説明

磁性粒子移送装置および磁性粒子移送方法

【課題】流体中の磁性粒子を確実に集磁・移送して、精度の高い分析を行うことができる磁性粒子移送装置および磁性粒子移送方法を提供すること。
【解決手段】磁性粒子を含む流体を収容する流体収容部を複数設け、各流体収容部を接続する移送流路を有するマイクロ流体チップ2を所定位置に配置するチップ把持部13と、チップ把持部13近傍に配置され、磁性粒子を集磁する少なくとも1以上の磁性体12aを配置する磁性体配置部12と、チップ把持部13と磁性体配置部12とを移送流路方向に相対移動させて、磁性粒子を、移送流路を介して隣接する流体収容部に移動させる駆動ステージ14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微少量の流体の分析を行うマイクロ流体チップの磁性粒子移送装置および磁性粒子移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体に含まれる免疫成分などを自動的に分析する技術として自動分析装置が知られている。この自動分析装置は、試薬が入った反応容器に検体を加え、反応容器内の試薬との間で生じた反応を光学的に検出するものである。この自動分析装置による検体の分析に必要な試薬量は、一つの検体に対して数ml(ミリリットル)〜数十ml程度と少量で済むが、コスト的な観点から見て、分析に用いる試薬量をさらに低減することのできる技術が待望されていた。また、従来の自動分析装置は、検体や試薬を分注する分注ノズルの洗浄に用いる洗浄水の廃液量も多く、この点においてもコスト面で改善の余地があった。
【0003】
このような状況を解決しうる技術として、検体の分析に必要な要素を微小なチップ上に集積化することによって流体の分離を行うことが可能なマイクロ流体チップを用いた分離方法がある(例えば、特許文献1参照)。この分離装置に関しては、チップの所定位置に収容された粒子を遠心分離によって、液体と粒子を分離するという技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−212263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すマイクロ流体チップは、遠心力によって、液体と磁性粒子とを分離しているが、各流体の密度により分散状態が異なり、すべての粒子を確実に分離することができず、分離後に粒子が拡散している場合があるという問題があった。特に、磁性粒子を用いた分析においては、反応物をすべて収集する必要があり、分離効率が低いと分析精度も低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流体中の磁性粒子を確実に集磁・移送して、精度の高い分析を行うことができる磁性粒子移送装置および磁性粒子移送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、磁性粒子を含む流体を収容する流体収容部を複数設け、各流体収容部を接続する移送流路を有するマイクロ流体チップと、前記磁性粒子を集磁する少なくとも1以上の磁性体と、前記移送流路方向に相対移動させて、前記磁性粒子を、前記移送流路を介して隣接する前記流体収容部に移動させる磁性粒子移送部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、前記マイクロ流体チップを所定位置に配置するチップ配置部と、前記チップ配置部近傍に配置され、前記磁性体を配置する磁性体配置部と、をさらに備え、前記磁性粒子移送部は、前記チップ配置部と前記磁性体配置部とを前記移送流路方向に相対移動させて、前記磁性粒子を、前記移送流路を介して隣接する前記流体収容部に移動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、上記の発明において、前記チップ配置部は、前記マイクロ流体チップの移動方向を案内するガイドと、前記磁性粒子移送部に連結され、前記マイクロ流体チップを把持するチップ把持部と、を有し、前記磁性粒子移送部は、前記チップ把持部を介して前記マイクロ流体チップを前記ガイドに沿って移動させることによって、前記磁性体に対して相対移動させ、前記磁性粒子を移送させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、上記の発明において、前記磁性粒子移送部は、前記磁性体を前記マイクロ流体チップに対して相対移動させることによって、前記マイクロ流体チップ内の磁性粒子を移送させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、上記の発明において、複数の前記磁性体は、前記移送流路方向に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、上記の発明において、前記移送流路