイ)から成る。この層は、例えば、酸に対してその粒子を保護するカバー層102で覆われていることが可能である。そのような粒子の磁化の飽和のために必要な磁場強度はそれら粒子の直径に依存する。10μmの直径の場合、1mTの磁場が必要であり、100μmの直径の場合、100μTの磁場で十分である。パーマロイに比べて低い飽和磁化を有するコーティングが選択された場合、飽和のために必要な磁場は、必然的に更に低下する。
【0020】
本発明の範囲において記載されている磁場強度は、簡単化のためにテスラで表されている。これは、テスラは磁束密度の単位であるために、全く正しいとはいえない。特定の磁場強度を得るように、各々の場合に指定される値は、均一な磁場μにより更に分割される必要がある。
【0021】
本発明は、前記の磁性粒子に限定されるものではない。対照的に、本発明にしたがった方法は、非線形磁化曲線を有する、即ち、磁性粒子の磁化勾配が粒子に作用する磁場強度に依存して非線形である何れの磁化粒子を伴って実行される。
【0022】
強磁性材料又はフェリ磁性材料のモノドメイン粒子として知られているものをまた、用いることが可能である。それらの粒子はナノメートル領域の寸法を有し、小さ過ぎて磁区又はWeiss領域を形成しない。それらの粒子は、適切なコロイド分散の状態で患者の血流中に注入されることが可能である。そのような分散は、磁気共鳴(MR)の磁場における増影剤として既に注入されている。用いられる磁性粒子は5乃至10nmの大きさのものである。しかしながら、この大きさは、本発明にしたがった方法については、飽和のために必要な磁場強度はその粒子の直径の3倍まで減少するため、最適ではない。磁性粒子は、それ故、できるだけ大きいが、磁区が構成される程大きくない必要がある。磁性材料に依存して、磁性モノドメイン粒子の最も好ましい大きさは、20乃至800nmの範囲内の値をとる。モノドメイン粒子に適する材料は、例えば、マグネタイト(Fe)である。そのような粒子は、例えば、肺の検査のためには、吸入されることが可能である。
【0023】
本発明の範囲において、“磁性粒子”はまた、磁化可能な粒子を有する。
【0024】
患者1の上下には、第1の対のコイル3a、3b(第1磁気手段)があり、それらのコイルは、患者1の上下に同軸上に配置された2つの同じように構成されたコイル3a、3bを有し、それらを介して同じ大きさであるが反対方向に電流が流れ、それらのコイルは、第1の時間的に一定の磁場を生成する。第1磁場は、図3に磁場線300で表されている。共通コイル軸8の方向においては、その第1磁場は実質的に一定の勾配を有し、このコイル軸上の点でゼロ値に達する。この磁場が存在しない点から開始して、磁場強度は、この点からの距離が大きくなるにつれて、空間の全ての方向において増加する。図3において一点鎖線で示し、磁場の存在しないその点の周りに配置された第1副領域301においては、第1磁場の磁場強度は低過ぎて、存在する磁性粒子の磁化は飽和しない。対照的に、第1副領域の外側にある第2副領域302においては、磁性粒子の磁化は飽和している。
【0025】
第1磁場において重畳される第2の時間的に変化する磁場により、第1磁場の第1副領域301は、第2磁場の磁場強度の方に検査領域において移動される。
【0026】
第1副領域301の移動及び寸法、磁性粒子の磁気特性及び分布は、検査領域の大きさを決定する。第1副領域301の位置変化により磁化が変化する磁性粒子を有する、検査されるべき被検体、例えば、患者1の各々の領域は、検査領域に包含される。
【0027】
第2の時間的に変化する磁場を生成するように、3つのコイルの対を有する第2磁気手段が用いられる。コイルの対4a、4bば、第1コイルの対3a、3bのコイル軸8の方向に伸びている第2磁場の磁場成分を生成する。このために、同じ回転方向に流れる均一な電流はコイル4a、4bを通って流れる。コイルの対4a、4bにより得られる効果はまた、原理的には、第1のコイルの対3a、3bにおける反対方向に方向付けられた均一な電流において同じ方向に流れる電流を重畳することにより得られ、その結果、電流は一のコイルの対において減少し且つ他のコイルの対において増加する。
【0028】
コイルの対3a、3bのコイル軸に対して垂直に方向付けられた方向において第2磁場の磁場成分を生成するように、2つの更なるコイルの対5a、5b及び6a、6bを用いる。コイルの対3a、3b及び4a、4bと同じように、それらのコイルの対5a、5b及び6a、6bはヘルムホルツ型コイルであることが可能であるが、その場合、検査領域はそれらのコイルの対により空間における3つの方向全てにおいて網羅され、そのことは検査領域へのアクセスを妨げる。コイル5a、6aは、それ故、患者1の上に備えられ、コイル5b、6bは患者の下に備えられている。コイル5a、5bは、コイル軸8に対して垂直にその方向を方向付けられた磁場成分を生成する。更に、コイル6a、6bは、コイルの対5a、5bにより生成される磁場成分の方向に対して垂直であり、コイル軸8に対して垂直である方向が方向付けられた磁場成分を生成する。コイル5a、5b、6a、6bは、それ故、それらのコイル軸に対して垂直に方向付けられた磁場成分を生成する。そのようなコイルはヘルムホルツ型ではなく、開放型磁石を有する磁気共鳴装置(開放型MRI)として知られていて、その装置においては、水平方向の時間的に変化する磁場を生成することができる高周波数のコイルの対が患者の上下に備えられている。それらの既知のコイル5a、5b、6a、6bの構成についての詳細説明は、ここでは省略する。