は、ラプラス力によって前記流体の流通を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、上記の発明において、前記磁性体は、永久磁石であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる磁性粒子移送装置は、上記の発明において、前記磁性体は、電磁石であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる磁性粒子移送方法は、磁性粒子を含む流体を収容する流体収容部近傍に磁性体を配置し、前記磁性粒子の集磁処理を行なう集磁ステップと、マイクロ流体チップまたは前記磁性体を相対移動させることで、前記集磁処理によって集磁された前記磁性粒子を隣接する流体収容部に移送する移送ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるマイクロ流体チップは、流体収容部に収容された磁性粒子を磁性体によって、流体収容部間を接続する移送流路を介して隣接する流体収容部に磁性粒子を移送させるようにしたので、液体と磁性粒子とを確実に分離して移送し、精度の高い分析を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる磁性粒子移送装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示すマイクロ流体チップを示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示すマイクロ流体チップのA−A線断面を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる磁性粒子移送を示す模式図である。
【図5】図5は、従来の免疫分析処理を示す模式図である。
【図6】図6は、流体を収容したマイクロ流体チップを示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる免疫分析処理を示す模式図である。
【図8】図8は、図3に示すマイクロ流体チップの変形例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる磁性体の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明のマイクロ流体チップを実施するための最良の形態について説明する。本発明は、以下に例示する実施の形態や変形例に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。また、図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態にかかる磁性粒子移送装置1を示す模式図である。図1に示す磁性粒子移送装置1は、マイクロ流体チップ2を載置し、マイクロ流体チップ2の移動方向を案内するガイド10a,10bを有するチップ載置部11と、把持部材13a,13bによってマイクロ流体チップ2を把持し、マイクロ流体チップ2を所定の位置に配置するチップ把持部13と、チップ把持部13をガイド10a,10bに沿って移動させる駆動ステージ14と、駆動ステージ14を駆動させるモータ15と、を備える。
【0020】
チップ配置部としてのガイド10a,10b、チップ載置部11およびチップ把持部13は、マイクロ流体チップ2を磁性粒子移送装置1の所定位置に配置する。また、チップ載置部11は、載置面内に磁性体配置部12を設け、磁性体配置部12には、複数の磁性体12aが配置される。磁性体12aは、マイクロ流体チップ2に形成される移送流路に応じて配置が決定される。特に、磁性体12aは、マイクロ流体チップ2に収容される磁性粒子との距離が2mm以下となるように配置されることが好ましい。また、磁性体の磁力は、同一の磁力を有するものを用いてもよく、段階的に磁力を変化させてもよい。
【0021】
駆動ステージ14は、チップ把持部13が移動する移動レーン14aを有し、チップ把持部13は、移動レーン14aに沿って移動する。また、把持部材13bは、チップ把持部13内部に設けられた弾性部材によって図中矢印方向に移動可能であり、弾性部材の弾性力によりマイクロ流体チップ2の把持が可能となる。モータ15による駆動のほか、手動によってチップ把持部13を移動させてもよい。
【0022】
上述した磁性粒子移送装置1は、チップ把持部13が駆動ステージ14上を移動することによって把持部材13a,13bに把持されているマイクロ流体チップ2を磁性体配置部12方向に移動させ、磁性体12aによってマイクロ流体チップ2に収容された磁性粒子を集磁することで、マイクロ流体チップ2内を移送させることができる。なお、チップ載置部11のマイクロ流体チップ2を載置する載置面を移動可能にし、マイクロ流体チップ2を移動させてもよい。チップ載置部11に移送流路方向に移動可能なベルトを設け、モータ等の駆動によりベルトを移動させることによってマイクロ流体チップ2を移動させることができる。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ2の構成を示す模式図であり、図3は、図2に示すマイクロ流体チップ2のA−A線断面図である。マイクロ流体チップ2は、本体部20が、光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂を用いて形成され、流体を収容可能な流体収容部21,22が移送流路23によって連結されている。
【0024】
流体収容部21,22は、分注される所定体積以上の体積となるように形成されていればよく、形状は、円形でもよく、角形でもよい。
【0025】
また、各流体収容部21,22は、移送流路の流通方向の両端部に試料導入口24a,24bおよび試料排出口25a,25bを有する。試料導入口24a,24bおよび試料排出口25a,25bの径は、流体の吸排を行なうプローブ等が挿入可能であればよい。
【0026】
つぎに、マイクロ流体チップ2内における磁性粒子の移送について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる磁性粒子移送を示す模式図である。まず、図4(a)は、磁性粒子Bを含む流体が、試料導入口24aから分注され、流体収容部21に収容された状態である。ここで、マイクロ流体チップ2を磁性体12a方向に移動させる(図4(b))。磁性体12aに対してマイクロ流体チップ2を所定位置まで移動させた後、所定時間、たとえば、10秒間マイクロ流体チップ2の移動を停止させ、磁性体12aに流体中の磁性粒子を集磁する(図4(c))。
【0027】
所定時間経過後、再びマイクロ流体チップ2を移動させると、磁性体12aに集磁された磁性粒子Bは、マイクロ流体チップ2に対して、磁性体12aの相対位置に対応して移送流路23内に入り込み(図4(d))、移送流路23を介して連結された流体収容部22に移送される(図4(e))。
【0028】
上述した一連の処理によって、磁性粒子Bを隣接する流体収容部22に移送することが可能となる。磁性体12aを用いることによって、磁性粒子を効率的に捕捉し、移送することが可能となるため、分析処理における分析精度を向上させ、高い分析精度を維持することができる。また、必要な検体、試薬を分注後に、各試料導入口24a,24bおよび試料排出口25a,25bを封止してもよい。ここで、封止に用いる部材は、樹脂等で形成されたキャップ等の封止部材またはシール部材が好ましい。
【0029】
ここで、従来の免疫分析処理について説明する。従来の免疫分析処理は、図5(1)に示すように、反応容器40内に抗体固相磁性粒子51を含む第1試薬が分注される第1試薬分注処理が行なわれる。その後、図5(2)に示すように、反応容器40内に分析対象である抗原52を含む検体が分注される検体分注処理が行なわれる。なお、抗体固相磁性粒子51は磁性粒子担体に検体中の抗原52に対する抗体が固相されている。そして、図5(3)に示すように、反応容器40は、攪拌された後、所定の反応時間経過によって、検体中の抗原52と抗体固相磁性粒子51とが結合した反応物54が生成される。
【0030】
つぎに、従来の分析においては、BF洗浄機構における1回目の第1BF洗浄処理が行なわれる。第1BF洗浄処理においては、図5(3)に示すように、磁性体を集磁する集磁機構41近傍に反応物54および抗体固相磁性粒子51を集磁した状態でBF洗浄ノズル42による洗浄液の注入および吸引を行なうことによって、反応容器40内の未反応物質53が除去される。この結果、図5(4)に示すように、反応容器40内には、未反応物質53が分離除去され、抗体固相磁性粒子51と反応物54が残る。
【0031】
そして、従来の分析においては、図5(4)に示すように、第1BF洗浄後の反応容器40内に酵素標識抗体55を含む試薬を第2試薬として分注する第2試薬分注処理が行なわれる。所定の反応時間経過によって、図5(5)に示すように、反応物54と酵素標識抗体55とが結合した免疫複合体56が生成される。
【0032】
そして、従来の分析においては、図5(5)に示すように、BF洗浄機構における2回目の第2BF洗浄処理が行なわれる。第2BF洗浄処理においては、第1BF洗浄処理と同様に、集磁機構41近傍に磁性体を集磁した状態で、BF洗浄ノズル42による洗浄液の注入および吸引が行なわれる。言い換えると、第2BF洗浄処理においては、集磁機構41近傍に免疫複合体56と抗体固相磁性粒子51を集磁した状態で、BF洗浄ノズル42による洗浄液の注入および吸引を行なうことによって、反応容器40内の未結合の酵素標識抗体55が除去される。この結果、図5(6)に示すように、反応容器40内には、抗体固相磁性粒子51と免疫複合体56が残る。
【0033】