【0029】
コイルの対4a、4b、...、6a、6bは、それ故、時間的に可変の第2磁場を生成し、それにより、ここでは三次元的であるが、代替として、二次元的であることも可能である、検査領域における第1磁場の第1副領域301を移動させることができる。
【0030】
検査領域1における第1副領域301の移動は、磁性粒子102の磁化における変化に繋がり、その結果、信号が適切な受信コイルにおいて誘導される。
【0031】
図1は、検査領域において変化する磁化に基づいて、信号が受信コイル7において誘導されるように適合された受信コイル7の模式図である。原理的には、磁場生成コイルの対3a、3b、...、6a、6bの何れを、このために用いることが可能である。しかしながら、1つ又は更に幾つかの別個の受信コイルは、それらが磁場生成コイル3a、3b、...、6a、6bを独立して構成する及び切り換えることが可能であり、改善された信号対ノイズ比をもたらすことが可能であるという有利点を有する。
【0032】
磁化変化が空間の3つの方向全てにおいて決定されるようになっている場合、磁化変化の対応する方向成分を受信することができる少なくとも1つの受信コイルが、空間の各々の方向について必要である。
【0033】
磁性粒子の変化する磁化に基づく受信コイルの信号の導入については、読者が参照することができる独国特許第10151778号明細書に詳細に記載されている。
【0034】
図4は、図1に示す装置9のブロック図である。コイルの対3a、3bは、図4においては模式的に示されていて、簡略化のために参照番号3で表されている。同様なことを、コイルの対4a、4b、...、6a、6bに対しても適用している。
【0035】
コイルの対3は、制御ユニット10により制御される制御可能電流電源から直流電流が供給される。制御ユニット10は、検査領域における磁性粒子の分布を表示するためのモニタ13と、入力ユニット、例えば、キーボード14とを有するコンピュータ12に接続されている。
【0036】
コイルの対4、5、6は電流増幅器41、51、61に接続され、それらの電流増幅器から電流を受け入れる。電流増幅器41、51、61は、それぞれ交流電流電源42、52、62に順に接続され、増幅されるべき電流I、I、Iの時間特性を決定する。交流電流電源42、52、62は制御ユニット10により制御される。
【0037】
更に、受信コイル(取得手段7)を図4に模式的に示している。受信コイル7において誘導される信号はフィルタユニット71に供給され、そのフィルタユニットは、基本周波数において振動する信号をフィルタリングする。フィルタリングされた信号は、次いで、増幅ユニット72を介してアナログ−デジタル変換器73(ADC)に送信される。アナログ−デジタル変換器73により生成されるデジタル化信号は画像処理ユニット(評価ユニット)74に供給され、その画像処理ユニットは、それぞれの信号の受信中に検査領域において第1磁場の第1副領域301により仮定される及び制御ユニット10から画像処理ユニット74により受信される特定の位置から及びそれらの信号から磁性粒子の空間分布を再構成する。磁性粒子の再構成された空間分布は、最終的に、制御ユニット10を介してコンピュータ12に転送され、そのコンピュータはモニタ13においてその空間分布を表示する。
【0038】
図5及び6は、磁場生成コイル4a及び電流増幅器41を有する、2つの磁気手段の好適な回路図を示している。磁場生成コイル4b、...、6b及び関連電流増幅器41、51、61は、好適には対応するように構成される。
【0039】
図5は信号応答コイルシステム86を示し、その信号応答コイルシステムは、調節可能コンデンサ81と並列に接続されている磁場生成コイル4aを有する。磁場生成コイル4aは、それにより、一基本周波数に対して共鳴するようにされ、その共鳴基本周波数は、コンデンサ81において所望の容量に調節することにより及び所望のインダクタンスを有するコイル4aを選択することにより設定される。磁場生成コイル4a及びコンデンサ81を有する共鳴回路は電流増幅器41と並列に接続され、その電流増幅器は時間的に変化する電流を供給する。そのような共鳴回路を用いると、電流僧服器41が磁場生成コイル4aに直接、即ち、付加並列容量81を用いることなく、接続される場合に比べて大きい振幅を有する第2磁場を生成することができる。それ故、第2磁場の特定振幅を必要とする場合、図示している共鳴回路を使用することにより、低い増幅率を有する、それ故、そのような共鳴回路を用いないときに必要な電流増幅器に比べて安価である電流振幅器を使用することが可能である。
【0040】
第2磁場のゆっくりと変化するオフセットを生成するように、低周波数電流電源87が用いられ、その低周波数電流電源は、コンデンサ87及び磁場生成コイル4aを有する共鳴回路に並列に接続されている。そのような低周波数電流電源87は、しかしながら、高基本周波数についての低インピーダンスを有し、それ故、共鳴回路は、電流電源87により短絡される。その回路は、それ故、高基本周波数について高インピーダンスを有する付加成分を有するが、同時に、低周波数、即ち、オフセットが振動する周波数を与える必要がある。簡単な技術的解決方法は、更なるコイル83を有し、容量85に対して並列であるリジェクタ回路であって、容量85は電流電源87と、容量81及び磁場生成コイル4aを有する共鳴回路との間に備えられている、リジェクタ回路である。
【0041】
基本周波数について共鳴する磁場生成コイル4aを与えるように、そして同時に、第2磁場のゆっくりと変化するオフセットを与えるように必要な、コイル及びコンデンサの適切な寸法及びコイルの実際的な構成(例えば、大きい幾何学的寸法を有する環状コイル)は、当業者に既知であり、それ故、ここでは、その詳細説明については省略する。
【0042】
好適には、図5のコイルのインダクタンスは実質的に同じであり、即ち、それらのインダクタンスは、せいぜい大きさが一桁異なるだけである。一般に知られているように、磁場生成コイル4aを技術的に励起するように、電流振幅器41は、適切なマッチング回路を備え、そのマッチング回路は、例えば、直列に接続されたコンデンサを有する変換器又は適切な容量性電圧ドライバを有し、それらの全容量は、好適には、コンデンサ81の容量及び/又はコンデンサ85の容量と同じである。代替として、磁場生成コイル4aへの結合は誘導的に有効である。
【0043】
図5にしたがった回路は1つの共鳴周波数のみを有するため、この回路は、単一の共鳴コイルシステム86として知られている。共鳴基本周波数を変えるように、コンデンサ81、85の容量を変えることができる。周波数範囲を通るように、測定中に共鳴基本周波数を変えるために、例えば、アドオン方式の小さいコンデンサにより、又はコンデンサ81、85がモーターにより調節可能な可変コンデンサであるために、それらのコンデンサは自動的に可変のものである。代替として、他の既知の方法を、単一の共鳴コイルシステム86の共鳴基本周波数を代えるように用いることが可能であり、例えば、調節可能補助コイルが用いられる、又は磁性材料が図5に示すコイルの方にもたらされる。
【0044】
磁場生成コイル4aにより生成される及び2つの基本周波数を有する第2磁場が好ましい場合、図6に示すような多共鳴コイルシステム88を用いることが可能である。図6におけるミラー線89の右側には、多共鳴コイルシステム88は、磁場生成コイル4aであって、その磁場生成コイルとコンデンサ81が並列に接続されている、磁場生成コイル4aを有する。コイル4aは、電流増幅器41に付加的に接続されている。多共鳴コイルシステムは、図6におけるミラー線89の右側に、更なるコイル82と、更なる調節可能コンデンサ84とを更に有する。図6におけるミラー線89の右側に備えられているこのような回路の効果は、磁場生成コイル4aが2つの共鳴基本周波数を有すること、即ち、この磁場生成コイル4aが、2つの共鳴基本周波数により振動する第2磁場を生成するように用いられることである。例えば、更なるコイル82が、磁場生成コイル4aに比べて大きいインダクタンスを有する場合、及びコンデンサ81及び84の容量が同じである場合、更なるコンデンサ82、84により生成される共鳴基本周波数は、図5に示す更なるコンデンサ82、84を有しない回路により生成される基本周波数より低い。
【0045】
低周波数電流電源が、第2磁場の低速可変オフセットを生成するように、図6におけるミラー線89の右側に示す回路に接続されている場合、図5に関連して上記したように、高基本周波数についての電流電源は低インピーダンスを有するため、その回路は短絡する。コンデンサ及びコイルは、それ故、そのミラー線において鏡像関係にあり、それ故、コンデンサ81′及び84′並びにコイル4a′及び82′は、コンデンサ81及び84並びにコイル4a及び82に対してミラー線89に関して鏡面対称に備えられている。低周波数電流電源87はコイル4a′と直列に接続されている。
【0046】
3つ以上の共鳴基本周波数が生成されるようになっている場合、各々の更なる好ましい共鳴基本周波数について、図6において破線90で囲まれた回路の部分は、ミラー線89と、コンデンサ81及び磁場生成コイル4aを有する共鳴回路との間に、付加された数だけ備えられる。それらの付加されるコイル及びコンデンサは、その場合、勿論、ミラー線89において順に鏡像関係にあるようにされる必要がある。
【0047】
本発明は、示されている単一の共鳴及び多共鳴コイルシステムに限定されるものではない。対照的に、本発明にしたがって、1つ又はそれ以上の高基本周波数及び略ゼロ周波数である低周波数の両方を有する第2磁場が生成されることを可能にする、コイル及びコンデンサの何れの回路構成を使用することが可能である。既知の方法においてはまた、電気機械共鳴器(圧電)又は通過時間効果に基づく共鳴のような他の共鳴構造要素を用いることができる。
【0048】