そして、反応容器40には、発光基質57を含む発光基質液が第3試薬として分注され再度攪拌される基質注入処理が行なわれる。反応容器40においては、免疫複合体56内の酵素が作用し発光基質57は酵素量に比例して光L1を発する。つぎに、免疫複合体56内の酵素が作用して発光基質57から発せられる光L1の光量を測定する測定処理が行なわれ、測定処理において測定された発光基質57の発光量をもとに抗原52の濃度を求める演算処理が行なわれる(図5(7))。
【0034】
このように、従来の分析においては、BF洗浄処理を2度行なうことによって、検体内の未反応物質53および反応物54と未結合である酵素標識抗体55を除去し、測定対象である免疫複合体56のみを取得して測定処理を行なっている。
【0035】
つぎに、本発明の実施の形態にかかるマイクロ流体チップ2を用いた免疫分析処理について説明する。ここで、マイクロ流体チップ2の移送流路23は、ラプラス力がかかるような流路径で形成され、図6に示すように、流体収容部21に収容された流体Fは、移送流路23によるラプラス力によって流通が止められ、流体Fは流体収容部22に浸入しない。この性質を用いて、免疫分析処理を行う。なお、移送流路23の流通方向に対して鉛直方向の断面積は、1mm以下となるように形成される。
【0036】
まず、図5(1)〜(4)に示す処理を流体収容部21内で行い、免疫複合体56を生成する(図7(a))。このとき、分注される検体および各試薬は、移送流路23にかかるラプラス力によって流体の流通が止められ、流体収容部22には浸入しない。免疫複合体56が得られると、マイクロ流体チップ2を移動させて、磁性体12aを流体収容部21の下部に配置して免疫複合体56を集磁し、免疫複合体56以外の流体を試料排出口25aから排出する(図7(b))。流体収容部21内に免疫複合体56のみ在る状態において、試料導入口24a,24bから緩衝液を分注する(図7(c))。このとき、流体収容部22に緩衝液が収容されることによって、移送流路23のラプラス力の効力がなくなり、移送流路23を介して流体収容部21,22が流通可能となる。なお、流体収容部21内で行う図5(1)〜(4)の処理において、マイクロ流体チップ2を磁性体配置部12に移動させて集磁を行なってもよい。また、流体収容部21内には、場合により未反応の抗体固相磁性粒子51も存在する。
【0037】
その後、マイクロ流体チップ2を移動させることによって、磁性体12aの相対位置の変化に従って、免疫複合体56も流体収容部21から移送流路23を通過して流体収容部22に移送される(図7(d)〜(e))。マイクロ流体チップ2の移動が完了すると、試料排出口25a,25bから緩衝液を排出する(図7(f))。緩衝液を排出した後、試料導入口24bから発光基質57を含む発光基質液が第3試薬を注入処理し(図7(g))、免疫複合体56内の酵素が作用して発光基質57から発せられる光L2の光量を測定することで、免疫分析処理を行うことができる(図7(h))。また、マイクロ流体チップ2に超音波を照射することによって流体の攪拌が可能であり、試薬の混合および磁性粒子の洗浄を適宜行う。
【0038】
上述した免疫分析処理を行うことによって、反応が完了した測定対象物質を、試薬等により汚染されていない空間で測光処理を行うことができるため、検出の精度を向上させることが可能となる。
【0039】
なお、測定は、光学的測定に対応可能であり、測定対象が蛍光発光である場合は、励起光を流体収容部22下部から照射することによって測定でき、ラマン散乱を測定する場合は、図7(g)において集磁されている免疫複合体56を用いて測定することも可能である。光学的測定としては、蛍光発光、化学発光、比色、比濁等が挙げられる。
【0040】
ここで、本発明のマイクロ流体チップは、流体の流通方向の終端側流体収容部の底面の高さが、移送流路以下となるように形成してもよい。図8は、図3に示すマイクロ流体チップの変形例を示す断面図である。図8に示すマイクロ流体チップ3は、本体部30に流体収容部31,32が形成され、各流体収容部31,32が移送流路33によって連結されている。また、各流体収容部31,32には、それぞれ試料導入口34a,34b、試料排出口35a,35bが形成され、上述した磁性粒子移送方法を適用することができる。ここで、流体収容部32の底部は、流体収容部31および移送流路33の底部に対して低く形成され、流体収容部31から流体収容部32に移送された磁性粒子の逆流を防止することができる。
【0041】
また、磁性体12aを移動させて流体収容部内の磁性粒子を移送してもよい。モータ等によって、図1に示す磁性体配置部12をマイクロ流体チップ2方向に移動させることで磁性粒子の移送が可能である。ここで、図9は、本発明の実施の形態にかかる磁性体12aの変形例を示す模式図である。図9に示すように、ギア121と歯合可能な歯部を有し、ギア121の回転により移動可能なベルト122に配置された磁性体12aを移動させることによってマイクロ流体チップ2内の磁性粒子を移送させてもよい。