時間的に可変の第2磁場H2(t)(ここで、H2(t)はベクトルであり、以下においても同様である)は、次式のようにパラメータ化される。
【0049】
【数1】

ここで、ax,y,z(t)は振幅であり、ωx,y,z(t)は基本周波数であり、φx,y,z(t)は位相シフトであり、そしてνx,y,z(t)はオフセットである。振幅、基本周波数、位相シフト及びオフセットは、sin(ωt)、sin(ωt)及びsin(ωt)に比べて時間と共にゆっくり変化し、即ち、ax,y,z(t)、ωx,y,z(t)、φx,y,z(t)及びνx,y,z(t)のそれぞれのフーリエ変換は、基本周波数ωx,y,zの何れに比べて小さい周波数において排他的な値を有する。
【0050】
代替として、時間的に変化する第2磁場は、次式によりパラメータ化される。
【0051】
【数2】

即ち、第2磁場H2(t)は、代替として、部分磁場
【0052】
【数3】

の和を有し、ここで、各々の部分磁場H(i)(t)(ここで、H(i)(t)はベクトルであり、以下においても同様である)についてもまた、ax,y,z(i)(t)、ωx,y,z(i)(t)、φx,y,z(i)(t)が、sin(ω(i)t)、sin(ω(i)t)及びsin(ω(i)t)に比べて時間と共にゆっくり変化する、即ち、ax,y,z(i)(t)、ωx,y,z(i)(t)、φx,y,z(i)(t)及びνx,y,z(i)(t)のそれぞれのフーリエ変換は、基本周波数ωx,y,z(i)の何れに比べて小さい周波数において排他的な値を有する。
【0053】
本発明の範囲内では、第2磁場H(i)(t)の時間依存性のみが考慮される。しかしながら、磁場生成コイルの有限な寸法のために、完全に空間的に均一な第2磁場が存在することは不可能であり、それ故、第2磁場はまた、場所H(x,y,z,t)(ここで、H(x,y,z,t)はベクトルであり、以下においても同様である)に依存することは明らかである。その時間依存性の個別の考慮が、波長がコイル4、5,6の寸法に比べて大きい場合、即ち、H(x,y,z,t)=F(x,y,z)・H(t)であって、F(x,y,z)が第2磁場の場所依存性を表す関数である場合に、ここでは可能である。これに関連して、波長は、第2磁場の電磁波の波長である。この波長は、ここで用いられる基本周波数の場合にキロメートルの領域にあり、それ故、それは、コイル、即ち、せいぜいメートル領域にある寸法に比べて大きい。
【0054】
この例示としての実施形態においては、第2磁場H(t)は、互いに対して直交する3つの空間成分H2,x(t)、H2,y(t)及びH2,z(t)を有し、それ故、第1副領域301は三次元空間において移動されることが可能である。異なる構成においては、第2磁場H(t)はまた、互いに対して直交する2つの空間成分のみを有することが可能であり、それ故、第1副領域301は1つの面において移動されることが可能である。
【0055】
磁場生成コイルにより生成される第2磁場の空間成分は互いに対して直交するように方向付けられる必要はない。磁場生成コイルはまた、互いに対して直交していない空間における異なる方向に方向付けられている第2磁場の空間成分を生成することが可能である。このように方向付けられた空間成分を有する第2磁場は、式(1)又は(2)により第2磁場に容易に変換可能であり、それ故、直交するように方向付けられた空間成分を有する第2磁場についての説明を対応させて与えることができる。
【0056】
オフセットνx,y,z(t)の時間変化は、第1周波数領域Δωνにある第2磁場H(t)の周波数成分に繋がり、即ち、第2磁場H(t)がフーリエ変換の対象となるとき、オフセットνx,y,z(t)の時間変化は、第1周波数領域Δωνにおけるフーリエ変換の値に繋がる。第1周波数領域Δωνは、基本周波数の何れに比べて小さい排他的な値を有する。特に、第1周波数領域Δωνは、略ゼロ周波数である及びほんの数ヘルツ、即ち、例えば、0.1乃至100Hzである好適な値を有する。第1周波数領域の幅は、好適には、最低の基本周波数の10倍よび小さく、本質的には、その100倍より小さい。更に、好適には、全ての基本周波数は、第1周波数領域Δωνにおける最も高い周波数の10倍より大きく、本質的には、その100倍より大きい。
【0057】
高い基本周波数は、第1磁場の第1副領域の高速移動に、それ故、受信コイル7における高い信号に繋がるがまた、基本周波数が増加するにつれて増加する既知の患者のノイズを増加させる。受信コイル7により取得される信号の信号対ノイズ比が非常に良好な品質の画像を再構成するために十分である好適な基本周波数は、下記のように、20kHz乃至1MHzの範囲内にある。磁気共鳴スペクトロスコピーにより知られているSQUID検出器が取得手段として用いられる場合、基本周波数は、1000分の1に小さくなるように選択されることが可能である。
【0058】
オフセットにおける低速変化は、基本周波数において振動する第2磁場の一部によりもたらされる第1副領域301の高速移動に加えて、第1副領域301の付加低速移動をもたらし、その結果、大きい領域が第1副領域301によりカバーされ、検査領域は拡大される。オフセットは非常に低速で変化するため、それらのオフセットは、オフセットにおける変化により誘導される信号は第1副領域の低速移動のために非常に小さく、受信コイル7により取得される信号への何れの影響がない又は殆どないために、下記のように、検査領域の画像の再構成への何れの寄与をもたらさないか又は殆どもたらさない。
【0059】
オフセットの時間変化、即ち、それによりもたらされる第1副領域301の移動は、第1磁場の第1副領域301が、例えば、放射線技師により規定された、全体的な検査領域をカバーするように選択される必要がある。
【0060】
例えば、磁気共鳴スペクトロスコピーにより知られているように、時間的に変化する磁場の生物学的組織への適用は加温に繋がり、そして加温が過度である場合、組織に損傷を与える。加温は、実質的に、振幅と基本周波数の積、磁場の形成及びその磁場にさらされる組織の種類に依存する。第2磁場の振幅及び基本周波数は、組織が損傷を受けないように選択されるべきものである。例えば、人間の患者の胃腸管のような大きい領域が第2磁場にさらされる場合、その振幅は20mTより小さい必要があり、そして基本周波数は100kHzより低い必要がある。
【0061】
既知の振幅、位相及び周波数変調技術により認識される、振幅、位相シフト及び基本周波数の低速時間変化は、基本周波数の周りに配置される第2磁場の周波数成分に繋がる。好適には、本発明にしたがった装置9は、振幅、位相シフト及び基本周波数の時間変化の結果が、第2磁場のフーリエ変換が周波数領域Δωx,y,z及び基本周波数の周りに配置されたΔωx,y,z(i)における値を有し、その周波数領域は、相対的幅Δωx,y,z/ωx,y,z<0.1に対してΔωx,y,z(i)/ωx,y,z(i)<0.1を、更に好適には相対的幅Δωx,y,z/ωx,y,z<0.01に対してΔωx,y,z(i)/ωx,y,z(i)<0.01を有する。絶対的な表現としては、基本周波数の周りに配置される周波数領域の幅は、第1周波数領域Δωνの幅と同じオーダーの大きさを有する。特に、基本周波数の周りに配置された周波数領域の幅及び第1周波数領域の幅は好適には同じである。
【0062】
他の好適な実施形態においては、振幅、位相シフト及び基本周波数は、好適には、時間に依存しない。基本周波数の周りに配置された周波数領域の外側及び周波数領域Δωνの外側においては、第2磁場のフーリエ変換は、好適には、値を有しない。このような効果は、第2磁場における高速変化により誘導される信号は、それらの周波数領域の範囲内にない周波数成分により乱されず、それにより、画像品質は改善されるというものである。
【0063】
図7乃至10は、第2磁場を表し、各々の場合に、第2磁場の空間成分が、直交する第2磁場の空間成分に亘ってプロットされている。
【0064】
図7においては、第2磁場H(t)の一実施形態における空間成分H2,y(t)=cos(29t)+0.1cos(30t)が、この第2磁場に直交する第2空間成分H2,x(t)=sin(29t)−sin(30t)に対してプロットされている。図7における鉛直方向及び垂直方向における数値は任意単位で定められている。同様なことが、図8乃至10における数値にも適用されている。
【0065】
図8においては、第2磁場H(t)の異なる実施形態についての空間成分H2,y(t)=cos(29t)+cos(30t)が、この第2磁場の実施形態に直交する空間成分H2,x(t)=sin(29t)−0.5sin(30t)に対してプロットされている。
【0066】
図9においては、第2磁場H(t)の更なる実施形態についての空間成分H2,y(t)=cos(29t)+0.5cos(30t)が、この第2磁場の実施形態に直交する空間成分H2,x(t)=sin(29t)−0.5sin(30t)に対してプロットされている。
【0067】
図10においては、第2磁場H(t)の更なる実施形態についての空間成分H2,y(t)=cos(29t)+cos(30t)が、この第2磁場の実施形態に直交する空間成分H2,x(t)=sin(29t)−0.5sin(30t)に対してプロットされている。
【0068】
図7乃至10に示す実施形態にしたがった第2磁場を用いることは、検査領域における磁性粒子の空間分布の良好な品質の画像に繋がる。
【0069】
図7乃至10及び関連する記載において特定される第2磁場の空間成分は、下記のように、三角変換により式(1)にしたがって容易に表される。それらの空間成分は、一般に、次式により表される。
2,x(t)=cos(29t)+acos(30t) (3)
2,y(t)=sin(29t)+bsin(30t) (4)
それらの空間成分は、次の構成を有するように変換される。
2,x(t)=sin(29t+φ(t))√(1+a+2acos(t)),tan(φ(t))=−(1+acos(t))/asini(t) (5)
2,y(t)=sin(29t+φ(t))√(1+b+2bcos(t)),tan(φ(t))=−bsin(t)/(1+bcos(t)) (6)
変数a及びbは任意の実数であり、それ故、式(5)及び(6)は、式(1)にしたがった第2磁場の方式に対応する。