【0042】
さらに、磁性に電磁石を用いて磁性粒子の移送を行なってもよい。上述したように、磁性体をマイクロ流体チップ近傍に移動させ、通電して集磁・移送してもよく、複数の磁性体をマイクロ流体チップ近傍に配置し、磁性体を移送方向に対して段階的に電通させて集磁を繰り返すことによって、磁性粒子を移送させてもよい。
【0043】
また、マイクロ流体チップと磁性体とを相対的に移動させてもよい。このとき、マイクロ流体チップ内を移動する磁性粒子の速度が10mm/s以下となるように各移動速度が設定されることが好ましい。
【0044】
上述した磁性粒子移送装置および磁性粒子移送方法によって、流体中の磁性粒子を確実に集磁・移送することができ、精度の高い分析を行うことが可能となる。また、マイクロ流体チップにおいて、ラプラス力を用いることによって、移送流路を介して連結された流体収容部であっても、一方の流体収容部を使用せずに反応処理を行い、測光処理のみ未使用の流体収容部を用いることが可能なため、測光処理におけるコンタミネーションを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる磁性粒子移送装置および磁性粒子移送方法は、磁性粒子を移送する処理に有用であり、特に、微量分析に適している。
【符号の説明】
【0046】
1 磁性粒子移送装置
2,3 マイクロ流体チップ
10a,10b ガイド
11 チップ載置部
12 磁性体配置部
12a 磁性体
13 チップ把持部
13a,13b 把持部材
14 駆動ステージ
15 モータ
20,30 本体部
21,22,31,32 流体収容部
23,33 移送流路
24a,24b,34a,34b 試料導入口
25a,25b,35a,35b 試料排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を含む流体を収容する流体収容部を複数設け、各流体収容部を接続する移送流路を有するマイクロ流体チップと、
前記磁性粒子を集磁する少なくとも1以上の磁性体と、
前記移送流路方向に相対移動させて、前記磁性粒子を、前記移送流路を介して隣接する前記流体収容部に移動させる磁性粒子移送部と、
を備えたことを特徴とする磁性粒子移送装置。
【請求項2】
前記マイクロ流体チップを所定位置に配置するチップ配置部と、
前記チップ配置部近傍に配置され、前記磁性体を配置する磁性体配置部と、
をさらに備え、
前記磁性粒子移送部は、前記チップ配置部と前記磁性体配置部とを前記移送流路方向に相対移動させて、前記磁性粒子を、前記移送流路を介して隣接する前記流体収容部に移動させることを特徴とする請求項1に記載の磁性粒子移送装置。
【請求項3】
前記チップ配置部は、
前記マイクロ流体チップの移動方向を案内するガイドと、
前記磁性粒子移送部に連結され、前記マイクロ流体チップを把持するチップ把持部と、
を有し、
前記磁性粒子移送部は、
前記チップ把持部を介して前記マイクロ流体チップを前記ガイドに沿って移動させることによって、前記磁性体に対して相対移動させ、前記磁性粒子を移送させることを特徴とする請求項2に記載の磁性粒子移送装置。
【請求項4】
前記磁性粒子移送部は、
前記磁性体を前記マイクロ流体チップに対して相対移動させることによって、前記マイクロ流体チップ内の磁性粒子を移送させることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性粒子移送装置。
【請求項5】
複数の前記磁性体は、前記移送流路方向に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁性粒子移送装置。
【請求項6】
前記移送流路は、ラプラス力によって前記流体の流通を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁性粒子移送装置。
【請求項7】
前記磁性体は、永久磁石であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の磁性粒子移送装置。
【請求項8】
前記磁性体は、電磁石であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁性粒子移送装置。
【請求項9】
磁性粒子を含む流体を収容する流体収容部近傍に磁性体を配置し、前記磁性粒子の集磁処理を行なう集磁ステップと、
マイクロ流体チップまたは前記磁性体を相対移動させることで、前記集磁処理によって集磁された前記磁性粒子を隣接する流体収容部に移送する移送ステップと、
を含むことを特徴とする磁性粒子移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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