【0070】
図7乃至10にしたがった時間的に変化する磁場は、それぞれの図に示す経路に実質的に沿った第1副領域301の動きをもたらす。但し書き“実質的に”が、空間のある一方向の第2磁場の時間変化と第1副領域301の移動との間の相関性は線形ではないために、即ち、第2磁場は場所と共に線形に変化しないために、用いられている。この結果は、第1磁場の第1副領域301は、示されている経路上を正確に動かない。
【0071】
代替として、第2磁場は、第1副領域301が検査領域を通って移動する経路がリサージュ図形を表すように、調節されることが可能である。
【0072】
フーリエ変換が第1周波数領域Δωに存する第2磁場の割合、即ち、オフセットνx,y,z(t)の時間依存性によりもたらされる第2周波数領域の低速可変成分は、図7乃至10に示す経路における全体的な移動に繋がり、その結果、第1副領域301は患者1における比較的大きい領域に亘って広がり、それ故、検査領域は拡張される。
【0073】
第2磁場は、第2磁場の時間微分は空間の各々の方向において実質的に同じである、即ち、特定の空間成分についての時間微分の大きさの測定に適用されることにより生成される値は、せいぜい5分の1及び5倍だけ異なるようにデザインされている。このことは、第2磁場の空間成分の時間微分に適用されるこの測定が、第2磁場の他の空間成分の時間微分にこの測定が適用されるときに生成される値の5倍より大きくない及び5分の1より小さくない場合に、異なる空間成分についての2つの時間微分が同じであることを意味する。第1副領域は、それ故、それ程、異ならない速度で空間の異なる方向に移動され、下記のように再構成される検査領域の画像の解像度は空間の異なる方向において殆ど異ならず、そのことは画像品質を改善する。
【0074】
時間微分の大きさの測定は、例えば、時間の経過に伴う空間成分の時間微分の平方平均である。代替として、その測定は、第2磁場の空間成分の時間微分の最大値であることが可能である。
【0075】
異なる空間成分についての第1副領域301の実質的に同じ速度が、例えば、第2磁場H(t)の各々の空間成分についての又は各々の磁場H(i)(t)の各々の空間成分についての基本周波数と振幅との積が実質的に同じであるために、得られる。
【0076】
好適には、第2磁場は、第2磁場の各々の空間成分についての又は各々の部分磁場H(i)(t)の各々の空間成分についての基本周波数が実質的に同じであるようにデザインされる。このことは、異なる方向の第1副領域の移動中に取得された信号についての信号対ノイズ比が実質的に異ならない、そのことは改善された画像品質に繋がる有利点を有する。
【0077】
他の実施形態においては、基本周波数は、時間と共に変化することが可能であり、特に、時間と共に高くなることが可能である。フーリエ変換と関連した上記の記載は、それ故、時間的に区分されたフーリエ変換に関するものであり、即ち、フーリエ変換は、振幅、位相シフト及び基本周波数の時間依存性のために基本周波数の周りに配置された周波数領域の幅の逆数と同じオーダーの大きさを好適に有する所定期間においてなされる。
【0078】
最小距離が、入力装置14を介して装置9に入力され、制御ユニット10は、検査領域における各々の点について、第1副領域の中央とそれぞれの点との間の距離が入力された最小距離より少なくとも一瞬間小さいように第1副領域の位置が変化するように、第2磁場を構成するようにして、交流電流電源42、52、62を制御する。このようにして、検査領域の各々の位置が第1副領域301によりカバーされることを確実にすることが可能である。上記のように及び独国第10151778号明細書に記載されているように、第1副領域301の移動と空間の特定方向における第2磁場における変化との間の非線形的相関が存在することに留意する必要がある。第2磁場における変化と第1副領域の移動との間の相関関係が、例えば、経験的に決定されることが可能であり、そして、メモリ10にテーブル形式で記憶されることが可能である。最小距離が指定される場合、そのテーブルを考慮して、制御ユニットは、最小距離が考慮されるように、検査領域における第1副領域301の経路及び関連する時間的に変化する第2磁場を決定することができる。
【0079】
過度に大きい最小距離を指定することにより装置9の分解能を低下させないように、最小距離は、装置9の解像限界の10倍より小さくなるように指定される。代替として、最小距離は、解像限界の3倍より小さくなるように指定される。
【0080】
解像限界は、磁性粒子を有し、そして受信コイルにより取得されることが可能である信号を生成するようにできるだけ小さいが十分に大きい検査領域内の2つの領域により規定される。その解像限界は、それらの領域が検査領域の再構成された画像においてまさに微分された2つの領域間の距離である、換言すれば、より短い距離の場合、再構成された画像における2つの領域間を区別することは、もはや可能ではない。解像限界が小さければ小さい程、解像度は高くなる。
【0081】
装置9の空間解像度は、第1副領域301の大きさにより決定される。この大きさは、先ず、コイルの対3a、3bにより生成される磁場の勾配強度に依存し、また、磁性粒子の磁化の飽和のために必要な磁場の大きさに依存する。この磁場の大きさは、図3に示す球の直径10μmにおいて1mTであり、直径100μmにおいて100μTである。後者の値及び0.2T/mの磁場勾配の場合、第1副領域301は約1mmの直径を有する。
【0082】
図11のフローチャートを用いるに、受信コイル7において取得された信号から、検査領域における磁性粒子の分布に関する情報を有する検査領域画像がどのように再構成されるかについて示している。
【0083】
先ず、段階401においては、デルタプローブ、即ち、有限の非常に小さい寸法、例えば、1mmのプローブが、検査領域における所定数量の点の1つに位置付けられる。この数量の点は、例えば、検査領域において直交座標形式で配置された点、即ち、解像限界と同じである間隔を有する隣接点を有することが可能である。
【0084】
次いで、段階402において、第1及び第2磁場はオンに切り換えられ、それ故、第1副領域301は、第2磁場の効果のために、検査領域において移動する。同時に、受信コイル7は、検査領域において変化する磁化のために、受信コイル7において誘導された信号を取得する。
【0085】
段階403においては、デルタプローブが検査領域における所定の点全てにおいて位置付けられたかどうかを確認する。これが肯定的である場合、その処理は段階404に進む。否定的である場合、段階401において、デルタプローブが、未だに位置付けられていない点に位置付けられ、そして、誘導信号が、このデルタプローブの新しい場所について、段階402において取得される。
【0086】
段階404においては、磁性粒子を有する被検体が検査領域内に位置付けられ、オブジェクトにおける磁気粒子の分布が決定されるようになる。被検体は、例えば、患者であることが可能であり、その患者は、磁気粒子を有する液体又は食事を摂取していて、磁性粒子は、測定時に彼の胃腸管内に位置している。
【0087】
段階405においては、第1及び第2磁場はオンに切り換えられ、それ故、第1副領域301は、第2磁場の影響のために検査領域内に移動する。同時に、誘導電子が受信器7において取得される。
【0088】
段階406においては、検査領域の画像が、段階402及び405において取得された信号から再構成される。そのために、次のように前提される。
【0089】
【数4】

それ故、外部からの悪影響を伴わずに、オブジェクトが検査領域に位置付けられている間に、信号So(r(t))(ここで、r(t)はベクトルであり、以下においても同様である)が受信コイルにより取得され、第1副領域が、和
【0090】
【数5】

に等しい検査領域における点r(t)に位置付けられる。これに関連して、aは、検査領域における特定点(ここでは、pで表されている)における磁性粒子の濃度の測定値である係数である。更に、S(r(t))は、デルタプローブが点pに位置付けられ、第1副領域301が検査領域の位置r(t)に位置付けられている間に取得される信号である。
【0091】
係数aは、既知の最小二乗フィッティング法により適合され、即ち、係数aは、次式が最小になるように決定される。
【0092】
【数6】

時間tについての積分が、この場合、再構成のために用いられる信号が取得される全体の期間Tに亘って実行される。
【0093】
結果として得られた係数aは、検査領域においてpで表される特定点における磁性粒子の濃度の測定値であり、それ故、検査領域における磁性粒子の分布に関する情報をもたらす検査領域の画像である。
【0094】
本発明にしたがった方法は、上記の再構成に限定されるものではない。対照的に、本発明は、取得された信号から検査領域における磁性粒子の分布に関する情報を抽出することができる何れの再構成方法を含む。例えば、独国特許第10151778号明細書に開示されている再構成方法を用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明にしたがった方法を実行するための本発明にしたがった装置の模式図である。
【図2】検査領域に存在する磁性粒子の1つを示す図である。
【図3】図1の装置における第1の時間的に一定の磁場の磁場線パターンを示す図である。
【図4】図1の装置のブロック図である。
【図5】単一共鳴コイルシステムの回路図である。
【図6】多共鳴コイルシステムの回路図である。
【図7】時間的に変わる第2磁場の互いに対して直交する2つの空間成分の二次元の様子を示す図である。
【図8】時間的に変わる第2磁場の互いに対して直交する2つの空間成分の二次元の様子を示す図である。
【図9】時間的に変わる第2磁場の互いに対して直交する2つの空間成分の二次元の様子を示す図である。
【図10】時間的に変わる第2磁場の互いに対して直交する2つの空間成分の二次元の様子を示す図である。
【図11】本発明にしたがった方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時間的に一定の磁場及び第2の時間的に変わる磁場を有する検査領域における磁性粒子の空間分布を決定する方法であって:
前記第2の時間的に変わる磁場は、各々の空間成分において基本周波数及び振幅を有し、前記第2磁場の時間微分は各々の空間成分について実質的に同じである;又は、
前記第2の時間的に変わる磁場は、幾つかの第2の時間的に変わる部分磁場の和を包含し、各々の部分磁場は、各々の空間成分における基本周波数及び振幅を有し、前記第2磁場及び/又は前記第2部分磁場の前記時間微分は各々の空間成分について実質的に同じである;
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第2磁場及び/又は各々の第2部分磁場は、前記第2磁場について及び/又は各々の第2部分磁場について、前記空間成分についての前記基本周波数と前記振幅との積が、何れの他の空間成分についての前記基本周波数と前記振幅との積と実質的に同じであるように、生成される、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記第2磁場及び/又は各々の第2部分磁場は、前記第2磁場について及び/又は各々の第2部分磁場について、前記空間成分についての前記基本周波数は、何れの他の空間成分についての前記基本周波数と実質的に同じであるように、生成される、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記第2磁場は、前記第2磁場の少なくとも1つの又は各々の空間成分が時間的に変わるオフセットを有し、前記第2磁場の時間的フーリエ変換は第1周波数領域において値を有し、前記値は前記オフセットによりもたらされ、前記第1周波数領域は前記基本周波数の何れに比べて小さい値を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記基本周波数の各々は、前記第1周波数領域にある最大周波数の10倍より高く、特に前記最大周波数の100倍より高い、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、前記基本周波数の少なくとも1つは、時間と共に変化し、特に、時間と共に高くなり、そして前記時間的フーリエ変換は時間的に区分されたフーリエ変換であり、所定時間の期間において決定される、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記検査領域における各々の点について、前記第1副領域とそれぞれの前記点との間の距離が、所定の最小距離より少なくとも一瞬間、小さいように、前記第1副領域の位置が変化するように、前記第2磁場が生成される、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記最小距離は、解像限界の10倍より小さく、特に、前記解像限界の3倍より小さい、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記検査領域における2つの副領域の間の位置を変えることにより、信号が、少なくとも1つの取得手段において、特に、少なくとも1つの受信コイルにおいて誘導され、前記信号は、前記検査領域における前記磁性粒子の空間分布に関する情報を抽出するように評価される、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
第1の時間的に一定の磁場及び第2の時間的に変わる磁場を有する検査領域における磁性粒子の空間分布を決定するための装置であって:
前記第2の時間的に変わる磁場は、各々の空間成分において基本周波数及び振幅を有し、前記第2磁場の時間微分は各々の空間成分について実質的に同じである;又は、
前記第2の時間的に変わる磁場は、幾つかの第2の時間的に変わる部分磁場の和を包含し、各々の部分磁場は、各々の空間成分における基本周波数及び振幅を有し、前記第2磁場及び/又は前記第2部分磁場の前記時間微分は各々の空間成分について実質的に同じである;
装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、前記第2磁場は、前記第2磁場を生成する少なくとも1つのコイルを有する単一の共鳴コイルシステム又は多共鳴コイルシステムを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の段階にしたがった方法を実行するために、請求項10に記載の装置の、第1磁気手段と、第2磁気手段と、少なくとも1つの取得手段と、少なくとも1つの評価手段と、を制御する制御ユニットのためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−514262(P2008−514262A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533037(P2007−533037)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053088
【国際公開番号】WO2006/035359
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】